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第 3 章 イ オ ン ビ ー ム ア シ ス ト 蒸 着 (IBAD)法 に よ る 金 属 窒 化 物 膜 の 作 製
3.1 序 論
イ オ ン ビ ー ム ア シ ス ト 蒸 着(IBAD、Ion Beam Assisted Deposition)法 は 、 真 空 蒸 着 と イ オ ン 注 入 を 併 用 し た 方 法 で あ り 、 イ オ ン ビ ー ム が 持 つ エ ネ ル ギ ー に よ り 、 基 板 内 へ の 注 入 、 あ る い は 基 板 に 蒸 着 し た 金 属 の リ コ イ ル に よ り 、 薄 膜 / 基 板 界 面 で の 薄 膜 構 成 原 子 と 基 板 原 子 と の ミ キ シ ン グ を 行 う こ と が で き る た め 、 優 れ た 密 着 性 を 付 与 す る こ と が で き る 。 ま た 、 蒸 着 す る 金 属 の 種 類 と イ オ ン 種 の 組 み 合 わ せ 、 お よ び 両 者 の 相 対 量 を 変 化 さ せ る こ と に よ り 様 々 な 金 属 あ る い は 化 合 物 薄 膜 を 作 製 す る こ と が で き る 。 さ ら に イ オ ン の エ ネ ル ギ ー や 照 射 量 を 変 化 さ れ る こ と に よ り 、 膜 質 あ る い は 結 晶 配 向 性 を 制 御 す る こ と が で き る 。ま た IBAD 法 は 非 熱 平 衡 過 程 に よ り 低 温 で 化 合 物 薄 膜 を 作 製 で き る の も 特 徴 で あ る 。 数 百 eV か ら 2 keV 程 度 ま で の 低 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 源 と 2 keV 以 上 の 高 エ ネ ル ギ ー イ オ ン 源 の 両 方 が IBAD法 に 用 い ら れ 、光 学 薄 膜 、電 子 工 学 へ の 応 用 、 耐 摩 擦 性 付 与 、 耐 食 性 付 与 の た め の 薄 膜 作 製 や 化 合 物 の 合 成 等 多 く の 研 究 が 行 わ れ て き て い る[1]。IBADの 原 理 を 図 3. 1に 示 す 。電 子 ビ ー ム 加 熱 に よ り 金 属 を 蒸 発 さ せ 、 基 板 上 に こ の 蒸 発 金 属 薄 膜 を 形 成 し な が ら 、 所 定 の エ ネ ル ギ ー に 設 定 し た イ オ ン ビ ー ム を 基 板 上 に 照 射 す る 。 こ の と き 用 い る イ オ ン 種 に よ り 窒 化 物 、 炭 化 物 な ど の 化 合 物 薄 膜 を 作 製 す る こ と が で き る 。 ま た 、 不 活 性 ガ ス イ オ ン を 用 い る こ と に よ り 、 イ オ ン の も つ エ ネ ル ギ ー の み を 補 助 的 に 用 い た 金 属 薄 膜 作 製 も 行 う こ と が で き る 。
本 研 究 で は 、 イ オ ン 注 入 法 お よ び IBAD法 を 用 い て 、 金 属 材 料 に 対 し 耐 熱 性 、 耐 摩 耗 性 、 環 境 遮 断 性 を 付 与 す る こ と を 目 的 と し 、IV、V、VI 族 の 遷 移 金 属 で あ る Ti、
Cr、Ta、Nb お よ び Si の 窒 化 物 薄 膜 を 作 製 し 、 作 製 条 件 が 薄 膜 の 構 造 、 組 成 お よ び 環 境 遮 断 性 な ど の 薄 膜 の 特 性 に 及 ぼ す 効 果 に つ い て 検 討 し た 。 特 に 、 高 い 環 境 遮 断 性 は 、 高 温 で の 硫 酸 ミ ス ト に よ る 腐 食 が 問 題 と な っ て い る 重 油 を 用 い た 船 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン の 燃 料 噴 射 ノ ズ ル へ の 保 護 コ ー テ ィ ン グ と し て 重 要 で あ る 。
3.2 実 験 装 置 お よ び 方 法
3.2.1 IBAD 法 に よ る 薄 膜 作 製 装 置 お よ び 作 製 方 法
本 研 究 で 用 い た IBAD装 置 ( 日 新 電 機 ㈱ 製 、IVD20/30 型 ) の 概 略 図 を 図 3. 2に 示 し て い る 。 イ オ ン 源 に は 、 ビ ー ム 直 径 が 基 板 上 で 約 50 mmφの バ ケ ッ ト 型 イ オ ン 源 を 用 い て い る 。 イ オ ン 源 の 加 速 電 圧 は 2~20 kV、 電 流 は 最 大 30 mAで あ る 。 基 板 ホ ル ダ ー は 成 膜 中 の 基 板 の 加 熱 を 防 止 す る た め に 水 冷 さ れ て い る 。 ま た 基 板 に イ オ ン ビ ー ム を 均 一 に 照 射 す る た め に 10 rpm で 基 板 ホ ル ダ ー が 回 転 で き る 。 さ ら に 基 板 に 対 す る イ オ ン ビ ー ム の 照 射 角 度 に よ っ て 生 成 す る 薄 膜 の 配 向 性 、 結 晶 構 造 等 が 変 化 す る の で 、イ オ ン ビ ー ム に 対 し て 90~0°ま で 角 度 を 変 化 で き る よ う に し て い る 。イ オ ン 種 は ア ル ゴ ン(Ar)と 窒 素(N2)の 2 系 列 で 、 イ オ ン の 質 量 分 離 は 行 っ て い な い 。 蒸 着 装 置 と し て は 10 kWの 電 子 ビ ー ム 蒸 発 源 を 用 い て い る 。蒸 着 速 度 お よ び 膜 厚 の モ ニ タ に は 水 晶 振 動 子 膜 厚 計 を 用 い た 。 真 空 排 気 系 と し て タ ー ボ 分 子 ポ ン プ を 使 用 し て お り 、 到 達 真 空 度 は 10-5 Pa の オ ー ダ ー で あ る 。 バ ケ ッ ト 型 イ オ ン 源 は 、 プ ラ ズ マ を 発 生 さ せ る
基板
薄膜
(セラミック等)
金属原子 イオンビーム
混合層
図3. 1. イオンビームアシスト蒸着法の原理
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ア ー ク チ ャ ン バ ー と 発 生 し た プ ラ ズ マ 中 の イ オ ン に 運 動 エ ネ ル ギ ー を 与 え る イ オ ン 引 き 出 し 部 よ り 構 成 さ れ て い る 。 ガ ス を ア ー ク チ ャ ン バ ー 内 に 導 入 後 、 フ ィ ラ メ ン ト よ り 放 出 さ れ る 熱 電 子 に よ り ガ ス を 励 起 す る 。 そ の 後 ア ー ク チ ャ ン バ ー の 側 壁 と フ ィ ラ メ ン ト の 間 で ア ー ク を 発 生 さ せ 、 プ ラ ズ マ を 生 成 す る 。 プ ラ ズ マ 密 度 は ガ ス 圧 や ア ー ク パ ワ ー に よ っ て 制 御 さ れ る 。 ま た ア ー ク チ ャ ン バ ー の 周 囲 に は 永 久 磁 石 に よ り 内 壁 に 沿 っ て 磁 場 ( カ ス プ 磁 場 ) が 作 ら れ て お り 、 生 成 し た プ ラ ズ マ の 閉 じ 込 め を 行 い 、 ア ー ク チ ャ ン バ ー 内 の プ ラ ズ マ 密 度 の 均 一 化 を 図 っ て い る 。 こ の よ う に し て 作 ら れ た プ ラ ズ マ は 、 多 孔 式 の 電 極 に よ り イ オ ン ビ ー ム と し て 引 き 出 さ れ る 。 引 き 出 し 電 圧 は 電 極 に 加 え ら れ る 電 位 に よ り 決 め ら れ る 。 こ の 際 電 極 の 構 造 、 例 え ば 孔 の 配 置 や 形 状 を 最 適 化 す る こ と で 、 よ り 均 一 性 の 良 い イ オ ン ビ ー ム を 引 き 出 す よ う に な っ て い る 。
to Pump Thickness
Monitor
Ion Source (2~20 kV)
Substrate
EB
Evaporator
図3. 2. イオンビームアシスト蒸着装置の概略図
3.2.2 窒 化 チ タ ン 薄 膜 作 製
基 板 に は 、1 μm の ダ イ ヤ モ ン ド ペ ー ス ト に よ る 鏡 面 研 磨 仕 上 げ し た オ ー ス テ ナ イ ト 系 ス テ ン レ ス 鋼 SUS316L を 用 い た 。 基 板 を ア セ ト ン に よ り 超 音 波 洗 浄 し た 後 、 基 板 ホ ル ダ ー に セ ッ ト し 、 基 板 ホ ル ダ ー を 水 冷 し た 。 基 板 に 対 し 、 イ オ ン ビ ー ム を 垂 直 に 照 射 し 、蒸 着 原 子 を 45°の 方 向 か ら 蒸 着 さ せ た 。膜 組 成 を 均 一 に す る た め に 10 rpm で 基 板 ホ ル ダ ー を 回 転 さ せ た 。ま ず ア ル ゴ ン ガ ス を 所 定 の 圧 力 ま で イ オ ン 源 に 導 入 し 、 2 keV の ア ル ゴ ン イ オ ン を 1.5×10-6 個 cm-2照 射 し 、 試 料 表 面 の ス パ ッ タ ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 そ の 後 、 チ タ ン の 電 子 ビ ー ム 蒸 着 と 同 時 に 窒 素 イ オ ン を 照 射 し な が ら 窒 化 チ タ ン を 成 膜 し た 。 成 膜 時 の 真 空 度 は 約 2.7×10-3 Pa で あ る 。 窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 は 2 kV、 基 板 表 面 で の 電 流 密 度 は 120 μA cm-2と 一 定 で 行 っ た 。 チ タ ン の 蒸 着 速 度 を 膜 厚 計 で 測 定 し 、0.15~3.1 nm s-1の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。 こ の 蒸 着 速 度 は 、 基 板 に 到 達 す る チ タ ン 原 子 と 窒 素 イ オ ン の 割 合 で あ る 輸 送 比(Ti/N)0.5~10 に 相 当 す る 。 膜 厚 は い ず れ も 約 350 nm で あ る 。
