• 検索結果がありません。

身体と精神の健康を維持しながら長寿を全うすることができる としている また 四気調神大論篇に 聖人は春と夏には陽気を養い 秋と冬には陰気を養って この根本に順う とある これは春夏は陽気が次第に強くなるので 陽気の生長をよくさせるため 食事 養生には陽によいものを使用し 秋冬は収穫の季節で陰に属する

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "身体と精神の健康を維持しながら長寿を全うすることができる としている また 四気調神大論篇に 聖人は春と夏には陽気を養い 秋と冬には陰気を養って この根本に順う とある これは春夏は陽気が次第に強くなるので 陽気の生長をよくさせるため 食事 養生には陽によいものを使用し 秋冬は収穫の季節で陰に属する"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 第3回 普賢会(2014 年 10 月 26 日) 食物療法の基本理論 中医薬膳学の特徴 中医学の理論にもとづく 予防を中心とする 陰陽調和のための食事 弁証による施膳 四気五味 調理方法を重視 中医薬膳学の内容 食用(食節) 食養(食補) 食療(食治) 薬膳 食忌(食禁) 中医薬膳学の目的 正気を補養する(扶正) 邪気を取り除く(去邪) 陰陽を調和させる

中医薬膳学の基本理論

中医薬膳学の特徴

中医学の理論にもとづく

中医薬膳学は、中医学の理論に従って、適した食材・中薬を用い、飲食・養生・健康の維持・疾病の 予防・病気の治療に関わる学問である。 中医学の陰陽五行学説・蔵象学説・病因病機・四気五味・昇降浮沈・帰経などの理論は、すべて薬膳 学の中に浸透している。例えば、『黄帝内経素問』上古天真論篇、「上古のほとんどの人は、養生の道理 をわきまえ、陰陽に則り、術数に合わせ、飲食に節度をもち、労働と休息にも一定の規律をもち、みだ りに動くことをしなかった。それゆえに肉体と精神とは、とても健やかで盛んであり、彼らが当然享受 すべき年齢まで生きて、百歳をすぎて世を去った」とあるように、自然の中に生かされている人々は、 常に「夜陰昼陽」の変化に従って日常生活を行い、食生活の節度と規則正しい生活習慣を守っていれば、

(2)

2 身体と精神の健康を維持しながら長寿を全うすることができる。としている。また、四気調神大論篇に 「聖人は春と夏には陽気を養い、秋と冬には陰気を養って、この根本に順う」とある。これは春夏は陽 気が次第に強くなるので、陽気の生長をよくさせるため、食事・養生には陽によいものを使用し、秋冬 は収穫の季節で陰に属するので、翌年の陽を生長させるために、陰によいものをしっかり摂り込みたく わえるべきである、という意味である。 自然界だけでなく、身体の各臓腑の生理機能は、促進し合い、病気のときにも互いに影響し合うと考 えられている。生まれた時点で親から受けたものを「先天の本」といい、これは腎の中に貯蔵されてい る。これに対し栄養を作る脾胃は、「後天の本」という。このように、身体にとって、腎と脾の関係は非 常に大事であると考えられている。自然界が提供してくれた食材と中薬は、必ず脾胃の消化・吸収作用 を通じて、気血に変化し、腎を養い、生命を維持する役目を果たしているので、脾胃の機能が正常でな いと、おいしいものをいくら食べても体によいものへと変化しないため、元気にはならない。逆にいえ ば、生まれつき体が弱い子供でも、育て方によって元気な子供になる可能性がある、ということである。 このように、自然界・人体・臓腑・食事は密接に結びついているとする考え方が、中医学の整体観念 であり、このことが中医薬膳学の中に、明確に現れている。

