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変調サイドバンド光を用いた半導体レーザ発振周波数のITU-T周波数グリッドへの安定化

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(1)

変調サイドバンド光を用いた半導体レーザ発振周波数の

ITU-T

周波

数グリッドへの安定化

水鳥

a)

古賀

正文

b)

Laser Diode Optical Frequency Stabilization by Employing Modulated Sideband

Light

Akira MIZUTORI

†a)

and Masafumi KOGA

†b)

あらまし 本論文では半導体レーザ(LD) 発振周波数の ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)に よって規定された周波数グリッドへの変調サイドバンド光を用いた安定化方式について提案し,その原理と実験 的検証結果を述べている.周波数安定化に従来使われてきた気体分子遷移吸収線周波数は,光ファイバ通信で用 いる1.5 µm 波長帯にてアンカ周波数として規定された 193.1 THz とそのグリッド展開値とは一般に一致せず, 離れた周波数に位置している.この両者の離調周波数によって光位相変調器を変調し,その変調サイドバンド 光を気体分子吸収線周波数と一致させることによってITU-T グリッド周波数に一致した LD 固有の発振周波数 を得る方式である.シアンガス同位体H13C15N を用いて半導体レーザ光を 193.1 THz に安定化させたところ, 300 kHz 以内の安定化,積分時間 30000 秒(約 8 時間)の計測によるアラン分散で 10−11が達成できた. キーワード 半導体レーザ,変調サイドバンド,周波数安定化

1.

ま え が き

リーマンショック以来低迷する経済状態にもかかわ らず,通信トラヒックは年率20∼40%で増加を続けて いる.2030年にはExa-bit/sクラスのスループット を可能にするフォトニックネットワークの必要性も論 じられている[1].この通信トラヒックを支えるべく 光ファイバ通信における伝送容量の開発競争が続いて おり,光位相を変調に組込む技術が高まって一段と加 速した.2009年には30 Tbit/sを,2010年3月には 69 Tbit/sを記録している[2], [3].直交位相を駆使した 変調とディジタルコヒーレント受信技術がもたらした 成果といえる.直交位相による変調は符号の多値化を 可能にし,光周波数利用効率(SE)を飛躍的に高めた. 2007年に実用化されたRZ-DQPSK方式40 Gbit/s DWDM伝送システムではSEは0.4 bit/s/Hzであ 大分大学工学部,大分市

Faculty of Engineering, Oita University, 700 Dannoharu, Oita-shi, 870–1192 Japan a) E-mail: [email protected] b) E-mail: [email protected] るが[4],2010年に報告されたSEは5 bit/s/Hzを超 えている[5].ディジタルコヒーレント受信技術は光 キャリヤ周波数の不安定性を高速ディジタル信号処 理(HS-DSP)技術によって補う技術と捉えることがで きる. 光キャリヤの周波数安定性に関しては,現在波長 ロッカーを用いる方式によって短期的にはGHz以下 の安定性が実現できているが,同期ホモダイン検波を 実現するには不十分である.そのため,イントラダイ ン方式を前提としてシステム設計が進められており, 受信帯域に加えて光キャリヤ周波数長期的変動範囲と して約±2 GHz確保しなければならない.結果とし て雑音帯域は最適受信帯域幅よりも広がるのでSNR が劣化する.例えば,BPSK方式を例にとると位相ダ イバーシチ構成が必要となり単一ホモダイン検波受信 に比べて受信感度が3 dBだけ劣ることになる.また, HS-DSPは,処理速度が高速であるので消費電力を無 視できなくなり,処理遅延量も増加する. 一方,光源光周波数の安定性を高め不確かさをおお むね1 MHz以内に抑え基準としてノードに配備でき ると,局発光を光キャリヤに位相同期させたホモダイ

(2)

