春原久徳[監修] 田中亘/春原久徳/インプレス 総合研究所[著] W o r l d D r o n e M a r k e t R e p o r t 2 0 1 8
ドローンビジネス
調査報告書
2018
[海外動向編]
インプレス総合研究所 [ 新産業調査レポートシリーズ ]SAMPLE
掲載データの取り扱いについて
■CD-ROMの内容
本報告書のCD-ROMには以下のファイルを収録しています。 ●ドローンビジネス調査報告書2018【海外動向編】.pdf
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はじめに ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 3
はじめに
現在、ドローンの活用が世界的に広がるなか、日本でも業務でのドローン活用への期待が確実に高まっ
ています。国内ではドローンの活用に関するルールやガイドラインの整備が進み、農業や測量、防災、空
撮、点検などの分野でドローンを活用したビジネスが動き出しています。
ドローンを活用したビジネスの世界市場、国内市場ともに拡大していくことが予想されます。今後、日
本企業は、こうした状況をチャンスととらえ、国内市場に限らず世界を視野に入れて、ビジネスを行って
いくことが考えられます。
本調査報告書は、海外の最先端事例や世界各国の動向、技術トレンドを捉えながら、海外のドローンビ
ジネスの現状を解説します。国内および海外市場で、自社がどのように戦略をたてて、どのようにビジネ
スをしていけばいいのか、ビジネスの機会を逃さずに、事業を大きくしていくためのアイデアやヒントを
掲載しています。
第
1 章「海外のドローン市場概況」では、海外のドローンに関する市場データを分析しながら、海外
のドローンビジネスに関する概況や投資トレンドをまとめています。また、
DJI や Parrot といったド
ローン業界のビッグプレイヤーの動向と、
NVDIA や Qualcomm、Intel などの大手 IT 企業のドローンビ
ジネスにかかわる戦略を分析し解説しています。
第
2 章「注目すべき海外最先端企業の最新動向」では、「ハードウェア」「サービス」「ソフトウェ
ア」「周辺サービス」の
4 分野においてドローンを活用したビジネスを行っている 30 の企業について、
実際に行っているサービスの特徴や強みなどをまとめ、分析しています。
第
3 章「ドローンビジネスの課題と展望」では、事業レイヤーごとの課題や今後を分析し、日本のド
ローンビジネスの展望をまとめています。
また、付録に海外のドローンビジネス企業一覧(
500 社以上)を Excel データにまとめています。
本報告書が、新しい市場であるドローンを活用したビジネスを進める上で、少しでもお役に立てれば幸
いです。
株式会社インプレス
インプレス総合研究所
2017 年 12 月
SAMPLE
目次
はじめに
... 3
第
1 章
海外のドローン市場概況
... 11
1.1 ドローンの定義 ... 13 1.1.1 本書で取り扱う「ドローン」の定義 ... 13 1.1.2 ドローンの分類... 13 1.1.3 民生用(ホビー)と業務用 ... 13 1.1.4 回転翼と固定翼、VTOL ... 13 1.2 ドローンビジネスに関わるプレイヤー ... 16 1.3 海外の市場規模と販売台数の予測 ... 17 1.3.1 ドローンの世界市場規模は60 億ドル(2017 年) ... 17 1.3.2 世界のドローン出荷台数は300 万台(2017 年) ... 18 1.3.3 米国のホビー用ドローン出荷台数は447 万台(2021 年,FAA) ... 19 1.3.4 米国の産業用ドローンの機体台数は42 万台(2021 年,FAA) ... 20 1.3.5 中国のドローン市場規模 ... 21 1.3.6 水中ドローンの市場は52 億ドル市場へと成長(2022 年) ... 23 1.3.7対ドローン(アンチドローン/カウンタードローン)市場規模は、15 億ドル超へと成長(2023 年) 23 1.3.8 無人機向け蓄電池パックの市場規模は2.25 億ドルへ(2026 年) ... 24 1.4 ドローンの業務活用 ... 25 1.4.1 FAA に登録している機体は 94 万以上(2017 年) ... 25 1.4.2 米国で商業利用機体トップ30 ... 25 1.4.3 米国の商業用パイロット/オペレーター数は40 万人超え(2021 年) ... 28 1.4.4 米国、空撮用途が産業用ドローンの主力ビジネス ... 29 1.4.5 アウトソーシングの可能性が高い産業 ... 32 1.4.6 米国のオペレーターが規制緩和を求めている項目 ... 33 1.4.7 撮影された画像やデータを処理するソフトウェア(米国) ... 34 1.4.8 米国における空撮業務の費用 ... 35 1.5 ドローンビジネスに関する投資トレンド ... 36 1.6 機体メーカーの新しい動き ... 37 1.7 技術のトレンド ... 41 1.8 世界各国(または地域)の規制と概況 ... 42 1.9 主要企業の戦略 ... 44 1.9.1 DJI や Parrot のアライアンスや買収戦略 ... 44SAMPLE
目次 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 5 1.9.2 ドローンビジネスにおけるアライアンスの傾向 ... 45 1.9.3 PrecisionHawk 社が描く「ドローンは次世代の iPhone になる」 ... 47 1.9.4 3DR の戦略転換 ... 50 1.9.5 NVIDIA の「ドローン」×「AI」戦略 ... 51 1.9.6 空飛ぶスマホを実践するQualcomm の動向 ... 52 1.9.7 インテルの描くドローンの成長戦略 ... 56 1.9.8 Microsoft,Amazon,Google など大手 IT 企業による、ドローンの産業利用を視野にいれたデータプ ラットフォームの主導権争い ... 61 1.9.9 世界市場で戦う日本企業 ... 62 1.10 UTM(ドローン航空管制システム)の動向 ... 65
第
2 章
注目すべき海外最先端企業の最新動向
... 67
2.1 注目企業について... 68 2.2 ハードウェア ... 73 2.2.1 CyPhy Works ... 73 2.2.2 POWER VISION ... 76 2.2.3 Yuneec ... 79 2.2.4 Zerotech ... 81 2.2.5 Kespry ... 84 2.2.6 Sky-Watch ... 86 2.2.7 Draganfly Innovations ... 88 2.2.8 Vantage Robotics ... 92 2.2.9 FLIR Systems ... 95 2.3 サービス ... 98 2.3.1 Skycatch... 98 2.3.2 Airware ...101 2.3.3 H3 Dynamics...104 2.3.4 Airobotics ...107 2.3.5 DRONE VOLT... 110 2.3.6 DRONE DEPLOY ... 112 2.3.7 Airinov ... 115 2.3.8 Agrisense ... 118 2.3.9 Industrial SkyWorks ...120 2.3.10 Dedrone ...1222.3.11 Camp Six Labs ...125
