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専門高校における生徒文化の再考

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

専門高校における生徒文化の再考

福岡, 哲朗

九州大学大学院人間環境学府 : 博士課程

https://doi.org/10.15017/2231042

出版情報:九州大学教育社会学研究集録. 3, pp.11-20, 2001-08-15. 九州大学大学院人間環境学府発 達・社会システム専攻教育社会学研究室

バージョン:

権利関係:

(2)

九 州 大 学 教 育 社 会 学 研 究 集 録 第3 2001

専門高校における生徒文化の再考

福 岡 哲 朗

1 .課題と方法

偏差値に代表される日本の教育の一元的能力主義が及ぼした専門高校とそこに学ぶ高校 生に対する(不本意入学入 (反学校文化〉等の暗いイメージと専門高校生自身の認識は整 合的であるか。本論文では,この課題を検証するために専門高校とその生徒に着目し竹 内(1985)のX職業高校調査データ,九大調査(1) (1988)データから主に普通科との比較に よって検討する。

( 1 )課題設定の背景

専門高校およびそこに学ぶ高校生は「荒廃した校内j「落ちこぼれ」「不本意入学

J

「基礎 学力不足j等,暗いキーワードで語られることが多い口

たとえば,黒沢(

1 9 9 6

)は「専門学科と(普通科との)の格差は,その学校へ本当に志 望するものが行くのではなくて,本来は異なる学校(進学校)へ行きたいのにもかかわら ず学力(偏差値)によって,その学校にしか入れないという「進路指導」によって不本意 に入学させられている生徒が多しい・.J (黒沢

1 9 9 6 , p . 9 4

)と指摘する。

ローレン(

1 9 8 3

)も著書『日本の高校』において,「ランクの低い高校に非行が多いと 言うことは,高校の下位文化が高校の序列と密接に関連しているJ(ローレン

1 9 8 3,  p . 3 1 8 )  

という見方をしている。

さて,このようなイメージは,専門高校生自身の認識と整合的であるのか。これまで高 校における教育問題を語るときには,偏差値に代表される大学進学問題を背景に語られる ことが多く,学歴ノン・エリートである彼らや,彼らの通う高校は一面的に捉えられてき た。普商工農といった序列化された階層性へのこだわりのため,「学力低位J=「不本意入 学

J

=「反学校文化j としづ見方に研究者が縛られているのではないか心

例えば,ウィルス(

1 9 7 7

)は『ハマータワンの野郎ども』のなかで、哩予郎ども の「反 学校文化

J

がイギリスにおける階層的資本主義を支えている矛盾をさらけ出している。し かしながら日本社会に目を移せば,イギリスのような明確な身分階層性は存在していない。

また, 日本人のほとんどすべてが大学を中心とする教育制度の中で学(校)歴競争にもが いているのであれば,進学校を頂点とする高校階層性にも十分納得しうるのである。しか

(3)

し,国民の半数は大学に進学しない。平成5年に総務庁青少年対策本部が行った調査によ れば,社会で成功する要因として学歴を挙げた者は

11.5%

であった。

2. 日本的学校文化評価と階層性

生徒文化を向学校文化と反学校文化に 2分する場合,反学校文化とは学校や教師の価値 や規範から逸脱する生徒文化のことであり,その反対が向学校文化である。これらの文化 が分化される説明理論に文化葛藤説と地位不満説がある(2口)

文化葛藤説は,生徒の出身階級文化と教師の中間階級文化が適合するかどうかによって 分化すると考える説である。

例えば,イギリスの中産階級と労働者階級には相当の日常的階級差がある。その中で労 働者階級は精神労働を 女々しい とするような独自の文化を形成している口ウィルス

( 1 9 7 7

)は『ハマータウンの野郎ども』の中で,この労働者文化が,労働者階級の子ども たちである 野郎ども が学校において形成する「反学校文イ七

J

と非常に相似しており,

この相似性から, 野郎ども はスムーズにこの労働者文化を自らに取り込んでし1く。そし て好んで肉体労働を選び,かれらが「女々しし1」とする精神労働を蔑視してし\く。そのこ とがイギリスにおける階層的資本主義を支えているとし、う矛盾を生み出していることをさ らけ出している。

