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はじめに 今や 現代人にとって手放せなくなったスマートフォン 日本に限らず インターネットをいつでも利用できる人は急速に増加している 特に 手軽に自分以外の外の世界とつながることを可能にしたのが LINE や Facebook Twitter などの SNS だ 2017 年には インスタ映え が流

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2017 年度 一橋大学社会学部 中北浩爾ゼミナール ゼミ論文 選挙戦におけるSNS の持つ効果 ―立憲民主党の SNS 戦略の分析― 社会学部3 年 4115157U 中尾敏宏 目次 はじめに 第1章 SNS の浸透 ⑴ 日本国民の間での浸透 ⑵ 国会議員の間での浸透 ⑶ 政党の間での浸透 第2章 選挙とSNS の関係性 ⑴ ネット選挙の解禁 ⑵ SNS から見た第48回衆議院議員選挙の分析 ⑶ 立憲民主党の SNS を駆使した選挙戦略 第3章 選挙におけるSNS の持つ効果 第4章 おわりに

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はじめに 今や、現代人にとって手放せなくなったスマートフォン。日本に限らず、インターネット をいつでも利用できる人は急速に増加している。特に、手軽に自分以外の外の世界とつなが ることを可能にしたのが、LINE や Facebook、Twitter などの SNS だ。2017 年には「イ ンスタ映え」が流行語大賞を受賞するなど、社会現象にまでなるほどInstagram をはじめ としたSNS は社会に深く浸透している。 今回のゼミ論ではインターネットの中でも特にSNS に注目し、日本政治と SNS の関係 性をテーマに研究していく。アメリカのドナルド・トランプ大統領がTwitter 上での発言で 世界を混乱させるなど、世界的にも政治とSNS の関係が密接なものだと理解されつつある 現代。日本でもSNS は政治においてどれほど影響力を持っているのだろうか。特に、注目 するのは、有権者と政治を繋げる「選挙」と、人々と社会を繋げる「SNS」の関係性だ。若 者の政治離れが進む中、若者にとってなくてはならない存在となったSNS は今後の日本政 治において鍵を握る存在にもなりうる。多くの可能性を持ちながらも、リスクも潜む選挙と SNS の連関をデータも元にして分析していく。 そんなテーマを定めた中、2017 年秋に行われた衆議院選挙で立憲民主党が躍進を遂げた。 ここで注目されたのがSNS を強く意識した選挙戦略だ。 以上を踏まえて、今回のゼミ論文では、日本政治とネット・SNS の関係性という背景も 踏まえて立憲民主党のSNS を駆使した選挙戦略が躍進の要因となったかを論じていく。 第1章 SNS の浸透 ⑴ 日本国民の間での浸透 まず最初にこれからSNS と政治に関して論じていくにあたって、SNS とは何なのか、ど れほど日本国民の間で浸透しているのかを具体的に示していく。

SNS とは social networking service(ソーシャルネットワーキングサービス)の略であり、 個人間のコミュニケーションを促進し、社会的なネットワークの構築を支援する、インター ネットを利用したサービスのことである。また、今回のゼミ論でも主に取り上げるFacebook、 Twitter、Instagram 、LINE の特徴を以下の表 1 でまとめた。

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表1:主要 SNS の特徴 月間アクティブユーザー数 国内ユーザー数 拡散力 透明性 投稿特徴 ユーザー特徴 Facebook 21 億人 2800万人 〇 ◎ 実名登録 ビジネス向け Twitter 3 億 2,800 万人 4500万人 ◎ △ 140字字数制限 若者 Instagram 8億人 2000万人 △ 〇 写真や動画が中心 若者、女性向け LINE 2 億 1,700 万人 7300万人 △ 〇 「友達」との連絡手段 幅広い世代 筆者作成 上の表1 で国内、海外ユーザーの合計数、発信した情報が伝播していく拡散力、発信者や 情報の信頼性・情報の出所の分かりやすさを表す透明性、投稿やユーザーの特徴をまとめた が、次に各SNS の特徴を紹介していく。 まず、Facebook は世界最大の SNS で実名登録制という観点から情報の信頼性が高く、 経営者やビジネスマン、海外意識の高いユーザー等が多いのが特徴と言える。広告のターゲ ティングの正確さなどからも、最もビジネス的と言える。しかし、基本的にはフォローして いる(友達になっている)ユーザーの投稿や他ユーザーが意図的にシェアされたものしかみ ることができないため、不特定多数に向けた拡散力は後で紹介するTwitter には劣る。 次に Twitter は国内ユーザーの多さが特徴である。また、一度の投稿で 140 字以内とい う制限があるもののFacebook と比べると、ユーザーの投稿数が多く、気楽に情報を発信す ることができる。また、一方的にフォローしている相手の投稿を見ることができ、まったく 知らないユーザーの投稿を見たり、拡散したりすることができる。よって、拡散力は非常に 高いが、ユーザーは実名で行っているわけではなく、アカウントを複数持っている人も多い ため、情報や情報源の信頼性は低く、透明性は低いと考えられている。この情報の拡散力と いう特徴から芸能人やテレビ番組が情報発信の媒体として多く利用している。 Instagram は若者の間で急速にユーザー数を伸ばしている SNS である。写真や動画が中 心の SNS であり、2017 年に流行語大賞を受賞して話題になった「インスタ映え」のよう に、見栄えが重視される、量よりも質が重視されるSNS である。投稿をお気に入り登録す ることはできるが、基本的に他ユーザーの投稿を拡散するような仕組みは整っていないた め拡散力は弱い。一方で大きな役割を持つのが#(ハッシュタグ)である。これはTwitter でも同様に用いられる。#を付けた後にキーワードをつけることで(例えば#政治)、ほか のユーザーが#をつけて検索したときに他者の投稿を見ることができる。こうすることで、 気になっている情報や意見をInstagram や Twitter 上で検索することができる。この機能 を利用して、テレビ番組などでは「#番組名」などをつけてのTwitter 投稿を促すことで、 注目を集めようと取り組んでいる。 最後にLINE である。メールに替わるコミュニケーションツールとして普及した SNS で、 日本では2 人に 1 人以上が利用している計算になる。日本のユーザー数だけで見ると他の SNS に圧勝している。また、比較的すべての年齢層の人に利用されており、現代人の貴重