3.2.3 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 作 製
基 板 に は 、(100)方 位 の シ リ コ ン(Si)ウ エ ハ お よ び ク ロ ム モ リ ブ デ ン 鋼 SCM420を 用 い た 。 ク ロ ム モ リ ブ デ ン 鋼 は エ ミ リ ー 紙 研 磨 後 、1 μm の ダ イ ヤ モ ン ド ペ ー ス ト で 鏡 面 研 磨 仕 上 げ し た 後 使 用 し た 。 基 板 を ア セ ト ン に よ る 超 音 波 洗 浄 後 、 基 板 ホ ル ダ ー に セ ッ ト し 、 基 板 ホ ル ダ ー を 水 冷 し た 。 ま た 基 板 温 度 473 K で の 成 膜 実 験 も 実 施 し た 。 基 板 に 対 し 、 イ オ ン ビ ー ム を 垂 直 に 照 射 し 、 蒸 着 原 子 を 45°の 方 向 か ら 蒸 着 し た 。 膜 組 成 を 均 一 に す る た め に 10 rpm で 基 板 ホ ル ダ ー を 回 転 さ せ た 。 ア ル ゴ ン ガ ス を 所 定 の 圧 力 ま で 導 入 し 、2 keV の ア ル ゴ ン イ オ ン を 1.5×10-6 個 cm-2照 射 し 、 試 料 表 面 の ス パ ッ タ ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 そ の 後 、 ク ロ ム の 電 子 ビ ー ム 蒸 着 と 同 時 に 窒 素 イ オ ン を 照 射 し な が ら 窒 化 ク ロ ム(CrN)を 成 膜 し た 。窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 を 2~20 kV の 範 囲 で 変 化 さ せ 、 電 流 密 度 は 120 μA cm-2の 一 定 と し た 。 ク ロ ム の 蒸 着 速 度 を 膜 厚 計 で 測 定 し 、0.06~0.6 nm s-1 の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。 こ の 条 件 は 基 板 上 に 到 達 す る ク ロ ム 原 子 と 窒 素 イ オ ン の 割 合 で あ る 輸 送 比(Cr/N)0.7~7.1 に 相 当 す る 。 膜 厚 は い ず れ も 500 nm~2 μmの 範 囲 で あ る 。 成 膜 時 の 基 板 温 度 は 室 温 お よ び 473 K で あ る 。
3.2.4 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 作 製
基 板 に は 1 μm の ダ イ ヤ モ ン ド ペ ー ス ト で 鏡 面 研 磨 仕 上 げ し た ス テ ン レ ス 鋼
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SUS316L お よ び シ リ コ ン ウ エ ハ(100)を 用 い 、 ア セ ト ン と エ タ ノ ー ル で 超 音 波 洗 浄 し た 。 ま た 塩 化 ナ ト リ ウ ム ペ レ ッ ト を 透 過 電 子 顕 微 鏡(TEM)観 察 用 基 板 と し て 用 い た 。 基 板 を 基 板 ホ ル ダ ー に 取 り 付 け 、 基 板 ホ ル ダ ー を 水 冷 し た 。 基 板 に 対 し 、 イ オ ン ビ ー ム を 垂 直 に 照 射 し 、 蒸 着 原 子 を 45°の 方 向 か ら 蒸 着 し た 。 膜 組 成 を 均 一 に す る た め に 10 rpm の 速 度 で 試 料 を 回 転 さ せ な が ら 成 膜 し た 。 ア ル ゴ ン ガ ス を 所 定 の 圧 力 ま で 導 入 し 、2 keV の ア ル ゴ ン イ オ ン を 1.5×10-6 個 cm-2照 射 し 、 試 料 表 面 の ス パ ッ タ ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 そ の 後 、 タ ン タ ル(Ta)の 電 子 ビ ー ム 蒸 着 と 同 時 に 窒 素 イ オ ン ビ ー ム を 照 射 し な が ら 窒 化 タ ン タ ル(TaN)薄 膜 を 作 製 し た 。 成 膜 時 の 真 空 度 は 約 2.7×10-3 Pa で あ る 。窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 を 2~20 kVの 範 囲 で 変 化 さ せ 、イ オ ン 電 流 密 度 は 120 μA cm-2 の 一 定 で 行 っ た 。 ま た 、 タ ン タ ル の 蒸 着 速 度 を 膜 厚 計 で 測 定 し 、0.21~
3.1 nm s-1の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。 こ の 蒸 着 速 度 は 、 基 板 に 到 達 す る タ ン タ ル 原 子 と 窒 素 イ オ ン の 割 合 で あ る 輸 送 比(Ta/N)0.7~10に 相 当 す る 。 膜 厚 は 約 350 nm で あ る 。
3.2.5 窒 化 ニ オ ブ 薄 膜 作 製
基 板 に は 1 μm の ダ イ ヤ モ ン ド ペ ー ス ト で 鏡 面 研 磨 仕 上 げ し た ス テ ン レ ス 鋼 SUS316L お よ び シ リ コ ン ウ エ ハ(100)を 用 い た 。 基 板 を ア セ ト ン と エ タ ノ ー ル で 超 音 波 洗 浄 し た 。 ま た 、 塩 化 ナ ト リ ウ ム ペ レ ッ ト を 透 過 電 子 顕 微 鏡(TEM)観 察 用 基 板 と し て 用 い た 。 基 板 を 基 板 ホ ル ダ ー に 取 り 付 け 、 基 板 ホ ル ダ ー を 水 冷 し た 。 基 板 に 対 し イ オ ン ビ ー ム を 垂 直 に 照 射 し 、 蒸 着 原 子 を 45°で 蒸 着 さ せ た 。 膜 組 成 を 均 一 に す る た め に 10 rpm の 速 度 で 試 料 を 回 転 さ せ な が ら 成 膜 し た 。 ア ル ゴ ン ガ ス を 所 定 の 圧 力 ま で 導 入 し 、2 keV の ア ル ゴ ン イ オ ン を 1.5×10-6 個 cm-2照 射 し 、 試 料 表 面 の ス パ ッ タ ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 ニ オ ブ(Nb)の 電 子 ビ ー ム 蒸 着 と 同 時 に 窒 素 イ オ ン ビ ー ム 照 射 し な が ら 窒 化 ニ オ ブ(NbN)薄 膜 を 作 製 し た 。成 膜 時 の 真 空 度 は 約 2.7×10-3 Pa で あ る 。窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 を 2~20 kV の 範 囲 で 変 化 さ せ 、 イ オ ン 電 流 密 度 は 120 μA cm-2 の 一 定 で 行 っ た 。 ニ オ ブ の 蒸 着 速 度 を 膜 厚 計 で 測 定 し 、0.32~3.2 nm s-1の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。 こ の 蒸 着 速 度 は 、 基 板 に 到 達 す る ニ オ ブ 原 子 と 窒 素 イ オ ン の 割 合 で あ る 輸 送 比(Nb/N)1.0~10に 相 当 す る 。 膜 厚 は 約 350 nmで あ る 。
3.2.6 窒 化 ケ イ 素 薄 膜 作 製
基 板 に は 、 ス テ ン レ ス 鋼 SUS316L、 シ リ コ ン ウ エ ハ(100)お よ び ア ル ミ ニ ウ ム 箔 を 用 い た 。 ス テ ン レ ス 鋼 基 板 は 1 μm の ダ イ ヤ モ ン ド ペ ー ス ト で 鏡 面 研 磨 仕 上 げ し た 。
基 板 を ア セ ト ン に よ り 超 音 波 洗 浄 後 、 基 板 ホ ル ダ ー に セ ッ ト し 、 基 板 ホ ル ダ ー を 水 冷 し た 。 基 板 に 対 し 、 イ オ ン ビ ー ム を 垂 直 に 照 射 し 、 蒸 着 原 子 を 45°の 方 向 か ら 蒸 着 し た 。 膜 組 成 を 均 一 に す る た め に 10 rpm の 速 度 で 基 板 を 回 転 さ せ た 。 ア ル ゴ ン ガ ス を 所 定 の 圧 力 ま で 導 入 し 、2 keV の ア ル ゴ ン イ オ ン を 1.5×10-6個 cm-2照 射 し 、試 料 表 面 の ス パ ッ タ ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 。 ケ イ 素(Si)の 電 子 ビ ー ム 蒸 着 と 同 時 に 窒 素 イ オ ン を 照 射 し な が ら 窒 化 ケ イ 素(SiN)薄 膜 を 作 製 し た 。 窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 は 2 kV で 、 電 流 密 度 は 120 μA cm-2の 一 定 と し た 。 ケ イ 素 の 蒸 着 速 度 を 膜 厚 計 で 測 定 し 、0.35~
3.5 nm s-1の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。 こ の 蒸 着 速 度 は 、 基 板 に 到 達 す る ケ イ 素 原 子 と 窒 素 イ オ ン の 割 合 で あ る 輸 送 比(Si/N)1.0~10 に 相 当 す る 。 膜 厚 は 約 350 nmで あ る 。
3.2.7 構 造 解 析 お よ び 特 性 評 価
作 製 し た 薄 膜 に つ い て 、走 査 型 電 子 顕 微 鏡(SEM)( 日 本 電 子 ㈱ 製 、JSM-6400F)を 用 い て 表 面 形 態 を 観 察 し た 。 ま た 、 透 過 電 子 顕 微 鏡(TEM)( 日 立 製 作 所 ㈱ 製 、S800)
を 用 い て 薄 膜 内 部 の 構 造 を 調 べ た 。
薄 膜 の 結 晶 構 造 解 析 に は X線 回 折(XRD)( ㈱ 島 津 製 作 所 製 、XD-610)お よ び 薄 膜 X 線 回 折 装 置(GXRD)( 日 本 電 子 ㈱ 製 、JX-3530) を 用 い た 。 そ れ ぞ れ の 測 定 条 件 を 表 3. 1お よ び 3. 2 に 示 す 。XRD測 定 に お い てΘ−2Θモ ー ド で 使 用 す る こ と に よ り 、 薄 膜 の 結 晶 配 向 性 を 知 る こ と が で き 、GXRDはX線 を 試 料 に 対 し 低 入 射 角 で 用 い る も の で 、 表 層 の み の 情 報 を 感 度 良 く 得 る こ と が で き る 。
