金沢大学附属図書館中央館における利用者教育
著者 橋 洋平
雑誌名 大学図書館研究
巻 39
ページ 55‑62
発行年 1992‑03‑01
URL http://hdl.handle.net/2297/1865
金沢大学附属図書館中央館における利用者教育
橋 洋 平
てきた。それらを使いこなすためには教育が必 要になる。
(5)図書館の活動をPRすることができる。その ことを通じて図書館や図書館員の地位の向上を アピールできる。
金沢大学附属図書館では,こういった意義を踏 まえて,利用者教育に取り組んできた。この論文 では.その内容を紹介し,問題点を検討する。
1.2 従来の研究
利用者教育についての研究は,利用者教育の技 法や理論について分析するものと事例を紹介する ものに分けられる。アメリカでは,利用者教育を 学習理論と結び付けて理論化したり,種々の教育 方法を定量的に比較して優れた方法を見出すよう な研究が多いが6),国内ではほとんどない。
後者の事例紹介は国内のものでもかなりの数に なる7)。1987年の図書館利用指導実態調査による と8),4年制大学の弘7%で利用者教育が行われ ている。その内訳は,国立24.1%,公立32.0%,
私立41.4%となっている。表1からも読み取れる ように,中央館の事例はほとんどなく,医学・薬 学系の図書館や単科大学での事例が多い9)。これ
らの大学の中には,授業の一部として,図書館利 用法や文献探索法が組み込まれているところもあ
る10)。一般に専門化が進んでいる大学や学部はど 利用者教育がやりやすく,要求も多いと考えられ
る。
そういう状況の中で,利用者教育の面では遅れ ている国立大学中央館での事例紹介を行う。先進 的な事例とはいえないが,紹介する意義はあるIl)。
2.利用者教育の分類
前章では,利用者教育の大まかな定義を紹介し たが,その側面にはいろいろなものがある。事例 の紹介に入る前に,利用者教育についてのネり具
55 1. はじめに
1.1利用者教育の定義と意義
図書館における利用者教育は,戸田によると
「図書館利用者に,情報源としての図書館の機能 を認識させ,学習や研究のために,図書館の施設 設備,資料,サービスを効果的に活用する方法を 教える組織的な活動」と定義されるl)。利用者数 育という用語については,「教育」という言葉を 使うことに対する反発がある。また,この活動自 体,図書館に必要な本質的サービスとして定着し ていないうえ,活動自体に多様性があるため,用 語の統一はされていない。その他に「利用指導」
という用語もあるが,ここでは,丸本ほかに従っ て「利用者教育(user education)」という用語 を用いる2)。
大学は,一般に研究・教育機関と呼ばれるが,
ここでは,そのうちの教育機関としての側面に注 目する。そのため,大学図書館における利用者数 育という場合,「自主的,主体的に学習する能力 の育成」という面が重視されることになる〇)。
関連する業務にレファレンス・サービスがある が,次の点で意味が異なる。レファレンス・サー ビスは,具体的な質問をもった利用者を対象に,
散発的に実施されるのに対し,利用者教育は潜在 的利用者を含めたすべての利用者を対象に図書館 側から働きかけて組織的に実施される4)。
この利用者教育については,批判的な議論があ るが5),次のような存在意義があると考えられる。
(1)図書館員の専門性が生かされる仕事である。
(2)大衆化された大学では教育しないと利用でき ない学生が多い。
(3)生涯教育の観点からみて,自分で文献を探索 する能力を身につけておくことは意義がある。
(4)社会全体の情報量が増大するにつれて,それ を検索するためのトウールが高度化し多様化し 竜牒勇嘗巧
璧 ヨ
金沢大学附属図書館中央館における利用者教育
