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MOT 用語集 ver1.0

MOT サイト iLibrary より

当サイト運営者の運営するサイトへお越しいただき、ありがとうございます。

サイト:i-Library に関してですが、サイト内の“MOT 用語集”(下の URL)につきまし

て、インデックス表示となっております。

http://www.ilibrary.jp/MOTtextBooks/words/WordsIndex.html

サイト製作者については以下のブログを参照ください。

http://tech-d.blogspot.com/

さて、サイトにて用語集を作成する段階で以下の 2 点のご意見をいただきました。

「分野別でまとめて欲しい」

「ハードコピー(紙媒体)で利用したい」

そこで、「分野別」というほど用語は多くありませんが(分野に区切れるほど充実して

いませんが・・・)、分野別にまとめ、ハードコピーでも用いることができるよう PDF 化し

ました(全 68 ページ;基本的にはサイトの文字、図をコピーしたものなので、サイトで

有効であったリンクはこの PDF では無効になっています)。

* 尚、ご利用は、サイト利用者ご自身の研究用(学術、またはビジネス現場における)に用いる様お 願いいたします。また、研究やリポートで利用する際(ほとんどないと思いますが)は、必ず原著に あたってください。 * サイトで紹介した用語自体は有名なもので、インターネット(Wikipedia など)を通じて、多く情報の 入手が可能なものとなっておりますが、参考文献など、できるだけ記載いたしましたので、そちらか らもご活用ください。

MOT 用語集 ver1.0

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目次

MOT 用語集 ... 1 目次... 2 イノベーションの概念... 3 イノベーション−Innovation...3 イノベーションのジレンマ−Innovator'sDilemma...5 経営、戦略、その他概念について... 7 ポーターの戦略論−基本戦略...7 ポーターの戦略論−5 つの力+α...10 SWOT 分析...13 ポーターの戦略論−2 種類の市場選択...16 ポーターの戦略論−議論...18 SCP パラダイム...20 製品ライフサイクル...21 差別化とは−Differentiation...24 消費者採用プロセス−イノベーションの採用時期...26 品質保障、管理及び各種技法... 29 品質管理の淵源とその考え方... 29 QC, TQC、そして TQM...29 狩野モデル−品質とは...34 技法、その他... 36 タグチメソッド...36 QFD−品質機能展開...38 TRIZー発明技法...41 SixSigmaProcess−シックスシグマプロセス...45 COPQ...47

Psudo Kaizen Project−擬似カイゼン...50

weka を起動する−データマイニング...52

無形資産である知的資産をどう評価するか... 55

無形資産への注目−Immaterial Assets...55

無形資産評価の目的...57

インカムアプローチ−Income Approach...59

インカムアプローチ−Income Apporoach−MC(Monte Carlo method)...59

コストアプローチ−Cost Approach...61

Market Approachーマーケットアプローチ...61

TRRU(TM)メトリクス...62

ルール・オブ・サム...63

PatVM(TM)...63

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イノベーションの概念

イノベーション−Innovation

イノベーション、新結合、創造的破壊(Creative Destruction)・・・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter) イノベーションの概念は、シュンペーターにまで遡る。 この概念は、シュンペーターが「新結合」として提示したもので、イノベーションとは基本的に「変化するこ と」である。 「・・・この新しいものを生み出す機会となるものが、変化である。イノベーションとは、意識的かつ組織的に変化 を探すことである。それらの変化が提供する経済的、社会的イノベーションの機会を体系的に分析することであ る」[1] 「イノベーションの語源である innovare を引くと、その意味は<何かを新しくする>ことである。(略)イノベーショ ンとは、機会を新しいアイデアへと変換し、さらに、それが広く実用に供せられるように育てていく過程である。」 [2] 「経済発展の本質は、以前には定められた静態的用途に充てられていた生産手段が、この経路から引き抜か れ、新しい目的に役立つように転用されることにある。この過程を、われわれは、新結合の遂行と呼ぶ」(後に 「新結合」は「イノヴェーション」という言葉に置き換えられる)[3] • シュンペーターが示した新結合の例[4] 1.新しい財貨の生産 2.新しい生産方法 3.新しい販路の開拓(既存であることは問わない) 4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得 5.新しい組織の実現(独占的地位の形成または独占の打破) • 創造的破壊(Creative Destruction)の過程とは?[5]

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て、たえず内部から経済構造を革命化する産業上の突然変異*」とし、当時の不完全競争、寡占理 論は創造的破壊が存在しない仮定を置いていると批判している。 *厳密にいえば、これらの革命は不断に行われるものではない。それらは、比較的平穏な期間の介在によって相 互に分離された不連続的な突進として起こる。しかしつねに革命があるか、もしくは革命の結果の吸収がある−これ ら二つのものが一緒になっていわゆる景気循環を形成する−という意味では、全体として過程は不断に動いている といえる(著者の注釈)。 このような競争の作用の仕方について、「この競争(新商品、新技術、新供給源、新組織型からくる競 争)は、費用や品質の点における決定的な優位を占めるものであり、かつまた現存企業の利潤や生産 量の多少をゆるがす程度のものではなく、その基礎や生存自体を揺るがすものである。したがってこの 種の競争は他のものに比してはるかに効果的である。[6]」としている。 *シュンペーターに関する概要は書籍 [3]が理解しやすい。 [1] P・F・ドラッカー,上田惇生訳, 『新訳 イノベーションと起業家精神〈上〉その原理と方法 (ドラッカー 選書)』ダイヤモンド社, 1997, p51. [2] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004,p49. [3] 根井雅弘,『シュンペーター―企業者精神・新結合・創造的破壊とは何か』,講談社,2001.より引用。 (J.A.Schumpeter, "Uber das Wesen der Wirtschaftskrisen", Zeitschrift fur Vorlkswirtshaft,

Sozialpolitik und Verwaltung,1910, S.284.)

[4] J.A. シュムペーター,塩野谷祐一,東畑精一,中山伊知郎 訳『経済発展の理論―企業者利潤・資

本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上〉 (岩波文庫)』, 岩波文庫,1977,pp182-183.

[5] J.A. シュムペーター,中山伊知郎,東畑精一 訳『資本主義・社会主義・民主主義』東洋経済新報社, 1997,p130.

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イノベーションのジレンマ−Innovator'sDilemma

