ダブルレーザーアブレーション法によるカーボンナノチューブの新規合成装置の開発とその最
適合成条件の探究
Development system for
Synthesis of Carbon Nanotubes by double wavelength of beams-laser ablation method
and Investigation the optimum condition
東京理科大学大学院 総合化学研究科総合化学専攻 B112620、石井宏治 Department of chemical science and technology College of chemical science of technology, Tokyo University of Science B112620, Koji Ishii
Abstract:単層カーボンナノチューブ(Single Wall Carbon Nanotubes:SWNT)は、高い機械的・電気的特性から、様々 な分野での応用が期待されている。SWNT の持つ特性は、SWNT の炭素の 6 員環構造に起因するため、実用化の際 には結晶性の高い SWNT が必要とされる。本研究では、既存のレーザーアブレーション(Laser Ablation:LA)法を改良 することによりこの両立を目指すものである。ダブルレーザーアブレーション装置での SWNT 合成の問題点として、 触媒として用いる金属のプラズマ周波数が挙げられる。本研究で使用している Nd:YAG レーザーのうち、触媒に照 射するレーザーの波長を 4 倍波の 266nm を用いて合成するとともに、ハーフミラーを用いた改良により、Nd:YAG の 2 倍波である 532nm のレーザーと 4 倍波である 266nm のレーザーを同時に照射することが可能となった。炭素と ニッケルのダブルターゲットを用意し、266nm 単波長での合成と、532nm と 266nm の二波長をそれぞれ炭素及びニ ッケルに照射した場合の合成を比較した結果、Raman スペクトルから、単波長での合成では SWNT 特有のピークで ある RBM は確認できなかったが、二波長を用いた合成では RBM を確認し、SWNT 合成が確認された。この結果を 基に、圧力、温度について触媒混合ターゲットまたはグラファイト、ニッケルのダブルターゲットを原料、触媒と して用いた最適条件の調査を行った。その結果、13.1kPa、1000°C、グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 用いた合成が圧力、温度について最適条件であることが明らかとなった。 1.背景 1991 年、日本の飯島博士によってカーボンナノチュー ブ(Carbon nanotube : CNT)が発見されてから[1]、その電 気的・機械的・構造的特性、形状・サイズから様々な応 用が考えられてきた[2]。数十 GPa という繊維方向への引 っ張り強度や 6000W/m/K という熱伝導性から、他物質へ 混ぜてのコンポジット材料としてや、熱交換器としての 利用ができる。円筒状で内部が空洞であることから、吸 着剤やドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System : DDS)としての利用が考えられる。また、CNT の中でも単層のものは、グラフェンの巻き方によって金 属的、半導体的な性質を示すことから、Si に変わる新し い半導体への材料として期待される。ここに上げた以外 にも、様々な応用方法が考えられてきた。CNT が持つ特 性は、CNT を構成する炭素の 6 員環構造に起因するため、 カーボンナノチューブを実際に応用する際には結晶性の 高い高品質な CNT が大量に必要になることが予想され る。CNT の合成法として、現在はアーク放電法、LA 法、 化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)法の 3 種 類の方法が主に取られている[3]。これらの合成方法には、 それぞれ利点、欠点がある。この中で私たちは LA 法に 着目した。 LA 法での SWNT 合成手順は、900~1300°C の電気炉 内にて、触媒として Ni、Co 等の金属を含んだ炭素に高出 力のレーザーを照射することで、3000~4000°C の炭素や 金属のプラズマを発生させる。ターゲットから高速で飛 び出した原子はプラズマ化し、キャリアガスと衝突して 互いに減速する。その結果、炭素・金属の非常に濃度が 高い塊(プルーム)を形成し、これらが電気炉内の温度まで 冷却され、炭素-触媒の固溶体を形成、SWNT が析出する [4]。LA 法による SWNT の合成効率が悪い原因に、原料(タ ーゲット)と、キャリアガスの流向にある。ターゲットに レーザーを照射する際、炭素と触媒の融点に差があるた め、ターゲットに触媒が取り残され、徐々にターゲット 表面の炭素に対する触媒の比率が増加する。また、従来 の LA 法では、キャリアガスの流向とプラズマの発生方 向が逆になっており、発生したプラズマが気流に乗り再 堆積してターゲット表面の触媒比率が変化する。 これらを解決するために、我々はダブルレーザーアブレ ーション(Double Laser Ablation : DLA)法による SWNT の 合成を試みた。上記の問題点に対する改善点は、まず炭 素と金属のターゲットの2つに分け、それぞれに適した レーザーを照射する構造にした。これにより、炭素と金 属のターゲットの状態を合成中一定に保てる。次に、キ ャリアガスの流向とプラズマの発生方向を同方向とする ことにより、プラズマ化した試料が再堆積するのを防ぐ。 これにより、高品質な SWNT の合成と、レーザーアブレ ーション法の効率の悪さを克服でき、大量合成へつなげ ることが出来ると考える。 炭素と金属触媒のダブルターゲットを用いる際に考え られる問題点として、触媒金属から生じるドロップレッ トが挙げられる。レーザーが金属に照射された時、プラ ズマが発生すると同時にレーザーを照射した表面には溶 融層が形成される。溶融層から放出された粒子をドロッ プレットと呼び、数百 nm~数m 程度の直径となる。CNT の直径と触媒の粒径は相関があり、ドロップレットは CNT 合成の妨げとなる。ドロップレットの発生を防ぐこ とを目的とする。 二つ目には金属のプラズマ周波数が挙げられる。金属 は固体プラズマの一種であり、固有のプラズマ振動数を 持つ。光が金属に照射されたとき、光の周波数がプラズ マ振動数よりも小さい場合は光は反射される。金属光沢 はこの現象に起因しており、合成の際触媒として用いる 場合は紫外光レーザーを使用することが望ましい。そこ で、ダブルターゲットを使用する際には Nd:YAG レーザ ーの 4 倍波である 266nm のレーザーを用いて合成する。 しかしながら、炭素の分光反射率[5]を見ると、266nm に おける反射率は従来の LA 法で用いてきた 532nm の光と 比べ大きくなり、炭素ターゲットに 266nm のレーザーは 不向きである。266nm のレーザーを同出力で炭素及びニ
