地下ダム対応型岩盤取水システムの取水性能の解析検討
清水建設 フェロー会員○百田 博宣,清水建設 正会員 西 琢郎 1.はじめに
沖縄地域を中心に,地下ダムが多数建設されており,水資源の有効活用に大きく貢献している.これらの 地下ダムの取水施設としては,当初,群井方式(管井)が用いられてきたが,近年,地すべり地帯で利用さ れてきた「集水井」が採用されつつある.そこで本研究では,モデル地盤を作成し,集水井の取水性能を解 析すると共に,著者らが開発してきた「岩盤取水システム1)」の取水性能を比較し,地下ダムの取水施設と しての岩盤取水システムの適用性を論じる.
2.解析モデル・解析条件
水収支域が幅900m,長さ3,000mで,基盤となる島尻層群(茶色)とその上部を琉球石灰岩(黄色)が覆う2 層構造の水理地質構造モデルを,図-1に示す.同図には,地表面標高と基盤上面標高,および境界条件を示 すと共に,集水井と岩盤取水システムおよび止水壁(厚さ50cm,天端EL+30m)の配置を示している.図のよう に,地表面は有効降雨を作用させる浸出境界,下流端の海域はEL±0mの水位指定境界,他の側面・底面境界 は不透水境界とし,取水施設の集水孔は立坑水位を作用させる.また,水文条件と透水係数を表-1に纏めて いるが,水文条件は沖縄地域の平均的な条件であり,1×10-3~1×10-1cm/s 程度と考えられる琉球石灰岩に ついては,比較的低い値を設定した2).
解析手法は,飽和・不飽和3次元FEM解析の定常計算であり,以下の 手順で解析する.
① 現況解析:取水施設建設前の解析を行い,水収支状況を把握.
② 取水解析:集水井,岩盤取水システムのそれぞれを設置した取水 解析を実施.立坑水位はEL+30,+20,+7,+5mとする.
キーワード 地下ダム 取水施設 集水井 岩盤取水システム
連絡先 〒135-8530 東京都江東区越中島3-4-17 清水建設㈱技術研究所 安全安心技術C TEL 03-3820-8364 表-1 水文・水理定数
設定値 降雨量 P (mm/年) 2,000.0 水文条件 蒸発散量 E (mm/年) 1,000.0 有効降雨量 Pe (mm/年) 1,000.0 (mm/日) 2.74
透水係数 琉球石灰岩 5.0E-03
K (cm/s) 島尻層群 1.0E-06
止水壁(厚さ50cm) 1.0E-06 項目・単位
3,000m 2,400m
300m 300m 900m
地表面:EL+90m 基盤面:EL+40m
鉛直面:不透水 底面(不透
水):EL-20m 地表面:有
効雨量&浸出境界 地表面:有
効雨量&浸出境界
鉛直面:海 水面
(EL±
0m) 地表面:EL+80m
基盤面:EL+30m
地表面:EL+70m 基盤面:EL+20m
地表面:EL+60m 基盤面:EL+20m
EL+50m
EL+40m EL+30m
EL+20m 基盤面:EL±0m
止水壁:EL+30m 集水井
No.1 No.2
No.3
地表面:EL+90m 基盤面:EL+40m
地表面:EL+80m 基盤面:EL+30m
地表面:EL+70m 基盤面:EL+20m
地表面:EL+60m 基盤面:EL+20m
岩盤取水No.1 EL+50m
止水壁:EL+30m EL+40m
EL+30m EL+20m
鉛直面:海 水面
(EL±
0m) 地表面:有効雨量&浸出境界
基盤面:EL±0m 900m
鉛直面:不透水
鉛直面:不透水
底面(不透
水):EL-20m
鉛直面:不透水 2,300m
400m 300m 3,000m
3,000m 2,400m
300m 300m 900m
地表面:EL+90m 基盤面:EL+40m
鉛直面:不透水 底面(不透
水):EL-20m 地表面:有
効雨量&浸出境界 地表面:有
効雨量&浸出境界
鉛直面:海 水面
(EL±
0m) 地表面:EL+80m
基盤面:EL+30m
地表面:EL+70m 基盤面:EL+20m
地表面:EL+60m 基盤面:EL+20m
EL+50m
EL+40m EL+30m
EL+20m 基盤面:EL±0m
止水壁:EL+30m 集水井
No.1 No.2
No.3
地表面:EL+90m 基盤面:EL+40m
地表面:EL+80m 基盤面:EL+30m
地表面:EL+70m 基盤面:EL+20m
地表面:EL+60m 基盤面:EL+20m
岩盤取水No.1 EL+50m
止水壁:EL+30m EL+40m
EL+30m EL+20m
鉛直面:海 水面
(EL±
0m) 地表面:有効雨量&浸出境界
基盤面:EL±0m 900m
鉛直面:不透水
鉛直面:不透水
底面(不透
水):EL-20m
