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紅麹菌への人工消化処理から予測される

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2019 年 2 月 7 日

紅麹菌への人工消化処理から予測される 菌体内二次代謝産物の生体内における機能発現

応用生物科学専攻 食資源科学講座 応用食品科学 高橋勇太郎

1.はじめに

Monascus属の一部は二次代謝産物として紅色色素を産生することから紅麹菌とも称され,アジア

圏で古くから米の発酵に利用されてきた。紅麹菌は機能性を有する多様な代謝産物を産生する場合 があることから,当研究室では乳タンパク質(ホエイタンパク質)ベースの固形培地に紅麹菌を播 種してホエイ麹を調製し,これをチーズに添加することで紅麹菌由来の機能性を付与したチーズを 開発する研究を行っている。現時点の製法ではチーズ中の紅麹菌は生菌の状態にあり,このまま経 口摂取したとしても,紅麹菌の菌体内部に留まっている二次代謝産物は生体内で充分に作用し得な い可能性がある。そこで本研究ではホエイ麹上の紅麹菌体に破砕処理を施すことで,生体での利用 性の向上が期待できるかどうかを代表的な紅麹菌の機能性二次代謝産物であるロバスタチン(Lov)

を指標として検討することとした。

2.方法

乳糖を分解した 25% WPC80 溶液を pH 4.0 に調整し,オートクレーブすることでホエイ固形培地 を調製した。この上にポリエステル膜を敷き,M. ruber NBRC 32318 の胞子を播種して 25℃,10 日 間の培養を行った。培養後,ポリエステル膜上に繁茂した気中菌糸およびポリエステル膜を外して 得られる培養物を別々に回収し,HPLC を用いて Lov を定量した。ナイロン膜上の菌糸を液体窒素中 で凍結(F),液体窒素で凍結後に乳鉢で破砕(FD),凍結乾燥(L),凍結乾燥後に乳鉢で破砕(LD)

の 4 種類の方法でそれぞれ破砕し,破砕した菌糸をカルコフラワーホワイトによって染色・観察し た。その後,未処理の状態の菌糸(Int)と LD 処理を施した菌糸をペプシン溶液と混合して消化を 行った。引き続き,パンクレアチン溶液を加え,水酸化ナトリウム溶液で pH 6.8 に調整して消化 を行った。LD については胆汁酸の一種であるタウロコール酸を含むパンクレチン溶液で処理した実 験区も別途設定した。これら人工消化後の上清を回収して凍結乾燥した後,HPLC に供して Lov を測 定した。

3.結果及び考察

供試菌が産生した Lov の 10%程度がポリエステル膜上に繁茂した気中菌糸中に存在していた。破砕処 理を施した菌糸を蛍光顕微鏡で観察したところ,Int,F,L では成長した菌糸がそのままの状態で 観察された。一方で FD,LD では細かい断片に破砕されていた。人工消化試験後,上清中に回収され た Lov については Int と LD の間で有意差はみられず,胆汁酸添加による抽出性の向上も認められ なかった。このことから菌体由来 Lov の大部分は破砕処理の有無に関わらず,上部消化管内では溶 出せずに下部消化管へと流出するものと考えられた。

4.まとめ

菌体破砕処理を施した紅麹菌糸を消化することによって,菌体内に存在する Lov は人工消化液中 により抽出されるという仮説を立て,検討を行った。顕微鏡観察によって,FD および LD では十分 に菌体が破砕されていることが確認された。しかし,人工消化液中に抽出された Lov の量は菌体破 砕を行っても増加しなかった。

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