組織などを紹介することを目的とした,グループ に対する情報サービス。そのねらいは,これらの
人々が情報を求めるときに図書館に足を向けるよ
うにすることにあるので,図書館についての概括 的な知識が得られればよい13)。
●情報探索指導(bibliographicinstruction)
オリエンテーションより進んだレベルの指導で,
図書館の利用者に対して情報の効率的な探索方法
を教示することを意図した,グループに対する情 報サービス。コンピュータによる情報検索と冊子 体の2次資料による検索の両方を含んでいるので,
ここでは情報探索と呼ぶ。図書館の利用方法につ いても,他の図書館の利用法なども含めた,より 高度な知識が提供される‖)。
●講習会
講義の形で図書館の設備およびサービスについ て説明や実習を行う提供サービス。
●利用説明会
図書館の施設の利用法およびサービスを希望者
に対して説明する情報サービス。オリエンテーショ ン,情報探索指導,講習会が非日常的業務なのに 対し,このサービスは日常業務である。これには
次の2つがある。
(1)館内ツアー
図書館員が館内を概略的に説明しながら案内す る情報サービス。
(2)テーマ別利用説明会
ある特定の図書館内のコーナーおよびサービス について図書館員が説明や実習を行う情報サービ ス。
2.2 内容による分類
丸本はかによると利用者数青ば内容によって次
のように分類される15)。これは,2.1で述べた ものを違った側面から分壊したものである。
第1段階:図書館紹介
第2段階:図書館オリエンテーション 第3段階:一般的情報探索指導 第4段階:主題別情報探索指導
以上の2つの分類を2次元的に表現すると図1
のようになる。メディアによる利用者教育が図の 上半分,人による利用者教育が下半分に対応する。
利用者教育の内容の段階が上がるに従って,Ⅹ軸 を右から左に移動していくことになる。金沢大学 蓑14年制大学における利用者教育の主要な事例
国立大学
宍道(1976).宍道(1983)
近藤(1981)
鳥取大医学部 徳島大薬学部 公立大学
光斎はか(1987)
吉本(1966)
大阪市立大医学部 奈良県立医大 私立大学
長谷川(1979),長谷川(1980)
阪田(1980)
西岡(1979)
阪田(1978)
堀口(1981)
独協大図書館(1976)
浜田(1982)
国立音楽大 国際基督教大 東京女子医大 同志社多子大 東邦大習志野 独協大 竜谷大
体的で操作的な概念を把達するために分類を行う。
分類方法にはいくつかあるが,ここでは,サービ スの形態による分類と内容による分類を行う。
2.1利用者教育の形態による分矯
丸本はかは,利用者教育を形態によって分類し ている【2)。それに従って金沢大学附属図書館中央 館で行っている利用者教育を列挙すると次のよう になる。
2.1.1メディアによる情報提供
これらについては,項目をあげるにとどめ,こ の論文では具体的な説明は行わない。
●サイン
(1)場所を指示するためのサイン
(2)施設の内容を案内するためのサイン
(3)書架のサイン
●機器操作等の説明書
(1)OPAC利用の手引き
(2)CD−ROM利用の手引き
●図書館利用案内
(1)冊子体のもの
(2)ビデオ
(3)テーマご との利用案内リーフレット 2.1.2 人による情報提供
一般に,利用者教育という言葉は,こちらを指 している。
●オリエンテーション(1ibrary orientation,
1ibraryusepresentation)
潜在的な利用者に図書館のサービス,施設設鳳
†y メディアによる 情報堰供
Ⅹ:内容による分類
y:形態による分類 *各種サイン
*テーマ別利用案内説明書・…・・…・・−…・−・…・ …・・・・………・…・………・…………*図書館利用案内
−● (冊子/ビデオ)
..==.
