SAMPLE
1.9.8 Microsoft,Amazon,Google など大手 IT 企業による、ドローンの 産業利用を視野にいれたデータプラットフォームの主導権争い
クラウドサービスの市場では、先行する
Amazon
のAWS
を追随するように、Microsoft
のAzure
にIBM Cloud
、Google Cloud Platform
など、巨大IT
企業がプラットフォーム戦争を繰り広げて いる。各社のクラウドサービスは、料金や提供される機能やサービスの内容に多少の違いはある。だが、クラウドサービスとして必要な基本性能は、どの
IT
企業を選んでも手に入る。そこで、各 社はAI
関連機能や既存のサービスとの連携などをメリットとして提案している。ドローンに関しては、本格的な産業利用がはじまれば、通常のカメラやマルチスペクトルカメラ で撮影した膨大な画像データを保管し分析し運用するために、クラウドサービスを利用する頻度や 量が増えると予測されている。そうした背景から、大手
IT
企業はドローン産業のプラットフォー ムとして自社のクラウドサービスを定着させようと努力している。Microsoft
では、政府向けのク ラウドサービスのMicrosoft Loud for Government
で、多数のビデオ監視映像やパトロールカーに ドローンなどからのデータをクラウドで統合し、インターネットを介して指揮官などに情報を伝え るデモンストレーションを警備関連のイベントで実演している13。ただし
Microsoft
は、ドローンを開発していない。同社の研究部門では、AI
関連の技術を研究する一環として、上昇気流を捉えて自律飛行するグライダーを研究しているが、マルチコプター型の ドローンは設計も製造もしていない。その一方で、
2017
年にはドローンの空域管理システムを提供する
AirMap
に投資している。その理由として考えられるのは、AirMap
のビジネスが活発になれば、そのデータを中継するクラウドサービスとして、
Microsoft
のAzure
プラットフォームが利 用される可能性が高くなるからだ。一方で
Amazon
は、AWS
を利用したドローン向けIT
サービスの利用を増やそうとするだけではなく、ドローンの物流に向けた各種の特許戦略も展開している。都市型のドローン物流拠点や、
13 https://dronelife.com/2016/10/17/drones-and-microsoft-fly-police-data-into-the-cloud/
SAMPLE
第1章 海外のドローン市場概況
ドローンビジネス調査報告書2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 62
郊外や移動式のドローン配送中継システムなどのアイディア特許を米国の特許局に申請し承認され ている。
NASA
やFAA
と協力して、ドローンの飛行管制システムの実証実験で自社のGoogle Map
を位置情報のプラットフォームとしてサービスを提供するなど、既存のクラウドサービスとドローンの連携を模索している。将来、
Google Map
が米国におけるUTM(
ドローン飛行管 制システム)
のプラットフォームとなれば、関連するAI
とクラウドサービスの連携を強みとするIBM
や可能性も考えられる。
1.9.9 世界市場で戦う日本企業
日本企業のなかにも、海外市場へ参入している企業はある。たとえば、アフリカでドローンを活 用した道路の点検サービスを行う
CLUE
や、ドローンを活用した測量ビジネス、そして、ベルギーの
Unifly
社に6
億円の出資を行っているテラドローンなどである。これらの企業に共通したキーワードは「スピード」、そして現地に飛び込んでいき、ビジネスを 進めるという「行動力」、そして、どういった現場のニーズにこたえていく「現場力」というもの があげられる。
以下、代表的な企業の取り組みを紹介していく。
■CLUEの取り組み
株式会社
CLUE
は、2017
年5
月より西アフリカのガーナに進出することを発表した。日本企業 としては史上初となるドローン公式飛行許可証を、ガーナの民間航空局である「Ghana's Civil Aviation Authority
(GCAA
)」より取得している。これにより同社はガーナ国内で自由にドロー ンを飛行させることできる。なお、
GCAA
からの許可を得ずに無断でドローンを飛行させた場合は、30
年以下の懲役また は1000
万円以下の罰金となる。公認の飛行許可は安易に許可されるものではなく、政府の審査に よってガーナ国内の個人、法人に許可されている。CLUE
がアフリカへ進出した背景には、アフリカの急成長とそれに伴う課題にある。アフリカは過去
5
年の経済成長率が約5
%で推移しており、今後巨大なアフリカ経済圏の形成 が期待されている一方で、インフラ整備が追いついていない現状がある。たとえば、紙で保管され ている記録や人力による点検作業など、旧来の仕組みから脱却できていないことで発生する非効率 な作業だ。こうした課題は、ドローンを活用することで解決することができるという。たとえば、道路な どのインフラ点検においては、上空から道路を撮影し、その画像を地形の