イノベーションのジレンマ イノベーションとは、革新的技術などで語られることが多いが、その語源はラテン語の「innovare」で、< 何かを新しくする>という意味である[1]。 従って、 カイゼン活動のような漸進的な活動であっても、それは、イノベーションなのである。 さて、その業界を牽引してきた既存企業は、なぜ、破壊的技術のような劇的に変わってしまうような事態 にうまく対応できないのだろうか? • クリステンセンの分類は: ①(ある技術や変化に対しての対応可能性として)既存企業が対応できないを「破壊的」、有力な既存企業が対 応し、成功する「持続的」、 ②技術的性質として、不連続な技術発展であることを「抜本的」、従来の技術力をもとに築かれたものであること を「漸進的」とに分類している *。 *例えば、ミニミルのようにローエンド市場から、上位市場へ侵食するような、出現当時は「低コスト低 品質」の特徴を持ち、有力な企業が見向きもしない市場を相手にする技術は抜本的で破壊的、本書 で示される HDD の小型化は、漸進的で破壊的な特徴を持つと考える。 これらの関係を下表にまとめた。右書籍で表された各種の技術からみると、抜本的であれ、漸進的であ れ、既存企業の対応性は「持続的」「破壊的」と、どちらの様相もありえることがわかる。著者はこの説明 をバリューネットワークという概念から説明している 。 破壊的イノベーション 持続的イノベーション 漸進的イノベーション 抜本的イノベーション HD Dサ イズ 14inch→ 8inch 8inch→5.2 5inch 5.25inch→ 3.5inch 掘削機:ケ ー ブル式 →油圧 PC:メ イン フレ ーム→ミ ニコ ン 自動車燃 料:ガソリ ン→電 気 高炉→ミ ニミル HD Dの 読み取り 技術 フェライト→ 薄膜 薄膜→M Rヘッ ド 技 術 の ︵ 連 続 ︶ 不 連 続 性 既存企業の対応可能性 破壊的イノベーション 持続的イノベーション 漸進的イノベーション 抜本的イノベーション HD Dサ イズ 14inch→ 8inch 8inch→5.2 5inch 5.25inch→ 3.5inch 掘削機:ケ ー ブル式 →油圧 PC:メ イン フレ ーム→ミ ニコ ン 自動車燃 料:ガソリ ン→電 気 高炉→ミ ニミル HD Dの 読み取り 技術 フェライト→ 薄膜 薄膜→M Rヘッ ド 技 術 の ︵ 連 続 ︶ 不 連 続 性 既存企業の対応可能性

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つまり、HDD が小型化するにつれ、用途がデスクトップ型からラップトップへ変遷していくと、その部材を 供給するサプライヤー、そしてそれを求める顧客が変わってしまうため、従来の顧客をターゲットにして いては対応できないのである。 • その対応はどのようにすれば良いのだろうか? 試行錯誤が可能なプロジェクトを結成し、①少しの進展にでも前向きになれる組織へ任せる、②当該プロジェク トが必要な顧客をもつ組織に任せる、③既存組織の価値基準を適応しないように、その破壊的技術が評価され る市場を発見、開拓する。 • 企業が、なぜこれほどまでに注意を向けなければならないのか? それは、「破壊的イノベーションは、急速な変化(新市場型破壊)、または緩慢な変化(ローエンド型破壊)の形 で現れ、経済変化を引き起こす強力な力となるからである」[2] [1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳,『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジ メント』,NTT 出版,2004,「イノベーションとは何か?」,p49. [2] マイケル・E・レイナー, 高橋淳一,松下芳生 監修, 櫻井祐子 訳,『戦略のパラドックス』,翔泳 社,2008, 第四章「適応の限界」, p124.

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経営、戦略、その他概念について

ポーターの戦略論−基本戦略

ポーターの基本戦略−技術と競争力の観点から マイケル・ポーター(Wikipedia)は、企業戦略におけるイノベーションの分析に、産業界の競争を駆動す る5 つの要因と技術、また、企業が行なわなければならない、幾つかの基本戦略からの選択と技術との 明確な関係を示した。さらに、イノベーションの「リーダー」となるか「追随者」となるかの 2 種類の市場戦 略の選択を示している。[1] 本ページは基本戦略に関する。 ポーターが示した一般的な戦略は以下の 4 つであり、企業はそのなかからひとつを選択しなければなら ない。 1. コスト・リーダーシップ戦略 2. 製品の差別化戦略 3. コスト集中戦略 4. 差別化集中戦略 コスト・リーダシップ戦略−1970 年代に入り、エクスペリエンス曲線という概念が普及し、コスト面で最優位に立つ という目的に沿った実務政策を実行することで、コストのリーダーシップをとる戦略である。 差別化戦略−自社の製品やサービスを差別化して、業界の中でも特異だと見られる何かを創造しようとする戦 略である。 集中化戦略−特定の買い手グループ、製品の種類、特定の地域市場などへ、企業の資源を集中する戦略で ある。特定のターゲットを丁寧に扱うものである。[2] これらの関係を下図に示す([2] p61 図表 2-1,3 つの基本戦略を参考し作成)

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また、基本戦略の選択は、イノベーションの 2 種である「プロダクト」および「プロセス開発」の優先順位に 深く関係している。([1]の p95 表 3.1 ポーターの基本的技術戦略を参考に作成) ポーターの提示は、合理主義的な主張の典型であるが、示されたいくつかのフレームは極めて有効な もので、ポーターの理論に対する反論・弱点の議論は活発である。

戦略の優位性 業 界 全 体 特 定 セ グ メ ン ト 低コスト 差別化 戦 略 タ ー ゲ ッ ト コスト・リーダーシップ戦略 差別化戦略 コスト集中戦略 差別化集中戦略 戦略の優位性 業 界 全 体 特 定 セ グ メ ン ト 低コスト 差別化 戦 略 タ ー ゲ ッ ト コスト・リーダーシップ戦略 差別化戦略 コスト集中戦略 差別化集中戦略 •最小限の製造コストと 品質 •品質管理 •応答時間の短縮 •最小限の機能の製品 •ニッチ市場向けのカ スタム化製品 集中戦略 • 品質管理 • 応答時間の短縮 • 品質を向上させる • 機能を向上させる • 配達の容易な製 品を開発する 差別化戦略 •物流の改善 •製造の“学習曲線” の習熟化促進 プロセス プロダクト •低価格の原料・材料 を開発する •製造の容易な製品 を開発する イ ノ ベ ー シ ョ ン の 種 類 コスト・リーダーシッ プ戦略 •最小限の製造コストと 品質 •品質管理 •応答時間の短縮 •最小限の機能の製品 •ニッチ市場向けのカ スタム化製品 集中戦略 • 品質管理 • 応答時間の短縮 • 品質を向上させる • 機能を向上させる • 配達の容易な製 品を開発する 差別化戦略 •物流の改善 •製造の“学習曲線” の習熟化促進 プロセス プロダクト •低価格の原料・材料 を開発する •製造の容易な製品 を開発する イ ノ ベ ー シ ョ ン の 種 類 コスト・リーダーシッ プ戦略

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[2] M・E・ポーター, 土岐坤, 服部照夫, 中辻萬治 訳, 『競争の戦略』, ダイヤモンド社、1995 新 訂,pp55-71.

[2]の原著は以下です。

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ポーターの戦略論−5 つの力+α

産業の競争を駆動する 5 つの力とは?第六番目のフォースとは? マイケル・ポーター(Wikipedia)は、企業戦略におけるイノベーションの分析に、産業界の競争を駆動す る 5 つの要因と技術、また、企業が行なわなければならない、幾つかの基本戦略からの選択と技術との 明確な関係を示した。さらに、イノベーションの「リーダー」となるか「追随者」となるかの2 種類の市場戦 略の選択を示している。[1] 本ページは 5 つの力(要因)に関する。 産業界の競争を駆動する 5 つの力とは以下であり、それぞれが機会と脅威を作り出している。 1.サプライヤー(原料・部品・設備)との関係 2.買い手との関係 3.新規参入者 4.代替製品 5.既存企業間の競争状況 このモデルは種々の書籍、サイトで下図のように示されている。(図は[2] p8 図表 1.1 業界の収益性を 決める 5 つの競争要因 を参考に作成) 新規参入業者 代替品 売り手 競争業者 買い手 業者間の敵対関係 新規参入の脅威 買い手の交渉力 代替製品・サービスの脅威 売り手の交渉力 新規参入業者 代替品 売り手 競争業者 買い手 業者間の敵対関係 新規参入の脅威 買い手の交渉力 代替製品・サービスの脅威 売り手の交渉力

