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五臓の病理と病証 1 肝の代表的内傷病証 肝陽 肝陰とは 肝本体は陰であるが 肝の機能は陽の性格を帯びる 陰液 ( 血 津液 ) が充満し陰が陽を滋養していれば 肝陰は安定し 肝陽は緻密に機能する 肝は脇下部にあり その経脈は両脇に分布 胆と表裏関係にある 肝陰蔵血血病 肝陽疏泄作用気病 濡養 滋潤

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(1)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病症 肝病 1ページ

五臓の病理と病証 ① 肝の代表的内傷病証

肝陽・肝陰とは

✔ 肝本体は陰であるが、肝の機能は陽の性格を帯びる。

✔ 陰液(血・津液)が充満し陰が陽を滋養していれば、肝陰は安定し、肝陽は緻密に機能する。

✔ 肝は脇下部にあり、その経脈は両脇に分布、胆と表裏関係にある。

肝陰 蔵血 血病 濡養・滋潤を有する液状物質

(血・津液) ① 血の貯蔵と血流量の調整

肝陽 疏泄作用 気病 休むことなく活動する精微物質 (肝気)

① 全身の気機の調整

➁ 脾胃胆の消化器系の促進

③ 情志の調節

その他の肝病証

肝風証 外感病など

1. 肝気と疏泄作用に関わる病証

肝気・・・昇発・上達・布散・流通の性状を帯び、以下の疏泄作用を主る

① 気機の調節(正常に働かないと ⇒ 気機不暢)⇒ 肝気鬱滞

② 脾胃の運化機能と胆汁分泌の促進

③ 情志の調節

気機とは (肝の生理を参照)

1 気機は常に抑制・反抗作用により維持され、生成化育の働 きに関与、異変があれば邪気が生じる。

2 気の出入(気血運行)がなければ神明の働き(成長壮老と いう生命現象)は消滅し、昇降がなくなれば気の勢いも崩 れ去る。

3 気の昇降出入と形体維持には密接な関係がある。

4 百病は気により生じる。

肝気鬱結とは

肝気は他の臓気と違い、不足というよりは、欝結す る傾向が強い。

また、虚証と実証の境目が曖昧である。

(肝気虚≒肝鬱)

(2)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病症 肝病 2ページ

【肝の疏泄異常時の病症】 失調・停滞・亢進時の症状

① 気機の調節

肝失疏泄 ✔肝経に沿っての気滞・瘀血・痰飲 【肝気鬱結】

大息、胸脇・乳房・少腹部の脹痛、梅核気、眩暈など 疏泄太過 ✔肝気が昇りすぎる(肝気上逆)【肝火上炎】

上部症状 (頭脹、頭痛、面紅目赤)

② 脾胃の運化機能の 促進

脾の昇清

✔脾胃胆の消化器系に影響(肝気横逆・肝木乗土)

眩暈(清気不昇) 【肝脾不調】

下痢(清気陷下)

胃の降濁 曖気・しゃっくり(胃気上逆) 【肝胃不和】

脘腹脹痛・便秘(濁気不降)

胆汁(精汁)の分泌 胆の疏泄 口苦・黄疸(胆症状)

③ 情志の調節

肝失疏泄 ✔気の疏泄と条達を失う【肝気鬱結】

情志活動の異常(精神抑欝、太息)

昇発太過 ✔肝気が昇りすぎる 【肝火上炎】

情志活動の異常(急燥、易怒)

➊ 肝気不疏 (肝失疏泄)⇒ 肝気鬱滞証

肝気の条達疏泄機能に支障が生じ、気鬱や気 滞(脹・悶・痛の三大症状を伴う)などの気 機失調が生じる病理変化

木気が鬱屈した場合は、肝の気を伸びやかに疎通させる。 木鬱達之.『素問』六元紀正大論篇第 71

【臨床】 初期の「肝気不疏」に対しては、「和法」を用いて肝気を疎通させる。

内因 情志失調 → 気鬱

→ 瘀血

痰飲 → 肝経阻滞

→ 肝気不疏 外因 外邪侵入 → 津血不通 → 肝気不疏(痺証)

【肝気不疏が長期化すると・・・】

肝気不疏 → 肝鬱脾虚 → 気滞血瘀 → 衝任不固 → 月経痛や月経不順、崩漏

後述の血の病証を参照

肝気抑欝 の長期化

→ 脾胃損傷 → 湿痰

心窮閉塞 → 痰迷心窮 → 癲狂 心の病証を参照

→ 情緒失調

激怒 → 肝の損傷 → 肝火炎上 頭痛・頭眩・吐血(動風症状)

➋ 肝気横逆(肝実)

情志刺激 → 気機逆乱

(気逆)

①経気逆乱

(条達失調) → 肝の気逆 感情高ぶり、煩躁、易怒、両脇・少腹脹 痛(増悪)⇒ 胸や頭、目、前陰部へ波及

②肝気横逆 → 肝胃不和 胃もたれ、胃痛、げっぷ、胃酸過多

(増悪)⇒ 悪心、嘔吐(胃気上逆)

→ 肝脾不調 腹脹、腹痛、下痢、便秘 血分へ影響(出血症状発生)← 気分病変 肝胃不和・肝脾不調は脾胃の病証を参照

(3)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病症 肝病 3ページ

➌ 肝火上炎(肝実熱証)

情志抑鬱

怒り 肝鬱化火 顔面部へ

上昇 肝火上炎 頭痛、眩暈、顔面紅潮、目赤、胸脇部 疼痛(肝は目に開竅)

肝経に熱 → 疏泄太過 肝火擾心 発熱、心煩、煩躁、易怒、吐血、喀血、

衄血 心の病証を参照

胆経に熱 → 疏泄太過 → 口苦、胸満 (増悪)⇒ 咽乾、口渇、

便秘、小便黄、黄苔 肝火上炎の転帰は、 肝火→心火 ① 心火亢盛 心 肝火→焼津 ② 痰火擾心 心・脾胃 肝火→焼陰 ③ 肝陽上亢 腎 2. 肝陰(血・津液)の巡りに関わる病証

蔵血・・・肝藏血 『素問』調經論篇第 62

◆ 蔵血=推動・固摂作用(血を貯え、血量を調節する機能)

◆ 精血同源=肝腎同源(血が余ると精として腎に蓄え、不足すると精から転化して血として利用)

血の

生成不足・消耗過多

✔ 食不節による栄養不良

生成不足

✔ 脾胃の機能低下による消化吸収作用の低下

✔ 情動の過度の乱れ 気の変調

✔ 労倦や房事過多

消耗過多

✔ 久病による血の消耗

肝の異常により、蔵血作用の失調 (肝藏血)や筋の働きの異常(肝主身之筋膜)が生じる。

【血に関係する虚証】

症候 主要症状

共通症状 顔色蒼白・萎黄(顔色不華)、眩暈、目の乾き・かすみ、不眠、皮膚の乾燥・掻 痒、便秘 【淡舌】

肝血虚

(蔵血不足)

目を滋養できない ⇒ 視力減退、目の疲れ・かすみ、目がぼやける

筋を滋養できない ⇒ 筋脈拘急・腓返り、四肢の痺れ・ひきつれ・痙攣、爪の異常 衝任を滋養できない ⇒過少月経、経遅、無月経、崩漏、乳汁不通、疝気・睾丸痛 精神活動失調 ⇒ 睡眠不良、多夢、不眠

心肝血虚 動悸、健忘、不眠、多夢 【主に精神症状、心臓症状】

【血に関係する実証】

症候 主要症状

血寒証 人体が直接「寒邪・風寒邪」を感受、血脈の運行が凝滞して伸びやかでなくなる。

四肢の冷え、凍傷、月経痛、子宮筋腫、不妊症 【白苔】

血熱証

① 外邪侵襲により血分に熱が停滞

② 情志鬱結により五志化火を生じる。

発熱、出血、うわごと、健忘、腹脹拒按、下腹部脹満、胸脇苦満、寒熱往来、

さめ肌、 【紅舌】

血瘀証 打撲や捻挫などの外傷、気虚・気滞・血虚・血寒・血熱などや久病、寒邪侵襲、

出血など病因によって形成される。 【暗紫舌】

(4)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病症 肝病 4ページ

➍ 肝血虚(肝血虧損)