2.3.12 Propeller Aero ...127 2.3.13 DRONEBASE ...130 2.3.14 Measure ...133 2.3.15 JD.com ...136 2.4 ソフトウェア ...139 2.4.1 Pix4D ...139
SAMPLE
2.4.2 AUTODESK ... 142 2.5 周辺サービス ... 144 2.5.1 AirMap ... 144 2.5.2 Unifly ... 146 2.5.3 Dronedoctor ... 148 2.5.4 AKITABOX ... 150
第
3 章
ドローンビジネスの課題と展望
... 153
3.1 ハードウェア ... 154 3.1.1 機体... 154 3.1.2 センサー(カメラ等) ... 155 3.2 オペレーション ... 156 3.3 ソフトウェア/クラウドサービス ... 157 3.4 サービス ... 158 3.4.1 空撮(単純な空撮) ... 158 3.4.2 産業特化型の利用 ... 158 3.5 周辺サービス ... 160 3.6 海外企業と日本企業の違い ... 163 3.7 GPS 情報の取得困難な空間(非 GPS 空間)での利用について ... 164SAMPLE
掲載資料一覧 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 7
掲載資料一覧
資料 1.1.1 タイプ別の主な機体メーカー ... 15 資料 1.3.1 世界市場におけるドローンの市場規模予測 ... 17 資料 1.3.2 世界のドローンの出荷台数予測 ... 18 資料 1.3.3 米国のホビー用ドローンの出荷台数予測 ... 19 資料 1.3.4 米国の産業用ドローンの出荷台数予測 ... 20 資料 1.3.5 中国ドローン製造業の市場規模(市場規模左軸、伸び率右軸) ... 21 資料 1.3.6 現地シンクタンクによる 2025 年の中国の市場規模の予測 ... 22 資料 1.4.1 米国 FAA に登録してドローンの登録数 ... 25 資料 1.4.2 米国市場における商業利用されているドローントップ 30 ... 26 資料 1.4.3 米国で商業利用されている機体トップ30の機体メーカー別シェア ... 27 資料 1.4.4 米国における商用利用ドローンのパイロット/オペレーター数の推移予測 ... 28 資料 1.4.5 産業用ドローンの現在の利用用途(複数回答) ... 29 資料 1.4.6 米国のドローンの産業利用用途 ... 30 資料 1.4.7 ドローンの利用者の産業属性 ... 31 資料 1.4.8 ドローンを活用した業務において、アウトソーシングする可能性が高いと思われる分野 ... 32 資料 1.4.9 規制緩和してほしい項目(複数回答) ... 33 資料 1.4.10 ドローンで取得されたデータや画像などを処理するソフトウェア ... 34 資料 1.4.11 米国における空撮業務の費用相場 ... 35 資料 1.5.1 ドローンに関する投資のトレンド ... 36資料 1.6.1 PARROT 社 PARROT BEBOP-PRO THERMAL ... 37
資料 1.6.2 PARROT 社 Parrot Disco-Pro AG ... 37
資料 1.6.3 DJI 社 MATRICE 200 ... 38
資料 1.6.4 3DR 社 Sitescan ... 39
資料 1.6.5 Vantage Robotics 社 Snap Drone ... 39
資料 1.6.6 Cyphy works 社 PARC ... 40
資料 1.6.7 スウィフト社 Swift 020(スウィフトオーツーオー) ... 40 資料 1.9.1 PrecisionHawak のサービスプラットフォーム概要 ... 47 資料 1.9.2 PrecisionHawak のサービスで提供されているデータ ... 48 資料 1.9.3 PrecisionHawak で提供しているソフトウェア ... 48 資料 1.9.4 PrecisionHawak がサービス展開する産業 ... 49 資料 1.9.5 JETSON TX1 モジュール ... 51 資料 1.9.6 JETSON TX1 開発者キット... 52 資料 1.9.7 Snapdragon Flight(1) ... 54 資料 1.9.8 Snapdragon Flight(2) ... 55 資料 1.9.9 TurboX SOM ラインナップ ... 56 資料 1.9.10 インテルが注力する UAV 市場の産業用途 ... 59
SAMPLE
資料 2.1.1 ハードウェア企業の概要 ... 69 資料 2.1.2 サービス企業の概要 ... 71 資料 2.1.3 ソフトウェア企業の概要 ... 71 資料 2.1.4 周辺サービス企業の概要 ... 72 資料 2.2.1 CyPhy Works 資金調達の状況 ... 74 資料 2.2.2 PARC ... 74 資料 2.2.3 PowerRay ... 77 資料 2.2.4 PowerEgg ... 77 資料 2.2.5 PowerEye ... 78 資料 2.2.6 TORNADO H920 PLUS ... 80 資料 2.2.7 6 つのプロペラを備えたヘキサコプター「H520」 4K 解像度に対応した E90 ... 80 資料 2.2.8 (左)農薬散布用ドローンの Guardian-Z10 (右)機体をコンパクトにすることも可能 ... 82 資料 2.2.9 オクトコプター「 E-EPIC 」 ... 82 資料 2.2.10 新型ドローン「 Hesper 」。折りたたむことが可能なデザイン ... 83 資料 2.2.11 Kespry 資金調達の状況 ... 84 資料 2.2.12 Kespry サービスのフロー図 ... 85 資料 2.2.13 Huginn X1D ... 87 資料 2.2.14 Heidrun V1 ... 87 資料 2.2.15 Tango2 ... 89 資料 2.2.16 Draganflyer Guardian ... 89 資料 2.2.17 Draganflyer X4-P ... 90 資料 2.2.18 Draganflyer Commander ... 90
資料 2.2.19 Universal Control System(UCS)は、Draganfly Innovations の次世代コントローラー。 . 90 資料 2.2.20 Snap Drone。プロペラガードが特徴的、安全性が考慮されている ... 93 資料 2.2.21 Vantage Robotics の資金調達状況 ... 93 資料 2.2.22 Snap Drone ... 94 資料 2.2.23 FLIR C3 ... 96 資料 2.3.1 Skycatch の資金調達状況 ... 99 資料 2.3.2 Skycatch が提供するサービス ... 99 資料 2.3.3 DRONEBOX ... 105 資料 2.3.4 Airobotics の資金調達状況 ... 108 資料 2.3.5 AiRobotics Airbase ... 108 資料 2.3.6 DRONE VOLT の売上(2016 年) ... 111 資料 2.3.7 DRONE DEPLOY の資金調達状況 ... 113 資料 2.3.8 DRONE DEPLOY 価格表 ... 113