ッケルターゲットに照射したプルームをハイスピードカ メラで撮影した写真をそれぞれ Fig.1-1、Fig1-2 に「示す。 Fig.1-1 と Fig.1-2 を比較し、ニッケルから生じたプルーム が炭素から生じたプルームより大きく成長している様子 が見られる。従来法の LA 法では、用いているターゲッ トの炭素に対する触媒の割合が、おおよそ 0.1~2%程度 であることを考慮すると、DLA 装置および 266nm のレー ザーを用いた合成では、二種類のターゲットを用いた優 位性を最大限に生かすことが出来ない。 現在用いているレーザー出力装置では単一の波長のみ 射出されるので、本実験では装置の改良を施すことによ り、二波長のレーザーを射出するようにする。同時に単 波長と二波長について CNT 合成を行い、合成結果の比較 を行った。 Fig.1-1 炭素ターゲット上から生じたプルーム写真 波長 Nd:YAG4th 266nm、レーザー発振出力 34J、フルー エンス 2J/pulse/cm2のレーザーを照射した際の炭素ター ゲットから生じたプルームの写真 Fig.1-2 ニッケルターゲット上から生じたプルーム写 真 波長 Nd:YAG4th 266nm、レーザー発振出力 34J、フルー エンス 2J/pulse/cm2のレーザーを照射した際のニッケル ターゲットから生じたプルームの写真 Fig.1-1 と比較し、 よりプルームが大きく成長している 2.目的 グラファイト及びニッケルのダブルターゲットを用い た CNT 合成の最適化を行う。最適化に当たり、本研究で は、ドロップレットを防ぐ試み、ターゲットに照射する レーザーの波長及び装置内圧力、温度の最適化を行う。 レーザーの波長をターゲット毎に調整することにより、 CNT 合成の条件を最適化する。グラファイトターゲット には 532nm 及び 266nm の波長のレーザーを照射し、ニッ ケルターゲットには 266nm のレーザーを照射し結果を比 較する。DLA 装置において、ターゲットが電気炉の外部 に設置してあるため、ターゲットから生じたプルームの 電気炉への流入及びプルームの拡散が圧力に依存するこ とが推察されるため、圧力依存性を調査する。CNT 成長 における温度は直接的なファクターであるため、こちら も調査を行う。 3.実験方法・条件 3-1. ダブルレーザーアブレーション装置 DLA 装置の石英管部分設計図、写真及び概略図をそれ ぞれ Fig. 3-1、Fig.3-2、Fig.3-3 に示す。DLA 装置は光学 系部分と反応管部分で構成される。YAG レーザー発振器 (LOTIS TII 社製 LS-2137U)、DLA 用五又石英管(株式会 社鎌田理化学器械製作所製)、加熱炉(YKC-32)、試料回収 部、圧力計、アルゴンガスボンベ、ロータリーポンプよ り構成される。DLA 用の石英管は、40 の管状炉の中心 に設置される細い石英管と、レーザー照射するための80 の太い石英管が、直角に交差し、その間からターゲット 挿入部が40 で、二か所、五股の構造となっている。管 状炉は石英管の太さに合わせて穴が開いており、その部 分に石英管を設置する。Fig. 3-4 の図の左からキャリアガ スが流れ込む。図の右にはロータリーポンプへ通じる十 字管と石英管が接続され、ニードルバルブで圧力を調整 する。 Fig. 3-1 ダブルレーザーアブレーション装置 石英管 Fig. 3-2 ダブルレーザーアブレーション装置 写真
Fig.3-3 ダブルレーザーアブレーション装置 概略図
Table. 3-1、Table. 3-2、 Table. 3-3、及び Table. 3-4 に DLA 装置に用いた装置及び部品を示す。 Table. 3-1 反応管部部品 品名 備考 ダブルビーム用石英管 鎌田理化学器械製作所 フレキシブルチューブ アルバック 回転導入部 ヒーター 温度調節器 山田電機株式会社製 YKC-32 圧力計 Granville-Phillips 社製 コンベクトロン 375 Table. 3-2 排気部部品 品名 備考 フレキシブルチューブ SUS ロータリーポンプ 佐藤真空社製 DW-360 荒引きバルブ キャノンアネルバ製 V025RV-MN ニードルバルブ ベローズシールバルブ Swagelok 社製 BMW エアリークバルブ ストップバルブ Table. 3-3 ガス導入部 Table. 3-4 光学機器部 3-2.実験条件 3-2-1.ドロップレットの発生防止 ドロップレットの発生は、ターゲット表面に形成され る溶融層である。溶融層は、ターゲット表面に熱が集中 するために生じる。ドロップレットの発生を防止するた め、メタルマスクを設計、作製した。メタルマスクの設 計図及び写真を Fig.3-4、3-5 に示す。メタルマスクは 40 ×30mm の大きさで、中心上部に 1mm 間隔に 1mm の大 きさの格子状のスリットを有する。このメタルマスクを レーザーに透過させ、ターゲット上での熱の集中を防ぐ。 Fig.3-4 メタルマスク 設計図 メタルマスクの材質には SUS304 を使用した。40mm× 30mm×3mm であり、中心上部に 1mm×15mm の格子状 の穴が 1mm 間隔で開いている 品名 備考 1/4 インチチューブ SUS マスフローコントローラー 流量計 HORIBA 品名 備考
Nd:YAG レーザー発振器 LOTIS TII 社製 LS-2137U ハーフミラー シグマ光機製 PSMH-30C03-10-550 集光レンズ シグマ光機製 SLSQ-30-300P アルミ平面ミラー シグマ光機製 TFA-50C08-1 誘電体多層膜ミラー シグマ光機製 TFM-30C05-500
Fig.3-5 メタルマスク 写真 Fig.3.4 の設計を基に作成したメタルマスク。アブレーシ ョンレーザーを、メタルマスクのスリットを通過させる ことにより、熱アブレーションによる触媒粒子ドロップ レットの発生を防ぐ。 3-2-2.メタルマスクを用いた CNT 合成 メタルマスクを用いた CNT 合成及び評価を行った。 DLA 用の石英管を環状の電気炉に設置、固定をした。固 定の際は石英管の重心となる80 の部分をしっかりとも ち、慎重に設置した。石英管用の NW40 接続フランジを 石英管の両端につなぎ、キャリアガス導入部とロータリ ーポンプをそれぞれ両端から接続しクランプで固定した。 二つのターゲット試料を試料回転部に装着し、石英管へ と挿入し、クランプで固定した。特に炭素のターゲット を装着する際は、ターゲットが割れないよう細心の注意 を払った。レーザー光路を分割したレーザーが二つのタ ーゲットの中心にあたるように調整した。回転部の支え を調整し、ターゲットの高さを調整し、ターゲットが装 置の中心線上になるようにした。アブレーションに用い たレーザーは、 Nd : YAG 2nd 532nm または Nd : YAG 4th 266nm の波長、パルス周波数 10Hz、2ns のパルスレーザ ーであった。装置内の圧力が 5Pa になるまでロータリー ポンプで真空引きした。真空度が安定したのを確認後、 キャリアガスを 50ccm で流入し、流量を実験中一定に保 った。