ン検波の可能が高まる.ホモダイン検波ができると, 構成にもよるが上述したように最大3 dBの受信感度 の向上が期待できる.更に,当該安定化光源による光 周波数コムを発生させると,位相同期マルチ光キャリ ヤによる伝送[6]や位相感応型増幅器[7]のようなこれ までには実現困難であった光機能回路の実現可能性が 高まる.それぞれ約5 dBのSNRの向上が期待できる ことになり,システム全体では10 dBを超えるSNR の向上が期待できる[8].HS-DSPの負荷も軽減でき ることになり時代が要請している消費電力の低減にも 大きく貢献できる. 一般にLDの光周波数安定化にはこれまでアセチレ ンやシアンガスのような気体分子の遷移吸収線に安定 化する方法がよく行われてきた[9], [10].しかしなが ら,気体分子遷移吸収線に単純に安定化するだけでは, 光周波数を任意に設定することはできず,光通信用光 源や周波数基準としては機能不足である.これに対し 安定化したマスタ光源に対してスレーブLDを用意し ヘテロダイン検波によって追随させれば,任意の光周 波数を得ることもできる[11], [12].それでもいったん 光周波数を確定させれば,その後自由な変更は困難で ある.また,基準に採用できるような狭線幅LDの価 格は決して安価ではない. 我々は,光ファイバ伝送におけるSNRの向上によ るいっそうの多値化並びに消費電力の低減に貢献する ために光キャリヤの光周波数不確かさを抑える研究開 発を進めている.目標とするのは,ITU-Tで規定され ている光周波数グリッドまたはグリッドから特定の周 波数オフセットの位置にある光周波数を10−10以下の 不確かさで提供できる基準光源の実現である.光周波 数グリッドまたはオフセット周波数位置に基準となる 光コムを生成し通信ノード局に配備できると,光キャ リヤを光PLLによって光周波数グリッドに配置する ことができる[8]. 本論文ではITU-T周波数グリッドに高い確度で光 周波数を配置できる変調サイドバンド光を利用した光 周波数安定化方式について提案し,その原理と実証結 果を報告している.2.で提案する変調サイドバンド光 による安定化方式の原理を説明し,3.で構成と設計指 針を示した.シアンガス同位体H13C15N遷移吸収線 を用いて変調サイドバンド光を安定化させた実験結果 を4.で報告している.

2.

変調サイドバンド光を用いた光周波数

安定化の原理

提案する変調サイドバンド光による安定化方式は, LD光源に固有の縦モード発振周波数を目的の光周波 数に設定しつつ,その変調サイドバンド光を安定な分 子吸収線に安定化させる方法である[13].変調周波数 が許す範囲で光源固有の縦モード光周波数を任意の周 波数に設定できることが主な特徴である.光通信用基 準光源としてだけではなく,計測用シンセサイズド光 周波数スイーパとしても有用と考えられる[12].一般 に安定な気体分子の遷移吸収線周波数は,ITU-Tで規 定されたDWDMのための光周波数グリッド[14] fgrid(n) = 193.1 + n × fspace [THz] (1) とは異なる.ここでnは整数,fspaceは周波数間隔で あり12.5,25.0,50.0,100.0 GHzがある.変調サイ ドバンド光を安定な気体分子の遷移吸収線に安定化し, その安定な特性を維持してレーザ光固有の縦モード発 振周波数をITU-T周波数グリッドへ設定する原理に ついて述べる. 発振周波数がfcであるレーザ光をマイクロ波周波 数fmで位相変調すると,その電界成分は

e(t) = E0· exp{j2πfct + β · sin(2πfmt)} (2)

と表すことができて,一般に複数の変調サイドバンド 成分を含んでいる.ここでβは変調度である.変調サ イドバンド成分を明示的に表すために次式のように級 数展開する. e(t) = E0



k=−∞ [Jk(β) · exp{j2π(fc+ k · fm)· t}] (3) Jk(β)k次の第一種ベッセル関数であり,発生した k次サイドバンド光の振幅を示している.expの項に含 まれる周波数fc+ kfmが第k次変調サイドバンド光の 周波数である.以後これをfSB(k)(= fc+ kfm)と表 記する.第k次変調サイドバンド光を気体分子吸収線 周波数の中心周波数fAに一致させることによって安 定化する.このときfc= fgrid(n)かつfc+ kfm= fA となるようにfmを設定することによって,周波数安 定化されたITU-Tグリッド周波数fgrid(n) = fcを得 ることができることになる.その様子を図1に示した.

