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崎町担: ら11
(2
013) Carcinologicα
1 Society01
Japanプランクトンとして採集された不運なエビ,ヤリヒオドシエビ
D e e p - w a t e r s h r i m p
,
A canthephyra acut
.
折
ons
B a t e,
1888:
a rare incidence o f collection record b y a plankton net f r o m the East C h i n a S e a粛藤暢宏
l・西内
耕
2,
3 N obuhiro S aito a nd K oh N ishiuchi. は じ め に 東 シ ナ 海 は , 栄 養 塩 豊 富 な 長 江 の 河 川 水 と 黒 潮 中 ・深層水の流入,そして黒潮が運ぶ熱エネルギー により,世界的にも有数の基礎生物生産が高い海域 となっている. 西海区水産研究所では,この東シナ 海の高い基礎生産がどのように仔稚魚に利用され, 魚 類 資 源 へ と つ な が っ て い る の か を 解 明 す る 目 的 で,様々な調査定線を設けて動物プランクトンの調 査・研究を行っている( 西内, 2005). 動物プラン クトンは基礎生産者( 植物プランクトン) と仔稚魚 をつなぐキープレイヤーであり,海洋生態系におい て重要な地位にある動物群である. また仔稚魚に よっては餌生物のサイズや種の選択性があり,これ を把握する調査は重要な意義がある. これらの調査 では改良型ノルパック ネット (LNP-net) や高速沈 降型閉鎖式プランクトンネット (coc-net) (K awamura, 1989) などが用い られている . しかしながら,採集されたプランクトン試料に 神奈川県川崎市多摩 区生田8-11 - 11
Suido-sha, Co., Ltd., lkuta 8-1 1-1 1, Tama-ku, Kawasaki, K anagawa Japan 2 独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究 所: 干85 1-2213 長崎県長崎市多以良町 155 1-8 3 独立行政法人水産総合研究 センタ一本部: 干220-61 15 神奈川県横浜市西区みなとみらい 2-3-3 ク イーンズタワーB棟 15 階
Present address: Fisheries R esearch Agency, 15F Q ueen's Tower B, Minato M irai 2-3-3, N ishi-ku, Yokohama, Kanagawa 22O-Q 115, Japan
E-mail: [email protected] (N.Saito)
は,時に調査目的外の動物が含まれていることがあ り,これらの発見はひそかな( あるいは分析業務に 永く従事するための) 楽しみとなる場合もある . こ こでは,本来の調査主 旨とは若干逸脱するが,関連 調査によ って採集されたプランクトン“混獲物" に 関する知見を紹介する. . 材 料 と 方 法 水産庁補助事業「大型クラゲ国際共同調査」の一 環として,調査船陽光丸のY K 0907 航海にてプラン クトン調査を実施した. このうち, 2009 年 7月18 日23 時 4 分 , 甑 島 列 島 と 男 女 群 島 の 聞 の 測 点 7-4 (ck5) (3 1045'N, 128045'E,水深 771 m ) において得 られたプランクトン試料中に,以下に紹介するエビ が含まれていた. 採集具はcoc ネット( 口径 56 cm , 網目幅1 0 0 μm),曳網水深は 3 17←738 m であった. 得られたエビはプランクトン試料から抽出し,実態 顕 微 鏡 下 で 形 態 の 観 察 を 行 っ た . こ の 標 本 は , 現 在,国立科学博物館 ( N S M下C r 22337) で保管 ・管 理されている . . 結 果 と 考 察 本調査において,見るからにプランク卜ン採集物 としては不釣り合いな,巨大な赤いエビが採集され た( 図1). このエビはヒオドシエビ科ヒオドシエ ビ属Acanthephyra A. M iIne-Edwards, 188 1の抱卵雌 で , 体 長 は123 m m ( 頭胸甲長 40.0 m m) もあり, ネットの口径の 2 2 % にも及ぶ大きさであ った. 本 9
驚 藤 暢 宏 ・ 西 内 耕
表1 . ヤリヒオドシエビ A canthephy/・'a acutifトonsBate, 1888の日本近海における出現記録.