生化機能不足・失血過多 → 肝 血 不 足

脾胃の気の不足→水穀運化失調→原料不足 転帰

腎精欠損(精血同源) ① 心肝血虚(母の病→子に波及)

長期に及ぶ疾病(消耗過多) → ② 血虚陰虧(陰血の欠損)

脾虚や腎虚→血を制御・固摂不可→失血過多 ③ 気血両虚(血虚→気に波及→長期化)

肝の疏泄太過

➎ 肝陰虚(肝陰不足)

肝と腎の関係 ・・・精血同源・肝腎同源

(腎の生理を参照)

収納作用が疏泄作用(血の放出)を 制約する。

① 勞倦・房事過多→腎陰虚→肝陰虚

② 肝鬱化火 → 肝陰虚陽亢→腎陰虚

腎陰不足(精が血を作れない)

肝陽が上亢する 【疏泄太過】

→ 肝陰虚 遺精、夢精

→ 虚熱 潮熱、盗汗

➏ 肝陽上亢(肝腎陰虚熱証)…津液の代謝異常 ⇒ 肝腎失調

生来より陰虚体質傾向があり、陽を潤すことができないと、相火が荒れ狂って陰虚陽亢となる。

陰血虚損(陽を滋養できない) →

肝陽上亢

転帰 激亢すれば

→ 肝風内動 痙攣、厥、抽搐 気鬱化火→心肝の火が強くなる →

上記2証の特徴・・・本虚標実証・上盛下虚

気血が陽気に従って上逆、身体上部病変と下部の陰血欠損病変が生じる。

身体上部の病変 眩暈、耳鳴、頭痛、目脹、胸脇脹満、煩躁、易怒、顔面紅潮目赤 下部の陰血欠損病変 腰下肢酸軟

肝火上炎と肝陽上亢 肝気は欝結しやすく、化火しやすい ⇒ 肝火上炎 肝陰(腎陰)が虚すと肝陽が実しやすい ⇒ 肝陽上亢

気鬱(肝気鬱結) 肝腎陰虚 肝火上炎 肝陽上亢 吐血、崩漏、脇部

灼熱痛、狂症、耳 鳴、顔のほてり、

目の充血 めまい

健忘、心悸、足腰の だるさ、頭痛 眩暈 耳鳴

(5)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病症 肝病 5ページ 衝任不固・・・男女生殖器疾患・月経不順

肝の疏泄作用が失調する と、肝と密接に関係する 衝・任脉に影響を及ぼし、

経早・経遅・経乱などの月 経障害を引き起こす。

経早 経遅 経乱 実熱 寒邪

鬱熱 肝鬱 肝鬱 陰虚 血虚

気虚 虚寒 腎虚

➐ 瘀血(肝脈瘀阻)・・・瘀=瘀血(『黄帝内経』)

血気とは、温を喜びて寒を悪み、寒なればすなわち泣(渋)りて流れず、温なればすなわち消えてこれを去る。

『素問』調経論

起床直後に風に当たれば、血膚に凝るものは痹となり、脈に凝るものは泣となる。 『素問』五臓生成論 肝脈瘀阻 さまざまな原因によって肝経の血液循環がうまくいかなかったり瘀滞して通

じなくなったりしたために疼痛やしこりが発生する病機変化

瘀血 沈殿して流れず、汚濁し、経脈を離れた血液を指す。また、久病(慢性病)が 脈絡に影響して現れた病変を指す。

血瘀 外傷、出血、気虚、気滞、寒凝、熱鬱などにより生じた病理産物 血瘀の共通症状

① 顔色のくすみ、乾班

② 唇・爪が暗紫色

③ 皮膚のかさつき・色 素沈着

④ 刺痛、拒按、固定性の 痛み(夜間痛)⑤ 赤紫 の出血、血塊混入

⑥ 紅点・紫斑(皮下出血)、

細絡、くも状血管

⑦ 静脈瘤(下肢・腹壁)

病機 瘀血証の病機としては、打撲外傷→肝絡損傷(脱血出血)→血瘀・経脈塞窮などの

「外傷瘀血」がよくみられるが、その他の瘀血証としては以下が考えられる。

寒邪侵襲 → 経脈収引 → 気血凝滞 寒凝瘀血 心胸痹悶・刺痛、肩背の牽引痛、

筋骨関節の疼痛・しびれ

(風寒)

熱邪侵襲 → 気津消耗 → 血瘀塞絡 熱盛瘀血 高熱、口渇、頭痛、煩躁、意識障 害、譫語、衄血、吐血

心気虚衰 → 推動不足 → 肝血瘀滞 気虚瘀血 精神疲労、無力感、動悸、息切れ、

食少、顔面浮腫、頭痛、健忘 肝気鬱滞 → 肝気不疏 → 気血停滞 気滞瘀血 心胸・脇肋刺痛・脹痛、気鬱、腹

部脹満疼痛・腹中積塊

(6)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 1ページ

五臓の病理と病証 ⑤ 心の代表的内傷病証

✔ 心は「陽中の陽」であり、陽気が多く、「神志」を主る。 【蔵神】

✔ 心は生命の根本である「血脈」を主る。 【主血脈】

✔ 心の主な病状 ⇒ 動悸、不眠、胸痛、意識混濁、発狂

✔ 心気が旺盛であれば、血脈は充ちて(⇔空虚)、脈拍は緩和・有力(⇔ 細弱・無力)、顔色 は紅潤で光沢あり(⇔ 晄白で艶がない)。

心の気血陰陽と虚実病証

気血を陰陽で大別すると、「気」は陽で「血」は陰であるが、陽である心気はさらに「陰気=神 気」と「陽気=心気」に分けられる。一方、「心血」は「陽」の性格を帯びる「栄気=心気」と「陰」

の性格を帯びる「陰液」で構成される。

心気 陰気=神気 ⇒ 精神・意識活動を主宰し、五臓六腑を統制 陽気=心気

⇒ 血脈の温煦と心血の循環に影響

(心の陽気は心包経へ向かう)

心血 栄気(陽)=心気

心血(陰)=陰液 ⇒ 陰性、血脈を満たし、神志や心臓、五臓六腑を栄養

心の病証は「虚証」と「実証」に分類され るが、その病因としては、虚証では「気 血陰陽の不足」が主であり、実証では

「火・熱・痰・瘀(瘀血)」が主とされる。

* 心気虚・心陽虚は、現代における心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、全身性衰弱や神経症 などの疾患に相当する。

* 心気が虚している場合、一般的には肝陽虚証か脾虚証で治療することが多い。一方、心熱が ある時は、腎虚証として治療する場合が多い。⇒ 心腎相交(水火既済)腎の生理を参照。

* 脾虚証の場合、胃の陽気(後天)を働かすために先天の陽気に関わる心包経を補う。

* 心腎相交により心の陽気は命門火(相火)として腎へ向かう。脈診では右尺中は腎の陽気(命 門)を診るとするが、同じ相火の「心包の陽気」であるとも考えられる。

➊ 気 ➋ 神気 (陰)

精神・意識・思惟活動を主宰

【主神志】→ 心気虚 血脈にも影響を及ぼす 心気(陽) 推動作用により心血を運行させる

【推動作用】 → 心気虚

心(心臓)機能の衰退

(血液運行の無力・不足)