(3)

図 1 変調サイドバンド安定化方式の原理.上:ガス吸収 特性,中:周波数弁別特性,下:位相変調によるサ イドバンド光の発生と ITU-T グリッド周波数 Fig. 1 Principle of optical frequency stabilization by

employing modulated sideband light. Upper: the characteristics of gas absorption, Middel: S-curve, Lower: generation of sideband light and ITU-T grid.

気体分子の遷移吸収によるLD光の透過特性は一般 に次式に示すように周波数に対してローレンツ曲線を 示す. T (f ) = 1 − α · 1 1 +{(f − fA)/γ}2 (4) ここでαfA での吸収率,γ は吸収量の半値半幅 である.サイドバンド光の周波数fSB(k)fAから fA+ εへ微小変動したとき,ローレンツ曲線による周 波数弁別特性によって強度の揺らぎへ変換されて誤差 を検出することになる.周波数弁別特性は, dT (f ) df = 2α(f − fA)/γ2 [1 +{(f − fA)/γ}2]2 (5) と表すことができて,図1中2段目の図のようにS字 曲線となる.式(5)より(f − fA) = εに比例した強 度変調成分を検出できることが分かる.この強度変調 成分が中心周波数からの誤差情報となる.εγに比 して小さいと強度変調成分も小さくなり,検出感度が 悪い.そのため,一般には,低速のディザリング信号 によって周波数fを偏移させる.この偏移は,本提案 方式ではマイクロ波位相変調信号をFM変調すること によって実現できる.周波数偏移量がΔfである低速 のディザリングFM信号Δf d(t)をマイクロ波位相変 調信号fmに重畳すると,k次サイドバンド光の周波 数fSB(k)fSB(k) = fc+ k · (fm+ Δf · d(t)) = fA+ k · (Δf · d(t)) (6) となり,周波数fAを中心とする周波数偏移量kΔfの FM変調波として振る舞う. 今,LD光源に固有の縦モード発振周波数fcε だけ微小に揺らぐとfSB(k)εだけ変動する.する と,k次サイドバンド光の周波数fSB(k)は式(6)よ りfA+ ε + kΔffA+ ε − kΔf の間で振動するこ とになる.この振動光が式(4)で表される透過特性の 気体を通過すると,PkT (fA+ ε + kΔf d(t))なる強 度変調信号に変換されて出力される.ここで,Pkk次サイドバンド光強度である.この強度変調信号に 位相敏感同期検波を施して得られる信号振幅X(ε)は, ディザリング信号d(t)を掛けて時間平均操作を行うこ とによって X(ε) = Pk· T (fA+ ε + k · Δf · d(t)) · d(t) = αPk· Cd·



kΔf γ



·



ε γ



(7) なる結果を得る(付録1.参照).ここで·は時間平 均である.PkJk(β)2に比例した値であり,βを決 めれば定数となる.また,Cd(kΔf /γ)d(t)で 決まる定積分値である.式(7)はεに関して一次関数 であると同時に,(ε/γ)が安定性の本質であることを 示している.例えば,500 kHz以下に変動量εを抑え たいとき,γ = 500 MHzの気体分子吸収線を用いる と,周波数偏移量やサイドバンド次数を大きくして (kΔf /γ)を1に近づけることはできるが,(ε/γ)は 1/1000にとどまる.目的の安定性を達成するにはγ を可能な限り小さくする,またはγの小さい物質を選 定することが肝要であるといえる. 同期検波出力の感度は式(7)の傾きを決める要因の 一つである透過光強度αPkにも依存する.k次サイド バンド光強度Pkの次数との関係を明らかにした.そ の結果を図2に示す.縦軸は0次光強度P0で規格化 した相対値である.Pk(k = 1, 2, 3)は,第k次サイド バンド光が変調指数βに対してとり得るパワーの最大 値である.本方式では,k > 0であるので,0次光強 度に比べると40%以下となることが分かる.一方,P3 でもP1の60%程度までしか小さくならない.ただし, LN光位相変調器を用いて一,二,三次のサイドバン

(4)

図 2 位相変調度とサイドバンド光強度.Pkはベッセル 関数Jk(β) の 2 乗に比例

Fig. 2 Power of sideband lights for modulation index.

