英
国
家
族
手
当
制
度
の
展
開
と
変
容
渡
辺
千
壽
子
は じ め に , . 英 国 の 家 族 手 当 制 度 は 、 一 九 七 五 年 児 童 給 付 法 の 制 定 に よ り 児 童 給 付 と 名 称 を 変 え 、 新 制 度 は 一 九 七 九 年 よ り 完 全 実 施 さ れ 今 日 に 至 っ て い る 。 こ の 制 度 は 、 長 年 の 懸 案 で あ っ た 所 得 税 の 児 童 扶 養 控 除 を 完 全 廃 止 し 、 第 一 子 よ り 全 児 童 を 対 象 と す る 非 課 税 の 児 童 給 付 に 統 合 し た も の で あ る 。 こ う 七 た 動 向 は 世 界 各 国 に 共 通 の 趨 勢 で あ り 、 改 革 の 主 な 目 的 は 、 税 制 上 の 児 童 扶 養 控 除 と 家 族 手 当 制 度 の 調 整 ・ 統 合 を は か り 、 児 童 を 養 育 す る 家 族 に 対 す る 財 政 援 助 制 度 を 簡 素 化 し 、 効 率 化 し よ う と す る こ と に あ る 。 児 童 ・ 学 生 に 対 す る 扶 養 控 除 を 廃 止 し 、 家 族 手 当 に 統 一 す る 試 み は 、 財 政 難 と 適 用 範 囲 の 拡 大 . 給 付 水 準 の 向 上 と い う 二 つ の 問 題 を 同 時 に 解 決 す る た め で あ り 、 さ ら に 所 得 再 分 配 効 果 を 高 め る た め で あ っ て 、 家 族 手 当 制 度 を 前 向 き に 見 直 す 試 み と し て 注 目 さ れ る も の で あ る 。 こ こ に 至 る ま で に 英 国 の 場 合 、 制 度 実 施 以 来 、 実 に 三 〇 年 の 歳 月 が 経 過 し て い る 。 こ の 間 、 一 九 五 〇 年 代 か ら 六 〇 年 代 前 半 の 長 い 停 滞 の 時 代 を 経 て 、 稼 働 世 帯 の 貧 困 の 再 発 見 に よ り 実 施 さ れ た 一 九 六 八 年 の 改 正 は 、 結 果 と し て 不 十 分 な も の に 終 っ た と は い え 、 こ の 改 正 と 前 後 し て 行 な わ れ た 有 子 世 帯 の 貧 困 に つ い て の 認 識 と 家 族 手 当 制 度 改 革 へ の 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 四 三佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 四 四 諸 提 案 は 、 亠 九 七 五 年 の 制 度 刷 新 へ の 一 布 石 と な っ た も の と い え よ う 。 本 稿 で は 、 新 制 度 導 入 の 一 因 と も な っ た 所 得 税 制 の 児 童 扶 養 控 除 と の か か わ り を 中 心 に 、 制 度 開 始 か ら 一 九 六 八 年 の 改 正 に 至 る ま で の 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 の 過 程 を た ど る こ と を 目 的 と し て い る 。 1 、一 九 五 〇 年 代 の 家 族 手 当 実 施 状 況 と 停 滞 の 背 景 ω 停 滞 の 時 代 ベ ヴ ァ リ ッ ジ が 社 会 保 障 計 画 の 前 提 条 件 と し て 重 視 し た 児 童 手 当 は 、 家 族 手 当 と し て 戦 後 の 立 法 化 の 中 で は 最 も 早 く 一 九 四 五 年 に 成 立 し た 。 ベ ヴ ァ リ ッ ジ は 、 賃 金 が 家 族 成 員 の 多 寡 に 応 じ て 支 払 わ れ て い な い 以 上 、 多 子 に よ る 貧 困 を 除 去 す る 上 で 児 童 手 当 の 支 給 が 不 可 欠 で あ る と の 考 え か ら 、 第 二 子 以 降 の 全 児 童 に 、 そ の 養 育 費 に 相 当 す る 児 童 手 当 を 国 の 負 担 で 支 給 す べ き で あ る と 主 張 し た の で あ る が 、 そ れ は 同 時 に 社 会 保 険 に と り て も 重 要 な 役 割 を 直 接 果 た す も の で あ っ た 。 彼 は 児 童 手 当 制 度 が 社 会 保 険 に と っ て 不 可 欠 で あ る 理 由 を 、 次 の よ う に 説 明 し て い る 。 ﹁ 第 一 に 、 就 業 し て い る 間 に 十 分 な 所 得 を 確 保 し て お か な け れ ば 、 失 業 ま た は 労 働 不 能 に ょ っ て 収 入 が 中 断 し た 場 合 に 最 低 生 活 を 支 え る に 十 分 な 所 得 が 確 保 さ れ る こ と を 求 め る の は 無 理 で あ る 。 ⋮ ⋮ し か し 、 賃 金 体 系 が 労 働 の 生 産 物 に も と つ く も の で あ り 、 家 族 の 大 き さ に も と つ く も の で な い か ぎ り 、 ナ シ ョ ナ ル ー ・・ ニ マ ム が あ ら ゆ る 大 き さ の 家 族 に 対 し 賃 金 体 系 に よ っ て 実 際 に 確 保 さ れ る こ と は 困 難 で あ 葡 ﹂ と 述 べ 、 就 業 し て い る 間 の 収 入 が 家 族 の 大 き さ に か か わ ら ず 最 低 生 活 を 維 持 す る に 足 る も の に な る よ う に す る た め の 手 段 と し て 、 児 童 手 当 が 必 要 で あ る と 主 張 し て い る 。 ﹁ 第 二 に 、 失 業 ま た は 労 働 不 能 の 期 間 に 、 就 業 時 と 同 等 σ ま た は そ れ 以 上 の 額 の 給 付 を 与 え る の は 、 危 険 で あ る 。 し か し 就 業 し て
い る と 否 と を 問 わ ず 、 児 童 手 当 が 支 給 さ れ な け れ ば 、 こ の 危 険 は 避 け る こ と が で き な い 。 ⋮ ⋮ 雇 用 維 持 を 確 保 す る に は 、 就 業 し て い る と き の 所 得 と そ う で な い と き の 所 得 の 差 が 、 す べ て の 人 に と っ て で き る だ け 大 き く な っ て い な け れ ば な ら な い 。 大 家 族 を か か え て い る 者 の 場 合 、 失 業 ま た は 労 働 不 能 の 場 合 の 給 付 を 少 な く す る か 、 ま た は 就 業 七 て い る と 営 に も そ う で な い と き に も 同 様 に 児 童 手 当 を 与 え る か 、 い ず れ か に よ る 以 外 に 、 そ の 差 を 大 き な も の に 保 つ こ と は で き な い L と 述 べ て 、 社 会 保 険 の 給 付 水 準 を 確 保 す る 上 で も 、 児 童 手 当 が 不 可 欠 で あ る と 主 張 し て い る 。 さ ら に こ の 二 つ の 主 張 に 、 人 口 お よ び 児 童 保 護 の 見 地 か ら の 主 張 を 加 え て い る 。 そ し て 、 大 抵 の 成 年 男 子 の 賃 金 は へ 少 な く と も 大 人 二 人 と 子 供 一 人 を 養 う に 足 り る も の で あ り 、 全 児 童 に 対 し て 最 低 生 活 を 支 え る に 足 る 手 当 を 与 え る こ と が 貧 困 絶 滅 に 不 可 欠 の 手 段 と は 考 え ら れ な い と し て 、 第 一 子 を 除 く 全 て の 児 童 に 最 低 生 活 を ヵ バ ー す る に 足 る 児 童 手 当 を 実 施 す べ き で あ る と 勧 告 し た 。 し か し 、 英 国 の 家 族 手 当 制 度 は そ の 成 立 ま で に 多 く の 修 正 が 加 え ら れ 、 ベ ヴ ァ リ ッ ジ 体 系 に 占 め る 社 会 保 障 の 前 提 と し て の 児 童 手 当 の 意 義 を 見 失 わ せ て し ま っ た よ う に 思 わ れ る 。 制 度 の 問 題 点 は 幾 つ か 指 摘 で き る が 、 な か で も 家 族 手 当 の 給 付 水 準 の 絶 対 的 な 低 さ 、 課 税 対 象 所 得 と し た こ と 、 第 一 子 を 除 外 し た こ と の 三 点 が と く に 重 要 で あ ろ う 。 ベ ヴ ァ リ ッ ジ は 、 夫 婦 と 子 供 一 人 が 維 持 で き る よ う な 賃 金 を 前 提 と し て 社 会 保 障 計 画 を 計 画 し て い た 。 そ れ は お よ そ 平 均 賃 金 の 六 五 % 程 度 に 相 当 し て い た 。 そ う し た 最 低 賃 金 を 想 定 し た 上 で 、 子 供 の 養 育 に 必 要 な 費 用 を 、 第 二 子 以 降 の 全 児 童 に 児 童 手 当 と し て 支 給 す る こ と が 、 彼 の 社 会 保 障 の 前 提 と な っ て い た の で あ る 。 と こ ろ が 、 戦 後 実 施 さ れ た 家 族 手 当 の 給 付 水 準 は 、 ベ ヴ ァ リ ヅ ジ の そ れ を 大 幅 に 下 回 る も の で あ っ た 。 彼 の 児 童 手 当 の 額 は 、 1 九 lil 八 年 価 格 で 七 シ リ ン グ で あ り 、 こ れ を 対 平 均 賃 金 比 で 示 す と 一 割 程 度 で あ っ た 。 戦 後 の 物 価 上 昇 率 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 四 五