表 3. 1. X線 回 折 測 定 条 件
タ ー ゲ ッ ト Cu
電 圧 30 kV
X 線 源
電 流 30 mA
DS 1 (deg)
SS 1 (deg)
ス リ ッ ト
RS 0.3 (mm)
ス キ ャ ン ス ピ ー ド 2 (deg/min) モ ノ ク ロ メ ー タ ー グ ラ フ ァ イ ト 結 晶
16 表 3. 2. 薄 膜 X線 回 折 測 定 条 件
タ ー ゲ ッ ト Cu
電 圧 40 kV
X 線 源
電 流 30 mA
DS 1/4 (deg)
SS 0.69 (deg)
ス リ ッ ト
RS 10 (mm)
ス キ ャ ン ス ピ ー ド 2.4 (deg/min) モ ノ ク ロ メ ー タ ー グ ラ フ ァ イ ト 結 晶
材 料 表 層 の 組 成 分 析 お よ び 表 層 か ら 深 さ 方 向 の 組 成 分 析 に 有 効 な 分 析 方 法 はX線 光 電 子 分 析(XPS)お よ び オ ー ジ ェ 電 子 分 析(AES)で あ る 。薄 膜 の 表 面 組 成 分 析 お よ び 原 子 の 化 学 結 合 状 態 を 調 べ る た め に 、Mg Kα線 を 励 起 X 線 と し た XPS( ㈱ 島 津 製 作 所 製 、 ESCA-1000) お よ び AES( 日 本 電 子 ㈱ 製 、JAMP-30) を 用 い た 。 表 面 か ら 深 さ 方 向 の 組 成 分 析 に は ス パ ッ タ イ オ ン エ ッ チ ン グ と 組 み 合 わ せ て 、 薄 膜 の 深 さ 方 向 の 濃 度 プ ロ フ ァ イ ル を 測 定 し た 。な お 、XPS分 析 に お け る 深 さ 組 成 分 析 の 濃 度 の 算 出 に は 、各 元 素 に 由 来 す る 光 電 子 の ピ ー ク 面 積 に 光 イ オ ン 化 断 面 積 を 掛 け る こ と に よ り 求 め た 。 XPS分 析 の 測 定 条 件 を 表 3. 3 に 示 す 。
表 3. 3. XPS測 定 条 件
タ ー ゲ ッ ト Mg
電 圧 10 kV
X 線 源
電 流 30 mA
イ オ ン 種 Ar+
電 圧 2 kV
ス パ ッ タ イ オ ン ガ ン
電 流 20 mA
フ ー リ エ 変 換 赤 外 分 光 光 度 計(FT-IR)は 、 試 料 に 波 数 4000~400 cm-1の 赤 外 光 を 照 射 し 、 試 料 か ら の 透 過 光 ( あ る い は 反 射 光 、 散 乱 光 ) を 分 光 し 、 そ れ ぞ れ 透 過 ス ペ ク ト ル ( あ る い は 反 射 ス ペ ク ト ル 、 拡 散 反 射 ス ペ ク ト ル ) を 得 る こ と に よ り 、 お も に 分 子 構 造 を 調 べ る 方 法 と し て 有 用 で あ る 。本 研 究 で は 、薄 膜 の 構 造 を 調 べ る た め に FT-IR
( 日 本 電 子 ㈱ 製 、JIR-5500) を 用 い た 。
窒 化 ケ イ 素 薄 膜 の 熱 特 性 に つ い て 検 討 す る た め に 、Al 箔 に SiN を コ ー テ ィ ン グ し た 試 料 を NaOH 水 溶 液 に 浸 せ き す る こ と に よ り Al を 溶 解 し 、 濾 過 す る こ と に よ っ て 薄 膜 試 料 の み を 得 た 。こ の 試 料 を 示 差 熱 熱 重 量 同 時 測 定 装 置(TG/DTA)( セ イ コ ー 電 子 工 業 ㈱ 、SSC5200) を 用 い て 熱 分 析 を 行 っ た 。
薄 膜 の 電 気 抵 抗 測 定 に つ い て は シ リ コ ン ウ エ ハ 基 板 に 成 膜 し た 試 料 を 用 い 、 四 端 子 法 に よ り 室 温 に お け る 比 抵 抗 、お よ び 室 温 か ら 423 K の 温 度 範 囲 に お け る 電 気 抵 抗 の 温 度 係 数 TCR を 測 定 し た 。
薄 膜 の 環 境 遮 断 性 を 検 討 す る た め に 、303 K、5% 硫 酸(H2SO4)水 溶 液 中 で の 多 重 掃 引 電 流 ― 電 位 曲 線 測 定 法( マ ル チ ス イ ー プ サ イ ク リ ッ ク ボ ル タ ン メ ト リ ー 、CVM)に よ り ア ノ ー ド 溶 解 挙 動 を 調 べ た 。図 3. 3 に 自 動 分 極 装 置 の 概 略 図 を 示 す 。試 料 に 導 電 性 樹 脂 を 用 い て リ ー ド 線 を 付 け た 後 、 試 料 の 測 定 面 積 を 約 1 cm2残 し て 液 状 シ リ コ ン ゴ ム で 被 覆 し 、 こ れ ら の 被 覆 し た 試 料 を 電 解 液 に 浸 漬 し た 後 、 ポ テ ン シ ョ ス タ ッ ト と 関 数 発 生 器 に よ り 分 極 曲 線 の 測 定 を 行 っ た 。 試 料 表 面 を 写 真 撮 影 す る こ と に よ り 正 確 な 測 定 面 積 を 求 め 、電 流 密 度 の 算 出 に 用 い た 。掃 引 電 位 範 囲 は−0.5~+1.7 Vの 範 囲 で あ り 、 電 位 掃 引 の 速 度 は 10 mV s-1で あ る 。 な お 対 極 と し て 白 金 電 極 、 照 合 電 極 と し て 銀/塩 化 銀(Ag/AgCl)比 較 電 極 を 用 い 、 電 解 液 に は 窒 素 ガ ス バ ブ リ ン グ に よ り 溶 存 酸 素 を 除 去 し た も の を 用 い た 。
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3.3 実 験 結 果 お よ び 考 察 3.3.1 窒 化 チ タ ン 薄 膜
輸 送 比(Ti/N)を 変 化 さ せ て 作 製 し た 薄 膜 の XRD 測 定 結 果 を 図 3. 4 に 示 し て い る 。 い ず れ の 条 件 で 作 製 し た 試 料 に お い て も 、薄 膜 か ら は TiN 相 に 由 来 す る 回 折 線 の み 観 察 さ れ た 。 図 3. 4 か ら わ か る よ う に 、 輸 送 比 1 で 作 製 し た 薄 膜 は<100>優 先 配 向 性 を 示 し た 。 輸 送 比 4 で 作 製 し た 薄 膜 で は(200)面 の ピ ー ク 強 度 は 減 少 し 、(111)面 に よ る 非 常 に 弱 い ピ ー ク が 見 ら れ る 。 輸 送 比 6 で は(200)面 の ピ ー ク は 見 ら れ ず 、(111)面 の ピ ー ク の み に な っ た 。 ま た 、 輸 送 比 6 お よ び 10 で 作 製 し た 低 い 窒 素 濃 度 の 薄 膜 に つ い て Ti2N の 回 折 ピ ー ク は 観 察 さ れ な か っ た 。 輸 送 比 を 変 化 さ せ て 作 製 し た 薄 膜 の 優 先 配 向 性 依 存 性 は 、IBAD 法 で 作 製 し た 窒 化 チ タ ン 薄 膜 に つ い て 報 告 さ れ て い る 結 果 と 良 い 一 致 を 示 し た[3,4]。 窒 化 チ タ ン の よ う な fcc 型 構 造 を 持 つ 結 晶 で は 、 最 密 面 は (111)面 で あ り 、 こ の 面 の 生 成 の 自 由 エ ネ ル ギ ー が 最 も 低 く 、<111>方 向 に 優 先 的 に 配 向 す る 。し か し な が ら 、薄 膜 の 成 長 面 に イ オ ン ビ ー ム が 照 射 さ れ る IBADに お い て は 、 (111)面 は イ オ ン の 衝 突 断 面 積 が 大 き く 、照 射 イ オ ン と 格 子 原 子 と の 衝 突 に よ り 、原 子 の 変 位 あ る い は コ リ ジ ョ ン に よ り 結 晶 が 乱 れ 、<111>方 向 へ は 成 長 し に く く な る 。 一 方(100)面 は 格 子 原 子 間 に 隙 間 が あ り 、原 子 を 変 位 さ せ る こ と な く チ ャ ン ネ リ ン グ に よ り イ オ ン が 注 入 さ れ る た め 、 格 子 原 子 の 配 列 が 乱 さ れ る こ と な く<100>方 向 へ 成 長 す る 。 本 研 究 に お い て は 、 輸 送 比(Ti/N)が 小 さ い ほ ど 上 述 し た 照 射 イ オ ン が 結 晶 成 長 に 及 ぼ す 効 果 が 大 き い た め 、 輸 送 比 が 小 さ く な る に 伴 い<100>優 先 配 向 性 と な っ て い る こ と が わ か る 。
薄 膜 の 組 成 お よ び 膜 と 基 板 界 面 に お け る 元 素 の 分 布 に つ い て AES 分 析 を 行 っ た 。 窒 素 N KLL と チ タ ン Ti LMMの オ ー ジ ェ ピ ー ク が そ れ ぞ れ 379 eVお よ び 387 eVと 近 く 、 二 つ の ピ ー ク が 重 な る た め 、N KLL の ピ ー ク 強 度 を 直 接 評 価 す る こ と が で き な い 。 従 っ て 、 純 粋 な N の ピ ー ク 強 度 を 求 め る た め に 、N と Ti を 合 計 し た 強 度 か ら Tiに よ る 寄 与 を 引 く こ と に よ り N に よ る 強 度 を 評 価 し た[5]。
図 3. 5 に 基 板 に 到 達 す る 原 子 の 比 、 輸 送 比(Ti/N)と AES に よ り 求 め た 薄 膜 中 の N に 対 す る Tiの 比 、組 成 比(Ti/N)と の 関 係 を 示 し て い る 。輸 送 比 が 6 以 下 で は 組 成 比 に 大 き な 変 化 は 見 ら れ ず Ti/N 比 は ほ ぼ 1 と な っ て お り 、 広 い 輸 送 比 範 囲 で 化 学 量 論 組 成 のTiN薄 膜 が 得 ら れ て い る こ と が わ か る 。こ れ はXRDで 示 す 結 果 と 一 致 し て い る 。 こ の こ と は 、 真 空 容 器 内 に は イ オ ン 源 か ら 流 出 し た 中 性 窒 素 分 子 が 存 在 し 、 窒 素 と チ タ ン の 高 い 親 和 性 の た め に 窒 素 ガ ス と チ タ ン が 反 応 し 、化 学 量 論 組 成 の TiN 薄 膜 が 高 い 輸 送 比 で も 得 ら れ た も の と 考 え ら れ る 。
