(東女医大誌第30巻第6号頁1176−1186廻田035年6月)
冷性膿(結核性膿)の粘性に関する研究
緒
東京女子医科大学整形外科教室(主任 森崎直木教授)
言
北
キタ
川
ガワ
香
キヨウ
子
コ
(受付昭和35年3月3印
膿の性状については,すでにかなり以前より検討が加 えられているけれども,その化学的乃至物班田方面より の検索は未だなお十分とはいい難いようである。この方 画よりの研究としては,比重,pH,表面張力等につい ての報告に接することができる。
膿のpH2)5)16)17)18)については,一般的にいって 冷性膿ではややアルカリ性を,熱性膿では酸性を呈し,
混合感染によって膿のpHは酸性に移行することが知ら れている。しかしながらこのようなpHの変化は起炎菌 によるというよりもむしろ炎症の強弱によって強く支配 されると考えられている。表面張力9>に関与する因子 は未だ朗らかにきれていないが,冷性膿は熱性膿より膿
ゆ デ げ ダヨ もさ ワ よ の リ ヤ コミね メ う へげロ ミサロ ロを
梨表出張刀1県力〉フくじca ・b(_とカ〉理りrrし,概乍↑懸果賑察は その中間値を有するといわれる。
1濃の比重2)12)14>16)17)19)については,しばしば その報告に接することができるが,全膿比重は熱性膿が 冷性膿より高値を示すことが認めちれる。しかしながら 全膿比重の分布範囲は両膿においてかなり重なっている 部分が存在する。森崎エ0)は,興野についても比重の測 定を行い,この場合は熱性膿の方が冷性膿より低値を示 すことを認めナこがやはり両津漿の値の分布には重なりが 存在している。しかしながら両比重,すなわち全膿と膿 漿との比:重の差を求めると,熱性膿はほとんどが0.010 以上であり,冷性膿はこれに反し大部分が0.005以下と なる。したがって比重差の測定により膿の鑑別を極めて 有効に行うことができることを指摘された。
このような体液の比重測定が臨床面において,実施し 得るようになったのは当初血液に対して考案された硫酸 銅法によるところが大きい。膿漿に対して硫酸銅法を施 行する場合,しばしば被検液滴が銅液の表面より垂下
し,液滴の比重が銅液の比重より大であっても沈下しな い現象に遭遇する。本現象は垂下液滴の形態が落下傘を 逆さまにした様子に類似していることより,発見者の森 崎により〃落下傘形成(Parachute formation)〃と記載
された1G)。森崎は広汎な検査の結果,落下傘形成は殆 んどすべての冷性膿漿について観察され,熱性膿漿によ っては認められることが稀であり,混合感染膿漿は熱性 膿漿と同様であることを確めた。したがってこの現象に ついての観察は膿の鑑別IC対して極めて有効であり,ま た簡便及び確実性については他のほとんどすべての鑑別 法に勝るとされた。
この落下傘形成は冷性膿漿の如何なる化学的あるいは 物理学的性状に基くものであろうか。同じく森崎は冷性 膿漿は熱性膿漿に比して大きな粘性を有すること,また 粘性の高い体液である関節液について落下傘形成とよく 似た現象(sack and tube formation, Kling 5)4))が観 察されることより,冷性膿漿の高粘性が落下傘形成の主 因ではなかろうかと述べている11)。7こだしその研究は,
Hess粘度計による少数例の検索にもとずくものである から,より確実なOstwald型粘度計により測定してそ の成績を確かめ,さらにAnomalous viscosityをも測 定し,これらと他の検査成績との関連を調査し,ついで 整形外科僻或で粘性物質としてあまねく知られている関 節液の粘度とも比較し些かの知見を得たのでここに報告
する。
実験材料
東京女子医大整形外科,東京大学医学部整形外科,国 立相模原病院整形外科,国立中野療養所に受診した患者
より採取した冷性膿(第1表)計61例である。
穿刺,または切開により,または疲孔より流出する膿 を血液の混入をさけて採取し,遠心分離法により上清
(これを膿漿とよぶ)を得た。膿瘍の閉鎖性,開放性の 差異については区別しなかった。遠心分離は通常毎分 3,000回転,20分行ったが,時に膿漿率が著るしく小さ
く,上述の条件にては充分な分析試料を得難い時には40
P型日立分離用超遠心機,RP40・一タを用い毎分
10,000又は20,000回転(6,5909乃至26,3609)30分行 って上清を得た。このような遠心条件の差によっても,
得られる上清の性状は,比重及び粘度について検討した
Kyoko KITAGAWA (Department of Orthopedic Surgery, Tokyo Women s Medical College) : Studies on the viscosity of cold pus.
