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幾何学ソフトにおける作図された図形 の性質の抽出・導出

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2007 年度修士論文

幾何学ソフトにおける作図された図形 の性質の抽出・導出

指導教員 : 筧捷彦 教授

早稲田大学理工学研究科 情報・ネットワーク専攻 学籍番号 :3606U061-3

田村文謙

2008 年 2 月 4 日 提出

(2)

目 次

第1章 序論 2

1.1 幾何学ソフトとは . . . . 2

1.2 初等幾何における作図 . . . . 3

1.3 中学校で扱う平面幾何の作図 . . . . 3

1.4 研究目的 . . . . 4

第2章 初等平面幾何 6 2.1 結合公理 . . . . 6

2.2 順序公理 . . . . 7

2.3 合同公理 . . . . 8

2.4 平行線公理 . . . . 15

2.5 連続公理 . . . . 16

第3章 抽出・導出 17 3.1 概念の定義 . . . . 17

3.2 方針 . . . . 18

3.3 公理系 . . . . 19

3.3.1 線分 . . . . 19

3.3.2 角 . . . . 20

3.3.3 三角形 . . . . 20

3.3.4 円 . . . . 21

3.3.5 平行 . . . . 21

3.3.6 直角 . . . . 21

3.4 抽出・導出のアルゴリズム . . . . 22

3.4.1 点の抽出 . . . . 22

3.4.2 円の抽出 . . . . 23

3.4.3 線分の抽出 . . . . 24

3.4.4 点がどの線分, 円上にあるかどうかの抽出 . . . . 24

3.4.5 領域内の点の抽出 . . . . 25

3.4.6 角の抽出 . . . . 25

3.4.7 三角形の抽出 . . . . 26

3.4.8 線分合同の導出 . . . . 27

(3)

3.4.9 角合同の導出 . . . . 27

3.4.10 平行の導出 . . . . 27

3.4.11 直角の導出 . . . . 27

3.4.12 三角形合同の導出 . . . . 27

3.5 アルゴリズムの妥当性 . . . . 27

3.6 検証 . . . . 28

3.6.1 基本作図 . . . . 29

3.6.2 三角形 . . . . 43

3.6.3 接線 . . . . 49

3.7 例題 . . . . 56

第4章 まとめ 67 4.1 考察 . . . . 67

4.1.1 中学校で扱う範囲以外の作図問題の検証 . . . . 67

4.1.2 アルゴリズムの幾何学ソフトへの実装 . . . . 67

4.1.3 計算時間についての考察 . . . . 68

4.2 結論 . . . . 68

謝辞 69

参考文献 69

(4)

第 1 章 序論

 ここ数年の社会におけるコンピュータの重要性の高まりには目を見張るもの がある. それは教育現場においても同様で, 2008年現在,高校において「情報」と いう科目が必修になり,中学校でも「技術・家庭」の授業の中でコンピュータを扱 うようになってから約5年が経過していることからもわかるだろう. 加えて, 従来 の教育に対する改革案のひとつとして,積極的にコンピュータを授業の中で用いて いこうという動きも盛んになってきている. それは数学教育においても例外ではな く,実際にコンピュータを用いた数学教育カリキュラムの研究は多数なされている

[1][2]. しかし, 今のところコンピュータを用いた学習方法は, 従来の方法にとって

代わるほど効果的なものはあまり提示されていないように思える. むしろ,機械に 頼ることによって計算力や思考力の低下を指摘される等,なにかと悪い面ばかりが クローズアップされがちである. 新しいものに対する無責任な批判のように思える のであるが,それを論破するほどの説得力を今日までに提唱されている方法論が持 たないのもまた現実なのであろう.

さて, こと数学教育においてコンピュータを使うことの利点は何であろうか. そ の一つには,人為的なミスを排除できることにあると思う. 例えば,コンパスを用い て作図をしようとしたときに, 中心の位置や半径の長さがうっかりかわってしまっ たりすることがあるだろう. そういったミスによって, もし自分の作図が間違って いたとしても, 方法が間違っているのか, ミスによってただ作図を失敗しているの かわからなくなってしまうことも考えられる. コンピュータで手作業と同様の作図 ができるのであれば,そのようなミスを犯すことなく純粋に論理的整合性のみを考 えることができるようになるはずである. 逆に言えば, コンピュータを用いるので あれば, ミスや誤差が極力(欲を言えば絶対に)出ないようなシステムを作り出さ なければならない.

今回は, いま例に挙げたように幾何学の中でも作図に焦点を当て, 幾何学ソフト を用いた学習方法をとることを想定し,研究を行うことにした.

1.1 幾何学ソフトとは

幾何学ソフトとは, コンピュータ上で図形を作図するためのソフトであり, Cin- derellaやCabri-Geometryなどが有名である[3][4]. 作図ソフトと呼ばれることも ある. 教育支援ソフトとしての側面を持ち合わせているはずだが, 特定の作図を所

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定のアイコンをクリックするだけで描くことができてしまったり,本来作図ではで きるはずのない操作ができてしまったりする. そのため, 便利である反面, 本当の 意味での作図を学ぶのには向いていないものとなってしまっているものが多い.

1.2 初等幾何における作図

一般的に初等幾何における作図では,定規とコンパスのみを使って図形を描く.

定規は, 2点を通る直線や線分を描くことと線分を延長することに用いることが できる. 作図する際, 定規は長さを測ることはできないものとする.

一方コンパスは, 与えられた中心と半径の円を描くことと与えられた線分の長さ を移すことに用いることができる. つまり, 具体的な長さは不明でも, 等しい長さ の線分は描くことができる.

1.3 中学校で扱う平面幾何の作図

今回の研究対象となるものがどのような範囲のものなのか説明しておく. 今回 の研究では中学校において扱う作図問題に対象を限定する. 現行の学習指導要領 によれば, 「角の二等分線, 線分の垂直二等分線, 垂線などの基本的な作図の方法 を理解し, それを利用することができること」とある[5]. 加えて教科書には, 平行 線, 円の接線および三角形の作図が記載されている[6][7]. 三角形については二等 辺三角形等,ある特徴を持った図形の作図も含まれている.