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XPS に よ り 測 定 し た Ti2p お よ び N1s の 光 電 子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー(B.E.)の 組 成 依 存 性 を 図 3. 6 に 示 し て い る 。 窒 素 原 子 は 、 い ず れ の 輸 送 比 に お い て も Ti-N 結 合 状 態 (396.9 eV[6])に あ り 、 大 き な 変 化 は 見 ら れ な い 。 一 方 、 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い チ タ ン 原 子 の 結 合 状 態 はTi-N 結 合 状 態(454.8 eV[7])か らTi-Ti結 合 状 態(453.8 eV[7])へ と 変 化 し た 。 こ の 結 果 に つ い て は 、 次 の よ う に 考 え る こ と が で き る 。 い ず れ の 組 成 に お い て も チ タ ン リ ッ チ 膜 で あ る 。 す な わ ち 窒 素 原 子 の 最 近 接 原 子 は ほ と ん ど チ タ ン 原 子 で あ る の で 、 チ タ ン 濃 度 が 増 し て も 窒 素 は チ タ ン と 結 合 し て い る 。 一 方 、 チ タ ン 原 子 の 最 近 接 位 置 に あ る 窒 素 原 子 の 割 合 は 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い 減 少 す る 。XPSに よ り 分 析 さ れ る 化 学 結 合 状 態 は 注 目 す る 原 子 と そ の 原 子 の 最 近 接 に あ る 原 子 と の 相 互 作 用 を 反 映 し て い る の で 、 窒 素 と チ タ ン 原 子 の 結 合 状 態 は こ の よ う な 組 成 変 化 に 伴 う 窒 素 と チ タ ン そ れ ぞ れ の 原 子 周 囲 の 原 子 の 種 類 で 説 明 す る こ と が で き る 。
ス テ ン レ ス 鋼 基 板 上 に 輸 送 比 4 で 作 製 し た 薄 膜 の AES 深 さ 方 向 組 成 の 分 析 結 果 を 図 3. 7に 示 し て い る 。Ti/Nの 組 成 比 は 約 1.2 で あ り 、 約 2%の 酸 素 が 含 ま れ て い る こ と が わ か る 。
腐 食 環 境 下 に お け る 薄 膜 の 金 属 に 対 す る 環 境 遮 断 性 を 評 価 す る た め に 5% H2SO4水 溶 液 中 に お い て 、 基 板 構 成 元 素 で あ る ク ロ ム が 溶 解 す る よ う な 広 い 電 位 掃 引 範 囲 で の サ イ ク リ ッ ク ボ ル タ ン メ ト リ ー 測 定 を 行 っ た 。輸 送 比 4で 作 製 し た 試 料 に つ い て サ イ ク リ ッ ク ボ ル タ モ グ ラ ム を 図 3. 8に 示 し て い る 。ま た 、比 較 の た め に 未 処 理 材 の 測 定 結 果 も 併 せ て 示 し て い る 。 い ず れ の 試 料 に つ い て も 電 位 0 V(vs. Ag/AgCl)近 傍 の 活 性 域 に お け る 鉄 の 不 働 態 化 に 伴 う 電 流 の ピ ー ク は 観 察 さ れ な か っ た 。未 処 理 の 試 料 で は 、 電 位 約 0.9 V以 上 で の 過 不 働 態 領 域 に お け る ス テ ン レ ス 鋼 か ら の ク ロ ム の 溶 解 お よ び 引 き 続 く 酸 素 ガ ス の 発 生 の た め に 電 流 密 度 が 急 激 に 増 加 し て い る 。 窒 化 チ タ ン を コ ー テ ィ ン グ し た 試 料 で は 、 掃 引 回 数 の 初 期 に お い て 過 不 働 態 領 域 に お け る 電 流 密 度 は 非 常 に 低 く 、 優 れ た 環 境 遮 断 性 を 示 し て い る 。
電 位 約 1.3 V近 傍 の 過 不 働 態 領 域 に お け る ピ ー ク 電 流 密 度 に よ り 薄 膜 の 環 境 遮 断 性 を 評 価 し た 。図 3. 9に 輸 送 比 を 変 化 さ せ て 作 製 し た 窒 化 チ タ ン 薄 膜 と 未 処 理 材 の 各 掃 引 に お け る 電 位 約 1.3 V近 傍 で の ピ ー ク 電 流 密 度 依 存 性 を 示 し て い る 。 掃 引 回 数 の 初 期 に お い て 、 電 流 密 度 は 未 処 理 材 に 比 べ て 約 2オ ー ダ ー 低 く な っ て い る 。 最 も 優 れ た 環 境 遮 断 性 は 輸 送 比 4で 作 製 し た 薄 膜 に つ い て 得 ら れ た 。本 研 究 に お け る 窒 化 チ タ ン 薄 膜 の 膜 厚 は 、 他 の 研 究[8-12]よ り も 薄 い た め 、 環 境 遮 断 性 の 改 善 に つ い て は 膜 を 厚 く す る こ と に よ り 、 さ ら に 効 果 が 期 待 で き る と 考 え ら れ る 。
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以 上 、IBAD 法 に よ り 窒 化 チ タ ン 薄 膜 を 作 製 し た 。 チ タ ン の 蒸 着 速 度 を 変 化 さ せ る こ と に よ っ て 輸 送 比(Ti/N)を 0.5~10 の 範 囲 で 変 化 さ せ た 。TiN 薄 膜 の 結 晶 配 向 性 と 組 成 に つ い て 調 べ る た め に 、XRD、AES お よ び XPS 測 定 を 行 っ た 。 ま た 環 境 遮 断 性 に つ い て も 検 討 し た 。 そ の 結 果 は 次 の 通 り で あ る 。
(1) 窒 化 チ タ ン 薄 膜 の 優 先 配 向 性 は 、 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い 、 イ オ ン ビ ー ム に よ る ス パ ッ タ 効 果 の た め に<200>か ら<111>に 変 化 し た 。
(2) 輸 送 比 を 0.5 か ら 6 と 大 き く 変 化 さ せ て も 、 窒 素 と チ タ ン の 高 い 親 和 性 の た め に 組 成 比 は 1か ら 2 に 変 化 す る の み で あ っ た 。
(3) 窒 素 原 子 は い ず れ の 輸 送 比 に お い て も TiNの 結 合 状 態 に あ る 。 チ タ ン 原 子 の 結 合 状 態 は 、 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い TiNの 状 態 か ら 金 属 Ti の 状 態 に 変 化 し た 。
(4)最 も 良 い 環 境 遮 断 性 は 輸 送 比 4 で 作 製 し た 薄 膜 に つ い て 得 ら れ た 。
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3.3.2 窒 化 ク ロ ム 薄 膜
図 3. 11 に 加 速 電 圧 2 kV、 室 温 で ク ロ ム の 蒸 着 速 度 を 変 え る こ と に よ り 輸 送 比 (Cr/N)を 変 化 さ せ て 作 製 し た 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 のSEM写 真 を 示 す 。窒 化 ク ロ ム 薄 膜 は 、 粒 径 40 nm程 度 の 非 常 に 微 細 な 結 晶 粒 と な っ て い る 。い ず れ の 成 膜 条 件 に お い て も 同 様 な 表 面 形 態 で あ っ た 。
シ リ コ ン ウ エ ハ 基 板 上 に 、窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 2 kV、室 温 で 輸 送 比 を 変 化 さ せ て 作 製 し た 試 料 の XRD測 定 結 果 を 図 3. 12 に 示 す 。 輸 送 比 0.7 で は CrN に よ る 回 折 線 は 見 ら れ ず 、ク ロ ム 濃 度 を 増 加 さ せ 、輸 送 比 1.4 お よ び 2.1で は CrN(200)面 の 配 向 性 を 示 し 、さ ら に 輸 送 比 が 増 加 す る の に 伴 い(200)面 の 回 折 強 度 が 増 し て い る 。加 速 電 圧 2 kV、基 板 温 度 473 K と し 、輸 送 比 を 1.4~7.1の 範 囲 で 変 化 さ せ た 試 料 の XRD測 定 結 果 を 図 3. 13 に 示 す 。 輸 送 比 1.4 で は ほ ぼ CrN の 単 相 で あ り 、 室 温 で 作 製 し た 試 料 と 比 べ(200)面 の 回 折 強 度 が 増 加 し て お り 、 結 晶 の 成 長 が 進 行 し て い る こ と が わ か る 。 輸 送 比 の 増 加 す な わ ち ク ロ ム の 量 が 増 加 す る と と も に 薄 膜 は 、CrN と Cr2Nの 2相 共 存 と な っ て お り 、 輸 送 比 7.1 で は Cr2N の 単 相 へ と 変 化 し た 。 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 の 結 晶 配 向 性 に 対 す る 加 速 電 圧 の 影 響 を 輸 送 比 1.4 の 薄 膜 に つ い て 調 べ た 結 果 、 窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 が 10 kV あ る い は 20 kVと 高 い 方 が(200)面 の 配 向 性 が 強 く な る 傾 向 が 見 ら れ た 。こ の よ う な 結 晶 配 向 性 の 変 化 に つ い て は 、基 板 温 度 は 膜 の 結 晶 構 造 に 影 響 し 、 温 度 が 高 い ほ ど 、 ま た 照 射 す る 窒 素 イ オ ン の エ ネ ル ギ ー が 高 い ほ ど 、 基 板 表 面 で の ク ロ ム あ る い は 窒 素 原 子 の 易 動 度 が 増 す こ と に よ り 結 晶 化 が 進 ん だ も の と 考 え ら れ る 。