キャリアガスにはアルゴンガス(三喜商会、47L ガ スボンベ)を使用した。電気炉を 1000°C に設定し、作動 させた。昇温中は 10°C/min の割合で電気炉は昇温した。圧 力は 66.6kPa に保持し、設定温度に達したところでレー ザーを内部出力 34J、フルーエンス 2J/pulse/cm2で 30 分照 射した。Table.3-5 に合成条件を示す。 Table.3- 合成条件 炉温度 (°C) 1000 装置内圧力(kPa) 13.1 キャリアーガス Ar ガス流量 (ccm) 50 レーザー種類 YAG レーザー波長 (nm) 266(metal mask あり) レーザー出力(J) 34 レーザー発振周波数 (Hz) 10 ターゲット(原料) グラファイト ターゲット(触媒) ニッケル 合成時間 (min) 30 3-2-3.ダブルレーザーアブレーション装置の改良 二波長を得るために、二通りのアプローチを行った。 3-2-3-1.非線形結晶を用いた改良 レーザー発振器を Fig.3-6 に示す。レーザー発振器から 生じたレーザー(532nm)をハーフミラーにより分割し、片 方のレーザーをそのまま炭素ターゲットに照射し、もう 一方のレーザーを非線形結晶 BBO を通すことにより 4 倍 波の 266nm を得る。BBO の写真を Fig.3-7 に示す。 Fig.3-6 レーザー発振器 使用する波長ごとに光路が異なり、内部の反射鏡の位置 を選択することにより通過する非線形結晶の違いから 4 波長を得る Fig.3-7 BBO 結晶 BBO 結晶による波長変換に際して、温度及び光の入射角 度、厚さにより位相が変化するため、波長変換の最適条 件が存在する。この BBO 結晶については照射角度を変え
ることにより波長変換を試みた。 3-2-3-2. ハーフミラーの設置による改良 二波長レーザーを得る改良の二つ目の試みとして、レ ーザー発振器内の非線形結晶を用いて二波長を得ること を考案した。Fig.3-8 に Nd:YAG レーザー発振器内の写真 を示す。Nd:YAG レーザー発振器は基本波長 1064nm から 4 倍波の 266nm のレーザーを照射することが可能である。 波長を変更する場合は、図中の黄色の矢印で示したミラ ーを動かし、光路を変更し、非線形結晶を通過させるこ とにより波長を変化させる仕組みになっている。Fig.3-9、 3-10、3-11 に二波長を得る改良スキームを示す。まず、 Fig.3-8 では二倍波の 532nm の単波長を使用する場合のミ ラーの配置を示す。次に Fig.3-9 に 266nm の単波長を使用 する場合のミラーの配置を示す。532nm のレーザーを使 用する配置は、266nm のレーザーを使用する配置のちょ うど中心点にミラーを設置する形となっている。その部 分にハーフミラー(シグマ光機製 PSMH-30C03-10-550)を 設置することにより、二波長を得る。Fig.3-11 に二波長の 光路図を示す。 Fig.3-8 Nd:YAG レーザー発振器 内部 写真 図中黄色の矢印で示したのはミラーであり、これをスラ イドさせることにより光路を変更し透過させる非線形結 晶を変えることにより波長を変換する Fig.3-9 532nm レーザーを使用する場合のミラーの配置及 び光路図 Fig. 3-10 266nm のレーザーを使用する場合のミラーの配 置及び光路図 Fig.3-11 二波長の光路図 光路中にハーフミラーを設置することにより、266nm と 532nm の二波長を使用することが可能となった。基本波 長である 1064nm の光は KTP 結晶及びフィルターを通過 することにより 532nm の光として照射される。図中(a) のハーフミラーを用いることにより、分割される。一方 は 532nm のまま照射される。もう一方の光は図中(b)の BBO 結晶を透過することにより 4 倍波の 266nm の光とな る。 3-2-4.波長依存性の調査 ターゲットには、ニラコ製のグラフェン及びフルウチ 化学製のニッケルを使用した。合成条件一覧を Table. 3-6 に示す。DLA 用の石英管を環状の電気炉に設置、固定を した。固定の際は石英管の重心となる80 の部分をしっ かりともち、慎重に設置した。石英管用の NW40 接続フ ランジを石英管の両端につなぎ、キャリアガス導入部と ロータリーポンプをそれぞれ両端から接続しクランプで 固定した。二つのターゲット試料を試料回転部に装着し、 石英管へと挿入し、クランプで固定した。特に炭素のタ ーゲットを装着する際は、ターゲットが割れないよう細 心の注意を払った。レーザー光路を分割したレーザーが 266nm 532nm
二つのターゲットの中心にあたるように調整した。回転 部の支えを調整し、ターゲットの高さを調整し、ターゲ ットが装置の中心線上になるようにした。アブレーショ ンに用いたレーザーは、 Nd : YAG 2nd 532nm または Nd : YAG 4th 266nm の波長、パルス周波数 10Hz、2ns のパルス レーザーであった。装置内の圧力が 5Pa になるまでロー タリーポンプで真空引きした。真空度が安定したのを確 認後、キャリアガスを 50ccm で流入し、流量を実験中一 定に保った。キャリアガスにはアルゴンガス(三喜商会、 47L ガスボンベ)を使用した。電気炉を 1000°C に設定し、 作動させた。昇温中は 10°C/min の割合で電気炉は昇温した。 圧力は 40Pa、13.3kPa、66.6kPa で条件ごとにいずれかに 保持し、設定温度に達したところでレーザーを内部出力 34J、フルーエンス 2J/pulse/cm2で 30 分照射した。 Table. 3-6 合成条件 炉温度 (°C) 1000 装置内圧力(kPa) 13.3 キャリアーガス Ar ガス流量 (ccm) 50 レーザー種類 YAG レーザー波長 (nm) 532、266(metal mask あり) レーザー密度(J/pulse/cm2) 2 レーザー出力(J) 34 レーザー発振周波数 (Hz) 10 ターゲット(原料) グラファイト(G) ターゲット(触媒) ニッケル 合成時間 (min) 30 3-2-5.圧力依存性の調査 ダブルターゲットを用いた合成には、ニラコ製のグラ フェン及びフルウチ化学製のニッケルを使用した。触媒 混合ターゲットを用いた合成では豊島製作所製のグラフ ェンに Ni と Co を 2 wt%ずつ混ぜ込んだ試料を用いた。 装置を組んだ後、YAG レーザーを立ち上げた。照射され たレーザーがビームスプリッターを通ることで 2 本に分 割し、それぞれのレーザーがミラーによって反射し、凸 レンズによって収束されてターゲットに照射されるよう 光路調整を行った。ロータリーポンプを起動して装置内 を真空引きし、装置内圧力を 5 Pa まで下げた。目標到達 温度をそれぞれの実験条件に設定し、ヒーターにつなが った温度調節器を起動させた。ストップバルブを開き、 装置内にキャリアーガスとして Ar を流入した。圧力を任 意の圧力にするためニードルバルブを調整した。ヒータ ーが目標温度に到達した時点で、ターゲットを回転させ レーザーを照射し合成を開始した。