また, 中学校で平面幾何の作図を扱う段階で, 描かれた図形の性質について議論 をする際, それまで知っている知識から証明できるものに限ることとする. なぜな ら,今回の研究では教師から与えられた問題を生徒が解く際に, 正しい図形が作図 できているかどうかを判定することを想定しているので,問題で要求された性質を 持つ図形が,生徒がそれまでに知っている範囲の知識だけで描かれるのかどうかを 議論をする必要がある. 学習指導要領によれば, 中学校で平面幾何の作図は1年次 に扱うものである.

1年次の図形の学習については次のように記されている.

基本的な図形を見通しをもって作図する能力を伸ばすとともに,平 面図形についての理解を深める.

線対称,点対称の意味を理解するとともに,対称性に着目して平 面図形についての直観的な見方や考え方を深めること.

角の二等分線,線分の垂直二等分線,垂線などの基本的な作図の 方法を理解し,それを利用することができること.

また, 1年次に学習した作図に関しての証明が2年次で取り扱われている. 2年 次の図形の学習については次のように記されている.

(6)

(1)観察,操作や実験を通して,基本的な平面図形の性質を見いだし,

平行線の性質を基にしてそれらを確かめることができるようにする.

平行線や角の性質を理解し,それに基づいて図形の性質を確かめ ることができること.

平行線の性質や三角形の角についての性質を基にして,多角形の 角についての性質が見いだせることを知ること.

 (2)平面図形の性質を三角形の合同条件などを基にして確かめ,論 理的に考察する能力を養う.

証明の意義と方法について理解すること.

三角形の合同条件を理解し,それに基づいて三角形や平行四辺形 の性質を論理的に確かめることができること.

円周角と中心角の関係を観察や実験などを通して見いだし,それ が論理的に確かめられることを知ること.

従って, 今回の研究では, 1年次までに学習する図形や図形の性質について, 2年 次までに学習する知識を用いて証明ができるかどうかを議論する. 例えば相似や 三平方の定理等3年次以降に扱う知識については,取り扱わないこととする[5].

1.4 研究目的

今回の研究は, 中学校で扱う平面幾何の作図問題について, 幾何学ソフトを用い て学習することを想定し, 教師から与えられた問題を生徒がこなすにあたって, 正 しい作図ができているかどうかを自動的に判定できるようにすることを目標とし たものである. 正しい作図ができているかどうかを判定するとは, 要求に沿った図 形が描かれているかどうかを判定することである. 例えば,ある角に対して二等分 線を引くといった場合,一連の動作,つまり作図によって描かれた線分がその角を 二等分する線になっている, と判定することができれば,正しい作図ができている といえる.

ところで,一般的な幾何学ソフトにおいて,幾何図形は座標の計算のみで扱われ る. これは, コンピュータ上で処理をしやすいためであるが, 座標の計算で図形を 扱うことには大きな問題点が2つある. 1つは,計算誤差が生じることである. これ は,座標の計算をしている以上避けられないものであり,計算過程において誤差が 生じてしまえば, コンピュータを用いる利点の一つを失うことになる. もう1つは, 幾何学の本質から離れてしまうことである. 人間が幾何について考えるときには, 描かれている図形の性質を捉えようとするのであって,座標を計算して考えている わけではない. 例えば垂直二等分線の作図を行った場合, 人間はなぜ2点の中点を

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タが座標を計算して幾何を扱った場合にはそれはわからない. もし幾何学ソフトで も描かれた図形の性質を扱うことができるなら,平面幾何を本質的に捕らえること が従来の幾何学ソフトよりも可能なのではないか, と考えられる.

そこで, この2つの問題点を解消するため, 作図された図形に対して, 性質を論 理的に扱うアルゴリズムを提案することを目的とした.

(8)

第 2 章 初等平面幾何

 アルゴリズムを提案するにあたって, 今回の研究の題材となっている初等平 面幾何がどのような論理体系になっているかを説明する. 初等幾何の論理体系は, ユークリッドの「原論」で述べられているものを原型として, 19世紀に入ってヒル ベルトが初等幾何基礎論として体系化した. 今回はその中でも, 平面幾何における もののみを抜粋して説明する[8].

平面幾何を構成する要素は点と直線であり, これらは未定義に扱うものとする.

いま,点と直線をある相互関係において考え,これらの関係を「の上にある」,「間」,

「合同」, 「平行」,および「連続」などの言葉で表す. これらの関係は幾何学の公 理によって説明される. 幾何学の公理は, 「結合公理」, 「順序公理」, 「合同公 理」,「平行線公理」, および「連続公理」の5個の群に分けられる. なお,今後点 と直線に関して表記が違うものは原則異なるものであるとする. 例えば点A, Bと 表した場合A, Bは異なる2点である.

2.1 結合公理

この公理は, 点と直線の間に結合関係を与えるもので, 次のように表される.

公理 2.1.1. 2点A, Bに対し, A, Bのそれぞれと結合する1本の直線aが存在す る.また, そのような直線は1つより多くはない.

「A, Bと結合するa」は別の言い方をすれば「aA, B を通る」, 「aはA, B を結ぶ」,「A, Bはaの上にある」,「A, Bはaの点である」および「A, Bはa上 の点である」となる.

公理 2.1.2. 1つの直線上には少なくとも2つの異なる点をがあり, そうでない点

が少なくとも3点ある.

この公理から, 次のことがいえる.

定理 2.1.1. 平面上の2直線は1点を共有するか, 共有点がないかのどちらかである.

Proof. この2直線が異なる2点以上の点を共有すると仮定すると, 公理2.1.1に矛

盾する. よって, 平面上の2直線は1点を共有するか, 共有点がないかのどちらか

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2.2 順序公理

線型の順序公理について述べる前に「間」について定義をする.

定義 2.2.1. 1つの直線上の点について「間」という言葉を用いる. 例えば, A, B

間とはある1つの直線上にA, Bがあることを示し, その直線上のAからB, ない しBからAを表す.

