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に縦隔炎を併発し致死的になる重篤なものまで様々な程度 重症度がみられる 2. 成因と発症機序縦隔気腫は 成因 すなわち縦隔に貯留した空気 ( ガス ) がどこに由来するかで分類することができる 1 2) 上述したように 縦隔内で本来空気が存在しているのは食道 気管 気管支などの気道系のみであり 腔内

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縦隔・胸膜疾患における画像診断の役割

はじめに

非腫瘍性・非血管性の良性縦隔疾患は比較的頻度の低 い疾患であり、臨床医のみならず、すべての画像診断医 が単純X線写真を含めて画像所見について熟知している わけではないと思われる。このため、臨床的にあるいは 経過観察として不必要な検査もしばしば行われているの が現状である。本稿では、これらの中でも比較的頻度の 高い縦隔気腫・縦隔炎について取り上げた。線維性縦隔 炎や肉芽腫性縦隔炎も重要な疾患であるが、紙面の関係 上今回は省略した。

Pneumomediastinum and Pneumomediastinitis

Masaki Matsusako

Summary

Pneumomediastinum and pneumomediastinitis are uncommon disorders. It is helpful to understand the pathogenesis of these disorders to make an accurate diagnosis. The diagnosis of pneumomediastinum is confirmed with conventional chest radiography. Posteroanterior and lateral views show radiolucent streaks of gas that outline the mediastinal structures. The lateral view increases the sensitivity of this diagnosis. CT imaging of the chest can be used when the diagnosis is unclear or when there is a clinical suspicion of another pathology. Spon-taneous pneumomediastinum is an uncommon condition, but is a self-limiting disorder and shows a good prognosis. Spontaneous pneumomediastinum usually occurs in young people, and resolves over the course of one to two weeks without intervention. Therefore diagnostic radiologists need to note that we should not be overinvestigating in the clinical setting. On the other hand, Boerhaave’s syndrome (spontaneous esophageal rupture) and descending necrotizing mediastinitis are fatal diseases and often have a poor outcome. Radiologists play a large role not only in diagnosing these disorders and evaluating disease activity but also in making appropriate and prompt decisions about the therapeutic strategy. Esophagography in patients with pneumomediastinum is unnecessary when CT findings are negative for esophageal perforation. Early combined drainage with neck and chest incisions, to-gether with broad spectrum intravenous antibiotics, should be considered the standard care for descending necrotizing pneumomedi-astinitis.

Department of Radiology, St. Luke’s International Hospital NICHIDOKU-IHO Vol.59 No.1 77-91 (2014)

2.縦隔疾患

2-3.縦隔気腫・縦隔炎

松迫 正樹

聖路加国際病院 放射線科

縦隔気腫(pneumomediastinum)

1.縦隔気腫とは 縦隔には食道、気管・気管支などの気道系が通過して いるが、これら以外の本来空気が存在しえない縦隔内に 空気が貯留する状態を縦隔気腫という。気縦隔( medias-tinal emphysema)とも呼ばれる。縦隔気腫は貯留する 空気の量やその進展にもよるが、気胸(pneumothorax)、 心嚢気腫(pneumopericardium)、気腹( pneumoperito-neum)、後腹膜気腫(pneumoretroperitoneum)へと至 ることがある。また、しばしば頸部、ときには顔面にも 達する。一般的には治療を要しないで軽快するが、とき

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 に縦隔炎を併発し致死的になる重篤なものまで様々な程 度・重症度がみられる。 2.成因と発症機序 縦隔気腫は、成因、すなわち縦隔に貯留した空気(ガ ス)がどこに由来するかで分類することができる1、2)。上 述したように、縦隔内で本来空気が存在しているのは食 道、気管・気管支などの気道系のみであり、腔内の空気 である。成因としては、肺胞内圧上昇による肺胞破裂、 背景肺疾患と関連した肺胞破裂、気管・気管支の損傷、 食道破裂、頭頸部の損傷・手術、腹部あるいは後腹膜の 損傷・手術などが挙げられる。肺胞内圧上昇による肺胞 破裂の背景としては、気道閉塞(気管支喘息、気道異物、 急性閉塞性喉頭炎など)、機械的換気(全身麻酔、終末呼 気陽圧)、胸部外傷(鈍的外傷、穿孔性外傷、肺生検)、 深呼吸(過激な運動, アシドーシス、クスマウル呼吸)、 バルサルバ負荷(重量挙げ、ハイムリッヒ法、排便、出産、 亜酸化窒素・マリファナ・コカインの吸入など)、嘔吐(糖 尿病性ケトアシドーシス、神経性食思不振症)、大気圧 の変化(潜函病、姿勢の急激な変化)などがある。背景肺 疾患による肺胞破裂を来す病態としては、感染〔細菌性、 ウイルス性(麻疹、インフルエンザ、天然痘、水痘)、抗 酸菌症(結核症)、肺膿瘍〕、吸引、急性呼吸窮迫症候群 (acute respiratory distress syndrome:ARDS)、肺気腫、