資料 2.3.9 Drone Mapping Directory ... 114
資料 2.3.10 簡素化された窒素についてアドバイス ... 116 資料 2.3.11 冬期のバイオマスの分布例 ... 117 資料 2.3.12 建築検査の模様 ... 121 資料 2.3.13 Dedrone の資金調達状況 ... 123 資料 2.3.14 DroneTracker の仕組み全体図 ... 123
SAMPLE
掲載資料一覧
ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 9
資料 2.3.15 Camp Six Labs の資金調達状況 ... 125
資料 2.3.16 Propeller Aero の資金調達状況 ... 128 資料 2.3.17 AeroPoints ... 128 資料 2.3.18 DRONEBASE の資金調達状況 ... 131 資料 2.3.19 MEASURE の資金調達状況 ... 134 資料 2.3.20 JD の開発機体 ... 137 資料 2.5.1 Airmap の資金調達状況 ... 145 資料 2.5.2 Unifly の資金調達状況 ... 146 資料 2.5.3 AKITABOX の資金調達状況 ... 150 資料 3.1.1 米国で利用されている機体 Top30 のメーカ別シェア(再掲) ... 154 資料 3.5.1 ホビー用ドローンの出荷台数予測(再掲) ... 160 資料 3.5.2 産業用ドローンの出荷台数予測(再掲) ... 161 資料 3.5.3 米国 FAA に登録してドローンの登録数 ... 162 資料 3.6.1 3DR Sitescan が DJI 機でも利用可能に ... 163
SAMPLE
第1章
海外のドローン市場概況
1.1 ドローンの定義 ... 13 1.1.1 本書で取り扱う「ドローン」の定義 ... 13 1.1.2 ドローンの分類 ... 13 1.1.3 民生用(ホビー)と業務用... 13 1.1.4 回転翼と固定翼、VTOL ... 13 1.2 ドローンビジネスに関わるプレイヤー ... 16 1.3 海外の市場規模と販売台数の予測 ... 17 1.3.1 ドローンの世界市場規模は60 億ドル(2017 年) ... 17 1.3.2 世界のドローン出荷台数は300 万台(2017 年) ... 18 1.3.3 米国のホビー用ドローン出荷台数は447 万台(2021 年,FAA) ... 19 1.3.4 米国の産業用ドローンの機体台数は42 万台(2021 年,FAA) ... 20 1.3.5 中国のドローン市場規模 ... 21 1.3.6 水中ドローンの市場は52 億ドル市場へと成長(2022 年) ... 23 1.3.7 対ドローン(アンチドローン/カウンタードローン)市場規模は、15 億ドル超へと成長(2023 年) 23 1.3.8 無人機向け蓄電池パックの市場規模は2.25 億ドルへ(2026 年) ... 24 1.4 ドローンの業務活用 ... 25 1.4.1 FAA に登録している機体は 94 万以上(2017 年) ... 25 1.4.2 米国で商業利用機体トップ30 ... 25 1.4.3 米国の商業用パイロット/オペレーター数は40 万人超え(2021 年) ... 28 1.4.4 米国、空撮用途が産業用ドローンの主力ビジネス ... 29 1.4.5 アウトソーシングの可能性が高い産業 ... 32 1.4.6 米国のオペレーターが規制緩和を求めている項目 ... 33 1.4.7 撮影された画像やデータを処理するソフトウェア(米国) ... 34 1.4.8 米国における空撮業務の費用 ... 35 1.5 ドローンビジネスに関する投資トレンド ... 36 1.6 機体メーカーの新しい動き ... 37 1.7 技術のトレンド ... 41 1.8 世界各国(または地域)の規制と概況 ... 42 1.9 主要企業の戦略 ... 44 1.9.1 DJI や Parrot のアライアンスや買収戦略 ... 44 1.9.2 ドローンビジネスにおけるアライアンスの傾向 ... 45 1.9.3 PrecisionHawk 社が描く「ドローンは次世代の iPhone になる」 ... 47 1.9.4 3DR の戦略転換 ... 50SAMPLE
1.9.5 NVIDIA の「ドローン」×「AI」戦略 ... 51 1.9.6 空飛ぶスマホを実践するQualcomm の動向 ... 52 1.9.7 インテルの描くドローンの成長戦略 ... 56 1.9.8 Microsoft,Amazon,Google など大手 IT 企業による、ドローンの産業利用を視野にいれたデータプ ラットフォームの主導権争い ... 61 1.9.9 世界市場で戦う日本企業 ... 62 1.10 UTM(ドローン航空管制システム)の動向 ... 65
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第 1 章 海外のドローン市場概況
ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 37
1.6
機体メーカーの新しい動き
世界的なドローン市場において、
2017 年に見られた顕著な傾向は「産業用ドローン」へのシフ
トだった。その中でも、機体の開発だけではなく、社員のリストラも含めて産業用ドローンにシフ
トした主要メーカーが、フランスの
Parrot 社。同社は、2016 年に Parrot mambo や Parrot Swing
のようなホビー用の軽量ドローンを発売したが、年末に大規模な事業再編を行い、ビジネスの軸足
をホビーから産業用途にシフトさせた。その代表的な機体が、
Parrot Bebop-Pro Thermal。FLIR
One Pro サーマルカメラと 14MP のカメラをデュアルで搭載したドローンで、熱センサーによる屋
外施設の異常監視などを目的に開発されたドローン。
資料 1.6.1 PARROT 社 PARROT BEBOP-PRO THERMAL
資料 1.6.2 PARROT 社 Parrot Disco-Pro AG
Parrot 社はこの他にも、固定翼ドローンの Parrot Disco にマルチスペクトルカメラを搭載した
Parrot Disco-Pro AGという精密農業に特化したモデルも販売している。Parrot Disco-Pro AGは、
同社が買収したスイスの
SensFly 社の eBee に対して、圧倒的なコストパフォーマンスがあり、す
でに日本でも
55 万円(税抜)で販売している。
一方で、空撮用ドローンで世界的にシェアを維持している
DJI 社も、2017 年は産業用ドローン
元年と宣言し、二種類の新モデルを発表した。一つは、
Inspire 2 をベースに産業用途に特化した
M200 というクアッドコプター。もう一つは、農薬散布用ドローンの Agras MG-1 というオクタコ
プター。
M200 は、高精度な位置情報を取得できる RTK(リアルタイム・キネマティック)モデ
ルや、赤外線カメラと通常のカメラをデュアルで搭載できるなど、検査や点検用途に向けた機体設
計になっている。
資料 1.6.3 DJI 社 MATRICE 200この他にも、中国の
Yuneec 社では、空撮用に開発していた Typhoon というモデルをベースに、
H520 という点検業務に適した産業用ヘキサコプター
7を発表している。
中国企業のグローバルな台頭という面では、