この時、ターゲット は 10 rpm で回転させた。30 分間レーザーを照射し合成を 行った後、レーザー照射をストップし、ターゲットの回 転を止めた。ヒーターの温度が 200 °C 以下まで下がっ た後、ロータリーポンプを停止させ、キャリアーガスと してのアルゴンの流入を停止させた。装置が常温まで冷 えた後、生成物を取り出し Raman 分光分析装置によって 測定を行った。表 3.7 に合成条件一覧を示す。 表 3.7 圧力依存性調査 合成条件一覧 炉温度 (°C) 1000 装置内圧力 (kPa) 0.04 13.1 39.3 66.6 13.1 39.3 66.6 キャリアーガス Ar ガス流量 (ccm) 50 レーザー種類 Nd:YAG レーザー波長 (nm) 266(Ni)、 532(G) 532 レーザー密度 (J/pulse/cm2) 2 レーザー発振周 波数 (Hz) 10 ターゲット G、Ni 触媒混合 G 触媒 Ni Ni Co 2wt% 合成時間 (min) 30 3-2-6.温度依存性の調査 ダブルターゲットを用いた合成には、ニラコ製のグラ フェン及びフルウチ化学製のニッケルを使用した。触媒 混合ターゲットを用いた合成では豊島製作所製のグラフ ェンに Ni と Co を 2 wt%ずつ混ぜ込んだ試料を用いた。 装置を組んだ後、YAG レーザーを立ち上げた。照射され たレーザーがビームスプリッターを通ることで 2 本に分 割し、それぞれのレーザーがミラーによって反射し、凸 レンズによって収束されてターゲットに照射されるよう 光路調整を行った。ロータリーポンプを起動して装置内 を真空引きし、装置内圧力を 5 Pa まで下げた。目標到達 温度をそれぞれの実験条件に設定し、ヒーターにつなが った温度調節器を起動させた。ストップバルブを開き、 装置内にキャリアーガスとして Ar を流入した。圧力を任 意の圧力にするためニードルバルブを調整した。ヒータ ーが目標温度に到達した時点で、ターゲットを回転させ レーザーを照射し合成を開始した。この時、ターゲット は 10 rpm で回転させた。30 分間レーザーを照射し合成を 行った後、レーザー照射をストップし、ターゲットの回 転を止めた。ヒーターの温度が 200 °C 以下まで下がっ た後、ロータリーポンプを停止させ、キャリアーガスと してのアルゴンの流入を停止させた。装置が常温まで冷 えた後、生成物を取り出し Raman 分光分析装置によって 測定を行った。表 3.8 に合成条件一覧を示す。
表 3.8 温度依存性調査 合成条件一覧 炉温度 (°C) 800、900、 1000、1100 900、1000、 1100 装置内圧力(kPa) 13.1 キャリアーガス Ar ガス流量 (ccm) 50 レーザー種類 Nd:YAG レーザー波長 (nm) 266(Ni)、 532(G) 532 レーザー密度 (J/pulse/cm2) 2 レーザー発振周 波数 (Hz) 10 ターゲット G、Ni 触媒混合 G 触媒 Ni Ni Co 2wt% 合成時間 (min) 30 4.評価方法・条件 4-1.ラマン分光分析 ラマン分光分析により合成した試料の測定・評価を行 った。Fig.4-1 にラマン分光分析装置の写真を示す。ラマ ン分光装置は KAISER OPTICAL SYSTEM INC.製
RAMAN RXN SYSTEM を用いた。暗室において測定を 行った。レーザーの励起波長は(Nd : YAG 2nd )532nm を用 いた。 1. 可視画像カメラ(CCD)、YAG レーザー、顕微鏡、パ ソコンを各々起動した。 2. パソコンが起動したら、HoloGRAMS532 と GRAMS AI を立ち上げた。ソフトを立ち上げた後、CCD の 温度表示が規定値になるまで安置した。この間にス ライドガラスをエタノールで洗浄した。 3. HoLoGRAMS532 の CCD を起動し、標準サンプルの Si プレートを顕微鏡のステージに静置した。 4. 光学顕微鏡のフォーカスを合わせ、レーザーを照射 し、HoloGRAMS532 の focus を押し、波形が表示さ れることが確認できたら、Abort を押し、測定を停止 した。Acquire Spectrum を押し、積算回数 1 回で標準 サンプルの測定をした。GRAMS AI にて、Si による 520cm-1にピークが観察されることを確認した。 5. 測定操作 3. 、4.と同様に、試料の測定を行った。こ の時積算回数は 100 回に設定をした。 6. GRAMS AI に出力されたデータを保存した。 SWNT が生成した時に見られるピークとして、RBM が 挙げられる。RBM は SWNT の直径に反比例することが 知られている。RBM の波数 cm-1 と直径 d nm の関係は 以下の式で表される[2]。 d また、CNT の結晶性の指標として G/D 比がある。下記 の式により算出した。式中の BG はバックグラウンド (Background : BG)である。
(G-band 最大値-G-band BG 値)/(D-band 最大値-D-band BG 値) (2) Fig.4-1 顕微ラマン分光分析装置 4-2.透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy : TEM)による観察 生成物を TEM によって観察を行った。本実験で用いた TEM は株式会社日立製作所製 HF-2000 である。Fig.4-2 に TEM の装置写真を示す。粉末試料をエタノールで 30 分間超音波分散させた後、マイクロピペットで銅メッシ ュに滴下させた。滴下した試料が乾燥した後、装置内に セットし測定を行った。 Fig.4-1 透過型電子顕微鏡 写真
5.結果 5-1 ドロップレットの発生防止及びメタルマスクを 用いた CNT 合成 Fig.5-1 に実験後の装置内に生成物が堆積した写真を示 す。石英管の出口から 10cm 程度にわたり石英管内部に 付着していた黒色のすすをサンプルとして採取した。 Fig.5-1 ヒーター末端外部 写真 石英管出口付近からロータリーポンプ側にかけて黒いす す状の物質が 10cm 程度にわたり石英管内部に付着して いることを確認した。 Fig.5-2 に、メタルマスクを用いず合成した試料の TEM 像を示す。大きさが 200~300nm 程度のドロップレット を確認した。筒状の物質は確認できなかった。 Fig.5-2 メタルマスクを用いず合成した試料の TEM 像 写真上部にうつっている球状の物質がドロップレットで ある。ドロップレットの大きさはおよそ 200nm から 300nm 程度である ドロップレットにグラファイト塊が 接していることが観察できる。 Fig.5-3 にメタルマスクを用いて合成した試料の TEM 像 を示す。ドロップレットを確認したが、同時に nm~十 nm オーダーの触媒粒子を確認した。 Fig.5-2 メタルマスクを用いて合成した試料の TEM 像 数十 nm のドロップレットの存在を確認したが、一方で 数 nm オーダーの大きさの触媒粒子も確認した。 Fig.5-3 にメタルマスクを用いて合成した試料のラマンス ペクトルを示す。 0 500 1000 1500 2000 0 100 200 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-4 メタルマスクをもちいて合成したサンプルのラ マンスペクトル 励起波長 532nm、強度 2mW、積算回数 100 回 G-band、D-band の確認はできたが、SWNT 特有の RBM は確認できなかった。 5-2.二波長を得るための装置の改良 BBO 結晶を用いて二波長を得る試みにおいては、二波 長を得ることができなかった。 一方装置内にハーフミラーを置くことにより二波長を 得ることができ、532nm と 266nm の二波長を合成に用い ることが可能となった。 5-3.CNT 合成におけるアブレーション波長依存性 Fig.5-5、5-6、5-7 に、266nm 単波長のレーザーを用い て合成したサンプルのラマンスペクトルを示す。 500nm