間質性肺疾患などが挙げられる。気管・気管支傷害では、 外傷、気管支鏡下生検、気管・気管支腫瘍、食道穿孔では、 嘔吐、医原性損傷、(穿通性)外傷、腫瘍、頭頸部損傷や 手術では、上咽頭穿孔、顔面骨折や手術、歯科処置、頸 部手術、腹部や後腹膜損傷や手術では、腸管穿孔、憩室 炎、ヘルニア、潰瘍、外傷、直腸・S状結腸手術などが背 景疾患として挙げられる。 特発性食道破裂はBoerhaave 症候群とも呼ばれ、特に 基礎疾患のない患者が激しい嘔吐などにより、縦隔気腫 のみならず縦隔炎を引き起こし、ときに重篤な事態を招 くこともある。詳細は縦隔炎の項で述べる。 3.特発性縦隔気腫(spontaneouspneumomediastinum) 1)定義と頻度 Hammanは、基礎疾患を有しない健康な人に何の誘因 もなく発症する縦隔気腫を特発性縦隔気腫と定義した3) しかし多くの場合、発症時に何らかの誘因となる

epi-sode(triggering event)が認められ、厳密にHamman

の定義を満たす症例は少ない。現在では、基礎疾患を有 しない健康人で、外傷や外科的処置に起因しない縦隔気 腫と定義し、病的ではない何らかの誘因を有していても 特発性縦隔気腫としている。比較的稀な疾患で、一般に は若い世代に好発し、予後良好とされている。自然気胸 と異なり、再発も稀である4、5) 発生頻度は、Abolnikらの入院患者の0.003%(32,896 人に1人)5)Newcomb6)Macia4)の救急外来受診 患者の30,000~44,511人に1人の割合とする報告がある。 本邦では1991年から2000年までの10年間の報告の中で、 個別データの記載があった63例の特発性縦隔気腫につい て村上ら7)が検討しているが、平均年齢19.9歳(765 歳)、男性46例、女性17例と男性に多い。BMI(body mass index)の平均は19.7であり、ほとんどの症例が痩 せ形体型であった。阪本ら8)は、199910月から2008 年1月までの自施設での特発性縦隔気腫19例についての 検討で、平均年齢23歳、10歳台が7例、20歳台が5例と 多かったとしている。 2)臨床症状 臨床症状としては胸背部痛が主である。気腫の頸部へ の進展を伴うと、頸部痛、咽頭痛を訴えることも多い。 呼吸困難や嚥下困難も比較的多い症状で、漏出した空気 が心臓・肺・食道を圧迫するためと推測される。Caceres ら9)の、過去の文献をまとめて検討した報告では、胸痛 (54%)、呼吸困難(39%)、咳嗽(32%)であった。皮下 気腫や頸部腫脹も比較的高頻度で認められる。縦隔気腫 に特徴的な所見とされるHamman’s sign(心拍動に一致 した捻髪音)は、意外に頻度は低い(36.2~40%)5、7) 3)発生誘因と発生機序 まったくの誘因なしに発生した、いわゆるHammanの 定義による特発性縦隔気腫はおよそ4割で、残りの6割が 何らかの胸腔内圧上昇を伴う誘因(triggering event)を 認めていた7)。誘因としては、嘔吐、咳嗽、喘息発作、 排便、分娩、トロンボーンやクラリネットの演奏中、息 ごらえ、カラオケ、応援団活動、少林寺拳法や野球の発 声練習中、激しい運動などが挙げられる。運動やスポー ツと関連した縦隔気腫としては、サッカー、スキューバ ダイビング、バスケットボール、バレーボール、ランニ ング、水泳、野球10)などが知られている。 また誘因とは別に、患者の背景疾患も診断のためには 重要な臨床情報の1つであり、認識しておく必要がある。 喫煙、気管支喘息、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患

