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コンクリート下水道管の老朽化に関する調査および分析

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Academic year: 2022

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(1)Ⅶ-19. 第37回土木学会関東支部技術研究発表会. コンクリート下水道管の老朽化に関する調査および分析 日本大学 学生会員 ○亀田 瞬 日本大学. 正会員 保坂. 成司. 東京都下水道局. 熊谷. 輝雄. 東京都下水道局. 中島. 一郎. 1.はじめに 東京都における下水道事業は明治時代から始まり、都区部では平成 7 年に 100%概成した。しかし、 都区部における下水道は高度経済成長期である昭和 30 年頃から急速に整備が行われたことから、今後数 年の間に法定耐用年数である 50 年に達する下水道管が急増することとなる。 一方で近年、十数年で機能しなくなる早期老朽化が問題となっている。この早期老朽化の原因は主に コンクリートの微生物腐食であることがわかっている。 これら老朽化した下水道管は最悪の場合、崩壊しそれに伴う道路陥没事故を引き起こす。東京都にお いても下水道管の老朽化に関係する道路陥没事故が年間約 1,400 も件も報告されている。このため、東 京都では目視による調査や管内調査ロボットを用いた調査を行い更生・再構築が必要な下水道管の選定 を行っているが、都区部だけで 15,800km 以上に及ぶ下水道管に対し全数調査を行うことは困難を極める。 以上のことから管路内調査工のデータや下水道台帳などから陥没や腐食が発生しやすい箇所の傾向が 明らかとなれば、効率的な調査や再構築も可能になると考えられる。よって本研究は、東京都下水道局 が行っている下水道管の管路内調査工のデータ(管路内調査報告書および調査ビデオ)と下水道台帳の データの再検証および現地調査を行い、得られたデータから下水道管の老朽化と陥没との関連性につい て分析を行い、今後の維持管理に役立てようとするものである。 2.調査方法 本研究の調査地域は東京都練馬区豊玉中一・三・四丁目付近、豊玉北三丁目付近および板橋区小茂根 一丁目付近、桜川二・三丁目付近とした。この調査地域は供用年数が 30 年~40 年のコンクリート管が 多く東京都の中でも住宅が密集している地域であり、老朽化に対する調査に適した地域である。 本研究における調査方法は次に示す手順である。 ①. 事前調査 下水道台帳および東京都下水道局が行った管路内調査工の管路内調査報告書を用いて管種・管径・勾. 配・路線延長・土被り・供用年数の調査を行う。 ②. ビデオ調査 管路内調査工の管路内調査ビデオを用いて、腐食やクラック、破損といった下水道管路内部の異常の. 程度および異常発生位置の調査を行う。異常の程度の判定は日本下水道協会が定めたものを使用した。 ここでのビデオ調査は、管路内調査工を請負った業者により異常の程度の判定が異なることから、統一 的な視点により異常の程度を判定すべく調査データの検証を行うものである。なお腐食に関しては管路 内調査工で腐食なしと判定されても、表面が腐食していると思われる状態の管が多く存在していたため これを「腐食ランク D」として調査を行った。本調査で用いた判定基準を次の表-1 に示す。 キーワード 道路陥没 コンクリート下水道管 腐食 クラック 破損 連絡先 〒275-8575 千葉県習志野市泉町 1-2-1 日本大学生産工学部 TEL047-474-2444.