採集位置 水深(m ) 個体数 出典
40000'N 150000'E 784-892 雌2 Kikuchi
&
Omori, 1985; Kikuchi&
Nemoto, 198634050.8'N 139030,6'E 0- 1000 雄 l Aizawa. 1974
34034.2'N 1 4004 1.0'E 0-1100 雌l Aizaw a, 1974
33000'N 1 56030'E 0-2400 雌4 Kikuchi
&
Nemoto, 198632000'N 1 56000'E 930-1445 雄 3,雌4,幼体l Kikuchi
&
Nemoto, 198631045'N 128045 'E 317-738 抱卵雌l 本報告
30000'N 147000'E 81(ト876 雌6 Kikuchi
&
Omori, 1985; Kikuchi&
Nemoto, 198623000'N 150000'E 750-1514 雄 2,雌51,幼体10 Kikuchi
&
Nemoto, 1986図1 . 東シナ海 (3I045'N, 128045'E) でプランク
トンネット (coc-net) によって採集された
中 ・深層浮遊性エビ類,ヤリヒオドシエビ バcanthephyra acutifト'onsBate, 1888 (N S M T - C r 22337,抱卵雌,頭胸甲長40.0 mrn).
属は世界から27種が知られ (D e Grave
&
Fransen,2011 ),こ のうち9種 が 日 本 近 海 か ら 報 告 さ れ る (林, 2007) 今 回得 ら れ た標本は, 頭 胸 甲背 面 の キールが後端ま で届き ,第1 -第6腹節背面も キー ルを備える; 第3 -第6腹節の キー ル末端は 練 にな り,特に第3 腹節の 練 は大き い; 頭胸 甲側面 後 半部 に縦走隆起はない ,眼 の 角 膜 部 は 眼柄 よりも幅広 い; 額角上縁に10歯,下縁にl歯( 額角上縁先端歯 の下側に位置) があるなどの特徴によって,ヤリヒ オドシエヒペcanthep hyra Bate, 1888に同定 された . このほかの形態もCardoso& Young (2005)
及び林 (2007) による A . acutifrons の記載及び図 に 概ね一致した. 本種はインドネシアのアル諸島近海 の水深1463 m がタイプ産地で,大西洋, イン ド洋 か ら 太 平 洋 北 西 部 の 水 深650-2400 m に分 布 す る
(Cardoso & Young, 2005 ;林,2007). 日本近海から
10
I
C a n僧 r2 2 (2013)の採集記録もあるが (Aizawa,1974; Mauchline et a. , l 1977; Kikuchi & Ornori, 1985; Kikuchi & Nernoto, 1986),量的 に多く採集されることは稀であり( 表 1),生息密度は低いものと考えられている . この エビ を採集 したcocネ ットは,パラカラ ヌス Paracalanusやオイ トナ Oithona,さらに体の 小 さし、 オ ンケア科Oncaeidaeやカイアシ類のノ ープ リウ ス 幼生 など,小型動物フ。ランク 卜ンの採集を目 的とし た採集具である . やや大型のオキアミ類やソ コシラ エビ‘属 Leptochela の若令個体が採集されること はあ るが,普通, このように大きなエ ビが採集されるこ とはなく ,非常に稀な事例である . 既報につい て も,K OC -netやK M下netなど大型採集具による記録 があるのみで, プランクトンネットによる採集例は みら れなかった. 遊泳中にブライドル ロー プなどに あた って反射的にネッ 卜の中に飛び込んだのか,た またまネ ッ トの前面を遊泳していたのか,いずれに せよまこ とに不運な エ ビといえよう . 圃 謝 辞 本稿を草す るに あたり ,独立行政法人水産総合研 究 セ ンタ ー中央水産研究所の花村幸生博士には原稿 をご高閲していただいた,戸板女子短期大学食物栄 養科 の橋詰和 慶 博 士 な ら び に 千 葉 県 立中央 博物 館 分館海の博物館の奥野淳見上席研究員には文献収集 にご協力いただいた . これらの方に対し記して謝意 を表する .
.
支
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