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5 つの力と技術の関係についてティッドら(2004)([1],p94 など)は以下のようにまとめている。 ○買い手に対するサプライヤーの交渉力 買い手へのインプットに影響を与えるような基本的イノベーションは、サプライヤーの交渉力を増大させる。サ プライヤーへの技術的依存度を低下させるようなイノベーションによって、買い手の交渉力が増大する。 ○潜在的な新規参入者および代替製品 規模の経済の低下や代替製品の出現は、新規参入者の脅威を増大させる 技術的な標準への“ロックイン(囲い込み)”や、特許などによって、新規参入者の脅威は減少する。 ○既存企業間の競争 イノベーションによって独占的地位を確立することができる。また、模倣によって独占的地位を破壊することが できる。 •

第六番目のフォース

これら 5 つの力に加え、「補完的生産者」が第六番目のフォースであることも言われている。[3] 補完的生産者とは、競争相手とは対極にあり、自社の製品の価値を高めてくれる企業や人を指す。例 えば、ハードウェアにはソフトウェア、インターネットにはブロードバンド、自動車には自動車ローン、はた また、ホットドッグとマスタード、などである。こういった概念は「コーペティション(Co-opetition)」と呼ばれ、 「競争(Competition)」と「協調(Cooperation)」を同時に謳うコンセプトである。 この概念の参考には[3]の第一章、もしくは、B・J・ネイルパフ, A・M・ブランデンバーガー, 嶋津祐 一, 東田啓作 訳『コーペティション経営―ゲーム論がビジネスを変える』日本経済新聞社, 1997.に詳し い。 *ポーターの提示は、合理主義的な主張の典型であるが、示されたいくつかのフレームは極めて有効 なもので、ポーターの理論に対する反論・弱点の議論は活発である。

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[1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004,pp92-95. [2] M・E・ポーター, 土岐坤, 服部照夫, 中辻万治 訳『競争優位の戦略―いかに高業績を持続させる か』,ダイヤモンド社,1985. [3] B・J・ネイルパフ, A・M・ブランデンバーガー, 嶋津 祐一 訳 『ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調 のコーペティション戦略 日経ビジネス人文庫 (日経ビジネス人文庫)』日経ビジネス文庫,2003.p6 序文 より。

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SWOT 分析

SWOT 分析、イノベーションのための合理的/漸進的アプローチ

合理主義的アプローチ

技術の利用と企業の戦略立案にとって、重要な合理主義者の戦略は、「評価・決定・行動」のリニアモデ ルである。企業戦略では、SWOT 分析がこれに相当する。このアプローチは以下の点において有益で ある。[1] • 競争環境に関するトレンドを意識する。 • 変化しつづける将来に備える。 • 日々の業務に集中せざるをえないような圧力の中で、長期の視点にも十分な注意を払うことを促 す。 • 機能別に特化しているが、地理的に分散しているような大規模組織において、目標と行動の一貫 性を確保する。 SWOT とは以下である: Strengths:企業の強み、Weaknesses:企業の弱み Opportunities:外部の機会、Threats:脅威 • 外部環境分析 機会と脅威の分析をマクロ、ミクロ的*に行う。以下は[2]参照。 機会−企業が利益をあげられるような購買者ニーズが存在している分野。魅力度と成功確率のマ トリクスが有効。 脅威−環境上の脅威など、売上や利益が損なわれる難局のことであり、深刻度や発生確率で示さ れることが望ましい。 *下図は[3]を参考に作成。 *マクロ環境要因−デモグラフィックス(経済的、技術的、政治−法的、社会−文化的)、ミクロ環境要 因−顧客、競合他社、流通業者、供給業者、の自らの利益をあげる能力に影響を与える主要な要因

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• 内部環境分析 当該事業が、マーケティイング、財務、製造、組織の各コンピタンスにおける内部的な強みと弱み を評価する。

漸進主義的アプローチ

上記のような合理的主義に対し、「現在のようなビジネス環境の複雑性と変化を完全に理解することはで きない」として、自らのもつ知識は不完全であると認識した上で、漸進的主義者は企業戦略を順応させ る準備を以下のステップで行う。[4] 1. 定められた目標に向けて慎重なステップ(もしくは変化)を踏み出す。 2. ステップ(変化)の効果を測定し評価する。 3. 目標を(必要に応じて)修正し、次にとるステップ(変化)を決定する。 この行動手順はトライ・アンド・エラー、体験して確かめる、学ぶ、などと言われているものである。 成功確率 発生確率 高 低 高 低 魅 力 度 深 刻 度 高 低 高 低 機会マトリクス(左)と脅威マトリクス(右) 成功確率 発生確率 高 低 高 低 魅 力 度 深 刻 度 高 低 高 低 機会マトリクス(左)と脅威マトリクス(右)

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論点

合理的、漸進的、どちらが優れているというわけではない。 不確実性に対応できなければ、企業は存続を危ぶまれるが、かといって(不確実性を考慮に入れず企 業戦略に融通が利かない)合理的な分析が否定されるわけではない。 また、不確実性に過剰に反応して、資本を投下することは、投資効率を低下させてしまうが、漸進的なア プローチが否定されるわけではない。 ここで重要なことは、企業は、不確実性に対し、効果的に対処する方法を学習することと、成功したマネ ジメントは完全に再現できないことを知るべきなのである。([1]pp90-91, マネジメントに対する含意より) [1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004, pp88-89. [2] フィリップ・コトラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編』, ピアソン・エデュケーション,2002, pp58-59. [3] フィリップ・コトラー, ケビン・レーン ケラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラー&ケラーのマーケ ティング・マネジメント 第 12 版』, ピアソン・エデュケーション, 2008, p68「機会と脅威のマトリクス」より。 [4] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004, pp89-90.

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ポーターの戦略論−2 種類の市場選択

イノベーションのリーダーとなるのか追随者となるのか? マイケル・ポーター(Wikipedia)は、企業戦略におけるイノベーションの分析に、産業界の競争を駆動す る5 つの要因と技術、また、企業が行なわなければならない、幾つかの基本戦略からの選択と技術との 明確な関係を示した。さらに、イノベーションの「リーダー」となるか「追随者」となるかの 2 種類の市場戦 略の選択を示している。[1] 本ページは 2 種類の市場戦略の選択(イノベーションのリーダーか追随者か)に関する。 ポーターは企業は以下の 2 種類の市場選択のどちらかを選択するかを決定しなければならないと述べ ている。 その戦略とは以下である。(本ページは[1]を参考に記載) 1. イノベーションのリーダーを目指す戦略 2. イノベーションの追随者となる戦略 ○イノベーションのリーダーを目指す戦略とは: この戦略を選択する企業は、技術的なリーダーシップにより、市場への一番乗りを目指す。 具体的には、会社の方針として創造性の開発とリスクを取ることに制度的に関与し、新しい知識の主要な源 (大学等)との密接な連携、また、顧客ニーズ及びその反応を把握する活動との密接な連携を保つ。 ○イノベーションの追随者戦略とは: この戦略を選択する企業は、技術的リーダーの経験を模倣(学習)することで、後から市場へ参入することを 目指すものである。 具体的には、技術的リーダーの経験を模倣(学習)し、会社の方針として競合他社の情報収集と分析を行い、 リバース・エンジニアリング*を行なって、製造方法を学習しコストを削減する。 *競合他社の優れた製品を試験し、分解し、評価し、それがどのように機能し、どのように作られているのか、

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*ポーターの提示は、合理主義的な主張の典型であるが、示されたいくつかのフレームは極めて有効 なもので、ポーターの理論に対する反論・弱点の議論は活発である。 [1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004.pp94-95.

