未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説 明義務―最高裁平成一八年一〇月二七日第二小法廷 判決―
著者 古谷 貴之
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 4
ページ 279‑303
発行年 2008‑09‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011468
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二七九同志社法学 六〇巻四号
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務 ︱最高裁平成一八年一〇月二七日第二小法廷判決︱ 古
谷 貴 之
︵一五四一︶ 一 はじめに
脳動脈瘤は︑破裂するとくも膜下出血を引き起こす︒その予防治療の対象となるのが︑破裂していない脳動脈瘤︵未
破裂脳動脈瘤︶である︒今日では︑脳ドックあるいは他疾患で入院治療した際の検査で発見されることが多くなってい
る︒破裂していない場合であっても︑瘤が非常に大きくなり︑周囲への圧迫症状が出る場合や︑瘤内での血流の乱れで
発生した微小塞栓による脳虚血症状のある場合には︑積極的な治療が勧められる︒また無症状のもの︵無症候性未破裂
脳動脈瘤︶であっても︑いったん破裂すればくも膜下出血となることがほとんどであるので︑予防治療も行われている︒
予防治療で考慮しなければならないのは︑未破裂脳動脈瘤の予後である︒治療方法は複数あるが︑いずれの術式によっ
ても少なからず後遺症の残る可能性が否定できない︒なお︑年間の破裂率については多くの報告があるが︑一般的に一
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八〇同志社法学 六〇巻四号
%が受け入れられている︒一九九八年に発表された国際的な統計調査では一〇㎜以下の無症候性未破裂脳動脈瘤の年間
破裂率は〇・〇五%以下となっている︒現在︑これまでの一般的見解との隔たりについて調査がされているとのことで
ある︒いずれにせよ︑脳動脈瘤の解剖学的位置︑大きさ︑形状︑患者の年齢︑全身状態により治療法の難易度が異なる
ため︑予防治療を実施するか否かを含めて︑個々の症例について適切な選択がされることになる ︵
︒ 1︶
平成一五年に出された日本脳ドック学会のガイドラインによれば︑﹁一般的に脳動脈瘤の最大径が五㎜前後より大き く︑年齢がほぼ七〇歳以下で︑その他の条件が治療を妨げない場合は手術的治療が勧められる ︵
﹂とされている︒ 2︶
近時︑脳神経外科に関連する裁判例の中でも︑とくに脳動脈瘤に関するものが数多く見られるようになった︒平成一
八年一〇月二七日には︑未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関して︑医師の説明義務を判断したはじめての最高裁判決
が出された︒この判決は︑平成一九年一〇月三日から同月五日にかけて開催された第六六回社団法人日本脳神経外科学
会総会のシンポジウム ︵
においても︑医事紛争に関する重要なテーマの一つとして取り上げられており︑医療実務の側か 3︶
らも大きな関心が寄せられている︒そこで本稿では︑医師の説明義務をめぐる学説・判例の展開を踏まえ︑右の最高裁
判決の意義ないし射程を検討することにしたい︒
二 最高裁平成一八年一〇月二七日第二小法廷判決 ︵
4︶
1
︻事実の概要︼⑴
平成七年一一月一〇日︑大学教授であったA
は︑講義中に意識障害を起こし︑堀ノ内病院において一過性脳動脈虚血発作の可能性を指摘された︒ ︵一五四二︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八一同志社法学 六〇巻四号
⑵
A
は︑平成七年一一月下旬ころ︑堀ノ内病院において︑頭部の造影CT検査を受けたところ︑左内頚動脈分岐部付近に動脈瘤が存在することが疑われ︑被上告人の設置する防衛医科大学校病院︵以下︑﹁本件病院﹂という︒︶の脳
神経外科を紹介された︒
⑶
A
造医の同科︒検査を受けたTC影三次元神経外科を受診し︑は脳の本件病院日以降︑月七二一平成七年︑師Y 1
︵以下︑
Y 1
という︒︶は︑同月二二日︑A
およびその妻である上告人X
︵以下︑X
という︒︶に︑上記検査の画像の所見から︑左内頚動脈分岐部に動脈瘤が存在することがほぼ確実になったと告げ︑①動脈瘤の治療をするためには脳血
管撮影を行う必要があること︑②現時点で治療を全く希望しないのであれば︑脳血管撮影を行う必要がないこと︑
③脳血管撮影では︑カテーテルを動脈内にはわせるので︑低い確立ではあるが︑脳血栓等の合併症がありうること
などを説明した︒
A
が脳血管撮影を受けることを希望したことから︑平成八年一月一九日に脳血管撮影が行われたところ︑
A
の左内頚動脈分岐部に︑上向きに動脈瘤︵同年二月二八日の測定によると最大径が約七・九㎜であった︒︶が存在することが確認された︒
A
に確認された未破裂脳動脈瘤は︑無症状性のものであったところ︑このような動脈瘤に対しては︑保存的に経過を見るという選択肢と治療をするという選択肢があり︑また︑治療をするという場合には︑開頭手術︵開頭して
動脈瘤の頚部を永久的にクリップして閉じ︑瘤に血液が流入しないようにする術式︶という選択肢とコイル塞栓術
という選択肢があったが︑いずれの選択肢も当時の医療水準にかなうものであった︒
⑷
Y
は︑平成八年一月二六日︑1
A
およびX
に︑脳血管撮影の所見を説明したうえで︑①脳動脈瘤は︑放置しておいても六割は破裂しないので︑治療をしなくても生活を続けることはできるが︑四割は今後二〇年の間に破裂するおそ
れがあること︑②治療するとすれば︑開頭手術とコイル塞栓術の二通りの方法があること︑③開頭手術では九五%
︵一五四三︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八二同志社法学 六〇巻四号
が完治するが︑五%は後遺症の残る可能性があること︑④コイル塞栓術では︑後になってコイルが患部から出てき
て脳梗塞を起こす可能性があることを説明した︒
また︑
Y 1
は︑同日︑X
らに治療を受けずに保存的に経過を見ること︑開頭手術による治療を受けること︑コイル塞栓術による治療を受けることのいずれを選ぶかは︑患者本人次第であり︑治療を受けるとしても今すぐでなくて
何年か後でもよい旨を告げたところ︑
A
が同年二月二三日︑Y 1
に開頭手術を希望する旨を伝えたことから︑同月二九日に本件病院で
