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Melsel unlverslty
2005.3 明星大 学 研 究 紀 要一一人文学部一 No.41
高 齢 社 会にお け
る医 療 機 関
の 課 題
木 下 照 嶽1
1 高齢社会の意義 1.人ロ高 齢 化の速 度
21世 紀の 到来と と もに、 病院や医院を中心 とする医療機関を とりま く環境は、 大き な変 化 を 迎 えてい る。 その中に は、急 速 な 高 齢 社 会へ の発 展、 高 齢 者 を 中 心 とす る医 療 費の 国 および個 人の 負 担 過 重、医 療 技 術の飛 躍 的 発 展によ る医 療 機 関の 経 営 と会 計 問 題、健 康で
自立で き る高齢社会を支え るライ フ スタ イル の あ り方と、 そ れ を支援する諸種の産業、 職 業教育と雇 用な ど が指 摘される。
最近、 医療機関や医療サービス に関して、 討議さ れ る問題に は次のような点が あ げ られ
る。
(1)高齢者の 割合 (2)医療サ ービス の 質 〔3}医療費の負担問題と病医院の経営と会計問題 (4)医療機関の業績測定と評価 (5)社会的入院と医療費 終末期の 医療 (7)地域別医療 格 差 公 的 介 護 保 険 導 入の 自 治 体 財 政へ の 影 響 介 護保険の 市 長 村 財 政へ の影 響 喫 煙と健 康 管理。
わ が国の高齢化の速度は、 世界 的に も驚 くほどの速さを示 してい る。
図 表 1は、 65歳以 上の 高齢者が全人口 に 占め る割合が、 7% か ら14%に達す る まで に か か っ
た年 数を示 して い る。
図 表1 人 ロ高 齢 化の速度 65才 以 上の人ロ の割 合
7% 14% か かっ た 年数 日 本 1970年 1994年 24年 間
ア メ リ カ 1945 2014 169 3
イ ギ リ ス 1930 1976 146 ド イ ツ 1930 1972 42
フ ラ ン ス 1865 1979 114
ス ウェ ーデン 1890 1972 82
ヨーロ ッ パ 諸国が、 今か ら25年〜 30年 前に、 高齢者が42年〜 114年 も かけて人口 の 14%
に達 してい るの に対して、 わ が国は、 高齢化が 大 変 遅れ ていて、その頃7% だっ たの に対 して、 ほ んの24年 間で、 14%に達 する とい う驚くべ き速度で進展 して い ること が 理解さ れ
1明星 大学名 誉教授 経 済 学
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る。
2.高齢者の健康満足度
医療サービス の急 速な進 展によ り、 平 均 寿 命が男 女 と も世 界一と なっ た現在、 長寿大国
といわれて い る が、高 齢 者 は 自分の健 康につ い て、果 た して満 足 した状態に ある か ど う か ということが大変心 配になる ところで ある。
図表2で示 し た よ うに、 経 済 協 力 開 発 機 構 (OECD )が 発 表 した統計に よ る と、 諸 外国比
べ た 日本 人の 健 康に 対 する満 足 度は、次の 表の よ うに、 極あて低い値にある こと が明 らか
で あ る。
高齢者に対する ア ンケ ート調査で、 こ の健康状態は、 「大変良い 」と 「良い 」 と答え た 比 率 を示 した ものである。 驚 くことに、日本は高齢者が多い に も か か わ らず、 健康状態は、
良く ない とい うこと が わ か る。 残念な ことであ る が、 「不 健 康な高 齢 者 大 国 」で あるとい わ なくて はな らない。
図 表 2 高 齢者の 健 康 状 態…世界26力国(2 〕
上位18力国 下 位8力国
健 康 状 態 健康 状態
順位 国 名 順 位 国 名
女 性 男 性 女 性 男性