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な連絡手段となっている。また、企業や著名人は公式LINE アカウントを開設し、友だち登 録してくれたユーザーの LINE トークに直接、メッセージを送信できる。メッセージを送 ると、受信側にはプッシュ通知があるので、メルマガ等と比較して開封率が圧倒的に高くな っている。 以上のように4 つの SNS を分析してきたが、これらの特徴を政治における広報活動でも うまく利用することで各党・各議員のPR 活動につながるのである。 では、国民の間での浸透という点ではいかがだろうか。SNS を利用する媒体となるスマ ートフォンの普及状況は2017 年において、全世界での利用台数は 40 億に達していると推 計されている。スマートフォンは今や世界中でインターネット接続に最も使われている機 器といえるが、スマートフォンがそのような位置付けとなったのはごく最近のことだ。代表 的な機器であるiPhone が初めて米国で発売されたのは 2007 年であり、わずか 10 年前の ことである。保有割合で見ても、2011 年に 14.6%であったものが、2016 年には 56.8%と 5 年間で 4 倍に上昇しており、一人 1 台持ちとしてのスマートフォンの普及は顕著に表れ ている。1 また、年代別に見た場合、Facebook は比較的、全世代での利用が進んでいるが、Twitter やInstagram は若者中心に利用されている。 また、日本におけるスマートフォン利用者に限ったインターネット利用時間(2016 年の平 日1 日あたり。比較用に 2012 年の値も掲載)を年代別にみると、全体での平均は 82 分で あり、10 代及び 20 代がそれぞれ 143 分、129 分と顕著に長くなっている。2 では、日本における代表的な SNS であり、経年比較可能な LINE、Facebook、Twitter 等の6 つサービスのいずれかを利用している割合をみると、全体では、2012 年の 41.4%か ら、2016 年には 71.2%にまで上昇しており、スマートフォンと合わせて SNS の利用が社 会に定着してきたことがわかる。 1 「2018 年度 総務省 通信利用動向調査」を参照 2 総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を 参照

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図1:代表的 SNS の利用率の推移(全体) (出典)総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」 ⑵ 国会議員の間での浸透 日本国民の間で SNS が急速に浸透してきたことが分かったが、国会議員の間ではどれほ ど浸透しているのだろうか。以下の表では2018 年 1 月 29 日時点における全国会議員を対 象に、主に利用されているTwitter と Facebook の利用を調査した。3 3 毎日新聞社『デジタル国会議員名鑑』をもとに独自で作成

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表1:政党別国会議員SNS 利用数・率 政党 Twitter Facebook 全議員数 自民 159 (39.16%) 274 (67.49%) 406 立憲 29 (47.54%) 36 (59.02%) 61 民進 22 (52.38%) 29 (69.05%) 42 希望 30 (55.56%) 37 (68.52%) 54 公明 30 (55.56%) 30 (55.56%) 54 共産 15 (57.69%) 17 (65.38%) 26 維新 12 (54.55%) 14 (63.64%) 22 他 25 (56.82%) 28 (63.64%) 44 計 322 (45.42%) 465 (65.59%) 709 ※政党は自民=自由民主党▽立憲=立憲民主党▽希望=希望の党▽公明=公明党▽民進= 民進党▽共産=日本共産党▽維新=日本維新の会、他はその他政党に所属する議員や無所 属の議員 ※%は小数点第3 位以下を四捨五入 ※黄色のマーカーは全体平均を上回ったもの、緑は下回ったものを表す。以下も同。 表2:衆議院議員 SNS 利用数・割合(当選方法で分類) Twitter Facebook 議員数 小選挙区 127(43.94%) 193 (66.78%) 289 比例代表 60 (34.09%) 90 (51.14%) 176 比例復活 54 (49.54%) 79 (72.48%) 109 計 187 (40.22%) 283 (60.86%) 465 表3:参議院議員 SNS 利用数・率(選挙方法で分類) Twitter Facebook 議員数 選挙区 85(58.22%) 116(79.45%) 146 比例 50(52.08%) 66 (68.75%) 96 参院 135 (55.79%) 182 (75.21%) 242

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表4:年代別国会議員 SNS 利用数・率 年代 Twitter Facebook 議員数 30~39 21 (47.73%) 33 (75%) 44 40~49 94 (55.62%) 125 (73.96%) 169 50~59 113 (47.68%) 158 (66.67%) 237 60~69 73 (40.78%) 112 (62.57%) 179 70~79 20 (26.32%) 37 (48.68%) 76 80~ 1 0 2 計 322 (45.42%) 465 (65.59%) 709 まず、全体の結果として、Twitter を利用する国会議員は全体の 45.42%に当たる 322 人、 Facebook を利用する議員が全体の 65.59%にあたる 465 人となっている。この結果から分 かるようにFacebook を利用する議員が Twitter を利用する議員のおよそ 1.5 倍存在するこ とが分かる。また、Twitter を利用している議員のほとんどが Facebook も利用している。 表1 より、政党別の結果を見てみると、自民党に所属する国会議員の Twitter 利用率が平均 を下回っている一方でFacebook は比較的高い利用率となっている。この要因としては、あ とで紹介する政策や活動を多くの字数を使って丁寧に説明できるという Facebook の特徴 に加えて、自民党に所属する議員の年齢層が他党と比べて高いことも影響していると考え られる。また、Twitter を利用する議員の割合が最も高いのが共産党(57.69%)、Facebook は民進党(69.05%)という結果になった。立憲民主党は Twitter、Facebook とも他党と比 較して、決して高い割合で利用しているとは言えなかった。 表2、表 3 では議員の選出方法で分類して、衆議院議員、参議院議員の SNS 利用数・率 を整理した。結果として顕著なのが両院共通して、比例で選出された議員のSNS 利用率が 低いことである。これは選挙活動においてSNS が利用されていることを意味していると考 えられる。小選挙区では「候補者名」を、比例代表では「政党名」を書いて投票する衆議院 議員選挙においては、小選挙区で立候補した候補者がより個人としてのアピールが求めら れ、SNS を利用していると考えられる。これは衆議院と参議院の比例に注目しても同様に 考えることができる。参議院の比例代表選挙が非拘束名簿式となり、政党名だけでなく個人 名での投票も可能となり、得票数がリストの順位に反映されるようになったため個人での 活動が衆議院議員選挙と比べても重要になったことが考えられるだろう。 以上から、Twitter や Facebook を選挙における個人活動の PR として重要視している国会 議員が多いことが示された。 最後に表4 では 60 歳以上の国会議員の SNS 利用率の低さが顕著に見られた、一方で若 いほどTwitter を利用しているわけではなく、国民全体の利用傾向とは異なることが見て取 れた。 この結果からTwitter は Facebook と比べて利用されていないことが分かったが、この原

