外国子会社合算税制(タック
ス・ヘイブン対策税制)の
課税上の取扱いの明確化
• www.pwc.com/jp/tax2014
年
10
月
28
日(火)
税理士法人
プライスウォーターハウスクーパース
パートナー 佐々木 浩
目次
Ⅰ タックス・ヘイブン対策税制の概要・・・・・・・・・・・・・ 3 Ⅱ 非課税所得の範囲、連結納税を適用している 場合の取扱い 1 非課税所得の範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 連結納税を適用している場合の租税負担 割合の算定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 15 Ⅲ 各国の事例に基づく検討 1 米国(現物分配、連結納税、LLC)・・・・・・・・・ 2 英国(グループリリーフ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ドイツ(オルガンシャフト)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 オランダ(現物分配、現物出資)・・・・・・・・・・・・ 5 オーストラリア(連結納税)・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 35 40 43 51 Ⅳ タックス・ヘイブン対策税制の今後 531 内国法人等が、税負担の著しく低い外国子会社を通じて
国際取引を行うことによって、わが国での課税を免れる事
態が生じ得る
→ このような租税回避行為に対処するため、租税負担割
合20%以下の軽課税国に本店を有する外国子会社の所
得相当額を、内国法人等の所得とみなして合算課税
2 外国子会社が独立企業としての実体を備え、本店所在地
国において事業活動を行うことについて十分な経済合理性
を有するなど、適用除外基準を満たす事業年度は、合算課
税は行わない
3 税負担水準20%以下の外国子会社等が得る資産性所得
については、2の適用除外基準を満たす場合でも、内国法
1 タックス・ヘイブン対策税制の概要
租税負担割合の計算式
(参考)分母の金額(所得の金額) 外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかを判定する場 合の租税負担割合の算定における分母の金額(所得の金額) 「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づく所得の金額に つき、その本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額に、 当該所得の金額に係るその本店所在地国の法令により外国法人税の 課税標準に含まれないこととされる所得の金額を加算した金額」(措令 39の14②一) 「非課税所得」 → どのように捉えるべきかが判然としていない
Ⅱ 非課税所得の範囲、連結納税を
適用している場合の取扱い
(注)公益社団法人日本租税研究協会国際課税実務検討会報告書「外国 子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)における課税上の取扱い について」(平成26年6月)の要約
(1) 所得の金額の意義 ・ 分母の金額が「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金 額」をベースにして計算する仕組みとなっているので、加算すべき非課 税所得も、外国関係会社の本店所在地国の法令において、「所得」と認 識されているものを想定しているのではないかとの見方 ・ 租税負担割合の算定に関する規定の趣旨が、本邦法人の租税負担割 合に比して外国関係会社の租税負担割合が著しく低いかどうかを判定 しようとするものである ・ 国によっては、我が国で当然に所得と認識されているものがはじめから 課税対象とする所得の範囲外としている場合もある ・ 「所得の金額」は、我が国の税法で定めている用語である 我が国の税法上の意義に従うのが妥当
1 非課税所得の範囲