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(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)、神 経性食思不振症、糖尿病性ケトアシドーシスなどが重要 である4)。間質性肺炎と気胸については古くから報告さ れているが、間質性肺炎における縦隔気腫もしばしば遭 遇する11)Matsuoka12)によれば、縦隔気腫は間質性 肺炎に対して治療が行われていない場合には間質影(網 状影、すりガラス濃度、蜂巣肺など)が悪化していると き、あるいはステロイドや免疫抑制剤などによる治療が 行われている場合にはむしろ間質影が改善しているとき に生じることが多い。間質性肺炎そのもの、あるいはス テロイド治療が組織の脆弱性をもたらす可能性が考えら れている(図1)。神経性食思不振症による縦隔気腫は、 誘因もなく発症する、いわゆる狭義の特発性縦隔気腫で あることが多いとされる13)。神経性食思不振症に縦隔気 腫が発生する機序としては、自己誘発性の嘔吐に加え、 低栄養障害や著明なるい痩に帰因する組織の脆弱性、特 図1 80歳台,男性.慢性間質性肺炎で経過観察中に縦隔気腫を合併 A〜C 今回,縦隔気腫を合併した際のHRCT像. D〜F 1年前のHRCT像(A~Cとほぼ同レベル). 1年前と比べて,今回は明らかに間質影,牽引性気管支拡張を伴った肺の容積減少,蜂巣肺の程度が増強している. A D B E C F

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 に肺胞の弾性低下があるため、通常よりもわずかな刺激 で肺胞の破裂が起こりやすい状態にあると考えられてい る。 発症機序としては、Macklinの説が有力とされ、何ら かの誘因により気道内圧が上昇することで、肺胞内圧上 昇を生じて肺胞が破裂し、漏出した空気が隣接する肺間 質で間質性肺気腫という状態になり、肺血管鞘の脆弱な 部分を剥離しながら肺血管に沿って肺門に達し、さらに は縦隔や皮下に至るとするものである14)Hammanは、 特発性縦隔気腫の原因は肺胞壁の先天性脆弱性による自 然破裂であると推測した。先天性脆弱性を示唆する報告 として、Bodeyの家族内発生例が挙げられる15)。トロン ボーン演奏や過度の発声練習によって発症した縦隔気腫 のように、気道内圧上昇の反復が後天的に肺胞壁の脆弱 性をもたらす可能性も推測される。ラットを用いた実験 で、栄養障害下では肺胞の弾性力が低下すると報告され ており、ヒトにおいても低栄養状態では肺胞破裂の危険 性が高くなると考えられる16) 4.画像診断 1)胸部単純X線写真 診断の基本は、単純X線写真で縦隔内に貯留した空気 の存在を確認することである。縦隔気腫は縦隔構造物を 縁取るように、あるいは縦隔側の胸膜を持ち上げるよう に存在する明瞭な線状のX線透亮像や気泡状の空気像と して描出される。縦隔内の空気は、心臓の左側からその 上方の左側において認められることが多い。これらは、 縦隔側の胸膜の内面を縁取り、肺動脈本幹や大動脈弓部 外側の胸膜を線状に描出する。なお、この線状の胸膜陰 影は縦隔の壁側胸膜および肺の臓側胸膜の2枚分の胸膜 からなる陰影である(図2A)2)。縦隔気腫は正面像よりも 側面像にてしばしばより明瞭に描出される。これらの空 気は、上行大動脈、大動脈弓部やその分枝、肺動脈、気 管や中枢側の気管支などを縁取るような線状のX線透亮 像を形成する。これらはときには、横隔膜の胸骨への付 着部、胸腺、腕頭静脈などの構造も縁取るように描出す る。胸骨の裏の心臓前方の空気像は、正面像では骨性胸 図2 5歳,男児.マイコプラズマ肺炎に縦隔気腫を合併 A 単純X線写真正面像:縦隔気腫は基本的に縦隔構造を縁取るような線状の透亮像( )として認識される.縦隔 側で持ち上げられた胸膜は壁側胸膜と臓側胸膜の2枚を重ねてみている( ). B 単純X線写真側面像:胸骨の背側の気腫像は正面像ではわかりにくく,側面像で明瞭に描出される( ). A B