予防を中心とする

中医学の一番大事な目的は、健康と長寿である。『黄帝内経素問』上古天真論篇に、「上古の人はみな百 歳になるまで生き、しかも動作が衰えたりしてはいなかった、と聞いている。ところが、現在の人は50 歳になるやならずで動作が衰えてしまう。これは時代環境が異なっているためなのか、それとも人々が 養生の道をはずれているためなのか」とあるように、黄帝が発した第1問目は薬や治療についてではな く、百歳を超えても元気でいることの秘結であった。病気にならずにいるという、いわゆる未病医学で ある。「道理をよくわきまえた人は、病気になってしまってから治療法を講ずるのではなく、まだ病にな らないうちに予防する(治未病)。国家を治めるのと同様に、騒乱が起こってしまってからこれを治める 方法を研究するのではなく、騒乱の発生する前に、未然にこれを防ぐ」などとも記載されている「治未 病」の意味は2つある。1つは、医者は普段の生活において、治療より予防を中心としなければならな い、ということで、「正気存内、邪不可于」「精神内守、病安従来」とあるように、食・住・衣・行動に おいて「正気」を体内にたくわえていれば病気になることはなく、精神が安定していれば、健康を守る ことができる、すなわち個人個人が自己管理し、病気にならないように努力する。ということである。 もう1つは、病気になったときに、医者は患者に対して早期治療を行い、同時に疾病の悪化を防ぐため に一番よい治療方法を選択する、ということである。薬は最後の手段として投入する。このため、『黄帝 内経素問』では81 篇のうちの 41 篇にも及ぶ、疾病の予防・養生・食習慣についての論述がある。

陰陽調和のための食事

『黄帝内経素問』生気通天論の中に、「飲食の五味の調和に注意すれば、骨格は歪まず、筋脈は柔軟で 調和し、気血は流通し、腠理は緻密でしっかりする。このようであれば骨気は剛強となる。人は必ず養 生法則を慎んで厳しく守らなければならない。そうすれば天与の寿命を享受することができる」とある。

(3)

3 また、蔵気法時論篇に「五穀は人体に栄養をつけ、五果はその補助となり、五畜の肉はそれを補益し、 五菜は臓腑を充実させる。気味を調和させてこれらをたべたり服用したりすれば、精気を補益する(補 精益気)ことができる」と書かれている。ここでいう「気味」の「気」は陽で、「味」は陰であり、「補 精益気」の「益気」は陽で、「補精」は陰である。食生活の中で五穀・五畜・五果・五菜の陰陽属性をよ く知っていてこそ栄養のバランスのとれた食生活ができる、ということをいっている。 また、普段の食生活の中で、偏食をしない、食材と調理法を多様化する、ということもたいせつであ る。素材は食べられるところは全部使うようにする。例えば、生姜を使うときに、皮をむいてから使う 人が多いが、生姜の皮も中薬であって利尿作用があり、むくみに有効なので、むかずに使った方がよい。

弁証による施膳

薬膳に使われる食材と中薬は、一般の素材と同じものだが、薬膳は普段の食事ではなく、何らかの目 的を達成するための食生活である。遺伝・地理環境・生活習慣・職業・体質的な特徴は人によって違い、 四季陰陽の変化の影響、加齢による身体の生理機能も変化していくので、それぞれの特徴に合わせ、食 生活を調節することにより陰陽の動態平衡を保つのが、薬膳学の本質である。献立を立てるときには、 弁証による施膳が必要となり、これが食材と中薬を選択する原則にもなる。例えば、子供の場合は、体 を成長させるために肉類を多めに摂る。思春期に入ると陽気が盛んになり、ニキビや吹出物が出やすく なるため、大根・青菜など涼性のものを多めに摂る。老年期に入ると、消化機能が低下するため、温性 の食材や粥など消化しやすいものを多めに摂る。このように「審因用薬」「弁証用膳」「同病異膳」「異病 同膳」の原則をもとに、立膳する。