(2) 非課税所得の考え方 ・ 現行法は、どのような基準を用いて非課税所得を捉えるのかについ て具体的な指針を示していない ・ したがって、現行法を補完する形で、法の趣旨に照らし、妥当な判定 基準を見い出すことが必要 ・ 我が国の税法(基本的な課税の仕組み)に照らして、本店所在地国 における課税上の措置・取扱いが一般に非課税所得と認識されるもの かどうか、という視点に立って判断するのが妥当であり、法の趣旨にも 合致する
1 非課税所得の範囲
(3) 非課税所得に該当するか否かの判定基準
・ 外国関係会社の本店所在地国の外国法人税が当該外国
関係会社において恒久的に課税されないものが、課税標準
に含まれない所得の金額(非課税所得)に該当する
・ ただし、当該外国関係会社において恒久的に課税されない
ものであっても、他の者においてその外国法人税が(代替
的に)課税されることとなっているものは、非課税所得には
該当しないものとして取り扱って差し支えない
(注)この判定基準は、合算課税の対象となる適用対象金額の算定における非課 税所得の判定についても、同様1 非課税所得の範囲
① 課税の繰延べ措置は、我が国において、一般に、非課税措置とは認 識されていない ・ 外国関係会社の本店所在地国の法令で認められる各種引当金の損金算入額は、 課税の繰延べ措置である限り、非課税所得には該当しない ・ 合理性のない引当金、準備金等で、取崩し要件等からみて実質的に非課税として措 置されているものは、非課税所得として取り扱う ② 課税の繰延べ措置は、我が国の制度でも、必ずしも、課税を繰り延べ られた法人において実現される仕組みとなっていない(次頁別紙参照) ③ 課税の繰延べ措置の内容や要件は、各国において区々であるが、我 が国と同様の繰延べ措置に限定したり、同じ適用要件を求めると、法の 趣旨を超えた著しく不合理な結果を招く ・ 適格合併の適用要件が違うことを理由に資産の譲渡益を非課税所得として取り扱っ た場合には、一時的に低税率となり適用除外法人であっても資産性所得の合算が行 われる可能性がある ・ 我が国の法人税法と外国関係会社の本店所在地国の法令に「損益の帰属時期(年 度)」について違いがあったとしても、そのことをもって「非課税所得」を認識するのは妥 当でない
1 非課税所得の範囲
1 非課税所得の範囲
の 外国関係会社の立場 準備金 繰入れ損の計上 戻入れ益の計上 資産移転法人の株主 移転法人 資産受入法人 グループ 内 ・外 国内 ・国外 グループ内 ・外 国内 ・国外 グループ 内 ・外 国内 ・国外 被合併法人の株主 被合併法人 合併法人 移転資産の譲渡損益 (合併法人に簿価引継ぎによって移転) ― 被合併法人株式の譲渡損益 合併法人株式の旧株簿価に よる受入れ ― 合併法人株式の交付 分割法人の株主 分割法人 分割承継法人 移転資産の譲渡損益 (分割承継法人に簿価引継ぎによって移 転) ― 分割法人株式の譲渡損益 分割承継法人株式の旧株簿 価による受入れ ― 分割承継法人株式の交付 分割法人 分割承継法人 移転資産の譲渡損益 (分割承継法人に簿価引継ぎ によって 移 転) 分割承継法人株式の移転資産簿価による 受入れ ― 分割承継法人株式の交付 現物出資法人 被現物出資法人 移転資産の譲渡損益 (被現物出資法人に簿価引継ぎ によって 移転 ) 被現物出資法人株式の移転資産簿価によ る受入れ ― 被現物出資法人株式の交 付 完全子法人 ※完全子法人の株主 完全親法人 完全子法人株式の譲渡損益 (完全親法人に簿価引継ぎによって移転) 完全親法人株式の旧株簿価による受入れ ― 完全親法人株式の交付 完全子法人 ※完全子法人の株主 完全親法人 完全子法人株式の譲渡損益 (完全親法人に簿価引継ぎによって移転) 完全親法人株式の旧株簿価による受入れ ― 完全親法人株式の交付 現物分配法人 被現物分配法人 現物分配資産の譲渡損益 【被現物分配法人に簿価引継ぎによって 移転】 ― 資産移転法人 資産受入法人 グループ内 国内 ・国外 グループ内 国内 ・国外 移転資産の譲渡損益 ― 移転法人で調整勘定によって繰延べ・戻入れ 内部利益消去によって資産受入法人に移転 移転資産の時価受入れ 移転資産の受入れ等 (別紙 )④ 外国関係会社の本店所在地国の外国法人税の課税が担保されてい ることを要件とすることで、特に不合理な結果を招くことにはならない ・ クロスボーダー合併やクロスボーダー連結・欠損金通算等は、外国関係会社の本店 所在地国の課税が担保されない場合もあることから、その場合には、移転資産の譲渡 益や欠損金の控除額などが非課税所得として取り扱われる ⑤ 連結納税に類似したグループ内の欠損金の彼我流用は、二重控除が 発生しない限り、我が国の連結納税制度と同様の措置と捉え、グループ 内の課税の繰延べ措置(期間損益の問題)とみるのが適当