1 ア メ リ カ 90 91.419 イ タ リ ア 50.661 2 カ ナ ダ 89,79 ユ.220 チ ェ コ 50.457 ,7 3 ニ ュ ージーラ ン ド 88.287 ,32 ユ 日 本 42 47.2 4 ア イ ル ラ ン ド 86.384 ,922 韓 国 40.848 .7 5 フ ラ ン ス 85 90.523 ス ロ バ キ ア 40,748 .6 6 オ ース ト ラ リア 83.383 .624 ポ ー ラ ン ド 40、248 ,2 7 ア イ ス ラ ン ド 82.381 .325 ハ ン ガ リ ー 38.948 ,1 8 ス イ ス 80.486 .226 ポ ル ト ガ ル 27ユ 38,5
9 ノ ル ウ ェ ー 78.281 .1 10 ス ウ ェ ーデ ン 75.780 、1 11 デ ン マ ー ク 75.682 ,9 12 イ ギ リ ス 75 75、3 13 ベ ル ギ ー 74.981 .8 14 オ ラ ン ダ 73.580 .6 15 オ ース ト リ ア 70.172 .5 16 フ ィ ン ラ ン ド 70 67.6 17 ス ペ イ ン 64.772 .4 18 ド イ ツ 64 68.3
n 病 院 の 現 状 / 国際比較 1.設備とスタッフ/ 国際比較
現 在の 日本は、子 供の数が極 端に少な くなる極 小 子 化 と、人口全 体の高 齢 者の 数が 急 速
に増 加 するという二っ の要素が重 なっ てい る。
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2005.3 高 齢社 会における医療 機 関の課 題 55 寿 命 が 急 速に の び る高 齢 社 会の わが国が、 「不健康な高齢者大国」と な っ てい る が、 諸 外国に比べ て、 極めて異常な事態 が 生 じて いること が外 国か ら指摘さ れてい る。
図表 3 は、世界各国の入院患者の入院日数を 比 較 した もの あ る。 1980年 と1998年の間の 変化を示して い る。 驚 くべ きことに、 日本が50日以 上 入院して い るの に対して、諸 外 国は
10日以 下が殆ど とい う状態で あ る。
さ らに、 こ の18年間に わ た っ て、 1/2、 1/3、 1/4と減 少 して い る。 高 齢 者の先 進 国で ある西欧諸 国 が、 自分の健 康 管 理を病 院とい う医療機関に頼ることな く、 自治体、民 間 中 心の在 宅 (居宅)介護、 老人ホーム な どの
、 外部の施 設に依存してい る状態が 理解される。
現 在 高 額にわた る高齢者の医療費を、 将来も国が負担するのは極めて困 難であるこ と を 示 して い る。
医療費が非常に増加して い る わ が国の 場合、特に問 題にな るのが、 (1)長期の 入院患者の 数 が 多い こと、(2)70歳 以 上の入 院 患 者の増 加、 (3)70歳以上の高齢者の 6 ケ月以 上 あるい は
1年以 上の入院患者の増加、 (4)特に70歳以 上の社 会 的 入 院に よる医 療 費の 増 加、 (5)死亡前 6 ヶ月にか か る医療費の高額化 (300万前後)な ど が、学 会 報 告で指 摘 さ れて る(3)。
特に、老 人 医 療 費 を増 加 させ、 医 療 保 険財政の不 足を招い て い るもの に、 社会 的 入 院 が あ る。 そ れ は、 医学的に入院治療の必要が ない の に、 介 護i者がい ない な どの 家庭の 事情や 介 護 施 設のない こ と か ら、 病院に入院し たり、 入院が長引いてい る状 況を示 す (図表 3)。
図表3 入院患者の平均日数と計算上の滞在日数の比PtC4)
1980 1990 1998
滞 在日数 計 算 値 滞 在日数 計算値 滞在日数 計算値
日 本 55.9 68.5 50.5 58,5 40.8 52.1
イ ギ リ ス 19.1 19.4 15.6 12,2 9.8 8.4
デ ン マ ーク 12、7 13.1 82 8.4 6,9 6.8
ド イ ツ 19.0 18,3 17.2 15.6 12.5 12.7
ア メ リ カ 10.0 10,5 9.1 1α9 7.3 8,8
スウェ ーデン 23,2 24,8 18.0 19.1 6.6 6,6(*)
オ ラ ン ダ 34.7 31.5 34,1 31.7 33,7 308
オース トリア ユ7.9 17,5 13.0 13.1 9.3 10,0
*1997
OECD のデーターに よ る と