Pkis proportional to square of Bessel function

Jk(β). ド光を最大パワーで発生させるには,それぞれV π電 圧の0.59,0.97,1.34倍の電圧振幅が必要である.気 体分子吸収線では多くの場合,γ = 500 MHzと比較 的広いので,100 MHzを超える偏移量が望ましい.こ れだけのFM変調をマイクロ波に重畳できないとき には高次の変調サイドバンド光を採用すると有利とい える.

3.

安定化回路の構成

3. 1 安定化回路全体構成 2.で述べた原理に基づいて変調サイドバンド光によ る光周波数安定化回路をC-bandにて構成した.安定 化回路の構成を図3に示す.周波数安定化の基準とす る気体分子にはシアンガス同位体であるH13C15Nガ スセルを用いた. LDから出力された光は,LiNbO3 光位相変調器 (LN)へ入力された後,偏波保持光ファイバ(PMF)を 介してシアンガスセルへと導かれる.光はLN変調器 によって位相変調を受ける.マイクロ波位相変調信号 には周波数偏移を与えるためFM変調が施されてい る.ガスセル内ではフォトダイオード(PD)によって 電気信号に変換するまで空間結合系によって構成する. PMFから出力された光はビームスプリッタによって 2分岐され一方はシアンガスを通過させてPD(信号 A)へ,他方は直接PD(信号B)へ入力する.分岐 比はシアンガス吸収後の光強度と直接光強度とがほぼ 同等となるように前者対後者を7 : 3の比率で分岐し ている.また,LDからPDへ至る光学経路は偏波変 動による不安定性を除くためにすべてPMFで接続し, その接続には8斜めコネクタを用いた. PDによって電気信号に変換された信号AとBは, 除算回路(A/B)によって同相モードの揺らぎを取り 除く.同相モードの強度揺らぎには,LDへ誤差信号 を帰還させることによる制御駆動電流に伴う強度変動, LNを位相変調するときにわずかに現れる強度揺らぎ 成分が考えられる.電圧同相モード除去比は20 kHz までの帯域では35 dBであった. 除算回路出力後,出力信号に対してベクトル位相検 波を施すことによって,誤差信号をX成分として検出 するとともに出力信号のひずみの変化をY成分とし て検出し補正を行う.検出された誤差信号は比例と積 分(PI)回路によって定常誤差をゼロとするようにLD 駆動回路へ帰還する.温度によってFMシンセサイザ のパワーが変化するとLN変調器を介してひずみに相 当するY成分が変化することが事前実験で分かったの で,検出したY成分を用いてシンセサイザのパワーを 制御した. 3. 2 C-band半導体レーザ 今 回 使 用 し た C-band LD に お け る 光 周 波 数 の 温 度 に 対 す る 感 度 は 通 常 の DFB-LD と 同 様 に −1.39 GHz/◦C [15]であり,注入電流に対する感度は −35 MHz/mAと通常のDFB-LD (−1.1 GHz/mA) に比べて1けた以上周波数変調効率が小さく電流制 御性の高い外部共振器方式LDを採用した[16].定電 流ドライバには,設定電流値に対しrms電流雑音が 1 μA以内の回路を試作して適用した.そのため電流 ドライバがもつ雑音により光周波数が受ける変動は 35 kHz程度となり,安定性目標に対して1けた小さ く,電流雑音の影響は無視できるレベルである.また, LDモジュールの温度安定化には1/100C以下の制御 が可能な市販の温度コントローラを使用した.なお実 験室内の温度は3C程度の変動が常時あった. 使用した半導体レーザのスペクトル線幅を遅延自己 ヘテロダイン法により測定した.その結果,図4に 示すようにガウス関数によってよく近似できた.これ はLDのスペクトル線幅が細くなり低域で顕著なフ リッカ(1/f)雑音特性が顕在化したためであると考え られる[17].σ = 47 kHzより半値全幅(HMFW)は 78 kHzであった. 3. 3 シアンガス同位体H13C15N吸収セル シアンガス同位体H13C15Nは複数の遷移吸収線 を有している.その中で,ITU-T周波数グリッドに おけるアンカ周波数193.1 THzに最も近いP13吸収 線193.1077391 THzを基準に採用した[18].使用し