A
の動脈瘤について開頭手術が実施されることになった︒⑸
本件病院に勤務していた教授Y 2
︵以下︑Y 2
という︒︶は︑A
の動脈瘤については︑開頭手術が相当であると考え
︑
Y
に同手術の実施を指示していたが︑平成八年二月二七日の手術前のカンファレンスにおいて︑脳血管撮影の所見1
をよく検討した結果︑内頚動脈そのものが立ち上がっており︑動脈瘤体部が脳の中に埋没するように存在している
ため︑恐らく動脈瘤体部の背部は確認できないので︑貫通動脈や前脈絡叢動脈をクリップにより閉塞してしまう可
能性があり︑開頭手術はかなり困難であるとして︑破裂例であれば開頭手術が第一選択でもよいかもしれないが︑
未破裂例なのでまずコイル塞栓術を試してみてもよいのではないか︑コイル塞栓術がうまくいかないときは再度本
人および家族と話をして︑術後の神経学的機能障害について十分納得を得られるのであれば開頭手術を行ってよい
かもしれないと提案した︒これを受けて︑本件病院の放射線科の
Y
︵以下︑3
Y
という︒︶が︑3
A
の動脈瘤の口径はかなり広いけれども︑動脈瘤体部にある程度丸い形があるので︑挿入するコイルが落ち込むことはないと思われる︑
同月二八日に動脈瘤造影を行い︑コイルの挿入が可能であると判断できれば︑コイル塞栓術を実施する旨の発言を
したことから︑手術前のカンファレンスの結論として︑
A
の動脈瘤については︑まずコイル塞栓術を試し︑うまくいかないときは開頭手術を実施するという方針が決まった︵上述のとおり︑開頭手術が困難な場合に︑まずコイル ︵一五四四︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八三同志社法学 六〇巻四号 塞栓術を試すことは当時の医療水準にかなうものである︶︒
⑹
Y 1
とY 3
は︑平成八年二月二七日の上記カンファレンスの終了後︑A
およびX
に︑A
の動脈瘤が開頭手術をするのが困難な場所に位置しており開頭手術は危険なので︑コイル塞栓術を試してみようとの話がカンファレンスであった
ことを告げ︑開頭しないで済むという大きな利点があるとして︑コイル塞栓術を勧めた︒
Y 3
は︑これまでコイル塞栓術を十数例実施しているが︑すべて成功していると説明した︒
A
が﹁以前︑後になってコイルが出てきて脳梗塞を起こすおそれがあると話しておられたが︑いかがなのでしょうか︒﹂と質問したところ︑
Y 3
は︑うまくいかないときは無理をせず︑直ちにコイルを回収してまた新たに方法を考える旨を答えた︒同日の
Y
らの説明は︑三〇〜四〇分程度であった︒
Y
らは︑このときまでに︑X
らに︑コイル塞栓術には術中を含め脳梗塞等の合併症の危険があり︑合併症により死に至る頻度が二〜三%とされていることについての説明も行ったうえで︑同日夕方には︑
X
らから︑同月二八日にコイル塞栓術を実施することの承諾を得た︒
⑺
平成八年二月二八日︑動脈瘤造影が行われ︑A
にはコイル塞栓術の実施が可能であると判断されたことから︑Y 3
は ︑午前一一時五〇分ころ︑カテーテルによりコイルの動脈瘤内への挿入を開始した︒しかし︑正午ころには︑動脈瘤
内に挿入したコイルの一部が︑瘤外に逸脱して瘤を塞栓することができず︑内頚動脈に移動して中大脳動脈および
全大脳動脈を塞栓する危険が生じたことから︑
Y
は︑コイル塞栓術を中止し︑コイルの回収作業をすることとし︑3
リトリーバー︵コイルを回収するための器具︶を用いるなどして︑午後三時一〇分ころまで︑コイルの回収を試み
たものの︑動脈瘤内のコイルに結び目が形成されたために︑コイルの回収はできなかった︒そこで︑脳神経外科の
Y 1
らは︑午後四時五分ころから︑全身麻酔を行ったうえで開頭手術を実施し︑動脈瘤内に在ったコイルについては︑午後九時二五分ころ除去することができたものの︑内頚動脈に移動したコイルの一部については︑内頚動脈を切り
︵一五四五︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八四同志社法学 六〇巻四号
裂くおそれがあったために︑除去することができなかった︒
⑻
A
は︑上記開頭手術終了後も︑意識が回復することはなく︑動脈瘤内から逸脱したコイルによって生じた左内大脳動脈の血流障害に起因する脳梗塞により︑平成八年三月一日には脳死状態となり︑同月一三日死亡した︒
X
らは︑E
医師らにコイル塞栓術の手術手技上の過失︑説明義務違反があったと主張し︑Yら
に対して︑不法行為に基づく損害賠償を請求した︒
第一審 ︵
は︑被告の説明義務違反を肯定し︑原告の請求を認容したが︑原審 5︶︵
は︑動脈瘤の危険性︑ 6︶
A
が採りうる選択肢の内容︑それぞれの選択肢の利点と危険性︑危険性については︑起こりうる主な合併症の内容および発生頻度並びに合
併症による死亡の可能性を
A
に説明したということができ︑担当医師らに説明義務違反は認められないとして︑X
らの損害賠償請求を棄却した︒これに対して︑最高裁は︑説明義務違反の有無につき︑次のように述べて︑原判決を破棄・
差し戻した︒
2
︻判旨︼一部上告棄却︑一部破棄差戻⑴
﹁医師は︑患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては︑診療契約に基づき︑特別の事情のない限り︑患者に対し︑当該疾患の診断︵病名と病状︶︑実施予定の手術の内容︑手術に付随する危険性︑他に選択可能な治
療方法があれば︑その内容と利害得失︑予後などについて説明すべき義務があり︑また︑医療水準として確立した
療法︵術式︶が複数存在する場合には︑患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上判断することができるよう
な仕方で︑それぞれの療法︵術式︶の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求められると解される︵最高 ︵一五四六︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八五同志社法学 六〇巻四号 裁平成一〇年︵オ︶第五七六号同一三年一一月二七日第三小法廷判決・民集五五巻六号一一五四頁参照︶︒ そして︑医師が患者に予防的な療法︵術式︶を実施するに当たって︑医療水準として確立した療法︵術式︶が複
数存在する場合には︑その中のある療法︵術式︶を受ける選択肢と共に︑いずれの療法︵術式︶も受けずに保存的
に経過を見るという選択肢も存在し︑そのいずれを選択するかは︑患者自身の生き方や生活の質にもかかわるもの
であるし︑また︑上記選択をするための時間的な余裕もあることから︑患者がいずれの選択肢を選択するかにつき