PowerVision 社も空撮用ドローンからホビー用に水
中ドローンまで、幅広い製品開発を実践している。空撮用ドローンの
PoweEye は、DJI の Inspire
を強く意識したモデルで、コンパクトに折りたたんで持ち運べる機体が特長で、コストパフォーマ
ンスに優れている。
新たな産業用ドローンを開発し販売するメーカーが増える中にあって、ドローンの機体事業から
撤退する動きもある。その代表が
3D Robotics 社の Solo だ。同モデルは、2015 年に発表され市場
の注目も集めたが、コンシューマー向け販売でつまずき、その後
Site Scan という測量向けのソ
リューションを展開していた。しかし、ソリューションの中核となるドローン
Solo の供給に限界
が出て、
2017 年の後半には DJI の Phantom 4 に対応するなど、ハードベンダーからソリューショ
ンベンダーへの業態変化を起こしている。
7 https://www.yuneec.com/en_GB/camera-drones/h520/overview.html
SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況
ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 39 資料 1.6.4 3DR 社 Sitescan
2017 年の世界的な傾向として、ドローンの機体においては中国が勢いづいており、新たな製品
の多くは中国企業が発表している。その中にあって、米国にも新たな動きがある。その一つが、米
国
CNN と Vantage Robotics 社が共同で開発した Snap Drone という空撮用ドローン
8。4
k 動画
まで撮影できる高性能なカメラを備え、米国
FAA から CNN が群衆の上空で飛ばす包括的な許可
を得たモデル。米国では、
$999 で販売が開始される。
資料 1.6.5 Vantage Robotics 社 Snap Drone
またコンシューマー向けよりも、米国では産業や軍事用ドローンの開発が活発で、日本では田中
電機が輸入販売している有線給電式ドローンの
PARC
9は、警備や防衛などを目的に開発され、
200
時間の連続飛行を実現している。
8 https://vantagerobotics.com/ 9 https://www.cyphyworks.com/
SAMPLE
資料 1.6.6 Cyphy works 社 PARC
同じく軍事産業や航空宇宙などの分野で開発を手掛けてきた米国スウィフト社は、
100km の自
律飛行を実現する
Swift 020(スウィフトオーツーオー)という VTOL 型ドローンを開発している。
日本ではエアロセンス社が業務提携している
10。
資料 1.6.7 スウィフト社 Swift 020(スウィフトオーツーオー)さらに、大学や研究機関では空と水中を行き来できるドローンなども開発されていて、橋脚の点
検などの活用が期待されている。
世界的に見ると、ドローンの機体開発はまだまだ過渡期であり、リモートセンシング用途だけで
はなく、物流や緊急空輸に広域点検や警備など、産業用途の需要に対して十分に応えられてはいな
い。マルチコプターによる長時間飛行のためのハイブリッド機や燃料電池の搭載などに取り組むベ
ンチャー企業もあり、今後も技術的なブレイクスルーが起これば、新たな機体が登場する可能性は
未知数だ。
10 https://swiftengineering.com/swift020/
SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 44
1.9
主要企業の戦略
1.9.1
DJI や Parrot のアライアンスや買収戦略
2017 年はドローン企業の買収や提携が加速した一年だった。大型の案件としては、中国 DJI に
よるハッセルブラッド
(Hasselblad)社の買収がある。ハッセルブラッドは、有名なスウェーデンの
カメラメーカー。
DJI に限らず、中国の新興企業では欧州のブランド企業と連携したり買収する事
業戦略が加速している。
DJI のドローンが成功してきた理由のひとつは、機体だけではなくカメラ
からジンバルまで空撮に必要なパーツを自社で開発し製造してきた強みがある。そんな
DJIにとっ
て、今後も空撮業界で主要な地位を占めていくためには、プロフェッショナルから支持されるカメ
ラの性能が重要になる。そこで、銀盤からフィルムカメラの市場では、圧倒的な知名度とブランド
力のあるハッセルブラッドを傘下にしたのだと考えられる。しかし、現在のハッセルブラッドは、
デジタルカメラの市場では後塵を拝している。最上級モデルの中に入っている
CCD はソニー製だ。
DJI のカメラといえば、これまではオリンパスやパナソニックが推し進めるマイクロフォーサーズ
が主流だった。それに対して、ソニー製
CCD を採用しているハッセルブラッド社を買収したのは、
ある種の保険だとも考えられる。あるいは、単にブランドを手に入れたかっただけなのかもしれな
い。
同じくカメラメーカーの買収といえば、
Parrot 社による MicaSense 社の Sequoia の取得がある。
Sequoia はドローンに搭載できる小型のマルチスペクトルカメラ。精密農業や土壌調査など通常の
カメラでは撮影できない光波をスキャンすることで、ドローンの新たな産業用途を開拓できる。さ
らに
Parrot 社は、固定翼ドローンで高い性能を備えたスイスの SensFly 社も買収し、eBee という
デルタ翼の機体を手に入れている。この
eBee をベースに開発されたと思われる Parrot Disco は、
当初は高価なホビー用ドローンとして販売されていたが、
2017 年の夏に Sequoia を搭載した精密
農業用ドローンとして販売を開始した。日本でも
55 万円(税抜き)で販売がスタートしている。精
密農業用のドローンは、今後の成長が期待できる分野。欧州や米国では市場が拡大する傾向にある。
実は、
Parrot 社が買収する以前から、SensFly 社は eBee に Sequoia を搭載した精密農業用のド
ローンを販売していた。日本での販売価格は、
200 万円以上と高額だったために、それほど普及し
ていなかったが、
Parrot Disco-Pro AG の登場によって、普及する可能性が出てきた。
さらに
Parrot 社は測量用ソフトとして実績のある Pix4D 社にも 2012 年から投資を行い、現在
は傘下に収めている。
ドローンメーカーによる買収とは反対に、半導体メーカーが市場に参入するために企業を傘下に
引き入れる例も出てきた。インテルによるドイツの
Ascending Technologies 社の買収だ。この他
にも、インテルは中国の
Yuneec 社に出資するなど、IT 系企業によるドローン産業への橋頭堡を築
SAMPLE
く動きも活発になっている。さらにインテルでは、
DJI の Spark に搭載されている Movidius
Myriad 2 VPU(ビジョン・プロセッシング・ユニット)の開発元 Movidius 社も買収している。
提携に関しては、ドローンを使った測量や点検などのサービスを提供する企業の多くが、
DJI 製
のドローンを対応機種に加える動きも活発だった。特に象徴的だったのは、
3D Robotics 社の
SiteScan という測量ソリューションが DJI のドローンに対応したことである。3D Robotics 社の
他にも、