(5)

図 3 安定化システムの構成.LD:半導体レーザ,LN:LiNbO3光位相変調器,PD:光 ディテクタ,ISO:光アイソレータ,PMF:偏波保持光ファイバ,BS:ビームスプ リッタ

Fig. 3 Setup for stabilization system. LD: Laser Diode, LN: LiNbO3Phase Mod-ulator, PD: Photo Detector, ISO: Isolator, PMF: Polarization Maintained Optical Fiber, BS: Beam Splitter.

図 4 LDのスペクトル線幅測定結果 Fig. 4 Line width of Laser light’s spectrum.

たガス吸収セルは,吸収率αを0.40,吸収量半値半 幅γを500 MHzとなるようにガス圧5 torr,セル長 200 mmとしたものである.仕様はP13吸収線での周 波数の不確かさ±100 kHz,中心周波数の温度依存性 −40 kHz/◦Cであった. 半値半幅γを正確に把握するために透過特性を測定 した.一次の変調サイドバンド光を周波数スイーパと して使い測定を行う.FMシンセサイザの周波数偏移 量を設定可能な最大値80 MHz/Vppとし,ディザリ ング信号波形d(t)を2 Vppののこぎり波とすること で160 MHzの周波数偏移Δf を与える.一次の変調 サイドバンド光は160 MHz周波数スイープする.除 算回路の出力をオシロスコープで観測するとガス吸収 線の160 MHz分のプロファイルを時間波形として計 図 5 ガス吸収線プロファイルの測定結果.中心周波数は (A)−480 MHz,(B) 0 MHz,(C) +320 MHz

Fig. 5 Measurement of gas absorption’s profile.

測できる.ただし,測定時には制御ループは開放であ る.測定結果を図5に示す.マイクロ波の中心周波数 fmΔf刻みで変えて測定した様子を図5 (A),(B), (C)に示し,一連の測定結果から得られた透過特性の プロファイル測定結果を図5 (D)に示した.得られた プロファイルを式(4)で近似した結果も破線で示した. 近似結果から得られた半値半幅γの値は400 MHzで あった. このガスセルの遷移吸収線による周波数弁別特性

(6)

を測定し,ロックさせるサイドバンド光の次数を決定 した.使用したFMシンセサイザ(Agilent N5183A MXG)は,6 GHz以上の発振周波数に対してはFM 変調周波数偏移量を80 MHz/Vppまで設定可能であ り,3∼6 GHzでは40 MHz/Vppであった.当該周波 数におけるシンセサイザの位相雑音は−95 dBc/Hzで あり,ルビジウム周波数標準器(KYOCERA MCXO-094B)に同期させている.シンセサイザに入力でき るディザリング信号の最大振幅は2 Vppであった. したがって,2 Vppのディザリング信号により,一 次の変調サイドバンド使用時には k = 1より位相 変調周波数 fm = 7.7391 GHz,最大周波数偏移量 Δf = 160 MHzと設定できるが,二次ではk = 2より fm= 3.86955 GHzであるからΔf = 80 MHzまでと なる.一次のサイドバンド光に対し周波数偏移量Δf を80 MHzと160 MHz,二次のサイドバンド光に対 してはΔfに40 MHzと80 MHzを与えたときの周波 数弁別特性を図6に示す.横軸はkfm= 7.7391 GHz を原点としている.原点での傾きは式(7)よりPkkΔfの積に比例し,図2よりP1= 0.34P2= 0.24 であるから,kΔfが1×80と1×160並びに2×40と 2× 80のとき,その比は順に27.2 : 54.4 : 19.2 : 38.4 である.実際測定したグラフの傾きは0.021,0.041, 0.013,0.027 V/MHzとなっておりおおむね一致し, 前節で述べたようにPkkΔfに比例した結果となって いる.実験では中心付近での傾きが最も大きい一次の サイドバンド光をガス遷移吸収線にロックさせ,周波数 偏移量Δfは160 MHz,マイクロ波中心周波数fmは 7.7391 GHz,ディザリング信号は周波数17.003 kHz, 2 Vppの方形波とした. 図 6 周波数弁別特性(HCNgas P13 近傍) Fig. 6 S-curve of HCN gas (near P13).