作 製 し た 薄 膜 の 結 合 状 態 を XPSに よ り 測 定 し た 。図 3. 14 に 窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧
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2 kV、 輸 送 比 1.4の 条 件 で 、 室 温 お よ び 473 K で 作 製 し た 薄 膜 の N1s 光 電 子 ス ペ ク ト ル を 示 し て い る 。 室 温 で 作 製 し た 薄 膜 に つ い て は 、 結 合 エ ネ ル ギ ー(B.E.)は 397 eV で あ り 、CrN の 文 献 値 396.7 eV[6]と 一 致 し て い る 。 一 方 、473 K で 作 製 し た 薄 膜 の N1s 光 電 子 の B.E.は 397.5 eV で あ り 、 ク ロ ム リ ッ チ の 相 で あ る Cr2N に つ い て 得 ら れ て い る N1s光 電 子 の 文 献 値 397.4eV[6]と 良 い 一 致 を 示 し て い る 。Cr2p 光 電 子 に つ い て は 、室 温 で 作 製 し た 試 料 に つ い て は CrN の 状 態 に 近 い が 純 Cr側 に シ フ ト し て お り 、 473K で 作 製 し た 試 料 に つ い て は 純 Cr に 近 い 値 と な っ た 。 い ず れ の 温 度 で 作 製 し た 試 料 も ク ロ ム リ ッ チ で あ る こ と か ら 、Cr2p 光 電 子 は 、純 Cr に 近 く な っ た も の と 考 え ら れ る 。ま た 、基 板 温 度 が 室 温 と 473 Kで N1s光 電 子 の 結 合 状 態 に 違 い が 見 ら れ た こ と に つ い て は 、CrNの 生 成 の 自 由 エ ネ ル ギ ー は 温 度 が 低 い ほ ど 負 に 大 き く な る こ と か ら 、 室 温 の 方 が Cr-N 結 合 が 安 定 化 し た も の と 考 え ら れ る 。
測 定 し た 光 電 子 ス ペ ク ト ル の 面 積 に 各 元 素 の 光 イ オ ン 化 断 面 積 を 考 慮 し て 組 成 比
を 求 め た 。 加 速 電 圧 2 kV、 室 温 で 作 製 し た 薄 膜 の 組 成 比 と 輸 送 比 の 関 係 を 図 3. 15 に 示 す 。 低 い 輸 送 比 で は ク ロ ム リ ッ チ な 組 成 で 、 一 方 、 高 い 輸 送 比 で は 逆 に 窒 素 リ ッ チ に な っ て い る 。こ の こ と は CrN あ る い は Cr2N の 生 成 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 が 負 で あ る が そ の 絶 対 値 が 小 さ い こ と か ら 、 基 板 に 供 給 し た 窒 素 イ オ ン が 有 効 に 反 応 に 寄 与 し て い な い こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。
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以 上 、IBAD法 に よ り 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 を 作 製 し た 。窒 化 ク ロ ム 薄 膜 は 、粒 径 約 40nm 程 度 の 微 細 な 構 造 と な っ て い る 。 室 温 で 作 製 し た 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 は CrN(200)面 の 配 向 性 を 示 し 、473 Kで 作 製 し た 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 に お い て は CrN 相 と Cr2N相 の 共 存 が 見 ら れ た 。 本 研 究 に お い て IBAD 法 に よ る Cr-N 系 化 合 物 の 生 成 状 況 を 示 し 、 窒 化 ク ロ ム 薄 膜 の 構 造 お よ び 組 成 を 制 御 す る こ と が で き る こ と が わ か っ た 。
3.3.3 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜
窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 2 kV で 、 輸 送 比(Ta/N)を 0.7か ら 10ま で 変 化 さ せ て 作 製 し た 窒 化 タ ン タ ル(TaN)薄 膜 、 お よ び 純 金 属 タ ン タ ル の XRD測 定 結 果 を 図 3. 16 に 示 し て い る 。 輸 送 比 0.7 お よ び 1の 試 料 は Ta3N5と TaN の 混 合 で 、 輸 送 比 2で は TaN 単 相 、 輸 送 比 4 で は TaN と Ta2N の 混 合 、 さ ら に 輸 送 比 6 お よ び 10 で は Ta の 窒 化 物 は ほ と ん ど 存 在 せ ず 、 体 心 立 方(bcc)格 子 を 持 つ Ta-N 固 溶 体 と な っ て い る こ と が わ か る 。こ の Ta-N 固 溶 体 は 強 い(111)面 の 優 先 配 向 性 を 示 し た 。こ れ ら の 薄 膜 表 面 の SEM 写 真 を 図 3. 17(a)-(f)に 示 す 。 輸 送 比 0.7~2で は 結 晶 粒 は 20 nm 以 下 の 微 細 な 粒 状 で あ り 、輸 送 比 4以 上 で は 結 晶 粒 は 三 角 形 を 呈 し 、輸 送 比 6 で 粒 サ イ ズ 約 80 nmと 最 大 と な り 、 輸 送 比 10 で 再 び 小 さ く な っ た 。
輸 送 比 を 1と 固 定 し 、 窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 を 1~20 kV ま で 変 化 さ せ て 作 製 し た 薄 膜 の XRD図 形 を 図 3. 18 に 示 す 。 加 速 電 圧 1~5 kV の 範 囲 で は い ず れ も Ta3N5と TaNの 混 合 で あ り 大 き な 違 い は 見 ら れ な い 。加 速 電 圧 10 kVで は Ta3N5、TaN お よ び Ta2Nの 混 合 で あ る が 、Ta3N5の 強 度 が か な り 低 下 し 、加 速 電 圧20 kVで はTaNとTa2N の 混 合 で 強 い fcc TaN の(220)面 配 向 性 と な っ て い る 。 こ れ ら の 薄 膜 表 面 の SEM 写 真 を 図 3. 19 に 示 す 。 加 速 電 圧 1~5 kV で は 結 晶 粒 は 細 か い 粒 状 で あ り 、 加 速 電 圧 10 お よ び 20 kVで は 図 3. 17(d)で 見 ら れ た も の と 同 様 な 三 角 形 を 呈 し て い る 。
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Ensingerら[13]は 、比 較 的 高 い エ ネ ル ギ ー の 窒 素 イ オ ン を 用 い た IBAD法 に よ り 作 製 し た 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 の 組 成 お よ び 構 造 に 及 ぼ す エ ネ ル ギ ー 効 果 に つ い て 報 告 し て い る 。 彼 ら は エ ネ ル ギ ー30 keV の 窒 素 イ オ ン ビ ー ム を 用 い て 作 製 し た 薄 膜 に つ い て 、 Ta-N固 溶 体 は[100]方 向 優 先 配 向 に な る こ と 、ま た 輸 送 比 の 増 加 に 伴 いTaNか らTa2N は 生 成 せ ず 、Ta-N 固 溶 体 が 生 成 す る こ と を 報 告 し て い る 。 本 研 究 に お い て は 、 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い Ta3N5→TaN→Ta2N→Ta-N 固 溶 体 へ と 平 衡 状 態 図 か ら 予 測 さ れ る 結 果 が 得 ら れ た 。 こ れ は 、 本 研 究 の 照 射 イ オ ン の エ ネ ル ギ ー は 比 較 的 低 い た め に 、 中 間 的 な 相 が 観 察 さ れ た も の と 考 え ら れ る 。
図 3. 19 か ら わ か る よ う に 、加 速 電 圧 1お よ び 2 kVで は タ ン タ ル の 真 空 蒸 着 と 同 様 な 微 細 な 粒 状 で あ り 、5 kVで は 粒 形 が 大 き く な り 、10 kV で は 粒 形 は 5 kV と 同 様 で あ る が 三 角 形 を 呈 し 始 め 、20 kV で は い ず れ の 結 晶 粒 も 三 角 形 と な っ て い る 。 こ の 形 状 は 図 3. 17 (d)の Ta-N固 溶 体 に 見 ら れ る も の と 類 似 し て い る が 、X線 回 折 に よ る と bcc 構 造 の Ta-N 固 溶 体 で 強 い (110)面 配 向 で あ り 、 一 方 fcc 構 造 の TaN は 強 い(220) 面 配 向 で あ る 。 結 晶 格 子 を 形 成 す る 原 子 の 配 列 か ら 考 え る と 、 三 角 形 を 呈 す る の は (111)面 で あ る が 、本 研 究 で 見 ら れ た 結 果 は 、こ の 格 子 と 結 晶 粒 形 態 は 直 接 関 係 し て い な い こ と を 示 し て お り 、 蒸 着 時 に 照 射 さ れ た 窒 素 イ オ ン に よ る エ ネ ル ギ ー 効 果 、 あ る い は ス パ ッ タ の た め に 、 表 面 積 が 最 も 小 さ い 三 角 錐 に な っ た も の と 考 え ら れ る .
窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 2 kV、輸 送 比 6で 作 製 し た 試 料 は 、上 述 し た よ う に Ta-N固
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溶 体 で あ る が 、こ の 試 料 に つ い て 格 子 定 数 を 測 定 し た 結 果 0.3363 nmと な っ た 。こ の 値 は 、 純 タ ン タ ル の 格 子 定 数 0.3305 nm[14]と 比 較 す る と 約 1.7 %大 き く 、 タ ン タ ル の 格 子 間 に 固 溶 し た 窒 素 原 子 の た め に 大 き く 膨 張 し て い る こ と が わ か っ た 。
薄 膜 の 組 成 を 調 べ る た め に AES分 析 を 行 っ た 。窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 2 kV で 作 製 し た 試 料 に つ い て 輸 送 比 と AES に よ り 求 め た 組 成 比 の 関 係 を 図 3. 20に 示 し て い る 。 作 製 し た す べ て の 薄 膜 に つ い て 組 成 比 は 輸 送 比 よ り 小 さ い こ と か ら 、 タ ン タ ル と 窒 素 の 反 応 性 が 高 い た め に 、 イ オ ン と し て 基 板 に 供 給 さ れ た 窒 素 原 子 以 外 に 、 イ オ ン 源 か ら チ ャ ン バ ー 内 に 流 出 し た 窒 素 ガ ス と タ ン タ ル が 反 応 し て い る こ と が わ か る 。 ま た 輸 送 比 約 2で TaN の 化 学 量 論 組 成 が 得 ら れ て い る 。
図 3. 21に 輸 送 比 6 で 作 製 し た 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 の 電 子 回 折 図 形 を 示 し て い る 。 微 細 な ス ポ ッ ト の 集 ま り か ら な る リ ン グ が 見 ら れ て い る 。 図 3. 21の 回 折 線 か ら わ か る よ う に 、 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 は ア モ ル フ ァ ス 、bcc Ta-N 固 溶 体 お よ び Ta2N相 か ら 成 っ て い る 。 こ の 結 果 か ら 、 高 い 輸 送 比 で 作 製 し た 薄 膜 に は 、 多 く の 窒 素 を 固 溶 し た bcc 固 溶 体 と Ta2N相 お よ び ア モ ル フ ァ ス 相 が 存 在 す る こ と が わ か る 。
図 3. 16に 示 し た よ う に 輸 送 比 6お よ び 10で 作 製 し た 薄 膜 は bcc構 造 の Ta-N固 溶 体 で あ り 、 こ れ ら の 薄 膜 の 組 成 は 図 3. 20 か ら 2.3 お よ び 2.8 で あ る こ と が わ か る 。 Ta-N系 平 衡 状 態 図[15]に よ る と 、タ ン タ ル のα固 溶 体 中 の 窒 素 の 固 溶 限 は 約 4 at.%で あ る こ と か ら 、こ れ ら の 薄 膜 は か な り 過 飽 和 に 窒 素 を 固 溶 し て い る 。Terao[14]は 、タ ン タ ル 金 属 は 窒 素 の 固 溶 に よ る 相 変 態 を 起 こ す 前 に か な り 過 飽 和 に 窒 素 を 固 溶 す る こ と 、 ま た bcc TaN0.05相 の 格 子 定 数 は 0.3369 nmで あ る こ と を 報 告 し て い る 。 本 研 究 に お い て 輸 送 比 6 で 作 製 し た 試 料 の 格 子 定 数 0.3363 nm は こ れ と 非 常 に 近 く 、 ま た TaN0.05相 中 の 窒 素 濃 度 は 約 5 at.%で あ る こ と か ら 、 輸 送 比 6 で 作 製 し た 薄 膜 中 の 過 剰 の 窒 素 原 子 は 窒 素 リ ッ チ な 非 晶 質 相 を 形 成 し て い る こ と が 予 測 さ れ る 。 化 学 量 論 組 成 の TaN よ り 高 い 窒 素 濃 度 を 持 つ 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 に お け る 非 晶 質 相 の 存 在 が Zhang ら[16]に よ り 報 告 さ れ て い る 。
薄 膜 中 に 存 在 す る 非 晶 質 相 は 熱 的 に 不 安 定 で 加 熱 に よ り 安 定 な 結 晶 相 に 変 化 す る
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こ と が 予 測 さ れ る の で 、 こ れ を 確 認 す る た め に 輸 送 比 6 で 作 製 し た 試 料 を 真 空 炉 中 1073 Kで 1時 間 加 熱 し た 。 図 3. 22に 加 熱 前 後 に お け る GXRD 測 定 結 果 を 示 し て い る 。 加 熱 に よ り bcc Ta-N 固 溶 体 に 帰 属 さ れ る 回 折 線 が 消 失 し 、Ta2N相 か ら の 回 折 線 が 明 瞭 に 観 察 さ れ る 。こ の 薄 膜 の 窒 素 含 有 量 は 30 at.%で あ る の で 、Ta-N固 溶 体 お よ び 非 晶 質 相 が こ の 組 成 に お い て 熱 力 学 的 に 安 定 な Ta2N相 に 変 化 し た こ と が わ か る 。 図 3. 23 は 図 3. 16 と 同 一 試 料 の Ta4f7/2 光 電 子 と N1s 光 電 子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー (B.E.)の 組 成 依 存 性 を 示 し て い る 。Ta4f7/2光 電 子 のB.E.は 、純 タ ン タ ル 金 属 の21.7 eV か ら 窒 素 濃 度 増 加 に 伴 い 23.0 eV ま で 増 加 し 、 一 方 N1s 光 電 子 の B.E.は 窒 素 濃 度 変 化 に も か か わ ら ず ほ ぼ 一 定 で 398.0 eVで あ る こ と が わ か る 。ま た 化 学 量 論 組 成 の TaN の B.E.は 22.6 eV で あ る こ と が わ か る 。 こ の よ う な B.E.の 組 成 変 化 に 伴 う 変 化 に つ い て は 、 窒 化 チ タ ン の 時 と 同 様 に 、 注 目 し て い る 原 子 の 最 近 接 格 子 元 素 の 種 類 の 濃 度 に 伴 う 変 化 に よ り 説 明 で き る 。
図 3. 24に 輸 送 比 1 の 条 件 で 窒 素 イ オ ン の エ ネ ル ギ ー を 変 え て 作 製 し た 薄 膜 に つ い て 、AES 分 析 に よ り 求 め た 組 成 比 の 窒 素 イ オ ン ビ ー ム 加 速 電 圧 依 存 性 を 示 し て い る 。 加 速 電 圧 が 高 い ほ ど 窒 素 濃 度 が 低 下 し て い る こ と が わ か る . こ れ は 基 板 表 面 に 生 成 し た 窒 化 タ ン タ ル 化 合 物 が 常 に 窒 素 イ オ ン に 照 射 さ れ て い る た め 、 そ の エ ネ ル ギ ー で 窒 化 タ ン タ ル の 窒 素 原 子 が 選 択 的 に ス パ ッ タ さ れ 、本 研 究 で 用 い た エ ネ ル ギ ー 範 囲 で は 、 窒 素 イ オ ン の エ ネ ル ギ ー が 高 い ほ ど ス パ ッ タ 効 率 が 高 く な る こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。
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図 3. 25 に 窒 素 イ オ ン の 加 速 電 圧 を 2 kV と 固 定 し 、輸 送 比 を 変 化 さ せ て 作 製 し た 薄 膜 の 室 温 に お け る 電 気 抵 抗 の 組 成 依 存 性 を 示 し て い る 。 純 タ ン タ ル 薄 膜 の 抵 抗 440 μΩcmか ら 窒 素 濃 度 増 加 に 伴 い 徐 々 に 増 加 し 、組 成 比(Ta/N) 0.7で 1850 μΩcm ま で 急 激 に 上 昇 し て い る こ と が わ か る 。 電 気 抵 抗 に 影 響 を 及 ぼ す 因 子 と し て は 、 窒 素 原 子 濃 度 、 格 子 欠 陥 、 結 晶 系 あ る い は 結 晶 粒 径 お よ び 結 晶 粒 の 形 状 等 が 考 え ら れ る 。 他 の 因 子 が 同 じ で あ れ ば 、 結 晶 粒 が 小 さ い ほ ど 粒 界 で の 伝 導 電 子 の 散 乱 の た め 電 気 抵 抗 は 大 き く な る 。 図 3. 25 の 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 で は 、 窒 素 原 子 濃 度 増 加 に 伴 う 散 乱 点 の 増 加 お よ び 結 晶 粒 径 の 減 少 に よ り 抵 抗 が 徐 々 に 増 加 し た も の と 考 え ら れ る 。 組 成 比 1.1 と 0.7 で は 窒 素 濃 度 に 大 き な 違 い は な い が 電 気 抵 抗 は 大 き く 変 化 し て い る 。 こ れ は 成 膜 中 に 照 射 し た 窒 素 イ オ ン ビ ー ム に よ り 窒 化 タ ン タ ル 結 晶 中 に 多 く の 欠 陥 が 導 入 さ れ た こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。
窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 の 興 味 あ る 特 性 に 電 気 抵 抗 の 温 度 係 数(TCR)が あ る 。 あ る 窒 素 濃 度 以 上 の 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 は 負 の 温 度 係 数 を 持 つ こ と が 知 ら れ て お り[17]、 窒 素 濃 度 に よ り TCR の 値 を 制 御 す る こ と が で き る 。窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 の TCR 特 性 に つ い て は い く つ か の 報 告 が あ る が い ず れ も ス パ ッ タ に よ り 作 製 さ れ た も の で あ り 、 結 晶 性 お よ び 濃 度 に 対 し て 制 御 性 の 高 い IBAD法 を 用 い て 作 製 さ れ た も の は 見 当 た ら な い 。そ こ で 、 本 研 究 で は TCR 特 性 に 及 ぼ す 窒 素 濃 度 に つ い て 調 べ た 。 図 3. 26 に TCR の 組 成 依 存 性 を 示 し て い る 。 組 成 比 1.7 か ら 2.3 の 間 で は TCR は 約 -80 ppm K-1と 一 定 で あ り 、窒 素 濃 度 増 加 に 伴 い 急 激 に 減 少 し て い る こ と が わ か る 。Ta/N=0.7 で 見 ら れ る 急 激 な 変 化 は 図 3. 25 の 電 気 抵 抗 に お け る 変 化 と 一 致 し て お り 、Ta/N=0.7 と Ta/N=1.1 と は 組 成 は 大 き く 違 わ な い が 、 照 射 し た イ オ ン ビ ー ム に よ る 構 造 変 化 に よ る も の と 考 え ら れ る 。 ま た 組 成 比 3近 傍 に お い て TCR が ゼ ロ の 状 態 が 予 測 さ れ る 。