0 500 1000 1500 2000 0 200 400 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-5 装置内圧力 40Pa、266nm 単波長をもちいて合成し たサンプルのラマンスペクトル 励起波長 532nm、レーザ ー強度 2mW、積算回数 100 回 0 500 1000 1500 2000 0 1000 2000 3000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-6 装置内圧力 13.3kPa、266nm 単波長をもちいて合 成したサンプルのラマンスペクトル 励起波長 532nm、強 度 2mW、積算回数 100 回 0 500 1000 1500 2000 0 100 200 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-7 装置内圧力 66.6kPa、266nm 単波長をもちいて合 成したサンプルのラマンスペクトル 励起波長 532nm、強 度 2mW、積算回数 100 回 Fig.5-8、5-9、5-10 に 532nm 及び 266nm の二波長のレー ザーを用いて合成したサンプルのラマンスペクトルを示 す。 0 500 1000 1500 2000 0 2000 4000 6000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-8 装置内圧力 40Pa、266nm 及び 532nm の二波長の レーザーを照射して合成したサンプルのラマンスペクト ル 励起波長 532nm、強度 2mW、積算回数 100 回 223cm-1に、RBM を確認した。 0 500 1000 1500 2000 0 500 1000 1500 2000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-9 装置内圧力 13.3kPa、266nm 及び 532nm の二波長 のレーザーを照射して合成したサンプルのラマンスペク トル 励起波長 532nm、強度 2mW、積算回数 100 回 ラマンスペクトルの低波数領域に RBM が、234cm-1に確 認できたため、単層のカーボンナノチューブの成長を確 認した。 0 500 1000 1500 2000 0 200 400 600 800 1000 1200 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-10 装置内圧力 13.3kPa、266nm 及び 532nm の二波 長のレーザーを照射して合成したサンプルのラマンスペ クトル 励起波長 532nm、強度 2mW、積算回数 100 回
5-4. CNT 合成における圧力依存性 結果 Fig.5-11、5-12、5-13、5-14 にそれぞれ 0.04、13.1、39.3、 66.6kPa で、グラファイト及びニッケルのダブルターゲッ トを用いて合成したサンプルのラマンスペクトルを示す。 0 500 1000 1500 2000 0 2000 4000 6000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-11 グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、装置内圧力 0.04kPa で合成したサンプルのラマ ンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1368cm-1に D-band を、1597cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。226cm-1に単層カーボンナ ノチューブ特有のピークである RBM を確認できたため、 カーボンナノチューブが成長した。 0 500 1000 1500 2000 0 500 1000 1500 2000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-12 グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、装置内圧力 13.1kPa で合成したサンプルのラマ ンスペクトル測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、 積算回数:100、室温の条件で行った。1345cm-1に D-band を、1582cm-1に G-band を確認したため、サンプルはグラ ファイトの 6 員環構造を有する物質である。ラマンスペ クトルの低波数領域に RBM が、234cm-1に確認できたた め、単層のカーボンナノチューブの成長を確認した。 0 500 1000 1500 2000 0 100 200 300 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-13 グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、装置内圧力 39.3kPa で合成したサンプルのラマ ンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1342cm-1に D-band を、1601cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。RBM は検出されず、カー ボンナノチューブの成長は確認できなかった。 0 500 1000 1500 2000 0 200 400 600 800 1000 1200 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig5-14. グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、装置内圧力 66.6kPa で合成したサンプルのラマ ンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1355cm-1に D-band を、1580cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。 Fig.5-15、5-16、5-17 にそれぞれ 13.1、39.3、66.6kPa で、 触媒混合ターゲットを用いて合成したサンプルのラマン スペクトルを示す。