地位不満説は,上位ストリーム(トラック) (3)の生徒が勉強で成功した者と見なされる のに対し下位ストリーム(トラック)の生徒は学校の価値基準から低く見られ,職業ア スピレーションが損なわれる。このことにより,反学校下位文化が下位ストリームの生徒 に形成されるという説である。

さて,日本では

1970

年代後半から

1980

年前半にかけて,質問紙調査をもとに,数量化 E類や因子分析を用いて,生徒文化の類型と学校のランクとの相関を分析する生徒文化研 究が教育社会学者の間で盛んに行われてきた。耳塚(

1 9 8 3 )

(4)  武内(

1 9 8 0 )

(S)等の研 究がそうである。これらの研究で用いられる「向学校的j「反学校的jとしづ言葉は英国の 生徒文化研究からきている。そのことからわかるように,日本の研究者らは,イギリス社 会の階層的分化を日本の高校階層構造に適用してきたのである。

その後,耳塚(

1 9 8 3

)の「地位欲求不満Jモデルが適用で、きないケースがあることはい くつかの研究によって明らかにされてきた。竹内(

1 9 9 5

),伴(

1990

)がそうであるD 竹 内はウィルスの議論を下敷きにして著書『日本のメリトクラシー 構造と心性』の中で,

日本の

X

職業高校においてハマータウン校のような明確な反学校文化が存在しなかったこ とを明らかにしている。だが、それがまさに「日本的冷却装置

J

であるとも述べているD

伴は調査により進学校の生徒に比べて,ランクが下位の専門高校生の方が自己充足感が強 くなることを明らかにしている。これらの議論により耳塚モデ、ルが揺らいだようにも見え るが、やはり偏差値ランキングと生徒文化の明暗の相関だけに目を奪われており,生徒文

ウ 占

EEA

(4)

化を形成する他の要因への配慮が欠落したままである。その結果,逆に耳塚のモデルを補 完することになってしまっている。

そこで本稿では、偏差値ランキングの下位である専門高校と,比して上位の普通科を比 較する点で、同ーの軸を共有しながら,ここで 2者間の基本的な差異であるカリキュラム,

つまり専門教育の有無に着目し、生徒文化を検討することにする。

3. 専門高校生の入学動機

高校が生徒の学力によって偏差値としづ数字的な序列化をされ,その結果,普通科に合 格できない中学生が工業高校や商業高校に 不本意に入学している のであろうか。

この節では九大調査(1998)より在校生の入学動機,中学時の志望校,中学 3年時の成 績(自己申告)を見ることで,高校生の抱く序列化のイメージと我々が想像するものとの問 にどの程度の差があるのかを見る。

表 3‑1をみると,在学校が第一志望である比率は工業科が 83.7%で最も高く,つづい て商業科で 79.2%となっており,商・工が 8害jl前後の高い数字を示しているDそれに対し,

普通科では 59.1%となっており, 20%ポイント以上の差を開きがある。この調査では,第 一志望率の高さが工・商・普の順となった。

31 中学時の志望学校・学科 % 

普通科 商業科 工業科 学校・学科が第一志望 59. 1  79. 2  83. 7  学校は第1他学科志望 1. 2  11. 2  5. 4  他学校の同じ学科 18. 0  0. 5  1.  5  他の学校・学科を希望 18. 9  6.  1  6.4  高校に行きたくなかった 2.5  2.0  2.5 

十 482  197  202  1)計には無回答を含む 2) Nはデータ数を示す

出所:高校生を対象にした九大(1998)の調査。以後,九大調査と記述する。

つづいて学科別の高校入学動機を見ていくと(表 3‑2),工業科では「技術や知識を身 につけ働くためjを選んだものが 61.4%と最も多く,つづいて「公立でお金が安し\J48.5%, 

