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「抑肝散が認知症に有効である」

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「抑肝散が認知症に有効である」

      ことを支持する科学的証左

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遠山正彌,宮田信吾

近畿大学東洋医学研究所(〒589-8511大阪府大阪狭山市大野東377-21)

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 アルツハイマー病における神経細胞死は小胞体ストレ スに対する応答が悪いためである.抑肝散は小胞体スト レスによる神経細胞死を抑制する.従って,抑肝散はア ルツハイマー病による神経細胞死の予防,進行の抑制に 効果を発揮する予防薬,治療薬である,

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はじめに

 高齢化に従い認知症の患者は急増している.コリン エステラーゼやNMDA受容体の阻害剤などがその治 療薬として開発されているがその効果はおせじにも効 果的とはいい難い.一方漢方薬である二三散が認知症 に有効であるという報告は相次いでいる.はたして,

本当に有効なのだろうか?もし有効とすればその科学 的裏づけは?本稿では抑肝散が認知症に有効であると いう科学的証左を提供する1).

 我々はアルツハイマー病における神経細胞死は小胞 体内に過剰蓄積した不良タンパク質を感知し,その処 理にあたる小胞体センサーの異常であることが原因を 明らかとしてきた(図1)28).もし抑肝散が認知症に 有効だとすれば抑肝散は小胞体ストレスによる神経細 胞死を防御するはずである.

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  抑肝散

  アルツハイマー病   神経細胞死   治療薬

  1.抑肝散は小胞体ストレスによる 婁  神経細胞死を防御する

 先に報告したように培養神経細胞(Neuro2a, N2a)

に小胞体ストレス[Thapsigardin(TG)や低酸素刺 激(Hypo)]を加えると神経細胞死を引き起こす(図 2A, B).培地に抑肝散を加えると小胞体ストレスに よる神経細胞死が救済される.しかしながら非難胞体

1344-0128/12/ ¥100/JCOPY A’u,” 21 voL ls No. 2 2012 93 (201)

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小胞体ストレスとは:細胞内外からさまざまな刺激により小胞体内腔に折り畳み不全の 蛋白質がたまる状態

小胞体ストレスが加わると細胞は直ちにストレスから回避するための防御システムを活 用化する:Unfolded protein response(UPR)が発動しGRP78を発現不良タンパク質 を処理し細胞を救う.それが不可能な時はCHOPを発現しカスペース4を活性化,細胞 死を誘導する.

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図2抑肝散は小胞体ストレスによる神経細胞死を抑制する

ストレス(staurosporine;STS)による神経細胞死は 抑肝散では救済されない(図2B).しかも,この抑肝 散の効果は容量依存性である(図2C).それでは二二 散を構成する7種の生薬のいずれがこの効果を担うの かを検討した.図3A, Bに示すようにマウス,ヒト 両者由来の神経細胞の小胞体ストレスによる神経細胞 死を抑制するのはセンキュウのみである.

 したがって,抑肝散およびその構成生薬センキュ ウは小胞体ストレスによる神経細胞死を抑制すること が明らかとなった.小胞体ストレスセンサーに感知さ れた小胞体ストレスは下流のカスケードに伝えられ,

GRP78発現が優位の時は細胞生存へ, CHOP一カスペ ース4系が優位の時は細胞死へと神経細胞は誘導され る.もし抑肝散センキュウが小胞体ストレスに対し

94(202) n’ri’21 VoL 15 No.2 2012

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「抑肝散が認知症に有効である」ことを支持する科学的証左

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マウス神経芽細胞腫由来Neuro2A細胞 ヒト神経芽細胞腫由来SK-N-SHtw胞 図3 ヒト,マウス由来の神経細胞の両者において抑肝散構成生薬センキュウが小胞体ストレス負   荷による神経細胞死を抑制する

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図4抑肝散センキュウは小胞体ストレスから細胞死を守るGRP78発現を増強し,細胞死を促進   するCHOP発現を抑制する

防御的に働くならばGRP発現の増加に, CHOP一カス ペース4の抑制に働かねばならない(図1).この点 についても検討を加えた.

II.抑肝散,センキュウの小胞体ストレ   スの下流のカスケードに対する効果

 図4A-Dに示すように抑肝散センキュウは通常 よりもGRP78発現を増強し, CHOP発現を抑制する.

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図5抑肝散,センキュウはカスペース4の活性化を抑制する

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図6 センキュウに含まれるFerulic acidが小胞体ストレスによる神経細胞死を抑制する

2012

No. 2 Vol. 15

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「抑肝散が認知症に有効である」ことを支持する科学的証左

さらにこの両者はカスペース4の活性化を阻害する

(図5).これらの結果は抑肝散センキュウは小胞体 ストレスセンサー機能をより強めることにより神経細 胞死を防いでいることがわかる.それではセンキュウ に含まれるどの因子がこの効果を担うかが次の問題と

なる.

  III.センキュウに含まれるフェルラ酸

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 センキュウに含まれる各種因子を網羅解析した結果 フェルラ酸が小胞体ストレスによる神経細胞死を上に 述べた細胞防御カスケードを活性化し,細胞死促進カ スケードを抑制することにより神経細胞死を救済する ことがわかった(図6)。

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図7Ferulic acidは細胞死を救済するgrp78発現を高め細胞死を誘導するCHOP発現を抑制する

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濃度依存性にセンキュウは 小胞体ストレスによる細胞死 を救済する

図8 センキュウはPSI変異体発現細胞の小胞体ストレスに対する脆弱性を救済する

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 家族性アルツハイマー病の原因遺伝子プレセニリン 1の変異(dE9)を発現している神経細胞は小胞体ス トレスが加えられると正常細胞よりもより早期に神経 細胞死に至る(図8A).抑肝散はこの神経細胞内も抑 制し,しかもセンキュウは容量依存性に作用する(図

8B).

 以上の結果より抑曲目は加齢による神経細胞死の予 防として,アルツハイマー病による神経細胞死の進行

抑制として科学的証左を有する予防薬,治療薬である と結論できる.

参考文献

!) Hiratsuka T, et al:PLoSone 5:e13280, 2010.

2) Katayama T, et al:Nat. Cell Biol 1:479-485, 1999.

3) Katayama T, et al :J Biol Chem 276:43446-43454, 2001.

4) lmaizumi K, et al : Nat. CellBiol, 3E4, 2001.

5) Sato N, et al :J Neurochem 72:2498-2505, 1999.

6) Sato N, et al : J Biol Chem 276 : 2108-2114, 2001.

7)Manabe T, et al:Cell Death Di茄er lO:698-708, 2003.

8) Hitomi J, et al:J Cell Biol 165:347-356, 2004.

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