公理 2.2.1. 点と直線に関して次のことがいえる.

Bが点A, C間にあるならば, A, B, Cは1直線上の異なる3点であって, このときBCAの間にもある.

2点A, Cに対して直線AC上に少なくとも1点Bがあって, CはA, Bの間 にある.

1直線上の任意の3点のうち, 高々1つだけが他の2つの間にある.

ここで線分を定義しておきたい.

定義 2.2.2. 1つの直線上の2点A, Bの組を線分といい, ABまたはBAで表す. A, B間にある点は線分AB上の点, または線分ABの内部にあるという. A, B間にな い点は線分ABの外部にあるという. また, A, Bは線分ABの端点であるという.

公理 2.2.2. 1直線上にない点3点A, B, Cと, A, B, Cのいずれも通らない直線a を考える. もしaが線分ABの1点を通るなら, aは必ず線分ACの1点か線分BC の1点を通る.

このことから, どの直線も平面内でこの直線上にない点を2つの領域に分けるこ とがいえる.

定義 2.2.3. 任意の点Aに対し, 別の点A’との線分AA’が直線a上の点を含まな いならば, AとA’は平面内でaの同じ側にあるという. さらに別の点Bとの線分 ABaの点を含むなら, AとBは平面内でaの異なる側にあるという.

さらに次のことも定義する.

定義 2.2.4. 点A, A’, O, Bは直線a上の4点で, OはABの間にあるが, Aと A’の間にはないものとする. このとき, A, A’はa上でOの同じ側にあるといい, A, Ba上でOの異なる側にあるという. また, Oの同じ側にあるすべての点を, Oから出る半直線という.

つまり, 直線の各点はその直線を2つの半直線に分けるといえる. この節の終わ りに, 多角形の定義をしておく.

(10)

定義 2.2.5. 任意の点A, B, C, …, X, Y, Zに対し, AとZが一致するとき, 線分

AB, BC, …, YZ, ZAの組を多角形といい, 多角形ABC…XYZと表す. 線分AB,

BC, …, YZ, ZAは多角形の辺といい, 点A, B, C, …, X, Y, Zは多角形の頂点と いう. 頂点が3, 4, …, n個の多角形を三角形, 四角形, …, n角形という. さらに, 多角形の頂点が相異なり, どの頂点も辺の上になく, かつ任意の2辺に共有点がな いとき, この多角形は単一であるという.

以後, 特に断りがなければ多角形は原則単一であるとする. また, 三角形ABC4ABCと省略して表記する.

2.3 合同公理

まずは線分についての合同とはなにか述べる.

公理 2.3.1. 直線a上の2点A, Bに対して, 同一直線上, もしくは別の直線a0上の 点A0について, 常に1点B0を選んで, 線分ABと線分A0B0が合同であるようにで きる. このことを記号でAB ≡A0B0と表す.

線分は定義2.2.2より, ただ2点の組として定義されているので, AB A0B0, AB ≡B0A0,BA ≡A0B0およびBA ≡B0A0はすべて同じ意味である.

公理 2.3.2. 線分A0B0と線分A00B00が同じ線分ABに合同であるならば, 線分A0B0 と線分A00B00は合同である.

このことから, 線分は自身に合同であり, 対称性と推移性を持つことがわかる.

つまりAB ≡AB, AB ≡A0B0ならばA0B0 AB, AB A0B0かつA0B0 ≡A00B00 ならばAB ≡A00B00である. さらに,加法性も公理として含まれる.

公理 2.3.3. ABBCを直線a上の共通点のない2つの線分とし, 同様にA’B’

B’C’を直線a’上の共通点のない2つの線分とする. このとき, AB A0B0, BC ≡B0C0ならば, AC ≡A0C0である.

ここで, 角について定義をしたい.

定義 2.3.1. ある点Oから出る2つの半直線h, kが相異なる直線に含まれるもの

とする. このとき, h, kの組を角といい, ∠(h, k)または∠(k, h)と表す. h, kは角の 辺といい, Oは角の頂点という.

この定義について補足をする.半直線h, kを含む直線を¯h,k¯とする. h, kは点O とあわせて平面の残りの点を2つの領域に分けることがわかる. すなわち, ¯kに対 してhと同じ側にあり, ¯hに関してkと同じ側にあるすべての点を∠(h, k)の内部 にあるといい,他のすべての点を角の外にあるということにすれば,∠(h, k)は平角 や優角を除くこととなる. 具体的にいうと, この定義に従えば角とは180°未満の ものを表す,ということである.

(11)

角の合同については次のことを公理とする.

公理 2.3.4. ∠(h, k)と直線aについて, h0a上の点O0から出る半直線とする. こ のとき, aの定まった側が与えられているならば, 半直線k’がただ1つ存在して,

∠(h, k)は∠(h0, k0)に合同であり, ∠(h0, k0)のすべての内点はaの与えられた側に ある. このことを記号で∠(h, k) ∠(h0, k0)と表す. また, ∠(h, k) ∠(h, k)は常 に成り立つ.

簡単に言うと,任意の角は与えられた半直線に沿って,与えられた側に一意に移す ことができる,ということである. 角についても,定義に従えば∠(h, k)∠(h0, k0),

∠(h, k) ∠(k0, h0), ∠(k, h) ∠(h0, k0)および∠(k, h) ∠(k0, h0)はすべて同じ意 味である. また, 頂点Bと両辺上の点A, Cがある角は, ∠ABCないし∠Bで表す.

公理 2.3.5. 2つの三角形ABCと三角形A0B0C0について, AB ≡A0B0, AC ≡A0C0 および∠BAC ∠B0A0C0が成立すれば, ∠ABC ∠A0B0C0 および∠ACB

∠A0C0B0も常に成立する.

このことから線分移動の一意性も導かれる. もしも線分ABが点A’から出る半 直線上で,B0までとB00までとの2通りに移されたと仮定する. このとき直線A0B0 の外に点Cをとり,A0B0 ≡A0B00,A0C0 ≡A0C0および∠B0A0C0 ∠B0A0C0をつく ると, ∠A0C0B0 ∠A0C0B00となる. これは角移動の一意性と矛盾するので, B0B00は同一であるといえる.