「職業のためJ47.0%となっている。商業科,普通科では,「公立でお金が安しリがそれぞ れ 53.8%, 57.7%で最も多い。

「職業のためJ,

r

技術や知識を身につけ働くためJは工・商では高いが,普通科では1 割前後と低い。逆に「中学時の成績でJを選んだものは普通科では 37.9%と2番目に高い 数字となっているが,商業科で 9.1%,工業科で 23.3%と,商・工それぞれの学科におけ

る「中学時の成績で」の割合は,他の項目に比べ目立って大きな数字ではない口

3

(5)

3‑2高校入学動機 %  普通科 商業科 工業科 大学へ進学するため 25. 2  5.6  1.  0  職業のため 13. 1  53. 3  47.0  技術知識を身につける 7.  1  43. 1  61. 4  クラブ活動にひかれた 8.  1  19.3  8.4  中学校の成績で 37.9  9.  1  23.3  公立でお金が安い 57. 7  53.8  48.5  見学で、気に入った 5.6  17. 8  22. 3  中学校の先生が勧めた 12.9  10. 7  5.4  家族友人が勧めた 14.8  21. 8  13.4  イ可となく 22. 1  10. 7  12.4  その他 10.2  7.6  5.4  482  197  202  1)多重回答 (九大調査)

2)Nはデータ数を示す

さらに中学

3

年時の成績を見ると(表

3‑3

),「上jと答える者の割合は普通科で

5 . 4 % ,

商業科で

4.1%

,工業科で

0.5%

と,し、ずれの学科も低く,他の成績段階に比べ差は小さい。

次に,「中の上j と答える者の割合は商業科で

39.6%

,普通科で

32.8%

,工業科で

12.9%

であり,商・普・工の順となっている。工業科生における「上

J

と「中の上」とを合わせ た割合は普通科,商業科,に比べ低いが,

13.4%

の生徒がいる。

3‑3中学時の成績 % 

普通科 商業科 工業科 5.4  4.  1  0.5  中の上 33.0  40. 0  13.0  33.2  47. 7  45.2  中の下 21. 1  7.2  32. 9  7.2  1.  0  8.4 

482  197  202  1)計には無回答を含む (九大調査)

2)Nはデータ数を示す

これらの結果を以下,考察すると,

①第一志望率は工・商・普の)I慎に高い。第一志望率に関しては,「自分の偏差値で合格 可能な高校の中では第一志望であったj という解釈もできるが,

②工業科,商業科では高校入学動機として「職業のためj,「技術・知識を身につけ働く ためjをあげる者が多く,工業科,商業科生には中学時において明確な進路意識があ ったことが成り立ち,正当化理論だけでは説明できない約 8割という高い第一志望率 を説明できるD

14‑

(6)

③対して,普通科では「中学時の成績でjを選ぶ割合が高いのである。

①,②,③の結果から,工業科,商業科の生徒のほとんどが 不本意入学 ではなく,

むしろ普通科 不本意入学 の割合が高い。これは普通高校間でもその進学実績により威 信の差が大きく,一部の偏差値エリート校に希望が集中し,進学できなかった場合に挫折 感を味わいがちであることを示している。

④中学3年時の成績段階で「上j,「中の上以上jを合わせた割合は工業科にも

13.4%

の 生徒がいる(6\この事実は,「工業高校=低学力jとしづ固定観念に修正の必要があ

ることを示すのではなかろうか。

4.専門高校における「反学校文化j

反学校文化と向学校文化が分化される説明理論に,文化葛藤説と地位不満説がある。そ の一つで、ある文化葛藤説は,そのままでは日本において仮説として採用できないことが調 査結果から示せる。

まず,イギリスとは異なり,日本のブルーカラーとホワイトカラーとを比較した場合,

職業のデマルケーションがない状況にあること。 2つ目に 九大調査では学科聞において 親の職業に大きな差を生じていなし\(親の職業は3学科ともすべての職種にわたっており,