0 500 1000 1500 2000 2000 4000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1) Fig.5-15. 触媒混合ターゲットを使用し、装置内圧力 13.1kPa で合成したサンプルのラマンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1339cm-1に D-band を、1574cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。RBM は検出されず、カ ーボンナノチューブの成長は確認できなかった。 0 500 1000 1500 2000 0 5000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1) Fig.5-16 触媒混合ターゲットを使用し、装置内圧力 39.3kPa で合成したサンプルのラマンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1368cm-1に D-band を、1597cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。RBM は検出されず、カー ボンナノチューブの成長は確認できなかった。 0 500 1000 1500 2000 0 100000 200000 300000 400000 500000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-17 触媒混合ターゲットを使用し、装置内圧力 66.6kPa で合成したサンプルのラマンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1338cm-1に D-band を、1571cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。181cm-1に RBM を確認し たため、カーボンナノチューブが成長した。 5-5. CNT 合成における温度依存性 結果 グラファイト、ニッケルのダブルターゲットを用いて、 800°C、900°C、1000°C、1100°C で合成したサンプ ルのラマンスペクトルをそれぞれ Fig.5-18、5-19、5-20、 5-21 に示す。 0 500 1000 1500 2000 0 200 400 600 800 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1) Fig.5-18. グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、電気炉温度 800°C で合成したサンプルのラマン スペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1350cm-1に D-band を、1582cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。単層カーボンナノチュー ブに特有の RBM は確認できなかった。
0 500 1000 1500 2000 0 200 400 600 800 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-19. グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、電気炉温度 900°C で合成したサンプルのラマン スペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1353cm-1に D-band を、1579cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。単層カーボンナノチュー ブに特有の RBM を 220 cm-1 に確認した。 0 500 1000 1500 2000 0 500 1000 1500 2000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-20 グラファイトとニッケルのダブルターゲットを 使用し、電気炉温度 1000°C で合成したサンプルのラマ ンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1345cm-1に D-band を、1582cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。単層カーボンナノチュー ブに特有の RBM を 220 cm-1 に確認した。 0 500 1000 1500 2000 0 2000 4000 6000 8000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-21 触媒混合ターゲットを用いて、900°C、1000°C、1100° C で合成したサンプルのラマンスペクトルをそれぞれ Fig5-22、5-23、5-24 に示す。 0 500 1000 1500 2000 0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-22 触媒混合ターゲットを使用し、電気炉温度 1100°C で合成したサンプルのラマンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1359cm-1に D-band を、1587cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。単層カーボンナノチュー ブに特有の RBM を確認できなかった。