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因としては、Twitter は匿名性が高く、ネガティブな反応や炎上というリスクがあるという Twitter の特徴が大きく関係していると考えられる。しかし、国会議員の中には「Twitter 議 員」と呼ばれるようなTwitter を積極的に利用する議員もいることは事実である。 そもそもTwitter 議員が出現するきっかけとなったのは 2008 年の第 48 回アメリカ大統 領選と言われている。この選挙において、バラク・オバマ陣営とミット・ロムニー陣営の双 方が2006 年にサービスを開始したばかりの Twitter などソーシャルメディアを通じた情報 発信、選挙活動を行ったことが注目を集めた。これを受け、日本でも2009 年の初めあたり からTwitter を利用する議員が現れるようになった。 民主党政権で事業仕分けが注目を集めていた蓮舫議員(現立憲民主党)もその一人である。 蓮舫議員は当時のインタビューの中で、 「事業仕分けは、政策の決定プロセスをオープン化するという意味で、最も”情報が加工さ れてはいけない”活動でした。しかし、テレビなどマスメディアでは、どうしてもインパク トのある発言だけが取り沙汰されてしまう。(略)テレビは“加工するメディア”であるか ら、それは仕方がない。同じように、新聞も独自の視点を加味するので、事実の全体像を報 道するメディアとしては不適当です。そんなときに現れたのが、情報を加工せずに広く伝え られるツイッター。まさに新しい政治メディアを手にした思いでした」4と語り、メディア にフィルタリングされない「生の情報」を議員個人が発信することができると考え、利用し 始めたという。また、政治家が自らの意見を伝え、また支持者が集まる場ではなかなか出て こない批判意見にもさらされる場であることで、国民と政治の接点としてのTwitter という 議論の場が貴重だと蓮舫議員は考えていた。ウェブ展開を含めた自民党のメディア戦略を 担ってきて、Twitter をはじめとした SNS を積極的に利用してきた世耕弘成参議院議員は 選挙における動員力がTwitter の魅力だと話す。また、世耕氏は地元選挙区の有権者のフォ ロワーの意見を独自で集め、民意を探るような取り組みも行っている。 メディア・アクティビストの津田大介さんは、現在の日本政治家がソーシャルメディアを 利用する目的を、6つに分類した。5 一つ目は2008 年アメリカ大統領選でオバマ氏が行ったように「自らの政治活動、国会状況 の報告・告知」を行うこと。当然ながら党の方針や政策など大きなテーマについては140 字 ですべてを正確に伝えるのは難しい。自身のブログや頭のホームページなのに誘導する入 口として取り分けツイッターを利用する議員は少なくない。 二つ目は「政治信条のアピール」。メディアで大きく報道されたニュースなどについて、独 自の視点で論評を行っている議員も多く継続的な投稿から自身の信条を一貫したものとし て伝えようという試みが見られる。 三つ目は「有権者とのコミュニケーション」。フォロワーに限らない Twitter ユーザーか ら寄せられた質問や陳情に対して真摯に返信する議員も増えている。 4 津田大介『ウェブで政治を動かす!』2012 年、朝日新聞出版 p165、166 5 同上 p178、179、180 より引用

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四つ目は「内部の人間でしか得られない情報をもとにした報道に類する行為」を行うこと。 国会内部や党内の議論、法案の修正状況などを会議終了後にすぐさま発信する。そのことで 論点をまとめたブログ記事やおいしいとこ取りになりがちな一般メディアの報道ではこぼ れ落ちるような詳細な情報、会議の雰囲気などが伝わり新たな事実が明らかになるケース も増えている。 五つ目は「政治的な発言や行動に対する市民の反応を調査、マーケティングする」というこ と。 Twitter に習熟した政治家ほど自身が発信するツールとして活用するとともに情報を 得ることを重要視してるように思われる。 そして6 つ目は前述 5 点の用途のどれにも準じない「日常的な報告や雑感」だ。ネットと 政治の関係を考える上でこれは意外に大きいポイントだ。政治、あるいは政治家に距離を感 じる国民が多い中、例えば Twitter を通じて議員の日常が伝わることにより議員個人への 親近感から、政治に関心を持つようになるユーザーも少なくない一般ユーザーとのコミュ ニケーションを積極的に行う、何気ない日常をつぶやく議員が人気を集め、フォロワー数を 伸ばす傾向にある。この辺りはリアルタイムのツイートでその人の日常やパーソナリティ に興味を持ちやすいプラットフォームである Twitter のメディア特性だと言えるだろう 。 ⑶ 政党の間での浸透 では、次に政党ごとに見た時に、SNS をどれほど利用しているのだろうか。以下が独自 に調査した結果である。 表5:Facebook グラフ 1:Facebook 0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 自民 公明 立憲 希望 民進 維新 共産 社民 自由 こころ

Facebookフォロワー数

Facebook フォロワー数 自民 107178 公明 34814 立憲 59524 希望 7253 民進 13293 維新 7074 共産 16692 社民 4990 自由 7658 こころ 15144

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表6:Twitter フォロワー数 フォロー数 Tweet 数 開始日 自民 138737 325 9499 2009 年 7 月 公明 76733 1278 11514 2010 年 3 月 立憲 178516 134 4126 2017年 10月 希望 13031 155 672 2017 年 9 月 民進 27913 574 6746 2016 年 3 月 維新 16924 184 1539 2016 年 1 月 共産 45780 469 7867 2013 年 5 月 社民 25505 4589 12254 2013 年 2 月 自由 32149 8605 1920 2013 年 2 月 こころ 45062 13495 4792 2014 年 6 月 グラフ6:Twitter 0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 140000 160000 180000 200000 自民 公明 立憲 希望 民進 維新 共産 社民 自由 こころ

Twitterフォロワー数

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表7:Instagram 表 8:LINE 順番にまず、Facebook から見ていく。Facebook は日本の政党の間でも最も早く政党の 広報ツールとして利用されたSNS である。政党の中で圧倒的にフォロワー数が多いのが自 民党である。政権を担う党として、閣僚の地方訪問などの活動を広報するなど活動報告とし てのニュアンスが強いことが特徴である。また、「首相官邸」アカウントで投稿された投稿 をシェアして首相の動向も伝える役割を担っている。ちなみに首相アカウントのフォロワ ーは414365 人と、全政党を圧倒的に上回るフォロワー数を誇っている。立憲民主党も 2 番 につけており、政党の誕生時期から考えると、かなり多いフォロワー数だといえるだろう。 次にTwitter は 2009 年 7 月に自民党がアカウントを開設したのを皮切りに全政党で利用 されているSNS である。自民党を除くと、全政党が Facebook の倍以上、フォロワーが存 在し、影響力の大きさがうかがえる。フォロワー数に関しては、立憲民主党の多さが目を引 くだろう。2017 年の 10 月にアカウントを開設して以来、その数は自民党を上回る 17 万ユ ーザー以上を誇る。同時期に開設した希望の党と比べても、10 倍以上の差がある。また、 投稿数も期間の短さを考えるとかなり多い。これらの要因や戦略は次章で詳しく述べる。投 稿内容に関しても、自民党に注目するとFacebook と大きな違いはない。アカウントの紹介 では「安倍晋三総裁や幹事長、党役員の発言、自民党の最新ニュース、政策トピックス、自 民党が運営するインターネット生放送“Cafesta(カフェスタ)”の番組案内、テレビ出演情 報、国会情報などについて、お知らせしています」とある。投稿数が多いので、各議員が Tweet した投稿をリツイートして拡散したり、細かなイベント情報を短くまとめ、リンクを 張って外部サイトに誘導したり、動画リンクを掲載するなど、積極的に政党・議員の活動を 拡散している。また、同じく「首相官邸」のTwitter アカウントでの投稿を必ずリツイート して、首相動向や政策のポイントを広報している。 Instagram はほかの SNS に比べ、かなりフォロワー数が少なく、4 つの政党はアカウン トすら開設していない。自民党の投稿内容を見ても、Instagram らしいおしゃれな写真を LINE 友達 自民 617581 公明 209906 立憲 なし 希望 なし 民進 70545 維新 なし 共産 9510 社民 1024 自由 579 こころ なし Instagram フォロワー数 投稿数 自民 4379 183 公明 2097 156 立憲 なし 希望 301 118 民進 184 97 維新 なし 共産 なし 社民 239 97 自由 なし こころ 264 22