鉛直面:不透水 2,300m
400m 300m 3,000m
集水孔 150m×5孔
集水孔 90m×2孔
集水孔 70m×1孔 集水孔:EL+5.0m
岩盤取水配置図 図-1 モデル地盤と取水設備の概念図
下段集水孔:
50m×10孔,EL+5.0m 集水井配置図 上段集水孔:
50m×10孔,EL+7.0m
土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)
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CS10‑002
3.解析結果および考察
現況解析結果として,止水壁有り・無しの2つのケースについて,ダム幅中央450m位置のダム軸法線に沿っ た地下水位算出結果を図-2に示す.両ケースとも2箇所に地表流出箇所があり,止水壁有りは無しに比して,
止水壁上流部の水位が若干高いが,止水壁の有無の影響は比較的小さい.しかし,表-2の水収支算出結果で は,止水壁有りの表面流出率R は無しの場合の1.5倍になっており,止水壁の影響を把握することができる.
次に,取水解析結果として,立坑水位Hと取水量Qの関係を図- 3に示す.Hを低くすると,Qが増大し,止水壁より上流部に作用 する有効雨量をほぼ取水できることがわかる.また,集水井の 集水孔全長は3,000m,岩盤取水システムの集水孔全長は1,000m と1/3であるが,岩盤取水システムは集水井3基と同等の取水性 能をもつことが把握できる.いま,H=30mの条件に着目し,集水 孔の設置深度EL+5m平面における全水頭分布を図-4に例示する.
図のように,集水井は集水孔外周より内側は一様な水頭低下域 で,外周に地下水が流入する水頭分布であるが,岩盤取水シス テムでは各集水孔に地下水が流入する水頭分布である.このた め,集水井に比べて,岩盤取水システムは集水孔の単位長さ当 たりの取水量が大きく,取水性能が向上したものと考えられる.
4.おわりに
本研究を通じて,地下ダムの取水施設として,岩盤取水シス テムの取水性能が極めて高いことが認められた.また,同シス テムは集水井に比べて基数が少なく,集水孔全長も短くなるた め,初期コストおよび維持管理上も有利と推察できる.
今後,実地における地下ダム対応型岩盤取水システムの適用 性を検討していくつもりである.
参考文献
1)百田他:地下空間シンポ,第11巻,pp.99-108,2006 ,2)石田他:農工研技報203,pp.111-119,2005 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000
0 10 20 30
立坑水位 H(m)
取水量 Q(m3/日)
集水井(上下段)
集水井(上段)
集水井(下段)
岩盤取水 有効雨量 止水壁上流
止水壁なし 止水壁あり 止水壁あり 降雨量P×面積A (m3/日) 14,796.0 14,796.0 13,316.4 有効降雨量Pe×面積A (m3/日) 7,398.0 7,398.0 6,658.2 表面流出量 R(m3/日) 704.6 1,059.3 1,059.3 表面流出率 R/(P×A) (%) 4.8 7.2 8.0 流域の範囲 流域全体
水収支項目
表-2 現況解析による水収支算出結果
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
-2700 -2400 -2100 -1800 -1500 -1200 -900 -600 -300 0 300 距離 S(m)
地表(EL m),全水頭 H(EL m)
地表(EL m) H (止水壁なし) H (止水壁あり)
地表流出箇所 止水壁
図-2 現況解析によるダム軸法線方向の地下水位算出結果
(上流) (下流)
図-3 取水解析による取水量算出結果
39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 全水頭
(EL m)
集水井(3基)
岩盤取水(1基)
900m
700m 300m
海域
止水壁EL+30m 止水壁EL+30m 海域
39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 全水頭
(EL m)
集水井(3基)
岩盤取水(1基)
900m
700m 300m
海域
止水壁EL+30m 止水壁EL+30m 海域
図-4取水解析によるEL+5m平面の取水施 設近傍の全水頭分布(立坑水位H=30m) 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)