陽藏 血脈を温煦し、陰寒の病邪 から防御【君火】→心陽虚

心機能衰退+温煦失調

陰寒邪による血行不暢が生じる

➌ 血 心血 心陰

神気・五臓六腑を濡養・滋潤

【主血脈】 心血虚 ⇒ 心陰虚

虚熱内生や心神不養、心気衰退、

血虚症状などが生じる

(7)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 2ページ

➊ 心気の働き(神気と心気、心陽、宗気)と気病証 心気の働きを阻害する病因

① 長期間の病気や慢性病による体力の衰退

【肺の失調】 ⇒ 宗気虚損 (心肺気虚)

【腎の失調】 ⇒ 腎陽不足や水気凌心 (心腎陽虚)

【風寒湿邪】 ⇒ 心絡(心包経)を痹阻 (経脈病)

② 急性の激しい疾患 ⇒ 全身の心気心陽損傷

③ 老齢による臓気虚衰 ⇒ 心気心陽の不足・衰退

⇒ 先天の元気の不足

「心気」は「宗気」によって扶助される。

気下らざれば、脈中の血、凝りて留止す

『霊枢』刺節真邪 75

心気虚・心陽虚・心陽暴脱の病状

病証・症候 共通症状 相違症状 舌象 脈象

心気虚 心神不足

心悸・征忡、

胸悶、

動くと悪化

淡舌白苔 虚脈 推動失調 気短(呼吸促迫)

心陽虚

温煦失調 前胸部刺痛、畏寒肢冷、チアノ ーゼ、面色晄白・面唇青紫

淡舌胖舌

暗紫苔白滑 微細脈

心陽暴脱

四肢厥冷、多汗冷汗、微脈・微 弱呼吸、面色蒼白・口唇青紫、

意識曖昧・昏睡

淡紫舌 微脈で 絶えそう

【参考】 心経・心包経の是動病と所生病

【心経】 ・・・本経が主っている心臓によって生ずる病変は、眼精が黄変し、胸肋が脹満して 疼痛し、上臂の膊(上腕)と小臂(前腕)の内側後面が疼痛・厥冷し、或は掌心

(てのひら)が熱痛するなどである。

【心包経】 ・・・本経が主っている脉によって生ずる病変は、心煩し、心痛し、掌心が発熱す るなどである。 『霊枢』経脈篇第 10

【胸痛】 心病の症状は、胸が痛み、胸前・肋骨の末端部が膨満し、脇の下が痛み、胸膺部、背 部、肩甲骨の間が痛み、両腕の内側が痛む。これは心の実証に属する症状。もしも心が 虚すると、胸腹が膨れ、脇の下と腰部が引き合って痛む。 『素問』藏氣法時論篇 22

(8)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 3ページ 心

悸 驚 悸

外因性の驚き・恐れ・不安・情緒変動(⇒気機の乱れ)や疲労(⇒虚症状)

などがきっかけで生じる動悸。一時的な軽い動悸。

征 忡

明らかな外因がなくて持続する動悸で、労作時に増強(⇒心血不足)。驚 悸が反復すると次第に持続性の激しい動悸(=征忡)に移行。心神不安の 一症状。原因はさまざまだが、一般には正気の不足あるいは臓腑の虚損な どの虚証が主体であり、痰火が影響することもある。治療は補法が基本。

胸部の不快感 ⇒ 通常、胸悶あるいは胸痛などと表現される。

悶痛:胸部に多発する痛みに支えや塞がった感覚を伴う症状。痰濁が肺に阻 滞、あるいは、痰濁が心脈を詰まらせて起きる。

肝と心の胸痛の違い 『素問』藏氣法時論篇 22

「肝病者.兩脇下痛引少腹.」・・・

肋骨弓の上下から臍傍にかけての自覚的・他覚的な痛み、いわゆる傷寒論で示す「胸脇苦満」(肝実 熱証)を示す。もし、圧痛がなく筋性の抵抗や自覚的な筋緊張や引きつり痛みだけであれば、右な ら「肝実」、左なら「肝虚」である。右の胸下の引きつりは少腹(回盲部)まで響いて痛む場合があ る。同様に左の痛みも下腹まで響き、時には睾丸の引きつり、月経痛として現れる。

「心病者.胸中痛.脇支滿.脇下痛」・・・

「脇支滿」は不容穴あたりに下から支えられたような詰まり 感がある状態であり、心の陽気が不足し て動悸や目眩を伴うこともある。 「脇下痛」は右不容穴に高潔、圧痛が現れるもので、これを「腹 証奇覧翼」では食塊と名づけている。食塊があると胸に熱感があり膻中に圧痛がある。自覚的にな 発作的に胸が痛み出し、背部にも痛みが響き、手の心経が痺れ痛む。さらには心筋梗塞を起すこと がある。 (新古典の学び方、池田政一)

➋ 神気(神志)・七情(情志)と病証

古代人は心臓が止まれば生命が終わることから、こころは胸部(心臓)にあると考えたが(神=

心臓)、心臓の鼓動と頭部の「泉門」の拍動が相呼応して動くことより、心(こころ)は頭部と関 係すると推察し、人の精神活動に「頭の内部=脳」が関与するとも考えた。(心の生理参照) 情志とは 1. 外界刺激に対する精神 (心神=心気)の反応

2. 五臓の生理機能に伴って発生する一種の本能的な精神活動 (魄…先天的要素)

3. 魄はさらに高度な精神活動(魂…後天的要素)によってコントロールされている。

喜怒節ならざれば、飮食適切ならず ・・・ 喜怒不節.飮食不適. 『霊枢』賊風 58 喜怒節ならざれば臓を傷る ・・・ 喜怒不節則傷藏. 『霊枢』百病始生 66 暴怒は陰を傷り、暴喜は陽を傷る。 ・・・ 暴怒傷陰.暴喜傷陽. 『素問』陰陽應象大論篇 5

(9)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 4ページ

五臓の気 肝の気 心の気 脾の気 肺の気 腎の気 関連する七情 怒 笑・喜 思 憂・悲 恐・驚 七情と五臓の関係において、肝虚と腎虚は相似。⇒ 肝腎同源

肝気弱れば(虚すれば)くよくよし、 ⇒ 肝気が衰えることにより、決断が鈍る。(気虚)

肝気亢ぶれば怒り叫ぶ ⇒ 肝気が亢進過ぎると、神志に代わり、情志を制御 (魂)できなくなる。(→ 肝の生理参照)

怒 怒れば気が上逆 肝気上逆 悲 悲しめば気が消える 肺心を損なう 喜 喜べば気が緩む 心神を損傷 恐 恐れば気が下がる 腎を損なう 思 思えば気が結すぶ 心脾を損なう 驚 驚けば気が乱れる 心神不安定 憂 憂えば気が鬱滞する 肺脾を損傷

心神は外界刺激を受けると、七情を保持する肺魄から 適切な情を放出させるように肝魂に処理を命じる。

例えば、「喜びは心を傷る」・・・ 喜傷心.恐勝喜『素問』陰陽応象大論 5

通常、「喜び」の感情が沸きあがれば 気は巡り、血は調和し、全身の臓腑機能も順調に働く。

しかしながら、「喜び」という感情が度を過ぎると心に影響が生じる

喜びが度を過ぎれば 気を消耗させる 笑いが止まらず、気持ちが緩み、不眠となる 喜びが度を過ぎた状

態が続けば

心気心陽を損傷し、 自汗、征中、不眠、驚悸、不安感、

顔面蒼白、声がか細い、精神疲労、

心気が散漫になれば とりつかれたように笑ったり泣いたりする 心神が逆乱すれば 発狂する

もともと心陰が虚し ている場合、喜びが 度を過ぎれば

更に心陰が損傷、

心火が亢進 【実証】

盗汗、心煩、潮熱、手掌熱感、夢で笑って目覚 める、咽に瘡ができて声が出ない、やつれる 虚火が清竅を乱せば 耳鳴、幻聴、顔面紅潮、煩熱、唇乾、小便黄色、

易怒、胸肋部痛 心臓の陰陽が虚損し

て回復しなければ

恍惚、健忘症、驚きやすい、少気、舌がこわば る、咽の乾き、目が重い、目弦、易怒

(10)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 5ページ 心火亢進・・・心の抑欝と肝鬱病証は密接