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投稿している様子も見られず、Facebook や Twitter にも投稿していた動画や画像を投稿し ているだけである。さきほど、国会議員のSNS 利用調査においても Twitter と Facebook を取り上げたが、議員個人でInstagram を利用している人数もかなり少ない。このように 日本の政界におけるInstagram の浸透は進んでいないといえる。2017 年に行われた衆議院 議員選挙でもInstagram 上での盛り上がりには欠けていた。その理由には、文章以上にイ ンパクトのある写真が求められるInstagram という SNS の特徴が考えられる。それまで 活動報告や告知を文章で簡単に行うために利用されていたTwitter や Facebook に対して、 Instagram は利用しづらい。一方で、アメリカの大統領選の期間中は、候補者の Instagram にも注目が集まった。CNET は、アメリカ大統領選における Instagram を活用したソーシ ャルメディア戦略について、以下のように解説している。 「ドナルド・トランプ氏は、ファンとのコミュニケーションに活用し、ディベートに参加す べきか意見を募るといった使い方を見せている。また、若い世代に人気のあるバーニー・サ ンダース氏は、はじめて投票するファンに対して投票方法などを指導した。ヒラリー・クリ ントン氏は、彼女の支持者であるセレブリティ(ケイティ・ペリー)にInstagram のアカ ウントを1 日乗っ取らせる試みを実施している」6 近年のInstagram 利用者数の急増を受けて、アメリカのように Instagram を効果的に利用 する議員が現れることは十分に考えられるだろう。 2018 年に入ってから Instagram を本格的に始めた安倍晋三首相は約 13 万人のフォロワー を集め話題を呼んでいる。公務の写真だけでなく、地方公務やプライベートでの素に近い表 情を見せる安倍首相の姿・五輪で活躍する日本人選手を祝福する姿など、Twitter や Facebook とくらべて、ラフに投稿している様子が見て取れる。また、投稿から 24 時間だ け閲覧可能の動画投稿システム「ストーリー」も利用し、リアルタイムで活動の様子やオフ の姿を発信している。しかし、フォロワー数は日本で最多のフォロワーを誇るタレントの渡 辺直美さん(約779 万フォロワー)、ドナルド・トランプ米大統領(851 万フォロワー)に 比べると、13 万人はまだまだ少ないのが現状だ。 LINE のアカウントを開設している政党も 6 つで、立憲民主党や希望の党はアカウント を持っていない。しかし、自民党は友達(一斉送信の文面を受信する)の数が 617581 と Twitter や Facebook と比べてもかなり多い。2017 年 4 月から開設されたが、この数の要 因には2017 年 10 月 30 日に安倍晋三首相のキャラクタースタンプを発表したことが考え られる。スタンプは、首相が「お疲れさま」とお茶を差し出すものや、「ぺこり」とおじぎ するものなど8 種類で、国民の声を意識したのか、「うんうん」と耳をそばだてるポーズで、 話題を呼んだ。同党の公式ラインアカウントを「友だち」に追加した人は無料でダウンロー ドできる。30 日の配信開始後、自民党の登録者は約 6000 人から一気に伸び、約 24 万人 6 生田綾「衆院選、Twitter は大盛り上がりだけど Instagram は静か。なぜ?」 Huffingtonpost、2017 年 10 月 20 日、 http://www.huffingtonpost.jp/aya-ikuta/instagram-and-election_a_23249387/

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(31 日深夜)にまで友達が増えた。7 Twitter や Facebook とは大きく異なり、ほとんど投 稿されていない。スタンプを作成するなど、自民党や首相、政治を国民にとって身近に感じ てもらうためのツールと考えたと思われる。 以上のように見てきたが、最初に分析したSNS の特徴を踏まえて、各党が SNS を駆使 して情報発信を行っていることが分かった。 第2章 選挙とSNS の関係性 ⑴ネット選挙の解禁 第1 章では国民、国会議員、政党の間での SNS の浸透を分析してきたが、第 2 章では選 挙におけるSNS の役割など選挙と SNS の関係性を見ていく。 そもそも、選挙においてSNS が利用されるようになったのは平成 25 年 4 月 19 日、イン ターネット選挙運動解禁に係る公職選挙法の一部を改正する法律が成立してからである。 公職選挙法では、選挙の公正、候補者間の平等を確保するため、選挙運動期間中に行われる 文書図画の頒布・掲示その他の選挙運動について一定の規制を行っており、インターネット 等による情報の伝達も、文書図画の頒布に当たるものとして規制されてきた。しかし、イン ターネット等の普及に鑑み、選挙運動期間における候補者に関する情報の充実、有権者の政 治参加の促進等を図るため、インターネット等を利用する方法による選挙運動が解禁され た。それ以降、ウェブサイトやSNS を積極的に利用する選挙戦が展開されるようになった。 このネット選挙解禁がもたらしたメリットについて津田大介氏は「広範囲」・「低コスト」、 「リアルタイム」の3 点だと話す。 まずネットを使える環境があれば有権者は候補者の主張や活動実績など自らが知りたい ことをダイレクトに閲覧できる。例えば候補者の政見放送や演説など従来では時間を調べ たりわざわざ外に出たりする必要があったが、動画などネットを使えばそうした時間的・場 所的制約は大幅に削減される。そして選挙期間中に有権者と候補者のリアルタイムな積極 的交流が図れることで Twitter などの公共言論空間で候補者のコミュニケーションスキル をじっくりと吟味することもできる。 またテレビ中継と親和性の高いツイッターのようなソーシャルメディアを利用すること で政治家同士の討論をパブリックビューイングのように多くの人々と同時に楽しみ政策に 関する情報をリアルタイムに入手することができる。結果、それを基に自らの投票行動につ 7 「SNSで若者票獲得 「テレビより効果」」『毎日新聞』、2017 年 10 月 13 日、 https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171013/k00/00e/010/192000c