1 非課税所得の範囲
(4) 具体例 ・ 外国において、キャピタルゲインがそもそも課税対象範囲とされていな かったり、産業奨励措置として一定の所得が時限的に免税(あるいは一 定の所得控除)とされていたり、海外で得た一定の所得が課税対象とさ れていないような場合には、これらの所得は非課税所得に該当 ・ 上記の判定基準により、次のような税制上の措置による課税の繰延べ、 内部利益の消去又は欠損金の通算による所得の減額は、非課税所得 には該当しない 1)引当金、準備金等に関する税制 2)組織再編税制 3)グループ内取引に関する法人税制 4)連結納税制度
1 非課税所得の範囲
(1) 論点 1 外国関係会社が連結納税を採用している場合 ① 連結子法人は、納付すべき法人税がない ② 連結親法人は、納付すべき法人税はあるが、連結グループ全体の 連結所得に対するもの(連結所得が欠損の場合は、納税額もない) → 各外国関係会社の租税負担割合はどのように算定すべきか 2 個々の外国関係会社(個社)単位で、分母の所得金額は現地法令に よって計算し、分子の税額は実際の納税額による → 分母は計算できても、分子の実際納税額をどのように捉えるか (注)英国のグループリリーフ、ドイツのオルガンシャフトなどは、連結納税に類似しているが、 個々の法人の納税義務はそのままで他の法人の欠損(損益)を通算する仕組みとなってい るので、上記⒈の「非課税所得の範囲」の問題として整理
2 連結納税を適用している場合の租税負担割合の算定方法
(2) 租税負担割合の算定方法として考えられる方法
2 連結納税を適用している場合の租税負担割合の算定方法
算定方法 所得金額(分母) 非課税所得の加算 外国法人税額(分子) ①連結グループ全体 で 算 定 さ れ た 租 税 負 担 割 合 を 各 連 結 法人の租税負担割 合とする方法 連結所得金額 全 体 連結法人税額 ②各連結法人ごとに そ の 単 体 所 得 と 実 際の負 担額で算 定 する方法 仮定計算した単体 所得金額(又は連結 所得の個別帰属額) 個 別 実際の負担額 ③各連結法人ごとに そ の 単 体 所 得 と 単 体 法 人 税 で 算 定 す る方法 仮定計算した単体 所得金額(又は連結 所得の個別帰属額) 個 別 左の仮定計算した 単 体 所 得 金 額 に 対 する単体法人税額(3) 各算定方法についての検討 ①の方法 → 採用し難い ・ 簡便だが、現行法に準拠した方法とは言い難い ・ 特別な減免を受けた法人がいても全体の租税負担割合が相当と なればその法人は特定外国子会社等に該当しない ②の方法 → 採用し難い ・ 外国関係会社ごとに算定する方法であるので現行法に親和的 ・ 非課税所得を有する法人が負担額を多めにするような恣意的な 負担をした場合に不合理な結果が生じる ③の方法 → 合理的な方法 ・ 外国関係会社ごとに算定する方法であるので現行法に親和的 ・ 分母、分子とも仮定計算となるが、恣意性がなく、現行法で措置さ れている、欠損となった場合の特例、累進税率の場合の特例とも 整合的
2 連結納税を適用している場合の租税負担割合の算定方法
(4) 結論 ・ 外国関係会社が連結納税制度を採っている場合の租税負担割合は、 上記③の方法、その外国関係会社が単体納税を行ったと仮定した場 合の単体所得金額とそれに対する単体法人税額を計算し、これに基づ いて租税負担割合を算定するのが妥当 ・ 仮に、各社別に仮定計算したとしても、トリガー税率(20%以下)になら ないと見込まれる場合、企業としては、便宜、現地の法定税率によって 判断するような対応をするのも現実的
2 連結納税を適用している場合の租税負担割合の算定方法
Ⅲ 各国の事例に基づく検討