公理についての説明を終えたところで, 角について次のことを定義しておく.

定義 2.3.2. 2つの角が頂点と1つの辺とを共有し, その共有辺でない辺が1つの

直線を作るとき, この両角を補角という. ある角が補角と合同であるならば, その 角を直角という. 2つの角が頂点を共有し, その辺がそれぞれ1つの直線を作ると き, この両角を対頂角という.

また, 次の定理も公理から導き出せる.

定理 2.3.1. 三角形の2辺が合同ならば, これらの辺に対する角は合同である. す

なわち, 二等辺三角形の底角は等しい.

Proof. 4ABCについてAB ≡ACとすると,公理2.3.4と公理2.3.5より AB ≡AC, CA≡BA,∠BAC ∠CAB ∠ABC ≡ACB となるので,二等辺三角形の底角が等しいことが示された.

三角形の合同を定義する.

定義 2.3.3. 次の合同がすべて満たされているとき, 三角形ABCと三角形A’B’C’

は合同であるといい, 4ABC ≡ 4A0B0C0とも表す.

AB ≡A0B0, AC≡A0C0, BC ≡B0C0,

∠A∠A0, ∠B ∠B0, ∠C ∠C0,

(12)

まずは三角形の第1合同定理,いわゆる二辺夾角から証明する.

定理 2.3.2. 次のことが成り立てば4ABC4A0B0C0は合同である.

AB ≡A0B0, AC ≡A0C0,∠A∠A0

Proof. 公理2.3.5より, ∠B ∠B0,∠C ∠C0が成立するので, BC B0C0 を 示せばよい. BC 6≡ B0C0 と仮定し, B’C’上にD’をとってBC B0D0 とすると, 4ABC, 4ABDに対して公理2.3.5を適用すれば, ∠BAC ∠B0A0D0となる. す ると, ∠BACが∠B0A0C0にも∠B0A0D0にも合同であることになり, 角移動の一意 性と矛盾する. よってBC ≡B0C0が示せたので, 4ABC4A0B0C0は合同であ る.

続いて三角形の第2合同定理,いわゆる二角夾辺を証明する.

定理 2.3.3. 次のことが成り立てば4ABC4A0B0C0は合同である.

AB ≡A0B0,∠A∠A0,∠B ∠B0

Proof. 定理2.3.2と同様にして, BC 6≡B0C0, AC 6≡A0C0と仮定すると矛盾するの で, BC B0C0, AC A0C0が示せる. よって, 公理2.3.5より∠C ∠C0もいえ るので, 4ABC4A0B0C0は合同である.

三角形の第3合同定理, いわゆる三辺合同を示す前にいくつかの定理を証明して いきたい.

定理 2.3.4. ∠ABC, ∠A0B0C0が合同ならば, それぞれの補角∠CBD, ∠C0B0D0も 合同である.

Proof.A0, C0およびD0B0を通る辺上に選んで, AB ≡A0B0,CB ≡C0B0およ びDB ≡D0B0となるようにする. すると, 4ABC4A0B0C0は合同であるので, AC ≡A0C0,∠BAC∠B0A0C0となる. また,公理2.3.3よりAD≡A0D0となるので, 4CAD4C0A0D0は合同である. よって, CD ≡C0D0, ∠ADC ∠A0D0C0とな る. ゆえに, 4BCD4B0C0D0を考えれば, 公理2.3.5より∠CBD ∠C0B0D0 となる.

定理 2.3.5. 対頂角∠AOB, ∠CODは合同である.

Proof.A, OおよびCと点B, OおよびDをそれぞれ同一直線上に選ぶ. 公理

2.3.4より,∠BOC ∠COBであるので, 定理2.3.4より∠AOB ∠CODがいえ る.

定理 2.3.6. h, k, lおよびh’, k’, l’を点OおよびO’から出る3個の半直線とし, h,

kおよびh’, k’はそれぞれlおよびl’に関して同時に同じ側であるか, 同時に異なる

側にあるかであるとする. このとき, ∠(h, l) ∠(h0, l0), ∠(k, l) ∠(k0, l0)が満た されていれば, ∠(h, k)∠(h0, k0)も成り立つ. つまり, 角は加法性を持つ.

(13)

Proof. h, klに関して同じ側,h0, k0l0と同じ側にある場合を証明する. 今h

∠(k, l)内にあると仮定する. 辺k, k0, lおよびl0上にそれぞれ点K, K0, LおよびL0OK O0K0, OL O0L0になるように選ぶと, 定義よりhは線分KLを1点 H で切る. そこで, H0h0 上でOH OH0 に決める. すると, 定理2.3.2から 4OLH ≡ 4O0L0H0, 4OLK ≡ 4O0L0K0となるので,

4OLH ≡ 4O0L0H0 LH ≡L0H0, ∠OLH ∠O0L0H0

4OLK ≡ 4O0L0K0 LK ≡L0K0, ∠OLK ∠O0L0K0, ∠OKL∠O0K0L0 が得られる. 公理2.3.4より, ∠OLH ∠O0L0H0, ∠OLK ∠O0L0K0ならば, H0L0K0上にあることがいえる. よって,

LH ≡L0H0, LK ≡L0K0 ⇒HK ≡H0K0

となる. このことから, 4OKH ≡ 4O0K0H0となるので, ∠KOH ∠K0O0H0が 導き出せる.

h, klに関して異なる側, h0, k0l0 と異なる側にある場合に関しては, 定理

2.3.4を用いれば同じ側にある場合に帰着されるので自明である. よって,

∠(h, l)∠(h0, l0),∠(k, l)∠(k0, l0)∠(h, k)∠(h0, k0) が示された.