四季五味の治療効果を得る

『黄帝内経素問』蔵気法時論篇に、「辛味には発散作用が、酸味には収斂作用が、甘味には緩和作用が、 苦味には堅強にし乾燥させる作用が、鹹味にはものを柔軟にする作用がある。毒性のある薬は、病邪を 攻め病を治療するが、五穀は人体に栄養をつけ、五果はその補助となり、五畜の肉はそれを補益し、五 菜は臓腑を充実させる。気味を調和させてこれらを食べたり服用したりすれば、精気を補益することが できる。この五種類の食物には、それぞれ辛・酸・甘・苦・鹹の味があり、それぞれ五臓のうちの一臓 の気の働きを助け、あるいは発散し、あるいは収斂し、あるいは緩和し、あるいは燥湿し、あるいは堅 固にし、あるいは柔軟にするなどの作用をもたらす。四時・五臓にこれらを配当し適合させて病を治療 するには、五味の適合する性格に従って行う」とあるように、季節による身体の不調・五臓の病気は、 五味をそれぞれの働きに合わせて使うと、適切な効果が得られる、と書かれている。 大昔、食材と中薬はハッキリ区別されておらず、使用目的によって同じ材料が、食材にも薬にもなっ た。『黄帝内経太素』調食篇には「空腹のときに食べると食材といい、病気を治療するために使うと、薬 となる」とある。例えば、穀類である米は、空腹を満たすために食べると食材の米でしかないが、疲れ やすい・無気力・めまいがする・食欲がないなどの場合に食べると、気を養う補気類の薬となるわけで ある。 『傷寒雑病論』にある 112 の処方の中でも、半分以上は成分に食薬(食材にもなる中薬)を含む処方

(4)

4 である。 このような、中国古代から現在に至るまで伝承されてきた貴重な経験が、中医薬膳学の「食薬同源」「食 医同源」説の背景となり、治療効果は日常の食生活から生み出されていた。

調理方法を重視する

薬膳学は、養生・疾病の予防・病気の治療などを目指す学問であるが、治療のために中薬を飲むのと は違い、見た目の楽しさや食べるときのおいしさがないと、「膳」とはいえない。したがって、作るとき に調理法を重視するのは当然のこととなる。例えば、虚弱で食欲がない人に対しては、食欲を誘うよう な工夫をする。いくら効果が高くても食べられなければ薬膳の意味がないからである。そこで、薬膳を 作る際には、目的に合わせて食材や中薬を選び、料理の色・香り・おいしさ・形の面において、すべて がそろうような、適切な調理方法を取り入れることが重視されている。 例えば、陰虚であれば、生野菜、冷たいデザート・刺身のような生ものは禁物である。

中医薬膳学の内容

中医薬膳学は、基礎理論と臨床応用を含む5つの内容―「食用」「食養」「食療」「薬膳」「食忌」に大 別されている。

食 用(食節)

「食用」とは、食材の種類・食事の回数などを、季節・時間・場所・年齢・性別などそれぞれの場合 に応じて正確に選択することであって、いろいろな食材を広く取り入れることと、適量であることが大 事である。例えば、日本は島国なので、魚貝類をよく食べるが、中国は大陸なので肉類をよく食べる。 これは、場所による選択の1つであるといえる。季節による選択についていえば、夏は暑いので、スイ カ、ニガウリ・豆腐といった涼性の食材はよく摂るが、冬は寒いので鶏肉・羊肉・唐辛子のような、温 める性質をもった材料を使った温かい料理(焼き肉や鍋物など)を食べることが多くなる。こういった ことを、食用という。

食 養(食補)

「食養」とは、食材を用いて身体を養う、食養生のことであり、病気をもっていない人が対象となる。 人間は、生命活動を行い、健康を維持するために、食べ物を摂取・消化・吸収・利用し、身体を補養す る。食養には、美肌・ダイエット・身体の強壮・老化防止などの目的で、補養作用がある食事を取り入 れることも含まれる。

食 療(食治)

(5)

5 「食療」とは、食材を用いて、その食材の効能により疾病を治療、あるいは治療を補佐することであ る。食療の対象は病をもっている人である。中医食療は昔から、疾病を防ぎ、病気を治す手段として、 一般の家庭で常用されてきた。用いるものはすべて食材である。例えば、白粥・雑炊・麺類・鶏スープ などは、カゼのときや体が弱い人、病気の回復時によい食事である。セロリは高血圧の治療を補助する 働きがある。大根は消化を促進し、通便させる働きがあるので、食べ過ぎたときに用いるとよい。 中国唐代の孫思邈も、「医者はまず病気の原因を調べ、食によって治療するべきである。それで治らな いときに薬を使うのだ」と書いている。