(注)公益社団法人日本租税研究協会国際課税実務検討会報告書「外国 子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)における課税上の取扱い について」(平成26年6月)の要約
PwC (1) 事例 ・ P社、 S1社及びS2社は、100%資本関係 ・ S1社は、スピンオフ、スプリットオフにより、S2株式を内国法人P社へ 現物分配 ・ 米国連邦法人税上、一定の要件を満たす場合には、現物分配される 米国事業会社の株式(S2株式)に係る譲渡損益はないものとされる → S2株式の譲渡益課税は行われない (注)スピンオフ(現物による配当)、スプリットオフ(現物による資本の払戻し) 20
1-1 米国子会社が米国孫会社株式を現物分配した事例
日本 米国 P S2 S1 日本 現物分配 P S1 S2 米国(2) 論点 米国で課税されないS2株式の譲渡益は、S1社の租税負担割合の算 定において非課税所得に該当するか (3) 結論 非課税所得に該当する (4) 検討 1)米国連邦法人税上の取扱い 現物分配される米国事業会社の株式(分配対象法人株式。S2株式)に 係る譲渡損益はないものとされる (分配を受ける法人(P社)が受け入れる S2 株式の税務簿価) ① スピンオフ(現物による配当)の場合 P社における分配法人株式(S1 株式)の分配前の税務簿価に、分配法人 株式(S1株式)の分配前の時価に対する分配対象法人株式(S2 株式)の時 価の割合を乗じて計算した金額 ② スプリットオフ(現物による資本の払戻し)の場合 P社が手放す分配法人株式(S1株式)の税務簿価
1-1 米国子会社が米国孫会社株式を現物分配した事例
2) 非課税所得の該当性 ・ 本事例は帳簿価額での取引であるが、 クロスボーダーでの現物分 配で、スピンオフ/スプリットオフ後、分配対象法人株式の含み益に対し て米国の課税権は及ばない → 非課税所得に該当 ・ 将来的に分配対象法人株式の含み益に対して米国で課税される ケースも考えられるが、例外的なケースであるので、一般的に非課税 所得に該当しないとするのは適当でない (課税の可能性のあるケース) ・ 外国法人が米国不動産保有法人株式を譲渡する場合 ・ 外国法人が分配対象法人株式を再び米国法人に現物出資する場合
1-1 米国子会社が米国孫会社株式を現物分配した事例
(留意事項) ・ 将来においても引き続き米国不動産保有法人株式に該当することが 見込まれる場合など、個別の事例によっては米国の課税権が失われ たわけではない(非課税所得に該当しない)との結論になる場合もあり 得る ただし、この場合であっても、上記 (4) 1) ①に記載したように、内国 法人P社が行ったS2株式の税務簿価のステップアップ部分については、 非課税所得として分母の所得の金額に加算する
1-1 米国子会社が米国孫会社株式を現物分配した事例
(1) 事例 ・ P社、S1社及びS2社は連結納税を適用 ・ 通常の連邦法人税率、連結納税時の連邦法人税率共に、35% (今期の所得発生状況) ・ 所得は全て通常の事業所得 ・ P社 : 200 S1社: 160 S2社:▲300 合計 : 60 ・ 連結所得の合計は60、P社は連結親法人として21(連結所得 60×連邦法
1-2 米国連結納税を適用している事例
100% 日本 米国 J P 100% 100% S1 S2(2) 論点 米国において連結納税を適用しているP社、S1社及びS2社について、 租税負担割合は、どのように算定するか (3) 結論 ・ 各連結法人ごとに、米国連邦法人税上の単体納税を行ったと仮定した 場合の単体所得とそれに対する単体法人税を計算し、これを基に租税負 担割合を算定 ・ P社、S1社及びS2社の租税負担割合は、全て35% → いずれも特定外国子会社等には該当しない (4) 検討 ・ P社の連結納税額は 21 、P社個社の所得は 200なので、単純に計算 される租税負担割合は 10.5%(21/200)となり、P社は特定外国子会社 等に該当するのではないか S1社も個社の所得が 160であるのに納税していないので、同様の議論
1-2 米国連結納税を適用している事例