0 500 1000 1500 2000 0 100000 200000 300000 400000 500000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-23触媒混合ターゲットを使用し、電気炉温度 1000°C で合成したサンプルのラマンスペクトル測定 は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数:100、 室温の条件で行った。1339cm-1に D-band を、1571cm-1に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員 環構造を有する物質である。単層カーボンナノチューブ に特有の RBM を 181 cm-1に確認した。 0 500 1000 1500 2000 0 100000 200000 300000 400000 Intensity(arb. uni ts) Raman Shift(cm-1 ) Fig.5-24 触媒混合ターゲットを使用し、電気炉温度 1100°C で合成したサンプルのラマンスペクトル 測定は励起波長 532nm、レーザー強度:2mW、積算回数: 100、室温の条件で行った。1354cm-1に D-band を、1575cm-1 に G-band を確認したため、サンプルはグラファイトの 6 員環構造を有する物質である。単層カーボンナノチュー ブに特有の RBM を 280 cm-1に確認した。 6.考察 6-1.ドロップレットの発生防止及びメタルマスクを 用いた CNT 合成に対する考察 Fig.5-2 の TEM 像では、200nm~300nm 程度の、CNT 成長核としては大きすぎる触媒粒子を確認することが出 来る。CNT 成長が確認できないこと、また、触媒粒子周 辺にグラファイト塊を確認することが出来るため、触媒 粒子とグラファイトが接しなかった、又は触媒粒子に炭 素が取り込まれず、CNT 成長が生じなかった様子の TEM 像であると考えられる。 Fig.5-3 の TEM 像から、100nm オーダーの粒子はなく、 数 nm の大きさの触媒粒子や、最大で 50nm 程度の触媒粒 子を確認することが出来た。
従って Fig.5-2 及び Fig.5-3 の TEM 像の比較から、ドロッ プレットの防止にメタルマスクは効果的である。 Fig.5-4 のラマンスペクトルからは RBM を確認するこ とが出来なかった。Fig.5-3 の TEM 像の観察と合わせて 考察すると、触媒粒子の大きさが CNT の成長に最適化さ れているにも関わらず CNT の成長がなされなかったと いう結果となる。つまり、触媒粒子の直径以外に CNT 成 長を妨げているファクターがあると考える。 6-2 二波長を得るための装置の改良 BBO 結晶を用いた際に二波長が得られなかった原因と して以下が原因として考えられる。波長変換を行う際に は、結晶を加熱する方法及び結晶と照射レーザーの入射 角を変化させる二方法がある。今回は角度を変化させる ことによりレーザーの倍波を得ることを試みたが、通常 そような場合には照射するレーザーと得たいレーザーの 波長に対応した切り出し角度の BBO 結晶を用いる。今回 使用した BBO 結晶であるが、FEL に対応するための赤外 用に切り出された結晶であったため、切り出し角度が対 応していなかった。また、角度を手動で調整したが、 532nm と 266nm の変換に際して、許容角度が存在する。 この場合は 0.2°であったため、手動での調整が困難であ ったことが挙げられる。 6-3.カーボンナノチューブ成長におけるアブレーシ ョン波長依存性 単波長で合成した場合と、二波長で合成した場合とで は、ラマンスペクトルに明らかな差が生じた。二波長で 合成した場合、40Pa 及び 13.3kPa で合成した場合に RBM を確認したことから、SWNT が生成したと考えられる。 しかし、G/D 比は 13.3kPa で合成した場合 1.1 であり、結 晶性に関してはいずれの圧力で合成しても低い結果とな った。 圧力依存性に関して、二波長では 40Pa で合成した場合 RBM を確認でき、13.3kPa で合成した場合、特に RBM の ピークが鋭く確認でき、66.6kPa では RBM を確認するこ とが出来なかった。従来の LA 法では、66.6Torr 程度で合 成することで最も収率よく SWNT を合成でき、圧力を下 げていくと収量が減少し、66.6kPa 以下では CNT の合成 がほぼなされないことが知られている[6]。今回の結果と 比較し、従来では最も収率よく合成される 66.6kPa では CNT が得られなかったことから、LA 法と DLA 法におけ る合成スキームが違うことが考えられる。LA 法では一つ のターゲットを用い、ターゲット中に触媒が混合されて いる。 DLA 法ではターゲットを二つ用い、それぞれに触媒と 炭素の単体のターゲットを用いている。故に DLA 装置で CNT 合成を行う際に、炭素及び触媒ターゲットから生じ たプルームをうまく混合する必要がある。生じたプルー ムは雰囲気ガスであるアルゴンによって周囲を囲まれ、
押し戻されながら電気炉へと流入する。そのため、圧力 が大きいとプルーム同士が混ざらずに単体のままそれぞ れ電気炉中へと流される。そのため 500Torr では合成が 出来なかったと推察する。圧力を下げた場合、プルーム が拡散すると同時にプルームが混合されるようになった ため、CNT の合成が出来たと考えられる。 6-4. カーボンナノチューブ成長における圧力依存 性 266nm または 532nm の単波長を用いた合成ではラマン スペクトルより RBM が見えなかったことから、CNT の 成長が確認できなかった。一方で、266nm と 532nm の二 波長をそれぞれニッケルとグラファイトダブルターゲッ トに照射した合成ではラマンスペクトルより RBM が確 認でき、また TEM 像からチューブ状の物質を観察したこ とから CNT の成長が確認できた。つまり、ターゲット毎 に最適な照射波長が存在することを示している。 アブレーションの過程の論点からこの結果に関して考察 すると、フォノンエネルギーによる光化学反応的なアブ レーションと、ターゲットがレーザーのエネルギーを吸 収し加熱・溶融して生じる熱的アブレーションが存在す る [7]。 ターゲットに照射されるレーザーのフォノンエネルギー は 532nm は 266nm の半分であるため、フォノンエネルギ ーが少ない 532nm ではニッケルの光化学的アブレーショ ンが生じないかまたは劣勢で、またプラズマ周波数の関 係から、CNT の成長が生じなかったと考えられる。一方 で、266nm では光化学的なアブレーションが生じ、ニッ ケルターゲットのアブレーションが生じた。 また、表 3-2 よりグラファイトにおける 532nm と 266nm の波長の違いが G/D 比に影響を与えたものであると考え られる。分光反射率の違いにより、グラファイトのアブ レーションの量が変化し、触媒との比率が異なったこと により、カーボンナノチューブ成長に差が生じたと考え られる。 表 2 より、266nm のレーザーをニッケルに、532nm のレ ーザーをグラファイトに照射した合成が、ラマンスペク トルより G/D 比が最も高く、RBM も出現したことから、 最適条件であると考えることが出来る。 6-5.カーボンナノチューブ成長における温度依存性 グラファイト、ニッケルのダブルターゲットを用いて 合成した場合、900°C、1000°C においてカーボンナノ チューブの成長が確認できた。一方で触媒混合ターゲッ トを用いた場合、1000°C、1100°C でカーボンナノチュ ーブが成長したという結果が得られ、グラファイト、ニ ッケルのダブルターゲットと触媒混合ターゲットを用い た場合では温度の最適条件が異なることが明らかとなっ た。一般的にニッケル、コバルトを触媒として用いた場 合、レーザーアブレーション法では 900°C よりも高温下 でカーボンナノチューブが成長する[8]。