(2) Ⅶ-19. 第37回土木学会関東支部技術研究発表会. ③. 現地調査 事前調査とビデオ調査の結果を用いて、453 路線を対象に現地において雨水管および汚水管の接続本数、. 汚水管の場合建物の種類、周辺環境の調査を行った。同時に道路陥没に影響を与えると考えられる交通 量の調査も行った。 3.分析結果 道路陥没を起こす主な原因は下水道におけるクラックや破損などの外的要因と腐食などの内的要因に 分けられる。外的要因は設計値以上の外圧を受けることでクラックや破損が生じ、内的要因は管内で腐 食が発生し耐久性が失われることから、この二つの要因について分析を行った。 3-1 クラックと破損の発生割合 外圧による管の崩壊により道路陥没が生ずる場合、前兆としてクラックや破損などの異常が発生する。 このことから道路陥没に直接起因するクラックと破損における割合と頻度について分析を行った。クラ ックと破損の発生路線数とその割合、調査総延長および取付管総数に対する異常の発生頻度を表したも のが表-2、表-3 である。 表-2 よりクラックや破損は全体の約 50%と半数近くの下水道管で何らかの異常を来しており、表-3 の異常箇所の発生頻度から東京区部で管轄する下水道総延長約 15,800kmにおける異常発生数を推測す ると、潜在的な数も含めクラックで約 327,000 箇所、破損で約 537,000 箇所と膨大な数となる。 3-2 土被りと交通量による異常分布の分析 クラックや破損に直接起因すると考えられる外圧の増加、すなわち土被りと交通量を基準に異常項目 の分布について分析を行うことにした。なおこの分析を行うに当たり目視調査のためビデオ調査が行わ れずビデオがない路線や管路内の障害物のため調査不能であった路線を除外した 409 路線を調査対象と した。分析は異常項目がどの様に分布しているかグラフ化して行った。この分析結果を図-1~4 に示す。 図-1~4 の左図のヒストグラムは横軸に土被りおよび交通量、縦軸に頻度を異常度合い毎に積み重ねた ものであり、右図のヒストグラムは左図の各クラスを 100%で示したものである。 a) 土被りに関する分析結果 図-1 の土被りとクラックのヒストグラムでは 1.75m 以上のサンプル数は少ないものの、クラック A ランクと B ランクについて見ると、土被りが大きくなると共に発生数が減少し、特に A ランクが減少傾 向を示した。図-2 の土被りと破損のヒストグラムでは土被りの違いによる変化は見られなかった。 これらのグラフより、クラックは土. 表-1 ビデオ調査における判定基準. 被りが大きくなるにつれ異常ランク が軽くなる傾向が見られたが、破損. ランク 項目 腐食. に関しては特に傾向は見られなかっ た。これはクラックが管円周方向の クラックであり、管のたるみなど基 礎地盤の影響で発生することに対し、 破損は管軸方向のクラックであり、 過大な上載荷重や埋戻し時の転圧 不足などの施工不良が原因となり 発生するためであると考えられる。. 破損 クラック. ヒューム管 陶管 ヒューム管 陶管. A. B. C. D. 鉄筋露出. 骨材露出. 表面荒れている. 表面が腐食している と思われる. 5mm以上 管の1/2以上 5mm以上 円周2/3以上. 2mm以上 管の1/2未満 2mm以上 円周2/3未満. 2mm未満 2mm未満. 表-2 全路線に対する. 表-3 調査総延長および. 異常発生路線数. 総本数に対する異常発生頻度. 発生路線数 (路線) クラック 196 破損 229 全路線数. 割合 (%) 43.3 50.6 453路線. 総数 異常箇所 (箇所) クラック 253 1箇所/48.36m 破損 416 1箇所/29.41m 本管路線延長 12235.26m 取付管総本数 3115本.

(3) Ⅶ-19. 第37回土木学会関東支部技術研究発表会. 80%. 80. 60%. 割合. 100%. 100. クラックB. ~3.75. ~3.50. ~3.25. ~3.00. ~2.75. ~2.50. ~2.25. ~2.00. 図-1 土被りとクラックのヒストグラム. 300. 100%. 250. 80%. 破損B. ~3.75. ~3.50. ~3.25. ~3.00. ~2.75. ~2.50. ~2.25. ~2.00. ~1.75. ~1.50. ~1.25. ~1.00. 破損A 0. ~3.75. ~3.50. ~3.25. ~3.00. ~2.75. ~2.50. ~2.25. ~2.00. ~1.75. ~1.50. ~1.25. ~1.00. ~0.5. 0% ~0.75. 0. 0. 20% ~0.25. 50. 平均土被り 平均土被り(m). 破損C. 40%. ~0.5. 100. 60%. ~0.75. 150. ~0.25. 割合. 200. 平均土被り 平均土被り(m). 図-2 土被りと破損のヒストグラム 100%. 140 120 100 80 60 40 20 0. 割合. 80% 60%. クラック C. 40%. クラック B. 20%. クラック A. 交通量. 交通量. 2500以上. 2000~. 1500~. 1000~. 普通 500未満. 2500以上. 2000~. 1500~. 1000~. 500~. 普通 500未満. 0%. 500~. 頻度. ~1.75. 平均土被 平均土被り 土被り(m). 平均土被 平均土被り 土被り(m). 頻度. ~1.50. ~1.25. ~1.00. ~0.75. クラックA 0.00. ~3.75. ~3.50. ~3.25. ~3.00. ~2.75. ~2.50. ~2.25. ~2.00. ~1.75. ~1.50. ~1.25. ~1.00. 0% ~0.75. 0 ~0.50. 20%. 0.00. 20 ~0.25. クラックC. 40%. 40. ~0.50. 60. ~0.25. 頻度. 120. 100%. 200. 80%. 150. 60%. 破損C. 20%. 破損B. 0. 0%. 交通量. 2500以上. 2000~. 1500~. 1000~. 500~. 2500以上. 2000~. 1500~. 1000~. 500~. 破損A 普通 500未満. 割合. 40%. 50. 100. 普通 500未満. 頻度. 図-3 交通量とクラックのヒストグラム 250. 交通量. 図-4 交通量と破損のヒストグラム b) 交通量に関する分析結果 次に交通量が下水道管に与える影響の分析を行った。今回調査を行った地域は住宅地であり大型車の 通行は殆どなく、普通車が主であったことから普通車交通量を基に分析を行った。 図-3 のクラックのヒストグラムでは交通量が増加するにつれ、クラック A ランクも増加する傾向が 見られる。しかしサンプル数が少ないが、1500 台を超えると比較的ランクの程度が低くなっている様に 読み取れる。推測ではあるがこれは交通量による舗装構成の違いが影響したことも一因と考えられる。 図-4 の破損のヒストグラムでは全体的に見て交通量が増加するにつれ破損 A ランク、B ランクも増 加し、それに伴い破損 C ランクは減少する傾向が見られた。 交通量に関する分析の結果、交通量の増加と共にクラックや破損も増加するが、クラックに関しての み 1000 台以上になると減少する傾向が見られた。一要因として舗装構成の違いが影響していると推測さ れる。 3-3 腐食による道路陥没の分析 近年の調査によりコンクリート腐食は微生物が関与することがわかっている。この微生物腐食は硫黄.