・ 法人税率 35%の国で、その国の連結納税を適用していることによって、 特定外国子会社等に該当することになるのは、合理的ではない ・ Ⅱの2での整理により、各連結法人ごとに、単体納税をしたと仮定した 場合の単体所得金額とそれに対する単体法人税額によって各社の租税 負担割合を算定する方法が合理的である ・ 上記の方法に基づいて算定される租税負担割合 P社は 35%(単体所得 200、租税 70(=200×35%)) S1社は 35%(単体所得 160、租税 56(=160×35%)) S2社の単体所得は欠損(▲300)なので、主たる事業の収入から所得 が生じたものと仮定した場合の連邦法人税率35%
1-2 米国連結納税を適用している事例
(1) 事例
・ 米国連邦法人税法上、米国 LLC(Limited Liability Company) (L社) は構成員課税(パス・スルー課税)を選択 ・ J1社、J2社、米国法人U社は資本関係なし ・ P社もL社も米国内で事業を行っている ・ 連邦法人税率は 35%
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
100% 日本 米国 J1 J2 20% 30% 50% P U L(今期における各社の課税所得・損益発生状況) ・ 所得は全て通常の事業所得 ・ P社 : 150(P社単体の所得 100+L社からの配分所得 50(100×50%))、 連邦法人税 52.5(所得 150×35%)を納税 ・ L社 :0(L社の稼得所得は 100であるが、構成員課税を選択しているの で、構成員の持分比率に従い、P 社に 50(100×50%)、J2 社に30 (100×30%)、U社に 20(100×20%)の所得を配分) L社は、構成員課税を選択しているので、連邦法人税は発生しない ・ J2社:L 社からの配分所得30に対して、連邦法人税10.5(所得 30×35%) を納税 (注)L 社(米国 LLC)は、日本の租税上「外国法人」として取り扱われる
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
(2) 論点 米国において構成員課税を適用しているL社と構成員P社について、 租税負担割合は、どのように算定するか (3) 結論 (J1社の外国関係会社としてのL社の租税負担割合) ・ P 社への配分所得と、それについてL社が単体で法人課税を受けた と仮定した場合に計算される租税の額に基づいて算定するのが適当 ・ 所得の金額50、租税17.5(50×税率 35%)、租税負担割合 35% → L 社は J1社の特定外国子会社等に該当しない (J1社の外国関係会社としてのP社の租税負担割合) ・ P社の所得のうちL社の構成員としての配分所得を除いた所得(P社 が単独での稼得所得)100 と、それについて法人課税を受けたと仮定 した場合に計算される租税の額に基づいて算定するのが適当 ・ 所得の金額 100、租税 35(100×税率 35%)、租税負担割合 35% → P社は J1社の特定外国子会社等に該当しない
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
(J2社の外国関係会社としての L 社の租税負担割合) ・ J2社への配分所得と、それについて J2社が実際に納付することと なる租税の額に基づいて算定するのが適当 ・ 所得の金額30、租税 10.5、租税負担割合 35% → L社 は J2社の特定外国子会社等に該当しない
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
(4) 検討 ・ 日本の租税法上、LLCを「法人」と扱うのであれば、LLC自体に租税 が課されていないことをもって、特定外国子会社等に該当するのでは ないか、という議論もないわけではない ・ LLCの各構成員が負担する租税は、LLCからの配分額に米国連邦法 人税率(35%)を乗じて算出されるから、一般的には、LLCの稼得した 所得全体に対し20%超の税率で租税が課されていると考えるのが妥当 ・ LLC自体が納税義務を負っていない一点をもって、特定外国子会社 等として取り扱うのは、タックス・ヘイブン対策税制の立法趣旨から考え ても無理がある ・ LLCの構成員がLLCの稼得した所得に対する租税を負担・納付する ことになっているとしても、その納付された租税をLLCが負担した租税と して擬制してLLCの租税負担割合を算定することは可能