薬 膳

伝統的な薬膳の概念では、食療のうえに、中薬を加えて作った、病を治すための料理が、「薬膳」と称 される。効果は中薬が出すことになっている。簡単にいうと、薬と膳を合わせたものである。薬はいわ ゆる中薬で、膳は料理、つまり中薬を利用して作られた料理、ということである。食療の効果がないと きに薬膳を使う。 食療と薬膳の共通点としては、両方とも中医学の基本理論に従い、弁証論治を基本法則とし、料理と いう方法で作った膳食であり、気血を調和させる・陰陽のバランスをとる・病気の予防・治療・健康増 進などを目指している、ということがあげられる。 現在では、健康維持や病気の予防・治療効果などの作用がある膳食は、みな薬膳と呼ばれている。薬 膳を作るためには、料理の腕以上に、中医学の理論と中薬の知識を身につけていることが重視される。

食 忌(食禁)

中医学の飲食禁忌には、体質や病気に関するもの、妊娠中や授乳中に適用されるもの、養生に関する もの、食材や薬の組み合わせに関するもの、などがある。これも中医薬膳学の特徴の1つである。場合 によって食べられるものと食べられないものがあり、それも人・場所・時間・疾病によって違うので、 食生活の中で注意しなければならない。 例えば、汗をかきやすい・のどが渇く・冷たいものを好む・便秘しやすいなど陽盛の体質の人には、 辛いもの・脂っこいものが禁忌であり、冷え症の人なら冷たいもの・生もの、また柿と茶を一緒に使う、 などが禁忌である。妊娠中には、胎児によい影響を与えることが大事なので、妊婦は鯉や孔雀のような きれいなものを常に見るのがよく、羊肉・鶏肉は禁忌である。授乳中には、魚・エビ・鶏肉・馬肉は、 発疹を起こしやすいので禁忌とされる。 食 用 食 養 食 療 薬 膳 食 忌 健康な人 病 人 食 材 食材+中薬 中医薬膳学

(6)

6

中医薬膳学の目的

中医薬膳学では、食材と中薬を用いて特定の目的を達成する。その目的は大きく3つに分けられる。 その3つとは、「正気を補養する」「邪気を取り除く」「陰陽を調和させる」である。 「正気を補養する」とは、補気・助陽・滋陰・養血・生津・塡精などの作用をもつ食材と中薬により、 虚弱証に対して施膳する方法であり、老化防止にもよく使われる。 「邪気を取り除く」とは、解表・清熱・瀉火・行気・活血・化瘀・涼血・去痰・燥湿・去風湿・解毒・ 瀉下・利尿などの効果がある食材や中薬を用い、実証の病気に対してよく使う方法である。 「陰陽を調和させる」というのは、季節・体調および栄養のバランスを調節する方法で、臓腑のバラ ンスをとり、健康・長寿によい状態に達するために、よく使う方法であり、ストレスがたまったときや、 神経質な状態のときになどにも使われてる。

正気を補養する(扶正)

■健康を維持し、病気を予防する

食材や中薬には様々なものがあり、含まれる成分もそれぞれ異なる。合理的に配膳・調理すれば、営 養を摂取し、命を育て、生命活動の要求を満たし、健康を維持し、病気を予防することができる。 現代栄養学の立場からみると、穀物には、糖質・水分のほか、多少のタンパク質・脂質が含まれてい る。肉類にはタンパク質と脂質がある。卵には脂肪と、良質なアミノ酸を含むタンパク質がある。魚介 類はビタミン A・B やミネラルが豊富である。野菜・果物にはビタミン・ミネラル・繊維・少量のタン パク質と脂質が含まれる。これらの栄養素の食物を調理して摂取すれば、確かに栄養状況を改善するこ とができる。 しかし、中医薬膳学は、食材や中薬の四気五味・帰経などを重視し、これらにより体調を整え、病状 を改善する処方を提案している。『黄帝内経素問』六節蔵象論篇には「天は上にあって陽となり気となり、 人に五気を供給する。地は下にあって陰となり味となり、人に五味を供給する。五気は鼻より吸入され、 心肺に貯蔵される。心は顔色を艶やかにすることを主り、肺は音声を主るので、顔面の五色は潤っては っきりし、音声は大きくよく通るようになる。五味は食物として口より入り、腸胃に貯蔵される。消化 されて、その精微が吸収され、五臓の気が養われる。五臓の気と五味の穀気が再び相合わさると、津液 が生じ、臓腑を潤し、精髄を補うことができるようになり、神気も自然に盛んになってくる」という記 載があり、五気・五味の調和によって、精気を充実させ、五臓の機能を高め、病気に対する抵抗力を強 め、健康状態を維持することができる、としている。 健康を維持するためには、4つの方法が常用されている。平性の食材や中薬による「平補法」、寒涼性 の食材と中薬により身体の熱をとる「清補法」、温性の食材と中薬により身体を温める「温補法」、熱性 の食材と中薬により身体を熱くさせる「峻補法」である(表1)。

