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戻り光半導体レーザにおけるカオス振動の制御と応 用

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Academic year: 2022

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戻り光半導体レーザにおけるカオス振動の制御と応

著者 滝口 由朗

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 24

ページ 110‑112

発行年 2003‑03‑28

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1447

(2)

氏名 。(本

  

  

  

朗 (静岡県) 学 位 の 種 類

  

  

  (工 

)

学 位 記 番 号

  

工博 甲第

  229 

号 学位授与の日付

  

平成

14年 3月 23日

学位授与の要件

  

学位 規程 第

5条

1項

該 当 研究科導攻の名称

  

電子科 学研 究科

 

電子応用工学

学位論文題目   Chao■c Osciuatbns in semた onductor Lasers with Opucal Feedback Control and Apphcations

(戻り光半導体 レーザ にお けるカオス振 動 の制御 と応用)

(委員長)

論 文 審 査 委 員

 

 

教 授 長 村 利 彦   教 授 大 坪 順 次

論 文 内 容 の 要 旨

本論文 においては戻 り光半導体 レーザにおける不安定性のダイナミクスについて解析 し、その制 御 と不安定発振の応用 について論 じた。半導体 レーザは本来class¨

Bの

レーザに分類 され、 レー ト方 程式 において

2変

数で記述 される安定なレーザであるが、戻 り光 を有する場合は

3変

数系 となる。

結果 として、そのダイナ ミクスに本質的なカオス性 を内包す ることにな り、 レーザ発振 に不安定現 象が現れる。半導体 レーザ開発当初から知 られている低周波振動(low‐quency■ucmatiott LFF)も そ のような不安定現象の一つであるが、ダイナミクスの複雑 さから未解決の問題が多 く残 されている。

2章

において、戻 り光半導体 レーザを記述するレー ト方程式の定常解 を導出 した。 この結果、

レーザ発振の しきい値は、戻 り光の強さに依存 して低下することが分かつた。また、このとき、レー ザには発振可能なモー ドが多数存在することにな り、モー ドの数はレーザの戻 り光量 に依存するこ とが分かつた。 これ らのモー ドの生成は、 レーザの内部 と外部共振器 との位相整合 によって説明で きる。

3章

では、実験 による低周波振動の基本的な特性測定 と、第

2章

で求めた定常解 についてのさ らに詳 しい解析 を行 った。戻 り光があるしきい条件以上では、定常解は単一か ら複数個へ と変化す る。戻 り光 によって生成 される定常解の個数やその解の性質は、戻 り光の位相や強 さに依存する。

定常解は位相(位相差‐キャリア、 もしくは光出力‐キャリア)平面上において楕円軌道上に配置する。

決定論的な立場から、低周波振動 はこれら定常解中における発振状態の遷移で説明 されるが、理論

‑110‑

(3)

計算から見積 もられる定常解の個数 と、実験において観測 される時間波形の振 る舞いの不一致 という 問題がある。これに対 し、光出力の変動 を考慮 した定常解解析 を行い、低周波振動のダイナミクスに 対する新 しい解釈 を提案 した。

4章

では、低周波振動の制御法について議論 した。第

3章

の結果から、低周波振動のダイナミク スは、定常解(外部モー ド)の分布 に依存する。その為、戻 り光の条件 によリレーザは安定発振や不安 定発振 を示す。外部モー ドの固有振動数に対応 した周波数でレーザヘの注入電流に変調 を加えること

により、 レーザは強い応答 を示すことが期待 される。これを実証する為に、注入電流による外部変調 を用いて実験的な検証 を行 った。戻 り光量 にも依存するが、低周波振動状態にあるレーザの安定化 や、低周波振動の抑制を実現することができた。 しか し、戻 り光があ り安定発振 となっている場合で も、外部モー ド固有振動数 と離調 した周波数での注入電流変調においては、逆に低周波振動が誘発 さ れることが分かつた。

5章

においては、カオスダイナミクスの応用 として、戻 り光半導体 レーザのカオス発振 を用いた カオス同期について議論 した。 レーザにおけるカオス同期では、共振システムの持つ注入同期特性に よる同期 と、 レーザ方程式の完全一致 としての同期(振動子 レベルの同期)の

2種

類が存在する。戻 り 光半導体 レーザは時間遅延帰還システムである為、この

2種

の同期 を同期波形の時間差によって識別 できる。 よって、戻 り光半導体 レーザにおける同期時間差を理論的に解析 し、これについて実験によ る検証を行った。この結果、同期時間差から、