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
1) J1社の外国関係会社としてのL社及びP社の租税負担割合 ・ 課税上の取扱いは、P社がL社を部分的に米国内で連結納税してい る(L社からの配分50をP社米国法人税申告上の所得の一部として取り 込んでいる)かのようで、「米国内で実施された部分的な連結納税」との 擬制が可能 ・ 米国連結納税における租税負担割合の算定と同様に、各社が稼得 した単体所得(分母)と、その単体所得について米国連邦法人税上の 単体納税を行ったと仮定した場合の単体法人税を租税の額(分子)とし て算定するのが合理的 ・ L社の租税負担割合を算定する場合の単体所得(分母)について、L 社の全体所得100とP社への配分額50のいずれによるかは、部分的な 連結納税と擬制していることから、他の構成員への配分所得まで含め て算定するのは妥当ではないので、P社への配分所得50を用いる ・ P社の租税負担割合を算定する場合の単体所得(分母)は、100
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
・ L社及びP社の各々の租税の額(分子)は、P社が実際に支払った連 邦法人税額 52.5(L社からの配分所得に係る納税額も含む)を、何ら かの方法によりL社負担額とP社負担額に分割する方法も考えられる しかし、L社、P社のいずれかに欠損金等が生じているようなケース については、実際の支払税額の分割が困難になるといった場合もあ ることから、P社の実際の支払税額に基づくのではなく、連結納税の場 合と同様に、各々の所得に対して連邦法人税率を乗ずることによって 租税の額を計算することが合理的
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
2) J2社の外国関係会社としての L社の租税負担割合 ・ L社の構成員たるJ2社は内国法人であるので、米国内(同一国内)で 部分的な連結納税がなされているとの擬制はできない ・ 所得に連邦法人税率を乗じて法人税額(租税負担割合を算定する上 での分子)を算定すると、米国以外の構成員(J2社)が L社から配分さ れた所得に関して米国法人税の課税を免れているような場合にも、計 算上は租税負担額があることになるという問題が生ずる ・ 租税負担額は、L社構成員が実際に負担した米国法人税額を用いる 方法が合理的 ・ この場合、J2社以外の他の構成員の納税情報を入手するのは事実 上不可能であるので、J2社が米国で納税した連邦法人税額を用いるこ とが現実的。対応する所得の金額(分母)についても J2社への配分所 得のみを用いる ・ L社の稼得した所得のうち J2社への配分所得(分母)と、J2社が実 際に負担した米国法人税額(分子)に基づいて租税負担割合を算定す る方法が合理的、現実的な対応
1-3 米国子会社がパス・スルー課税を選択している米国LLC
の持分を有する事例
(1) 事例 ・ 英国税制上のグループリリーフを適用し、英国法人 S1 社で生じた損 失をS2 社に移転し、S2 社で生じた所得と相殺
2 英国グループリリーフを適用している事例
日本 100% 100% P S1 損失100 S2 英国 <前提> <S2 社課税所得・税額計算> S1 社個別損失 ▲100 S2 社個別所得 200 S2 社個別所得 200 S1 社からの移転損失 ▲100 (グループリリーフによる) S2 社課税所得 100 英国税額(21%) 21 グループリリーフ上の適格グループ(2) 論点 S2社がグループリリーフによってS1社から移転を受けて所得から控除し た損失は、租税負担割合の算定において非課税所得に該当するか (3) 結論 ・ 非課税所得に該当しない ・ S2社の租税負担割合は、グループリリーフにより移転を受けた損失控 除後の課税所得を分母とし、当該控除後の課税所得に対して実際に課さ れた英国法人税を分子として計算する S2 社 租税負担割合は 21%(=21/ 100) → 特定外国子会社に該当しない S1社 当該事業年度に係るS1社の損失からグループリリーフにより移 転した損失を控除した後の課税所得(損失)が分母。ゼロなので 英国の法定税率(現行 21%) → 特定外国子会社に該当しない