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次 に 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 の 環 境 遮 断 性 に つ い て 検 討 し た 。図 3. 27 に種 々の輸 送 比 で作 製 した薄 膜 について、電 位 約 1.1 V(vs. Ag/AgCl)近 傍 の過 不 働 態 域 におけるクロムの溶 解 に 伴 うピーク電 流 密 度 の掃 引 回 数 依 存 性 を示 している。掃 引 の 初 期 に お い て 、 窒 化 タ ン タ ル を コ ー テ ィ ン グ し た 試 料 の 電 流 密 度 は い ず れ も 未 処 理 材 よ り 3 桁 以 上 減 少 し て い る 。 輸 送 比 0.7で 作 製 し た 試 料 の 繰 り 返 し に よ る 電 流 密 度 の 増 加 は 大 き く 、70回 で 未 処 理 材 の 値 と 同 程 度 に な っ て い る 。 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い 電 流 密 度 は 減 少 し 、 最 良 の 環 境 遮 断 性 は 輸 送 比 6 で 作 製 し た 試 料 に つ い て 得 ら れ た 。金 属 タ ン タ ル お よ び 窒 化 タ ン タ ル は 硫 酸 水 溶 液 中 で 耐 食 性 を 有 し て い る の で 、 本 研 究 で 見 ら れ た 硫 酸 水 溶 液 中 で の 良 い 環 境 遮 断 性 は 薄 膜 中 の 欠 陥 あ る い は 薄 膜/基 板 界 面 に お け る 構 造 等 の 薄 膜 の 特 性 が 影 響 し て い る も の と 考 え ら れ る 。 オ ー ジ ェ 電 子 分 析 に よ る 深 さ 組 成 分 析 の 結 果 、 薄 膜/ 基 板 界 面 に お け る 原 子 の ミ キ シ ン グ 等 特 異 な 構 造 は 見 ら れ な か っ た の で 、輸 送 比 6 で 作 製 し た 薄 膜 で 見 ら れ た 優 れ た 環 境 遮 断 性 は 、 高 い 結 晶 性 を 持 っ たα固 溶 体 と 少 な い 結 晶 粒 界 お よ び 結 晶 粒 界 を 埋 め る 非 晶 質 窒 化 タ ン タ ル 相 の 存 在 に よ る も の と 考 え ら れ る 。
以 上 、IBAD 法 を 用 い て 種 々 成 膜 パ ラ メ ー タ を 変 化 さ せ た 条 件 で 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 を 作 製 し 、薄 膜 の 構 造 お よ び 組 成 に つ い て XRD、SEM、TEM、AES お よ び XPSを 用 い て 調 べ た 。 薄 膜 の 電 気 抵 抗 に つ い て 四 端 子 法 を 用 い て 測 定 し 、 ま た 金 属 に 対 す る 環 境 遮 断 性 付 与 特 性 に つ い て 調 べ た 。 そ の 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。
(1)薄 膜 の 結 晶 構 造 は 、輸 送 比 の 増 加 に 伴 い Ta3N5、TaN、Ta2N さ ら に Ta-N固 溶 体 へ と 変 化 し 、 そ れ に 伴 い 表 面 形 態 も 著 し く 変 化 し た 。 こ の 表 面 形 態 は 照 射 す る 窒 素 イ オ ン ビ ー ム の エ ネ ル ギ ー に も 依 存 し て 大 き く 変 化 し た 。
(2)薄 膜 の 組 成 お よ び タ ン タ ル 、窒 素 原 子 の 結 合 状 態 に 及 ぼ す 成 膜 条 件 の 影 響 に つ い て 明 ら か に し た 。 特 に 、TaN相 の Ta4f7/2の B.E.値 は 22.6 eV で あ る こ と を 示 し た 。 (3)作 製 し た す べ て の 窒 化 タ ン タ ル 薄 膜 に つ い て TCR 値 は 負 で あ り 、化 学 量 論 組 成 の 窒 化 タ ン タ ル よ り も 過 剰 に 窒 素 を 固 溶 し た 薄 膜 で は 大 き な 負 の 値 と な っ た 。
(4)優 れ た 環 境 遮 断 性 は 加 速 電 圧 2 kV、 輸 送 比 6 で 作 製 し た 試 料 に つ い て 得 ら れ た 。 こ の 薄 膜 は 約 5 at. %の 窒 素 か ら 成 る bcc α固 溶 体 と 30 at. %以 上 の 窒 素 を 固 溶 す る 非 晶 質 相 か ら 成 っ て お り 、 結 晶 粒 は 三 角 形 を 呈 し て い た 。
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3.3.4 窒 化 ニオブ薄 膜
作 製 した薄 膜 の表 面 形 態 についてSEM観 察 の結 果 、窒 化 ニオブ(NbN)薄 膜 表 面 には微 細 な結 晶 粒 が見 られ、輸 送 比(Nb/N)1 および 2 では粒 状 、これ以 上 の輸 送 比 では窒 化 タ ン タ ル薄 膜 と同 様 な三 角 形 を呈 し輸 送 比 の増 加 に伴 い粒 サイズは小 さくなった。
輸 送 比 を種 々変 化 させて作 製 した薄 膜 の GXRD 測 定 の結 果 を図 3.28 に示 している。輸 送 比 1 および 2 の試 料 では六 方 晶 NbN 単 相 であり、輸 送 比 4 以 上 ではα固 溶 体 単 相 となって いることがわかる。Nb-N系 平 衡 状 態 図[15]によると、773 K 以 下 では窒 素 はほとんどニオブに 固 溶 しない が、本 研 究 で作 製 した薄 膜 におい ては、α固 溶 体 のピー ク位 置 は純 ニオブに比 べ 明 らかに低 角 度 側 にシフトしていることから、ニオブの格 子 間 位 置 に窒 素 原 子 が侵 入 した過 飽 和 固 溶 体 を形 成 していることがわかる。輸 送 比6で作 製 した試 料 についてNelson-Rilay関 数 を用 いて格 子 定 数 を求 めた結 果 、a0=0.3370 nm となり、純 ニオブのa0値 0.33004 nm[15]と 比 べると、格 子 間 窒 素 原 子 のために約 2.1 %膨 張 していることがわかった。
図 3. 29に輸 送 比 6で作 製 した試 料 の電 子 回 折 図 形 を示 している。細 かく散 漫 したリングが 観 察 さ れ た 。 こ の 試 料 の GXRD 測 定 で は 、α-Nb-N 固 溶 体 と な っ て い た が 、 図 3. 29 か ら bcc α-Nb-N、Nb2N および非 晶 質 相 から成 っていることがわかる。
輸 送 比(Nb/N)とAESにより分 析 した組 成 比(Nb/N)との関 係 を図 3. 30 に示 している。いずれ の条 件 で作 製 した薄 膜 についても、組 成 比 は輸 送 比 より小 さいことがわかる。これは本 方 法 によ り生 成 する窒 化 物 について一 般 に見 られる現 象 であり、バケット型 イオン源 を使 っているために イオン源 からチャンバー内 に流 出 した窒 素 ガスとニオブが反 応 したことによる。図 3. 28 からわか るように、輸 送 比 4、6および10 で作 製 した薄 膜 は bcc固 溶 体 であり、組 成 比 は 1.3、1.47 およ び2.06であった。これらの値 は窒 素 の含 有 量 43、40および33 at.%に相 当 する。Nb-N平 衡 状 態 図[15]によると、Nb-N 固 溶 体 の固 溶 限 は狭 いことから、観 測 された高 窒 素 濃 度 の固 溶 体 は かなり過 飽 和 状 態 に窒 素 を含 んでいることがわかる。
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薄 膜 中 に存 在 する非 晶 質 相 あるいは過 飽 和 固 溶 体 は熱 的 に不 安 定 であるので、加 熱 により 安 定 な結 晶 相 に変 化 するはずであるから、これを確 認 するために輸 送 比 6 でシリコンウエハ上 に作 製 した試 料 を真 空 炉 中 1073 Kで1時 間 加 熱 した。図3. 31に加 熱 前 後 におけるGXRD 測 定 結 果 を示 している。加 熱 により Nb-N 固 溶 体 に帰 属 される回 折 線 が消 失 し、Nb2N および NbN 相 からの回 折 線 が明 瞭 に観 察 されている。この薄 膜 の窒 素 含 有 量 は 40 %であるので、
Nb-N過 飽 和 固 溶 体 および非 晶 質 相 が加 熱 により、この組 成 で熱 力 学 的 に安 定 なNb2Nおよ びNbN相 に変 化 したことがわかる。
図 3. 32に XPSにより測 定 した Nb3d5/2光 電 子 とN1s 光 電 子 の結 合 エネルギー (B.E.) の組 成 依 存 性 を示 している。Nb3d5/2光 電 子 のB.E.は、純Nbの202.4 eVからN濃 度 の増 加 に伴 い203.7 eV まで増 加 し、一 方 N1s光 電 子 の B.E.は窒 素 濃 度 変 化 にかかわらずほぼ 一 定 であることがわかる。これらの挙 動 は窒 化 タンタル薄 膜 について得 られている結 果 と同 じで ある。
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次 にNbN 薄 膜 の環 境 遮 断 特 性 について検 討 した。図 3. 33に種 々の輸 送 比 で作 製 した薄 膜 の電 位 約 1.1 V(vs. Ag/AgCl)近 傍 の過 不 動 態 域 におけるクロムの溶 解 に伴 うピーク電 流 密 度 の掃 引 回 数 依 存 性 を示 している。掃 引 初 期 において、NbN をコーティングした試 料 の電 流 密 度 は、いずれも未 処 理 材 より3桁 以 上 低 い。掃 引 回 数 200回 においては、輸 送 比2の条 件 で作 製 した試 料 について最 も優 れた環 境 遮 断 性 が得 られた。この輸 送 比 2 の薄 膜 は、GXRD 測 定 の結 果 NbN相 単 相 から成 っており、微 細 な結 晶 粒 からなる緻 密 な構 造 により高 い環 境 遮 断 性 が得 られたものと考 えられる。
以 上 、IBAD 法 に よ り 窒 化 ニ オ ブ 薄 膜 を 作 製 し 、 成 膜 パ ラ メ ー タ が 薄 膜 の 構 造 お よ び 特 性 に 及 ぼ す 効 果 に つ い て 調 べ た 。 そ の 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。
(1)窒 化 ニ オ ブ 薄 膜 の 結 晶 構 造 は 、 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い 六 方 晶 NbNか ら Nb2N、Nb-N 固 溶 体 へ と 変 化 し 、 そ れ に 伴 い 表 面 形 態 も 大 き く 変 化 し た 。
(2)薄 膜 の 組 成 お よ び ニ オ ブ 、窒 素 原 子 の 結 合 状 態 に 及 ぼ す 成 膜 条 件 の 影 響 が 明 ら か と な っ た 。
(3)最 も 優 れ た 環 境 遮 断 性 は 輸 送 比 2で 作 製 し た 薄 膜 に つ い て 得 ら れ た 。
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3.3.5 窒 化 ケ イ 素 薄 膜
種 々 の 条 件 で 作 製 し た 薄 膜 の 表 面 形 態 に つ い て SEM 観 察 を 行 っ た 結 果 、 い ず れ の 薄 膜 も 平 滑 で あ り 、 窒 化 チ タ ン の よ う な 結 晶 粒 の 形 態 は 観 察 さ れ な か っ た 。