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ポーターの戦略論−議論

ポーターの理論に対する反論・弱点の指摘 マイケル・ポーター(Wikipedia)は、企業戦略におけるイノベーションの分析に、産業界の競争を駆動す る5 つの要因と技術、また、企業が行なわなければならない、幾つかの基本戦略からの選択と技術との 明確な関係を示した。さらに、イノベーションの「リーダー」となるか「追随者」となるかの2 種類の市場戦 略の選択を示している。[1] ポーターの提示は、合理主義的な主張の典型であるが、示されたいくつかのフレームは極めて有効な もので、ポーターの理論に対する反論・弱点の議論は活発である。 本ページはポーターの理論に対する反論・弱点の指摘に関する。 (本ページは[1]pp95-100 を参考に 記載) ポーターの主張をまとめると以下である。 ○競争戦略の最終目標は・・・・これらの競争圧力から最も効果的に自社を守ることができるような、産業内の ポジションを見出すこと。 ○イノベーション戦略の目標は、競争的な脅威を寄せ付けないこと[2]。

○コストと品質で“中途半端な位置にはまりこむ(stuck in the middle)”企業は、低い利益しかあげられない。 ○競争戦略論(On Competition)では、経路依存性の制約を認め、適合性(フィット)を強調していること。 以上を踏まえて、技術との関係から、以下の 3 点が指摘されている。 1. “最も効果的に自社を守ることができるような、産業内のポジション”を見出すことは難しい(制約の過 小評価)。 企業のサイズによる制約: 大企業は“広く手がける”が、小企業は“的を絞る”戦略をとらざるを得ない。 技術的コンピタンスの制約: 属する産業と既存の製品基盤が、ある程度技術分野に制約を加える。 製品と顧客の性格からくる制約: 食料品や家電製品と、医薬品や飛行機に要求されるコンピタンスは異な

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2. 産業構造を転換してしまうような、技術変化のパワーを過小評価している。 あらかじめ定められた“静的な産業構造”にぴったり適合するような、企業も技術も存在しない。 技術的な進歩は、いわゆる“成熟産業部門”においてもイノベーションの機会を生じさせる。 “中途半端な位置にはまりこんだ”企業(中くらいのコストで中くらいの品質)は、低コスト−低品質、あるいは高 コスト−高品質戦略を採る企業よりも収益率が高い。さらに、技術によって低コスト−高品質を達成する企業 すら存在する。 3. 経営者が、イノベーション戦略を策定し実施するパワーを過大評価している。 大きく、かつ専門化した組織は、本質的に主要顧客に過剰適応してしまう(イノベーターのジレンマ)ことがあ る。 メインフレーム・コンピュータを製造する大企業は、半導体技術の軌道をコントロールすることができなかった。 彼らは、IBM の RISC 技術に見られるように、必要な技術的コンピタンスは持っていたのだが、その組織的なコ ンピタンスは、限られた市場への高価な製品の販売に適合させられていた。今では、サプライヤーや買い手と の対立的でない関係が、長期的な利益をもたらすことが明らかとなっている(ケイレツ取引)。 いわゆる、経済構造が静的でないため、技術の軌道や、それを活用する企業固有の技術的・組織的な コンピタンスを過小評価している、という点に留意すべきなのである。 [1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004. [2] M・E・ポーター, 土岐坤, 服部照夫, 中辻萬治 訳, 『競争の戦略』, ダイヤモンド社、1995 新訂.

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SCP パラダイム

SCP パラダイム 業界の構造を分析する際の枠組みのひとつ。ベイン(J.S.Bain)により体系化された。 それによれば、「構造(structure)→行動(action)→成果(performance)」の SCP パラダイムによって業界 の特徴が分析される。 製品差別化、参入障壁、集中度などの業界の構造が、価格政策、製品政策、広告政策などの行動を規 定し、それが成果(効率性の指標としての利潤率など)を規定するものである。 これらの因果連鎖がすべて実証されたわけではないが、「構造→成果」に関する集中度*1−利潤率仮 説*2 など一部の実証結果がでている。業界の分析を試みる上うえで非常に有用なものである。 *1:ある産業(業界)における当該企業の売上が上位企業に集中している割合 *2:寡占的産業の平均利潤率が競争産業のそれより高くなる仮説 以上の文章は、下の書籍の第Ⅱ部 市場の分析,pp126-127 を参考とした。 [1] 沼上幹, 『わかりやすいマーケティング戦略 新版 (有斐閣アルマ)』,有斐閣,2008.

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製品ライフサイクル

製品ライフサイクルの概念 プロダクトやプロセスにはライフサイクルが存在し、登場後、成長、成熟を経ていく。このライフサイクルの にはいくつかのステージが存在し、イノベーションにおいても各ステージは、重視される。 *以下の段落は[1]を参考。 例えば、初期のフェーズにて多数の異なった製品をもたらす、プロダクト・イノベーションが急速に頻繁に発生する。 それらはいくつかに収斂され(淘汰され)、後期のステージでは、製品コンセプトは安定し、変化の変動は小さくな り、イノベーションの焦点はプロダクトからプロセスへ移行する。 製品ライフサイクルに関して、下の図は代表的なものであり、各ステージの売上、収益(利益)の推移を 示している(参考は[2])。 消費者は、イノベーションをどの時期で採用するのだろうか?その区分はおおよそ以下である。 ([2],p213) 導入期での採用者は、イノベーター(Innovators)と呼ばれる(割合は 2.5%)、成長期入ると、初期採用者(Early Adopters:13.5%)、成熟期には前期、後期追随者(Early,Late Majorities:各 34%)、衰退期には、遅滞者(Laggrds; 16%)である。 売上 成長期 成熟期 衰退期 収益 導入期 売上 成長期 成熟期 衰退期 収益 導入期

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ただ、ライフサイクルのパターンや消費者の選好は取り扱う製品やサービスにより異なるが、その把握は 重要である。 例えば、「人と異なる」製品を好むファッション業界や成長期に入る段階で多くの企業が淘汰されるハイテク業界、 電化製品など広く普及を望む電機業界など、ライフサイクルのパターンや利益最大点は大きく異なる。 •

ライフサイクルの概念への批判

その批判としては、概念的なものであるため、実際には、種々のパターンの形や期間は把握しにくいこと に収斂される。このため、一意的に捉えるのではなく(企業のマーケティング・プログラムを適合させる独 立変数として取り扱うなど)、製品志向の実態として捉え、企業は、市場の発展の推移を具体的に把握 する必要がある。(文中のハイライトは原文にルビ)[3] 企業は、製品が各段階を経るに従い、製品/価格/流通/広告/販売促進の各戦略を立案し、実施 しなければならない。この理由は、上記の消費者の区分のように、各段階での消費者は「別の顔」をして いるからである。 •

導入期から成長期での「キャズム」

特に、消費者の区分においては、イノベーターからアーリーアダプターなど、各区分間が連続的には普 及しないことがある。そこには断絶された「溝」があり、特にハイテク産業では市場で言えば、導入期の初 期市場から、成長期へ移行する際に出現する。ムーア(2002)*はそれを「キャズム」と呼び、ハイテク産 業を中心に研究し、これを超えることを最重要課題としている。[4]

*原著『Crossing the Chasm』は 1991 年に初版の出版。 用語の解説はこちら(Wikipedia)。

(23)