2 英国グループリリーフを適用している事例
(4) 検討 <損失の移転を受けたS2社> ①分母の所得の金額 ・ S2社の英国法人税申告書は、S1社から移転を受けた損失を控除し た上で課税所得が算定されている。本店所在国の法令の規定により計 算した所得の金額は、本事例では 100 ・ S1社から移転を受けた損失は、非課税所得に該当しない ・ 損失を移転したS1社は、将来所得が生ずる場合も、その移転した損 失を自社の損失として控除することはできない。S2社で減少した法人 税はS1において将来支払うことになる → グループリリーフは、損失控除の時期を早めるが、S1社及びS2社 の両社でみた場合、移転された損失相当の課税は将来生じ得ること になる ・ 移転した損失は、英国グループ内において生じた経済的損失である (経済的損失がないにも関わらず損金とされたものではない) ② 分子の租税の額 S2 社が支払った英国法人税の額。本事例では 21
2 英国グループリリーフを適用している事例
<損失を移転したS1 社> ①分母の所得の金額 ・ S1社は、英国法人税申告書において損失▲100と認識したうえ、グ ループリリーフに基づき、当該損失▲100 を即時にS2社に移転する ・ S1社の本店所在国の法令の規定により計算した所得の金額は、グ ループリリーフによる損失移転後の所得(損失)(本事例ではゼロ)(グ ループリリーフ適用前の損失▲100ではない ) ・ S1社が損失▲100を認識した事業年度に係るS2社の英国法人税申告書 においてグループリリーフにより移転された損失は損金算入されることから、 経済的実態の観点からグループリリーフ適用後の損失が移転された後に残 る所得(損失)(本事例ではゼロ)と考えるのが合理的 ・ S1社の英国法人税申告書で損失▲100を認識する一方、グループリリーフ 適用別表で当該損失▲100の将来年度での利用放棄宣言を行うので、S1社 は英国法人税申告書で所得(損失)ゼロとして申告している 等 → 分母の金額はゼロとなり、S1社の租税負担割合は、英国の法定税 率(現行 21%)となる
2 英国グループリリーフを適用している事例
(注)S1社に非課税所得がある場合には、分母に加算される結果、分母の所得の金額は プラスとなる一方、S1社の当該事業年度の英国法人税法上課税されるべき所得はマ イナス(又はゼロ)であり、英国法人税は生じないことから、英国以外の地域で課され た外国法人税の額が存在しない限り、租税負担割合はゼロ%ということになる その結果、当該非課税所得の全額が適用対象金額となり合算課税が行われることも ある ②分子の租税の額 ・ 分母の所得の金額がゼロ又はマイナスになる場合には、英国の法定 税率で判定される
2 英国グループリリーフを適用している事例
(1) 事例 P社とS社は「損益移転契約」を締結し、ドイツのオルガンシャフトを適用 (参考) オルガンシャフトの概要 ・ 所定の要件を満たす場合に、オルガンシャフトに属する親子会社は1つの課税単位とし て取り扱われ、原則として親会社が納税義務を負う。子会社は、納税が生ずるか否か にかかわらず、申告書を提出する必要がある ・ 「損益移転契約」に基づき、子会社の損益は全て親会社に移転される。結果、子会社の
3 ドイツのオルガンシャフト(Organschaft)を適用している事例
日本 ドイツ 100% JP P1 S 100% オルガンシャフトによる損益移転(2) 論点 オルガンシャフトによる移転損益は、租税負担割合の算定において どのように取り扱われるか (3) 結論 オルガンシャフトによる移転損益は、P社の損益として、P社及びS社 の租税負担割合を算定する
3 ドイツのオルガンシャフト(Organschaft)を適用している事例