そのため、グラ ファイト、ニッケルのダブルターゲットを使用し温度を 800°C に設定し合成した場合と、触媒混合ターゲットを 用い 900°C で合成した場合にはカーボンナノチューブ の成長温度に達しなかったためカーボンナノチューブが 成長しなかったと考えられる。グラファイト、ニッケル のダブルターゲットを用いた場合、1100°C では RBM が 検出されず、カーボンナノチューブの成長は確認できな かった。レーザーアブレーション法において、最適温度 は 1000°C から 1200°C 程度であり、それよりも高温と なると触媒は失活することが知られている[9]。グラファ イト、ニッケルのダブルターゲットを用いた本実験では、 1100°C で合成を行ったにも関わらず、カーボンナノチ ューブの成長が確認できなかった。原因について、電気 炉温度と石英管中の温度に違いがあり、乖離があった可 能性がある。また触媒の化学種が触媒混合ターゲットと は異なり、ニッケル単体をアブレーションしているため、 触媒混合ターゲットと比較し融点が下がり、失活の温度 が低下した可能性がある。G/D 比及び RBM の有無から、 グラファイト、ニッケルのダブルターゲットを使用し 1000°C で合成を行った場合が最適条件であった。 7.課題と解決方法 7-1.ドロップレットの発生防止及びメタルマスクを 用いた CNT 合成 触媒粒子の直径以外に CNT 成長を妨げているファク ターがあるという結果が示唆されたことから、合成条件 を最適化する必要がある。メタルマスクを用いた合成の 際は単波長で合成していたことから、炭素に対するレー ザーの波長が適していなかったことが考えられるが、フ ルーエンス等を最適化する必要がある。 7-2. CNT 合成 7-1.ドロップレットの発生防止及びメタルマスク を用いた CNT 合成において述べた事と同様に、合成条件 を最適化する必用がある。なぜならば、SWNT の応用化 に際し、高品質な SWNT が求められるが、DLA 装置で生 成した SWNT は G/D 比が低く、応用化には高品質化が必 要である。高品質化には温度のファクター及び触媒の種 類が重要であると考えられる。一般的に NiCo 触媒を用い た LA 法では電気炉が 1000°C~1200°C 程度での運用で CNT が成長するが、それはターゲット付近の温度であり、本装置で はターゲット温度はそれよりも低い。また温度が 1200°C を超 すと触媒が失活することも知られている[2]。よって温度条件及 び触媒を最適化する。 8.まとめ 本研究では、既存の LA 法を改良することによりこの 両立を目指すものである。今回は、構築した DLA 装置を 基に、メタルマスクを用いたドロップレットの防止、 Nd:YAG レーザー発振器を改良することによる二波長の レーザーを使用可能とする試み、二波長を用いたダブル レーザーアブレーション装置における SWNT 合成のター ゲット毎の最適化を行った。 メタルマスクを用いたドロップレットの防止に関して は、TEM イメージより、メタルマスクを使用せずアブレ ーションをした際には数百 nm の触媒粒子が生成したが、 メタルマスクを用いた際には百 nm~数m の触媒粒子は 確認できず、メタルマスクがドロップレット防止に効果 があることが示された。しかし、触媒粒子が CNT 成長に 適した直径となったにもかかわらず、ラマンスペクトル から CNT の成長は確認できなかったため、触媒粒子径以 外に CNT 成長を妨げるファクターが存在していること が判明した。 二波長を得る試みは、レーザー発振器中にハーフミラ ーを設置する改良により、532nm 及び 266nm のレーザー を使用することが可能となった。 532nm と 266nm のレーザーをそれぞれ炭素及びニッケ ルのダブルターゲットに照射し、266nm のみで合成した
結果と比較した。単波長で合成した場合にはラマンスペ クトルから SWNT 特有のピークである RBM は検出され なかったが、二波長で合成した場合にはラマンスペクト ルから、RBM を確認することが出来た。また、同時に圧 力依存、温度依存に関して調査を行った結果、従来の LA 法と比較して圧力依存性、温度依存性が異なるデータが 得られた。またグラファイト及びニッケルターゲットを 用いて 13.1kPa、1000°C、グラファイトに 532nm、Ni に 266nm のレーザーを照射する条件が最適であることが明 らかとなった。 今後の研究として、生成する CNT の品質を高めるため の条件探索を行う。 9.参考文献
[1]S. Iijima : “Helical microtubules of graphitic carbon”
Nature, 354,56-58(1991)
[2] 齋藤 理一郎・篠原 久典 共編 「カーボンナノチュ ーブの基礎と応用」 培風館
[3] 齋藤弥八、坂東俊治:カーボンナノチューブの基礎、 コロナ社
[4] M. Yudasaka、 R. Yamada、 N.Sensui、 T. Wilkins、 T.Ichihashi、 and S.Iijima : J. Phys. Chem. B (1999)、 103、 6224-6229
[5] 日本化学会 編 「化学便覧 応用化学編 第 5 版」 丸善出版
[6]E.Munoz, W.K.Maser, A.M.Benito, M.T Martinez, G.F.de la Fuente, Y. anisette, A. Righi, E.Anglaret, and J.L.Sauvajoi : “Gas and pressure effects on the production of single-walled carbon nanotubes by laser ablation” Carbon 38
(2000)1445-1451
[7]H. Ishibashi, S. Arisaka, K. Kinoshita and T. Kobayashi,” Phenomenological Interpretation of Excimer Laser Ablation of Single-Crystal Oxides” Jpn. J. Appl. Phys. 33,(1994) 4971
[8] M. Yudasaka, F. Kokai, K. Talahashi, R. Yamada, N.
Sensui, T. Ichihashi, and S. Iijima “Formation of Single-Wall Carbon Nanotubes: Comparison of CO2 Laser Ablation and Nd:YAG Laser Ablation” J. Phys.
Chem, B, (1999) 3576-3581
[9] H. Kataura, Y. Kumazawa, Y. Maniwa, Y. Ohtsuka, R. Sen, S. Suzuki, and Y. Achiba “Diameter control of single-walled carbon nanotubes” Carbon 38 (2000) 1691-1697