イノベーションのジレンマ

ライフサイクルを経ていく過程で、時にイノベーションのジレンマに悩むことがある。技術の変化によって、 当該企業周辺の環境をどれだけ変化させているかは、常に監視しなければならない。 また、製品、サービスは必ずコモディティ化(Wikipadia)する。ライフサイクルでは成熟期にあたる。このと き重要なのは、利益の源泉がどこに移ったかである。特に、多くの研究開発者はコモディティ化の様相 が見え始めた時には、脱コモディティ化、もしくは技術の次なるS カーブ(産学連携キーワード辞典)を意 識した研究を始めている。 企業にとって重要なことは、イノベーションを製品ライフサイクルの観点からマネージする際に、イノベー ションは特定の人ものではなく、企業全体のこととして捉えることである。それは、ポーターのバリューチ ェーン(Wikipedia)で言えば、ライフサイクルを経るにつれ、バリューを高める主力活動部門が異なるた めである(研究開発者が成熟期に主役でないように)。 [1] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004, pp14-15. [2] フィリップ・コトラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編』, ピアソン・エデュケーション,2002, p212,図 9-4 売上と収益のライフサイクル より。 [3] フィリップ・コトラー, ケビン・レーン ケラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラー&ケラーのマーケ ティング・マネジメント 第 12 版』, ピアソン・エデュケーション, 2008, pp415-416."製品ライフサイクルの 概念に対する批判"より。 [4] ジェフリー・ムーア, 川又政治 訳, 『キャズム』, 翔泳社, 2002.

(24)

差別化とは−Differentiation

差別化 差別化とは、製品、サービス、スタッフ、チャネル、イメージによる差別化で説明され、それを行なう主な目的は、製 品をブランド化することにある。 (以下の文中で赤字は変数として考えられている) • 製品による差別化 • サービスによる差別化 • スタッフによる差別化 • チャネルによる差別化 • イメージによる差別化

製品の差別化

製品による差別化は、有形の製品の場合、大きさや、形状などの物理的な構造といった形態によって差 別化される。それに、種々の基本的機能を補う特徴を付加する。例えば、自動車メーカーの内装レベル なのである。 その水準は、高い、低いなどで示される性能品質を有しており、主な特徴が機能する水準がある。売り 手は、一定の期間内に誤作動や動作不良が起きないように、信頼性を高め、自然または過酷な使用状 態で機能を損なわない耐用期間を高め(耐久性)、同時に、買い手が望む性能品質を生産したすべて の製品で実現できる適合品質を高めることができる。 さらに、誤作動や、作動しない場合は、修理を容易にし(例えば、「よくあるご質問」で電話件数を削減す るなど)、製品の外観、買い手に与える印象であるスタイルを整える。

(25)

有形製品が容易に差別化できない場合、売り手は価値あるサービスの付加とその品質を高めることが できる。 それは、顧客が当該企業へ注文する容易さを追求し、うまく顧客のもとへ製品を配達するプロセスを整 える。 届けられた製品は、予定されていた場所でうまく稼動できるように取り付けを容易にされ、当該企業は、 売り手の機器を効率よく、適切に使用できるように、顧客をトレーニングする。必要であれば、売り手は買 い手にデータ、アドバイス・サービス、情報システムを提供する(顧客コンサルティング)。さらに、購入し た製品を良好な作動状態に保つためのサービス・プログラムを提供することもある(メンテナンスと修 理)。

スタッフによる差別化

他社よりのよく教育化された従業員を通じて、競争優位を獲得できる。 よく教育されたスタッフの特性とは:コンピタンス、礼儀正しさ、安心感、信頼性、迅速な対応、コミュニケーショ ンである。

チャネルによる差別化

流通チャネルのカバレッジ、専門技術や専門知識、及びパフォーマンスを適切にデザインすることによ り、競争優位を獲得できる。 例えば、デル・コンピューターの電話販売、インターネット販売による優れたダイレクト・マーケティング・チャネ ルの開発。

イメージによる差別化

買い手は、企業イメージと買い手に対して、種々の反応を見せる。イメージとは、顧客が製品や企業をど のようにとらえるかである。効果的なイメージは製品特性と価値提案を確立することができる。 イメージを機能させるには、ロゴ、メディア、イベントなど利用できるあらゆるコミュニケーション・ビークルとブラ ンド・コンタクトを通じて、イメージを伝達しなければならない。

(26)

以上の記事は以下の図書を参考に記載した。 *フィリップ・コトラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編』, ピアソン・エデュケーション,2002, pp217-221. *フィリップ・コトラー, ケビン・レーン ケラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラー&ケラーのマーケ ティング・マネジメント 第 12 版』, ピアソン・エデュケーション, 2008, pp465-471. *フィリップ・コトラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳『コトラーのマーケティング・マネジメント -ミレニアム 版-』, ピアソン・エデュケーション, 2001, pp355-368.

消費者採用プロセス−イノベーションの採用時期

イノベーションの採用時期 イノベーションの採用は様々である。ここで、採用とは、イノベーションが普及していく過程で、消費者が、 ある製品・サービスのユーザーとなる意思決定である。本ページでは、心理的プロセスと 5 つの消費者 カテゴリーに言及している。 *本ページ記載は[2]の pp822-823、第 8 部 20 章 新製品の開発−消費者採用プロセス による。 •

採用プロセスの諸段階

消費者採用プロセスは、イノベーションを耳にしてから、最終的に採用するまでの以下の心理的なプロ セスに注目している。 1. 認知−消費者はイノベーションを認知するが、情報は持っていない。

(27)

4. 試用−消費者は、価値を評価するために試用する。 5. 採用−消費者は、本格的、定期的に試用することを決める。 •

イノベーションの採用時期

イノベーションは、採用するするにつれて新たな採用者の数は逓減していく傾向にあり、下図はそれを 視覚的に表現している。 図は[1]p211 図 9-3 イノベーションの相対的採用時期を基準にした採用者の分類、または[2]p823 図 20-7 イノベ ーションの採用時期、を参考にサイト運営者が作成。(原著:Everett M. Rogers, Diffusion of Innovations, New York : The Free Press,1983.)

それは、消費者を 5 つのグループに分けて考えられ、以下はそのカテゴリーごとの特徴である。 1. イノベーター−新しい技術を試すことに熱中するカテゴリーで冒険心旺盛。安価な製品提 供と引き換えに、アルファテスト、ベータテストに参加し、問題点を報告する。 2. 初期採用者−オピニオン・リーダーで他者と差をつけられる画期的な新技術を慎重に探 している。価格はあまり気にしない。 3. 前期追随者−慎重な実用主義者。新製品の有効性が明らかになり、周囲に採用した消 イノベーター (Innovators) 前期追随者 (Early Majorities) 後期追随者 (Late Majorities) 遅滞者 (Laggards) イノベーションの採用時期 初期採用者 (Early Adopters) 2.5% 13.5% 34% 34% 16% イノベーター (Innovators) 前期追随者 (Early Majorities) 後期追随者 (Late Majorities) 遅滞者 (Laggards) イノベーションの採用時期 初期採用者 (Early Adopters) 2.5% 13.5% 34% 34% 16%

(28)

4. 後期追随者−懐疑的な保守主義者。リスクを嫌い、新技術には消極的。価格には敏感。 5. 遅滞者−伝統を重んじる。イノベーションに手を出すのは、現状の変化が避けられないと 納得した時である。 [1] フィリップ・コトラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラーのマーケティング・マネジメント 基本編』, ピアソン・エデュケーション,2002, pp210-211. [2] フィリップ・コトラー, ケビン・レーン ケラー, 恩藏直人監修,月谷真紀 訳,『コトラー&ケラーのマーケ ティング・マネジメント 第 12 版』, ピアソン・エデュケーション, 2008, pp822-824.