2種

の同期の存在が確認 され、それぞれ異なった同期 特性 をもつことが明 らかにされた。

6章

では、注入同期 された半導体 レーザにおける戻 り光の効果について、実験的に考察を行 つ た。強い光注入を持つ注入同期半導体 レーザでは、レーザの変調帯域が拡大される。この状態でさら に戻 り光 をレーザに加えると、 レーザは拡大 された変調帯域を持つカオス的な光出力を示す。このこ とにより、カオス同期通信 などにおいて、カオスキャリアの周波数の高域化が可能であることが分 かった。

本論文において、低周波振動の低速なダイナミクスに対する新 しい解釈 を提案 した。また、実際の 応用の観点から、低周波振動の制御法を提案 し、実験 によりその実証 と特性について考察 した。半導 体 レーザに対する注入電流変調 により、低周波振動による雑音特性 を改善することが可能であること が分かった。また、カオスダイナミクスを用いた秘匿通信 に必要な技術であるカオス同期について、

戻 り光半導体 レーザを用いたシステムにおいて検証 し、注入同期 に基づ く同期 と、カオス振動子 レベ ルの同期の

2種

類が存在することを明 らかにした。この

2種

類の同期状態の存在は、秘匿通信応用 のアーキテクチャにおいて、重要な意味を持つ。また、強い光注入により変調帯域が拡大 された半導 体 レーザにおいて、戻 り光 を加えることによリカオス的な発振が得 られることが示 された。このこと

は、高帯域特性 を持つカオスキャリアの発生を意味 し、カオス応用においても重要な結果である。

Hl―

(4)

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

半導体 レーザに戻 り光があるとき、そのレーザ出力に不規則な振動が発生する。 この不規則振動 は、統計的な雑音ではな く、決定論的なレー ト方程式から導かれるカオス振動である。本論文では、

戻 り光半導体 レーザにおけるカオス振動のなかで、間欠的なカオスルー トに位置す る低周波振動 (LFF:Low‐Frequency Fluctuation)と 呼ばれる現象 に注 目し、

LFFの

ダイナミクスについて実験 を主 と して研究を行い、その応用について議論 した。

LFFの

特徴は、突然に発生する急激なレーザ出力の低 下 と、その後の出力の回復過程 にある。この現象は、

100ML程

度以下の振動 として不規則に繰 り返

される。

2章

では、本研究の基礎 となる半導体 レーザに戻 り光があるときのレー ト方程式 を導 き、線形安定 解析 を使い戻 り光効果の定常的振 る舞いについて調べた。そ して、半導体 レーザにおけるカオス振動

において重要 となる緩和振動 について論 じた。

3章

では、本論文の主題である

LFFの

基本的性質について、理論 と実験 により明 らかにした。戻 り光があることによつて位相一キヤリア密度空間で定義 される安定、不安定発振モー ドを定義するこ とがで きる。このLFFダイナミクス解析は、新規性のある部分である。特に、これまでの実験 と理論 で整合が とれていなかった問題について、反復モデルの提案によって、

LFFの

出力回復過程の実験結 果をうまく説明することができた。

4章

では、

LFFを

雑音 と考え、

LFFを

制御 し雑音を抑制する方法を提案 している。カオス制御の考 え方によると、そのダイナミクスに大 きな変化 をもたらすことな く、非常 に微小 な摂動によリカオス を周期的な軌道に安定化 させることができる。これに基づ き、外部共振器モー ド近 くの周波数で変調 を行 うことにより

LFFを

周期軌道に安定化 させ、その雑音 レベルを低減す ることがで きた。

5章

では、二つのカオス系における同期現象 とその応用に着 日し、カオス同期の実験 を行 った。こ の結果、 レーザにおけるカオス同期の形態 として、二つの種類があることを見いだした。特に、送信 側 と受信側のレーザ レー ト方程式が数学的に一致する完全同期解が存在 し、このことを初めて実験的

に証明 した。

6章

においては、カオス同期通信 において必要 となるカオスキャリアの高帯域化 についての提案を 行 った。具体的には、強 く光注入 された半導体 レーザに戻 り光を発生 させ、これをカオス光源 とす る。そ して、

5章

で述べたカオス同期の方法によって、カオス通信 を行 う方法を提案 している。基礎 的な実験 によつて、カオスキヤリアの帯域 を

4倍

以上拡大することがで きた。

以上のように、戻 り光半導体 レーザのカオスについて、特にLFF現象 とその応用において新 しい展 望 をもた らした。審査の結果、本論文は博士(工)に相当する内容があるものと認定する。

‑112‑

参照