熟慮の上判断することができるように︑医師は各療法︵術式︶の違いや経過観察も含めた各選択肢の利害得失につ
いて分かりやすく説明することが求められるものというべきである︒﹂
⑵
ア﹁前記事実関係によれば︑A
の動脈りゅうの治療は︑予防的な療法︵術式︶であったところ︑医療水準として確立していた療法︵術式︶としては︑当時︑開頭手術とコイルそく栓術という二通りの療法︵術式︶が存在していた
というのであり︑コイルそく栓術については︑当時まだ新しい治療手段であったとの鑑定人
F
の指摘がある︒﹂ イ﹁記録によれば︑本件病院の担当医師らは︑開頭手術では︑治療中に神経等を損傷する可能性があるが︑治療中に動脈りゅうが破裂した場合にはコイルそく栓術の場合よりも対処がしやすいのに対して︑コイルそく栓術では︑
身体に加わる侵襲が少なく︑開頭手術のように治療中に神経等を損傷する可能性も少ないが︑動脈のそく栓が生じ
て脳こうそくを発生させる場合があるほか︑動脈りゅうが破裂した場合には救命が困難であるという問題もあり︑
このような場合にはいずれにせよ開頭手術が必要になるという知見を有していたことがうかがわれ︑また︑そのよ
うな知見は︑開頭手術やコイルそく栓術を実施していた本件病院の担当医師らが当然に有すべき知見であったとい
うべきであるから︑同医師らは︑
A
に対して︑少なくとも上記知見について分かりやすく説明する義務があったというべきである︒﹂
︵一五四七︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八六同志社法学 六〇巻四号
ウ﹁また︑前記事実関係によれば︑
A
が平成八年二月二三日に開頭手術を選択した後の同月二七日の手術前のカンファレンスにおいて︑内けい動脈そのものが立ち上がっており︑動脈りゅう体部が脳の中に埋没するように存
在しているため︑恐らく動脈りゅう体部の背部は確認できないので︑貫通動脈や前脈絡叢動脈をクリップにより
閉そくしてしまう可能性があり︑開頭手術はかなり困難であることが新たに判明したというのであるから︑本件
病院の担当医師らは︑
A
がこの点をも踏まえて開頭手術の危険性とコイルそく栓術の危険性を比較検討できるように︑
A
に対して︑上記のとおりカンファレンスで判明した開頭手術に伴う問題点について具体的に説明する義務があったというべきである︒﹂
エ﹁以上からすれば︑本件病院の担当医師らは︑
A
に対し︑上記イ及びウの説明をした上で︑開頭手術とコイルそく栓術のいずれを選択するのか︑いずれの手術も受けずに保存的に経過を見ることとするのかを熟慮する機会
を改めて与える必要があったというべきである︒﹂
オ﹁そうすると︑本件病院の担当医師らは︑
A
に対し︑前記︹事実の概要︱
筆者注︑以下同じ︒︺2
︵4
︶及び︵
6
︶の説明内容のような説明をしたというだけでは説明義務を尽くしたということはできず︑同医師らの説明義務違反の有無は︑上記イ及びウの説明をしたか否か︑上記エの機会を与えたか否か︑仮に機会を与えなかったと
すれば︑それを正当化する特段の事情が有るか否かによって判断されることになるというべきである︒
しかるに︑原審は︑上記の各点について確定することなく︑前記
2
︵4
︶及び︵6
︶の説明内容のような説明をしただけで︑開頭手術が予定されていた日の前々日のカンファレンスの結果に基づき︑カンファレンスの翌日
にコイルそく栓術を実施した本件病院の担当医師らに説明義務違反がないと判断したものであり︑この判断には︑
判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある︒論旨は︑上記の趣旨をいうものとして理由がある︒﹂ ︵一五四八︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八七同志社法学 六〇巻四号 三 研究 具体的な検討に入る前にまず︑本件最高裁の要旨と本稿での検討課題を明らかにしておきたい︒
上述の事実関係に基づいて︑原審は︑担当医師らの説明義務違反を否定した︒これに対して︑最高裁は︑原審が認定
した事実では︑医師の説明義務が尽くされたというには不十分であると判断した︒判旨の結論は︑判文中のオの部分で
述べられているが︑その理由づけをまとめると︑つぎのようになる︒すなわち︑最高裁は︑①開頭手術とコイル塞栓術
に関する治療方法の選択についての一般的な説明内容として︑コイル塞栓術を選択した場合︑︵担当医師らの説明にあ
るような︶脳梗塞等を発生させる危険があるほか︑動脈瘤が破裂した場合には救命が困難であること︑このような場合
には︑いずれにせよ開頭手術が必要となることを説明する必要があるとしている︵判旨イ部分︶︒その上で︑②手術前
のカンファレンスにより︑開頭手術がかなり困難であることが判明したという事情の下では︑コイル塞栓術によれば開
頭しないで済むという利点のみを強調した説明は不十分であり︑開頭手術が困難であるという事情はそのままコイル塞
栓術のリスクにも反映されるということを説明する必要があるという︵判旨ウ部分︒開頭手術が困難となったこと自体
は︑カンファレンス終了後に
X
らに説明されているので︑最高裁のいう﹁A
がこの点をも踏まえて開頭手術の危険性とコイルそく栓術の危険性を比較検討できるように⁝⁝具体的に説明する義務﹂とは︑強調部分のとおり︑開頭手術の危
険率の上昇がコイル塞栓術の危険率にも影響を及ぼしていることを説明する義務という趣旨に解せられる︒︶︒さらに︑
③以上の説明を行った上で︑手術自体の危険性が高まったことが判明した本件の場合︑保存的経過観察も有力な選択肢
となりうることを含めて︑本件手術を受けるか否かを熟慮する機会を改めて与える必要があるという︵判旨エ部分︶︒
本件最高裁判決の要点を確認すると︑次のような検討課題が明らかとなる︒
︵一五四九︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八八同志社法学 六〇巻四号
︵
1
︶未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の﹁一般的な説明﹂として︑コイル塞栓術を選択するに当たり︑動脈瘤が破裂した場合には救命が困難であること︑このような場合に開頭手術が必要となることについて医師に
説明義務が存するのか︒
︵
2
︶Aに対する開頭手術がかなり困難であるという本件具体的事情の下で︑コイル塞栓術の一般的な危険率以上に︑当該具体的患者に応じた手術の危険率までも説明する義務があるのか︒
︵
3