各職種の割合にも大きな差を生じていなし\)からである(表4‑ 1。)

41学科別の保護者の職業 % 

普通科 商業科 工業科 農林漁業 1.  7  0.5  2.  0 

自営業 11. 8  16. 8  17. 8  会社・官公庁の管理職 9.8  10. 7  7.4  医師・弁護士(特殊) 1.  5 

。 。

0.0  技術者・教員・カメラマン 2.5  2.0  1.  0  栄養士・看護婦 3.  3  3.0  1.  0  大手企業事務職 3.5  2.0  2.  0  中小企業事務職 4.  1  6.  1  4.0  大手企業技術職 2.  1  1.  5  2.  0  中小企業技術職 4.  6  7.  1  5.0  大工・左官・機関士 4.  1  7.6  9.4  デハ ート・大手スーハ.ー店員 1.  5  2.0  4.0  専門店中小の店員 1.  0  1.  0  1.  0  理・美容師 2.  1  1.  5  2.0  警察等の保安職 1.  5  2.5  0.5  その他 4.8  4.  1  4.  5 

482  197  202  1)計には無回答を含む (九大調査)

2) Nはデータ数を示す

戸 ︑

J

(7)

そこでもう一方の地位不満説(文化一極化理論)

ε

照らしながら分析を進める口 高校階層構造が偏差値により普・商・工の!|慎にトラックを位置づけられているとし,耳 塚(

1 9 8 3

)の「トラッキングと生徒の下位文化jモデルをあてはめれば,階層構造の下位 にある工業科や商業科において反学校文化が形成されている可能性が高いということにな るが,生徒認識はどうであろうか。

1)学校文化の4因 子

まず,因子分析により工業科,商業科,普通科の生徒の類型化を行ったO 回答に関して は「ちがうJを「1J,「どちらともいえなしリを「2J,「そうだJを「3J としたため,

すべての因子において,プラス方向は「そうだ

J

の傾向にあり,マイナス方向は「ちがうj の傾向にあることを示すD

因子分析の結果, f 1〜f 4までの4つの因子を得た(表4‑ 2。)

f 1についてみるとプラス方向に「つっぱりにあこがれるjが 0.92,「暴走族にあこが れる

J

が 0.92と因子負荷量が大きく,「反社会因子j と名付ける。

2

についてみるとプラス方向に「理解してくれる先生がいるj

0 . 7 3

,「尊敬できる 先生がいる

J

0 . 7 3

ξ大きく,「向教師因子」と名付ける。

f 3はプラス方向に「生徒会の活動に積極的に参加するj

0 . 7 1 ,

「HR活動には積極 的に参加するjが 0.69と大きく,「向特別活動因子j と名付ける。

f 4はプラス方向に「高校生活を楽しくやっている

J

0 . 7 3

,「自分の高校は明るしリ が

0 . 7 5

と大きく「向学校因子j と名付ける。

表4‑2 生 徒 文 化 に お け る 因 子 行 列

f1  f2  f3  f4  反社会因子 向教師因子 向特別活動因子 向学校因子 高校生活を楽しくやっている 0. 01  0.  18  0.  14  0.  73  理解してくれる先生がいる ‑0.03  0.  73  0.  12  0.  18  生徒会の活動には積極的に参加する 0.03  0.  11  0.  71  0.  21  遅刻をよくする 0.  13  0.07  ‑0.60  0.  15  つっぱりにあこがれる 0.92  ‑0.03  ‑0.04  ‑0.06  暴走族にあこがれる 0.  92  ‑0.08  ‑0.05  ‑0.06 

R活動には積極的に参加する 0.  02  0.  18  0.  69  0.  26  クラブ活動には積極的に参加する 0.01  0.  39  0.49  ‑0.04  尊敬できる先生がいる 0.  07  0.  73  0.  09  0.  15  いやな先生が多い 0.  14  ‑0.58  0.05 0.  16  特定の友人グループにいる 0. 17  0. 15  ‑0.07  0.  56  自分の高校は明るい 0.03  0.  11  0.  13  0.  75 