一1176一
第1表 冷性膿の原因疾患別例数
脊椎カリエス 52
関節結核 8
胸椎カリエス8
胸腰椎カリエス12
腰椎ヵリェス17
腰仙椎及び仙椎カリエス 3
病 巣 音区 《立 不 明 12
膝 関 節 結 核 5 股 関 節 結 核 3
肋膜周囲膿瘍
1門
門2表 種々遠心分離上清の性状
回転数毎分 3瓢∴。55
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第3表関節液の原因疾患別例数 膝 関 節 iJ ウ マ チ
変 形性 膝 関 節 症
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試科
第1図変形オスbワフレド粘度計
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死 体 膝 関 節 液 5
計 21
結果では回転数の差による有意の差はなかった (第2 表)。したがってこれらの性質は回転数には無関係とみ なしてよい。
別に比較の為,整形外科領域における粘性な体液とし て関節液(第3表)についても同様検索を行った。
実験方法及び実験方法についての考察 1)相対粘度の測定6)
変i形オス}ワルド型粘度計7)(第1図)を使用し,
370Cの水恒温槽申にて測定を行った。試料2.O mlを粘 度計の黒日に入れ,各摺合わせをグJ一スを用いて密着 の後,恒温槽中に直立静置する。約10分間の放置にて試 料の温度平衡を待つ。試料を吸い上げ三部の上下にある 劃線間を試料液面が自然に流下するに要した時間(t 試料)を測秒計にて測定する。測定は数回繰返して平均 値を求める。温度平衡が完全に達成されてない間は,試 料温度の上昇によって流下時間は減少するが,平衡に達 した後は変化はみられない。別lc O.9%食塩水を試料と して同一条件にて測定を行う(t標準)。次式により得ら・
れる値を根対粘度(ηrel)とする。
なお,相対粘度より1を減じた値を比粘度 (ηsp)と する。
rpsp = T7reJ 一 1
試料の粘度は極めて広い範囲にわたるので毛細管内径 の種々なる粘度計を使用し,試料での流下時間が1乃至 5分になるように試料に応じて粘度計を選んだ。各粘度 計においてその形態はできるだけ同様になるようにし,
ことに両劃線間容積及び底槽内試料液面と劃線間の高度 差は均一なるよう努めた。
2) 固有粘度の測定6)
固有粘度(Intrinsic.viscosity〔η〕)とはつぎの式で 定義される値をいう。Cは濃度を表わす。
Cn) == lim (nsp/C)
c−o
いいかえれば,この値は溶液の無限大稀釈における粘 性を代表するものであり,溶質分子相互間の影響の存在 しない状態の粘度とも考えられる。
前項に従って原試料についての流下時間を測定した 後,底槽より試料の一部を除去し,この除去された試料
と同容の生理的食塩水を添加する。毛細管中へ吸い上 げ,吹き下ろしを数回繰返した後,前に述べたと同様に して流下時間を測定する。この操作を反復することによ 一l177一
って種々稀釈度における比粘度を求める。別に乾燥した 秤量瓶に試料の1皿1を採り直ちに秤量する(試料Ag)。
赤外燈照射によって恒量を得る迄乾燥し,残量(Bg)を 求める。試料中の不揮発性物質濃度Cを次式にて計算す
る。
B c=
A
この値は膿漿中に含まれる全ての不揮発性物質濃度を 示すものであるが,本研究においてはηrel/Cをもって 膿漿の還元粘度(Reduced viscosity)とする。各稀釈 度における不揮発性物質濃度は原試料についての値Cを 稀釈度ICて除して求めた。
各稀釈度における還元粘度を計算し,図上より外挿法 によって無限大稀釈度における還元粘度,すなわち固有 粘度を推定する。(第2図,上部の線)
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第3図 A.1.測定製置
ユー gン粘性に対して測定を行った。
測定は前述オス}ワルド型粘度計を使用し,これに加 圧装置を組合わせて行った8)(第3図)。オスhワルド 型粘度計において試料を流下させている力は球部に吸い 上げられた液面と,底槽にとどまる液面の高度差に基く 液の自重による。本実験に用いた粘度計による測定の一 例を示すと,試料を上部劃線迄吸い上げた時の両液面差 はi3. 3 cm,下部劃線迄流下した時は10.6cmである。
このように液面差は液の流下に従って次第に変化する が,便宜上上記下値の平均値(この場合は12.Ocm)を
もって液面差とみなした。試料の比重は,ほぼ水に近い ので測定に際して加えられる力はこの場合12.Ocm H20 である。
オスbワルド型粘度計の管部にのみさらに圧力を加え る時は,液の流下のための力は液の自重に,加えた圧力
4 2
第2図 稀釈による粘度の変化
固有粘度は(1nηrel)/C(lnherent viscosity)の極限 宿(C→0)によっても求めることができる(第2図,