(4) Ⅶ-19. 第37回土木学会関東支部技術研究発表会. 100%. 200. 80% 腐食A. 腐食B. 100. 腐食C. 50. 腐食D. 割合. 頻度. 150. 腐食A. 60%. 腐食B. 40%. 腐食C 20%. 腐食D. 0. 0% ~300. ~400 ~500 ~600 ~700 コンクリート下水道管 コンクリート下水道管の 下水道管の管径 (mm). ~800. ~300. ~400 ~500 ~600 ~700 コンクリート下水道管 コンクリート下水道管の 下水道管の管径 (mm). ~800. 図‐5 管径と腐食のヒストグラム 100%. 140 120. 80% 腐食A. 80. 腐食B. 60 40. 腐食C. 20. 腐食D. 割合. 頻度. 100. 腐食A. 60%. 腐食B. 40%. 腐食C 20%. 腐食D 0%. 0. ~2.5 ~5.0 ~7.5 ~10.0~12.5 ~15.0~17.5~20.0 20.0~ コンクリート水道管 コンクリート水道管の 水道管の勾配( 勾配(‰). ~2.5 ~5.0 ~7.5 ~10.0 ~12.5 ~15.0 ~17.5 ~20.0 20.0~ コンクリート下水道管 コンクリート下水道管の 下水道管の勾配( 勾配(‰). 図‐6 勾配と腐食のヒストグラム 100%. 100. 80% 腐食A. 60. 腐食B. 40. 腐食C. 20. 割合. 頻度. 80. 腐食A. 60%. 腐食B. 40%. 腐食C 20%. 腐食D. 腐食D 0. 0% ~20. ~25 ~30 ~35 ~40 ~45 ~50 ~55 コンクリート下水道管 コンクリート下水道管の 下水道管の路線延長(m) 路線延長(m). 55~. ~20 ~25 ~30 ~35 ~40 ~45 ~50 ~55 55~ コンクリート下水道管 コンクリート下水道管の 下水道管の路線延長(m) 路線延長(m). 図‐7 路線延長と腐食のヒストグラム 酸化細菌によるものであり管内の嫌気化による硫化水素濃度の上昇や下水道管渠の構造に関係する下水 の撹拌などによって腐食の度合いが変化する。よって管径・勾配・延長と腐食の関係について分析を行 った。また、腐食はコンクリート管にのみ発生することから、コンクリート管の 309 路線で分析を行っ た。分析結果を図-5~7 に示す。 図-5 の管径のグラフでは、管径 500 ㎜以下においてのみ腐食 B 以上が発生していることがわかる。 一方 500 ㎜以上ではサンプル数は少ないもののすべてが腐食 C 以下であった。図-6 の勾配のグラフで は、サンプル数に偏りがあるが、勾配が急になるほど腐食ランク B が増加する傾向が見られた。図-7 の路線延長のグラフでは、20.0m以上 40.0m以下の範囲で腐食ランク B の割合が多くなり、腐食ランク D の割合が小さくなる傾向が見られた。 逆に 20.0m以下や 40.0m以上では腐食ランク B の割合が減少し、 腐食ランク D の割合が増加する傾向が見られた。 4.まとめ クラックや破損については「交通量が多く土被りが少ない管」 、腐食については「管径が 500mm以下 の小口径の管」 「勾配が急である管」 「路線延長が 20~40mの管」において危険度が高くなる傾向が見ら れた。すなわち外的要因に関しては管に外圧が影響しやすい条件であること、内的要因に関しては枝線 で下水が撹拌される箇所が多く腐食が進行しやすいことが管の老朽化を進行させると考えられる。 謝辞 本研究にあたり、管路内調査工のデータを東京都下水道局西部第二管理事務所に提供していただきま した。ここに謝意を表します。.

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