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なげていけるという有権者側の大きなメリットもある。ツイッターを生み出しネット選挙 の先進国である米国では2012 年 10 月 3 日に行われた、民主党のオバマ大統領と共和党の ロムニー候補による第1 回テレビ討論会で Twitter が大きく話題を呼んだ。討論会が開催 されていた90 分の間に投稿されたテレビ討論関連のツイートの数は実 1030 万に登りアメ リカ政治における「最もツイートされたイベント」となった。 選挙先進国のアメリカでは ソーシャルメディアによって喚起される「リアルタイム世論」が大統領選挙の行方を左右す る存在になった。また 2016 年にはドナルド・トランプ候補による Twitter からの情報発 信が大きく話題を呼び、大統領になってからも Twitter を利用した政策や意志の発信、扇 動が連日話題となっている。 一方、ネット選挙は有権者だけでなく候補者にも大きな利益をもたらす。ダイレクトメー ルやポスター、チラシの印刷代・発送代など多大なコストがかかる選挙戦において、コスト が抑えられるインターネットによる情報発信は大きな意味を持つ。 また蓮舫議員が選挙におけるソーシャルメディアに期待される役割について以下のよう に話している 。 「特に一部の選挙区で大選挙区制が採用されている参議院選挙の場合、どんなに 街頭演説 で歩き回っても出会うことができない有権者が圧倒的多数。そういう方たちにいかにして メッセージを伝えるかが大きなテーマになっています。その点、誰もがアクセスできるイン ターネットへの期待はとても大きい。例えば刻々と変わる政治状況の中、リアルタイムで自 身の意見を発信することができ、また討論会や街頭演説を行う日時も簡単に案内すること ができます。しかもお金は一切かからないため資金力がすなわち政治家の声の大きさに繋 がってしまうような状況も回避できる。」 このような有権者、候補者双方にとってのメリットも踏まえ、ネット選挙は解禁され現在 に至っている。 ⑵ SNS から見た第48回衆議院議員選挙の分析 次に 2017 年秋に行われた第 48 回衆議院選挙に着目し、SNS と選挙の関係性を見てい く。まず、第48 回衆議院選挙は 2017 年 10 月 22 日に投票が行われ、自民党は単独で選挙 前の284 議席に並ぶとともに、公明党と合わせて憲法改正の発議に必要な全議席の 3 分の 2 を上回る 313 議席を獲得して圧勝した。一方、野党側は、選挙前の小池百合子都知事を中 心とした新党・希望の党誕生、民進党の解党と混迷した。結果的に野党では枝野幸男氏が代 表を務める立憲民主党が選挙前の3 倍を超える 55 議席を獲得して野党第 1 党に躍進した。 今回は、第 48 回衆議院選挙を有権者側の SNS の動きと、政党や国会議員側から発信さ れるSNS から分析していきたい。まずは、有権者側の SNS の動きから見て行く。 株式会社ブレインパッドはソーシャルリスニング・プラットフォーム「Crimson Hexagon

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ForSight™ Platform(クリムゾンヘキサゴン・フォーサイト・プラットフォーム)」を使っ て、「第48 回衆議院議員総選挙」について、安倍総理が衆議院を解散した 9 月 28 日から、 公示の10 月 10 日までの 13 日間の衆院選関連のキーワードを含むツイート、計 1,227,774 件の投稿データから分析した。その結果、以下のようなデータが得られた。

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「政党名」を含む投稿数の割合で見ると、希望の党が41%と最も多く、次に自民党の 20%、 立憲民主党と共産党の13%と続く。時期で見ても、解散表明直後は希望の党に勢いがあっ たことが分かる。また、ツイッターのツイート数と各政党の獲得議席数の関連などを調査し てきた東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫准教授によると、9 月末以降の各政党にま つわるツイート数も、世論の傾向と重なる。解散直後は、民進党との事実上の合流や小池百 合子代表の出馬の有無をめぐって希望の党が関心を集めたが、公約を発表した後は大きく 失速。自民党は終始一定のツイート数を保ち、立憲民主党はリベラルの受け皿を求める人た ちの「#枝野立て」というハッシュタグが乱れ飛び結党前から注目されていた。 では、一方で政党や候補者から発信される情報はいかがだろう。 まず、候補者のSNS 利用に関しては、東京都内の小選挙区全立候補者の SNS(Twitter、 Facebook、Instagram、LINE)を投票日前日の 10 月 21 日時点で調査した。(結果は巻末 の参考資料参照)その結果、大きな特徴としては現国会議員に関して調査した第 1 章と変 わりない。希望の党はSNS をはじめとしてウェブでの準備が追い付いていない印象が強か った。また、フォロワー数の多い国会議員は閣僚経験者など名の知れた候補者が多い傾向に あった。共産党や公明党などは固定支持者が安定しているためか比較的、著名でない候補者 も多かった。 次に政党ごとの特徴を見ていく。 自民党は、党広報関係者は「10~20 代向けにはテレビよりも効果がある」と手応えを感じて いると話し、Facebook や Twitter、LINE など SNS をフル稼働している。安倍晋三首相の 街頭演説を動画で紹介し、政権の実績を分かりやすいイラストでアピールいている。PR 動 画は、安倍晋三首相が経済政策「アベノミクス」を加速させつつ幼児教育を無償化すると説 明し、「この国を、守り抜く。あなたの声を聞かせてください」と低姿勢で呼び掛けた。イ ンスタグラムでは幅広い世代に支持される小泉進次郎筆頭副幹事長らの活動内容を掲載し ている。 希 望 の 党 は 、 ホ ー ム ペ ー ジ の ト ッ プ に 小 池 百 合 子 代 表 の 動 画 が 登 場 。Twitter や Instagram の内容は、小池氏自らも考えており、担当者は「選挙資金が限られており、考え られる全てのSNS で発信を心掛けている」と内情を打ち明けるが、ツイッターのフォロワ ー(読者)数は伸び悩み、浸透度は読み切れていない。また、希望の党は「ガバナンス長」 という独自の役職を設け、SNS での発信を統制していたとも報じられた。小池氏は自民党 時代、広報部長として SNS などの書き込みを監視、分析していた。そのこともあってか、 組織内で決まっていないことや混乱を招くようなことは発信しないという方針をとった。8 公明党は小選挙区立候補者の大半が個人アカウントを持ち、自らの街頭演説の様子や政 策を直接配信するなど LINE に力を入れている。共産党は選挙期間中の連夜、ホームペー 8 竹下郁子「SNS、衆院選への影響は? リツイート数から見えたある傾向」AERA 2017 年10 月 23 日号、15 ページ