定理2.3.7. 任意の2つの角について,∠(h, k)∠(h0, k0)とする. 半直線lが∠(h, k) の頂点から出て, その角の内部を通る半直線出るとすれば, ∠(h0, k0)の頂点から出 て個の角の内部を通る半直線l’がただ1つ存在して

∠(h, l)∠(h0, l0),∠(l, k)∠(l0, k0) となる.

Proof. 定理2.3.6の証明における, 半直線k, h, lおよびk0, h0, l0がこの定理における 半直線h, l, kおよびh0, l0, k0に相当すると考えれば, 定理2.3.6と同様にして導き出 せる.

定理 2.3.8. 直線ABの異なる側にある2点C, Dに対し, AC AD, BC BD ならば, ∠ABC ∠ABDである.

Proof. 定理2.3.1より, ∠ACD ∠ADC, ∠BCD ∠BDCである. ゆえに, 定 理2.3.6から∠ACB ∠ADBといえる. よって, AC AD, BC BDおよび

∠ACB ∠ADBから公理2.3.5より∠ABC ∠ABDである.

それでは,三角形の第3合同条件を示そう.

定理 2.3.9. 4ABC,4A0B0C0の対応辺がそれぞれ合同ならばこれらの三角形は合 同である.

(14)

Proof. ∠BAC をA0 のところで半直線A0C0 に関してB0 と同じ側にある辺上に A0B0 AB となる点B0 を選び, 他の辺上にB00A0B0 AB のように選ぶ.

定理2.3.2より, BC ≡B0C0, BC B00C0が示せる. よって, 仮定の合同とあわせ ると公理2.3.2より

A0B00 ≡A0B0, B00C0 ≡B0C0, A0B00 ≡A0B0, B00C0 ≡B0C0

が得られる. ところで, 定理2.3.8は, 4A0B00C04A0B0C0 にも, 4A0B00C04A0B0C0にも当てはまるので,

∠B00A0C0 ∠B0A0C0,∠B00A0C0 ∠B0A0C0

が成り立つ. 公理2.3.4によれば,任意の角は一意的に移動することができるので, 半直線A0B0と半直線A0B0は一致する. したがって,∠BACと合同でA0C0の該当 する側に移された角は∠B0A0Cである. よって定理2.3.2より4ABC ≡ 4A0B0C0 が示された.

これより,角合同の対称性を示すことができる.

定理 2.3.10. 半直線h, k, h0, k0, h00およびk00について次のことが成り立つ.

∠(h0, k0)∠(h, k),∠(h00, k00)∠(h, k)∠(h0, k0)∠(h00, k00)

Proof. 3個の与えられた角の頂点をO0, O00およびOとする.各角の辺上にそれぞれ 点A0, A00およびAO0A0 ≡OA, O00A00 ≡OAとなるようにとる. 同様に他の辺上 に点B0, B00およびBO0B0 OB, O00B00 OB となるようにとる. すると, 定 理2.3.2より三角形の合同からA0B0 ≡AB, A00B00≡ABが示される. そこで, 公理 2.3.2によって4A0B0O04A00B00O00とは3辺がそれぞれ一致するので, 定理2.3.9 より, ∠(h0, k0)∠(h00, k00)が成立する.

これにより, 角の大小が比較できる.

定理 2.3.11. 任意の角として∠(h, k),∠(h0, l0)が与えられているとし, ∠(h, k)を h0l0側へ移したとき, ∠(h0, l0)の内部の半直線k0が得られるとする. このとき,

∠(h0, l0)をhk側に移せば∠(h, k)の外部の半直線lが得られる. この逆も成立 する.

Proof. lが∠(h, k)の内部にあると仮定する. ∠(h, k) ∠(h0, k0)であるので, 定理 2.3.7より内部の半直線lに対して∠(h0, k0)の内部に半直線l00が存在し, ∠(h, l)

∠(h0, l00)が成り立つ. 仮定により,∠(h, l)∠(h0, l0)も成り立つが, l0l00異なって なければならないので, これは公理2.3.4に反する. 従ってl0は一意的に存在する.

逆も同様に証明される.

∠(h, k)の移動で,∠(h0, l0)の内部に半直線k0ができたとき,∠(h, k)は∠(h0, l0)よ り小さいといい,∠(h, k)<∠(h0, l0)と表す. 逆に,∠(h, k)の移動で,∠(h0, l0)の外部

(15)

に半直線k0ができたとき,∠(h, k)は∠(h0, l0)より大きいといい, ∠(h, k)>∠(h0, l0) と表す.

2つの角α, βについてはα > βかつβ < α, α=βおよびα < βかつβ > αの3つ のうちどれか1つだけが成り立つ.

角の大きさの比較は推移的である. すなわち3個の仮定

α > βかつβ > γ, α > βかつβ=γ, α=βかつβ > γ

のうち各1つからα > γとなる. 線分についても一意性が示されているので, 線分 の大小を比較することもできる.

定理 2.3.12. 全ての直角は互いに合同である.

Proof. 直角は定義により補角と合同になる角である. いま∠(h, l),∠(k, l)を補角と し,∠(h0, l0),∠(k0, l0)も補角とする. このとき,∠(h, l)∠(k, l),∠(h0, l0)∠(k0, l0) であるとする. ∠(h0, l0)6≡∠(h0, l0)と仮定すると,∠(h0, l0)をhl側に移せば, lと 異なる半直線l00ができる. するとl00は∠(h, l)の内部にあるか∠(k, l)の内部にあ るかである. もし, l00が∠(h, l)の内部にあれば,

∠(h, l00)<∠(h, l),∠(h, l)∠(k, l),∠(k, l)<∠(k, l00)

となり, 大小関係の推移性によって∠(h, l00) < ∠(k, l00)となる. 一方, 仮定と定理 2.3.4から

∠(h, l00)∠(h0, l0),∠(h0, l0)∠(k0, l0),∠(k0, l0)<∠(k, l00)

が成り立ち, ∠(h, l00)∠(k, l00)となるので矛盾する. l0βの内部にある場合にも まったく同様の矛盾が生じるので, l0lに一致する.

角度について定義を少し追加する.

定義 2.3.4. 自身の補角より大きい角, すなわち直角より大きい角を鈍角という.