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 四 六 を 二 五 % 程 度 と 考 慮 す れ ぽ 週 お よ そ 九 シ リ ン グ と な り 、 既 に 学 校 給 食 と 児 童 ミ ル ク 制 度 が 週 約 一 シ リ ン グ 相 当 の 現 物 給 付 を 与 え て い る の で 、 そ の 分 を 差 し 引 い て 平 均 八 シ リ ン グ を 提 案 し た の で あ る が 、 ﹁ 最 終 的 数 値 は こ の 案 が 実 施 さ れ る 時 日 と 条 件 が 定 ま っ た 時 に 、 こ の 案 に 書 き こ ま れ ね ぽ な ら な い ﹂ と 付 け 加 え て い る 。 実 際 に は 一 九 四 五 年 末 の 段 階 で 生 計 費 指 数 は す で に 一 九 三 八 年 当 時 の 四 五 % 増 し に な っ て い た し 、 さ ら に 制 度 実 施 初 年 度 の 一 九 四 六 年 に は 消 費 者 物 価 指 数 は 七 三 ・ 六 % 上 昇 し て い た の で あ る 。 一 九 三 八 年 当 時 に ベ ヴ ァ リ ヅ ジ が 算 定 し た 児 童 一 人 に つ き の 平 均 最 低 生 活 費 は 、 一 九 四 六 年 度 の 価 格 水 準 で は 一 四 シ リ ン グ に 相 当 す る こ と に な る が 、 制 度 成 立 当 時 の 手 当 は 第 二 子 以 降 一 律 五 シ リ ン グ だ っ た の で 、 計 画 に 比 べ て 著 し く 低 卦 水 準 で あ っ た 。 し か も 、 そ の 後 の 家 族 手 当 の 水 準 は 長 い 間 抑 制 さ れ て き た 。 他 の 所 得 保 障 制 度 の 給 付 水 準 が 、 お お よ そ 平 均 賃 金 の 上 昇 に 応 じ て 幾 度 と な く 引 き 上 げ ら れ て き た の に 対 し 、 家 族 手 当 の 大 幅 な 改 善 は 一 九 七 〇 年 代 の 後 半 ま で 、 一 九 五 二 年 と 一 九 六 八 年 の 二 度 を 数 え る の み で あ っ た 。 一 九 五 二 年 に は 第 二 子 以 降 一 律 八 シ リ ン グ 、 一 九 四 六 年 度 不 変 価 格 で 五 シ リ ン グ 一 〇 ペ ン ス と な り 、 一 九 六 八 年 で は 第 二 子 に 一 八 シ リ ン グ 、 同 じ く 一 九 四 六 年 度 不 変 価 格 で 八 シ リ ン グ 、 第 三 子 以 降 一 ポ ン ド 、 一 九 四 六 年 度 不 変 価 格 で 八 シ リ ン グ 一 一 ペ ン ス と 改 正 さ れ た 。 こ れ ら の 改 正 に よ っ て も 、 家 族 手 当 は 計 画 値 に は 達 し な か っ た の で あ る 。 各 改 定 時 の 第 二 子 に 対 す る 家 族 手 当 額 の 対 平 均 賃 金 比 は 、 一 九 五 二 年 四 ・ 三 % 、 一 九 六 八 年 十 月 三 ・ 八 % と 、 い ず れ も ベ ヴ ァ リ ッ ジ の 九 ・ 九 % と は お よ そ か け 離 れ た 水 準 で あ っ た 。 こ の よ う に 手 当 が 低 い レ ベ ル に 固 定 さ れ た 理 由 は 、 戦 後 実 施 さ れ た 学 校 給 食 や ミ ル ク な ど を 現 実 の 実 物 手 当 と み な し た た め と さ れ て い る 。 家 族 手 当 の 費 用 が 五 、 七 〇 〇 万 ポ ン ド 、 事 務 費 二 〇 〇 万 ポ ン ド と 見 積 ら れ た の に 対 し て 、 現 物 給 付 に 要 す る 費 用 は 六 、 ○ ○ ○ 万 ポ ン ド と 見 積 ら れ て い た 。 一 九 四 六 年 か ら 一 九 五 四 年 ま で の 家 族 手 当 の 実 際 の 費 用 は 表 一 に 示 す 通 り で あ る 。 こ の 表 か ら 、 最 初 の 見 積 り は
制 度 実 施 一 年 後 の 一 九 四 七 年 の 支 出 に 近 い こ と が わ か る 。 し た が っ て 給 付 の 実 質 価 値 は さ ら に 低 下 し 、 し か も 家 族 手 当 は 所 得 税 を 課 税 さ れ る の で 、 所 得 税 納 税 世 帯 に と っ て 、 そ の 価 値 は さ ら に 少 な い 。 一 方 、 現 物 給 付 は 第 一 子 も 対 象 と さ れ 、 何 の 税 金 も か け ら れ な い 。 家 族 手 当 は そ れ が 現 金 給 付 で あ り 、 児 童 の た め の も の で は な く ﹁ 全 体 と し て の 家 族 ﹂ の た め の も の と し て 支 給 さ れ る こ と か ら 課 税 さ れ る と い う こ と に な っ た の で あ る 。 -一 九 五 二 年 の 改 定 は 、 ポ ン ド の 価 値 の 下 落 に 伴 な う 現 金 給 付 の 実 質 価 値 の 低 下 を 考 慮 し て な さ れ た も の で 、 同 年 九 月 二 日 か ら 実 施 さ れ た 。 増 額 に 要 す る 費 用 は 年 五 、 九 〇 〇 万 ポ ン ド 、 家 族 手 当 の 総 費 用 は 年 額 一 億 ポ ン ド を こ え る と 見 積 ら れ た 。 表 一 は 事 務 費 を 除 く 実 際 の 費 用 が 一 九 五 一 年 の 六 、 三 〇 〇 万 ポ ン ド か ら 一 九 五 三 年 に は 一 億 四 〇 〇 万 ポ ン ド に 上 昇 し た こ と を 示 し て い る 。 し か し 、 こ の 時 の 改 定 は 、 戦 時 中 か ら の 食 糧 補 助 金 の 廃 止 決 定 に よ り 、 そ の 価 値 表1家 族 手 当 の費 用1946-54年 (単 位:千 ポ ン ド)
年 度騰
手当の覿i事
獺
656 1,790 ヴ1,800 1,800 1,900 1,850 2,018 ,2,148 2,200③ 19,329 55,450 58,921 60,700 61;690 62,914 77,058② 103;383 104,605 工946ω 1947 .,. 1949 1950 1951 1952 1953 1954 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 注:(1)1946年 は8月6日 か ら実 施 さ. れ た 費 用 で あ る 。 (2)1952年9月2日 よ り8シ リ ソ グに 改 正 さ れ た 。 (3)推 計 資 料:NevilleD.Vandyk,`Family Allowances',BritishJournal of;_sociology,vo1.7,1956, p.35. は 失 わ れ て し ま っ た 。 厂 一 九 五 四 年 に は 、 家 族 手 当 は 約 五 〇 〇 万 人 の 児 童 に 支 払 わ れ て い た が 、 約 三 二 〇 万 人 を こ え る 一 六 歳 未 満 の 長 子 に は 受 給 資 格 が な か っ た 。 さ ら に 、 手 当 受 給 年 齢 の 一 子 家 庭 が 三 〇 〇 万 ﹂ 世 帯 あ る と 推 計 さ れ て い た 。 受 給 世 帯 の 規 模 は 殆 ど 変 ら ず 、 年 齢 制 限 未 満 の 子 供 二 人 の 世 帯 が 六 四 % 、 三 人 が 二 三 % 、 四 人 が 八 % ︽ 五 人 三 % 、 六 人 二 % と 'な っ て い る 。 こ れ ら の 数 字 か ら 、 全 て の 受 給 資 格 の あ る 世 帯 の 三 六 % だ け が 一 人 以 上 の 手 当 を 、 一 四 % 二 四 七佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 表2ベ ヴァ リッ ジ社 会 保 障 の体 系 と実 際 の推 移 (単位:百 万 ポ ン ド,%) 実 際 の 推 移 ベ ヴ ァ リ ッジ 計 画 195511965 1955工965 1945 年度 1,930 (52.4) 279 ×7.6) 158 (4.3) ユ,313 (35.7) 684 (45.9) 110 (7.4) 114 (7.s) 583 (39.1) 553 (64.5) 32 (3.7) 103 <12.o) 170 (is.s) 442 (57.9) 41 (5.4) 111 (14.5) 170 (22.3) 36? (52.7) 47 (s.7) 113 (16.2) 170 (24.4) 国 民 保 険 国 民 扶 助 家 族 手 当 保 健サ ービス 3,680 (loo.o) 1,491 (100.0) 855 (ioo.o) 764 <ioo.o) 697 (ioo.o) 計 合 資 料:C.0.S.AnnualAbstructげs彦atistics,1974,1977. 二 四 八 が 二 人 以 上 の 家 族 手 当 を 受 け て い る こ と が わ か る 。 社 会 保 障 の 総 費 用 に 占 め る 家 族 手 当 費 用 の 割 合 は 着 実 に 低 下 し 、 表 二 の よ う に ベ ヴ ァ リ ヅ ジ 計 画 で は 一 六 -一 二 % で あ っ た の に 対 し 、 実 際 は 一 九 五 五 年 で 七 ・ 六 % 、 一 九 六 五 年 で 四 ・ 11 l% の 水 準 で し か な か っ た 。 英 国 の 家 族 手 当 は 、 ベ ヴ ァ リ ッ ジ が 意 図 し た よ う な 第 二 子 以 降 の 児 童 の 最 低 生 存 費 を 保 障 す る も の と は は る か に 低 い 給 付 水 準 で 出 発 し 、 そ の ま ま ベ ヴ ァ リ ッ ジ 計 画 の 水 準 に 達 す る こ と な く 、 実 質 価 値 の 低 下 す る ま ま に 推 移 す る こ と に な る 。 現 金 給 付 と し て の 家 族 手 当 を 低 い 水 準 に と ど め る 口 実 と し て 、 児 童 に 対 し て 学 校 給 食 や ミ ル ク 、 福 祉 食 糧 乏 い っ た 現 物 給 付 が 支 給 さ れ て い る と い う こ と が 言 わ れ て き た 。 し か し 、 こ れ ら の 多 く は 資 力 調 査 を 条 件 と し ( そ れ ら の 条 件 と 範 囲 は 地 方 当 局 ご と に 大 き く 異 な っ て い る 場 合 も あ る 。 そ の 範 囲 は 限 定 さ れ て お り 、 貧 困 か ら 家 族 を 救 う に 十 分 な 所 得 を 補 償 す る も の で は な い 。 し か も 、 後 に み る よ う に 、 そ の 多 く は 家 族 手 当 引 上 げ と ひ き か え の よ う な 形 で 、 給 付 の 削 減 や 廃 止 が 打 ち 出 さ れ て く る め で あ る 。 家 族 手 当 額 が い か に 低 い か は 、 五 〇 年 代 の 国 民 保 険 や 国 民 扶 助 に お け る 児 童 に 対 す る 給 付 水 準 と 比 べ る と 明 ら か で あ る 。 国 民 保 険 に お け る 扶 養 児 童 に 対 す る 給 付 は 、 一 九 五 五 ー 五 六 年 で 第 一 子 ( 又 は 一 人 っ 子 ) に 対 し て 週 ニ シ リ ン グ 六 ペ ン ス 、 第 二 子 以 降 は 三 シ リ ン