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郭と重なりはっきりせず、側面像でのみ描出される所見 である(図2B)。 2)サイン 単純X線写真上の縦隔気腫のサインは古くから様々な ものが知られている。最近ではmulti detector-row CT (MDCT)の普及により多方向からの観察が可能であり、 これらのサインの画像の成り立ちを知ることができる。 も っ と も 古 典 的 で 有 名 な も の が、continuous dia-phragm signである17)(図3)。これは、胸部単純X線写 真正面像にて心陰影の下方を両側の横隔膜がつながるよ うに空気による線状の陰影が認められる所見であり、出 現頻度は決して高くはないが、縦隔気腫を示す重要な所 見である。心膜嚢と横隔膜は、心膜嚢直下で前方から側 方の部分でのみ、phrenicopericardial ligamentによっ て強固に固定されており、心膜嚢直下に空気が進展する ことは、稀な場合を除いてまずない。したがって

conti-nuous diaphragm signにおける心臓下部の線状の透亮像 は、実際には心膜嚢直下と横隔膜の固定されている部位 の外縁の左右から後方を取り囲むような疎な組織からな る空間、phrenicopericardial recess後部に進展した空 気をみていると考えられる18)。通常、側面像では左横隔 膜腹側部は心臓と接し、あるいはpericardial fatがある ために心陰影との境界は不鮮明となる(silhouette sign 陽性)が、上述したphrenicopericardial recessの左側部 に空気が進展すると、左横隔膜腹側部の輪郭も鮮明とな る(continuous left diaphragm sign)。

その他にも、単純X線写真上の縦隔気腫を示すサイン がいくつかある。Naclerio’s V signは、下行大動脈の左 外側縁に沿う線状透亮像と左横隔膜内側部に沿う線状透 亮像が合わさってV字型にみえることである(図4)19) 当初は食道破裂と関連した所見とされていたが、この病 態に特異的なものではない。Second V signは、左右の 腕頭静脈が合流する部位の上縁を縁取る空気がV字型に みえることである。Ring-around-the-artery signは、側 面像において縦隔部の右肺動脈本幹周囲の空気が環状の 透亮像を形成する。Thymic “spinnaker-sail” signは、

新生児の単純X線写真で、胸腺が気腫の空気によって持 ち上げられ羽を広げたようにみえることを指す(図5)20) 3)CT 縦隔気腫における単純X線写真とCTとの使い分けに ついては、いろいろと議論がある。基本的に、軽微な縦 隔気腫は単純X線写真で描出されず、診断が困難な場合 があるのに対して、CTではどんなに微細な縦隔気腫で も描出されるという特長がある。したがって、どうして も縦隔気腫であるかを診断する場合には、CTはきわめ て精度の高い診断法であるといえる。ただし、特発性縦 隔気腫は通常、予後良好な疾患であり、臨床症状や経過 から強く本疾患を疑い、単純X線写真で縦隔気腫が描出 されなかった場合に、果たしてCTまで必要か、という ことが議論のポイントになる。いずれにせよ、縦隔気腫 は保存的な治療で治癒するからである。Kanekiら21)は、 33人の特発性縦隔気腫のうち、およそ30%が単純X線写 真だけでは縦隔気腫が描出されておらず、いずれも 最終診断にはCTが必要であったと報告している。 Al-Mufarrejら22)は、たとえ胸部単純X線写真で縦隔気腫が 明らかな場合でも、徹底した血算検査を行うとともに、 胸部CTを全員に対して行うことを推奨している。これ は、単純X線写真では拾い上げられないような軽微な縦 隔気腫をCTでは描出できることと、その原因となる病 変がないかを検索するためである。血算では、D-dimer は血栓塞栓性疾患がなくても上昇することがあるが、特 発性縦隔気腫の患者において白血球増加は異常であり、 縦隔炎の存在を含めて注意を要する所見であるためであ る。文献的には、特発性縦隔気腫の93%に胸部単純X線 写真が、71%に胸部CTが施行されていた。胸部単純X 線写真で縦隔内空気が描出されたのが69%であるのに対 して、胸部CTでは100%指摘された。Chapdelaineら23) は、特発性縦隔気腫は通常、自然経過でも治癒する予後 良好な疾患であり、侵襲的な検査や治療は不要であると している。これらを踏まえると、何かの誘因(trigger event)があり、胸痛や呼吸困難を伴う若年者で縦隔気腫 が疑われる場合には、胸部単純X線写真を撮って縦隔気 腫の有無をみる。もし、これで診断がつかなければ、胸 部CTを施行して正確に縦隔気腫の診断を行う。この際 に、背景疾患がないか、食道破裂などがないかを確認す ることも重要である。いったん診断さえつけば、それ以 上の侵襲的検査や、画像による経過観察は基本的には不 要と考えられる。 ただし先にも述べたように、単純X線写真における縦 隔気腫の所見やサインの画像の成り立ち、通常では認識 できない解剖学的構造や潜在腔を理解するためには、 CT、特に再構成画像による多方向からの観察は非常に 有用である。Macklin effectによって間質性肺気腫が起 こり、肺血管鞘を剥離しながら肺血管に沿って肺門部に

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 A B C D E 図3 20歳台,女性.喘息発作に伴った縦隔気腫 A 単純X線写真正面像:左右の横隔膜が連続するようにみえる( ).Continuous diaphragm sign である. B 単純X線写真側面像:左横隔膜腹側部の境界が明瞭に描出されている( ).