自身の補角より小さい角, すなわち直角より小さい角を鋭角という.

定義 2.3.5. 4ABCに属する角, つまり∠ABC,∠BCA,∠CABを内角といい, そ れらの補角を外角という.

外角については次の重要な定理を証明したい.

定理 2.3.13. 三角形のひとつの外角は, それに接していない内角のどれよりも大

きい.

Proof. ∠CADを4ABCの外角とし,DAD ≡CBとなるように選ぶ. ∠CAD

∠ACBと仮定すると, AC ≡CAなので公理2.3.5より∠ACD∠CABが成り立

つ. 定理2.3.4と定理2.3.10とから∠ACDは∠ACBの補角に合同となることにな

(16)

る. すると, 公理2.3.4よりDは直線CB上にあることになり公理2.1.1に矛盾す る. よって, ∠CAD6≡∠ACBが成り立つ.

次に, ∠CAD <∠ACBと仮定する. このとき∠CADをCのところでCAB 側に移すと,∠ACBの内部を通る半直線ができて,これは線分ABと1点B0で交わ ることになる. すると,4AB0Cで∠CADが∠ACB0と合同になるが,これは先ほど の議論に矛盾する. よって,∠CAD <∠ACBともならないので,∠CAD >∠ACB となることが示された. 同様にして, ∠CADの対頂角が∠ABCよりも大きいこと がわかるので, 対頂角の合同と角の大小関係の推移性から∠CAD > ∠ABCとな る. 以上より, 外角が接していない内角よりも大きいことが示された.

これにより, 次の2つのことが示される.

定理 2.3.14. どの三角形においても大きい辺に対する角は小さい辺に対する角よ

り大きい.

Proof. 4ABCにおいて,AB > BCとし,BC =BDとなるようなDAB上にと る. このとき, ∠ACB >∠CABが示せればよい. 4BCDは二等辺三角形であるか ら, ∠BDC ∠BCDとなる. CDは∠ACBの内部にあるので∠ACB >∠BCD となる. また,外角定理より∠BDC >∠CABがいえるので, 角の大小関係の推移 性から∠ACB >∠CABがいえる.

定理 2.3.15. 2つの等しい内角を持つ三角形は二等辺三角形である.

Proof. 4ABC について, ∠ABC ∠ACB, AB 6≡ ACとする. 定理2.3.14より, AB 6≡ACならば,∠ABC >∠ACBか∠ABC <∠ACBのどちらかが成り立つこ とになるので矛盾する. よって, AB ≡ACとなる.

また, 外角定理から定理2.3.3の補充定理が得られる.

補題 2.3.1. 次のことが成り立てば4ABC4A0B0C0は合同である.

AB ≡A0B0,∠A∠A0,∠C ∠C0

Proof. 4ABCAB,∠CAB がA0B0,∠C0A0B0 に重なるように移し, CC00に 移ったとする. このとき, 仮定より∠ACB ∠A0C0B0 となるが, 外角定理より

∠A0C00B0 <∠A0C0B0となり,矛盾する. よって,C0C00は一致することがわかる ので, 4ABC4A0B0C0は合同である.

さらに, 線分と角は2等分できることも外角定理から言える.

定理 2.3.16. どの線分も2等分できる.

Proof. 与えられた線分AB を1辺としてその両端A, Bで辺の反対側に等しい角

α を作り, これらの角の他の1辺上に等しい線分AC BD をとる. つまり,

∠BAC,∠ABD はαである. C, DAB の反対側にあるから, 線分CDは直線 AB と1点Eで交わる. EAまたはB と一致すると仮定すると, 外角定理より

(17)

にあると仮定すれば, 外角定理より, ∠ABD > ∠AED >∠BACとなるので矛盾.

AB, E の間にあると仮定しても同様に矛盾するので, EA, Bの間にあると いえる. 従って, 対頂角の合同より∠AEC > ∠BEDとなるので, 補題2.3.1より 4AEC ≡ 4BEDとなる. よって, AE ≡EBとなり, Eが線分ABを2等分して いることがわかった.

定理 2.3.17. どの角も2等分できる.

Proof. ∠Aに対し,AB ≡ACとなるような点B, Cをとる. つまり4ABCは二等 辺三角形であるとする. このとき,∠B ∠Cとなる. 定理2.3.16より, BCは2等 分できるので, BD DCとなる点Dをとると, 仮定より∠DAB ∠DACとい える. つまり, ∠Aが2等分されていることがわかった.

2.4 平行線公理

平行線公理とは次のことをいう.

公理 2.4.1. aを任意の直線とし, Aをa外の1点とすれば, aとAとで決まる平面 内に, Aを通ってaと交わらない直線bがたかだか1つ存在する. このときbA を通るaへの平行線といい, a//bと表す.

つまり, 2直線a, bが第3の直線cと交わらないならば, a, bは交わらない, とい うことである. ここで, 同位角, 錯角について定義をする.

定義 2.4.1. hは点Oから出る半直線, k, k0は点O0から出る異なる半直線とし, k, k0は同一直線上にあるものとする. さらにO, O0を通る直線をlとし, lに対しh, k は同じ側, h, k0は異なる側にあるものとする. このとき∠(h, l)に対し, ∠(k, l)を 同位角, ∠(k0, l)を錯角という.

平行線公理から次のことが示せる.

定理 2.4.1. 2つの平行線が第3の直線で切られるならば, 同位角および錯角は合

同である. 逆に, 同位角あるいは錯角が合同ならば, 2直線は平行である.

Proof. 点, 半直線の名前は定義2.4.1のものを用いるものとする. hを含む直線と,

k, k0を含む直線が平行であるとする. このとき,∠(h, l)をlに対してkの側に移せ ば, 半直線h0ができる. ∠(h0, l)>∠(k, l)にせよ, ∠(h0, l) <∠(k, l)にせよ, h0kO0で交わることになってしまうので,仮定と矛盾する. 従って, 同位角は等しい ことがいえる. ところで,∠(k, l)と∠(k0, l)は対頂角であるので, 錯角も等しいこと がわかる. 同様の議論により逆も成立する.