グ 六 ペ ン ス ( 家 族 手 当 八 シ リ ン グ を 受 給 し て い る た め ) で あ る 。 こ れ は 最 低 生 活 費 に 対 す ゐ 指 標 と は い え な い が 、 三 シ リ ン グ 六 ペ ン ス だ け 家 族 手 当 よ り も 高 い 。 ま た 、 国 民 扶 助 額 は 申 請 者 の ニ ー ド や 資 力 に よ っ て 変 化 が あ る が 、 一 九 五 六 年 で の 通 常 の 基 準 は 、 査 歳 未 満 の 児 童 一 人 に 対 し て 週 二 ご シ リ ン グ 、 五 歳 以 上 二 歳 未 満 の 児 童 一 人 に 対 し て 一 五 シ リ ン グ 六 ペ ン ス 、 = 歳 以 上 一 六 歳 未 満 で は 一 八 シ リ ン グ 、 一 六 歳 以 上 一 八 歳 未 満 で は 二 三 シ リ ン グ 六 ペ ン ス 、 一 八 歳 以 上 一 二 歳 未 満 で は 二 九 シ リ ン グ で あ っ た 。 家 族 手 当 受 給 資 格 の あ る 児 童 に っ ㌻ て は 、 支 給 額 か ら そ の 分 が 差 引 か れ る 。 国 民 扶 助 額 は 、 い わ ば 国 が 定 め た 貧 困 線 と も い え る も の で あ る が 、 一 一 歳 以 上 一 六 歳 未 満 の 児 童 一 人 に つ き 支 払 わ れ る 週 一 八 シ リ ン グ の 扶 助 額 は 、 家 族 手 当 の 二 倍 以 上 で あ る 。 と こ ろ で 、 英 国 の 家 族 手 当 は 勤 労 所 得 と み な し て 課 税 さ れ る た め 、 所 得 税 納 税 層 に と っ て 、 そ の 価 値 は さ ら に 小 さ い し 、 ' 所 得 税 児 童 扶 養 控 除 と の か か わ り を 抜 ぎ に 考 え る こ と は で き な い 。 児 童 に 関 す る 所 得 税 の 控 除 は 、 年 度 の は じ め に 一 六 歳 未 満 で あ る か 、 一 六 歳 以 上 で 全 日 制 教 育 を 受 け て い る か 又 は 最 低 二 年 以 上 の 職 業 訓 練 に つ い て い る 児 童 に つ い て 認 め ら れ る 。 個 々 の 納 税 者 に と つ て の 控 除 の 価 値 は 、 そ の 所 得 金 額 に よ っ て 様 々 で あ る が 、 所 得 が 高 い ほ ど 控 除 の 価 値 は 大 き く な る 。 墨 ﹂ れ に 反 し て 、 低 額 所 得 層 に と っ て は 税 控 除 に よ っ て 得 る 価 値 は 少 な い が 、 均 一 額 の 家 族 手 当 は 価 値 が 大 き い 。 こ こ で 、 標 準 税 率 適 用 世 帯 に つ い て 、 家 族 手 当 と 所 得 税 児 童 扶 養 控 除 の 正 味 の 価 値 を 比 較 し て み よ う 。 表 三 は 、 家 族 手 当 制 度 実 施 以 来 一 〇 年 間 の 家 族 手 当 支 給 額 と 、 標 準 税 率 の 納 税 者 が 各 家 族 手 当 に 対 し て 支 払 う 税 額 と を あ わ せ て 説 明 し た も の で あ る 。 家 族 手 当 は 勤 労 所 得 と み な さ れ る の で 勤 労 所 得 控 除 の 対 象 と な る 。 表 四 は 、 同 じ 年 度 の 各 子 に 対 す る 年 間 所 得 税 控 除 額 と 、 標 準 税 率 を 課 せ ら れ る 所 得 を 得 た 時 の 控 除 の 価 値 を 示 し て い る 。 し か し な が ら 、 所 得 税 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 四 九
表3所 得税標 準税率適用世帯に対す る家族手当の価値(年 額) 税 年 度 1946-7 1947-8 1948-9 1949-50 1950-1 1951-2・ 1952-3 1953-4 1954-5 1955-6 第2子 以 降 の児 童 1人 当 りの年 間家 族 手 当 £s.d. 1300(1) 1300 1300 1300 1300 1300 20160② 20160 20160 20160 勤労所得控除 ム コ ム ユ ゐ づ ウ ロ ワ リ ワ だ S S S S S S S 分 分 分 分 分 分 分 分 分 分 8 6 5 5 5 5 9 9 9 9 家族手当の課税部分 に対 し支 払われた標 準率の年間税額※ S. 52 417 413 413 413 418 713 75 75 617 d 5 6 7 7 7 9 9 8 8 7 税 控 除 後 の 純 家 族 手 当 d 7 6 5 5 5 3 3 4 4 5 鼠 7 2 6 6 6 1 2 0 0 8 1 亠 1 ⊥ 1 1 亠 £ 7 8 8 8 8 8 ・ 3 3 3 3 1 亠 1 ⊥ -亠 -亠 佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 ※ 家 族 手 当 は,勤 労 所 得 控 除 を 受 け る 資 格 が あ る 。 注:(1)1946年8月6日 か ら,有 資 格 児 童1人 に つ き 週5シ リ ン グ の 額 で 支 払 わ れ た 。 (2)1952年9月2目`か ら,有 資 格 児 童1人Y'つ き 週8シ リ ン グ の 額 で 支 払 わ れ た 。 資 料:N.D.Vandyk,op,cit,P.42. 表4所 得税標準税率適用世帯に対す る児童扶養控除の価値
税年i人
当りの年間1驫
纛 つき所得騰
嬲 髏 臑 献
1946-? 194?-8 1948-9 1949-50 1950-1 1951-2 1952-3 1953-4 1954-5 1955-6 £ 50 60 60 60 60 70 85 85 85 100 臨 9 9 9 9 9 9 9 9 9 8 0 0 0 0 0 ,6 6 0 0 6 d £ 22 27 27 27 27 33 40 38 38 42 S. 10 0 0 0 0 5 7 5 5 10 d O O O O O O 6 0 0 0 五 〇 資 料:N.D.Vandyk,ibid,,P.42.の 児 童 扶 養 控 除 は 第 一 子 以 降 の 各 子 に つ き 認 め ら れ る の に 対 し 、 家 族 手 当 は 第 二 子 以 降 に つ い て の み 支 給 さ れ る の で 、 一 人 分 の 家 族 手 当 を 受 給 し て い る 納 税 者 は 二 人 分 の 所 得 税 児 童 控 除 を 受 け る こ と に な る 。 そ れ で 二 つ の 手 当 の 価 値 の 相 違 は 、 家 族 規 模 が 大 き く な る に つ れ て 拡 大 さ れ る 。 表 三 と 表 四 か ら 、 税 控 除 の 純 価 値 は 、 常 に 家 族 手 当 の 約 三 倍 の 価 値 が あ り 、 五 一 ー 五 二 年 度 で は 四 倍 以 上 の 価 値 が あ る こ と が わ か る 。 所 得 税 の 標 準 税 率 を 下 げ る こ と は 、 税 控 除 の 価 値 を 減 ら し て 家 族 手 当 の 価 値 を 増 す と い う 効 果 を も っ て い る 。 し た が っ て 標 準 税 率 が 下 が る と 、 納 税 者 が 享 受 し て い る 二 つ の 型 の 給 付 の 結 合 し た 価 値 は 、 非 納 税 者 以 上 に 減 ら さ れ る こ と に な る 。 児 童 控 除 の 推 移 は 表 四 の 左 欄 の 通 り で あ る が 、 表 五 は 、 も し 一 九 五 五 -五 六 年 度 に お い て 児 童 控 除 の 一 五 ポ ン ド 増 額 が 行 な わ れ ず 、 標 準 税 率 の 六 ペ ン ス 減 だ け が 実 施 さ れ て い れ ば 、 ど う で あ っ た か と い う 仮 り の 試 算 で あ る 。 こ の 場 合 に は 、 標 準 税 率 適 用 の 二 子 世 帯 で は 三 ポ ン ド 一 六 シ リ ン グ 減 、 六 子 世 帯 で は 一 〇 ポ ン ド 一 四 シ リ ン グ 減 と な っ て い た こ と が 示 さ れ て い る 。 だ が 実 際 に は 、 同 時 に 税 控 除 額 が 引 き 上 げ ら れ た の で 、 二 子 世 帯 で は 八 ポ ン ド 一 八 シ リ ン グ 一 ペ ン ス 、 六 子 世 帯 で は 二 七 ポ ン ド 一 〇 シ リ ン グ 五 ペ ン ス だ け 不 均 衡 を 増 し て い る ( 表 五 、 B の 9 欄 ) 。 同 一 世 帯 規 模 の 納 税 層 と 非 納 税 層 を 比 べ る と 、 小 家 族 の 場 合 の 方 が 大 家 族 の 場 合 よ り も 、 納 税 者 の 受 け る 利 益 が 大 き い ( 表 五 、 d ・ e 欄 ) 。 ' 一 方 、 歳 入 の 点 か ら み れ ば 、 所 得 税 の 児 童 扶 養 控 除 の 費 用 は 、 所 得 税 や 累 進 付 加 税 の 作 用 に よ っ て 取 り 戻 さ れ る 家 族 手 当 の 額 を 計 算 に 入 れ な い 場 合 で も 、 家 族 手 当 に 費 や さ れ る 額 よ り 大 き い 。 た と え ば 、 一 九 五 三 ー 五 四 税 年 度 に お い て 、 実 際 の 所 得 か ら 児 童 の た め に 控 除 さ れ た 額 は 一 億 四 、 ○ ○ ○ 万 ポ ン ド の 租 税 収 入 の 減 少 と な っ た が 、 一 方 一 九 五 三 年 の 家 族 手 当 の 費 用 は お よ そ 一 億 三 〇 〇 万 ポ ン ド で あ る 。 一 九 五 二 年 の 家 族 手 当 額 改 定 以 前 は 、 こ の 費 用 の 差 は 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 五 一
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 表5標 準税率適用世帯 と非課税世帯における家族手当 と児童扶養控除 変更 の効果(2子 世帯 と6子 世帯) g f a d C b a 隣接年 と の差額 す 超 対 の に e 額 d る 過
離
繍
第2子 以降 の児童年間 家族手当額(欝 税世)
所得税児 童扶養控 除 標準税率 の所得税 年 度 (年額) 世 帯 規 模 ケ 1 K £s.d.}31611
£s.d. 6944 6575 £s.d. 9004 8635 £s.d. 20160 20160 £ 85 85 s,d. 90 86 1954-5 1955-6}10147
193is 18271 29718 28671 0 0 -4 4 0 0 85 85 0 ρ0 9 8 1954-5 1955-6 2 子 一 6 子 A }8・8・ 6944 7825 9004 .. 20160 20160 PO O . . 1 0 ρ 0 9 只 ) 1954-5 1955-6 2}27105