DJI 製ドローンの飛行管理システムを提供する Kittyhawk や、測量・点検などのソ
リューションを提供する
PrecisionHawk なども、DJI 製ドローンを主軸としたビジネスを展開し
ている。
1.9.2
ドローンビジネスにおけるアライアンスの傾向
■「ソフトウェア×ソフトウェア」
ドローン関連のソフトウェア連携では、いくつかのパターンがある。一つは、オフラインとオン
ラインの連携、もう一つはクラウド上での連携、そしてソフトウェア間でのデータ連携になる。
まず、オフラインとオンラインの連携では、ドローンでスキャンしたデータの最適化を図るため
に、オフラインで処理した後にクラウドなどにアップロードする、という組み合わせがある。この
連携の代表的な例が、
Pix4D のような画像解析ソフトの利用。例えば、測量用のデータが大きいと
きに、
Pix4D を現場のノート PC などでオフラインで実行して、ドローンのメモリカードに保存さ
れている画像をローカルで処理する。オフラインで最適化されたデータをネットワークの利用でき
る環境でクラウドサービスにアップロードする。手間はかかるが、オフライン処理を行うことで、
アップロードするデータのサイズが小さくなり運用の負担が軽減される。こうしたオフラインとオ
ンラインの連携は、すでにクラウドサービスとして画像解析や測量などを提供している事業者が、
新たにサービスとして提供する例が多い。
次に、クラウド上での連携は、精密農業や高度な画像解析に多次元データ作成などのサービスと
して提供されている例が多い。例えば、
AIRINOV 社のようにマルチスペクトルカメラでスキャン
した土壌や植生データをクラウドで管理するサービス事業者が、他のデータ解析クラウドサービス
と連携して、一元的に管理されているデータを多角的に分析する、といった用途がある。また、
3D Robotics 社の Site Scan のような測量サービスでは、クラウドにアップロードした画像データ
の
3D 化や各種加工データの作成に、Pix4D のクラウドサービスと連携して処理性能を高める、と
いった利用例もある。
そして、データ連携に関しては、画像データのようなスキャン後の情報を処理するだけではなく、
飛行中の
GPS や各種のセンサー情報をリアルタイムに処理するサービスなどがある。例えば、
Kittyhawk 社では DJI 製ドローンの飛行管理システムを通して、機体の位置情報をクラウドで共
有するだけではなく、パイロット間のコミュニケーションやビデオに音声のリアルタイムストリー
ミングを提供している。今後は、こうしたサービスに複数の事業者が連携して、飛行中のリアルタ
SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 46
イム情報を相互に活用して、新たなソリューションが構築されていく。
ドローンを空のイメージスキャナと捉えている
IT 企業では、飛行によって得られるデータを有
効に活用するソリューションや管理のためのプラットフォームを提供することで、新たな市場を作
ろうとしている。例えば、インテルではドローンのデータを集中的かつ継続的に管理して、変化や
異常を
AI で解析する Intel Insight Platform というクラウドサービスの開始を計画している
11。
■「ハード×ソフト」
ハード×ソフトの連携やアライアンスでは、
DJI 製のドローンを中心としてサービス事業者が何
らかの対応を推進している例が多い。先に触れた
3D Robotic 社のように、当初は自社のドローン
だけで対応していた測量サービスの
Site Scan を DJI 製ドローンにも対応する動きが加速してい
る。飛行管理システムの
Kittyhawk 社なども、DJI 製ドローンを中心に対応を強化している。今
後も、
UTM などの航空管制システムなどを中心に、ハードとソフトの連携は広がる。
反対に測量用ソフトや各種の解析系ソフトは、ハードとの依存度を下げることで市場獲得を狙う。
特定のドローンやカメラに依存するソフトウェアは、市場での競争力を失う。そのため、ハード
×
ソフトに関するアライアンスが増えるのではなく、ハードとソフトの選択の自由度が広がり、
その組み合わせは多様になる。
一方で、ドローンに搭載するセンサーや
AI 関連技術に関しては、ドローン×センサー×ソフト
という組み合わせでアライアンスが進む。
Parrot 社の Disco-Pro AG のように、自社だけで機体と
センサーとソフトを提供できるベンダーは稀で、それぞれの技術に長けた企業が連携して、農業や
測量や点検などの目的に合わせたソリューションを構築していくだろう。さらに現在は、研究開発
の段階にある
AI による自律飛行や障害物の回避なども、近い将来に実用化の段階となり、コンパ
ニオン
AI とドローンの組み合わせが、機体の飛行性能に大きな影響を与えるようになる。そうな
ると、ドローン×
AI の優劣がビジネスの競争力に直結するようになる。
ところで、機体としてのハードではなく、ドローンの中に入る半導体というハードに関しては、
クアルコム社の
SnapDargon とサンダーコム社の開発キットのように、チップ×開発環境という
アライアンスは増えていく。飛行制御系のシステムだけではなく、各種センサーとの連携や自律飛
行など、ドローンの飛行にとって半導体の存在は不可欠。
IT の市場では、多くの半導体がモ
ジュール化しコモディティ化が加速しているように、ドローンの市場でも半導体部品の汎用化が進
む。そして、それぞれの分野で高いコストパフォーマンスを発揮するモジュールの組み合わせによ
る産業用ドローンも誕生してくるだろう。
11 https://www.intel.com/content/www/us/en/drones/drone-applications/commercial-drones.html#QM
SAMPLE
1.9.3
PrecisionHawk 社が描く「ドローンは次世代の iPhone になる」
米国
PrecisionHawk 社は、米国インテルや Verizon Ventures、DUPONT などの企業が注目し
投資しているだけではなく、日本からも
YAMAHA や docomo が出資しているドローンのソリュー
ションベンダー。創業時の
PrecisionHawk 社は、固定翼ドローンを開発し販売するメーカーだっ
たが、大手資本が投入され
2016 年に現在の CEO である Michael Chasen 氏をはじめとしたスタッ
フが参加したことで、ソリューションベンダーとしての事業戦略を明確に推進してきた。現在、同
社は
5 つの産業分野に特化したドローンのソリューションを提供している。それは、農業、建設、
エネルギー、保険、政府になる。
■「ドローンはビジネスインテリジェンスの新時代を築く」
PrecisionHawk 社の事業方針は、ドローンと IT を組み合わせた新世代のビジネスインテリジェ
ンスの提供にある。同社の包括的なサービスの全体図において、ドローンが担う役割は一部となる。
6 つのパートに分類されるサービスのプラットフォームは、ドローンの他にセンサーとソフトウェ
アに分析、そして追跡とサービスで構成される。追跡では、飛行の安全性を向上させるために、ド
ローンや操縦者に飛行空域などのデータを収集し、リアルタイムで障害データなども提供する。さ
らにサービスでは、訓練を受けたパイロットとデータ専門家のチームが、必要かつ重要なデータを
収集し、航空データと既存のビジネスプロセスの統合をサポートする。