下部の線)。ムコ多糖類の一つであるビアル・ン酸につ いての研究によれば(10gηrel)/Cは近似的にはCの如 何を問わずほぼ一定の値を示すという。そこで(log ηre1)/Cをもって固有粘度}こ関係ある数値とした場合も ある。しかしながら第2図下部の線でみとめられるよう
}こ (ln f.re1)/C 〔(logηre1)/C=0.4343 (lnηrel)/C〕
は濃度の変化に全く無関係ではない。
3)Anomalous Indexの測定
高分子物質の溶液の比粘度は,それを測定する際に働 く外力によって著るしく変動し,いわゆる非二=L 一一トン 粘性6)を有することは古くより卸られている。浅田1)
の輯対するように冷性濃漿の特徴的ζ二丈ま膿漿に含有 されるムコ多糖類にタるものと思われるので儂漿の非二
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第4図 圧力による流下時間の変化(生理的食塩水)
を足したものである。本装置では内容積約21の空気溜を 介して加圧し,種々に流下のための力を変えた。加えら れt圧力は,付属する開管水圧力計により求められる。
流下によって起る容積変化は謹か0.5 mlであるので圧 力は不変とみなし得る。
測定は約80crn〜12cm H20の範囲を5・vlO cm H20 間隔で行った。生理的食塩水で行った結果は,流下圧
(P)の増大に伴って流下時問(t)の減少が認められ たが,この両者の積(Pt)は測定範囲内では一定であ った(第4図)。この値はオス}ワルド型粘度計を使用 した場合,試料の粘度を代表するものといえ.る。したが って生理的食塩水の粘度は測定範囲内では変化がない。
しかし冷性膿漿を試料とした場含は,Pの増大に伴っ てPtは減少する。膿漿の相対粘度は次式で与えられる から
ηrel=_一.膿漿について9)Pt 生理的食塩水についてのPt
相対粘度は流下の為の圧によって変化する (第5図)。
相 対粘 度
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第5図 圧力による相対粘度の変化①(冷性膿血)
すなわち非ニュー}ン粘性を有することが示された。流 下のための圧力変化によって起る粘性の変化を相対粘度 の対数をもつて表わす.と(第6図),圧の小さな間に見
られる急傾斜な直線的減少と,.より六.きな圧力範囲で起 る緩慢な直線的減少とが移行部を中間に狭んで存在する ことがわかった。これら二つの直線的変化は約40・cm
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圧力
( an. H.o)
第6図 圧力による相対粘度の変化②(冷性膿漿)
H20の圧を境としている。
種々に稀釈した同一冷性膿漿について測定を行うと,
移釈度の大きいもの,したがって圧力0における相対粘 度の小さいもの程圧力を増した時の粘度減少が少ないよ
うにみえる。しかし相対粘度の対数の相対的な変化は,
稀釈度の如何を問わず一定であった(第7図)。すなわ ち流下のための圧力の変化による粘度の変化は,粘性の 原因となる物質(ムコ多糖類の性質)によって定まるも のであり,その濃度に依存するところは小さいと考え
る。
流下のための圧力の変化による粘度の変化を数量的に 表わすために次式1こよって定められる値をAnomalous index(以下A.1,)と定めた。
圧力0の時の比粘度が10.0なる試料が,圧力40 cm H20の時の比粘度をHとすれば
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すなわちA.1∵め大なるも.の程圧力の増加に.よって
・粘度が大きi:く減少すろ㍍とを.丞すb...⊆;、で40:夕理恥0
の圧の時の比粘度を用いたのは,前述のごとく冷性膿漿
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第7図
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種々稀釈度による測定
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実際の測定値よりの計算はつぎのごとくにして行う
(第8図)。種々の圧力ICて測定した結果より,圧力と Iogηrelの間のグラフを画き,図上より外挿法にて圧 力0の時のlogηrel(すなわち10gηo)及び圧力40 cm H20の時のIo9ηre1(すなわちIo9η40)をそれ ぞれ求める。相対粘度の対数の相対的な変化は,同一試 料では等しいので
Io9(H十1) _ Iog T40 10g (10十1) log no
したがって
H… a・til・9膿llo一・…4・4)一・
このHを用いてA.1.を求める。
4)比重
丁丁,膿漿共に硫酸銅法20)により測定した。全ての 冷性膿漿につい. cif下傘現象が認められt。関節液の場 合はKling 5)4)が酷酸を用いて認めたsack and tube formationによく似た現象を呈する。
5)膿漿率