に関係する 原因 ① 五志化火の内生 (肝火上炎)

陰陽失調が生じ発病

② 五気化火(風寒暑湿燥火)

③ 辛辣温補食品の過食

証 症状 舌象 脈象

心火亢進 心悸、不眠、多夢、熱症状、身熱、面赤、口渇 舌尖紅、黄苔 数脈

➌ 心陰(心血・津液・陰精)と血病証

心血 神気・五臓六腑

(心臓)を濡 養・滋潤

心血虚 血不足により 心神失養、心機能衰弱 心陰

(陰精・津液) 心陰虚 血不足+陰虚

(陽の制御不可) 心陽虚亢、虚熱内生

「肝の病理と病証」で既述した肝血虚証の原因(左)と心血虚証・陰虚証を比較すると以下の通り。

一般的に慢性病は心血を消耗し、熱病は心陰を傷ることが多く、情志失調は心陰心血ともに消耗。

心血虚証の原因と治法 心血虚・心陰虚 治法

生成不足

✔ 食不節による栄養不良

血の化源不足 脾虚証

(気血両虚証)

✔ 脾胃の機能低下による消化吸 収作用の低下

気の変調 ✔ 情動の過度の乱れ 情志内傷・心労過度 脾虚証・腎虚証

消耗過多 ✔ 労倦や房事過多 久視 肝血虚証

✔ 久病による血の消耗 失血過多⇒ 三陰交 肝血虚証・脾虚肝実証

他の影響 心肝火旺 肝実証

血虚証・陰虚証の症状

肝血虚 目乾・かすみ目、不眠、

皮膚乾燥・掻痒、便秘 顔色蒼白・萎黄、

眩暈

淡舌 心肝血虚・心血虚 細弱脈

動悸、健忘、不眠、多夢

心陰虚 五心煩熱、潮熱、

盗汗、口咽乾燥

紅舌少津 細数脈 肝鬱・痰飲 (心血瘀阻証は省略)

肝気不疏 → 肝気抑欝

の長期化 → 脾胃損傷 → 湿痰発生 → 心窮閉塞 → 痰迷心窮 → 癲狂

(11)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 6ページ

痰迷心竅 痰火擾心

① 抑欝・激怒・過度の思慮・憂鬱などにより

⇒ 肝気不疏(肝鬱)

① 七情過度により

⇒ 肝火上炎(肝鬱化火)・心火亢進

② その結果 ⇒ 心・脾虚 ⇒ 気滞 あるいは ⇒ 脾の水湿運化失調

⇒ 湿痰が生じる

② その結果 ⇒ 津液が煎灼され

⇒ 熱痰が生じる

③ 湿痰が心竅を閉塞

⇒ 心神が働かない ⇒ 癲狂

③ 痰火(熱痰)が上逆して心包絡を閉阻

⇒ 心神が働かない ⇒ 狂乱(狂証)

【症状】痴呆、精神抑鬱、表情が乏しい、独語、

言語錯乱、躁鬱、食欲不振 悪化すると ⇒ 中風

【症状】心煩躁乱、口渇、不眠多夢、顔面紅潮、

呼吸が荒い、便秘濃尿

悪化すると ⇒ 妄言妄動、暴力破壊、譫語、

四肢厥冷、言語障害、

【現代病としては】統合失調症、鬱病、ヒステ リー、脳血管障害による昏睡など

【現代病としては】躁病、ヒステリー、高熱に よる意識障害、神経系感染症など

痰涎壅結…水飲が胃に停留すること。胃気上逆を起こす。

肝気鬱結 肝火上炎 心火亢進 痰火擾心

情志

抑欝・易怒(刺激に

対する過常反応) 煩躁・易怒 心煩・狂燥錯語 心煩・妄言妄動、

暴力、不安 気機不暢で精神抑欝、錯乱まで及ばない 精神の錯乱や意識の混濁などが生じる。

熱象 顔面潮紅、目赤、

耳鳴、口苦咽乾

顔面潮紅、口渇、

口内炎、舌尖紅

顔面潮紅、口渇 息が荒い

出血 吐血、鼻出血 血尿

二便 便秘、濃尿 濃尿・小便不利、

排尿痛

➌ 心と腎=水火既済=心腎相交

◇ 神気(心気)は先天の原気を蔵する腎の気(精 気)によって補償される

◇ 心は血を主り、腎は精を主る。

◇ 心は陽に属し上焦にありその性質は火に属す。

腎は陰に属し下焦にありその性質は水に属す。

⇒ 陰陽(水火)の均衡に関与

(12)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 心病 7ページ

➍ 不眠・・・心腎不交に起因する症状例

不眠症:昼間、体内を巡っていた陽気が夜になり体内へ戻れなくなることより生じる。(陽の特 性である動(興奮)の性質が静まらないため)。

不眠 :「心」の代表的病症であり、心火(心陽)の影響が強い。

原因 :飮食不節や思慮過度(脾虚・脾心両虚・胃実)、情志失調(肝鬱、心虚)、腎陰不足(腎 虚)などで生じる実火や虚火により起因される。

【心腎不交による不眠】・・・「心陰虚」や「腎陰虚」、虚臨床でよく遭遇する火による不眠

房事過多、久病 ⇒ 腎陰を損傷 ⇒ 心腎相交の関係が失調

⇒ 心腎不交 (不眠) 心陰虚・情志失調 ⇒ 虚熱・五志化火 ⇒ 心火が亢進

(神明が影響を受ける)

寝つきが悪い 陽気が陰の部へ戻れない 虚経を補、陽気が停滞している陽 経を瀉(補脾経、瀉陽明経)

夜中に眼が覚める 陰虚熱(肝虚・腎虚)が肺や心に波及 原因経を補、虚熱経を瀉 朝早く目覚める 加齢による陰虚熱による覚醒 原因経を補(補腎)

まったく眠れない 血虚による不眠 施灸(補血):心兪・膈兪・三陰 交・足三里・失眠穴、

接触鍼:神門・膻中・内関 瀉法:豐隆・行間・神門 多夢・不眠 体質的に肝虚や血虚体質、あるいは実

火・虚火が影響

*膻中に圧痛がある時、「神門」を補う。経穴の使い方、鍼のさし方、績文堂

*神門…心神を安んじ、「補心気・寧心神・養心血」の作用あり。穴性学ハンドブック 谷口書店

*本治法では「神門」は使わないが、便秘では尺骨近くに施灸。超旋刺と臨床のツボ 医道の日本社

*神門は別名安眠穴と名前がついています。…心肝の高ぶりがあり内熱傾向がある場合、鍼が非常に 効果があります。経穴解説、藤本蓮風、メディカルユーコン

*心身症で不眠を症候とするものは必ず至陽・膈兪に反応がある…図説深谷灸法、緑書房

*不眠症、血虚・抑欝的な場合、脾虚証・肺虚証・肝虚証・肝実証が多い。首藤傳明症例集、医道の 日本社

(13)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ

五臓の病理と病症 ③ 脾病について

脾胃とは・・・「脾」(太陰)は虚しやすく、「胃」(陽明)は実しやすい。

五臓六腑は表裏の関係を有するが、特に、脾と胃は隣接している臓 腑であるため、古来よりひとつの範ちゅうで扱われることが多い。

脾は腹部にあり,経絡の連絡を通じて、胃と表裏関係を構成する。

脾と胃は協同で飲食物の受納・腐熟・消化・吸収と輸送を行う。

1. 脾と胃は膜をもって相連なる。 『素問』太陰陽明論 29 2. 脾は胃と合す。 『霊枢』本輸 2

3. 脾は胃のためにその津液を巡らすことを主る。『素問』厥論篇 45

脾気・脾陽・脾陰・胃陽・胃陰とは ・・・運化(消化・栄養輸送)が主

脾気

✔ 後天の精気に関わり、 【後天の本】

✔ 水穀の精微(栄気・衞氣・津液)を産生。 【気血生化の源】

気機の作用 臓腑の作用 血への関与

脾陽

脾気 昇清・運化作用を 主る ➊

血を脈管内に留 める ➎

【脾気血弱】

失調すれば、

血を充分に供給 できない。

栄気

水穀の精気とし て全身を栄養す る。

衛気 運化作用と温煦

作用 ➌ 胃陽 胃気 降濁作用を主る

受納・腐熟作用を 主る ➍

水 胃陰

(脾陰) 津液

✔ 津液を胃へ送り、腐熟・降濁作用 を助ける(脾気)