個別的・専門的 一般的・基礎的
−−Ⅹ
*情報探索指導−−−−…… *専門課程進学者…‥・………= *新入生のための のためのオリエ オリエンテーション ンテーション
*テーマ別利用説明会・・……−…・−…………・…・・… ・…・・……−・…−−…・…−…==…−−・…・=……・−・
*館内ツァー
′(*レファレンス・サービス) 人による
情報操供 せ
図1内容および形態による利用者教育の分類
図2 金沢大学附属図書館中央館における利用者教育の年間スケジュール
附属図書館では,これらのサービスを簡単な形で はあるがすべて用意している。
3.事例紹介
前章で行った分類に従って,金沢大学附属図書 館中央館で行っている利用者教育の概要を説明す
る。
金沢大学は,8学部からなる総合大学で,学生・
大学院生約8500名,教職員約2300名が所属して いる。現在,大学は総合移転中なので,キャンパ スは角問キャンパス(文学部,法学軌経済学部),
丸の内キャンパス(本部,教育学瓢 理学部,
教養部),宝町キャンパス(医学弧薬学部),小 立野キャンパス(工学部)の4つに分散している。
将来的には,丸の内キャンバスにある学部はすべ て角間キャンパスに移転する予定である。中央館 は,角間キャンパスにあり,それ以外のキャンパ スには分館がある。中央館のサービス対象は,文 学部,法学部,経済学部の学生・大学院生と教職 員が中心となるため,利用者教育の内容も,人文 社会科学が中心である。
金沢大学附属図書館では,図2のような年間ス
金沢大学附属図書館中央館における利用者教育
② 館内ツァー(10分)
③ OPACの使い方の説明(10分)
3.1.2 専門課程進学者のためのオリエンテー
ション
春に行う新入生のためのオリエンテーションと は別に,10月の専門課程進学時にもオリエンテー ションを行ってきた。新入生オリエンテーション は,まだ自分の専攻する科目もはっきり決まって いない学生に対して,図書館を利用するための基 本的な情報を提供するオリエンテーションだった が,このオリエンテーションは,学生生活にも慣 れ専門課程で勉強を始める学生を対象とする図書 館ガイダンスである。1990年度の日程と参加人 数は,表3のとおりである。入学時には必要性を 感じなかった情報も,この時点になる阜必要にな
る可能性もあり,同様のプログラムを行った。学 内の資料検索トウールであるOPACの使い方の 実習を含んでいる点が異なる点である。新入生の ためのオリエンテーションの時は,人数が多いた め,OPACについては場所の説明しかできなかっ たが,専門課程進学者のためのオリエンテーショ
ンではある程度の実習を行うことができた。
① 中央館利用案内ビデオの上映(20分)
② 館内ツァー(20分)
③ OPACの使い方の実習(20分)
3.2 情報探索指導
情報探索指導として,専門課程の論文作成予定 者を対象に「資料の探し方ガイド」を行ってきた。
オリエンテーションより1つ進んだレベルの利用 者数育をイメージしている。内容は次のとおりで
ある。
① 資料の種類別(学内,学外/雑誌,図書)の 文献探索法の説明(15分)
② 論文の作成の流れと図書館のできるバックアッ プについての説明(15分)
ケジュールで利用者数育を行っている。日常業務 と非日常業務を組み合わせ,利用者がいつでも利 用者教育を受けられるようにしている。
以下これらの活動の実施例を紹介する。
オリエンテーション,情報探索指導およびOP AC講習会についてはいちばん最近に行った事例 を紹介する。
3.1 オリエンテーション
金沢大学で行っているものは次の2つである。
3.1一 手 新入生のためのオリエンテーション 入学式当日に大学全体のオリエンテーションの 一部として館長が簡単な説明をする「オリエンテー
ション」とは別に図書館内で独自のオリエンテー ションを行ってきた。1991年度の日程と参加人 数は表2のとおりである。内容は,図書館を利用 するために必要な基本的な情報の提供と館内の紹 介が主である。資料として図書館利用案内1泊1 年版と金沢大学図書館報「こだま」を配布した。
また,このオリエンテーションのために図書館利 用案内ビデオを作成し,上映した。ビデオ作成は,
図書館員が行った。オリエンテーションのプログ ラムは次のとおりである。参加が必須のオリエン テーションではなかったが,かなりの人数が集まっ た。