(7)

7 表1 補法の食材と中薬 方 法 性 質 分 類 食 材 中 薬 平補法 平・涼 補 血 滋 陰 米・粟・大麦・ハト麦・トウモロコシ・長イ モ・黒マメ・大豆・落花生・キノコ・キクラ ゲ・蜂蜜・卵・牛乳・豚肉 枸杞子・百合・玉竹・ 麦門冬 清補法 涼・寒 滋 陰 粟・トマト・キュウリ・金針菜・スイカ・梨・ リンゴ 亀板・鼈甲 温補法 温 補 気 助 陽 黒ゴマ・クルミ・龍眼肉・鶏肉・鮎・エビ 蓮子・桑椹・大棗 峻補法 熱 助 陽 羊肉・鹿肉・鹿腎・熊の掌・スッポン・イシ モチ・鱒・巴魚 鹿茸・紫河車

■老化を予防する

生命における自然の法則として、生・長・壮・老・死がある。しかしこの生命の老化過程は、遺伝や 生活環境や地理や養生の違いによって異なるため、個人差が大きい。老化防止のためには多くの方法が 用いられている。その中で最も多いのは、肺・脾・腎を補益する方法で、山薬・茯苓・黄耆・朝鮮人参・ 西洋人参・蓮子・大棗・枸杞子などがよく使われる。記憶力を高めるためには胡桃、白髪の予防には黒 ゴマ・桑椹・何首烏、足腰を丈夫にするためには豚骨・鶏ガラスープ・杜仲・独活・桑寄生、聴力をよ くするためにはアワビ・菊花・決明子・菖蒲がよく使われる。 また、薬膳の作り方も重要である。食材や中薬の効能を十分に引き出すためには、粥・スープ類の調 理法がよく用いられている。清代の曹庭棟は、特に老人のために粥で健康を養い、長寿を延ばすという ことを考えて、100 種類の粥を『老老恒言』に紹介した。また黄雲鶴が『粥譜』を著し、食べやすく消 化しやすい粥を紹介している。

■虚した臓腑を補い、丈夫にする

千年も前に、動物のレバーで夜盲症を、昆布で甲状腺腫を治療したという記載が残されているように、 虚弱した臓腑を食材と中薬で補うことができる。 臓腑の機能が低下すれば、疾病を引き起こす原因となる。臨床においては、心悸・息切れ・だるい・ 疲れやすい・咳・喘息・食欲不振・腰膝無力などの症状がよくみられる。その際、補養する方法(補気・ 助陽・養血・滋陰)を用いる。これによく使われる食材と中薬は、表2の通りである。 表2 補養の食材と中薬 作 用 食 材 中 薬 補 気 ウルチ米・モチ米・粟あわ・黍きび・山イモ・ジャガイモ・ニンジン・ インゲン・シイタケ・豆腐・鶏肉・ガチョウ肉・ウズラ肉・ 牛肉・ウサギ肉 朝鮮人参・黄耆・西洋人参・ 大棗 助 陽 生姜・山椒・ニラ・クルミ・羊乳・鶏肉・羊肉・牛肉・鹿肉・ 鳩の卵・雀肉・エビ・田ウナギ・ナマコ 丁子・紫河車・冬虫夏草・杜 仲・淫羊藿

(8)

8 養 血 ホウレン草・ニンジン・ライチ・松の実・豚肉・牛レバー・ 羊レバー・スッポン・マナガツオ 枸杞子・当帰・白芍・熟地黄・ 何首烏・桑椹 滋 陰 百合根・白キクラゲ・梨・ブドウ・牛乳・卵・豚肉・スッポン・ イカ・ホタテ貝 枸杞子・麦門冬・玉竹・黄精・ 女貞子・桑椹