注)プラス方向は「そうだJの傾向にあり,マイナス方向は「ちがうJの傾向にあることを示す。

(九大調査)

‑ 16 

(8)

(2)因子得点の多変量解析

学科問の差を分析する際に生じる他の属性(「学年J,「性別j,「中学3年時の成績J,「保 護者の職業J)の影響を除くために,多変量分散分析を行う(表4 ‑3。)

尚, F検定により, 17のカテゴリーの分散の大きさを検定した結果は, 4つの因子す べてにおいて

F

検定値が

0 . 0 1

以下であった。

よって,このモデルが 4つの因子すべてにおいて適切であることがわかる。多変量分散 分析の結果については以下,各因子について述べる。

4‑3多変量分散分析による生徒文化因子量平均値表

従 属 変 数

独立変数九~反社会因子 |向教師因子 |向特別活動因子|向学校因子

学年 (基準カテゴリ−= 3年生)

1年 生 I  0.094  I ‑0.157  0.150 ‑0.050  2年 生‑0.024  I  0.029  ‑0.103  *  ‑0.042  性別 (基準カテゴリ一二女)

I

0.103

I

o.o5a  0.009  ‑0.176 

* *  

所属学科 (基準カテゴリー=工業科)

普 通 科 | 一0.056 I  0.130  0.042  ‑0.188 

* *  

商 業 科 | 一0.048 I ‑0.251  0.172 0.279

3時の成績(自己申告) (基準カテゴリー=下)

I 0.035  I ‑0.134  ‑0.286  0.316  中の上以上 | 

0.046 I 

0.006 0.091  0.071 

中 | 一0.091 I  0.078  0.116  ‑0.048  中 の 下 以 下 I  0.106  I ‑0.073  0.176  *  0.021  保護者の職業(基準カテゴリーこその他)

会 社 員 ‑0.086  ‑0.099  0.022  0.027  自営 ‑0.007  ‑0.080  0.047  0.064 公 務 員 0.270 

* *  

0.196  *  0.051  0.146 

Sig of F(Model)  0.001 0.000 

* *  

0.003 0.000 

* *  

R‑Squared  0.042  0.054  0.036  0.087  Adjusted R‑::‑Squared  0.028  0.04  0.022  0.073 

*P

0.05

* *  

p0.01

pは各属性における因子量が等しいという仮説の帰無仮説の検定値である。 (九大調査)

i )「反社会因子J

「反社会因子jにおいて,「性別jで 0.10%ポイントの有意な差があり,女子に比べ,

男子は反社会的傾向があることがわかる。同様に,「保護者の職業

J

における「公務員

J

「その他

J

の聞に0.27%ポイントの有意な差があり,その他の職種に比べ,公務員を親に 持つ生徒は反社会的傾向にあることがわかる。「学年j,「所属学科j,「中3時の成績

J

では

「反社会因子jにおいて統計的に有意な差はない。

‑ 17 ‑

(9)

i i

  )「向教師因子j

「向教師因子jにおいては,「学年j

1

年生と 3年生の聞に

0.16%

ポイントの有意差 があり, 3年生に比べ, 1年生は反教師的傾向にあることがわかる。同様に,「学科jでは 3学科問に有意な差が生じた。普通科がプラス方向に

0.13%

ポイントの有意差があり,商 業科がマイナス方向に

0.25%

ポイントの有意差がある。つまり,工業科生と比較して,普 通科生には向教師的傾向,商業科生は反教師的傾向があることがわかる。「保護者の職業j

における「公務員

J

と「その他

J

の間に

0.20%

ポイントの有意差があり,その他の職種に 比べ,公務員を親に持つ生徒は向教師的傾向にあることがわかる。「中3時の成績jでは「向 教師因子jに有意差はないD

iii)「向特別活動因子j

「向特別活動因子jにおいては, f学年j

1

年生と 3年生の聞に

0.15%

ポイント,

年生と

3

年生の間に

0.13%

ポイントの有意差がそれぞれある。

3

年生に比べ,

1

年生は学 校行事等に積極的な傾向があり, 2年生は反対に消極的であることがわかる。同様に,「学 科jでは工業科と普通科の聞に有意差はなく,商業科が工業科に対してプラス方向に