4.

安定化実験

本方式による安定性を検証するため,光周波数の測 定を図7に示すように生成した光を基準光との合波に よるビート周波数測定により行った.使用した基準光 源の光周波数は193.1077391 THz,変動幅は200 kHz 以内である.基準光源の内部構成については付録2. に述べる.X,Y成分に対するPIコントローラの帯 域はそれぞれ10 kHz,1 mHzである. 温度コントローラと定電流ドライバのみの制御で LDを動作させたfree-running状態から約1時間後に 変調サイドバンド光によるフィードバック制御を行い 更に1時間測定した結果を図8に示す.free-running 状態で200 MHz以上の周波数変動がある環境で本方 式によるフィードバック制御を施すと光周波数が安定 化するのが分かる. 約8時間の測定結果を図9に示す.図中の上のグラ フがビート周波数であり1 MHz/divに拡大して示し ている.3Cの室温変化は主に空調設備によるもので あった.ガスセルは厚さ1 cmの発泡スチロールで囲 む簡単な断熱処理を施しているが室温の3分の1程度 図 7 安定性評価の構成 Fig. 7 Experimental setup.

図 8 フィードバック制御による光周波数安定化

Fig. 8 Stability of Optical frequency by feedback control.

(7)

(A) X成分による制御

(B) X,Y 成分による制御

図 9 ビート周波数と室温の長時間測定

Fig. 9 Long term measurement of beat frequency and room temperature. (A) Without control by Y component. (B) Under controled by X and Y component.

図 10 アラン分散 Fig. 10 Allan variance.

の変動が残っている.Y成分による制御をしていない 図9 (A)では光周波数と室温に大きな相関が見られる が,図9 (B)では室温の変動による周波数の変動は抑 制でき,その変動幅は300 kHz以内になっている.こ の抑制効果が図10に示すアラン分散測定結果にも反 映されている.Y成分の制御を実施しない系では室温 変動の周期に該当する800秒付近にピークが現れるが (破線),Y成分の帰還制御によって抑制(実線)でき ていることが分かる.2000秒を超えた長時間分散で は10−11に近い値が得られている.

5.

む す び

変調サイドバンド光を用いた半導体レーザ発振周波 数のITU-T周波数グリッドへの安定化方式について 提案し実験的検証を行い,次の結果を得た. 1  気体分子吸収線半値半幅に対する周波数揺らぎ 量の比ε/γが安定性の本質であることを定式として導 いた. 2  位相敏感検波を行う際に,ひずみ成分も同時 に検波し安定化することにより,積分時間30000秒 のアラン分散評価で2× 10−11,周波数揺らぎ幅では 300 kHz以下を達成した. 3  変調サイドバンド光を周波数掃引すると気体分 子吸収線の吸収特性を正確かつ容易に計測できること を示した. 今後,本成果に基づく光コムを光周波数基準として ノードに配備する光周波数同期網の概念実証へと展開 し,光キャリヤ周波数安定化による伝送システム性能 向上の可能性を明らかにしていく予定である.本研究 はNICT(情報通信研究機構)からの受託研究「高機 能フォトニックノード技術の研究開発」(2009年度完 了)の成果の一部である. 謝辞 西里洋一君(現,NTTエレクトロニクス社), 大学院生浅尾崇広君には,本研究を行うにあたり回路 作成や実験に協力して頂きました.感謝致します. 文 献

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[18] NIST Special Publication 260-137, “Hydrogen cyanide H13C14N absorption reference for 1530 nm to 1565 nm wavelength calibration – SRM 2519a,” 2005 Edition.