、 人口1000人当た りの病床数は (1990年代後半)は、 ス イ ス に次い で 日本が最も多い こと が 指 摘さ れて い る。 以 下は、 主 要諸国の順位と数値を示 す(5)。
ス イ ス 18.1、 日本 16.5、 ノル ウェ ー 14.5、 オ ラ ン ダ 11.3、ア イ ル ラ ン ド 10.1、オ ース トラ リア 8.5、 フ ィ ン ラ ン ド 7.8、 イ タ リア 5.5、 韓国 5.1、 イ ギ リス 4.2、 カ ナ ダ 4.1、
ポル トガル 4、 ス ペ イ ン 3.9、 ス ウ ェ ーデ ン 3.8、 ア メ リ カ 3.7、 トル コ 2.5、 メ キ シ コ 1.1。
これは、OECD 各 国 (韓 国、 メキ シコ 、 トル コ のみ増加)が、 1970年代を境に して、
病床数を入口比で抑制 (20%〜50% 程 度 ) した の に対して、 わ が国は年率約1%の増床を
は か り、1990年代では極めて高いもの と な っ た ことに よる〔6〕。
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病 床 数 を増 加さ せ る規模の肥大化 は、 一方で 設 備 資 本へ の 多 額の 投下と、 社会 的入 院を 誘発さ せ、 他方で、 患 者 数 獲 得 戦 略にっ な がっ て、 病院の 経営を著しく後 退さ せ た要 因に よるもの と思わ れる。
ま た、OECD の データによ る と
、 病床施設 や 医 療 機 器 等の資 本 投 入で、 日本は高度に資 本集約的で、 医 師 や 看 護 職 員 数で は労働節約的で ある とい う報告が見ら れ る 。
すなわち、一定 人口当た りの病床数は、 日本は ア メ リ カ の約 2.4 倍、 イ ギ リス の 約 1.8
倍で、 CT台数は、 ア メ リ カの約 6.4倍、イ ギ リス の約13.6倍、 MR1 台数は、 ア メ リカの 約 2.8倍、 イ ギ リス の約 5倍と き わ めて高い数値を示して いる。
一定 病 床 当た りの 医師数 (1988)は、 日本は ア メ リカ の約18%、 イギリス の 約30%で、 看 護職員数は、 ア メ リカの約20%、 イ ギ リス の約36% と なっ て い る。 ま た平 均 在 院 日数
(2000)は、 ア メ リカ の約 4.5倍、 イギリス の 約3,1倍と なっ て い て、 少ない医師や、 看護
図 表4 人昌1000人 当た り 医 師 (公 私 機 関の専任医 師 ) (1999年 )
国 名 人数 国 名 人 数
イ タ リア 5.9 ノルウェ ー 2,8
ギリシ ャ 4.1 ア メ リカ 2.7
ベ ル ギー 3.8 オース トラ リア 2,5
スイス ・ドイ ツ 3、4 ポーランド・ニュ ージーラン ド・アイルラン ド 2,3
デン マーク カナダ 2、1
ア イ ス ラン ド 3.3 日 本 1.9
ハ ンガリー・ポル トガル 3.2 イ ギ リス 1、8
スペ イン ・フ ィ ンラ ン ド 3,1 メ キシ コ 1.7
スウェ ーデン ・オランダ。ルク センブルグ 韓 国 1.3
フ ラン ス ・チ ェ コ ス ロ バ キア 3.0 トル コ 1.2
オース トリア
1998年の データ (オース ト ラ リア、フ ラン ス、ドイツ、ギリシ ャ、アイス ラン ド、日本、ア メ リカ)
図 表5 人口1000人 当たり看 護 職 員 数 (1980年〜1999年 )
国 名 人 数 国 名 人 数
アイル ラン ド 16.5 デ ン マーク 7,3
フ ィ ンラン ド 14、4 ルクセ ンブル グ 7,1
アイ スラン ド 13.8 フ ラン ス 6、0
オ ランダ 12.7 ポーラ ン ド 5.1
ス ウェ ーデ ン 10,2 ハ ンガ リー 5.0
ノ ル ウェ ー 10.1 イ タ リア 4.6
ドイッ ・ニ ュ ージーラン ド 9.6 イギ リス 4.5
オース トリア 9 ポル トガル 3、8
ア メ リカ 8.3 ギリ シャ ・スペ イ ン 3,6
チェ コ ス ロ バキァ 8.2 韓 国 1.4
オース トラ リア 8.ユ メキシコ 1,2
日本 7.8 トル コ 1、1
カ ナダ 7.5
1999年のデータ16力国、1998年の データ 5力国
、 1997年の データ 4力国、そ の他