(29)

品質保障、管理及び各種技法

品質管理の淵源とその考え方

QC, TQC、そして TQM

QC, TQC の概要と功罪

QC

QC(= Quality Control)とは、品質管理のひとつの手法であるが、その淵源は、戦後、米国の GE, WE の技師によってもたらされたSQC(=Statistical Quality Control)である。SQC の創始者は WE の W・A・

シュハートであるが、品質管理と概念がまだない日本においても、1927 年に、石田保士が電球の品質 管理に統計を使用する研究を開始している。並行し当時の優秀な統計学者が品質管理の技術としても 統計に磨きをかけていた。 そして、よく語られるエドワーズ・デミングが 1950 年のセミナーで SQC を講義するのである。 このころ(1950 年)、タグチメソッドで有名な田口玄一は電電公社電気通信研究所に入り、実験計画法で 独創的な理論を次々打ちたて、やがて 60 年にデミング賞を受賞することになる。後に米国のプリンストン 大学の客員教授で招かれ(兼ベル研究所研究員)、彼の理論が高く評価された。 ”統計的”品質管理の名のように、当初は技術者が中心に展開していたが、現在の QC といえば”七つ 道具”に代表されるようにその面影は、薄くなっている。 QC 七つ道具:パレート図、チェックシート、ヒストグラム、散布図、管理図、層別(グラフ)、特性要因図 これは、経営的視点からの展開を目指し、中心的存在となった石川馨によるものが大きい。この間には、 J・M・ジュランが、経営者、上級管理者に行われたセミナー(1954 年)で、彼らの役割を講義している。 *以上ここまでは[1]を参考に記載した。 そういったことから、石川は、品質管理(QC)を始めた理由として:

(30)

②戦前の安かろう悪かろうでは資源が乏しい日本では経済が成り立たない。 ③企業の体質改善、経営の思想革命 を挙げている。[2] 結局のところ、日本においては、20 世紀前半から中後半に、製造業を中心に、「製造する」という行為に おいて、「品質管理」の概念が登場し、その方法に統計的手法を用い始め「品質管理とは統計である」と 考えられるようになったのである。 その後、一部の技術者から全社的へ展開するために、TQC が生まれ、普及していったのである。 •

TQC

さて、TQC(=Total Quality Control)は、米国のファイゲンバウム(当時 GE)が使用したもので、米国品 質管理協会誌(Industrial Quality Control)の 1957 年 5 月号に論文を発表している。[3]

「TQC とは、消費者を完全に満足させるということを考慮して、もっとも経済的な水準で生産し、サービスで きるように、組織内の各グループが、品質の開発・維持・改良の努力を総合するための効果的なシステム である」

つまりは、企業のビジネスシステム全体で、その品質を総合的に管理する、というシステムで、「経営管 理」のひとつである。

日本で普及していた TQC は、CWQC(Company- Wide Quality Contorol=全社的品質管理)であり、 ①全部門参加、②全員参加が主な特徴である。[4]

従って、米国で展開されていた TQC にあって、日本版 TQC にないものは、マーケット・リサーチ(MR) の概念である。

実際に、1950 年の夏、デミングの箱根でのセミナーは経営者を中心に開催されており、このときの講義内 容はSQC(=Statistical Quality Control)ではなく MR であった。[5]

こういった日本版 TQC は、合理的で大きな効果を生んでいったが、カンバン方式なども含めた合理的 な手法のデメリットは:

(31)

「TQC が水戸黄門の葵の御紋のような威力を持ち、『お上のこれが見えないのか』とばかりに TQC を押し 付けられ、それを批判するのはタブーで、TQC をやらない者はこの会社では除け者のとなった[6]」 「かけがえのない人材の流出が続き、職場環境は荒廃し、企業改革自体が尻すぼみに終わった[6]」 「やらせ、ごまかし、デッチ上げの QC[7]」 「TQC 指導会は単なる吊るし上げ[7]」 経営管理者は、管理技術のひとつとして扱うことが重要で、コスト低減のため、コストの安い地域で生産 することに特化した工場(研究開発、設計開発が不要)や、単なる管理技術として取り扱う場合、その効 果を享受出来る。 例えば、工業数学(基本統計、各種検定など)、実験計画法、タグチメソッド、統計的管理などに代表される科学的 手法は生産現場では必須である。 しかしながら、現代のような不確実性の高い経営環境では、TQC に限らず、カンバン方式など合理的管 理法を経営管理のすべてに考え、全社的に取り組むにはリスクが大きすぎる。 なぜならば、技術的イノベーションにおける合理主義者と漸進主義者の論争では、複雑性、不確実性 により、後者のアプローチの方が有用であると結論付けられているからである。[8] かといって、合理的アプローチを否定するものではなく、技術としてはこれ以上の品質管理技法は発明 されていない。 後に、20 世紀の後半になり、シックスシグマが登場するが、技法自体には、SQC、QC 及び TQC で使用 されているものと変わりはない。 適切な使用法は、FMEA、FTA も含めて、客観説 TQM 研究所のサイトが実践的で参考にされる。 •

TQC と TQM

現在では、TQC は TQM(=Total Quality Management)とされ、こちらで呼ばれることが多い。日科技連 はその違いについてホームページ上で以下のように説明している。TQC と TQM の違いについてはこち ら。

1960 年代から日本において独自の発展を遂げた「TQC(Total Quality Control)」は、1996 年 4 月「TQM (Total Quality Management)」に呼称変更しました。その理由は次の通りです。

(32)

• 諸外国では TQM という呼称が一般的になっていて、TQC を国際的に通用する言葉にする必要があ る。 • TQC を企業環境の変化に対応できる経営活動に、より一層役立つようにする必要がある。 SQC、QC、TQC、TQM、及びシックスシグマは主に問題を解決する技法であるため、新製品の開発な どの創造を発揮するするものではない。近年では、[9]-[11]のように、研究開発的な手法とシックスシグ マなど従来の方法との融合が報告されている。 [1] 徳丸壮也,『日本的経営の興亡―TQC はわれわれに何をもたらしたのか』, ダイヤモンド社,1999, pp166-197. [2] 石川馨,『日本的品質管理―TQC とは何か (1981 年)』,日科技連出版社, 1981, pp2-3. [3] [2] p126. [4] [2] pp127-128. [5] [1] p279. [6] [1] p37-39, 富士ゼロックスのケース。 [7] [1] p1-12, いすゞのケース。 [8] ジョー ティッド他, 後藤晃,鈴木潤訳『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメ ント』, NTT 出版,2004, p85.