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ジ上の生放送で「安倍政権打倒」などと主張した。また、「#比例は共産党」というハッシ ュタグをつけた投稿をSNS で拡散し、衆院選比例代表で同党への投票呼びかけを強めたが、 結果的にあまり効果は持たなかった。一方、ハッシュタグなどを巧みに使い、効果を発揮し たのが次に紹介する立憲民主党だ。 ⑶ 立憲民主党の SNS を駆使した選挙戦略 今回、立憲民主党のSNS を駆使した選挙戦略について分析するにあたって、マスコミで 取り上げられた報道からの分析に加え、立憲民主党・報道担当の坂上隆司様に取材協力をい ただいた。 立憲民主党のSNS で注目を集めた点は主に三点だ。 一点目は爆発的な Twitter フォロワー数の伸びだ。2018 年 10 月 2 日に公開された立憲 民主党のTwitter アカウントは一晩で 5 万人のフォロワーを獲得し、10 月 4 日には 10 万 人を突破。たった2 日で 10 万人のフォロワーを獲得した。また、2 日目には日本の政党の 中で首位に立った。同じく注目を集めていた希望の党のフォロワー数は10 月 4 日で 4000 にも満たしていない。結果的に2017 年 10 月 24 日 23 時時点では、Twitter が 191,170 人、 Facebook が 56,000 人のフォロワーを獲得した。 二点目は#(ハッシュタグ)をつけた投稿の盛り上がりだ。きっかけとなったのは2011 年3 月 11 日に発生した東日本大震災の時に内閣官房長官だった枝野幸男氏の昼夜を問わず 記 者 会 見 に 不 眠 不 休 で 真 摯 に 対 応 す る 姿 を 見 た ツ イ ッ タ ー 民 た ち が 「 枝 野 寝 ろ 」 「#edano_nero」とつぶやいたことにある。それを受けて、今回の選挙戦でも「#枝野寝ろ」 を変化させた「#枝野立て」や「#枝野立つ」のハッシュタグをつけた投稿が大きく盛り上が った。このような大きな盛り上がりの一方で、立憲民主党宛のツイートを拾っては細かいリ プライ(返信)を行っており、有権者との双方向のコミュニケーションを行おうとしていた。 これは枝野幸男代表が有権者の声を拾い上げたいという思い、そしてボトムアップ型のリ ーダーシップを実現したいという思いを、スタッフが汲み取って実行していた。 三点目は「#立憲カメラ」というタグをつけ話題を呼んだ SNS 映えするとされる演説だ。 枝野代表は旧来型の街宣車ではなく、駅前広場に置かれた「お立ち台」で、周囲をぐるりと 聴衆に囲まれて演説を行った。その様子を多くの聴衆が写真に収め「#立憲カメラ」という タグと共に投稿し、盛り上がりを見せた。演説会に来た人が演説を聞いて帰るだけではなく、 写真や動画を撮影し、SNS に投稿することで、党を応援する活動に自ら参加できる。その 映像が話題となって、さらに人が集まるという人が人を呼ぶムーブメントを起こした。 このようなSNS での盛り上がりに対して、立憲民主党・報道担当の坂上隆司氏は 「結党から選挙までの期間が短く、時間と資金がなかったため、テレビ CM や紙媒体によ る宣伝ではなく、結果としてSNS 活用に集中した広報を行った。党公式 Twitter での発信

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と拡散を最優先した。また民進党代表選から始められた枝野代表自身のTwitter でも可能な 限り発信するよう心掛けた。SNS チームの踏ん張りが大きかったがそのおかげで、Twitter を使ってこれまで選挙にかかわりのなかった有権者が、私たちの発信をリツイートしたり、 自分で動画や写真を掲載したり、それをさらに友達に拡散することを通じて、政治に参加し てくださるという新しい循環を生み出すことができた。」 と説明した。 また投稿の内容としては ・活動情報を日々投稿する(街宣情報、リプライなど) ・動画で各地の演説の様子を拡散する ・各公約を140 字にまとめて拡散する ・演説文字起こしの一部を掲載する ・立憲民主党に関するWeb 記事をリサーチして拡散する ・フェイクニュースを検証し対応する ・フォロワーからのダイレクトメッセージに返信する(寄付やボランティア等) ・フォロワー一人ひとりへ、大作戦への参加、寄付を呼びかける ・インフルエンサーTwitter をリサーチし、リツイートする ・インフルエンサーに応援とリツイートを呼びかける ・投票の呼びかけ(期日前投票、在外投票のお知らせ) ・比例投票の呼びかけ(略称「民主党」のお知らせ等) ・寄付の呼びかけ ・開票速報および台風情報のツイート と多岐にわたり、計1462 ツイート、一日平均で 66 もの Tweet が行われた。自民党などの 他党との違いとして、政策や演説の上からの説明だけでなく、フォロワー一人一人に対応し、 共闘を呼び掛ける姿勢など、下からの姿勢をSNS 上でも発揮したことが特徴的だ。 また、情報発信における注意としては、 • 多くの情報を迅速に拡散する ハッシュタグで効果的に拡散する(各街宣のハッシュタグや #立憲カメラ ) 既存メディアの記事を積極的にシェアする • 親近感のあるツイートを心がける 政治的な内容にコミットしないツイートも流す • フォロワーとのインタラクティブな関係構築をめざす 左や右という立場を越えてリプライする フォロワーからの街宣書き起こし、動画配信などをシェアする 情報提供、アドバイスをしてくれたフォロワーへリプライする • 政治自体への興味を高める

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#政治ってなに #選挙に行かなかった理由 #期日前投票行きました などのハッシュタグを 作成し意見を聞く このように短い選挙準備期間の中で、比較的簡単に情報を発信できるTwitter を使うこと を選んだ立憲民主党だが、国民の声に耳を傾けボトムアップで政治を動かそうという姿勢 がSNS にもみられた。そして、それまでも SNS やネット上で人気の高かった枝野代表の 影響も受けて、フォロワーの間でも爆発的な拡散が起こった。その拡散の影響が実際の演説 などへの動員を生み出し、さらに参加した人がSNS を利用して拡散するという連鎖的な動 員、盛り上がりを生み出したといえる。 第3章 選挙におけるSNS の持つ効果 ここまで SNS が国民の間だけでなく政界にも急速に浸透し、各政党や国会議員が SNS を利用した情報発信を積極的に行っていることが分かった。そして、第48 回総選挙におけ る立憲民主党がSNS を巧みに利用し、躍進の要因の一つとなった。 では、これらを踏まえて選挙におけるSNS の持つ効果を考え、SNS 戦略について考えてい きたい。 背景として、国民の間でのSNS の浸透だけでなく、現代日本政治における特徴があげら れる。それは、無党派層の増加と政党における一強多弱の政界の現状だ。 立憲民主党・報道担当の坂上隆司氏も、若者をはじめとした政治に関心のなかった層の動 員を目的にTwitter を利用したと話す。インターネットに触れる時間が増加する現代の若者 にとってネットを通して政治へのきっかけを作るのは有効な手段だ。 隣国・韓国はインターネットの普及が早く、政治においてもSNS やスマートフォンのア プリを利用した選挙活動が活発だ。韓国は2000 年初頭より「IT 大国」と形容されるべく日 常のあらゆる面においてネットが浸透し、2002 年の第 16 代大統領選挙よりネットでの選 挙運動が始まった。2017 年の大統領選では、候補者たちの「アプリ」が登場し活用されて いたのが特徴だった。たとえば、有力候補だったムン・ジェイン氏とアン・チョルス氏の2 人は選挙戦が開始されるとともにリリースされたアプリには、候補者たちの遊説日程や政 策に関連した情報が、逐一スマホに送られてくる仕組みとなっていた。また、アプリと同様 にFacebook でも公約を始めとする選挙活動の様子や候補者の動向がアップされるなど、メ ディアのみならずネット、特にスマホを駆使した選挙戦を繰り広げた。韓国では選挙権を持 たない中学生や高校生でもスマホでSNS に慣れ親しみ、大統領選挙のニュースを目にする 機会も多い。そのため、こうした未成年者たちの間でも選挙が話題に多く上がっていた。結 果的に、アプリのデザインや見やすさなどを含め、ムン氏およびムン氏の所属政党のセンス