✔ 受納・腐熟作用の基本物質。

気機の作用 臓腑の作用 血への関与

➊ 昇清作用 ➌運化作用 ➎統血作用

➋ 降濁作用 ➍受納・腐熟作用

脾胃の病症とは ・・・運化(消化・水液代謝)・昇清(精神)・統血(血液疾患)作用など

4. 脾病の症状は、身体が重く、肌や筋肉が弛緩して痿え、歩行時に足を踏みだせなかったり、

手足が拘攣し、膝もとが痛む。脾虚の場合、腹が脹り、腸鳴があり、下痢をして消化不良と なる。治療には、太陰と陽明、少陰を用い、刺絡する。 『素問』藏氣法時論篇第 22

5 外邪により生じる(脾)病は、舌根の運動が柔軟でなくなり、食後に嘔吐し、胃部が痛み、腹が 脹り、しばしばげっぷし、排便や放屁後は、病が全快したかのようになる。また、全身が重 苦しく感じられる。脾の瘈脈・臓腑病は、舌根痛、身体を動搖させることができなくなり、

飲食物が下らず、心煩し、心下部が引きつれるように痛み、大便が希薄になったり、或いは

(14)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ

下痢し、あるいは小便不通、黄疸、安らかに臥することができず、強いて立つと、大腿部や 膝の内側が腫れたり冷えたり、足の第一指が使えなくなる。『霊枢』経脈篇第 10(脾)

『素問』藏氣法時論篇第 22 『霊枢』経脈篇第 10

脾 病

運化

穀 善飢肉萎、足不収行善瘈(痙攣) 胃脘痛、心下急痛 水 身重、飧泄食不化(未消化便) 身體皆重、溏瘕泄

腸鳴、 水閉、股膝内腫厥

昇清 腹満 腹脹、煩心、不能臥、

降濁 食則嘔、善噫、食不下

統血 黄疸

経脈 脚下痛 舌本強・痛、足大指不用

6. 外邪により生じる(胃)病は、悪寒戦慄し、よく呻吟し、しばしば欠伸し、顏が黒くなり、病 が重くなれば、人と火に会うことを嫌がり、木の響きを聞くと驚き、動揺し、独り戸を閉じ て窓を閉め家に閉じこもることを欲す。甚だしい場合は、高い所に上って歌を唄い、衣服を 脱ぎ棄てて走ろうとする。また、腸が鳴り、腹が脹る、是れを骭厥という。胃の経脈・臓腑 病は、高熱によって発狂し、温病となり自汗し、鼻血(鼽衄)、口唇の瘡疹、頚腫、喉が腫 れ閉塞し、水がたまって腹が腫れ、膝蓋部の腫痛、前胸を循って、乳部、股間部、気衝、伏 兎、下腿部外側、足背上部が痛み、中指が屈伸できなくなる。気が盛んだと、胸腹部が熱を 帯び、胃熱が盛んな場合、消穀善飢、小便黄となり、気が不足すれば、胸腹部や胃に冷感を 感じ、脹滿する。此れらの諸病に対しては、実証には瀉法、虚証には補法、熱証には速刺法、

寒証には置鍼法、陷下(脈が虚陥)する場合には灸法、実証でも虚証でもない場合には、本 経に随って治療する。本経の気が盛んな場合は、人迎脈が寸口脈に比して三倍大きく、気が 虚している場合は、人迎脈が反対に寸口脈に比して小さい。『霊枢』経脈篇第 10(胃)

『霊枢』経脈篇第 10

胃 病

煩心、不能臥、 ➊ 昇清作用

食則嘔、善噫 ➋ 降濁作用

胃脘痛、心下急痛、食不下、腹脹 ➌ 運化作用(精気)➍ 受納・腐熟作用 身體皆重、溏瘕泄、水閉、股膝内腫厥 ➌ 運化作用(水液)

黄疸 ➎ 統血作用

舌本強・痛、足大指不用、 ✔ 経脈病症 脾胃の病症

脾病・胃病の原因

✔ 労倦

✔ 情志失調

✔ 飮食不節(過食・偏食、冷飮食・生もの)

✔ 慢性病による気血不足

✔ 三焦水道の機能失調

✔ 肝の疏泄失調 など

(15)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ 脾・胃虚病の特徴

脾血虚証:肝や心の血虚証とは異なり、脾の気血 生化機能が失調し供給が滞る脾気血弱・脾浮統血 証、言い換えれば、脾血虚は脾気虚あるいは、脾 と心、あるいは脾と肝の臓腑兼病証で捉えられるこ とが多い。

脾病・胃病の原因

脾気虚・胃気虚証 脾陽虚・胃陽虚証 胃陰虚証 藏気・栄気の虚損 衞気の不足 津液の不足

脾胃の機能減退 温煦失調(寒症状) 胃の疼痛・熱症状 倦怠、無力感(乏力)、

少気懶言、食欲不振、

腹部脹滿、泥状便

気虚の症状 + 四 肢 厥 冷 、 腹 脘 部 隠 痛、下痢、浮腫

胃脘部痛、知飢不食、

嘔気、便秘

寒熱平 寒症状 熱症状

自汗 自汗 盗汗

脾気虚証の分類

気虚症状:少気懶言、全身倦怠感、自汗

脾気虚 脾陽虚 脾気下陷 脾不統血

食欲不振、食後の腹部 膨満感、水様便

腹痛、喜按、喜温、四 肢厥冷、口淡、帯下、

浮腫、小便不利

眩暈、胃脘部下陷、頻 回便意、長期の下痢・

脱肛、子宮・胃・腎下 垂

血便、皮下出血、月経 過多、崩漏

胃寒証(陽虚) 胃熱証(陰虚) 胃陰不足証 胃火亢進証 疼痛 心下部の冷痛 心下部の灼熱痛 心下部の痞え 心下部の灼熱痛 口味 唾液多く、口淡 口酸・胸焼け 乾嘔・しゃっくり 口酸・胸焼け 飮食 食後に疼痛軽減 食後に胃痛 空腹だが少食 消穀善飢・食後嘔

吐・胃痛

大便 水様便・腹鳴 便秘 便秘 便秘

舌 淡舌・白滑苔 紅舌 少苔 紅舌黄苔

脾胃の病理

➊ 昇清作用・・・煩心、不能臥 ➋ 降濁作用・・・食則嘔、善噫

脾は心・肺・肝などに水穀の精微を散布。供給源が虚すと 上記の症状が生じる。

7 穀気は胃に入り、精微として肝に散布され、筋に精気 を滋養する。穀気は胃に入り、その濁気(陰気)は心 に帰し、脈に精を滋養する。・・・飲物胃に入ると、胃 は精微の気を溢れ出して脾に輸送する。脾は精微を散行 させ、精徴は上がって肺に帰す。また、脾は水道を通調 させ、下がって膀胱に輸送する。

(16)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ

➌ 運化作用(水穀の精気の運化)

➍ 受納・腐熟作用・・・胃脘痛、心下急痛、食不下、腹脹

8 水液が胃に入ると、流動する精氣はさらに脾に 輸送される。脾氣は精液を行き渡らせ、上昇し て.肺に送られる。肺気は体内を巡る水の経路 を通じ調え、下降して膀胱へ注ぐ。水液の精は 四方に輸布され、五蔵の経脈を流れ、同時に気 節と五臟・陰陽の規律に従う。これが経脈の正 常な生理現象である。