0.17%

ポイントの有意差がある。商業科生は工業科と比較して学校行事等に積極的な傾向 があることがわかる。「中3時の成績jでは成績段階が「下jの生徒と「中の下以下

J

0.18%

ポイントの有意差があり,「下jに比べ,「中の下以下jの生徒は学校行事等に積極 的であることがわかる。「性別j,「保護者の職業jでは「向特別活動因子Jに有意差はない。

iv)「向学校因子j

「向学校因子jでは「性別j

0.18%

ポイントの有意差があり,女子の方が高校生活を 明るく,楽しく過ごしている傾向があることがわかる。同様に,「学科jで、は普通科がマイ ナス方向に

0.19%

ポイントの有意な差があり,商業科がプラス方向に

0.28%

ポイントの有 意な差がある。工業科生左比較して,普通科生は学校を暗く,楽しくない場所として,逆 に商業科生は明るく,楽しい場所であると感じている傾向があることがわかる。「中3時の 成績

J

では「下jと「上jの間に

0.316%

ポイントの有意差があり,成績が「上jで、あっ た生徒は「下」で、あった生徒よりも学校を明るく,楽しい場所であると感じている傾向が あるこ ξがわかる。「学年J,「保護者の職業jでは「向学校因子Jに有意差はない。

これら4つの因子の中で、反学校文化の尺度として「向学校因子j と「向教師因子

J

に着 目し,耳塚(

1 9 8 3

)のモデ、ルを普・商・工の順にトラックをあてはめると,この

2

因子の 学科別平均値の大小関係は普>商>工の)|慣となるはずである。しかしながら,多変量分散 分析の結果を見ると,「向教師因子jで、はその大小関係、が普>工>商となっている。最もト ラックの高い普通科生が他の

2

学科生に比べ向教師的である。このことは耳塚(

1 9 8 3

)の

18‑

(10)

モデルから理解できるが,工業科生と商業科生が逆転していることをこのモデルは説明で、

きない。

次に,「向学校因子

J

では,因子量平均値の大小関係が商>工>普となっている。最もト ラックの高い普通科生は他の 2学科よりも学校が暗く,おもしろくない場所と感じている のである。

5.結論と考察

高校の学科序列化のイメージであれば,普・商・工のI慎に高校の第一志望率が下がるは ずであるが,九大調査の結果では学科序列化のトラッキング・モデルと生徒自身の認識と は整合しなかったO まず,第一志望率が工・商・普の)!債に高くなっており,商・工の生徒 は明確な進路意識を持って入学している。このことから商・工の生徒に「不本意入学Jと いう言葉が,一概に当てはまらないことがわかったO 次に 3つの学科において地位不満説 が成立していないこともわかった。つまり,普・商・工としづ偏差値による学科序列化と 生徒文化の問に相関はなかったということである。逆に商業科生,工業科生が普通科に比 べ向学校的であるとし\う結果となった。

専門高校と普通高校の差異は単に偏差値上の序列だけでなく、むしろ重要なことはその カリキュラムにある。本稿では,専門高校の中でも大きな割合を占める工業科と商業科を 取り上げており,その専門教育は職業をベースにした学習である。その学習が一定の割合 の中学生を惹き付け、そして入学後の学校生活を明るく楽しい場にしているのである。

竹内(

1 9 9 5

)は,日本の偏差値下位高校生の学校文化形成において「冷却装置jが働いて いると述べている。それは、あくまで従来の生徒文化と階層観の相関説を前提とするもの である。いうまでもなく,地域性や伝統等も含めて,偏差値序列以外の様々な要因が生徒 文化を決定づけている。本稿では,その中でも大きな要因として専門教育の有無に着目し,