︶﹁熟慮する機会を︵改めて︶与える﹂義務とは何か︒この義務は︑医師の説明義務といかなる関係にあるのか︑連続的なものか︑それとも独立の行為義務として観念することができるものか︒熟慮する機会の提供として︑具体
的な期間の長さはどの程度を要するのか︒この義務は︑医師の一般的な注意義務として︑他の医療訴訟分野でも
規範化可能なものか︑同義務の正当化根拠︑意義および射程がそれぞれ問題となる︒
以上の問題を考えるにあたり︑以下では︑医師の説明義務をめぐる現在までの学説・判例の展開と未破裂脳動脈瘤に
関する下級審裁判例を検討していきたい︒
1
説明義務の判断基準に関する従来の学説・判例 医師の説明義務をめぐる問題は︑これまで医療過誤訴訟における主要なテーマの一つとして盛んに議論されてきた︒今日では︑医師の説明義務の具体的な範囲をめぐる問題についても︑数多くの下級審裁判例および最高裁判例の積み重
ねによって︑次第に明確になってきていると言える︒以下では︑従来の判例・学説の確認の意味を踏まえて︑一般的な
医師の説明義務に関する議論を整理していくこととする︒
⑴ 説明義務の根拠 医師の説明義務の明文上の根拠は︑診療契約が準委任契約︵民法六五六条︶であることに求め ︵一五五〇︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二八九同志社法学 六〇巻四号 ることができる︒︵準︶委任契約は︑一定の事務処理を目的とし︑その目的の範囲内において︑受任者に一定の裁量が
与えられる︒そして︑その裁量に基づいていかなる事務を処理したのかを︑最終的にその事務を委託した委任者に報告
しなければならない︒医師の説明義務は︑この報告義務から導くことができる ︵
︒︵民法六四五条︶ 7︶
他方で︑診療行為が︑医的侵襲を伴うものであることから︑その行為を適法なものとするために患者の承諾が必要と
なる︒この患者の承諾を得るための説明義務は︑従来︑患者の生命・身体・健康への侵害︵医的侵襲︶に対する違法性
阻却事由として位置づけられてきたが ︵
︑今日では︑説明義務を︑患者の自己決定権の実質的保障という観点から捉える 8︶
のが通説的見解である ︵
︒医師が説明義務を怠った場合には︑少なくとも︑患者の自己決定権侵害を根拠に精神的な損害 9︶
に対する賠償請求が認められる ︵
︒ 10︶
⑵ 説明義務の範囲 それでは︑具体的に︑医師はどの程度の説明義務を負うことになるのか︑医師の説明義務の範
囲が問題となる︒医師の患者に対する一般的な説明項目としては︑たとえば︑検査・治療等について︑患者の現在の状
態︑予定している治療法の概要︑副作用︑危険性︑代替的治療法の存否とその期待できる効果︑治療しなかった場合の
転帰等が挙げられている ︵
︒説明義務が患者の自己決定権を保障するために課せられるならば︑理念的には︑以上に挙げ 11︶
た内容の説明が︑可能な限り広範に患者に対して行われることが望ましいと言えよう︒しかし︑実際には︑個々の患者
の属性︵理解力・判断力やそのつどの精神状態︶に応じて︑説明すべき内容も異なるし︑現代医学の医療水準からして︑
具体的な治療の説明を行うのが困難な場合もある︒さらには︑自己決定権の保障を目的として行われた説明が︑時とし
て︑患者の不利益を生じさせるおそれもある︒たとえば︑患者側の際限のない情報提供の要求に対して︑医師の患者に
対する説明の内容・範囲が非常に広範にわたることとなる結果︑患者自身が意思決定をするにあたって︑何が真に重要
な情報なのか分からなくなるという事態を招来しうるのである︵情報の氾濫︶︒したがって︑医師の説明義務の範囲を
︵一五五一︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九〇同志社法学 六〇巻四号
確定するにあたっては︑以上の諸点を十分に考慮しなければならない︒
ア 学説 医師の説明義務の範囲に関する人的基準として︑学説上︑以下のような諸説が主張されている ︵
︒すなわ 12︶
ち︑①合理的医師を基準とする説︵争いとなっている当該具体的状況において合理的医師ならばどのような説明をなし
たかを基準とする説︶︑②合理的患者を基準とする説︵当該具体的状況において合理的患者ならば自己決定権の行使の
ためにどのような説明を必要としたかを基準とする説︶︑③具体的患者を基準とする説︵当該患者がその自己決定権の
行使において重要視する情報の説明がされたかを基準とする説︶︑④二重基準説︵医師が患者との相互のコミュニケー
ションによって知りまたは知りうべき全事情に基づけば︑当該患者がその自己決定権の行使において重要視するであろ
うことが認識可能であったその情報が説明されたかを基準とする説︶である︒いずれの基準によるのが妥当かについて
は︑学説上争いがある︒
イ 判例 裁判実務において︑医師の説明義務の範囲を判断する基準は︑診療技術上の注意義務と同様︑医療水準 で決定されるとの理解が一般的である︒学説もこれを承認する ︵
︒医師の注意義務については︑一般に︑﹁診療当時のい 13︶
わゆる臨床医学の実践における医療水準 ︵
﹂に基づいて︑医業の性質上︑﹁危険防止のために実験上必要とされる最善の 14︶
注意義務 ︵
﹂を負うとされている︒このような﹁臨床医学の実践における医療水準﹂は︑かつて未熟児網膜症をめぐる一 15︶
連の裁判例の中で︑光凝固・冷凍凝固法という医療水準として未確立な新規治療法につき︑医師の説明義務の範囲を画
一的に判断する理論として形成されていったが︵いわゆる﹁昭和五〇年線引き論﹂︶︑今日では︑医療水準は必ずしも全
国一律に決せられるべき性質のものではなく︑﹁当該医療機関の性格︑所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情﹂を
も考慮したうえで相対的に決定されるというのが基本的な判例の立場である ︵
︒ 16︶
もっとも︑近時の判例では︑医療水準として確立されていない治療方法についても︑一定の場合には︑医師の説明義 ︵一五五二︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九一同志社法学 六〇巻四号 務の範囲を拡大させる傾向にある︒乳がんにつき︑胸筋温存乳房切除術が行われた事案︵以下では︑﹁乳房温存療法事件﹂
という︒︶で︑最高裁平成一三年一一月二七日判決 ︵
は︑医療水準として未確立な療法の説明についても︑﹁一般的にいう 17︶
ならば︑⁝⁝常に説明義務を負う﹂とは言えないが︑例外的に︑﹁当該︹代替的︺療法︵術式︶が少なからぬ医療機関
において実施されており︑相当数の実施例があり︑これを実施した医師の間で積極的な評価もされているものについて
