論文内容要旨
論文題名 Analysis of root surface properties by fluorescence/Raman intensity ratio
(蛍光/ラマン強度比による根面性状の解析)
掲載雑誌名 Journal of Dental Research (投稿中)
歯周病学 中村紫野 内容要旨
歯石除去の正確な評価は歯周治療の予後を左右する重要なポイントで ある。しかし、歯周基本治療中には歯肉縁下歯石を直視できず、術者の手 指の感 覚に 頼る こ とが多 い。 これ ま でに、 内視 鏡型 の 歯石検 出機器
(Perioscopy Inc., Oakland, CA, USA)や、蛍光測定による歯石沈着量 測定機器(DiagnodentTM Pen, KaVo, Biberach, Germany)が開発されてき た。しかし、主観的判断が依然存在することや、レーザー照射角度、照射 距離により変動する蛍光強度のみ計測する機器であることは、術者間で判 断や数値が異なることがある。本研究では、レーザー照射角度や照射距離 による蛍光集光効率の変動を最小限にするために、ハイドロキシアパタイ ト(HA)のラマンバンド強度で規格化した蛍光強度、つまり蛍光/ラマン 強度比を算出することにより歯石の有無の評価が可能かどうか検証を行 った。
本研究では歯根面に歯石が沈着した 32 本の抜去歯を患者の同意を得て 使用した(昭和大学歯学部 医の倫理委員会 承認番号 2013-002)。測 定に はポ ー タブ ル ラマ ン分 光 光度 計 (ProRaman-L, Enwave Optronics, Inc)を用い、測定条件は励起波長 785nm、出力 100mW、露光時間 10 秒、露 光回数 10 回とした。規格化には HA の 960cm-1のラマンバンド強度を利用 し、ラマンスペクトルのフィッティング結果より蛍光/ラマン強度比を算 出した。7 本の抜去歯では、歯石沈着部位、部分的にスケーリングルート プレーニングを行いセメント質を露出させた部位、歯質を削合し象牙質を 露出させた部位の 3 つの異なる歯根面が存在する厚み 1mm のスライスを作 成し、蛍光/ラマン強度比の比較を行った。統計解析は Wilcoxon rank sum
test を用いた。 25 本の抜去歯では、スケーリング 3 ストロークごとに同 部位を測定し、蛍光/ラマン強度比の変化を観察した。
まず、セメント質および象牙質のラマンスペクトルは HA のラマンバン ドである 440、580、960cm-1と有機質のラマンバンド 2940cm-1が確認でき た。一方、歯石沈着部位では強い蛍光強度によってラマンバンドは検出さ れなかった。次に、歯根面の同部位をレーザー照射距離 1mm から 5 ㎜、照 射角度を 45 度から 135 度まで変化させて規格化前後で比較したところ、
規格化前の蛍光/ラマン強度比と比較して規格化後では一定値を示したた め、本方法を用いると照射距離や照射角度により数値が変動しにくいこと を示した。そして、7 本の抜去歯で歯石沈着部位、セメント質、象牙質の 蛍光/ラマン強度比を比較した。歯石沈着部位とセメント質、歯石沈着部 位と象牙質には有意差が認められたが、象牙質とセメント質には有意差は 認められなかった。最後に、歯根面の歯石沈着部位におけるスケーリング 3 ストロークごとの蛍光/ラマン強度比の変化を 25 本の抜去歯で測定した。
25 本中 24 本で、蛍光/ラマン強度比は測定ごとに減少した。更に、各測 定値の差を算出すると、どの歯も 0 に漸近することが示された。
結論として、蛍光/ラマン強度比の変化が 0 に近似するときセメント質 または象牙質が露出しており、歯石が除去された状態であることが示され た。