19318 220121 29718 324121 10400 10400 85 100 0 6 _ . . 1954-5 1955-6 子 B 6 子 注:ケ ー スAは,標 準 税 率 は9シ リ ソ グか ら8シ リ ン〆6ペ ソス に下 が って い る が,児 童 扶養 控 除 は85ポ ソ ドの ま まで あ る場 合。 ケ ースBは 標 準税 率 は9シ リソ グか ら8シ リ ソグ6ペ ソス に下 が り,児 童 扶 養控 除 は85ポ ン ドか ら100 ポ ソ ドに増 額 され た 場 合。2子 世 帯 は家 族 手 当1と 児 童 扶 養控 除2が 適 用 さ れ る と し,6子 世 帯 は 家族 手 当5と 児 童扶 養 控除6が 適 用 され る。 資 料:N.D.Vandyk,ibid.,P・43. 翼 一 層 著 し く 、 五 シ リ ン グ の 家 族 手 当 が 支 払 わ れ た 最 後 の 完 全 な 年 度 で あ る 一 九 五 一 年 に は 、 家 族 手 当 費 用 は ほ ぼ 六 ' 1 10 0 万 ポ ン ド に す ぎ な か っ た 。 家 族 手 当 受 給 児 童 は 一 九 五 三 年 一 月 で 四 九 〇 万 人 で あ っ た が 、 当 時 、 該 当 年 齢 だ が 受 給 資 格 の な い 第 一 子 又 は 一 人 っ 子 が 六 二 〇 万 人 い た と 推 計 さ れ て い る 。 こ れ に ょ る と 、 同 年 に は 一 七 歳 未 満 の 児 童 が 一 、 一 〇 〇 万 人 以 上 い た こ と に な る 。 一 九 五 二 i 三 税 年 度 に お い て 七 億 三 、 七 〇 〇 万 ポ ン ド の 実 所 得 が 児 童 に 関 し て 控 除 さ れ て お り 、 同 年 の 児 童 一 人 当 り 税 控 除 額 は 八 五 ポ ン ド で あ っ た の で 、 約 八 七 〇 万 人 分 の 児 童 控 除 が ⑫ な さ れ て い た こ と に な る 。 児 童 控 除 は 一 六 歳 以 上 で も 学 生 で あ る か 職 業 訓 練 中 の 場 合 に は 認 め ら れ る が 、 こ れ は 比 較 的 少 数 で ある の で 、 家 族 手 当 受 給 年 齢 の 一 六 歳 未 満 の 児 童 に つ い て 約 八 〇 〇 万 人 分 の 税 控 除 が 認 め ら れ て い た と 推 計 し て も 差 支 、兄 な い で あ ろ う 。 し た が っ て 、 、 児 童 控 除 を 受 け て い る 層 に と っ て は 、 数 に お い て も 価 値 の 点 で も 児 童 控 除 は 家 族 手 当 よ り か な り 大 き い も の と い え よ う 。 と こ ろ で 、 一 九 五 〇 年 代 に は も う 一 度 五 六 年 に 僅 か な 増 額 が 行 な わ れ て い る 。 こ れ は 同 年 に 実 施 さ れ た パ ン 補 助 金 の 廃 止 、 ミ ル ク 補 助 金 の 削 減 を 埋 め 合 わ せ る た め の も の で 、 第 三 子 以 降 の 児 童 の み に 対 し て 雪 ニ シ リ ン グ の 家 族 手 当 増 額 が な さ れ た 。 第 一 子 、 第 二 子 に 対 す る 出 費 の 増 加 は 親 に 負 担 能 力 あ り と 考 え ら れ た た め 、 第 二 子 は こ の 時 の 増 額 か ら 除 外 さ れ て い る 。 表6家 族 手 当の 実 質価 値 ※ (1958-72年) 1第2子 手当i第3子 以降の手当 年 0.558 0.555 0.549 0.531 0.510 0.500 0.484 0.462 0.444 0.434 0.704 1 0.785 0.738 0.675 0.632 0.446 0.444 0.439 0.425 0.408 0.400 0.387 0.369 0.355 0.347 0.621 0.745 0.707 0.665 0.607 0.569
1
工958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 ※1963年=100と す る 数 字 資 料:A.K.Maynard,`SocialSecurity', inMichaelH,Cooper(ed.),Social Policy,1973,p.192, こ れ 以 降 、 周 知 の 通 り 、 家 族 手 当 額 は 一 〇 年 以 上 に わ た つ て 改 定 さ れ な い ま ま で 、 そ の 価 値 は 低 下 の 一 途 を た ど っ て い る 。 表 六 は 、 家 族 手 当 の 実 質 価 値 ( 一 九 六 三 年 11 一 〇 〇 ) が 一 九 五 八 年 か ら 一 九 七 二 年 の 間 に ど の よ う に 上 下 し た か を 示 し て い る 。 一 九 六 三 年 の 価 格 ベ ー ス で 、 家 族 手 当 の 実 質 価 値 は 一 九 五 八 -六 七 年 の 間 に 一 一 二 % 低 下 し た 。 一 九 六 七 年 の 増 額 で は 実 質 価 値 は 維 持 さ れ な か っ た 。 実 際 に は 表 は 、 一 九 六 七 二 五 三佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 五 四 1 七 二 年 の 期 間 に 実 質 価 値 が 二 三 % 低 下 し た こ と を 示 し て い る 。 ② 家 族 手 当 制 度 低 迷 の 背 景 さ て ・ 家 族 手 当 の 実 質 価 値 が 低 下 す る ま ま に 何 故 放 置 さ れ て き た の だ ろ う か 。 そ の 時 代 背 景 と 家 族 手 当 停 滞 の 原 因 を 探 る こ と に し た い 。 戦 後 英 国 の 経 済 思 想 の う え に 、 支 配 的 な 二 つ の 考 え 方 が 行 な わ れ て き た 。 一 つ は 、 英 国 社 会 か ら ﹁ 貧 困 は 一 掃 さ れ た ﹂ と い う こ と 、 も う 一 つ は 、 所 得 平 等 化 の 進 展 に と も な い 、 貧 富 の 生 活 水 準 の 格 差 が 縮 少 の 一 途 を た ど っ て い る ・ と い う こ と で あ 毎 。 人 々 が 豊 か な 社 会 の 幻 楚 心 蠡 わ れ て い 蒔 代 は 、 多 か れ 少 な か れ 、 不 断 の 継 続 的 な 経 済 成 長 の 時 代 で あ り 、 新 た な 富 が 国 民 全 体 に ま す ま す 公 平 に 分 配 さ れ る 時 代 と し て 説 明 さ れ て い た 。 貧 困 は 国 民 の 大 部 分 が 直 面 し て い る 問 題 で あ る ど こ ろ か 、 無 能 力 や 無 責 任 に よ っ て 新 た な 繁 栄 を 分 け 合 う こ と の で き な か っ た ほ ん の 少 数 の 人 々 の 問 題 で あ る と 感 じ ら れ て い た 。 け れ ど も 、 わ ず か 一 〇 年 後 に は 、 五 〇 年 代 を と お し て 貧 困 者 の 数 は 減 る ど こ ろ か 、 既 に 数 百 万 人 に の ぼ り 、 国 富 の 分 配 は 公 平 さ を 増 し た の で は な く 一 層 公 平 で な く な り つ つ あ っ た と い う こ と に 人 々 は 気 付 き は じ め る 。 機 会 の 平 等 は 、 め っ た に 実 行 に 移 さ れ な い 口 先 だ け の 約 束 で あ っ た し 、 五 〇 年 代 と 六 〇 年 代 の 間 に 人 ・ の 大 部 分 の 食 事 は 医 学 的 に 勧 告 さ れ た 水 準 よ り は る か に 低 下 し て い た 。 し か し 全 て の 政 党 の 政 治 家 や 大 半 の 研 究 者 た ち が 、 貧 困 は 過 去 の 記 憶 に な っ て し ま っ た と 考 、兄 た の は 何 故 な の だ ろ う か 。 貧 困 は 廃 絶 さ れ た と い う 考 え 方 に 大 き な 影 響 を 与 え た の は 、 畧 / ト ^, ︲ ( B . S . R o w n tr e e ) と レ イ ヴ ァ ー ス ( O ° 切 ゜ L a v ° 屋 ) に よ る 一 九 五 〇 年 の ヨ ー ク 調 査 の 結 論 で あ ろ う 。 戦 後 か ら 六 〇 年 代 は じ め ま で に 着 手 さ れ た 唯 一 の 主 要 な 貧 困 調 査 で あ る こ の 研 究 は 、 貧 困 の 克 服 を 決 定 的 に 論 証 し た と 思 わ れ た か ら で あ る 。 ヨ ー ク 市 に お け る 第 三 回
貧 困 調 査 の 結 果 は 、 こ の 地 方 に お け る 第 一 次 貧 困 は 、 前 回 調 査 時 に 比 し て 労 働 者 階 級 世 帯 の 三 一 ・ 一 % か ら 二 ・ 七 七 % ( 人 口 の 一 八 % か ら 一 ・ 七 % ) に 低 下 し 、 し か も そ の 水 準 は 福 祉 諸 立 法 が な け れ ば 二 二 ・ 一 八 % で あ っ た だ ろ う 、 と い う こ と を 明 ら か に し て い た 。 二 年 後 に タ ウ ン ゼ ン ト ( P . T o w n s e n d は こ れ に 反 論 を 示 す の で あ る が 、 当 時 こ の 調 査 結 果 に 反 対 の 声 を 挙 げ た 者 は 殆 ど な く 、 人 々 が 絶 対 的 窮 乏 の 事 実 上 の 撲 滅 と 、 こ の 目 ざ ま し い 改 善 を よ ろ こ ん だ と し て も 不 思 議 で は な い 。 ロ ウ ン ト リ ー と レ イ ヴ ァ ー ス は 、 人 々 の 生 活 水 準 の 明 ら か な 改 善 の 理 由 と し て 、 第 一 に 戦 後 の 完 全 雇 用 政 策 と 賃 金 の 上 昇 を 挙 げ て い る 。 彼 ら は 、 一 九 三 六 年 に は 貧 困 の 六 〇 % は 失 業 ま た は 低 賃 金 に よ る も の で あ っ た の に 対 し て 、 一 九 五 〇 年 に は 、 そ の 数 字 は わ ず か 一 % に す ぎ な か っ た と い う こ と を 示 し て い る 。 第 二 に 、 戦 後 の 英 国 で は 一 般 的 に 利 用 で き る 様 々 な 福 祉 施 策 が 、 明 ら か に 所 得 再 分 配 効 果 を も ち 、 労 働 者 階 級 の 生 活 水 準 を か な り 改 善 し た と 考 え ら れ た 。 し た が っ て 、 ロ ウ ン ト リ ー と レ イ ヴ ァ ー ス は 貧 困 を 減 少 さ せ る と い う 点 で 食 料 補 助 金 や 家 族 手 当 な ど の 施 策 の 効 果 を 評 価 し よ う と し た 。 依 然 と し て 残 っ て い る 貧 困 は 、 主 と し て 老 人 の 間 に 集 中 し て い る 少 数 の 残 余 の 問 題 で あ る と 説 明 さ れ た 。 ロ ウ ン ト リ -S 111 回 の 調 査 を 比 較 し た 表 七 は 、 貧 困 原 因 の 相 対 的 重 要 性 が 五 〇 年 の う ち に ど の よ う に 変 化 し た か を 示 し て い る 。 第 一 回 調 査 に お け る 貧 困 の 重 要 な 要 因 は 、 低 賃 金 と 大 家 族 で あ り 、 多 く の 場 合 そ の 両 方 が 結 合 し て い た 。 第 二 回 調 査 で は 失 業 が 一 層 重 要 で あ っ た が 、 こ れ は 経 済 不 況 の 結 果 で あ っ た 。 三 〇 年 代 に は 疾 病 や 老 齢 も 貧 困 の 原 因 と し て 一 層 目 立 っ て い る が 、 こ れ は 相 対 的 な 比 率 で あ る の で 、 こ の 間 に 老 人 や 病 人 の 数 が ほ ぼ 四 倍 に ふ え た と い う こ と は 必 ず し も 当 て は ま ら な い 。 そ れ ど こ ろ か 、 ロ ウ ン ト リ ー は 貧 困 の 総 数 は 減 少 を 示 し 、 こ の 数 字 は よ り 少 数 者 の 間 の 多 様 な 貧 困 要 因 の 相 対 的 分 布 の 変 化 を 示 し て い る と 述 べ て い る 。 一 九 五 〇 年 の 数 字 を 検 討 す る と 、 変 化 は 一 層 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 五 五