は︑患者が当該療法︵術式︶の適応である可能性があり︑かつ︑患者自身が当該療法︵術式︶の自己への適応の有無︑
実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合などにおいては︑たとえ医師自身が当該療法︵術式︶
について消極的な評価をしており︑自らはそれを実施する意思を有していないときであっても︑なお︑患者に対して︑
医師の知っている範囲で︑当該療法︵術式︶の内容︑適応可能性やそれを受けた場合の利害得失︑当該療法︵術式︶を
実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務があるというべき﹂とした︒
こうした医師の説明義務の範囲の拡張傾向は︑患者の実質的な自己決定を基礎に置いた考え方からすれば︑妥当な方
向性を示していると考えられる︒ただ理論的には︑医療水準として確立していない治療方法に対する医師の説明義務を︑
医師が認識し得た場合にまで拡張することができるのかについて議論の余地がある ︵
︒これに関しては︑認識可能性で足 18︶
りるとする見解も存するが ︵
︑医師側の予見可能性ないし調査義務の負担を考えると︑乳房温存療法事件の判決と同様︑ 19︶
患者の希望を医師が知った場合に限って︑例外的に説明義務を負うと解するのが妥当であろう ︵
︒ 20︶
また︑医療水準としては確立されているが︑治療方法が複数ある場合の医師の説明義務についても議論がある︒一般
的には︑医師は︑専門的な裁量に基づいて選択した治療方法について︑その裁量に適した説明をすれば足りると解され
るが ︵
︑近時の判例では︑患者側が代替的療法に対して強い希望を抱いているなどの事情がある場合には︑医師は︑より 21︶
詳細な説明義務を負うとするものがある ︵
︒ 22︶
︵一五五三︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九二同志社法学 六〇巻四号
以上の考察から︑判例は︑患者の自己決定権保障の観点から︑できるだけ広範かつ詳細な情報の提供を医師に求める
傾向にあることが分かる︒ただし︑危険性の少ない一般的な治療方法が問題となっているような場合には︑通常︑医師
は︑専門家としての自己の裁量に基づいて治療方法を決定し︑その重要な部分を分かりやすく患者に伝えれば︑説明義
務を尽くしたと言えよう︒問題となるのは︑患者が治療方法の選択に当たって自らの希望を医師に伝えている場合︑あ
るいは︑医師がそのことを知りうる場合であり︑このような場合には︑特段の事情がない限り ︵
︑医師は︑患者に対して︑ 23︶
当該患者が自己決定権を行使するにあたり重要視するであろう事柄につき詳細な説明をしなければならない︒とりわ
け︑手術自体が生命︑身体等への重大な危険を伴うような場合には︑治療方針に対する患者の積極的な関与があること
が通常であろうから︑
︱
とくに産婦人科や脳神経外科の領域で︱
医師に対して詳細な説明義務が求められるのも首肯できる︒
2
未破裂脳動脈瘤に関する下級審裁判例の分析 以上︑簡単ながら︑これまでの学説および判例の動向を確認した︒以下では︑これまでに公表された未破裂脳動脈瘤の予防手術に対する下級審裁判例︑その中でも︑とくに医師の説明義務について判断したものに焦点をあてて︑整理・
分析していきたい︒その際︑医師の説明義務違反の態様にも着目して分類する︒検討の対象とする裁判例は︑︻
1
︼大 阪地裁堺支部平成一三年九月一二日判決 ︵24︶
︑ ︻
2
︼札幌地裁平成一四年三月二八日判決 ︵25︶
︑ ︻
3
︼広島地裁平成一五年二月二六日判決 ︵
26︶
︑ ︻
4
︼水戸地裁平成一七年二月二三日判決 ︵27︶
︑ ︻
5
︼大阪地裁平成一七年七月二九日判決 ︵28︶
︑ ︻
6
︼和歌山地裁平 成一八年三月七日判決 ︵である︒ 29︶ ︵一五五四︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九三同志社法学 六〇巻四号 ︵
1
︶ 積極的に誤った情報が提供された場合 医師が積極的に誤った情報を提供した場合に︑説明義務違反を肯定する裁判例がある︒未破裂脳動脈瘤︵脳帝動脈尖端部動脈瘤︶の血管内手術を受けたところ︑
A
が脳梗塞を起こして死亡した事案︻3
︼につき︑広島地裁は︑﹁⁝⁝血管内治療による塞栓術の合併症発症率と死亡率の合計は︑約四ないし六%程度であるとの報告が多いが︑本件手術と同
じ後頭蓋窩︵椎骨脳底動脈系︶の動脈瘤に対する血管内治療に限れば︑合併症率と死亡率の合計は︑七・二%ないし二
五%と非常に高く︑被告病院の担当医師の説明で示された危険率︵死亡も含めた合併症率が三ないし五%︶との間には
大きな格差が認められ︑脳底動脈尖端部動脈瘤の場合には︑自然経過観察︑開頭クリッピング手術︑血管内治療による
塞栓術のどれを選択しても危険性は相当高かったというべきであ︵り︶⁝⁝︑説明に用いた危険率の数値自体に客観的︑
合理的裏付けがあったか疑わしい﹂と述べて︑担当医師らの説明義務違反を肯定した︒不正確な説明を受けた患者は︑
自己決定をする上で前提となる情報を正確に知覚することができないから︑誤った情報を提供した医師に義務違反が認
められるのは当然であろう ︵
︒もっとも︑仮に客観的に誤った説明がされた場合であっても︑医師の過失が否定されるこ 30︶
とはありうる︒手術当時︑発展途上の段階にある治療方法について︑裁判時にその治療方法に関する危険率等の説明が
客観的に誤ったものであることが判明しても︑当時の医療水準に照らして合理的な説明がされている限り︑医師の義務
違反は否定される ︵
︒ただし︑当該手術の危険率等を現段階で正確に測定できない場合であっても︑医師は︑場合により︑ 31︶
患者に対して︑その旨を誠実に説明する義務がある ︵
︒ 32︶
︵
2
︶ 一般的な説明義務が尽くされていない場合 医師の説明義務に関する一般的定式に従えば︑医師は︑患者の疾病の治療のために手術を実施するに当たっては︑診︵一五五五︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九四同志社法学 六〇巻四号
療契約に基づき︑特別の事情のない限り︑患者に対し︑当該疾患の診断︵病名と病状︶︑実施予定の手術の内容︑手術
に付随する危険性︑他に選択可能な治療方法があれば︑その内容と利害得失︑予後などについて説明すべき義務があり︑
また︑医療水準として確立した療法︵術式︶が複数存在する場合には︑患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の上
