論文内容要旨
論文題名
Optimizing simulations for complete denture treatment (シミュレーションを用いた総義歯診療の効率化の検討)
掲載雑誌名
日本歯科医療管理学会雑誌(投稿中)
専攻分野 高齢者歯科学講座 川田 大助
内容要旨
【目的】平成元年から推進している 8020 運動により,日本の一人平均喪 失歯数は減少してきている.しかし,日本の総人口 1 億 2710 万人中 660 万人も上下無歯顎者が存在することが明らかとなっており,有床義歯に関 する教育・研究および臨床の必要性がますます高まっていくと考えられる.
当講座の義歯調整時の診療時間と診療内容の調査より,患者の「空白時間」
が診療時間の 47.2 % (13.2 分)・アシスタントの「空白時間」が 45.0 % (12.6 分)占めていることが明らかとなった.この患者・アシスタントの「空白 時間」を有効利用することで,必要な処置の欠落・不必要な検査の介入な どを防止することができ,漏れと無駄のない安定した医療を提供すること が可能である.本研究は,義歯調整時の診療データを元にシミュレーショ ンを行い,患者・アシスタントの「空白時間」を有効利用できる診療手順 を明らかにすることを目的とした.
【方法】被験者は上下無歯顎の総義歯装着者 31 名(男性:12 名, 女性:
19 名, 平均年齢:81.7 歳), 担当医 14 名(臨床経験年数:2~28 年, 平均 臨床経験年数:9 年), アシスタント 2 名(臨床経験年数:1~2 年, 平均臨 床経験年数:1.3 年)とした.調査時期は義歯調整時とした.まず,義歯調 整時の診療風景をビデオカメラ記録した.そのデータを元にタイムテーブ ルを作成し,担当医・患者・アシスタントの診療内容を組み替えて,シミ ュレーションを行った.シミュレーション実施前後の平均診療時間の変化 を t 検定,担当医・患者・アシスタントの「空白時間」の変化について一 元配置分散分析及び多重比較検定(Bonferroni 法)を用いて解析した.担 当医・患者・アシスタントの「空白時間」とタイムテーブルを変更するこ とによって減少した「空白時間」との関連について Pearson の相関係数を 用いて解析した.また,診療内容の不備についてタイムテーブルを用いて
評価した.
【結果】平均診療時間はシミュレーション実施後,2.4 分(8.3 %)減少し たが,有意差は認められなかった.担当医・患者・アシスタントの「空白 時間」はシミュレーションを実施することで有意に減少した.担当医・患 者・アシスタントの「空白時間」が長い症例ほど,「義歯評価」が実施で き,「空白時間」を有効利用できることが明らかとなった.義歯調整時の 診療内容・診療時間を調べた結果,診療内容に不備がある症例(義歯洗浄 を行っていない症例など)が 22 症例(71.0 %)認められた.
【結論】このシミュレーションで得た結果から,患者・アシスタントの「空 白時間」を有効利用できる診療手順を明確にすることができた.今回,明 らかとなった診療手順を基本とし診療を行うことで,必要な処置の欠落・
不必要な検査の介入などを防止し,漏れと無駄のない安定した医療を提供 できる可能性が示唆された.
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