図 3. 34 に 輸 送 比(Si/N)と XPSに よ り 分 析 し た 薄 膜 中 の 窒 素 に 対 す る ケ イ 素 の 比 、 組 成 比(Si/N)と の 関 係 を 示 し て い る 。 輸 送 比 1 お よ び 2 で は 最 大 窒 素 濃 度 比 は 約 1.3 で 一 定 と な っ て い る こ と が わ か る 。輸 送 比 2 以 上 で は ほ ぼ 直 線 的 に 組 成 比 が 増 加 し て い る 。 図 3. 35 に Si2p お よ び N1s 光 電 子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー の 輸 送 比 依 存 性 を 示 し て い る 。 ケ イ 素 原 子 は 、 輸 送 比 1 お よ び 2 で は Si3N4の 文 献 値[18]と 一 致 し て お り 、 輸 送 比 の 増 加 に 伴 い Si-Si 結 合 状 態 に 変 化 し て い る 。 一 方 、 窒 素 原 子 は い ず れ の 組 成 に お い て も N-Si 結 合 状 態 に な っ て い る 。 し か し な が ら 輸 送 比 2 よ り も 低 い 輸 送 比 で は N1s 光 電 子 の エ ネ ル ギ ー は Si3N4に つ い て 得 ら れ て い る 文 献 値[18]よ り も 高 い 方 へ シ フ ト と し て い る 。 こ れ ら の 結 合 エ ネ ル ギ ー の 変 化 に つ い て は 、 以 下 の よ う に 考 察 さ れ る 。 作 製 し た 薄 膜 中 の 窒 素 原 子 の 最 大 濃 度 は Si/N=1.3 で あ る の で 、 い ず れ の 組 成 に お い て も ケ イ 素 リ ッ チ で あ る た め 、 窒 素 原 子 の 最 近 接 原 子 は 常 に ケ イ 素 原 子 が 占 め て い る 。 一 方 、 ケ イ 素 原 子 の 最 近 接 位 置 に あ る 窒 素 原 子 の 割 合 は 輸 送 比 の 増 加 に 伴 っ て 減 少 す る と 考 え ら れ る 。そ の 結 果 と し て 、Si2p光 電 子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー の み が 窒 素 濃 度 と と も に 変 化 し て い る 。
図 3. 36 に 輸 送 比 4で 作 製 し た 試 料 の FT-IRス ペ ク ト ル を 示 し て い る 。Si-N 伸 縮 振 動 に よ る 吸 収 の 最 大 波 数 位 置 は 1020 cm-1 と な っ て お り 、Si3N4 に つ い て 報 告 さ れ て い る 値 と 一 致 し て い る 。
種 々 の 条 件 で 作 製 し た 薄 膜 の GXRD測 定 の 結 果 、い ず れ の 薄 膜 も 角 度 22°<2θ<35°
の 範 囲 に ア モ ル フ ァ ス ハ ロ ー を 示 し 、 非 晶 質 構 造 で あ る こ と が わ か っ た 。 ま た 、 輸 送 比 Si/N<2 の 薄 膜 に つ い て は 無 色 透 明 で 、 電 気 抵 抗 値 100 MΩ以 上 の 高 絶 縁 膜 で あ っ た 。
薄 膜 の 耐 熱 性 に つ い て 評 価 す る た め にTG/DTA熱 分 析 装 置 を 用 い て 大 気 中 で の 加 熱 に 伴 う 重 量 変 化 を 調 べ た 。 輸 送 比 4で 作 製 し た 試 料 の 測 定 結 果 を 図 3. 37に 示 し て い る 。 温 度 約 1000 ℃ か ら 薄 膜 の 酸 化 の た め に 重 量 増 加 し て い る こ と が わ か る 。
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図 3. 38 に種 々の輸 送 比 で作 製 した薄 膜 の電 位 約 1.1 V(vs. Ag/AgCl)近 傍 の過 不 働 態 域 におけるクロムの溶 解 に伴 うピーク電 流 密 度 の掃 引 回 数 依 存 性 を示 している。掃 引 の 初 期 に お い て は 、 未 処 理 の 試 料 よ り 2~3 桁 電 流 密 度 が 小 さ く 掃 引 回 数 の 増 加 に 伴 い 徐 々 に 増 加 し て い る 。特 に 輸 送 比 2お よ び 4 で 作 製 し た 薄 膜 に お い て 、他 の 条 件 よ り も 優 れ た 環 境 遮 断 性 が 得 ら れ た 。ケ イ 素 お よ び 窒 化 ケ イ 素 は H2SO4に 対 し 耐 食 性 を 持 っ て い る の で 膜 の 組 成 の 影 響 は 少 な い も の と 考 え ら れ る 。 輸 送 比 の 違 い に よ る 電 流 密 度 の 違 い は 薄 膜 中 に 存 在 す る ピ ン ホ ー ル な ど の 欠 陥 の サ イ ズ と 数 、 ま た は 膜 と 基 板 と の 密 着 性 や 界 面 に 生 成 す る ミ キ シ ン グ 層 の 状 態 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る 。
AES 深 さ 分 析 の 結 果 よ り 輸 送 比 の 減 少 に 伴 い 界 面 近 傍 に お け る 酸 素 の 増 加 が 見 ら れ た 。 こ れ は 輸 送 比 の 小 さ い 試 料 で は ケ イ 素 原 子 が ス パ ッ タ さ れ る こ と に よ り 、 同 一 膜 厚 を 得 る た め に 長 い 成 膜 時 間 が 必 要 で あ り 、 チ ャ ン バ ー 内 の 残 留 ガ ス や 水 分 に 曝 さ れ る 時 間 が 増 え る 。 そ の 結 果 、 膜 中 の 酸 素 濃 度 が 増 し た も の と 考 え ら れ る 。 こ の 結 果 は 、 基 板 と 膜 と の 密 着 性 に も 影 響 し 、 一 定 荷 重 200 gで の ス ク ラ ッ チ 試 験 に よ る 密 着 性 を 測 定 し た 結 果 、 輸 送 比 の 減 少 に 伴 い 引 っ 掻 き 周 辺 部 の 亀 裂 の 数 が 増 加 し 、 輸 送 比 1で 作 製 し た 試 料 で は 膜 が 剥 離 し た 。
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図 3. 39に IBAD法 で 作 製 し た 窒 化 チ タ ン 、 窒 化 タ ン タ ル 、 窒 化 ニ オ ブ お よ び 窒 化 ケ イ 素 薄 膜 に つ い て 、CVM測 定 で 電 位 上 昇 過 程 に お け る 約 1.2 V の 活 性 域 で の 最 大 電 流 密 度 を サ イ ク ル 毎 に プ ロ ッ ト し て い る 。 加 速 電 圧 2 kV で 、 輸 送 比 は そ れ ぞ れ の 薄 膜 で 環 境 遮 断 性 に 対 す る 最 適 条 件 を 用 い た 。輸 送 比 2で 作 製 し た 窒 化 ニ オ ブ 薄 膜 に お い て 、 他 の 薄 膜 よ り も 優 れ た 環 境 遮 断 性 が 得 ら れ て い る こ と が わ か る 。
以 上 、IBAD 法 を 用 い て 窒 化 ケ イ 素 薄 膜 を 作 製 し た 。 作 製 し た い ず れ の 窒 化 ケ イ 素 薄 膜 も XRD 測 定 の 結 果 ア モ ル フ ァ ス 構 造 を 示 し 、 透 明 で 、 電 気 絶 縁 性 で あ っ た 。 硫 酸 水 溶 液 中 で の 金 属 に 対 す る 環 境 遮 断 性 付 与 特 性 に つ い て 検 討 し た 結 果 、輸 送 比 4 で 作 製 し た 薄 膜 が 最 も 優 れ て い た 。 環 境 遮 断 性 に は 、 薄 膜 中 に 存 在 す る 欠 陥 お よ び 膜/ 基 板 界 面 と の 密 着 性 と 関 係 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。
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3.4 ま と め
IBAD法 を 用 い 、種 々 成 膜 条 件 を 変 え て 広 い 濃 度 範 囲 の 窒 素 を 含 む チ タ ン 、ク ロ ム 、 タ ン タ ル 、ニ オ ブ お よ び ケ イ 素 の 窒 化 物 膜 を 作 製 し 、構 造 お よ び 特 性 に つ い て 調 べ た 。 IBAD 法 は 低 温 成 膜 法 で あ る の で 、 平 衡 状 態 図 で 示 さ れ て い る 相 と は 違 っ た 相 お よ び 構 造 が で き る 可 能 性 が 高 く 、 タ ン タ ル お よ び ニ オ ブ に つ い て は 窒 素 を 過 飽 和 に 含 ん だ α固 溶 体 が 生 成 し た 。 窒 化 チ タ ン 、 窒 化 タ ン タ ル お よ び 窒 化 ニ オ ブ は 結 晶 質 の 膜 で あ り 、 優 先 成 長 方 向 す な わ ち 結 晶 配 向 性 お よ び 結 晶 粒 の 形 態 は 照 射 す る 窒 素 イ オ ン ビ ー ム の 量 お よ び イ オ ン の エ ネ ル ギ ー に よ り 変 化 し た 。 窒 化 ク ロ ム に つ い て は CrN と Cr2N の 生 成 領 域 を 明 ら か に し た 。 窒 化 ケ イ 素 に つ い て は 非 晶 質 相 が 生 成 し た 。 チ タ ン 、 タ ン タ ル 、 ニ オ ブ お よ び ケ イ 素 の 窒 化 物 膜 は そ れ 自 身 耐 食 性 が あ り 、 基 板 に 対 す る 環 境 遮 断 性 を 有 し て い る が 、PVD で 生 成 す る 膜 特 有 の 欠 陥 を 有 し て い る 。従 っ て 膜 の 生 成 構 造 が 環 境 遮 断 性 に 影 響 を 及 ぼ し 、 そ れ ぞ れ の 窒 化 物 で 最 適 な 成 膜 条 件 が 存 在 す る 。 チ タ ン 、 タ ン タ ル 、 ニ オ ブ お よ び ケ イ 素 の 窒 化 物 膜 に つ い て 、 そ れ ぞ れ の 薄 膜 の 最 適 な 膜 組 成 で 電 位 1.1 V近 傍 の ピ ー ク 電 流 密 度 測 定 の 結 果 、 最 良 の 環 境 遮 断 性 は 輸 送 比 Nb/N=2で 作 製 し た 窒 化 ニ オ ブ 薄 膜 に つ い て 得 ら れ た 。窒 化 タ ン タ ル 膜 は 窒 素 リ ッ チ 膜 で は TCR は 負 で あ り 、 窒 素 濃 度 の 減 少 に 伴 い 正 に 向 か う 。 組 成 比 Ta/N=2.8 の 時 非 常 に 小 さ い TCR 値−80 ppm K-1が 得 ら れ た 。
本 研 究 成 果 は 、 船 舶 用 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン 用 燃 料 噴 射 ノ ズ ル へ の 耐 食 性 コ ー テ ィ ン グ と し て 利 用 さ れ 、 コ ン テ ナ 船 を 用 い た 実 装 評 価 試 験 に よ り 腐 食 を 防 止 す る コ ー テ ィ ン グ と し て 有 効 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
参 考 文 献
[1]J. Lindhard et al., Kgl. Danske. Vid. Sel. Mat. –Fys. Medd. 33 No.14 (1963) [2] M. Kiuchi, M. Timita, K. Fujii, M. Satou and R. Shimizu, Jpn. J. Appl. Phys., 26 (1987) L938.
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[4] K. Baba, S. Nagata, R. Hatada, T. daikoku and Hasaka, Nucl. Instrum.
Methods B, 80-81 (1993) 297.
[5] JEOL Application Note オ ー ジ ェ マ イ ク ロ プ ロ ー ブ デ ー タ 集 Vol. 3
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