判断することができるような仕方で︑それぞれの療法︵術式︶の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求めら
れる ︵
︒したがって︑一般的説明事項として最低限このような説明義務が尽くされていなければ︑医師の義務違反が認め 33︶
られることになる︒たとえば︑前掲︻
2
︼判決では︑開頭手術を行う際の説明として︑脳外科手術一般に想定される内容の説明は行われているが︑﹁開頭手術後想定される後遺障害及びその可能性﹂について具体的な説明がされていない
こと︑さらに﹁動脈瘤が破裂する可能性がどの程度かを考えることができるような具体的な数値をあげるなどの説明を
しなかったこと﹂を理由に医師の説明義務違反が肯定されている︒また︑前掲︻
4
︼判決では︑﹁死亡する可能性ないし危険性﹂について十分かつ正確に理解させるに足る説明をしなかったこと︑前掲︻
5
︼判決では︑医師が︑未破裂脳動脈瘤に対する予防手術として︑コーティング・ラッピング術を採用したことに関して︑①未破裂脳動脈瘤の生涯破裂
率に関する説明が不十分・不正確であったこと︑および︑生涯破裂率と本件手術による合併症発生率とが同程度である
ことの説明を怠ったこと︑②左内頚動脈狭窄の治療のために抗血小板剤の投与のみを実施するか︑より詳しい検査を実
施した上で︑当面︑特別な治療を行わずに経過観察を続行するという有力な選択肢があること︑その利害得失について
の説明を怠ったこと︑③当該手術方法の破裂予防効果は︑クリッピング術よりも確実性が低いにもかかわらず︑その旨
の説明を怠ったことを理由に説明義務違反を肯定している︒
これに対して︑医師の説明義務違反を否定する判決も存する︒たとえば︑前掲︻
6
︼判決は︑﹁未破裂脳動脈瘤の大きさ﹂に関して︑﹁︵患者が︶治療方法の選択についての利害得失を評価する上で意義に乏しい詳細情報までをも説明す ︵一五五六︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九五同志社法学 六〇巻四号 る義務はない︒﹂とし︑医師の説明義務違反を否定する︒しかしながら︑﹁未破裂脳動脈瘤の大きさ﹂が︑﹁治療方法の
選択についての利害得失を評価する上で意義に乏しい詳細情報﹂と言えるかどうか自体︑異論もあり得よう︒また︑客
観的に存在する事実を説明する義務を課したとしても︑医師にとって特別な負担にはならない︒その意味で︑本件は︑
医師に説明義務違反が肯定されてもおかしくなかった事案である︒他の裁判例と比較すると︑︻
6
︼判決は︑医師の説明義務の範囲を限定して捉えたところに一つの特徴がある︒
︵
3
︶ 個別具体的な患者に応じた説明がされていない場合 さらに︑近時の下級審裁判例では︑上記のような一般的な説明がされただけでは医師の説明義務が十分尽くされたとは言えず︑個別具体的な患者の症例に即した内容の説明までをも要求するものがある︒たとえば︑前掲︻
1
︼判決は︑右内頸動脈と後交通動脈の分岐部に発見された不整形の未破裂動脈瘤に対して予防手術が行われた事案であり︑手術前
の脳血管造影検査において︑前脈絡叢が造営されていなかったという特別な事情が存在した︒大阪地裁は︑つぎのよう
に述べて︑医師らの説明義務違反を肯定している︒すなわち︑﹁⁝⁝前脈絡叢動脈が内頚動脈の起始部で閉塞された場合︑
側副血行の発達の程度に応じて前脈絡叢動脈症候群⁝⁝が発現するとされているところ︑本件では︑術前の脳血管造影
法による検査において︑前脈絡叢動脈が同定されていなかったのであるから︑医師
X
は︑術前︑通常の未破裂脳動脈瘤に対する手術よりも高い確率で片麻痺等の合併症が出現する可能性があることを説明すべき義務を負っていたと解する
のが相当である︒﹂︒また︑﹁被告︹医師
︱
筆者注︺らは︑手術に伴う合併症の危険性が数%存在する旨の説明をもって原告が危険性を認識することは十分に可能であり︑被告
X
の説明に不備はない旨主張する︒しかしながら︑手術に伴う合併症の危険性が数%存在する旨の説明は︑当時の脳外科医が手術が大体無事に済むであろうという場合に標準的に
︵一五五七︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九六同志社法学 六〇巻四号
用いていた数値であり︑前脈絡叢動脈が同定されていない本件の場合には︑もう少し︑片麻痺等の合併症が発症する可
能性を高く説明しておかなければならない⁝⁝というべきであるのに︑被告
X
は︑この点についてまで説明をしたとは認められない︒したがって︑その結果︑原告の自己決定権が侵害されたというべきである︒﹂︒
本判決では︑医師の説明義務の根拠が患者の自己決定権の実質的保障という観点から捉えられており︑医師の説明義
務の範囲についても︑一般的な説明に限定することなく︑個別具体的な患者に即した説明がされるべきであるとの方向
性が示されている︒そして︑こうした方向性は︑先述した近時の最高裁判例の傾向とも整合すると言えよう︒
3
本件最高裁判決の検討︵
1
︶医師の説明義務の範囲 ア 本判決の重要な意義は︑第一に︑未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する﹁一般的な説明事項﹂として︑コイル塞栓術自体に付随する危険性︵たとえば︑動脈の塞栓による脳梗塞の発生︶のほか︑動脈瘤が破裂した場合に開頭手
術を行う必要性が生ずることを説明しなければならないと判示する部分にある︒このような説明義務が従来の判例との
関係で説得的に根拠づけられるかが問題となる︻検討課題①︼︒本判決も引用する乳房温存事件判決で示されていると
おり︑﹁医療水準として確立した療法︵術式︶が複数存在する場合には︑患者がそのいずれを選択するかにつき熟慮の
上判断することができるような仕方で︑それぞれの療法︵術式︶の違いや利害得失を分かりやすく説明することが求め
られる﹂が︑コイル塞栓術の危険率のみを説明しただけでは︑真の危険率︵場合によって起こりうる開頭手術の危険率︶
をも考慮した上で自己決定することができない︒したがって︑コイル塞栓術自体の危険性に加えて︑動脈瘤が破裂した
場合の開頭手術の必要性を説明事項に加えた本判決の判断は︑従前の判例の枠組みに沿った正当なものであった︒この ︵一五五八︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九七同志社法学 六〇巻四号 ように︑当該事項が未破裂脳動脈瘤予防手術の﹁一般的説明事項﹂として加えられる以上︑今後の裁判実務では︑医師がこの点についての説明を行っていない場合には︑それを行わないことにつき合理的な理由がない限り︑説明義務違反が肯定されるものと考えられる︒本稿で考察した下級審裁判例の事実関係を見る限り︑当該事項についての説明を行っているものはない︒したがって︑今後︑医療機関側が注意を払うべき説明事項の一つとなる︒ イ