定理 2.4.2. 三角形の内角はあわせて2直角になる.

(18)

Proof. 4ABCに対し, Cを通りABに平行な直線aを与える. このとき, ∠A,∠B のaに対する錯角を∠A0,∠B0とすれば,∠A0,∠Cおよび∠B0はあわせて平角,つま り2直角になる. よって示された.

ここで, 円, 円の接線, 接点についても定義しておく.

定義 2.4.2. 点Oに対して, 線分OAが互いに合同になるような点Aの全体を円と

いい, Oを円の中心, OAを円の半径という.

定義 2.4.3. 円と直線とがただ1つの共通点を持つとき, その直線を円の接線とい

い, 共通点を接点という.

円の接線,接点については次の定理が示せる.

定理 2.4.3. 円の中心O,接線上の円と接していない任意の点Aと接点Bについて,

∠ABOは直角である.

Proof. ∠ABOが直角よりも小さい角αとする. 定理2.4.2より, 円上の点B0につ いて, αを底角にもちOB =OB0となる二等辺三角形OBB0を作ることができる.

つまり,∠ABO=∠B0BOとなり,B0は接線上にあることになってしまう. よって, 接線が円と2つの交点を持つことになってしまい題意に矛盾する. ∠ABOが直角 よりも大きい角である場合にも,その補角が直角よりも小さくなるので, これも同 様に題意に反する. よって, ∠ABOは直角である, といえる.

2.5 連続公理

最後に連続公理について紹介をする.

公理 2.5.1. ABCDが任意の線分のとき, 直線AB上に点列A1, A2,…, An−1お よびAnが存在して, 線分AA1, A1A2,…, An−2An−1およびAn−1AnはすべてCDと 合同であり, かつBAAnの間にある.

この公理については, 作図とは直接関係がないので詳しい話は割愛する. なぜ関 係がないかは, 3章で説明する。

(19)

第 3 章 抽出・導出

 単純に初等幾何の定理の証明を人間がしようと思うならば,ヒルベルトが平面 幾何基礎論で述べた公理と定義からすべて証明できるはずである. しかし,それは 人間が公理と定義に従って恣意的に証明をするからできるのであって,幾何学ソフ ト上でも同じことができるかといわれると,不可能である可能性がある. 具体例を 挙げると, ある円において長さの等しい弦に対し, 円周角はすべて等しいことは補 助線を用いないと証明できない. 今の幾何学ソフトでは補助線を認識する能力を 持ち合わせていないので, 円周角はすべて等しいことは作図された図形の性質だけ では証明できない.

ただし, すべてがヒルベルトの公理と定義だけでは導出できないわけではない.

例えば, 二等辺三角形の底角が等しいことは, 4ABCについてAB = ACとわか れば,4ABC4ACBについて三辺合同の条件より4ABC ≡ 4ACBといえる.

よって, 対応する角が等しいので, ∠ABC =∠ACBとわかる. この証明は, 描かれ ている図に対する性質以外を用いていない. つまり, コンピュータが証明すること もできると思われる.

このことから, 幾何学ソフト上で人間と同等に証明を行うには,ヒルベルトの公 理と定義の一部と,そこから証明できるいくつか定理を公理とみなした公理系が必 要になるのではないだろうか. 3章では, コンピュータが作図された図形が要求さ れた性質を持つことを証明するためには, 何が必要なのかを説明していく.

3.1 概念の定義

今回研究の題材となっているのは, 「作図問題を解くにあたって, 幾何学ソフト 上で作図された図形の性質の導出をすること」であるが, そもそも「作図」, 「作 図された図形」, 「作図問題」, 「抽出」および「導出」とは何を指し示している のか. それぞれの定義をまずしなければならない.

定義 3.1.1. 「作図」とは, 図形を新たに描き加えるための手段を表したものであ

る. 単に「作図」と呼ぶこともあるが, 強調して「作図方法」と呼ぶこともある.

これに対し, 問題に対する作図方法の解答, つまり解答となる図形を描くまでの作 図方法の集合を「作図列」と呼ぶ.

今回の研究において作図は, 点, 線分および円を描くことに加え, 場合によって は線分または円が交点を持つように描くことであり, これをアルゴリズムに対する

(20)

入力とする. このとき, 作図の結果として得られた図形を「作図された図形」とい う. なお出力は, 図形の情報や図形の性質である.

ただ単に目の前に与えられた図形との違いは, 図形を描くまでの経緯, つまり途 中経過の有無にある. この途中経過は, 作図がなされるごとに記録される.

定義 3.1.2. 与えられた前提条件に対し, 要求された性質を持つ図形を描く過程を

問う問題を「作図問題」という. また, 作図問題において, あらかじめ与えられて いる図形の情報や性質を「前提条件」という. 「作図問題を解く」とは, 与えられ た前提条件から要求された性質の図形を描くにあたって, 作図方法を答えるもので ある.

定義 3.1.3. 幾何学ソフト上で, 前提条件として与えられた情報や, 作図方法から

情報を得ることを「抽出」という. 例えば, コンパスで描かれた図形であればそれ は円である. 今回の研究では, 「点が存在すること」,「 円が存在すること」,「 線 分が存在すること」,「 点が線分・円上にあること」,「 2点がある直線に対し同 じ側にあること」,「 角が存在すること」および「三角形が存在すること」を情報 として得る際には「抽出」という言葉を使う.

定義 3.1.4. 抽出された図形や図形の情報に対して, 公理系に従って論理的に性質

を与えることを「導出」という. 「導出」は, 図形そのものの性質を与える場合だ けでなく, 2つ以上の図形の関係を表す場合にも, この言葉を用いる. 例えば, ある 角が直角であることや, ある2つの線分が合同であること等の情報を得ることを表 すには「導出」という.

なお,特に断りがない限り,「作図問題」とは1.3で述べた範囲の,中学校で扱う 平面幾何の作図問題のことであるとする. 抽出・導出される図形や図形の性質につ いても1.3で述べた範囲に限定するものとする.