Wintrobe管により毎分3, OOO回転,20分遠心分離の 後,液体成分の百分率をもって膿漿率とした。
実験結果及び考察
冷性二二について測定した種々の粘度,すなわち比粘 度,固有粘度, (Iogηrel)ノC, A.1.の値を度数分布図
として示した(第9,10,11,12図)。さらに比粘度,
(10gηre1)/C及びA.1.については同様測定を行った 種々関節液の値と対比して図示した(第13,14,15図)。
冷性膿漿の比粘度は,0.73 ・V 13.15に分布し,平均 値4.37を得た。これは本教室において熱性二二につい て同条件にて行った測定結果15>の0.33〜1.94ある いは佐藤15)が血清に対し,18。Cにてピペツ〉型粘度 計を用いて得t値の1.73〜1.89に比較すると,冷性二 二がかなり高い比粘度を有することを示すものである。
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第8図 A.1.の計算法
ではこの圧を境として粘度の変化の様相が異なるためで ある。
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第9図 比粘度の度数分布(冷性膿漿)
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固有粘度の度数分布(冷性濃漿)
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第11図 legηrel/Cの度数分布(冷性二二)
生体物質中でもとくに粘性の大きい液として知られる関 節液と比較した場合,、平均値においてはやはり冷性膿漿 が低回を示している。本研究で用いた関節液を,死体膝 関節液,変形性膝関節症,膝関節リウマチのそれぞれに わけると,死体膝関節液は平均120.5ではなはだしく高 い比粘度を示し,変形姓膝関節症では平均25.0でこれ に次ぎ,膝関節リウマチの場合は平均9.6で関節液中最
も低鰹であり冷性膿漿の分布と重なるものが多い。
不揮発性物質濃度の補正を加えた.(logηrel)/Cにつ いては3.41〜12.22に分布し,平均値は8.9であった。
関節液はこの場合も冷性膿漿よりも高値を示す。関節液 中,最も低い値を与える膝関節リウマチの場合は,平均 13.5でやはり冷性膿漿よりは大であるが,しかし不揮発 性物質濃度が,冷性膿漿ではプ〜10%であるに対し,関
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第12図 A.しの度数分布(冷性膿漿)
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第13図 冷性膿及び種々関節液の比粘度値
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第14図 冷性膿及び種々関節液の(109ηrel)/c値
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的に大きくでていることも考慮される。
粘性物質の濃度にはほとんど影響されず,その分子の 形態,大きさを反映すると思われるA.1.は冷性平野で は10.9N60.1,平均36を得た。これは冷性膿漿の粘 度が,測定圧によって著るしい変動を受けること,した がって冷性膿漿の高粘性は,膿漿中に含まれるムコ多糖
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第16図 比粘度と固有粘度の関係(冷性膿漿)
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比粘度と(109ηrel)/Cの関係(玲性膿漿)
類の高分子性によるものであることを示すと考えられ る。関節液においても,圧力による粘度の変化ははなは だ明瞭であり,死体膝関節液ではA.1.74.3とし⊃う高 値をえた。変形性膝関節症においても平均52.0で冷性膿 漿に比してかなり大きい恒であるが,膝関箪.り.ワ、マチに おいては平均37. 3で冷性膿漿との差は極めて小さ})。 、非 テユー ,} ・xXli性の大きさは,粘性物質であるムコ多糖類 の高分子性に依存することが考えられるので,したがっ て冷性膿漿中の粘性物質は,膝関卸り.ウマチ患者膝関節 液中の粘性物質(ビアフレ、 Pン酸).とほ!ま匹敵す、る眞ごの 一÷1!8距
性状を有しているのであろう。
各種粘性間の関係を調べると,比粘度と固有粘度(第 16図),比粘度と(lo9ηre1)/C(第17図)の間には,か なり緊密な関係がみられ,比粘度の大なる試料程,固有 粘度あるいは(lo9ηrel)ノCが大である。先に実験方法 の部において,固有粘度と(logηrel)/Cは近似的に同 一の性質を代表するものと見倣しうることを述べたが,
第18図に示したように,この両粘性は互に強く関連して いることが認められた。