A
に対する開頭手術がかなり困難であるという本件具体的事情の下で︑コイル塞栓術の一般的な危険率以上に︑当該具体的患者に応じた手術の危険率までも説明する義務があるのかが問題となる︻検討課題②︼︒分娩方法に関する
前掲最高裁判決からも明らかなように︑患者が治療方法の選択に当たって自らの希望を医師に伝えている場合︑あるい
は︑医師がそのことを知りうる場合には︑特段の事情がない限り︑医師は︑患者に対して︑当該患者が治療方法を決定
するにあたり重要視するであろう事柄につき︑より詳細な説明義務を負う︒前述した未破裂脳動脈瘤に関する下級審裁
判例︻
1
︼でも︑患者の自己決定権の観点から同様に︑医師の詳細な説明義務が導かれている︒本判決も︑基本的には︑これらの判例と同様の考え方を基礎に置くものである︒
ウ 以上の基本的理解に従えば︑本件において︑
A
のコイル塞栓術の選択が正確に与えられた情報を熟考した上での選択であったかには疑問が残る︒なぜなら︑コイル塞栓術選択時点では︑
A
は開頭手術かコイル塞栓術かという二者択一的な選択肢しか有しておらず︑保存的経過観察を考慮に入れた上での自己決定を行ったとは言い難いからである︒こ
れは︑原審の事実認定において︑開頭手術が困難となった旨を聞かされた際の
A
の言動からも明らかである︵事実関係⑹
︶︒本件において︑コイル塞栓術が開頭手術と比較して少なくとも同程度以上の危険性をもつこと︑さらにコイル塞栓術の危険率自体も通常の場合と比べて飛躍的に増大していることを
A
が知らされていたならば︑保存的経過観察を有力な選択肢の一つに加えて︑再度熟考していた可能性が高い︒したがって︑
A
に与えられるべきであった当該情報は︑︵一五五九︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九八同志社法学 六〇巻四号
A
の自己決定権を保障する重要な情報であったということができ︑当該情報をA
に提供しなかった医師らには︑説明義 務違反が認められる ︵︒ 34︶
︵
2
︶﹁熟慮する機会﹂を与える義務 二つ目に︑最高裁の次のような判示部分に注目したい︒すなわち︑本件医師らは︑上記の説明義務を尽くした上で︑﹁開頭手術とコイル塞栓術のいずれを選択するのか︑いずれの手術も受けずに保存的に経過を見ることとするのかを熟慮す
0 0 0
る機会を改めて与える
0 0 0 0 0 0 0 0 0
﹂義務 0 0
を負う︑と述べられている部分である︒この﹁熟慮する機会﹂を与える義務とは何か︑同 0
義務と説明義務とはいかなる関係にあるのかが問題となる︵︻検討課題③︼︶︒
すでに学説で指摘されているとおり︑本判決に言う﹁熟慮する機会﹂を与える義務の特徴は︑医師が患者に対して適
切かつ十分な説明を尽くした上でなお︑患者が熟慮に基づく自己決定をするのに必要な配慮︵時間的配慮︶をなすべき
としたところにある ︵
︒情報そのものの量・範囲あるいは正確性という観点だけでなく︑説明義務の重要な一要素として 35︶
﹁熟慮する機会﹂を与える必要性を明言している点に本判決の二つ目の重要な意義を見出すことができる︒
医師の﹁熟慮する機会﹂を与える義務に関連して︑本判決が他の医療訴訟一般についても妥当するのかを検討する必
要がある︒結論として︑本判決の射程を未破裂脳動脈瘤以外の医療訴訟にも及ぼすことは否定されないだろう︒判旨を
見る限り︑最高裁は︑本判決の射程を本件に限定する意図を有してはいないと考えられるからである︒ただ︑このよう
な行為義務の拡張が︑医師の︵説明︶義務違反をいたずらに肯定するための論拠として用いられる危惧も存する︒した
がって︑本件においては︑未破裂脳動脈瘤に対する手術が予防的治療方法であるという特殊性︑また︑その特殊性ゆえ
に熟慮期間の設定が正当化されたという側面があることを確認しておきたい︒ ︵一五六〇︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
二九九同志社法学 六〇巻四号 熟慮期間として具体的にどの程度の長さが必要とされているのかについては︑本判決から明らかでない︒十分な熟慮に基づく決定をすることができたか否かも︑個々の患者によって様々であるから︑症例に応じた一律の熟慮期間の設定というのは考えにくい︒ただ︑ある程度の基準は必要となろう︒さらに︑たとえば︑熟慮期間内に動脈瘤の破裂を来たした場合︑医師の注意義務違反が問われるかという点も問題となってこよう ︵
︒ 36︶
以上の諸点について︑今後︑最高裁の規範を具体化していく十分な議論が必要である︒
︵
1
︶ ﹃医学大辞典﹄︵南山堂︑二〇〇六年︶二四二七頁を参照︒未破裂脳動脈瘤に対する予防手術として一般的に考えられている治療方法は︑①クリッピング術︑②コーティング・ラッピング術︑③血管内治療︵コイル塞栓術︶の三つである︒①クリッピング術とは︑未破裂脳動脈瘤
の破裂を防止するため︑開頭術により動脈瘤頚部︵ネック︶をクリップして︑動脈瘤への血行を遮断するものである︒②コーティング・ラ
ッピング術とは︑頚部がはっきりしないものや︑周囲の血管との位置関係などの理由でクリッピングができない場合に︑動脈瘤全体を筋肉
や綿花のシートでくるみ︑接着剤で固め再破裂を予防するものである︒③血管内治療︵コイル塞栓術︶とは︑電気的に離脱可能なプラチナ
製マイクロコイルを使い︑脳動脈瘤を塞栓するものである︒一九九七年に脳動脈瘤治療用のGDCコイルが日本で認可されてから一一年を
経過し︑コイル塞栓術が脳動脈瘤治療の重要な選択肢として確立されている︒もっとも︑すべての未破裂脳動脈瘤がコイル塞栓術で治療で
きるわけではなく︑治療方法の選択に際しては︑従来の開頭クリッピング術も有力な選択肢として十分考慮される︒コイル塞栓術に関する
最近の文献として︑難波克成・根本繁﹁脳動脈瘤のコイル塞栓術﹂﹃医学のあゆみ﹄︵医歯薬出版株式会社︑二〇〇七年︶四三六頁も参照︒
︵
2
︶ ﹃脳ドック・ガイドライン﹄五七頁︒︵
3
︶ 一〇月五日の学術シンポジウム﹁医療事故問題とその対策・対応﹂︒︵
4
︶ 民集二二一号七〇五頁︑判タ一二二五号二二〇頁︑裁時一四二二号一一頁︑判時一九五一号五九頁︑訴月五四巻三号六三〇頁︒︵
LEX/DB 5
︶ 東京地判平一四年七月一八日文献番号二八〇七二五三二︒︵
6
︶ 刊行物未登載︵本文中の記述は︑最高裁の判旨部分を参照︒︶︒︵
7
︶ 西口元・判タ一一七八号︵二〇〇五年︶二二一頁を参照︒︵