邪気を取り除く(去邪)

体質・季節・年齢・環境など様々な素因によって、病気が発生する。 それぞれの病気に対する治療方法としては、例えば、カゼのときには生姜・ネギの発汗作用による「解 表法」、熱に対しては蒲公英・魚腥草(ドクダミ)・芦根・白菜・セリを用いる。「清熱法」、便秘には番 瀉葉(センナ)・蘆薈(アロエ)・火麻仁を用いて便を下す「瀉下法」、ストレスによる気滞証には薄荷・ 陳皮・玫瑰花・茉莉花(ジャスミン)による「疏肝理気法」、瘀血を治療するためには当帰・川芎・三七・ 丹参・紅花・欝金・ナス・チンゲン菜を使う「活血化瘀法」、その他にも「利尿」「去痰」「燥湿」「去風 湿」「涼血解毒」などの方法がある。 これらの方法はすべて、病気の邪気を取り除く方法である。

陰陽を調和させる

■四季の陰陽の調和

中医薬膳学は「天人合一」という、素朴な考え方をもっている。自然界の陰陽の変化に従って、身体 の陰陽も変化しているため、食生活は四季の陰陽に合わせるべきである、という考え方である。それぞ れの季節に応用される食材と中薬には、表3のようなものがある。 表3 四季に合わせた食材と中薬 春 性味 温性・涼性・辛味・甘味・適度な酸味 食材・中薬 米・麦・葱白・生姜・紫蘇・香菜・薄荷・菊花・桑葉・淡豆豉・大棗・落花生 控えるもの 酸味・苦味 夏 性味 寒性・涼性・鹹味・酸味・適度な苦味 食材・中薬 粟・ニガウリ・豆腐・セロリ・キュウリ・トマト・なす・レンコン・スイカ・緑 豆・烏梅 控えるもの 冷たい物・辛味・苦味 秋 性味 涼性・温性・酸味・甘味 食材・中薬 粟・キュウリ・ビワ・パイナップル・ゴマ・蜂蜜・乳製品・卵・豚肉・貝類 控えるもの 苦味・辛味 冬 性味 温性・熱性・辛味・甘味・酸味・適度な鹹味 食材・中薬 穀類・イモ類・キクラゲ・鶏肉・羊肉・スッポン・亀 控えるもの 鹹味・苦味

(9)

9

■身体の陰陽の調和

身体は、五臓六腑・四肢・百骸・経絡経血・精・気・血・津液・神などで構成されている。各組織は 独特な働きをもちながら、互いに陰陽のバランスを保っている。これを「陰平陽秘」といい、身体にと っては一番よい状態である。しかし、年齢・季節・環境などの変動により陰陽のバランスは常に変化し ているので、調節する必要がある。 例えば、暑がり・汗をかきやすいといった陽盛の体質、あるいは発熱・のどの痛み・口内炎・ニキビ・ 便秘のような熱性の疾病のときには、白菜・セロリ・トマト・キュウリ・ナス・大根・茶・梨・スイカ・ オレンジ・薄荷・菊花・桑葉・蒲公英など清熱の効能がある食材と中薬を取り入れる。寒がり・疲れや すい・下痢しやすいといった陽虚の体質、あるいは冷え症などの疾病のときには、生姜・ネギ・ししと う・酒・黒砂糖・紫蘇・肉桂・茴香など温陽補気の効能がある食材と中薬を取り入れるとよい。

参照

関連したドキュメント

森 狙仙は猿を描かせれば右に出るものが ないといわれ、当時大人気のアーティス トでした。母猿は滝の姿を見ながら、顔に

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

手動のレバーを押して津波がどのようにして起きるかを観察 することができます。シミュレーターの前には、 「地図で見る日本

だけでなく, 「家賃だけでなくいろいろな面 に気をつけることが大切」など「生活全体を 考えて住居を選ぶ」ということに気づいた生

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

神はこのように隠れておられるので、神は隠 れていると言わない宗教はどれも正しくな