冷性三三の粘性に大きな影響を与えるものとして,膿 漿中粘性物質の濃度及び性状が考えられる。膿漿中の粘 性物質の濃度が高く,その分子量が大である程,大きな 比粘度を呈するであろう。第19図には膿漿の粘度と不揮 発性物質濃度の関係を示した。この図においては,先に も述べたように粘性物質の濃度は,相対粘度の対数と近 似的に比例すると考えられるので,粘度としてはlog ηre1を用いて示した。やはり不揮発性物質濃度の大な
る膿漿程大きな粘性を示すことがうかがわれる。すなわ ち冷性膿漿の粘度は,膿漿の濃さlt一一部支配されるもの である。しかし濃度補正を行った粘度,すなわち固有粘 度,あるいは(logηrel)/Cと比粘度が,なお強い正の 相関を示している(第16,17図)のはつぎの理由による のではなかろうか。第一に異った試料中の不揮:発性物質 の組成が等しいとは必らずしも考えられない。本実験IC おいては,膿漿を赤外燈下にて乾燥して得られる物質濃 度をもって粘度の補正を行っている。第19図の結果はこ のようにして得られた不揮発性物質濃度の大なる程,粘
度が高く,したがって粘性物質量の大きいことを示すも のとは思われるが,不揮発性物質中に粘性物質が常に同 じ割合で含まれることを示すものとは考え難く,むしろ かなり不均一であり,かっ不揮発性物質濃度の小さい膿 漿は粘性物質の量が比較的小さいことを思わせる。した がってこのような値をもって補正した粘度,.すなわち固
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有粘度,あるいは(logηrel)/Cは比粘度と正の相関を 示すものであろう。
第二に濃度の大きい膿漿中の粘性物質程,分子量が大 きいならば,やはり濃度補正を行った後においても,比 粘度との間に相関が残るであろう。先}C A.王.は試料の 濃度によるところが小さく,粘性物質の性状,とくにこ の場合には,分子量によって大きく定められることを述 べアこが,A.1.と不揮発性物質濃度の関係を求めると,
第20図のごとく不揮発性物質濃度大なるものにおいて,
A.1.の高値が得られる傾向が認められる。
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第21図には比粘度とA.1.の間の関係を示したが,や はり正の相関が観察される。すなわち冷性膿漿の粘度は 膿漿中の粘性物質の性状,すなわち分子量等によっても 支配されていることが示される。
以上をまとめると,冷性膿漿は,熱性膿漿,血清より 著るしい高粘度を示しており,関節液に次ぐ。その粘性
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第21図 比粘度とA.1.の関係(冷性三三)
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第23図 比粘度と膿漿率の関係(冷性二二)
は関節液同様高分子の粘性物質によって特徴づけられて おり,その濃度,及び分子性状によって支配されること が認められた。
冷性二二の他の性状と粘性の関係に対して若干の検討 を試みたが,膿漿比重と比粘度の間(第22図)に正の相 関が観察されナこ以外,二二率,二二比重,三二二二比重 差等と各種粘性の間に明瞭な関係を見出すことは困難で
あった(第23図)。膿漿比重:は膿漿の不揮発二物質量に よってかなり左右されるので,前に検討を加えたごとく 比粘度と相関するのであろう。また患者の病勢を示す一 指針として,血沈値と比粘度の関係(第24図)をみた が,やはり明瞭な関係は見出し得ないようである。
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第24図 比粘度と血沈値の関係(冷性膿漿)
一報で扱った全ての冷性膿漿は落下傘形成を代表とす る高粘性々状を示し,さらに詳細な粘度の測定によって も,血沈のごとき病勢を示す値とは無関係であることを 認めた。
総 括
1)冷性膿漿61例に対し比粘度,濃度補正を加えた粘 度(固有粘度,(logηrel)/C),及び圧力による粘度の変 化(A.1.)を測定した。
2)冷性三下の比粘度は,平均4. 37(37。C)で熱性 下下,血清より著るしく高く,関節リウVチの関節液の それに近い。
3)不揮発性物質濃度が大きいため,固有粘度,ある いは(log rprel)/Cは関節液より小さいが, A.1.は関 節IJウマチの関節液とほぼ同程度である。
4) 冷性三豊の粘度は,膿漿中の高分子粘性物質によ るものであり,その濃度及び分子の大きさによって支配 される。.
5)冷性膿漿はすべて高粘性を示し,しかもその粘度 の値は,病勢とは無関係である。
稿を終るに臨み,御懇篤なる御指導と御校閲を賜った 森崎直木教授に深甚な謝意を表します。また終始御指 導,御爺錘下さった東京女子医大生化学教室,松村義寛 教授,松村圓講師に衷心より感謝いたします。
本論:文要旨の一部は第29回及び第30回の日本整形外 科学会において発表した。
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