9 脾が病めば四肢が動かなくなるとはどのような 意味か。…四肢は皆、気を胃に稟けるが経に至る を得ず。必ず脾に通して気を受ける。今、脾が病 み、胃の為に津液を行らすことができないと、四 支は水穀の氣を稟けることができず、氣は徐々に 衰え、脉道利せず、筋骨肌肉は、皆、氣を以って 生じることはなし。故に四肢が動かなくなる。

胃気

10 腹鳴するのは胃中に水液があり、脾に影響すれば、煩悶して食べれなくなり、食物が下らな いのは、胃が阻隔したためです。

11 五藏は皆、胃の水穀の精気から栄養を稟ける。胃は五藏の根本である。気を蔵する他藏 は自ら手太陰に達することができず、必ず胃気の力を借りて手太陰に達することができ る。故に五藏は各々が主る気節に手太陰に現れることができる。

➌ 運化作用(水液の運化)・・・身體皆重、溏瘕泄、水閉、股膝内腫厥

12 湿病、腫病、満は皆、脾に属す。

13 脾は長夏を主り・・・脾は湿に苦しむ。

14 水液は胃に入り、精気として盛んに巡り、上がりて脾に輸す。脾気は精を散じ、上りて 肺に帰し、水道を通調し、下りて膀胱に輸布される。気・血・津液は四方に輸布され、

五臓の経脈(全身)に並び行り、四時・五臟・陰陽の変化に適合して、常に節度を保つ こととなる。

例えば、「脾」の代表的症状である食欲不振とは

◇ 飲食不節や疲労により脾胃が失調し、運化・受納機能が低下したため

◇ 飲食不節により、脾胃の機能が低下し食滞が生じたり、湿熱が脾胃の運化・受納機能を失調させ るため

◇ 情志失調による肝の疏泄機能悪化が、胃の受納・降濁機能を阻害、また、胃熱が肝に影響

◇ 熱邪などにより胃陰を損ない、胃の受納機能が低下したため 食欲不振と倦怠感を示す場合

気虚による食欲不振や倦怠感:✔食欲不振、✔全身倦怠感

気鬱による食欲不振や倦怠感:✔食欲不振、✔意欲低下、✔憂うつ気分

(17)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ 後天の本・・・食物の消化に関与し、生命活動の源を供給

13 世紀、『脾胃論』により「先天の精、後天の精」という概念が提起された。

15 人は始めて生ずるや、先ず精を成し(先天の精、生命の素)、(以降、後天の精)精成り て後、腦髓が生ずる。骨は幹を成し、脉は營を為し、筋は剛を為し、肉墻を為す。皮膚は堅 にして毛髮が長ずる。穀は胃に入って、脉道は以って通じ、血氣、乃を行る。

16 脾胃は血気陰陽の元である。脾胃の働きが低下すると、元気が充実できず、諸病が生じる。

『脾胃論』:生命の根本である原気を守り養うために脾胃の気を補益することの重要性を説 く。脾胃(土)を中心とする考え方は後世の医家に大きく影響を与え,清代に「腎は先 天の本」とともに「脾胃は後天の本」、「気血生化の源」の理論が確立した。

➎ 統血作用・・・黄疸、衄血、皮下出血、血便、血尿、崩漏、月経過多 脾気の血液を化生する機能と保護する機能とが合体したもの。

血虚と脾不統血という症状の場合、気の産生を促す意味で気虚の治療も必ず行うこと。

17 脾は、血を裹(つつ)むことを主り,五臓を温める。

陽絡が損傷されて血が溢れ出したり、

陰絡が損傷されて血が体内に染み出すと

吐血、衄血、喀血、血尿、月経過多、崩漏、血便、

皮下出血

気も損傷されているので 声が低い、呼吸が浅い(少気)、懶言

(18)

経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ 脾胃病証(虚証・実証・他藏との兼病証) 1

脾気虚により運化・昇清失調や脾 不統血が生じる。

1)他臓との関係から、脾肺気虚

(肺虚証)や脾心両虚(脾虚証、

気血両虚証)が生じる。

2)脾虚証に胃気(陽気)不足が加 わると脾胃虚弱や脾腎陽虚と なる。

3)脾胃虚弱により飲食物の消化 不良が生じ、食滞中脘証(実 証・平証)へ進む。

4)脾の運化失調は水湿中阻へ進み、さらに熱(胃熱)に侵されると脾胃湿熱証へ、寒(外邪)が加われ ば胃寒実証や寒湿困脾証(痰飲証など)へ進む。

5)胃陰不足では津液不足を生じ、虚熱が発生する。さらに他の熱源に侵されると胃実熱証へと進む。

脾胃病証(虚実夾雑証) 2

肝火(肝陰虚、肝気鬱結、肝火上炎など)が脾胃に横逆すると、肝脾不調証(脾陽虚肝実)や肝 胃不和証(脾虚肝実胃熱)へ進む。

寒湿困脾

頭重、身体重、口が粘る【重濁粘滞性】、脘腹部痞悶、食欲減退、悪心嘔吐【昇降阻 害】、泥状便、帶下、浮腫【水湿氾濫】、口淡、皮膚の暗黄色(陰黄)、希薄な帯下、

腹部の冷え【寒湿】 →温めると腹痛が軽減 寒積胃腸 臍の周囲の疼痛、温めると軽減、腹部の冷え、下痢 食滞胃脘 嘔吐、下痢、胃脘部膨満、臍腹部膨満

脾虚肝旺 腹脹(胃脘脹満)食欲不振、顔色萎黄、倦怠無力、噯気、悪心嘔吐 肝脾不調 胸脇の脹滿感、ため息【気滞】情志抑欝、急燥、易怒【肝鬱】

納呆、腹脹、水様便、腸鳴、失気、【運化】

胃実熱証 歯痛、歯齦部の腫痛(歯周炎)、口中の酸臭、口内炎、便秘、口渇(冷飲を好む)、

胃脘部の灼痛(食べると痛みが増す)、食べるとすぐ吐く、あるいは消穀善飢、

脾胃湿熱 頭重、身体重、口が粘る【重濁粘滞性】

脘腹部痞悶、泥状便、帶下、浮腫【水湿氾濫】

脾腎陽虚 顏色が白い、畏寒肢冷、足腰や下腹部の冷痛、腹部・四肢の冷え【陰寒内盛】

慢性下痢、五更泄瀉、腹脹【運化障害】、小便不利【気化障害】

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経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 脾病 1ページ 出典

1 脾與胃.以膜相連耳. 『素問』太陰陽明論 29

2 脾合胃.胃者.五穀之府 『霊枢』本輸 2

3 脾主爲胃行其津液者也. 『素問』厥論篇 45

4 脾病者.身重.善肌肉痿.足不收行善癒.脚下痛.虚則腹滿腸鳴.飧泄食不 化.取其經太陰陽明少陰.血者.

『素問』藏氣法時論篇 22

5 是動.則病舌本強.食則嘔.胃脘痛.腹脹.善噫.得後與氣.則快然如衰.身 體皆重.是主脾所生病者.舌本痛.體不能動搖.食不下.煩心.心下急痛.溏 瘕泄.水閉.黄疸.不能臥.強立.股膝内腫厥.足大指不用.

『霊枢』経脈篇 10(脾)

6 是動.則病洒洒振寒.善呻數欠.顏黒.病至.則惡人與火.聞木聲.則惕然而 驚.心欲動.獨閉戸塞牖而處.甚則欲上高而歌.棄衣而走.賁響腹脹.是爲 骭厥.是主血所生病者.狂瘧.温淫汗出.鼽衄.口喎脣胗.頚腫喉痺.大腹水 腫.膝臏腫痛.循膺.乳.氣街.股.伏兔.骭外廉.足跗上.皆痛.中指不用.