Continuous left diaphragm signである.心臓前面の空気が上方まで連続しており, 心嚢気腫と区別される( ). C CT冠状断像:断面によっては,心臓は横隔膜から離れているようにみえる. D, E CT矢 状 断 像:し か し, 心 膜 嚢 と 横 隔 膜 と の 固 有 の 付 着 で あ る phrenicopericardial ligamentによってしっかりと固着している.この背側部の phrenicopericardial recess( )内の空気の貯留をみていたことがわかる.なお, 左側のphrenicopericardial recessに進展した空気が,左横隔膜腹側部の輪郭を鮮 明にしている( ).

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図4 10歳台後半,男性.縦隔腫瘍の生検による縦隔気腫 A 単純X線写真正面像:下行大動脈左外側縁,左横隔膜内側部が気腫によって明瞭に描出され,V字型にみえる( ). Naclerio’s V sign である. B CT冠状断像:空気の局在( )により,このサインの成り立ちがよく理解できる. A B 図5 生後1日目.縦隔気腫 単純X線写真正面像(仰臥位):縦隔気腫の空気によって持ち上げられた胸腺が両側の羽のように描出されている( ).

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 向かう空気も、ときに描出される(図6)。 4)鑑別診断 臨床上も胸痛を示す気胸は、ときに鑑別が難しいこと がある。単純X線写真の臥位像では、気胸でも縦隔に沿 った空気の分布がみられ、ときに判断に苦慮することも ある。CTでも、縦隔気腫による空気が骨性胸壁と壁側 胸膜との間隙に進展した場合、気胸とよく似た所見をと るので注意が必要である(図7)。この場合、空気によっ て剥離した壁側胸膜外の軟部組織構造が線状、索状にみ えること、縦隔気腫の空気は体位による分布の変化がみ られないこと、肺の臓側胸膜の連続性を追うことなどが 鑑別点になる。 心嚢気腫もときに鑑別が難しい。縦隔気腫の場合、多 くの症例で心膜嚢と横隔膜との固有の固着である phren-icopericardial ligamentの存在をCTで確認することで 鑑別が可能である(図8)。また、臥位において気腹が横

隔膜下部に貯留して、continuous diaphragm signと類

似の所見を形成することがあり、これはcupola signと 呼ばれる(図9)。縦隔気腫では、このサインでの上縁と なる構造(横隔膜)が明瞭にみえないことで区別できる が、ときに難しいこともある24) 図6 40歳台,男性.縦隔気腫 A 単純X線写真正面像:左主気管支~下幹の壁が周囲に進展した空気によって明瞭化している( ). B CT:左主気管支~下幹や上幹周囲に空気の進展を認める( ). C CT冠状断像:気管支に沿って,より末梢側まで空気が認められる( ).Macklin effectによって起こった 間質性肺気腫が,肺血管鞘を剥離しながら肺血管に沿って肺門に向かう空気をみていると考えられる. A B C

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図7 80歳台,女性.縦隔気腫 A, B CT:一見左側では気胸があるようにみえる( )が,縦隔側の気腫と連続しており,胸膜外(胸壁と壁側胸膜との間)に貯留 した空気である.縦隔側と同様に,内部に剥離された軟部組織が索状・網状に存在する( )ことに注目. A B 図8 60歳台,男性.縦隔気腫と気胸 A 単純X線写真正面像:一見すると心嚢気腫にみえる. B CT冠状断像:心膜嚢と横隔膜とが離れているようにみえる部分もみられる. C CT矢状断像:Phrenicopericardial ligament によって心膜嚢は横隔膜に固定されている( ).すなわち, 縦隔気腫であると診断される. A B C

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日獨医報 第59巻 第1号 2014

縦隔炎

1.心臓・血管手術後縦隔炎 縦隔炎は、心臓・血管手術後に発症しうる合併症であ り、その頻度は1~3%といわれ、決して高くはないが、 いったん発症すると死亡率は10~25%と高く、重篤 な 疾 患 で あ る25)。 起 因 菌 と し て も っ と も 多 い の が Staphylococcus aureusであり、特にmethicillin-resistant