資料 1.9.1 PrecisionHawak のサービスプラットフォーム概要SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 48
①
ドローン
利用するドローンは、
DJI Phantom のような民生機器から、オリジナルの固定翼まで空撮対象
の地域によって選択できる。
②
センサー
資料 1.9.2 PrecisionHawak のサービスで提供されているデータまたドローンに取り付けるセンサーは、標準的な空撮用カメラから
3 バンドや 5 バンドの光波セ
ンサーに、
3 次元の点群データをスキャンできる LiDAR に、サーマルカメラ、そしてハイパース
ペクトルカメラまで対応する。
③
ソフトウェア
ドローンのセンサーの最適な組み合わせに加えて、正確に目的の地域をスキャンするために、
PrecisionHawk では PRECISION FLIGHT というドローンの自動操縦アプリケーションを用意し
ている。このアプリケーションは、飛行計画を作成し、リアルタイムで情報を取得し、オンライン
でもオフラインでも利用できる。
PRECISION FLIGHT を利用することで、ドローンの操縦に不
慣れな事業者でも正確に地表のデータを取得できる。
資料 1.9.3 PrecisionHawak で提供しているソフトウェア
④
アナリティクス
自動操縦アプリケーションに加えて、飛行時に収集したデータを分析するために
PRECISION
VIEWER というアプリケーションも提供している。PRECISION FLIGHT はドローンを飛行させ
るためのアプリケーションだが、
PRECISION VIEWER はドローンでどのようなデータを取得す
るかを細かく設定するアプリケーションになる。二つのアプリケーションを組み合わせて使うこと
で、目的の地域を正確にスキャニングできるようになる。そして、ドローンで得られたデータを分
析し共有するために、
PRECISION MAPPER というアプリケーションもある。PRECISION
MAPPER は、空撮データをオルソモザイクや 3D モデルなどに変換し、スキャンしたエリアを視
覚化する。分析に関しては、独自の解析アルゴリズムだけではなく、オンデマンドで利用できる分
析ツールのライブラリを利用して、用途に合わせた解析にも対応している。
■5 つのスマートパッケージを提供
PrecisionHawk 社は、「ドローン+センサー+ソフトウェア+アナリティクス」を組み合わせ
た
5 種類のスマートパッケージを 5 つの産業分野向けに提供している。
資料 1.9.4 PrecisionHawak がサービス展開する産業その
5 つの分野が、冒頭で紹介した「農業、保険、エネルギー、建設、政府」になる。同社が注
力する
5 つの産業分野は、米国においてドローンを活用したソリューションによる高い収益が望め
る事業領域だと期待されている。例えば、農業に向けたスマートパッケージでは、空撮映像から植
生から収量を予測したり、
3 バンドセンサーで植物の高度な健康指数を検出できる。また、5 バン
ドセンサーで生育に使用できない定常水の区域を判別したり、
LiDAR で排水設備の高低差を解析
して、的確なマッピングを作成できる。一方、建設向けのソリューションでは、進捗状況を追跡す
る
3D マップの作成や等高線マップにデジタル表面モデルの作成などに活用できる。大型のプラン
トでは、機材や材料の管理や監視に、熱センサーによる外観検査や隠れた異常の検出などが可能に
なる。エネルギー関連では、パイプライン監視や風力タービン検査に、海底マッピングに環境調査、
電力線の解析にソーラー施設のホットスポット検出など、多岐にわたる検査や点検に対応する。こ
れら建設やエネルギーに利用されるドローンのソリューションの多くは、そのまま政府によるイン
フラ点検や都市計画などの調査にも応用できる。そして保険業界に対しては、大災害の被害調査や
水害レポートなどでの活用を想定している。
SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 50
■2020 年に 56 億ドル産業と予測されるドローンのソリューション市場を中心に事業展開
PrecisionHawk 社のブログで紹介されている統計情報レポート
12によれば、世界的なドローン
市場は
2020 年までに 56 億ドルに成長すると予測されている。その中でも、精密農業に関連した
ドローンと関連ソリューションが、もっとも高い成長率になると推測している。その他の分野では、
空撮や小売に検査やマッピング、教育などがある。
PrecisionHawk 社は、56 億ドルの産業に対して 5 つのスマートソリューションで、事業を拡大
していく。そのために重要な戦略は、ドローンの開発ではなくドローンとセンサーで得られるデー
タ処理にあると判断して、アプリケーションを中心とした解析や共有などに注力している。こうし
たソリューション中心の事業展開は、ドローンの設計や製造も行っているスイスの
sensFly 社にも
共通した戦略で、今後も世界各国でソリューションベンダーが多く登場してくると考えられる。
CEO の Chasen 氏は「私はドローンが次の iPhone だと思うし、PrecisionHawk ではそのビジョ
ンを前進させるためにできることはすべてやっている」と話している。
1.9.4
3DR の戦略転換
3D Robotics(以下:3DR)は DJI Phantom の白い機体に対抗するかたちで、黒い機体の SOLO
を開発し、販売展開した。しかし、最初の商戦であった
2015 年のクリスマス商戦で DJI に完膚無
きままにやられてしまい、その在庫処理に追われて大規模なリストラを強いられることになった。
3DR は、SOLO の後継機を開発するための資金も人材も失い、ドローンのハードウェア開発から
撤退を余儀なくされた。
これらをきっかけにして、
3DR は「サービスとしてのドローン」を追求していくことになる。
3DR は、2016 年 3 月には Autodesk および Sony との提携を発表。その内容は、「3D Robotics
は、
Autodesk と Sony と共に SOLO が飛行中に特定の面積や構造の空撮を行い、そのマップや 3D
モデルをクラウド上にアップロードできるように進化させる」という、
SOLO をベースに空撮しな
がら、建設業やエンジニアリング向けに
3D モデルを提供していくサービスであった。
これが、ドローンによる空撮からクラウドでの処理、
3 次元データ提供まで統合された「Site
Scan」となる。2017 年 5 月にはシリーズ D ラウンドで資本金 5,300 万ドル(約 55 億円)を調達
したと発表した。これにより
3DR は、Site Scan というドローンを活用したサービスを拡大展開し
ていく企業へと生まれ変わることになる。工事進捗に利用できる
Sitescan は、土木建設会社の経
営管理のツールとして利用されている。
2017 年 8 月には、業務向けプラットフォームを、DJI のドローンに統合していくことを発表し
ている。
12 http://www.precisionhawk.com/media/topic/drones-in-2016-4-numbers-everyone-should-know/
SAMPLE
ハードウェアを販売するビジネスからドローンを活用したサービスへとビジネスを転換した
3DR に学ぶべきことは多い。
1.9.5
NVIDIA の「ドローン」×「AI」戦略
PC 用の高性能なグラフィックボードで有名な NVIDIA 社は、ドローンを含めたロボティクス向