1.(7)の導出 位相敏感同期検波による同相分X(ε)は透過光 Pk· T (f) = Pk·



1− α · 1 1 +{(f − fA)/γ}2



にディザリング信号d(t)を乗じて時間平均操作を行う ことで得られる.d(t)の周期をTとし,周波数ffA+ εすなわちfA近傍とすれば X(ε) = Pk· T (fA+ ε + kΔf d(t))d(t) = 1 T



T /2 −T /2 Pk· T (fA+ ε + kΔf d(t))d(t)dt = 1 T



T /2 −T /2 Pk ·



1− α · 1 1 +{(ε + kΔfd(t))/γ}2



d(t)dt (A·1) となる.ディザリング信号d(t)に正弦波・方形波・三 角波・のこぎり波などに見られる 1 T



T /2 −T /2 d(t)dt = 0 (A·2) d(−t) = −d(t) (A·3) を仮定する.式(A·1)は式(A·2)より X(ε) =−Pk· α T



T /2 −T /2



d(t) 1 +{(ε + kΔfd(t))/γ}2



dt となり,更に積分範囲を分割すれば式(A·3)より X(ε) =−Pk· α T



0 −T /2 d(t) 1 +{(ε + kΔfd(t))/γ}2dt +



T /2 0 d(t) 1 +{(ε + kΔfd(t))/γ}2dt



= PkαkΔf γ ε γ · 4 T



T /2 0 d(t)2



1 +

ε−kΔf d(t)γ

2



1 +

ε+kΔf d(t)γ

2

dt ここでεγkΔfに比べ十分小さいとすれば

(9)

図 A· 1 基準光源の構成

Fig. A· 1 Setup of reference optical frequency light source.

図 A· 2 基準光源 LD の線幅測定

Fig. A· 2 Measurement of line width of reference LD.

X(ε) = PkαkΔf γ ε γ· Cd Cd= 4 T



T /2 0 d(t)2 {1 + (kΔfd(t)/γ)2}2dt (A·4) となる. 2. 基 準 光 源 光周波数の測定に使用した基準光源の構成を図A· 1 に示す.光コム社製のガスセルとファイバPZT位 相変調器及びその制御ボードを用い,H13C15Nガ スのP13吸収線にロックさせている.定電流ドラ イ バ と 温 度 コ ン ト ロ ー ラ は 図 3に 示 し た 安 定 化 シ ス テ ム と 同 じ も の を 使 用 し て い る .光 周 波 数 は 193107739100 kHz± 100 kHz,周波数安定度10−10 でありアラン分散値は2∼5× 10−11であった.LDは 図A· 2に示すように自己ヘテロダイン法による測定 結果からローレンツ関数近似で線幅65 kHzであった. (平成 23 年 4 月 6 日受付,7 月 29 日再受付) 水鳥 明 (正員) 1984大阪大学大学院前期課程了.1986 より大分大学助手,現在に至る.音声・音 響信号処理の研究に従事.2006 より半導 体レーザの光周波数安定化の研究に取り組 む.日本音響学会会員. 古賀 正文 (正員:フェロー) 1983九州工業大学大学院電子工学専攻 修士課程了.1993 大阪大学大学院より博士 (工学).1983 日本電信電話公社入社.2006 年 10 月より大分大学に勤務,現在に至る. ISDNユーザ網インタフェースの研究,光 機能回路の研究に従事.この間現在普及し ている光サーキュレータの主要特許を取得.1994 より 2006 ま でフォトニックネットワークシステムの研究開発に従事.2006 年 10 月以降,半導体レーザを種光とする Carrier-Envelope offset Phase制御光発生に取り組む.2000 本会業績賞受賞. IEEE,応用物理学会各会員.

図 1 変調サイドバンド安定化方式の原理.上:ガス吸収 特性,中:周波数弁別特性,下:位相変調によるサ イドバンド光の発生と ITU-T グリッド周波数 Fig. 1 Principle of optical frequency stabilization by
図 2 位相変調度とサイドバンド光強度. P k はベッセル 関数 J k ( β ) の 2 乗に比例
図 3 安定化システムの構成.LD:半導体レーザ,LN:LiNbO 3 光位相変調器,PD:光 ディテクタ,ISO:光アイソレータ,PMF:偏波保持光ファイバ,BS:ビームスプ リッタ
Fig. 6 S-curve of HCN gas (near P13).
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参照

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