氣盛.則身以前皆熱.其有餘于胃.則消穀善飢.溺色黄.氣不足.則身以前 皆寒慄.胃中寒.則脹滿.爲此諸病.盛則寫之.虚則補之.熱則疾之.寒則留 之.陷下則灸之.不盛不虚.以經取之.盛者.人迎大三倍于寸口.虚者.人迎 反小于寸口也.

『霊枢』経脈篇 10(胃)

7 食氣入胃.散精於肝.淫氣於筋.食氣入胃.濁氣歸心.淫精於脉・・・飮入於 胃.遊溢精氣.上輸於脾.脾氣散精.上歸於肺.通調水道.下輸膀胱.

『霊枢』 経脈別論篇 21

8 飮入於胃.遊溢精氣.上輸於脾.脾氣散精.上歸於肺.通調水道.下輸膀胱.

水精四布.五經並行.合於四時五臟陰陽.揆度以爲常也.

『素問』經脉別論篇 21

9 脾病而四支不用.何也.・・・四支皆稟氣於胃.而不得至經.必因於脾.乃得稟 也.今脾病不能爲胃行其津液.四支不得稟水穀氣.氣日以衰.脉道不利.筋 骨肌肉.皆無氣以生.故不用焉.

『素問』太陰陽明論 29

10 腹中鳴者.病本於胃也.薄脾則煩不能食.食不下者.胃脘隔也. 『素問』評熱病論篇 33 11 五藏者.皆稟氣於胃.胃者五藏之本也.藏氣者.不能自致於手太陰.必因於

胃氣.乃至於 手太陰也.故五藏各以其時自爲.而至於手太陰也.

『素問』玉機眞藏論篇 19

12 諸濕腫滿.皆屬於脾. 『素問』至眞要大論篇 74

13 脾病.身痛體重.一日而脹.二日少腹腰脊痛.脛痠.三日背序筋痛.小便閉.

十日不已死.

『素問』標本病傳論篇 65

14 飮入於胃.遊溢精氣.上輸於脾.脾氣散精.上歸於肺.通調水道.下輸膀胱.

水精四布.五經並行.合於四時五臟陰陽.揆度以爲常也.

『素問』経脈別論篇 21

15 人始生.先成精.精成而腦髓生.骨爲幹.脉爲營.筋爲剛.肉爲墻.皮膚堅而 毛髮長.穀入于胃.脉道以通.血氣乃行.

『霊枢』経脈篇 10

16 脾胃為血気陰陽之根蒂也. 脾胃之気既傷、而元気亦不能充、而諸病之所由 生也

『脾胃論』 (李東垣著)

17 脾…主褁血、温五臓 『難経』42

(20)

20167月 経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 肺病 1ページ 五臓の病理と病症 ④ 肺

五臓を気血津液で考えると、肝心脾=血、脾肺腎=水 肝本体は陰であるが、肝の機能は陽の性格。

陰液が充満し陰が陽を滋養していれば、肝陰は安 定し、肝陽は緻密に機能する。

心は「陽中の陽」であり、「神志」を主る。

心は生命の根本である「血脈」を主る。

脾(太陰)は虚しやすく、胃(陽明)は実しやすい。

✔ 後天の精気に関わり、

✔ 水穀の精微を産生、気血生化の源

主気・宗氣 肺は気を主り、宣発・粛降作用により、

① 呼吸(清気吸入・濁気吐出)を担い、身体に気・血・

津液を巡らす気機や三焦に密接に関与する。

② 脾と共に後天の気の産生に関わり、心気を扶助する「宗 気」や外邪の侵入を防御する「衛気」は肺が管理する。

皮毛と衛気 肺は体表の皮毛と関係が深い。肺は衛気を皮 毛に巡らせて、外邪の侵入を防御している。衛気は、分肉 を温め、皮膚を緻密にして防御機能を高め、皮毛からの発汗を調整する役割を有する。衛気や肺 気が虚すと、外邪が体内に侵入し、病(外感病)が発生しやすくなる。

肺陽・肺陰とは

肺陽

① 呼吸・気機を主る。宣発粛降作用 肺気(真気)

推動作用

① 気の機能失調

② 心気の推動作用を助ける 宗気

③ 衛陽の温煦作用と腠理開闔 衛気 温煦・防御作用 肺陰 ① 肺の通調水道異常。肺脾腎で形成、

熱と水液の代謝 津液 推動・固摂作用 ② 水液代謝異常

肺の病症

肺病の症状は、喘ぎ・咳嗽し、逆氣する。肩背痛、発汗、尻・陰部・股・膝・寛骨・ふくらはぎ・脛・足 など皆痛む。肺虚すれば、少氣し、息を続けることができなくなり、耳聾、嗌乾する。治療には、太陰.

足太陽経の外側、厥陰の内側を用いて刺絡する。『素問』藏氣法時論篇第 22

外邪により生ずる病は、肺が脹れ痛み、喘ぎ、咳嗽す。缺盆の中痛み、甚しいと両手を交叉して胸部を押 さえ、物がはっきり見えなくなる。此れを臂厥病と言う。肺の経脈・臓腑病は、咳嗽し、上氣して呼吸切 迫して喘ぎ、心中煩乱し、胸部が痛み、上腕の内前縁が疼痛・厥冷し、掌中が火照る。正気盛んにして実 症状の時は、肩背痛、風寒を畏れ、汗が出るなどの中風症を発生し、小便数であるが量が少なくなる。氣 虚なる時は、肩背が冷え痛み、呼吸が浅くなり、小便の色が変る。『霊枢』経脈篇第 10

少氣、欬(咳嗽)、喘渇 ➊ 主気 ➋ 呼吸機能の異常 風寒、汗出、臂厥、肩背痛寒 ➌ 体表の疾患 気の病

小便數而欠、溺色變 ➍ 水液代謝異常 水液の病 肺脹滿、缺盆中痛、煩心胸滿、

臑臂内前廉痛、掌中熱、肩背痛、 ✔ 経脈・臓腑病 経脈・臓腑の病

(21)

20167月 経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 肺病 2ページ 気虚 臓腑組織の機能低下と疾病に対する抵抗力の減弱 機能低下 陽虚 気虚症状 + 熱エネルギーの減少や衰退 陰寒内盛 血虚 生体の物質成分の不足・損傷 血液

陰虚 体液

肺の虚病証と主機能

主気 呼吸 宣発粛降 通調水道 外合皮毛 開竅於鼻

気虚証 陽虚証 陰虚証

肺気・宗気の虚損 衞気の不足 津液の不足 倦怠、無力感(乏力)、

咳嗽、喘息、息切れ、

懶言、めまい

気虚症状から、さらに 畏寒、易感冒、

痰が希薄で白い

咳嗽(空咳)、潮熱、

五心煩熱、口乾、紅頬、

無痰(或いは粘稠痰、

血痰)

寒熱平 寒症状 熱症状

自汗 自汗 盗汗

肺:主気 肺気・宗気・衛気、呼吸機能の異常 水穀の精気(栄気、衞気、宗気)

水穀が胃に入ると、その精微なる者は、胃から出て上焦・下焦に行き、五蔵に流入する。これは別 れて營気、衞気として各々、脈の内外を巡る。その他、大気(宗気)は胸中に集まり、気海と呼ばれ、

肺から出て咽喉を循り、呼気で出て、吸気で入る。天地の精気は、呼気で三分出てしまい、吸気で一 分だけ戻ってくる。故に半日、食事を取らないと気は衰え、一日、絶食すると気は不足する。『霊枢』

五味篇第 56

諸気はすべて肺に属する。『素問』 五臓生成論第 10 肺は気を蔵す。『素問』調経論 第 62

肺気は鼻に通じ、肺和すれば鼻臭香をよく知ることができる。『霊枢』脉度 第 17 肺気・・・宣発・粛降作用 ⇒ 気・津液の運行

宗気・・・胸中の気。清気と穀気が結合して胸中に集められた気。主な機能心気を助けて 心拍動を推進・調節、呼吸や発声、肢体活動、体温維持に関与。

衛気・・・防御(外邪侵襲を防ぐ)・温煦作用(体温調節) ⇒ 全身・体表を温煦する

(22)