2
次元データや3次元 データとして提供する。データを活用した点検によって作業が効率化され、従来の人と紙での点検 と比較して約10
分の1に時間を短縮することが可能だ。SAMPLE
CLUE
はGCAA
よりガーナのインフラ改革の一環として公式飛行許可証を取得しており、日本 のドローン技術を活用して、さまざまな課題の解決に注力していくという。また、ガーナで大きな問題となっている金の違法採掘の撲滅に向けてガーナ政府と協力すると 発表している。
CLUE
はドローンで違法採掘現場を監視することで解決を目指した取り組みを 行っている。2017
年11
月には、リアルテックファンド、DroneFund
、アイ・マーキュリーキャピタル株式会社、
Spiral Ventures
、電通ベンチャーズ、株式会社ドリームインキュベータ、株式会社アドウェイズ、家入一真氏、及び既存株主らを引受先とする
3.3
億円の第三者割当増資を実施したこと を発表。今回の資金調達により技術開発体制の強化と海外展開の強化を進めていくという。■テラドローンの取り組み
テラドローンは特に海外市場へ積極的に挑戦している企業といえる。テラドローンは海外への支 社設立をスピーディに行っている。
2017
年1
月にはオーストラリアのブリスベン、2017
年3
月、インドネシア共和国ジャカルタ首 都特別州ジャカルタ市に支店を開設。2017
年6
月はオーストラリアのシドニーとメルボルンに支 社を設立している。今まで日本の土木測量で培ってきたノウハウを活かしながら、さらなる事業拡大をしていくとし ている。
また
2016
年11
月、テラドローンはドローンの運行管理システムであるUTM(UAV Traffic
Management)
事業の開始を発表した。UTM
事業において世界的なリーディングカンパニーであるUnifly NV(
本社:ベルギー、アントワープ)
に約5
億円を出資し、戦略的パートナーシップを締結。テラドローンの徳重徹社長が
Unifly
の役員に就任している。■ドコモの動向
NTT
ドコモは、「ドコモ・ドローンプロジェクト」の一環として、自動飛行ドローンを活用し たインフラ点検に取り組む。点検品質の均一化、点検作業の効率化および人身事故防止などの社会 的課題解決をめざし、まずは、NTT
ドコモの無線基地局において手動操縦ドローンを用いた点検 を2017
年10
月より導入したと発表した。鉄塔上での高所作業における落下事故へのリスク回避 および死角となる場所の点検品質向上が狙いだ。将来的には、さらなる点検品質の均一化および点検作業の効率化のため、ドローン飛行および 画像解析の自動化をめざす。そのため、
NTT
ドコモの100%
子会社である株式会社NTT
ドコモ・ベンチャーズを通じて、米シリコンバレーにあるインフラ点検用ドローンの開発企業である
PRENAV, INC.
(プレナブ社)に2017
年11
月9
日に出資したという。プレナブ社は、高精度位置制御が可能なドローンソリューションを開発する企業。プレナブ社 が提供しているドローンソリューションは、専用レーザー装置によるインフラ設備などの建造物の
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第1章 海外のドローン市場概況
ドローンビジネス調査報告書2018【海外動向編】 © 2017 W.Tanaka,H.Sunohara,Impress Corporation 64
3D
モデル生成、建造物を撮影するための飛行計画作成、自動飛行ドローンによる建造物の撮影、そして撮影画像に基づくレポート作成という一連の点検作業を自動化する。プレナブ社はアメリカ の鉄塔保有事業者向けに、基地局や鉄塔などの監視・点検について実証実験を行っている実績があ る。
今後、
NTT
ドコモは、プレナブ社のドローンソリューションを活用し、自社設備の点検などに とどまらず、橋脚や発電所、石油採掘装置などの分野へ水平展開するという。また、故障予測や資 産管理などの分析サービスへの展開も予定しており、ドローンを活用した社会的課題解決に向けた 取り組みを推進していく。■三井不動産
三井不動産は
7
月24
日、CVC
出資先のベンチャー企業Dronomy Ltd.
(ドロノミー)と共同で、ドローンの実証実験を実施したと発表した。
今回の実証実験は、
2017
年7
月に、三井不動産が参画する再開発事業地区である東京都中央区 日本橋室町3
丁目の建設現場で実施した。施工会社の鹿島建設ほかジョイントベンチャーの協力のもと、
Dronomy
が独自開発したドローンの自律飛行技術を使用し、工事現場の空撮および施工中の建物の
3D
モデル作成を行ったという。計測・取得した各データはクラウド上で管理され、今後は工事の進捗管理、計測、関係者間の情 報共有ツールとして活用を検討し、各業務の効率化、人件費削減、安全管理の向上等の実現可能性 を探っていくとしている。
Dronomy
はイスラエル軍のドローン研究者や測量部隊の司令官などを務めたトップエンジニアが