[9] Hipple, J., "The Integration of TRIZ with Other Ideation Tools and Processes as well as with Psychological Assessment Tools", Creativity and Innovation Management , 14, pp22-33, 2005. PDF はこちら。

[10] Johnson, A., "Six Sigma in R&D" Research Technology Management, 45, p12-16, 2002. [11] Smith, L., "Six Sigma and the Evolution of Quality in Product Development", Six Sigma Forum Magazine, pp28-35, Nov 2001,PDF はこちら。

<参考書籍>

• 『日本的品質管理―TQC とは何か (1981 年) 』 • 『技術集団の TQC 』

(33)

<TQC の弊害について>

• 『日本的経営の興亡―TQC はわれわれに何をもたらしたのか』

<TQM の実践で参考になるサイト>

(34)

狩野モデル−品質とは

顧客の満足感、充足感からなる品質要素の 2 側面 品質を魅力的品質要素(充足されれば満足、不充足でも仕方がない)、一元的品質要素(充足されれ ば満足、不充足で不満)及び当たり前品質要素(充足されれば当たり前、不充足で不満)に考え、ネガ ティブな顧客情報を集めた改良型製品ばかりにならないように定義している(これは狩野モデルと呼ば れている。以下に詳細を示す[1]参照)。 魅力的品質要素:それが充足されれば満足を与えるが、不充足であっても仕方がないと受けとられる品 質要素。 一元的品質要素:それが充足されれば満足、不充足であれば不満を引き起こす品質要素。 当たり前品質要素:それが充足されれば当たり前と受け止められるが、不充足であれば不満を引き起こ す品質要素。 無関心品質要素:充足でも不充足でも、満足も与えず不満も引き起こさない品質要素。 逆品質要素:充足されているのに不満を引き起こしたり、不充足であるのに満足を与えたりする品質要 素。 下には、上記の内容を視覚的に示すため、[1]の図 1 物理的充足状況と使用者の満足感との対応関係 図(b)を参考に作成した(図の PPT はこちら:KanoModel.ppt)。 充足 顧客の満足感 物 理 的 充 足 状 況 不充足 満足 魅力的品質 魅力的品質 当り前品質 当り前品質 一元的品質 一元的品質 気に入らない 気に入る 顧客の声( 顧客の声(Negative Negative )) 顧客の声( 顧客の声(Positive Positive )) 当たり前 仕方ない 充足 顧客の満足感 物 理 的 充 足 状 況 不充足 満足 魅力的品質 魅力的品質 当り前品質 当り前品質 一元的品質 一元的品質 気に入らない 気に入る 顧客の声( 顧客の声(Negative Negative )) 顧客の声( 顧客の声(Positive Positive )) 当たり前 仕方ない

(35)

現在では、顧客の声(=要求)において、Negative な場合は、FMEA で問題解決され、Positive な場合

は、QFDで企画・設計品質に展開され、顧客の声を製品・サービスに反映させる傾向が強い。

[1] 狩野紀昭, 瀬楽信彦, 高橋文夫, 辻新一, 「魅力的品質と当たり前品質」, 『品質』, 14, No.2 pp39-48, 1984.

(36)

技法、その他

タグチメソッド

日本の技術者が知らないでは済まされない技法!? タグチメソッドは田口玄一が提唱する品質設計のための工学、品質工学である。一般的に実験計画法 とは統計学の一分野でフィッシャーにより考案された。 従来、一因子の変化を追って実験を行っていたことに対し、複数の因子を扱うことで、各因子の主効果、 交互作用を把握することが出来る。田口は品質工学として発展させ、SN 比というバラツキの概念を使用 し、要求する特性(望大特性、望小特性および望目特性)に応じて、バラツキも小さくすることを理想とし ているさらに、特筆すべき概念は"損失関数"という考え方である。 よい品質とは、"平均値が目標に近いことである。"これを規格限界の値から決定しようとするもので、規 格外の値に近づくほど、損失金額が大きくなる(s 下図)。このように理解することで、規格内であれば合 格であるという一意的な考えを継続的改善へ向かわせることが出来る。

(37)

*図は、下の参考書籍、p2 図 1.1 規格の内と外の損失 を参考に作成。 <関連サイト> 品質工学(Wikipedia) →タグチメソッドに詳しい。 <統計ソフト> JUSE-Stat シリーズ Minitab *統計ソフトの解説やヘルプでの例を学ぶことでも学習することが出来ます。 • 参考書籍 田口 玄一,『品質設計のための実験計画法』,日本規格協会, p1-16, 1988. 上の書籍の購入は以下から出来ます。 • ジェイブック • 楽天ブックス • JSA Web Store

(38)

QFD−品質機能展開

顧客の声が製造レベルにまで反映される技法

QFD(=Quality Function Deployment)はQCが全社的品質管理に移行された 1960 年代半ばから品質 展開の試行が開始されたツールで、「プロダクト・アウトからマーケット・インの思想が製品開発で重要で ある」に主眼を置き、例えば、作成される品質表(下図参照)は顧客の声である"要求品質"から出発す る。 品質を魅力的品質要素(充足されれば満足、不充足でも仕方がない)、一元的品質要素(充足されれば 満足、不充足で不満)及び当たり前品質要素(充足されれば当たり前、不充足で不満)に考え、ネガティ ブな顧客情報を集めた改良型製品ばかりにならないように定義している(これは狩野モデルと呼ばれるて いる[1]参照)。 そして品質、技術、コストおよび信頼性と品質展開表を展開し、営業、設計の意図を製造に伝達できる 具体的な品質保証の方法である。製品ライフサイクルでは、成長期から成熟期にかけて顧客の要求を 効率的に利益に変換できる手法である(逆に、S 字カーブを不連続にする技術開発や基礎研究では使 用する必要性はない)。 品質展開表が膨大になることが多く、簡易化した QFD が導入されることが多い。 多くの書籍では簡略に説明しているが、その活用は簡単なものではない。下には、その一部を示す。

(39)

まず①にて顧客の声(=要求)を要求品質展開表に展開する。同時に、製品・サービスの品質要素とマ トリクスにまとめ、配点する。次に製品・サービスの機能を抽出し、先程の要求品質展開表とマトリクス化 し、配点する(②)。更に機構展開を加え、配点、ウェートを計算する(③)・・・など、顧客の声を出発とし て、設計品質や製造品質に届くまで幾つもの展開表を作成することで、QFD は完成する。 •

実施の際の注意

統計的には、①において、競合企業とのベンチマークを行なう場合、主成分分析(Wikipedia)を行なう ので、統計の知識がある者が行なった方が有効である。ただし、それは分析を行なう時であり、顧客の 声から要求品質に展開する作業は、クロスファンクショナルに行なうことが、何より重要である。 実施の手技については、例えば、QFD の品質展開をエクセルで行い、それと連動して主成分分析を統 計ソフトで行なうことが出来るようにしているのが、日科技連のJUSE-StatWoksである。このソフトウェアで 要 求 品 質 展 開 表 品質要素展開表 品質表 要求品質展開表 機 能 展 開 表 重 要 度 重要度/設計品質 機構展開表 機 能 ウ ェ ー ト 機構ウェート

要 求 品 質 展 開 表 品質要素展開表 品質表 要求品質展開表 機 能 展 開 表 重 要 度 重要度/設計品質 機構展開表 機 能 ウ ェ ー ト 機構ウェート

(40)

この手法の実施には、そもそも QFD が日本の製造現場が伝統的に培ってきた土台をベースに発達した 経緯があるので、QCを習得している(もしくは QC の手法を踏襲しているシックスシグマを導入している)、 開発現場から生産現場まで統計が浸透している(SQC を実践している)、FMEA や FTA、特性要因図を 使用することが習慣化している、などの基本的なことが欠落している組織には適用は向かない。 •