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 表7ロ ウ ソ トリーの ヨー ク市 に お け る三 調 査 の比 較(単 位:%) 貧 困 者 の 比 率 1899年11936年11950年 貧 困 の 原 因 0 1.0 68.1 21.3 6.4 3.2 28.6 42.3 14.7 4.1 7.s 2.5 2.31 51.96 5.11
}
15.63 24.99 主 た る 賃 金 稼 得 老 の 失 業 規則雇用に就 く稼得者の不十分な賃金 老 齢 疾 病 主 た る 賃 金 稼 得 者 の 死 亡 そ の 他(大 家族を含む) 資 料KenKoatsandRichardSilburn,Povertッ'TheForgo犲enEng°Zishman, 1975,p.46. 二 五 六 明 ら か で あ る 。 貧 困 の 総 数 は 今 や 大 層 少 な い と ロ ウ ン ト リ ー が 算 定 し た こ と を 心 に 留 め る と 、 低 賃 金 や 失 業 は 貧 困 の 主 た る 原 因 ど こ ろ か 、 一 九 五 〇 年 に は 殆 ど と る に 足 り な い と み る こ と が で き る 。 こ の 事 実 は 戦 後 の 経 済 ・ 社 会 政 策 の 結 果 と し て 広 く 歓 迎 さ れ た 。 老 齢 と 疾 病 は 三 〇 年 代 に は 次 第 に 重 要 に な っ て い た が 、 一 九 五 〇 年 に は 最 大 の 要 因 と な り 、 経 済 政 策 よ り も む し ろ 社 会 福 祉 政 策 の 発 展 に よ る 方 策 を 必 要 と し て い る 。 失 業 が 依 然 と し て 低 い ま ま で あ り 、 賃 金 が ロ ウ ン ト リ ー の 最 低 生 存 水 準 よ り 高 い ま ま で あ る と す れ ぽ 、 貧 困 は ご く 小 規 模 な 残 余 の 社 会 的 問 題 に と ど ま る で あ ろ う と さ れ た 。 一 九 五 三 -四 年 の 家 計 調 査 の 第 二 次 分 析 は 、 ロ ウ ン ト リ ー と レ イ ヴ ァ ー ス の 水 準 に 従 え ば 、 そ の 年 に は イ ギ リ ス の 全 世 帯 の 五 ・ 四 % 、 人 口 の 四 ・ 一 % が 貧 困 生 活 を し て い る こ と を 示 し て い た 。 さ ら に 世 帯 の も う 四 ・ 五 % ( 人 口 ⑰ の 四 % ) は 、 こ の 水 準 を 二 〇 % も 上 回 ら な い 所 得 で あ っ た 。 こ の 基 準 に よ る と 、 貧 困 は 一 九 三 〇 年 代 か ら 一 九 五 〇 年 代 初 期 の 間 に 減 少 し た と 思 わ れ て い た 。 し か し 、 ロ ウ ン ト リ ー は 購 買 力 の 点 か ら 一 九 三 六 年 よ り も 高 い 実 質 水 準 で 彼 の 貧 困 線 を 再 定 義 し て い た け れ ど も 、 そ れ を 賃 金 の 上 昇 と 同 じ 位 に は 引 き 上 げ な か っ た 。 し た が っ て 貧 困 人 口 の 割 合 を ず っ と 少 な く 見 出 す に 相 違 な い の は 避 け ら れ な い こ と で あ っ た 。 さ ら に 、 そ の 貧 困 水 準 は 現 代 社 会 に お いて は 時 代 遅 れ の ニ ー ド の 概 念 を 反 映 し て い る 。 た し か に 、 生 物 学 的 生 存 を 脅 か す よ う な 貧 困 が ほ ぼ 消 滅 し た こ と は 疑 問 の 余 地 が な い 。 こ れ に は 社 会 保 障 の 寄 与 も 少 な か ら ず あ っ た で あ ろ う 。 し か し 、 公 認 の 貧 困 線 -国 民 扶 助 ( の ち の 補 足 給 付 ) 適 用 基 準 i 以 下 の 生 活 を し て い る 人 々 の 割 合 は 、 減 少 す る ど こ ろ か 増 加 す ら し て い る の で あ る 。 ベ ヴ ァ リ ッ ジ 報 告 で は 、 社 会 保 険 と 家 族 手 当 で 貧 困 は 大 幅 に 減 り 、 拠 出 制 の 社 会 保 険 が 成 熟 し た 段 階 で は 、 公 的 扶 助 の 適 用 は 次 第 に 例 外 的 に な る と 予 想 さ れ て い た 。 と こ ろ が 、 実 際 に 起 っ た こ と は 、 こ れ と は 全 く 逆 だ っ た の で あ る 。 エ イ ブ ル ー ス 、、・ K ( B r a in A b e l-S m it h ) と タ ウ ン ゼ ン ト に よ れ ぽ 、 一 九 五 三 -四 年 か ら 一 九 六 〇 年 の 問 に 、 公 的 扶 助 基 準 の 一 四 〇 % 未 満 の 貧 困 世 帯 は 一 〇 ・ 一 % か ら 一 七 ・ 九 % に 、 公 的 扶 助 基 準 以 下 の 極 貧 世 帯 は 二 ・ 一 % か ら 四 ・ 七 % に 上 昇 し て い る 。 表 八 は ロ ウ ン ト リ ー の 一 九 五 〇 年 調 査 と エ イ ブ ル ー ス ミ ス と タ ウ ン ゼ ン ト の 一 九 六 〇 年 の 推 計 ( こ れ は 扶 助 基 準 を 採 用 し た ) を 比 較 し た も の で ゐ る が 、 そ の 著 し い 相 違 は 明 瞭 で あ る 。 生 物 学 的 生 存 を 基 準 と せ ず に 、 そ の 時 代 の 社 会 が 要 求 し て い る 最 低 水 準 の 生 活 を 尺 度 と す れ ば 、 貧 困 要 因 と し て は 大 家 族 P 低 賃 金 が は る か に 大 き な 要 因 と な る 。 一 九 六 〇 年 に は 貧 困 世 帯 の 四 〇 % は 、 賃 金 が 国 民 扶 助 基 準 を 満 た す に 足 り な い た め に 貧 困 に 陥 っ て い る の で あ り 、 そ れ は ロ ウ ン ト リ ー が 1 九 111 六 年 に 見 出 し た の と ほ ぼ 同 じ 割 合 で あ っ た 。 貧 困 の 廃 絶 や 豊 か な 社 会 の 幻 想 に こ の 時 代 の 社 会 が 信 を お い た の は 事 実 と し て も 、 他 の 所 得 保 障 制 度 の 給 付 水 準 が 物 価 や 賃 金 水 準 の 上 昇 に 応 じ て 比 較 的 頻 繁 に 改 定 さ れ て き た の に 対 し 、 家 族 手 当 の 給 付 改 定 が 大 き く 遅 れ を と っ て き た の は 何 故 な の だ ろ う か 。 の ち に 多 く の 論 者 の 指 摘 に よ っ て 、 イ ギ リ ス の 貧 困 は 再 発 見 さ れ る こ と に な る が 、 労 働 者 世 帯 の 貧 困 の 再 発 見 が 非 常 に 遅 れ た の は 、 貧 困 は 廃 絶 さ れ た と い う 初 期 の 確 信 だ け で な く 、 こ れ を 疑 問 と し た 人 々 の 間 で は 老 人 と 扶 助 受 給 者 の 貧 困 の み に 関 心 が 集 中 し た こ と 、 世 帯 規 模 別 の 賃 金 統 計 が 存 在 し な か っ た こ と が 影 響 し て 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 五 七
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 五 八 表8ロ ウ ソ ト リ ー の1950年 調 査 と エ イ ブ ル ー ス ミス と タ ウ ン ゼ ソ ト の1960年 の 比 較
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卯 .﹂ 隷 a I I X 資 い 碣 。 老 齢 貧 困 者 に 関 し て は 、 す で に 一 九 五 四 年 頃 か ら 注 目 が 払 わ れ は じ め韈
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扶 養 児 童 を も つ 母 親 に つ い て の a N S ,,,, 査 は 、 家 族 手 当 は か な り の 割 合 の 人 々 が 余 り爨
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年 の 調 査 結 果 を 分 析 し た 報 告 は 、 現 在 の 家 族 手 当 制 度 は 家 族 の 利 害 を 分 裂 さ ぜ る と 述 べ て い る 。 標 本 家 庭 の ほ ぼ 半 数 が 、 調 査 時 点 に お い て 家 族 手 当 の 受 給 資格 が な く 、 そ の う ち わ ず か 五 分 の 三 が か つ て 資 格 を 有 し て い た 。 専 門 職 . 管 理 職 層 の 親 は 、 家 族 手 当 を 余 り 役 立 つ も の と 思 っ て い ず 、 一 子 世 帯 の 約 三 分 の 一 が 家 族 手 当 の 費 用 を 減 ら す よ う 望 ん で い る と い う 事 実 を 論 評 し て 、 報 告 書 は お ﹁ こ れ は 、 サ ン プ ル 中 の 家 庭 が 家 族 手 当 か ら 得 る 利 益 が 不 公 平 で あ る こ と を 反 映 し て い る ﹂ と 判 断 し て い る 。 第 一 子 を 除 外 し た た め に 、 児 童 の 半 数 以 上 に 給 付 が 支 払 わ れ て い な い 制 度 、 賃 金 や 他 の 社 会 保 障 水 準 と 結 び つ い て い な 熱 僅 少 の 手 当 で あ る こ と を 考 え る と 、 英 国 の 家 族 手 当 は 所 得 維 持 の 手 段 た り 得 ず 、 ま た 児 童 福 祉 と の 直 接 的 関 連 も 極 め て 薄 い も の で あ っ た と い わ ざ る を 得 な い 。 圧 力 団 体 を 持 た ず 、 給 付 が 保 険 料 か ら で な く 税 金 か ら 支 払 わ れ て い る と い う 事 実 は 、 政 府 が 家 族 手 当 制 度 を 改 善 す る こ と な く 放 置 し や す く し て き た と も い え る 。 