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の良さを評価する声が聞かれ、ムン氏が若い世代からの支持を集めたのに一役買ったとさ れた。 日本においては2017 年の選挙が SNS が注目される最初の選挙だ。選挙権が 18 歳以上 に引き下げられたこともあり、さらに若者の間で政治の議論がしやすい土壌作りが進んで いけば、より一層SNS の重要性は増し、若者の重要性も増していく。立憲民主党の坂上氏 も「立憲民主党の現在の主な支持者は50-60 代、男性、政治への関心が強い人が大半。Twitter は若者層へのアプローチが可能であり、ここでの発信と意見交換を通じて若者層・無関心層 へ働きかける」と話し、SNS で比較的政治に無関心だった若者を巻き込むことができると 考えている。 また、自民党一強状態の現在において、与党である自民党と野党ではSNS 戦略にも差が 見られる。与党は実績をうまくアピールする媒体としてFacebook を中心とした SNS を利 用した。一方で立憲民主党がうまく利用したのはSNS の「動員」という側面だ。#を利用 した投稿や「#立憲カメラ」のように多くの国民と共に戦うという姿勢が盛り上がりを生ん だ。2017 年の衆議院選挙では野党共闘の足並みが整わず、成果が出なかった。しかし、立 憲民主党や共産党などが掲げていたように野党だけでなく、市民と共に戦う「市民と野党と の共闘」という体制はSNS を利用することで達成されやすいことが立憲民主党の選挙戦か ら示された。立憲民主党は「下からの政治」をSNS 戦略によっても体現できていた。「アラ ブの春」は実際にSNS を利用した市民によって巻き起こったものだ。2009 年から 2011 年 にかけて、モルドバ、イラン、チュニジア、エジプト、リビアなどで相次いで起こった一連 の民主化運動「アラブの春」はその動員に Facebook や Twitter が大きな役割を果たした ことからソーシャルメディア革命と言われている。最もソーシャルメディア革命といって もそれ自体が直接的にデモや革命を起こしたわけではない。ソーシャルメディアは人々の 潜在的な思いを顕在化させ背中を押したのだ。ソーシャルメディアは革命を起こしたので はなく人々が革命を起こすきっかけをつくりだし、人々の意識が共感によって繋がり、繋が った人々が行動することで大きなムーブメントを起こせることを示した。SNS は国民と共 に戦う野党にとって大きな武器に十分になる。 第4章 おわりに おわりに、ここまでSNS が持つ選挙における効果を見てきた。立憲民主党が 2017 年の 選挙で成果を残したように、SNS が国民を動員する役割を SNS は担う。この動員という役 割は選挙において大きな意義を持つ。 一方で、SNS には表面的な情報発信や中身のない盛り上がりなど、政治家や政党の「人格 本位」の選挙を加速させる可能性という側面も持つ。これもポピュリズムの進展の著しい現

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代において懸念しなければならない問題である。

変化・多様化の進むSNS を利用した選挙戦略は今後も変化していく。可能性とリスクを 備え持つSNS と選挙の変化し続ける関係性にこれからも注目していきたい。

最後に、国会会期中のお忙しい時期にもかかわらず、取材に応じていただいた立憲民主 党・報道担当の坂上隆司様にも心からお礼申し上げたい。

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参考文献 津田大介『ウェブで政治を動かす』朝日新書、2012 年 西田亮介『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』東洋経済新報社、2013 年 清原聖子、前嶋和弘編『インターネットが帰る選挙―米韓比較と日本の展望』 津田大介、香山リカ、安田浩一、他『安倍政権のネット戦略』創出版、2013 年 西田亮介『メディアと自民党』KADOKAWA、2015 年 竹下郁子「SNS、衆院選への影響は? リツイート数から見えたある傾向」AERA 2017 年10 月 23 日号、14・15 ページ 「SNSで若者票獲得 「テレビより効果」」『毎日新聞』、2017 年 10 月 13 日、 https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171013/k00/00e/010/192000c 、 2018 年 2 月 27 日参照 「立憲民主党の街頭演説が「SNS 映え」する理由 自民党と比べたらわかる秘策が」 Buzzfeed News、2017 年 10 月 21 日、 https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/cdp-ldp-gaisen?utm_term=.uqm64lxW2w#.huZ2RnJxZY 2018 年 2 月 27 日参照

小 島 芳 樹 「 立 憲 民 主 党 の ソ ー シ ャ ル フ ァ ー ス ト な ネ ッ ト 選 挙 対 策 # 枝 野 立 つ 」 TECHNICAL CREATOR、2017 年 10 月 5 日、

https://technical-creator.com/online-election-campaigning/ 、2018 年 2 月 27 日参照

原美和子「韓国の進化するネット選挙--大統領候補者はアプリや SNS をフル活用」CNET Japan、2017 年 5 月 11 日、https://japan.cnet.com/article/35100974/ 、 2018 年 2 月 28 日参照

生田綾「衆院選、Twitter は大盛り上がりだけど Instagram は静か。なぜ?」Huffingtonpost、 2017 年 10 月 20 日 、 http://www.huffingtonpost.jp/aya-ikuta/instagram-and-election_a_23249387/ 、2018 年 2 月 28 日参照 「SNS 映えで勝利!立憲民主躍進の戦略とは」ホウドウキョク、2017 年 10 月 26 日、 https://www.houdoukyoku.jp/posts/20470 、2018 年 2 月 27 日参照 「2017 年衆院選をデータから分析! Twitter で話題の「政党」、「政策」が明らかに」 BrainPad、2017 年 10 月 17 日、http://blog.brainpad.co.jp/entry/2017/10/17/100000 、 2018 年 2 月 27 日参照 総務省「データ主導経済と社会変革」『平成 29 年版 情報白書』第 1 部、2017 年、 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111130.html 、 2018 年 2 月 27 日参照 「 デ ジ タ ル 国 会 議 員 名 鑑 」 選 挙 毎 日 ( 毎 日 新 聞 社 )、2018 年 2 月 27 日 、 http://senkyo.mainichi.jp/giin/ 、2018 年 2 月 28 日参照