近年の傾向

1960 年代から普及した QFD は第一世代と呼ばれ、品質保証が中心である。やがて、タグチメソッドや発 明技法の TRIZと融合していき(第二世代)、現在では、IT との融合により、リアルタイムデータベース QFD の具体が進んでおり、第三世代の QFD と呼ばれている(『第 3 世代の QFD』紹介文より)。 *本ページ製作者は、QFD の実施とタグチメソッドで割り付けが必要な際、JUSE-StatWoks シリーズを 用い、その他の統計解析は、Minitab を使用しています。いずれにせよ、第一世代の QFD を理解しない ことには、世代を進めていくことはできません。 [1] 狩野紀昭, 瀬楽信彦, 高橋文夫, 辻新一, 「魅力的品質と当たり前品質」, 『品質』, 14, No.2 pp39-48, 1984. • QFD 三部作と言えば日科技連の以下の書籍。 『品質展開入門 (品質機能展開活用マニュアル)』 『品質展開法(1) 品質機能展開活用マニュアル第 2 巻』 『品質展開法(2) 品質機能展開活用マニュアル第 3 巻』 • エクセルで品質表を展開、それを統計ソフトで分析できるソフトウェア 日科技連の JUSE-StatWoks • 現在、QFD は第三世代を迎えています。書籍の紹介はこちら。 『第 3 世代の QFD- 開発プロセスマネジメントの品質機能展開』

(41)

TRIZー発明技法

発明は体系的に行なえるのであろうか。

TRIZ は旧ソ連の民間でゲンリッヒ・アルトシュラーとその弟子たちが 50 年かけて開発した発明技法であ る。特許情報をベースに技術の傾向などを体系的にまとめ、技法の源泉としている。最近ではパソコン 上で快適に動く高度なソフトウェアツールも提供されている。

例えば、Invention Machine 社、Ideation International 社(伊藤忠の提供)、CREAX 社 :CREAX では CREAX Innovation Suite という体験版ソフトウェアを公開しています。

TRIZ は、分野における「創造的な思考」のための、優れた原理(モデル)とそれを使う具体的な方法とを 提供している。 具体的には、以下である。[1] 1. 新商品の開発のための予測技法 2. 問題(課題)を定義する方法 3. 問題のシステムを分析する方法 4. 「矛盾」を解決する方法 5. 理想をイメージする方法 6. 解決策を生成する方法 TRIZ は非常に多くの手法を含み、第一線の研究開発者や開発設計者がこれらの手法を片手間に習得 するのは困難である。企業にとっては、仮に専門家を養成しても、TRIZ 推進室といったインフラが必要 になる。さらに、この手法の特性上(技術課題解決手法、不具合分析/予測手法及び未来予測手法)、 一製品に適用するには手法の一面しか見ることが出来ず、短期的な費用効果が期待できない(長期的 には期待できる)。

(42)

コンサルティングは産業能率大学など多数が実施している(本ページ記載者はTRIZ-DE(将来の市場・ 商品の予測を支援する TRIZ の最新手法)という手法を勤務企業を通じて産業能率大学実施の講習を 受けている)。 こういったことから、導入を考える企業の上級管理者は、短期的なリターンを求めず(短期的に効果のあ る手法もあります)、従業員の教育機会のひとつと考え、長期的な視点で意思決定を行なうべきである。 少し導入してみて、効果を計り意思決定の機会を遅らせることは、投資効果を逓減していくことになる。 このことは以下の内容がよく示している。[2] 「企業においては、研究所や技術部門や知的財産部門などで、ボランティアの先駆者たちが、まず TRIZ の学習を始め、TRIZ のソフトウェアツールを使い、関心を同じくする人たちとのグループを作り、 TRIZ の専門家やコンサルタントを招いて入門セミナーを組織し、実地の問題に TRIZ を適用するなどの ことを試みた。これらすべての「業務外」の活動をするためには、彼らはその上司を説得する必要があっ たが、上司たちの多くは TRIZ についてそれまでに何も知らず、また「超発明術」というキャッチフレーズ には懐疑的でさえあった。かくて、これらの企業内先駆者たちが、問題解決において実地に成果を出 し、また仕事の中で TRIZ を学習し適用していくことに興味を持つ仲間たちを数人から 20 人ばかり獲得し ていくのには、随分長い時間がかかった。筆者が、TRIZ の推進に「漸進的導入戦略」を推奨したのは、 このような時期であった。」 このように、「TRIZ は過去半世紀の品質向上の運動にこれまで不足していた「技術論」を注入するもの であり、大きな技術革新運動に発展する可能性を持つもの[1]」と期待され、多くの企業で実績あるものと して報告されているにも関わらず、広範囲な利用を遅らせている。 •

近年の傾向

近年の状況は、TRIZ とその周辺技法や企業戦略としての一部として如何に機能するかが重要になって いる。

Clausing(2001)は[3]にて、提唱した TTD(Total Technology Development)*の観点から、その原因につ いて、①結合の不足、②実施の弱さ、としており、TRIZ の周りの生産的なプロセスとの統合不足(例え ば、サムスンが実施したような技術戦略までなどの結合、周辺の手法との統合が不足している)、また、

(43)

近年、注目を浴びたシックスシグマは、手法、方法というより、「目標設定及び意思決定」の意味合いが 強い([4],p432)。従って、発明を促すというより、事業化を促進するものである。こういった性質から、問 題特定過程が多いことを挙げ、Hipple(2005)は TRIZ とシックスシグマが融合が可能であるとしている。さ らに、Johnson(2002)、Smith(2001)など、シックスシグマのマネジメントに種々の手法との融合の有効性 を示していることから、TRIZ は発明技法としての位置を確立していると言ってよい。逆に、シックスシグマ にとっては、いわゆるシグマレベルのブレイクスルーとして期待されている。 •

TRIZ ホームページ

TRIZ は、その活動や論文などを積極的に Web 上で公開することで、普及を広げている。その代表的な サイトはTRIZ ホームページであり、日本では、大阪学院大学の中川が中心に運営している。フォーラム、 参考文献、技術報告など TRIZ のあらゆる情報ソースである。下は「公共ネットワーク」に関する記載であ るが、TRIZ ホームページの考え方が伺える。

「世界の各国に TRIZ の「公共 Web サイト」を作って(中略)そのような各国の「公共 Web サイト」がグロー バルにネットワークを組むことにより、自律的で健全なグローバルな TRIZ コミュニティができます。これ は、『TRIZ ホームページ』が実践してきたことを、グローバルなモデルとして世界の TRIZ リーダたちに提 案するものです。(「TRIZ についての「公共 Web サイトのグローバルなネットワーク」を作ろう: グローバル な TRIZ コミュニティを構築するための提案」より) 」 [1] 中川徹, 「技術革新のための問題解決技法 TRIZ/USIT」, 『日本創造学会論文誌』, 8, pp49-66, 2004.(閲覧可能なサイト) [2] 中川徹, 「日本における TRIZ/USIT の適用の実践」, TRIZCON2004, シアトル, 米国,2004.4.25-2. [3] Clausing, D.P., "The Role of TRIZ in Technology Development.", TRIZ Journal , August.2001.

([3]の邦訳版)

*Clausing, D.P の"TQD"に関しては、『TQD―品質・速度両立の製品開発』日経 BP 社,1996.が出版さ れています。

*TRIZ の全体像を、TRIZ を紹介する程度の内容以上に知りたい方は、以下の書籍を推薦します。 原著)Mann, D, L., Hands- On Systematic Innovation For Engineers, CREAV Press, Belgium,2002.

(44)

邦訳)[4] Mann, D, L.,中川徹 監訳, 知識創造研究グループ 訳『体系的術革新』 , 創造開発イニシ アチブ, 2004

[5] Hipple, J., "The Integration of TRIZ with Other Ideation Tools and Processes as well as with Psychological Assessment Tools", Creativity and Innovation Management , 14, pp22-33, 2005. [6] Johnson, A., "Six Sigma in R&D" Research Technology Management, 45, p12-16, 2002. [7] Smith, L., "Six Sigma and the Evolution of Quality in Product Development", Six Sigma Forum Magazine, pp28-35, Nov 2001.

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