けの
AI 戦略を加速している。その代表的な製品が、Jetson TX シリーズという AI ボード。Jetson
TX は、クレジットカードサイズの AI スーパーコンピュータ。グラフィック用の GPU で並列処理
を加速して、
AI コンピューティングを実現している。例えば、小型のモバイルカメラで撮影した
映像を使って深層学習を行い、森の中で道と木などの障害物を認識して
GPU を使わずに自律的に
移動できるドローンの制御技術を
NVIDIA の研究者は開発している。
また、中国の物流大手
JD.COM でドローンの開発を推進している JD X 社が、ビークルとドロー
ンを組み合わせたスマート物流を実現するために、
NVIDIA の AI を採用し開発に取り組んでいる。
NVIDIA のドローン戦略は、機体を開発するベンダーと組んで、AI を加える支援が中心になる。
その支援には、
2 つの方向がある。
ひとつは、すでに触れてきたように、自律飛行を支援する
AI 性能の追加。
Aerialtronics 社は、Jetson と Neurala のディープラーニング ソフトウェアを使い、技術的に高
度な産業用ドローンを製造している。同社は、携帯電話の基地局や送電線に風力タービンなどのイ
ンフラストラクチャーの安全点検のために完全自律型ドローンを導入している。この他にも、
IFM 社は Jetson 技術を利用して同社の飛行ロボットを小型化し、軽量化と敏捷化により、倉庫の
廊下や狭い空間を高速で通過できる自律飛行を実現している。
資料 1.9.5 JETSON TX1 モジュールそして、もうひとつがドローンを
IoT 端末として捉えたときに、そこから収集される膨大なデー
SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 52
タを端末側で処理するエッジコンピューティング性能の付加。クラウドコンピューティングによっ
て、集中化の進んだ
IT 市場は、IoT という新たなデータ収集の時代を迎えて、再び分散型アーキ
テクチャが広がりを見せている。その
IoT 端末の一つとして、多様なセンサーを搭載して飛行する
ドローンは、一回のフライトで数十ギガバイトのデータを容易に収集する。そのデータをすべて通
信回線でクラウドにアップロードしようとすれば、膨大なトラフィックが発生するだけではなく、
収集したデータの管理も複雑になる。そこで、あらかじめ必要なデータだけを選別するために、ド
ローン側に高性能な演算能力を備えるエッジコンピューティングが注目されている。例えば、施設
点検などの用途であれば、定期的に同じコースを飛行して、前日や過去に蓄積された画像データと
比較して、リアルタイムで亀裂や破損などの異常を検知することも可能になる。
ドローンによって収集される膨大なデータをエッジで処理するかクラウドで処理するかは、
IT
ベンダーの得意とする技術やビジネスモデルによって異なるが、
Jetson TX シリーズという組み込
み可能な
AI スーパーコンピューティングを提供する NVIDIA は、より多くのドローンに自社の
チップやボードを搭載する戦略を推進していく。
資料 1.9.6 JETSON TX1 開発者キット
1.9.6
空飛ぶスマホを実践する Qualcomm の動向
■ドローンやロボティクス用に性能を強化した Qualcomm Snapdragon Flight
ドローンを飛行させるコア技術の多くは、スマートフォン
(スマホ)で用いられてきたテクノロ
ジーで、スマホの普及が高機能化と低価格化を促進してきた。その代表的なコア技術が、姿勢制御
のための
IMU と位置情報を取得するための GPS になる。だが、それ以外にも WiFi 通信や電力制
御に静止画や動画の記録など、スマホで使われている技術の多くが、ドローンの技術にも利用され
ている。そのスマートフォン市場において、圧倒的なシェアを誇るコア技術を提供しているのが、
Qualcomm のアプリケーションプロセッサ。Qualcomm Snapdragon という製品名で、数多くの
スマートフォンに搭載されている。その
Qualcomm Snapdragon をドローンやロボティクス用に
性能を強化したアプリケーションプロセッサが、
CES 2017 で発表された Qualcomm Snapdragon
Flight だ。
クレジットカード(
58x40mm)よりも小型で、コンシューマー向けドローンとロボット用アプ
リケーションのために開発された高集積な
Qualcomm Snapdragon Flight は、Snapdragon 801 プ
ロセッサのパワーを活用し、堅牢な接続性と高度なソフトウェア開発ツールに、最新鋭のモバイル
テクノロジを備え、開発者が次世代のコンシューマー向けドローンを作成できるように設計されて
いる。
■4k ビデオにも対応する高性能なプロセッサ
Qualcomm Snapdragon Flight は、写真、ナビゲーション、通信技術を、単一のボードに収まる
コンパクトで効率的なパッケージに集積している。その結果、このボードを使用するドローンは、
サイズや重量に消費電力を削減し、飛行時間と安全性を確保して、使いやすいフォームファクタを
消費者に提供できる。その一例が、一世代前の
Snapdragon を搭載したコンシューマー向けドロー
ンとして、
2016 年にヒットした機種が、Zerotech 社の Dobby である。
さらに進化した
Snapdragon Flight は、高度な処理能力、クアルコム Hexagon DSP のリアルタ
イム飛行制御、内蔵
2x2 Wi-Fi と Bluetooth 接続、最適化された Qualcomm SirfStar V グローバ
ルナビゲーション衛星システム(
GNSS)による正確な位置情報の取得を実現している。
●
Snapdragon Flight
【主な機能】
4K ビデオ – FPV(一人称視点)でのリアルタイム 720p エンコーディングによる 4K 高解像度カメ
ラのサポート、画像エンハンスおよびビデオ処理機能
SAMPLE
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高度なコミュニケーションとナビゲーション
- デュアルバンド 2x2 802.11n Wi-Fi、Bluetooth
4.0、および 5 Hz GNSS ロケーション機能と Hexagon DSP 上の高度なリアルタイム飛行制御
堅牢なカメラとセンサーのサポート
– 4K ステレオ VGA、オプティカルフローカメラ、慣性測定
ユニット(
IMU)、気圧センサーサポート、追加センサー用ポート(カメラオプションには 4K 前
方カメラ、ステレオ(デプスセンシング)カメラ、下向きの「光学式フロー」カメラ)
資料 1.9.7 Snapdragon Flight(1)カメラの性能は、航空写真撮影からスポーツイベントの撮影に至るまで、幅広いアプリケーショ
ンをサポートできるように設計されている。また、
Snapdragon Flight は、ナビゲーション、オプ
ティカルフロー、ジンバル制御のためのハードウェアと高度なソフトウェアモジュールの両方を含
むクアルコムドローン開発プラットフォームの一部であり、人物や物体やその他の障害物に対する
衝突回避の機能も提供できる。さらに
Snapdragon Flight は Linaro Linux と OpenCV をサポート
し、企業が既存のドローン用ソフトウェアを簡単に移植できる柔軟なプラットフォームとなってい
る。