Staphylococcus aureus(MRSA)が半分以上を占めており、

このMRSA縦隔炎に罹患した場合、死亡率はさらに高く なる(20~40%)。このように縦隔炎の起因菌がMRSA の場合、抗菌薬が著効せず、治療にはきわめて難渋する。 Dodds Ashleyら26)は、糖尿病患者、女性、70歳以上の 高齢者であることが、術後縦隔炎の危険因子としてもっ とも重要であるとしている。また、大動脈人工血管置換 術後に発症した場合には人工血管感染を合併することが あり、この場合には術後遠隔期においても発症しうる。 ただし、通常は2週間以内がもっとも多いとされる。 画像診断はCTによるが、基本的な所見は、①縦隔内 の液体貯留、および②気泡状のガス貯留である(図10)。 しかし、これらは術後では正常な経過であっても(無症 状患者の75%以上)みられる所見であり、ときには術後 21日間も持続することがある。Jollesら27)によれば、術 後14日以内と14日以降に分けて、CTでの診断の感度は いずれも100%であり、特異度はそれぞれ33%と100% であった。Yamaguchiら28)は、心臓手術後にCTを施行 した患者を、縦隔炎のために外科的治療が必要となった 群と、縦隔炎を発症せずに回復した群とに分けて、CT による縦隔炎の診断の有効性について検討した。造影剤 による増強効果を伴った軟部腫瘤(液体貯留)が描出され たものを縦隔炎と診断した場合、感度は67%、特異度は 83%であり、縦隔炎の診断として感度は不十分であり、 縦隔炎を取り扱う上では総合的な判断が重要であるとし ている。以上より、術後2~3週間以後に上記の2つの基 本的所見が持続している場合や、新たにこれらの所見が 加わったり増悪してきた場合には、縦隔炎が強く示唆さ れる。 2.特発性食道破裂(Boerhaave症候群) 特発性食道破裂は、1724年にオランダのHermann Boerhaaveによって初めて報告されたことから、 Boer-haave 症候群とも呼ばれている。比較的稀な疾患で、30 ~50歳代に多く、男女比は15:1である。外傷、異物誤飲、 腫瘍などの基礎疾患のない患者において、激しい嘔吐な どによる急激な食道内圧上昇で食道全層に損傷をきた し、縦隔気腫を引き起こす疾患である。初発症状は、胸 図9 50歳台,男性.腹膜透析中

単純X線写真正面像で,一見すると continuous diaphragm sign

があるようにみえるが,これは少量の腹腔内のfree airが横隔膜下 部に貯留したもの( )で,cupola signと呼ばれる.

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痛、腹痛、呼吸困難、背部痛など様々であり、診断が遅 れることで重篤な状態を招く頻度の高い疾患である。嘔 吐以外の原因としては、重量挙げ、笑い、悪阻、出産、 てんかん発作、吃逆、胃腸炎などがある。好発部位は、 90%以上が下部食道左壁であり、様々な原因により高ま った食道内圧が胃壁に比べて筋層の弱い下部食道の、特 に心臓や下行大動脈および胸椎に囲まれていない左壁で 高まることが原因とされている。診断が遅れると致死的 な事態を招くことが多いため、診断には食道造影検査が 必須とする報告もみられたが、CT検査における食道穿 孔の診断の感度、陰性的中率はそれぞれ100%、100% であり、食道造影の感度(66.7%)、陰性的中率(87.9%) に対していずれも有意に高く、CTで食道穿孔が否定的 な場合には食道造影検査は必要ないとする報告もあ る29)CTでは、食道壁肥厚像や欠損像、食道周囲の液 体やガス貯留像が、食道破裂を示唆する所見である。特 に、典型的な破裂部位とされる横隔膜直上部でみられる ことが多い(図11)3 0)。食道破裂でも縦隔に限局する型 では、胸腔内に穿破する型と比べて絶飲食・中心静脈栄 養や胃瘻による栄養管理・抗菌薬投与・胸腔ドレナージな どにより保存的に治療される症例が近年増加している。 保存的治療の適応としては、Cameronらは、①破裂が縦 隔内に限局していること、②破裂孔が比較的小さいこと、 ③縦隔内の汚染が軽度であり、臨床症状が軽いこと、④ 重篤な感染がないこと、などを基準としている31)。いず れにせよ、全身状態が安定していることが必須である。 Tehらは、発症から24時間以内は可能な限り穿孔部の閉 鎖術を行い、発症から診断までに24時間以上経過してい ると食道壁の壊死や浮腫が高度となり、穿孔部の閉鎖術 の成功を妨げるので、この場合には保存的に、かつ強力 で適切なドレナージを行うことで死亡率を低減させてい る32)。ただし、この疾患では重篤な縦隔炎や膿胸を引き 起こす可能性があるので、手術により速やかに穿孔部の 閉鎖、胸腔および縦隔内の洗浄、ドレナージを行うこと が基本となる。いずれにせよ、適切な治療方針を決定す るためにも、臨床上この疾患を念頭において、早期に正 しく診断する必要がある。 3.下 行 性 壊 死 性 縦 隔 炎(descendingnecrotizing mediastinitis) 下行性壊死性縦隔炎は、頸部、歯性、咽頭部感染が下 行性に縦隔に波及した化膿性縦隔炎である。稀な感染症 であるが、いったん発症すると急速に進行し、死亡率が 10~30%と予後不良な疾患である33)Corsten34) 1960年から1995年までの英文報告の検討では、若い男 性に有意に多かった(平均年齢37.6歳、男性は女性のお よそ6倍)。1983年にEstreraら35)により、①口腔・咽頭 部に重症感染症の徴候を認める、②縦隔炎の特徴的な画 像所見、③手術や剖検で壊死性縦隔炎の証明、④口腔・ 咽頭部感染症と壊死性縦隔炎の進展との関連性、などの