一元的な能力主義観では捉えられない,むしろそれを乗り越える生徒文化の分化要因であ ることを明らかにした。

今後の課題は,その職業をベースにした学習のどの要素が、し、かに生徒文化形成に作用 しているかを明らかにすることにある。

(注〉

( 1

)九州大学教育組織社会学研究室(吉本圭一・岡本信弘・福岡哲朗)が

1 9 9 8

7

月に 行った「高校生活と進路希望に関する調査j(代表 吉本圭一)。福岡市内のA工業高 校, B商業高校, C高校,そして福岡県内のD高校を対象とし、調査表への記入は,

各学校で

H・R

等の時間を利用して行われた。調査票には「在学校が第一志望かどう かj,「入学動機J,「学校生活への志向性J等に関する設問を,また属性として「親の 職業j,「中学 3年次の成績(自己申告)」の設問を設けている。回答者の男女比は工

‑ 19 ‑

(11)

業科で男

1 4 8

名,女

54

名,商業科で男

97

名,女

1 0 0

名,普通科で男

224

名,女

258

名である。

(2)「新教育社会学辞典」(日本教育社会学会編東洋館出版, 1986)より。耳塚著「概 説・高校生j『現代のエスプリ

1 9 5

高校生』に詳しい。

(3)  ストリームは能力評価によって同一年齢の生徒を異なるクラスに分化させたもので ある(竹内

1 9 9 5 , p195

)。それに対し, トラックは,たとえば複線型学校システムの ように,法制的に進路を限定するということはないにしても,実質的にはどのコース

(学校)に入るかによってその後の進路選択の機会と範囲が限定されること(耳塚

1 9 8 3 ,   p6

。)

(4)耳塚は高校生調査のデータ分析により, 日本の高校の総序列化によるランク付けが

「向学校的一反学校的j とし、う生徒分化にあてはまることを実証し,「地位欲求不満 説jが適用できることを示した。

( 5

)例えば,武内(

1 9 8 0

)は

1 0

校の公立普通科高校生を対象に行った質問紙調査の結果 を数量化E類にかけ,分析を行っている。その結果, 4年制大学進学希望者の多い学 校ほど反抗型の生徒が少ないことを実証している。

( 6)  A工 業 高 校 教 務 主 任 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調 査 (

2000

) に よ れ ば 、 毎 年 入 学 者 の 中 に は 内 申 書 に よ る 中 学 時 の 成 績 ( 評 定 平 均 値 ) お よ び 高 校 入 試 得 点 で 偏 差 値 60以 上 の 高 校 に 入 学 可 能 な 生 徒 が 5%程 度 存 在 し て 1る。

(参考文献〉

黒沢惟昭

1 9 9 6

,「現代の高校改革について」市川昭午編『生涯かがやき続けるために−

21

世紀の「しごとj と学習のビジョン』第一書林、

9 3 ‑ 1 1 2

総務庁青少年対策本部

1 9 9 4

,『世界の青年との比較から見た日本の青年』大蔵省印刷局 武内清他

1980

,『モノグラフ・高校生

80 V o l . 2  

高校生の生徒文化』福武書店 竹内洋

1995

,『日本のメリトクラシー 構造と心性』東京大学出版会

伴恒信

1 9 9 0

,「学校文化と生徒の意識

J

黒羽亮一他編著『日本の教育第 5巻 教 育 内 容 ・ 方法の革新』、

1 0 3

26

耳塚寛明

1983

,「概説・高校生

J

『現代のエスプリ

1 9 5

高校生』

岩木秀夫・耳塚寛明編志文堂、

5 ‑ 2 4

P .

ウィルス

1 9 7 7

,『ハマータウンの野郎ども 学校への反抗労働への順応』熊沢誠・

山田潤訳 ちくま学芸文庫

T. ローレン

1983

,『日本の高校成功と代償』友田泰正訳 サイマル出版会

‑2 0  ‑

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