3.2 方針

幾何学ソフト上で, 作図問題の解が得られていることを証明する動作のことを

「検証」と呼ぶことにする. 今回の研究では, 1.3で述べたように生徒が知りうる知 識だけから要求された図形が描くことができるかどうかを検証することを目的と しているので, 検証のプロセスにおいて扱う公理, 定義, および定理は中学の1, 2 年次までに知りうるものに限定する. 扱う公理, 定義, および定理の具体的な説明 については, 3.3で後述する.

作図問題において, 与えられた前提条件から要求された性質を持つ図形が描かれ ているかどうかを検証する方法を次のように提案する. 新たに作図が行われるご とに,できた図形から情報を抽出し,そこから性質を導出していく. その過程で, 目 的の性質が得られているかどうか判定する. 目的の性質が得られていれば,その作

(21)

図列は正解であると判断できる. そうでなければ,その作図方法はまだ途中段階で あるか, あるいは間違っていると判断できる.

つまり, 抽出された図形の情報と, それについて論理的に導出された性質をもっ て, 正しい作図列が解答できているかどうかを検証する. そこで今回は, 抽出され たことがらについて, 「2つの線分が合同」, 「2つの角が合同」「2つの線分が平 行」,「角が直角」および「2つの三角形が合同」という性質を導出していけば,ど んな作図問題に関しても検証が可能である, と予想する.

3.3 公理系

2章で説明をした初等幾何学の公理と定義をベースとして,公理系を定める. 公 理系を定めるにあたって, ヒルベルトの平面幾何基礎論とは別に,初等幾何定理の 大量生産[9]も参考にした. なお, この節以降,特別に次の表記を用いることにする.

AX…点AはX(直線, 線分, 円)上にある

• hO, ABi…中心O,半径ABの円

[A, B |CD]…2点AとBは,直線CDについて同じ側にある

• ¬(X)…X(図形や図形の性質)が抽出・導出されていない

∠R…直角

3.3.1 線分

線分について, 次のことを導出できるものとする.

AB =AB(自身に等しい)

AB =BA(順序を変えても等しい)

AB =CD ⇒CD =AB(対称律)

AB =CD, CD =EF ⇒AB =EF(推移律)

BAC, EDF, AB =DE, BC =EF ⇒AC =DF(加法)

BAC, EDF, AB =DE, AC =DF ⇒BC =EF(減法)

(22)

3.3.2 角

角について, 次のことを導出できるものとする.

∠ABC =∠ABC(自身に等しい)

∠ABC =∠CBA(順序を変えても等しい)

∠ABC =∠DEF ∠DEF =∠ABC(対称律)

∠ABC =∠DEF,∠DEF =∠GHI ∠ABC =∠GHI(推移律)

∠ABC =∠EF G,∠CBD=∠GF H ∠ABD=∠EF H(加法)

∠ABC =∠EF G,∠ABD=∠EF H ∠CBD=∠GF H(減法)

ABC, EF G,∠BAD=∠F EH ∠CAD=∠GEH(補角合同)

∠ABC, D◇AB ∠ABC =∠DBC(内側の点Dに対する移動)

∠ABC, A◇DB,[A, D|BC]⇒∠ABC =∠DBC(外側の点Dに対する移動 )

3.3.3 三角形

三角形について, 次のことを導出できるものとする.

• 4ABC4ABC(自身に合同)

• 4ABC4DEF ⇒AB =DE, BC =EF, CA=F D,∠ABC =∠DEF,∠BCA=

∠EF D,∠CAB =∠F DE(対応する辺と角が等しい)

∠ABC =∠DEF,∠BCA =∠EF D ∠CAB =∠F DE(三角形の2角が等 しければ残り1つも等しい)

• ¬(ABC),¬(BCA),¬(CAB),¬(DEF),¬(EF D),¬(FDE), AB = DE, BC =EF, CA=F D ⇒ 4ABC4DEF(三辺合同)

AB =DE, BC =EF,∠ABC =∠DEF ⇒ 4ABC4DEF(二辺夾角)

AB =DE,∠CAB = ∠F DE,∠ABC =∠DEF ⇒ 4ABC4DEF(二角 夾辺)

(23)

3.3.4 円

円について, 次のことを導出できるものとする.

AhB, CDi ⇒AB =CD(半径はどれも等しい)

AhE, F Gi, BhE, F Gi, ChE, F Gi, DhE, F Gi ⇒∠CAD=∠CBD,∠BAD=

∠BCD,∠BAC = ∠BDC,∠DBA = ∠DCA,∠ABC = ADC,∠ACB =

∠ADB(円周角はどれも等しい)

3.3.5 平行

平行について, 次のことを導出できるものとする.

AB//CD,(B◇DE)∨(D◇BE),¬([A, D | BC]) ∠ABE = ∠CDE(同 位角の合同)

AB//CD,¬([A, D|BC])⇒∠ABC =∠BCD(錯角の合同)

∠ABE =∠CDE,(B◇DE)∨(D◇BE),¬([A, D | BC]) AB//CD(平 行の導出1)

∠ABC =∠BCD,¬([A, D|BC])⇒AB//CD(平行の導出2)

AB//CD ⇒BA//CD(順序を変えても平行)

AB//CD ⇒CD//AB(対称律)

AB//CD, CD//EF ⇒AB//EF(推移律)

AB//CD, BAE ⇒AE//CD(平行線の延長)

AB//CD, EAB ⇒AE//CD(平行線の短縮)

3.3.6 直角

直角について, 次のことを導出できるものとする.

ABC,∠BAD =∠CAD∠BAD =∠R,∠CAD=∠R(補角同士が等し ければ直角)

AhB, CDi, EhB, CDi, FhB, CDi, BEF ∠EAF = ∠R(直径 を弦とする円周角は直角)

AhE, F Gi, BhE, F Gi, ChE, F Gi,∠ABC =∠R,∠BCD=∠CAB

∠ACD=∠R(直角三角形の直角以外の角の和は直角)

参照

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