図10 80歳台,男性.Coronary artery bypass graft(CABG)術後の縦隔炎.培養ではMRSA感染 A 単純CT 術後16日目:胸骨縫合部が離開し( ),背側部前縦隔に不整形に拡がる液体貯留( )が認められる.

B 単純CT 術後20日目:正中切開によるドレナージ施行後.膿は排泄されている( ).

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 特徴を有する疾患として提唱され、現在の診断基準とな っている。原因として、歯科領域感染症、扁桃周囲膿瘍、 咽頭後膿瘍などが挙げられる。本疾患の病態として、筋 膜間の間隙が頭蓋底から横隔膜まで通じているためバリ アーがなく、重力、呼吸性運動や胸腔内陰圧などの要素 により、下行性にかつ速やかに炎症が波及しやすいとい う特徴を有する。起因菌としては、口腔内常在菌による 嫌気性菌と好気性菌の複数菌感染であることが多い。茂 木ら36)の本邦の1981年から1997年までの報告35例の検 討では、起因菌は、好気性菌ではStreptocuccus属が最多 で15例(43%)に検出されている。嫌気性菌では、 Bacte-roides属、Peptostreptococcus属の検出が多かった。 治療については、早期発見と病変の拡がりを正確に診 断することが基本であり、画像診断特にCTの果たす役 割は大きい。感染および病変が頸部から気管分岐部より 上方に限局した縦隔炎では、頸部アプローチでのドレナ ージによる治療法も考慮される37)が、Corstenらは、頸 部ドレナージのみでの死亡率は47%、頸部と縦隔を同時 A B C 図11 60歳台,男性.背部痛で来院.Boerhaave症候群 A CT:横隔膜直上部の食道壁の不正な肥厚像と周囲のガス貯留像を認め る.食道左壁に小さな欠損像があるようにもみえる( ). B CT 冠状断像:横隔膜直上部の食道周囲のガス貯留像が認められる. C 食道造影:噴門部よりやや上方の下部食道から縦隔左方への造影剤の漏 出像を認める( ).

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図12 50歳台,女性.下行性壊死性縦隔炎 A〜C 造影CT:左下咽頭から咽頭後間隙に連続する液体貯留および異常ガス像がみられ,周 囲に増強効果を認める(A).縦隔には広範囲な液体貯留がみられ,右胸腔内にも被胞化された 液体貯留が多数認められる(B,C). D 造影CT冠状断像:病変は横隔膜直上まで進展している. E 造影CT矢状断像:頸部の病変が咽頭後間隙や前脊椎間隙を進展して下行していることが, 明瞭に描出されている( ). A B C D E