8
︶ 山下登﹁医師の説明義務をめぐる最近の議論の展開︵一︶﹂六甲台論集三〇巻一号一三二頁以下︒︵一五六一︶
未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
三〇〇同志社法学 六〇巻四号
︵
9
︶ 稲垣喬﹃医師責任訴訟の構造﹄︵有斐閣︑二〇〇二年︶三九頁︑潮見佳男﹁説明義務・情報提供義務と自己決定﹂判タ一一七八号︵二〇〇五年︶一三頁︑新見育文﹁インフォームドコンセントに関する裁判例の変遷﹂年報医事法学一六号九九頁︒
︵
10
︶ 宗教上の信念に基づく輸血拒否の事案で︑最高裁は︑輸血を伴う医療行為を受けるか否かについての意思決定の権利を侵害したとして︑精神的苦痛に対する慰謝料請求を認めた︵最判平成一二年二月二九日民集五四巻二号五八二頁︶︒
︵
11
︶ 手嶋豊﹁医師の責任﹂﹃新・裁判実務体系専門家責任訴訟法﹄︵青林書院︑二〇〇四年︶二四六頁︒︵
12
︶ 学説の分類については︑新見育文﹁医師の説明義務と患者の同意﹂﹃民法の争点Ⅱ﹄二三一頁を参照︒︵
13
︶ たとえば︑手嶋豊・前掲注︵11
︶二四六頁︑同﹁医療と説明義務﹂判タ一一七八号︵二〇〇五年︶一八六頁以下︒医療水準論に関する文献として︑岡林伸幸・判タ一一七八号一九〇頁︑稲垣喬・判タ八八四号五九頁︑手嶋豊・法学教室一八三号八四頁︑同・法学教室一八六号
別冊二一頁︑新見育文・ジュリ一〇九一号六三頁︑潮見佳男﹃民事過失の帰責構造﹄︵信山社︑一九九五年︶五八頁以下︑寺沢知子﹁未熟児
網膜症姫路日赤病院事件︱最二小判平成七年六月九日民集四九巻六号一四九九頁︱﹂阪大法学四六巻四号︵一九九六年︶六二七頁︑同﹁医
療水準の相対化と﹃医療水準論﹄の質的転換︱最高裁平成七年六月九日判決と最高裁平成八年一月二三日判決を契機として︱﹂阪大法学四七
巻一号︵一九九七年︶六九頁︑同﹁説明義務と医療水準﹂﹃医事法判例百選﹄︵二〇〇六年︶一一八頁︑三重利典﹁脳外科における医療事故と
医療水準﹂﹃医事法の方法と課題︱植木哲先生還暦記念︱﹄︵信山社︑二〇〇四年︶三〇三頁︑植木哲﹁医療水準︵論︶に関する一管見﹂判タ
一一九一号︵二〇〇五年︶五一頁以下︑同﹃医療の法律学︹第三版︺﹄︵有斐閣︑二〇〇七年︶一五九頁以下などを参照︒
︵
14
︶ 最判昭五七年三月三〇日判時一〇三九号六六頁︒︵
15
︶ 最判昭三六年二月一六日民集一五巻二号二四四頁︒︵
16
︶ 最判平七年六月九日民集四九巻六号一四九九頁︑さらに最判昭六三年伊藤正己裁判官補足意見︒︵
17
︶ 最判平一三年一一月二七日民集五五巻六号一一五四頁︑判タ一七九号一九八頁︑判時一七六九号五六頁︒評釈として︑水野謙・法教二六三号一九六頁︵二〇〇二年︶︑石田剛﹁診療当時に医療水準として未確立の療法を説明する義務﹂法セ五六六号一一二頁︵二〇〇二年︶︑手嶋
豊﹁判例評釈﹂民商一二六巻六号八七四頁︵二〇〇二年︶︑同﹁判例評釈﹂ジュリ一二二四号九〇頁︵二〇〇二年︶︑山口斉昭﹃医事法判例
百選﹄︵有斐閣︑二〇〇六年︶一二四頁などを参照︒
︵
18
︶ 熊代雅音﹁医療訴訟における説明義務について﹂ジュリ一三一五号一五一頁︒︵
19
︶ 水野謙・法教二六三号一九七頁は︑﹁患者の生き方に直接かかわる医療情報が医師の側に偏在している現実を踏まえると︑医師が認識しう ︵一五六二︶未破裂脳動脈瘤に対する予防手術に関する医師の説明義務
三〇一同志社法学 六〇巻四号 る形で患者が特定の療法の情報を求めた場合にかぎって医師が説明義務を負うと考えることには︑やや躊躇を覚える︒少なくとも患者が︵そ
れを知らされれば︶特に重視するであろう情報については︑医師はなお説明義務を負うと解するのが相当ではないだろうか︒﹂と述べる︒
︵
20
︶ 熊代・前掲注︵18
︶によれば︑﹁現実には︑患者の自己決定権行使意欲には濃淡があるから︑医師の方で患者の意思を忖度することを求めるよりは︑自己決定権を行使したい患者から医師に情報提供を積極的に求め︑医師がそれに十分に応答するというモデルを基礎に据えた方が︑
患者と医師の関係としてはより望ましい﹂という︒
︵
21
︶ たとえば︑大阪地判昭和六〇年一〇月二一日判タ五九五号五九頁︵脳腫瘍の座位手術による空気塞栓により死亡した事案︶は︑﹁本件手術をどのような体位で実施するかは相当高度な医学的判断に基づく医師の裁量行為であつて︑原則としてその体位を採用する理由まで逐一患
者ないしその家族に対して説明する義務はな﹂いという︒
︵
22
︶ 最一判平一七年九月八日︑判時一九一二号一六頁︑判タ一一九二号二四九頁︒本件は︑胎児が骨盤位であることから︑帝王切開術による分娩を強く希望していた患者らに対して︑医師が骨盤位の場合の経膣分娩の危険性や帝王切開術との利害得失について十分な説明を行わな
かったため︑分娩方法に関する説明義務違反を理由として︑患者らが分娩方法の意思決定権侵害に基づく損害賠償を請求した事案である︒判
決は︑﹁帝王切開術を希望するという患者らの申出には医学的知見に照らし相応の理由があったということができるから︑医師は︑これに配
慮し︑患者らに対し︑分娩誘発を開始するまでの間に︑胎児のできるだけ新しい推定体重︑胎位その他の骨盤位の場合における分娩方法の
選択に当たっての重要な判断要素となる事項を挙げて︑経膣分娩によるとの方針が相当であるとする理由について具体的に説明するととも
に︑帝王切開術は移行までに一定の時間を要するから︑移行することが相当でないと判断される緊急の事態も生じ得ることなどを告げ︑そ
の後︑陣痛促進剤の点滴投与を始めるまでには︑胎児が複殿位であることも告げて︑患者らが胎児の最新の状態を認識し︑経膣分娩の場合
の危険性を具体的に理解した上で︑医師の下で経膣分娩を受け入れるか否かについて判断する機会を与えるべき義務があったというべきで
ある︒﹂とした︒なお︑本判決については︑小笠豊﹃医事法判例百選﹄︵有斐閣︑二〇〇六年︶一三〇頁︑河内宏﹁帝王切開を強く希望した夫
婦に経膣分娩を勧めた医師の説明義務﹂私法判例リマークス︵二〇〇七年︶二二頁︑林道晴﹁医師の説明義務と患者の自己決定権︱胎児︵逆
子︶の経膣分娩に関する医師の説明義務違反を認めた最高裁判決︵最一小判平成一七年九月八日︶を素材として﹂ジュリ一三二三号︵二〇〇六
年︶一二四頁以下︑土屋裕子﹁医療訴訟にみる患者の自己決定権論の展開と展望︱最高裁平成一七年九月八日判決を契機に﹂ジュリ一三二三
号︵二〇〇六年︶一三一頁以下︑和泉澤千恵﹁判例評論﹂年報医事法学二一号一五三頁︑加藤愼・
NBL
八二一号六頁︑小池泰・民商一三四巻三号一五八頁︑平沼高明・民情二三六号五四頁︑藤澤祐介﹁判例評釈﹂判タ一二四五号七二頁等を参照︒
︵一五六三︶