■角問キャンパス
① 中央館利用案内ビデオの上映(20分)
② 利用券の発行方法などについての補足説明
(10分)
③ 館内ツァー(30分)
■丸の内キャンパス
① 図書館利用案内1991年版に基づく説明
(10分)
蓑2 新入生のためのオリエンテーションの日程 と参加人数(1991年度)
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開催場所 日 時 参加人数 角間キャンパス 4/1111:00〜12:00 51人
13:00〜14:00 27人 丸の内キャンパス 4/15 12:30〜13:00 9人
15:00′・・■15:30 5人
4/15 12:30〜13:00 10人 15:00〜15:30 10人
表3 専門課程進学者のためのオリエンテーショ ンの日程と参加人数(1990年度)
日 時 参加人数
第1回目
10/1611:00〜12:00 19人
第2回目 13:00〜14:00 9人 合 計
合 計 112人
匿隊艶藍
表4 資料探し方ガイドの日程と参加人数
(1991年度)
蓑5 0PAC講習会の日程と参加人数
(1991年度)
日 時 参加人数 開催場所 日 時 参加人数
第1回目 6/27 15:00〜16:00 25人 第2【司冒 6/28 15:00〜16:00 30人
工学部 5/14 13:30〜16:00 2人 文法経済学部 5/2113:30〜16:00 17人 薬学部 5/22 13:30〜16:00 6人 理学部 5/24 13:00〜16:00 17人
合 計 55人
合 計
42人③ CD−ROM(]−BISC,SSICD−ROM版など)
とOPACの検索実習(30分)
日程と参加人数は表4のとおりである。文学部 の一部の教官をとおして参加者を募ったところ,
予想を上回る人数が集まった。同一研究室単位で 利用者教育を行う方が,受講側にとっても指導側 にとっても都合が良いので,今後は,研究室単位 で参加者を募り,授業やゼミにより密着した形で の利用者教育を行っていく予定である。内容や日 程についても教官と相談して決めることになるの で,従来行ってきたものとは違う形態になること が予想される。
3.3 講習会
図書館内での利用者教育とは別に,OPACの 利用講習会を開催してきた。金沢大学のOPAC のデータベースは,学内の共同利用施設である総 合情報処理センターにあるので,その利用資格の ある人なら研究室からでも図書館資料の検索を行
うこ.とができる。そういう人たちも対象としてセ ンターと共催で講習会を行ってきた。図書館内で 行う実習と異なり.学部の情報処理実曹室を使っ て行うため,1人1台ずっ端末を専有し,かなり 内容の濃い実習をすることができた。講習会の講 師およびその補助者はすべて図書暗員が当た?た。
日程と参加人数は表5のとおりである。
3.4 利用案内説明会と館内ツァー
(1)経緯と内容
1989年12月から毎週特定の日に利用案内説明 会を行ってきた。
1989年10月の新図書館移転後に開始した新し いサービスや新しい施設の利用方法を紹介するの が当初の目的だった。方法は,毎週金曜日の12:
30からと15:00からの2回,職員が希望者に対 し図書館内を案内してまわる「館内ツァー」とい う形態をとった。
1990年10月からは,曜日を火曜日に変え,2 回行っていた館内ツァーのうちの1回をテーマ別 図書館利用説明会に変更した。移転して1年たち,
「新しい図書館」を見てまわるという幾分あいま いな館内ツアーの意義が薄れてきたからである。
従来の館内ツアーでも図書館内の特にどの部分に ついて知りたいか,ということをあらかじめ尋ね てから案内を行っていたが,それをもっと体系的 に行うことにした。説明内容のメニューを用意し
(図3),あらかじめ掲示しておくことで,利用者 にとっても説明会を準備する側にとっても便利な ようにした。
内容は,以下のものが月単位で繰り返される。
第1週:OPACの利用方法
第2週:CD−ROMの利用方法(CD−ROM全 般についてではなく,J−BISC,ERICといっ た特定のCD−ROMの利用方法)
第3週:オンライン情報検索の紹介(オンライ
ン情報検索全般についてではなく,特定のデー
タベースについての紹介)
第4週‥参考図書やカード目録の使い方,など
コンピュータを使わない資料探索法の説明
(2)実績