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日獨医報 第59巻 第1号 2014 にドレナージした場合の死亡率は19%であり、早期から の縦隔を含めたドレナージ術と広域スペクトラムの抗菌 薬の静注による感染症対策の組み合わせを行うべきであ るとしている34)Papalia38)も、CTで早期診断がつけば、 十分な視野をもった開胸術による縦隔ドレナージを行う ことが、臨床的に重篤な患者においては必須であり、死 亡率を低下させるために重要であるとしている。一方、 胸腔鏡下により、侵襲性が少なく縦隔ドレナージが可能 であるとする報告もみられる39)。しかし、下行性壊死性 縦隔炎は容易に膿胸や心膜炎を合併し、急激に全身 状 態 が 悪 化 し、 敗 血 症、 播 種 性 血 管 内 凝 固 症 候 群 (disseminated intravascular coagulation:DIC)、多臓 器不全などに至ることがあり、不完全なドレナージは再 手術の率が高まるので、最初から十分な切開とアプロー チにより適切な縦隔ドレナージを行うべきであるとする 意見が多い。 また、頸部の重症感染症に続発して発症するために、 上気道粘膜の炎症性浮腫や腫脹により気道管理が必要と なることがある。気管内挿管は、抜管の危険性や再挿入 の困難さにより気管切開を施行しておく方が安全とされ る。 したがって、治療の要点は、①CTによる早期診断と 病変の範囲の正確な把握、②迅速かつ適切なドレナージ 術の施行、③広範囲スペクトラムの強力な抗菌薬の投与、 ④気道の高度狭窄例には気管切開による気道確保、とな る。 喉頭や咽頭に強い感染症徴候がみられる患者では、常 に本疾患に移行する可能性を念頭に置いて、早期に発見 し診断することが重要である。 頸部からの炎症の進展経路は、浅部および深部の筋膜 との間隙である。感染は、前気管(pretracheal)、傍食道 (paraesophageal)、前椎体(prevertebral)、咽頭後間隙 と頸動脈鞘を経由して下行する。特に咽頭後間隙は頭蓋 底から横隔膜まで達しており、頭頸部の感染が後縦隔や 胸腔に拡がる経路として臨床的に重要であり、「危険間 隙」(danger space)と呼ばれる。 画像診断の中心はCTであるが、臨床的に頭頸部に重 篤な感染症の徴候がある、あるいは既に罹患している患 者において、胸部単純X線写真で、縦隔の拡大、縦隔気 腫、縦隔内のair-fluid levelの形成、前椎体の軟部組織 陰影、片側あるいは両側胸水貯留などの所見がみられた 場合、下行性壊死性縦隔炎を疑うことになる。CTでは、 縦隔脂肪層の濃度上昇、縦隔気腫、縦隔内の液体貯留、 気泡ガスの貯留、胸水や心嚢液貯留、膿胸、リンパ節腫 大、筋膜肥厚などに注意する。しかし、診断の要となる のは、頸部感染症から縦隔炎への進展経路を画像上証明 することと、病変の拡がりを正確に診断することである (図12)。これにより、適切な surgical management の 方法が迅速に決定される。

まとめ

縦隔気腫や縦隔炎について、病態および画像所見や、 その成り立ちについて述べた。これらの疾患は比較的稀 であり、その病態や背景疾患を把握しておくことは診断 を行う際に重要な情報となることがある。特発性縦隔気 腫は基本的には予後良好な疾患であり、経過観察を含め て不必要な検査は行わないように留意する。一方、特発 性食道破裂や下行性壊死性縦隔炎はときに致命的となる 重篤な疾患であり、診断のみならず治療方針決定に画像 診断医の果たす役割は大きく、患者の予後改善のために も適切な治療へと導く必要がある。 【参考文献】 1) Gray JM, Hanson GC: Mediastinal emphysema: aetiolo-gy, diagnosis, and treatment. Thorax 21: 325 -332, 1966 2) Bejvan SM, Godwin JD: Pneumomediastinum: old signs and new signs. AJR Am J Roentgenol 166: 1041-1048, 1996 3) Hamman L: Mediastinal emphysema: the Frank Bill-ings lecture. JAMA 128: 1-6, 1945 4) Macia I, Moya J, Ramos R, et al: Spontaneous pneumo-mediastinum: 41 cases. Eur J Cardiothorac Surg 31: 1110-1114, 2007 5) Abolnik I, Lossos IS, Breuer R: Spontaneous pneumo-mediastinum. A report of 25 cases. Chest 100: 93-95, 1991 6) Newcomb AE, Clarke CP: Spontaneous pneumomedias-tinum: a benign curiosity or a significant problem? Chest 128: 3298-3302, 2005 7) 村上壮一, 川村 健, 中西喜嗣, 他: 特発性縦隔気腫の1例 ─ 過去10年間の本邦報告例の検討─. 日呼外会誌 15: 713-717, 2001 8) 阪本 仁, 小阪真二, 土屋恭子: 特発性縦隔気腫症例の臨 床的検討. 日呼外会誌 23: 918-923, 2009 9) Caceres M, Ali SZ, Braud R, et al: Spontaneous pneu-momediastinum: a comparative study and review of the literature. Ann Thorac Surg 86: 962-966, 2008

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