20167月 経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 肺病 3ページ 肺気虚 の原因と一般症状

原因 過労、久病(慢性病による体力の消耗)、老化(高齢による身体衰弱) 飮食の不摂生(栄養の欠乏)など⇒心気虚、脾胃気虚、肺気虚、腎気虚

【真気不足と臓腑機能低下】

主症状 ✔ 気病(推動・温煦・気化・固摂・防御) ✔ 呼吸機能の異常

短気、少気懶言、話 声が弱い

肺気不足 宗気不足

呼吸切迫や呼吸が浅くなる。あまり話したがらず声が低くおど おどした感じになる。

倦怠、無力感 (乏力) 肺気・宗気不足。気血や栄養を全身に供給できなくなる。推動 無力で全身の機能活動が減衰。

活動時に症状が増

気が不足がちであり、活動により、気をさらに消耗するため。

眩暈(頭暈・目眩) 気虚→血虚 宗気不足(気虚)→血虚。水穀の精微を頭部(清竅)に供給で きない。

咳嗽、鼻閉、胸悶 肺気失宣 肺は鼻に通じる。宣発失調。

咳嗽、哮喘、多痰、

鼻炎、咽喉炎症 肺失粛降 粛降失調により咽喉を清潔に保てない。水液を循環できない。

自汗 衛表不固 衛気不足。固摂作用が低下した、腠理不固の症状。

淡舌・薄白苔 推動作用が低下し、血が充分に循環していない。

弱脈、無力(虚脈) 推動作用が低下し、血行無力の状態。

眩暈(げんうん、通称、めまい):「目眩」と「頭暈」の症状が同時に現れる。

・目眩→目がかすむ、目の前が暗くなり見えにくくなるもの、

・頭暈→頭や身体が揺れ、乗り物に乗っているような感じ、または外の景色が揺れるもの。

➋ 体表の疾患・・・衛気不足や外邪による症状

肺爲嬌臓、畏寒、畏熱 『顧氏医鏡』顧靖猿(清)

「嬌」は「脆弱」の意味。肺は皮毛に外合し、気管支・気管などで 外界に通じているので、外邪を感受し易い。 尚、肺は、熱や寒に 対しても抵抗力に乏しく、さらには湿や燥に対しても抵抗力に乏し いと書かれていて、ただの感冒でも咳嗽を生じる。また、他の臓器

(腎、脾、肝、心)からも影響を受けやすいので嬌臓と称される 華蓋 『霊枢・九針論』に「肺は、五臓六腑の蓋也」と指摘し、『難

経集注・32難』では「肺は華蓋、胸膈に位置する」と注釈。体腔 の臓腑の中では、肺が最も高い位置にあり、諸臓を覆い外邪から 保護する作用もあるから、華蓋と称される。

体表の疾患

腠理閉塞・衛陽不固

(=外感病) 無汗と発熱(熱の停滞)

衛陽虚衰や温煦機能

低下 自汗と悪寒(陽気の不足)

咳嗽の原因は、皮毛が先ず、邪気を受ける。『素問』經脉別論篇第 21 肺は百脈を集め、皮毛に精を輸す。『素問』咳論 38

⇒ 衛陽不固・腠理閉塞(外感病)により発汗異常や惡寒・発熱が生じる

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20167月 経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 肺病 4ページ

【衛気不足・衛気不固】

✔ 温煦作用の失調(悪風、惡寒)

✔ 発汗しやすい(自汗)

✔ 風邪をひきやすい(易感冒)

✔ 風邪・創傷が治りにくい

(自然治癒力の低下)

肺虚 陽実証 肺虚太陽経実証 肺虚陽明経実証

肺虚 陽虚証

肺虚太陽経虚証 肺虚陽明経虚証 肺虚少陰経虚証

肺虚太陽経実証 惡寒、発熱、頭痛、項の凝り、喘、関節痛、無汗 浮数緊 表実寒証 肺虚陽明経実証 惡寒、悪熱、口乾、目痛、鼻の乾き、咽喉痛、嘔

吐、下痢、関節腫痛、蕁麻疹、湿疹 浮大実 表実熱証 例えば、「肺」の代表的症状である咳嗽とは?

肺脾腎は三焦水道の上源・中州・下源

肺脾腎⇒三焦水道機能に関わる

脾は肺を生ず

脾の機能減退⇒後天の精の不足

肺の機能減退⇒先天の精の不足

肝心(気機調整・肺気滋養)

五気による病は、肺なら咳 咳:有声無痰(気の病)

嗽:無声有痰(水の病)

『素問』宣明五氣篇第 23

五気の変 噫噦 欠嚔 五臓の邪気の病変 『素問』宣明五氣篇 23 五変 五蔵の病変の症状 『素問』陰陽応象大論篇 05

腎-骨髓 肝-筋 脾-肌肉 心-血脈 肺-皮毛

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20167月 経鍼会講義資料 五臓の病理と病証 肺病 5ページ 外感性欬嗽 発熱や惡寒、惡風を伴う

内傷性欬嗽 惡寒や発熱などの症状はない

咳は肺から出るが、肺のみに原因がある訳でなく「五臓六腑」の病変が肺に影響する。

また、欬嗽は肺に多く生じるが、肺だけではなく、五臓六腑、すべて人に咳をさせる。

内傷性欬嗽

肺欬の症状は、欬し、喘息して音有り、甚しければ 唾血す。

心欬の症状は、欬して心痛し、喉中が刺される様な、塞 がる様な感じ、甚だしければ咽腫し喉痺す。

肝欬の症状は、欬して両脇下痛み、甚しければ寝返り不 可、寝返れば兩脇下が張ってくる。

脾欬の症状は、欬して右脇下痛み、中にこもって肩背に 引く、甚しければ動けず、動けば欬劇す。

腎欬の症状は、欬して腰と背が相引きて痛み、甚しけれ ば欬して涎する『素問』咳論 38

病証 随伴症状 舌象 脈状

肺欬 気虚 多痰、透明 息切れ、顔面蒼白、倦怠感、自汗 淡舌 虚弱脈 陰虚 無痰・少痰、客出

困難、時に血痰

潮熱、盗汗 乾舌

無苔

細数脈 肝欬 肝火 欬嗽激しい。粘稠

痰で客出困難

面赤、口渇、欬嗽で胸脇痛 薄白苔 紅舌

弦数脈 脾欬 気虚 多痰、

客出しやすい

胸悶、脘痞、食欲不振、泥状便 淡舌 膩苔

濡緩脈 腎欬 陰虚 客出困難 短気、体動で短肌・息切れ増悪、咽喉

部の不快な痛み、頭暈、耳鳴、腰痛

紅舌 無苔

細数脈

外傷性欬嗽 寒邪肺犯 熱邪壅肺 燥邪犯肺 痰湿阻肺 病因 風寒邪 湿熱邪

風寒邪

燥邪 風寒邪

風寒湿邪 脾虚湿痰 欬嗽 欬嗽と気喘 欬嗽、息が荒い 乾咳 気喘、痰鳴

白色、稀薄 黄色、粘調、

膿血

少痰、粘調 客出しにくい

多痰 客出しやすい 鼻水咽喉 鼻閉、鼻汁 咽喉痛 鼻腔咽喉の乾燥

寒熱 惡寒、発熱 悪熱 発熱、惡風・惡寒 惡風・惡寒 随伴症状 頭痛、身痛、無汗 口渇、頭痛、自汗 欬嗽で胸痛 胸悶、脘痞、食欲

不振、泥状便 舌象 白苔 紅舌、黄苔 乾舌、少津 淡舌、膩苔

脈象 浮・緊脈 数脈 細数脈 弦滑か濡緩脈

多発 冬季 春季 秋季 夏・秋

参照

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