マ ク ミ ラ ン 氏 ( ζ 穹 旨 崑 碧 " 一 九 五 七 -一 九 六 三 年 内 閣 ) は 、 就 任 当 初 に 、 家 族 手 当 の 支 給 対 象 か ら 第 一 子 だ け で な く 第 二 子 も 除 く と い う 提 案 が あ っ た こ と を 明 ら か に し て い る 。 彼 の 政 権 は こ の 提 案 を 拒 否 し た が 、 彼 が 首 相 の 座 に あ っ た 問 の 家 族 手 当 の 僅 か な 増 額 ( 第 三 子 以 降 ニ シ リ ン グ ) は こ れ と 同 じ 性 質 の も の で あ っ た し 、 ま た 当 時 の 政 府 が そ れ 以 上 の こ と を し な か っ た と い う こ と に 対 し て 政 治 的 に 攻 撃 さ れ な か っ た と い う 点 は 重 大 で あ る 。 戦 後 の 政 府 が 、 以 前 に 同 意 さ れ た 政 策 を 遂 行 せ ず 、 余 り 発 展 さ せ て い な い と い う 失 策 に 対 し て 何 の 反 撃 も 出 な か っ た の で あ る 。 ベ ヴ ァ リ ッ ジ が 強 調 し た 労 働 へ の イ ン セ ン テ ィ ヴ 効 果 す ら 、 失 業 が 減 少 し 、 疾 病 給 付 に 被 扶 養 者 が 考 慮 に 入 れ ら れ て い な か っ た 時 代 に は 明 ら か で は な か っ た 。 社 会 保 障 予 算 に お け る 家 族 手 当 の 外 観 ( 稼 働 世 帯 へ の 給 付 ) は 、 老 人 そ の 他 所 得 喪 失 時 の 二 i ズ と 相 容 れ な い も の に 見 せ 、 そ れ が 課 税 、 賃 金 、 教 育 、 住 宅 な ど の 領 域 に お け る 政 策 と 家 族 手 当 を 切 り 離 し て し ま っ た の で あ る 。 本 来 、 家 族 手 当 は こ う し た 一 連 の 諸 施 策 と 関 連 づ け て こ そ 、 効 果 を 発 揮 す る も の で あ る 。 だ が 、 当 初 の 低 額 の 家 族 手 当 を 正 当 化 す る 一 因 と な っ た 無 料 の 学 校 給 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 五 九
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 六 〇 食 が 、 ﹁ 貧 困 者 ﹂ 以 外 の 全 て の 親 に 対 し て 給 食 の 全 費 用 を 負 担 惑 せ る 方 向 に 移 っ た と き 、 何 故 最 初 の 政 策 が 放 棄 さ れ た の か 説 明 す る 必 要 が あ る と は ど の 閣 僚 も 思 わ な か っ た 。 パ ン 補 助 金 を は ず す た め に 一 九 五 二 年 に 家 族 手 当 の 増 額 が 利 用 さ れ た の も 、 そ の 一 例 で あ る 。 家 族 手 当 に つ い て は 実 に 多 く の 人 々 が 、 そ れ ぞ れ の 立 場 か ら の 主 張 を 展 開 し て き た の で あ っ て 、 そ の い ず れ に 的 を 絞 る か の 国 民 的 合 意 を 得 な い ま ま に 成 立 し た と い え る 。 そ の た め に 目 的 が 明 確 で な く 、 効 果 も 明 確 で な か っ た 。 し た が っ て 、 そ の こ と 自 体 が 制 度 停 滞 の 憎 因 で あ る と い え る か も し れ な い 。 家 族 手 当 法 導 入 の 背 後 に は 、 表 面 的 に は 、 少 な く と も 二 つ の 主 要 な 動 機 が あ っ た 。 一 つ の よ り 重 要 な も の は 多 子 貧 困 の 排 除 で あ り 、 第 二 は 戦 争 前 か ら 経 験 さ れ て い た 出 生 率 の 減 少 に と も な う 人 口 学 的 な 動 機 で あ っ た 。 し か し 、 そ の 給 付 水 準 は い ず れ の 戦 い に も 不 十 分 な も の で あ っ た 。 家 族 の 貧 困 に 戦 う こ と が 主 た る 機 能 で あ っ た と す る な ら ぽ 、 一 九 五 〇 年 代 お よ び 一 九 六 〇 年 代 に お け る 生 計 費 の 増 加 に 遅 れ を み る こ と は 認 め ら れ な か っ た で あ ろ う 。 ま た 、 家 族 手 当 が 出 生 率 に 及 ぼ す 効 果 は 殆 ど 知 ら れ て い な い し 、 給 付 額 が 子 を 生 み 育 て る 費 用 を カ バ ー し て い る 国 は ど こ に も な い 。 さ ら に 、 多 子 1 ・貧 困 の 関 係 を 重 視 し 、 大 抵 の 成 年 男 子 の 賃 金 は 少 な く と も 一 子 は 扶 養 し う る と し て 、 給 付 の 対 象 か ら 第 一 子 を 除 外 し た こ と の も た ら し た も の は 、 親 が 働 い て い る た め に 国 民 扶 助 を 受 け る 資 格 も な く 、 し か も そ の 所 得 が 課 税 最 低 限 以 下 で あ る 低 賃 金 労 働 者 の 家 亠涎 の 場 合 に だ け 、 第 一 子 は 真 に ど こ か ら も 何 の 給 付 も 受 給 す る 資 格 を も た な い と い う こ と を 意 味 す る の で あ る 。 問 題 の 根 本 が 本 質 的 に 多 子 の み な ら ず 低 賃 金 の 問 題 で あ る 限 り に お い て 、 家 族 手 当 は 低 賃 金 の 問 題 を 真 に 扱 う こ と な し に 、 賃 金 水 準 へ の 最 低 限 の 必 要 な 調 整 を な さ し め る 手 段 で あ っ た し 、 そ れ す ら 僅 少 な 給 付 水 準 で あ っ た た め 効 果 を も た な か っ た 。 し た が っ て 、 す べ て の 人 々 に と っ て 、 稼 働 中 の 所 得 と 稼 働 し て い な い 時 の 所 得 の 差 を で き る だ け 大 き く す る こ
と に も 失 敗 し た と い え る 。 H 貧 困 の 再 発 見 と 家 族 手 当 改 正 へ の 諸 提 案 ω 稼 働 世 帯 の 貧 困 と 児 童 社 会 の 極 貧 層 の 多 く が 、 扶 助 基 準 以 下 で 生 活 せ ざ る を 得 な い 低 賃 金 労 働 者 の 世 帯 の 中 に 見 出 さ れ 、 多 数 の 児 童 が 含 ま れ て い る と い う こ と を 世 論 に 認 識 さ せ 、 稼 働 世 帯 の 貧 困 の 再 発 見 に 決 定 的 な 役 割 り を 果 た し た の は 、 エ イ ブ ル ー ス ミ ス と タ ウ ン ゼ ン ト の ﹃ 貧 困 者 と 極 貧 者 ﹄ で あ る 。 こ れ は 五 〇 年 代 以 降 に お け る 貧 困 層 の 増 大 傾 向 を 指 摘 し 、 貧 困 の 一 掃 と 所 得 平 等 化 の 進 展 と い う 二 つ の 考 え 方 に 重 大 な 反 証 を 提 供 し た も の で あ る が 、 そ れ 以 前 の 調 査 が 老 人 の 貧 困 に 注 意 を 集 中 し て い た の に 比 べ て 、 貧 困 世 帯 人 口 の 三 四 ・ 六 % は 常 用 労 働 者 世 帯 に 属 す る 人 々 に よ っ て 占 め ら れ て い る ゆ こ と を 明 ら か に し た の で あ り 、 こ れ が 最 も 重 要 な 結 論 の 一 つ で あ っ た 。 し か し 、 こ れ よ り 早 く 、 一 九 六 二 年 の 社 会 学 会 で 、 タ ウ ン ゼ ン ト は 、 一 九 五 三 i 四 年 の 世 帯 消 費 調 査 で 集 め ら れ た 資 料 を 分 析 し 、 世 帯 の 一 〇 分 の 一 は 国 民 扶 助 基 準 額 の 一 四 〇 % 以 下 の 水 準 で 生 活 し て い る こ と 、 そ の ほ ぼ 半 数 は 老 人 ま た は 决 婦 だ け の 世 帯 で あ っ た が 、 ﹁ 三 分 の 一 以 上 は 常 用 労 働 者 を 世 帯 主 と す る 人 々 で あ っ た ﹂ と 述 べ て い る 。 こ の う ち 二 九 % が 一 六 歳 未 満 の 子 ど も で あ っ た 。 そ し て 一 九 六 〇 年 の 世 帯 消 費 調 査 に よ る と 、 全 世 帯 の 七 分 の 一 が 国 民 扶 助 基 準 額 に 家 賃 を 加 え た も の の 一 四 〇 % 以 下 で ゆ 生 活 し て い る 、 と い う 暫 定 的 結 論 を 述 べ て い る 。 こ れ は 、 一 九 六 五 年 一 二 月 に 発 行 さ れ た ﹃ 貧 困 者 と 極 貧 者 ﹄ の 中 で 確 認 さ れ る こ と に な っ た 事 実 の 一 部 を 一 九 六 二 年 に 発 表 し た も の で あ る 。 こ の 摘 発 、 な か で も 一 九 五 三 -四 年 の 貧 困 世 帯 の 三 分 の 一 以 上 が 常 用 労 働 者 の 世 帯 で あ る 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 六 一
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 六 二 と い う 事 実 を 重 視 し た ラ イ ン ズ ( 8 ° L y n e s ) は 、 一 九 六 三 年 八 月 に は 既 に 、 家 族 手 当 の 増 額 を 要 求 し 、 そ の 費 用 は 児 童 の 税 控 除 の 削 減 に よ り 賄 う こ と を 提 案 し て い る 。 さ ら に 一 八 ケ 月 後 、 彼 は 再 び こ の 要 求 を 繰 り 返 し 、 家 族 手 当 は 三 倍 以 上 に 増 額 さ れ る べ き で あ る こ と 、 課 税 前 の 費 用 は 四 億 ポ ン ド で あ る こ と 、 大 家 族 援 助 に 重 点 を お く こ と を 主 張 し h て い る 。 重 点 が 大 家 族 に お か れ た の は 、 タ ウ ン ゼ ン ト の 調 査 結 果 が 、 常 用 労 働 者 を 世 帯 主 と す る 貧 困 世 帯 の 大 部 分 が 三 子 以 上 の 世 帯 で あ る と い う 特 徴 を 示 し 、 大 家 族 の 貧 困 化 傾 向 を 強 調 し て い た こ と に 起 因 し て い る 。 こ れ が ラ イ ン ズ や そ の 後 の 貧 困 児 童 対 策 グ ル ー プ の 最 初 の 提 案 の 中 で 、 高 額 の 家 族 手 当 は 出 生 率 の 増 加 を ひ き お こ す 一 因 と な る と 主 張 さ れ る 恐 れ が あ る と し て 、 守 勢 の 立 場 を と ら せ た の で あ る 。 