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参考資料:第48 回衆議院選挙 東京都内小選挙区立候補者リスト 選 挙区 名前 年 齢 政党 当 選 Twitte r Facebook Instagra m LINE 1 松沢香 39 希望 315 528 原口美季 28 幸福 224 山田美樹 43 自民 2 3580 2418 又吉光雄 73 諸派 222 海江田万里 68 立憲 6 3530 9307 838 犬丸光加 57 諸派 2 辻清人 38 自民 2 1347 643 〇 松尾明弘 42 立憲 1576 411 152 鳩山太郎 43 希望 223 414 3 香西克介 41 共産 3023 石原宏高 53 自民 3 3445 841 松原仁 61 希望 6 902 5971 4 井戸正枝 51 立憲 1 2936 不明 平将明 50 自民 4 45839 10807 難波美智代 43 希望 87 973 青山昴平 26 共産 1817 121 5 手塚仁雄 51 立憲 3 × 1135 福田峰之 53 希望 3 4504 3325 436 若宮健嗣 56 自民 3 1281 1060 6 越智隆雄 53 自民 3 2329 570 落合貴之 38 立憲 1 4329 588 中岡茉妃 26 幸福 1091 586 植松恵美子 49 希望 546 292 7 松本文明 68 自民 3 271 799 長妻昭 57 立憲 6 35181 11894 681 440 荒木章博 64 希望 なし なし

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井上郁磨 26 無 所 属 5005 35 8 木内孝胤 51 希望 2 8390 789 円より子 70 無 所 属 3401 83 斎藤郁真 29 諸派 857 長内史子 29 共産 802 246 吉田晴美 45 立 憲 民主 2122 なし 124 石原伸晃 60 自民 9 2862 4323 9 高松智之 43 希望 1351 8 原純子 53 共産 3198 873 菅原一秀 55 自民 5 7264 1281 834 前田吉成 62 無 所 属 なし なし 10 若狭勝 60 希望 2 1886 2599 鈴木庸介 41 立 憲 民主 1762 1139 鈴木隼人 40 自民 1 993 2351 岸良信 62 共産 389 71 吉井利光 35 幸福 2825 512 小山徹 42 無 所 属 なし なし 11 宍戸千絵 39 希望 なし 143 前田順一郎 42 立 憲 民主 1132 378 下村博文 63 自民 7 なし 4414 小堤東 28 共産 1632 不明 12 中村勝 66 諸派 なし なし 池内沙織 35 共産 1 17811 3431 208(さお

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り推し隊) 太田昭宏 72 公明 7 14732 10916 24268 13 祖父江元希 42 共産 1701 不明 鴨下一郎 68 自民 8 1265 なし 北條智彦 34 立憲 2737 385 14 矢作麻子 39 希望 68 60 阿藤和之 46 共産 1858 なし 松島みどり 61 自民 5 6733 294 清井美穂 54 幸福 667 546 大塚紀久雄 76 無 所 属 なし なし 15 吉田年男 69 共産 218 なし 柿沢未途 46 希望 3 37654 326 猪野隆 52 無 所 属 なし なし 秋元司 45 自民 2 6008 95 16 大西英男 71 自民 2 なし 909 初鹿明博 48 立 憲 民主 2 9093 1408 田村謙治 49 希望 3 523 1083 17 新井杉生 58 共産 330 なし 平沢勝栄 72 自民 7 1081 3003 西田主税 55 希望 88 29 18 鴇田敦 51 希望 136 101 菅直人 71 立 憲 民主 12 37976 2734 土屋正忠 75 自民 3 1103 256(応援ア カウント)

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19 佐々木里加 50 希望 216 なし 杉下茂雄 68 共産 87 なし 松本洋平 44 自民 3 2708 871 末松義規 60 立憲 5 1261 415 20 木原誠二 47 自民 3 3503 3155 鹿野晃 44 希望 1083 238 宮本徹 45 共産 1 11488 351 21 小糸健介 35 社民 135 不明 長島昭久 55 希望 5 34335 10869 天木直人 70 諸派 14754 なし 小田原潔 53 自民 2 2802 1907 22 山花郁夫 50 立 憲 民主 3 1326 247 伊東達也 56 自民 7 881 フォロワー 数不明 386 金ヶ崎絵美 41 希望 なし なし 阿部真 43 共産 1384 63 23 松村亮佑 37 共産 6118 なし 小倉将信 36 自民 2 2890 802 伊東俊輔 38 希望 2074 1082 24 吉羽美華 37 希望 なし なし 萩生田光一 54 自民 4 なし 1878 飯田美弥子 57 共産 229 不明 高橋斉久 44 立憲 1436 不明 25 井上宣 43 共産 1382 なし 山下容子 58 立憲 99 なし 井上信治 48 自民 5 なし 不明 小沢鋭仁 63 希望 8 4371 668 ※政党は自民=自由民主党▽立憲=立憲民主党▽希望=希望の党▽公明=公明党▽民進=

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民進党▽共産=日本共産党▽維新=日本維新の会 ※2017 年 10 月 21 日時点の独自調査

表 1:主要 SNS の特徴  月間アクティブユーザー数  国内ユーザー数  拡散力  透明性  投稿特徴  ユーザー特徴  Facebook  21 億人  2800万人  〇  ◎  実名登録  ビジネス向け  Twitter  3 億 2,800 万人  4500万人  ◎  △  140字字数制限  若者  Instagram  8億人  2000万人  △  〇  写真や動画が中心  若者、女性向け  LINE  2 億 1,700 万人  7300万人  △  〇  「友達」との連絡手段  幅広
図 1:代表的 SNS の利用率の推移(全体)  (出典)総務省情報通信政策研究所「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」  ⑵  国会議員の間での浸透    日本国民の間で SNS が急速に浸透してきたことが分かったが、国会議員の間ではどれほ ど浸透しているのだろうか。以下の表では 2018 年 1 月 29 日時点における全国会議員を対 象に、主に利用されている Twitter と Facebook の利用を調査した。 3
表 4:年代別国会議員 SNS 利用数・率  年代  Twitter  Facebook   議員数  30~39  21 (47.73%)  33 (75%)   44  40~49  94 (55.62%)  125 (73.96%)   169  50~59  113 (47.68%)  158 (66.67%)   237  60~69  73 (40.78%)  112 (62.57%)   179  70~79  20 (26.32%)  37 (48.68%)   76  80~  1  0
表 6:Twitter  フォロワー数  フォロー数  Tweet 数  開始日  自民  138737  325  9499  2009 年 7 月  公明  76733  1278  11514  2010 年 3 月  立憲  178516  134  4126  2017年 10月  希望  13031  155  672  2017 年 9 月  民進  27913  574  6746  2016 年 3 月  維新  16924  184  1539  2016 年 1 月  共産  4578
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