資料 1.9.8 Snapdragon Flight(2)
■ドローン全盛時代を見据えた半導体戦略を推進する Qualcomm
Qualcomm は、Snapdragon をベースにしたドローン用の制御回路を開発しているだけではなく、
このハードウェアを活用するためのソフトウェアや開発環境において、中国のサンダーソフトとい
う会社と協力している。サンダーソフトは、
2008 年に中国の深センで創業したソフトウェア企業。
同社は組み込みソフトウェアベンダーとして、グローバルに事業を展開している。現在は北京の本
社を中心に、北京、南京、成都、杭州、西安、瀋陽、大連に合計
7 箇所の R&D センターを設立し、
東京、シリコンバレー、ソウル、台北、香港、深センの
7 箇所に技術サポートセンターを設置して
いる。サンダーソフトのサービスネットワークは、世界
20 カ国以上にわたり、中国語はもちろん、
日本語・英語・韓国語を初めとする十カ国語以上の言語でのサービスをサポートしている。サン
ダーソフトはスマートデバイス業界において、チップセット・部品、端末メーカー・ソフトウェア
及 び ネ ッ ト ワ ー ク プ ロ バ イ ダ ・ オ ペ レ ー タ ー な ど を 扱 う 大 手 企 業 と 密 接 に 連 携 し て い る 。
Qualcomm とは、合弁でサンダーコムという会社を設立し、ドローンや VR、AR(拡張現実)用
デバイスに、
IoT 機器の開発に向けたプラットフォームを手掛けてきた。
SAMPLE
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 56 資料 1.9.9 TurboX SOM ラインナップ
Qualcomm は、サンダーソフトやサンダーコムとの協業によって、Snapdragon 関連のアプリ
ケーションプロセッサをコンシューマー向けドローンで利用しやすい開発環境を整えている。その
顕著な例が、先に触れた
Zerotche 社の Dobby という 200 グラム未満の自撮り用ドローン。この
Dobby の飛行制御やカメラ撮影に WiFi 通信などのコア技術は、Snapdragon 801 に代表されるス
マートフォン用のアプリケーションプロセッサで処理されている。
Zerothch 社の Dobby は、飛行
制御やカメラなどのユーティリティ性能を
Snapdragon とサンダーコムの提供する制御システムで
実現している。スマートフォンの市場では当たり前になっているモジュール開発の手法を取り入れ
たことで、短期間にコストパフォーマンスに優れた製品を開発できた。こうした傾向は、今後は産
業用ドローンの市場にも浸透していく可能性は高い。
さらに
Qualcomm 社は、ドローンが WiFi 通信による飛行から、携帯電話の通信網を利用した目
視外の自律飛行になる時代を見据えて、
Snapdragon によるモバイル通信の精度の向上や 5G 通信
に向けた取り組みも加速している。
Intel や NVIDIA など、スマートフォンの主要プロセッサとしての地位を獲得できなかった半導
体 メ ー カ ー も 、 ド ロ ー ン が コ モ デ ィ テ ィ 化 す る 時 代 を 見 据 え た 戦 略 を 実 践 し て い る が 、
Snapdragon という強力なアプリケーションプロセッサを開発している Qualcomm 社は、その主
力製品をドローンに搭載する戦略で、空飛ぶスマホとしてのリーディングカンパニーになろうとし
ている。
1.9.7
インテルの描くドローンの成長戦略
インテルは、この数年でドローンの成長戦略を加速している。インテルといえば、
IT 関係で知
SAMPLE
らない者はいない大手半導体メーカー。そのインテルが、自社の成長戦略においてドローンの存在
は不可欠だと捉えている。その最大の理由は、ドローンを「データ入力デバイス」と位置付けてい
るから。インテルの推計によれば、今後のドローンは
1 回のフライトで 5G バイトから 50GB 程度
のデータを収集する能力を備える。そうなれば、膨大なデータを記録するためのメモリやストレー
ジの需要は高まる。また、収集したデータをクラウドに転送するためには、次世代通信
(5G)に代表
される高速なモバイル転送も必須となる。さらに、クラウドに蓄積された膨大なデータの中から、
画像診断や統計分析に将来予測など、ビジネスにつながる情報処理が求められる。そのときに、高
性能な
CPU パワーが求められるだけではなく、最先端の AI 関連テクノロジーの需要も加速する。
つまり、インテルにとって産業用ドローンの普及は、半導体関連の産業に大きな恩恵をもたらす。
それが、インテルにおけるドローンの成長戦略の青写真となる。
■満ち溢れるデータとの戦い
それでは、具体的にどの程度のデータ洪水が発生するのだろうか。インテルが公開している
Amalgamation of analyst data and Intel analysis による統計データによれば、2020 年までに平
均的なネットユーザーが
1 日に利用するデータ量は、1.5GB に達する。また、自動運転車から得ら
れるデータは、
1 日で 4TB に及ぶ。そして、ネットワークに接続された航空機からは、1 日に 5TB
のデータが収集される。さらに、インダストリー
4.0 で注目されているスマート・ファクトリーで
は、
1PB(ペタバイト)のデータが 1 日で蓄積される。こうした産業分野だけではなく、エンター
テイメントに関連するクラウド・ベースのビデオ配信事業社となると、
1 日で 750PB のデータが
消費される。こうした自動運転やネット航空機に比べれば、ドローンで得られる
5GB~50GB とい
うデータ量は、まだまだ少ない。しかし、産業用ドローンの利活用が進めば、より膨大なデータが
収集されるようになり、それを円滑に処理する各種の半導体製品が、インテルに膨大な利益をもた
らすと考えられている。
■インテルのドローン・グループが取り組む 4 つの領域
インテルでは、具体的に
4 つの事業領域に分けて、ドローン市場におけるリーダーシップやパー
トナーシップを推進している。その分類は、開発者向けのドローンキットに、ライトショーという
エンターテイメント、そして産業用ドローンに、パートナーとのエコシステム構築になる。
まず、ドローン向けの開発キットでは、インテル
Aero プラットフォームという製品を販売して
いる。これは日本からもインターネット経由で購入が可能。インテル
Aero プラットフォームは、
インテル
RealSense テクノロジーというセンサー技術を搭載し、オープンソースの Liunx ベース
で動作する。フライトコントローラーには、
Dronecode や PX4 をサポートし、米国の空域サービ
ス
AirMap の SDK もサポートする。ハードウェアは、4 モーターのマルチコプターで、インテル
Aero エンクロージャーキットに、インテル Aero Compute Board と、インテル Aero Vision アク
セサリーキットで構成される。インテル
Aero Vision アクセサリーキットには、3 台のカメラが装
備されている。
3 台は、Intel Real Sense カメラ(R200)に、8 メガピクセルのカメラに VGA カメラ
で構成され、インテル
Aero Compute Board と連携して、飛行中のビジョンと障害物の検出を行
第 1 章 海外のドローン市場概況 ドローンビジネス調査報告書 2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 58