し か し 、 一 九 六 七 年 の 社 会 保 障 省 の 調 査 の 発 表 後 は 、 家 族 手 当 を 受 給 し 常 用 労 働 に つ く 貧 困 世 帯 の ほ ぼ 半 数 は 二 子 世 帯 で あ る こ と が 証 明 さ れ た た め 、 そ の 後 の 一 連 の 提 案 が 開 始 さ れ る こ と に な る 。 一 ﹃ 貧 困 者 と 極 貧 者 ﹄ ﹃ 貧 困 者 と 極 貧 者 ﹄ は 、 労 働 省 の 標 本 家 計 調 査 を 利 用 し て 、 一 九 五 三 ー 五 四 年 と 一 九 六 〇 年 と を 対 比 し つ つ 、 英 国 に お け る 貧 困 層 の 動 態 に 一 定 の 分 析 を 行 な っ た も の で あ る 。 ﹁ 貧 困 基 準 ﹂ と し て 、 ロ ウ ン ト リ ー と レ イ ヴ ァ ー ス が 一 九 五 〇 年 の 第 三 回 ヨ ー ク 調 査 に 採 用 し た ﹁ 最 低 生 活 水 準 ﹂ を 実 質 的 に 考 慮 し つ つ 、 し か も ﹁ 公 的 ﹂ な 機 能 的 な 基 準 と し て 国 民 扶 助 受 給 者 が 経 験 し て い る 実 際 の 生 活 水 準 ( 基 準 額 に 任 意 の 付 加 額 や 無 視 さ れ て い る 所 得 を 考 慮 に 入 れ て ) を 国 民 扶 助 基 礎 基 準 額 の 一 四 〇 % 未 満 で あ る と し て 、 そ の 水 準 を 下 ま わ る 生 活 を し て い る 世 帯 を 貧 困 世 帯 と 規 定 し て い る 。 両 年 度 の 貧 困 比 率 の 動 態 を 集 約 的 に 示 し て い る の が 表 九 で あ る 。 一 四 〇 % に 満 た な い 水 準 で 生 活 し て い る 世 帯 は 一 〇 ・ 一 % か ら 一 七 ・ 九 % に 、 貧 困 人 口 は 七 ・ 八 % か ら 一 四 ・ 二 % に 増 加 し て い る 。 国 民 扶 助 レ ベ ル に 達 し な い
表9イ ギ リス に おけ る貧 困世 帯,貧 困 人 口の推 定(1953-4年 と1960年) イギ リス の推 定 人 口(1,000人) ・953-4年1・96・ 年 471 1,519 1,467 1,259 2,724 44,945 人 口 比 率 ・953-4年1・96・ 年 152 455 709 709 1,923 46,663 0.9 2:9 2.8 2.4 5.2 85.5 世 帯 比 率 ・953-4年i・96・ 年 0.3 0.9 1.4 1.4 3.8 92.2 1.3 3.4 4.7 3.1 5.5 82.1 1 0.5 1.6 1.9 1.7 4.4 ;. 消 費 額(1953-4年),所 得 額(1960年)の 国民 扶 助 基 礎 基 準 額 に 対す る比 率 X % 満 99 ㎜ ㎎ 剏 上 未 以 80 80 蜘 m ㎜ 蜘 52,383 50,611 100.0 100.0 100.0 100.0 計 合 注:※ 印 は 国 民 扶 助 基 礎 基 準 額 に 家 賃 そ の 他 の 住 居 費 を 加 え た も の 。 資 料:Abel-Smith,B.alldTownsend,P.,ThePoorandthePoorest,Bell, London,1965,P.58.(た だ し,Townsend.P.,Poverty勿theUnited Kingdom,AllenLane,1979,P.162に よ る 。) 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 ( 一 〇 〇 % 未 満 ) 、 い わ ぽ 極 貧 層 に 限 っ て も 、 世 帯 比 率 は 二 . 一 % か ら 四 ・ 七 % に 、 人 口 比 率 で は 一 ・ 二 % か ら 三 . 八 % に ふ え て い る 。 一 四 〇 % 未 満 の 水 準 で 七 五 〇 万 人 ( 一 〇 〇 % 未 満 の 水 準 で 一 九 九 万 人 ) が 貧 困 で あ る と 推 計 さ れ て い る 。 し た が っ て 、 こ の 両 年 次 に か け て 貧 困 の 広 が り が 増 し て い る こ と は 疑 い な い 事 実 で あ る が 、 そ の 要 因 と し て 著 者 ら は 次 の よ う な 点 を 挙 げ て い る 。 第 一 に 、 こ れ は 或 る 程 度 ま で 人 口 統 計 上 の 要 因 に よ っ て い る こ と 、 即 ち 、 こ の 期 間 に 老 齢 人 口 及 び 四 人 以 上 子 供 の い る 世 帯 の 比 率 が 増 大 し た こ と で あ る 。 一 九 五 三 年 か ら 一 九 六 〇 年 の 間 に 、 六 五 歳 以 上 の 人 口 比 率 は 一 一 . 一 % か ら = . 七 % に 上 昇 し 、 扶 養 児 童 が 四 人 い る 世 帯 は 二 〇 % 、 五 人 い る 世 帯 は 二 の 六 % 、 六 人 以 上 い る 世 帯 は 四 五 % も 増 加 し て い る 。 こ れ と 関 連 し て 、 貧 困 世 帯 人 口 の 年 齢 別 構 成 を 示 す 表 一 〇 を み る と 、 貧 困 世 帯 に お け る 一 六 歳 未 満 の 児 童 の 比 率 は 二 九 ・ 一 % か ら 11 10 ・ 1 % に 漸 増 を 示 し て い る 。 た だ し 、 こ れ を 詳 細 に み る と 、 貧 困 層 の う ち 1 0 0 -1 1 九 % の 層 で は 児 童 の 比 率 は 三 一 . 七 % か ら 二 〇 . 三 % へ と 著 し い 低 下 を 示 し て い る の に 対 し て 、 = 一〇 % 以 上 の い わ 二 六 三
表101953-4年 お よび1960年 の貧 困 人 口の年 齢 分 布 佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 計 100.0 100.0 '100 .0 100.0 100.0 100.0 齢 年 ・6歳以 上15-・5劇5歳 糒 6.4 12.0 8.5 5.7 11.3 12.5 10.5 21.1 23.2 14.6 19.6 25.3 83.1 66.9 68.3 79.7 69.1 62.2 年 1953-54 1960 1953-54 1960 1953-54 1960 世 帯 支 出(1953-54年)ま た は 所 得(1960年)の 国 民 扶 助 基 準額 ※に 対 す る比 率(%) 満 ㎜ ㎜ 未 0 0 0 O O N . -- . -i 100.0 100.0 9.6 9.9 19.5 20.2 70.9 69.9 1953-54 1960 ユ40未 満 計 注:※ 印 は 前 表 注Y'同 じ 。 資 料:B.Abel-Smith,P.Townsend,ibid,Table28,P.61. 二 六 四 ば 貧 困 上 層 で は 三 〇 ・ 九 % か ら 三 七 ・ 八 % へ と 児 童 の 比 率 が 増 大 し て い る こ と 、 さ ら に 一 〇 〇 % 未 満 の 極 貧 層 で は 児 童 の 比 率 が 一 六 ・ ゆ 九 % か ら 三 11 1 ・ 1 % へ と 著 し く 上 昇 し て い る こ と が 判 る 。 第 二 に 、 特 定 の 形 の 所 得 の 分 配 と 重 要 性 が 変 化 し た こ と が 一 層 大 ゆ き な 要 因 で あ る 。 財 産 所 得 や 資 本 利 得 は 他 の 所 得 に 不 釣 合 な ほ ど 増 加 し 、 低 賃 金 労 働 者 の 賃 金 上 昇 率 は 平 均 産 業 賃 金 よ り は る か に 遅 れ 、 税 金 ( 税 控 除 の 拡 大 を 含 め て ) は 低 所 得 層 よ り も 相 対 的 に 中 ・ 高 額 所 得 層 の 地 位 を 改 善 し た 。 な か で も 重 要 な の は 、 第 二 子 に 対 す る 家 族 手 当 は 一 九 五 三 年 か ら 一 九 六 〇 年 の 間 八 シ リ ン グ の ま ま で あ り 、 第 三 子 以 降 の 手 当 は 八 シ リ ン グ か ら 一 〇 シ リ ン グ に 、 わ ず か に 二 五 % だ け 増 加 し た に す ぎ な い こ と で あ る 。 こ の 時 期 、 一 九 五 三 年 か ら 一 九 六 〇 年 に か け て 、 平 均 産 業 賃 金 ( 一 般 生 活 水 準 を 代 表 す る と 考 え ら れ る ) は 五 二 % 増 大 し 、 一 人 当 り 個 人 所 得 は 五 一 % の 上 昇 を み て い る 。 家 族 手 当 が 社 会 の 生 活 水 準 と 歩 調 を 合 わ せ る こ と が で き ず 、 一 般 産 業 賃 金 の 上 昇 に 遅 れ 、 低 賃 金 労 働 者 の 賃 金 が 平 均 産 業 賃 金 よ り 著 し く 低 い 時 期 に 、 四 人 以 上 の 扶 養 児 童 を も つ 世 帯 が 相 対 的 に 増 大 し た こ と は 、 有 子 貧 困 世 帯 と そ の 他 の 世 帯 と の 所 得 の 隔 り
を 広 め る 一 因 と な っ た の は 疑 い を い れ な い と こ ろ で あ ろ う 。 ﹃ 貧 困 者 と 極 貧 者 ﹄ の 中 で 明 ら か に さ れ た 事 柄 の う ち 、 家 族 手 当 と の 関 連 で 重 要 と 思 わ れ る 最 も 顕 著 な 事 実 は 、 児 童 の 間 の 貧 困 の 広 が り が 明 ら か に な っ た こ と で あ る 。 一 九 六 〇 年 に 七 五 〇 万 人 と 推 定 さ れ た 貧 困 世 帯 の 人 々 の う ち 、 三 割 以 上 が 一 六 歳 未 満 の 児 童 で あ り 、 そ の 数 は 二 二 五 万 人 ( イ ギ リ ス の 全 児 童 の 一 七 % ) に の ぼ る 。 し か も 、 国 民 扶 助 基 準 額 に 満 た な い 極 貧 層 一 九 九 万 人 の う ち 、 約 三 分 の 一 が 児 童 で あ る と い う 事 実 で あ る 。 そ れ に 加 え て 重 要 で あ る の は 、 貧 困 世 帯 の 五 分 の 二 以 上 は 所 得 が 主 と し て 賃 金 か ら 成 る 世 帯 で あ り 、 そ の 世 帯 人 口 の 半 数 は 児 童 で あ っ た と い ゆ う 点 で あ っ た 。 言 い か ・兄 れ ば 、 イ ギ リ ス に お け る 貧 困 は 非 稼 働 世 帯 の 間 に 見 出 さ れ る の み な ら ず 、 世 帯 主 が 常 用 労 働 者 で あ る 世 帯 に も 広 が っ た 問 題 で あ る こ と が 見 出 さ れ 、 多 数 の 低 賃 金 労 働 者 と そ の 家 族 を 含 む 問 題 で あ る こ と を 認 識 さ せ 、 政 府 の 方 策 を 要 求 す る 運 動 の 一 因 と な っ た と い え る で あ ろ う 。 二 社 会 保 障 省 調 査 雇 用 労 働 者 の い る 世 帯 は 国 民 扶 助 か ら 適 用 除 外 さ れ て い た の で 、 こ の 問 題 は 家 族 手 当 制 の 改 正 の 問 題 と し て 表 面 化 す る 。 イ ギ リ ス 労 働 党 政 府 は 、 ぬ 九 六 六 年 に 家 族 手 当 受 給 世 帯 に 関 す る 調 査 を 行 な う が 、 調 査 対 象 と な っ た 二 子 以 上 の 世 帯 に つ い て の 結 果 を み る と 、 三 九 〇 万 の 家 族 手 当 受 給 世 帯 の う ち 、 約 九 一 万 人 の 児 童 を 含 む 二 八 万 世 帯 ほ 所 得 ( 国 民 扶 助 を 除 く ) が 当 時 の 国 民 扶 助 基 準 額 を 下 ま わ , っ て い た ( 六 六 年 一 . 一 月 に 切 り 替 え ら れ た 補 足 給 付 基 準 額 を も と に す れ ば 、 約 = ○ 万 人 の 児 童 を 含 む 三 四 ・ 五 万 世 帯 矯 加 す る と 推 計 さ 穐 ) ・ こ の 二 八 万 世 帯 の う ち ・ 国 民 扶 助 に よ っ て 辛 う じ て 最 低 生 活 を 維 持 し て い た 世 帯 を 除 く と 、 現 実 に 国 民 扶 助 基 準 以 下 の 貧 困 世 帯 で あ る と さ れ た の は = ハ 万 世 帯 で あ っ た 。 一 六 万 世 帯 の 内 訳 は 、 ・ω 、 、賃 金 停 止 条 項 を 適 用 さ れ た た め 国 民 扶 助 を 全 額 受 給 で き な い 一 ・ 五 英 国 家 族 手 当 制 度 の 展 開 と 変 容 二 六 五
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 六 六 万 世 帯 、 ② 、 父 親 が フ ル タ イ ム の 労 働 者 で あ る た め 国 民 扶 助 を 受 給 で き な い 七 万 世 帯 、 ③ 、 扶 助 を 受 け る べ き 状 態 に あ り な が ら 申 請 し て い な い 七 ・ 五 万 世 帯 で あ っ た 。 さ ら に 注 目 す ぺ き こ と は 、 二 八 万 世 帯 の う ち 、 児 童 二 人 の 世 帯 が の 実 に 四 五 % ( 児 童 数 に し て 二 七 % ) を 占 め て い る と い う 事 実 で あ っ た 。 こ の 七 万 世 帯 ( 父 親 が フ ル タ イ ム で 働 い て い る ) を 児 童 数 別 に 分 類 し た 表 一 一 は 、 次 の こ と を 示 し て い る 。 第 一 に 、 貧 困 線 を 下 ま わ る 世 帯 は 、 二 子 、 三 子 世 帯 に 比 し て 多 子 世 帯 の 比 重 が 極 め て 大 き い と い う こ と で あ る ( 第 三 欄 参 照 ) 。 第 二 に 、 五 子 、 六 子 世 帯 の 貧 困 の 比 率 は 、 二 子 、 三 子 世 帯 よ り も は る か に 大 き い が 、 そ う し た 多 子 世 帯 が 人 口 に 占 め る 比 率 は ず っ と 少 な い こ と で あ る 。 国 民 扶 助 基 準 額 を 下 回 る 全 世 帯 の う ち 、 二 子 世 帯 が 三 分 の 一 強 を 占 め 、 三 子 世 帯 を こ れ に 加 え れ ぽ 半 ば 以 上 を 占 め る ( 第 二 欄 、 第 四 欄 参 照 ) 。 低 所 得 世 帯 の 児 童 総 数 を み て も 、 二 子 、 三 子 世 帯 で 四 〇 % に 近 い ( 第 五 欄 参 照 ) 。 と く に 極 貧 家 族 ( 国 民 扶 助 基 準 額 を ニ ポ ン ド 以 上 下 ま わ る ) の 場 合 に は 、 三 子 以 下 の 世 帯 が 全 体 の 三 分 の 二 以 上 を 占 め て い る ( 第 六 欄 参 照 ) 。 こ の 調 査 に は 一 子 世 帯 は 含 ま れ て い な い が 、 調 査 資 料 に も と づ き 一 子 世 帯 を 含 め た 数 字 を 補 足 す る こ と は 可 能 で あ る 。 一 九 六 六 年 夏 に は 、 約 七 〇 〇 万 の 有 子 世 帯 が あ っ た 。 こ の う ち = 一 五 万 人 の 児 童 を 含 む ほ ぼ 五 〇 万 世 帯 ( 一 子 世 帯 も 含 む ) は 、 所 得 ( 国 民 扶 助 を 除 く ) が 国 民 扶 助 基 準 額 に 満 た ず 、 そ の う ち 約 一 四 ・ 五 万 が 母 子 世 帯 、 一 六 万 は 父 親 が 疾 病 又 は 失 業 中 で あ り 、 一 四 万 世 帯 は 父 親 が 常 用 労 働 に つ い て い る 世 帯 で あ っ た 。 表 一 二 は 、 父 親 が 常 用 労 働 に つ い て い る 世 帯 に お け る 剥 奪 が 世 帯 規 模 に 従 っ て ふ え て い く こ と を 示 し て い る 。 多 子 世 帯 の 貧 困 の 比 率 は 高 い け れ ど も 、 人 口 に 占 め る 多 子 世 帯 の 比 率 を 考 慮 す れ ぽ 五 子 、 六 子 世 帯 は 人 口 の わ ず か 二 〇 % 、 貧 困 児 童 の 三 六 % を 占 め る に す ぎ な い が 、 そ れ に 比 べ て 二 子 、 三 子 世 帯 は 全 人 口 の 六 四 % を 占 め 、 貧 困 児 童 の 四
表11世 帯規模別の低所得世帯の分布一社会保 障省調査(1966年) 英 国 家 族 手 当 欄 度 の 展 開 と 変 容 世帯の 児童数 子 子 子 子 ワ 臼 00 4 尸0 6子 以上 計 1 世 帯総数 (千 人) 1,535 690 :/ 91 68 2,664 2 3 国民扶助基 準額未満 の 所得の世帯 (千 人) 21 15 11 7 10 国民扶助基 準額未満の 世帯の割合 C%> 1 2 4 7 14 63 2 4 低所 得世帯 総数に対す る割合 <%> 33 24 17 11 16 100 5 帯 児 割 世 る の 得 け 数 所 お 総 低 に 童 合 C%) 18 20 19 15 28 100 6 国民 扶 助 基 準額 を2ポ ン ド以上 下 まわ る所 得 の 世 帯 の 割 合 C%) 60 8 10 6 16 100 注:以 上 の 数 字 は 非 回 答 分(第2欄 に 示 さ れ る6万3千 の 総 数 と本 文 に 利 用 した 7万 と の 差 に あ た る)に つ い て 調 整 が な さ れ て い な いitIltの で,各 欄 合 計 数 字 は 必 ず し も 総 数 に 合 致 し な い 。 国 民 扶 助 基 準 額 に は 各 家 庭 に 対 す る 住 居 支 出 を 含 む 。 以 上 の 数 字 は 父 親 が フ ル タ イ ム で 働 い て い る世 帯 に 関 す る も の で あ る 。 資 料:CircumstancesofFamilies,TableIII,4,A.3,A.4,andA.8(A.B. Atokinson,PovertyinBritainandtheReformsofSocialSecurity, 1969,p.82). 表12一 定 の特 徴 を もつ フル ・タ イ ム労 働 につ く父親 を もつ 世 帯 の 割合(1966年) 二 六 七 児 童数 2人 3 4 5 6 全規模 貧 困(補 足給付基 準以下の資力) 3 3 7 9 21 週60時 間以 上 労働 14. 19 20 24 25 4 16 300ポ ソ ド 以 上 の 貯蓄 22 18 16 11 6 欠陥住宅 17 19 20 19 33 19 18 狭小住宅 5 11 19 35 62 11 妻の疾病 14 16 16 23 24 15 資 料:MinistryofSocialSecurity,CircumstancesofFamilies,HMSO, London,1967,pp.11,38,40,56,57and145.(P.Townsend,op,cit., P.is5>
佛 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 八 号 二 六 八 ⑳ 五 % を 数 え る の で あ る 。 こ れ ら の 事 実 は 、 家 庭 の 貧 困 の 原 因 が 多 子 に よ る も の ば か り で な く 、 賃 金 そ の も の 自 体 の 低 さ に も 根 ざ し て い る こ と を 立 証 す る も の で あ っ た 。 ベ ヴ ァ リ ッ ジ は 、 ﹁ 大 人 二 人 と 子 供 一 人 を 養 う に も 足 り な い 賃 金 し か 得 て い な い よ う な ⑳ 人 は き わ め て 少 な い ﹂ と 述 べ 、 こ の 点 を 有 力 な 根 拠 と し て 、 第 二 子 以 降 の 全 児 童 に 対 す る 児 童 手 当 制 度 を 導 き 出 し て い る 。 彼 は 製 造 業 成 人 男 子 肉 体 労 働 者 の 平 均 賃 金 の 六 五 % に 相 当 す る 水 準 を 最 低 賃 金 と 考 え 、 そ れ を 下 回 る 賃 金 は ほ と ん ど な い と 考 え て い た の で あ ゐ が 、 一 九 六 七 年 時 点 で 男 子 肉 体 労 働 者 の 一 割 強 が 、 こ の 水 準 を 下 回 っ て い た こ と に な る ( 表 一 三 ) 。 換 言 す れ ば 、 ベ ヴ ァ 表13男 子 肉 体 労働 者 賃 金 水 準別 累 積 分布 (1967年) 男子肉体労働者 賃 金 水 準 額(週)1対 平頗 金比 実 0:06 0.17 0.26 0.31 0.40 0.65 1.59 3.35 6.84 11.Q4 16.06 22.02 29.37 36.83 44.44 52.16 22.8%未 満 27.4 32.0 36.5 41.1 45.7 50.3 54.8 59.4 64.0 68.5 73,1 77.7 82.2 :. 91.4 5ポ ソド未 満 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 注:平 均 賃 金 は1967年la月 の 製 造 業 成 人 男 子 肉 体 労 働 者 の 平 均 賃 金,週21.89ポ ソ ドで あ る 。 資 料:1)ept,ofEmploymentandProductivity, ANationalMinimumWage,HMSO, ユ979,p.70. リ ッ ジ な み の 高 い 児 童 手 当 が 仮 に 支 払 わ れ て い た と し て も 、 男 子 肉 体 労 働 者 の 一 割 程 度 は 、 そ の 賃 金 だ け で は 子 供 を 育 て る だ け の 余 裕 が な か っ た こ と に な る 。 表 一 四 は 一 九 六 七 年 当 時 の 補 足 給 付 水 準 と 、 賃 金 水 準 別 の 世 帯 構 成 に よ る 純 可 処 分 所 得 と を 比 較 し た も の で あ る 。 い ま 仮 に 補 足 給 付 水 準 ㈲ が 実 態 に 則 し た 水 準 で あ る と す る と 、 有 子 世 帯 の 純 可 処 分 所 得 が 公 的 扶 助 水 準 を 上