(4) 検討 ・ オルガンシャフトは、会社法上有効な契約に基づいて子会社から親 会社に対して損益が移転するもの。そこで、損益移転後の結果をもっ て親会社及び子会社それぞれの(決算上の)損益と考えるのが適当 である ・ オルガンシャフトによって損益の全てがP社に移転するため、税務上 の非課税所得についてもP社に移転していると考える → S社は、その損益が移転するので所得は常にゼロ。租税負担割合 は、主たる事業に係る収入金額から所得が生じたものとした場合に 適用されるドイツの法人税率による → P社は、オルガンシャフトによって移転を受けたS社の損益を所得 の金額に反映する。移転を受けた損益に係る非課税所得があれば、 租税負担割合の分母の金額に加算する
3 ドイツのオルガンシャフト(Organschaft)を適用している事例
(1)事例 ・ P社、 S1社、S2社及びS3社は、100%資本関係 ・ S1社(ケース1ではオランダ国内法人、ケース2ではオランダ国外法 人)が、オランダ国内法人S2社からS3社株式を現物分配資産とする現物 分配を受ける ・ オランダ税法上、S2 社はS3社株式の時価譲渡とされるが、一定の要 件を満たす場合には、S3 社株式の譲渡益は課税されない <ケース1>
4-1 オランダ法人が現物分配を行った事例
P S1 S2 S3 日本 オランダ 現物分配 P 日本 S1 S2 S3 譲渡 オランダ<ケース2> (2)論点 オランダで課税されないS3 社株式の譲渡益は、S2 社の租税負担割 合の算定において非課税所得に該当するか
4-1 オランダ法人が現物分配を行った事例
譲渡 オランダ オランダ国外 P S1 S2 S3 現物分配 日本 P S1 S2 S3 オランダ オランダ国外 日本(3)結論 ケース1及びケース2とも、非課税所得に該当する (4)検討 <ケース 1> ・ S2社が S3 社株式を現物分配する場合に、 オランダ税法上、時価譲 渡となるが、S3 社株式の譲渡益課税は行われない。S1 社は S3 社株 式を時価で受け入れる ・ 上記により、将来 S1 社が S3 社株式を譲渡したときにおいても、S3 社株式の譲渡益相当額について、オランダでは課税が行われない → 現物分配に係るS3 社株式の譲渡益は、現物分配をしたS2社及びS1 社などの他の者においても課税されないことになるので、非課税所得に 該当する
4-1 オランダ法人が現物分配を行った事例
<ケース 2> ・ S2 社がS3 社株式を現物分配する場合に、オランダ税法上、時価譲 渡となるが、S3 社株式の譲渡益課税は行われない ・ 上記により、S3 社株式の譲渡益相当額は国境を越え、オランダの課 税権が及ばないことになる → 本件現物分配に係るS3 社株式の譲渡益は、現物分配をしたS2社及 びS1社などの他の者においても課税されないことになるので、非課税所 得に該当する
4-1 オランダ法人が現物分配を行った事例
(1)事例
・ P社、 S1社、S2社及びS3社は、100%資本関係
・ オランダ法人S1社が、英国法人S2社株式を現物出資しS3社を設立 ・ オランダ税制では、一定の要件を満たす場合、share for share
merger 規定(株式の現物出資時点では課税を行わず、いわゆる簿価 引継ぎにより課税繰延べを認めるもの)が適用できる ・ S1社は、当該規定の適用を受け、現物出資時点の S2 社株式の含 み益について現物出資時点で課税を行わず、取得したS3 株式の取 得価額にS2株式の帳簿価額を付している。いわゆる簿価引継による 課税繰延が行われている
4-2 オランダ法人が現物出資を行った事例
4-2 オランダ法人が現物出資を行った事例
英国 英国 オランダ オランダ オランダ 英国 日本 日本 日本 ケース2 ケース1 現状 P S1 S3 S2 P S1 S3 S2 P S1 S2(2) 論点 オランダで課税されないS2株式の含み益は、S1社の租税負担割合の 算定において非課税所得に該当するか (3) 結論 ケース1及びケース2とも、非課税所得に該当しない (4) 検討 ・ オランダ法人がEU居住法人(現物出資対象法人)の株式を他の EU 居住法人(被現物出資法人)に対して現物出資する場合、次の“share for share merger”の要件を満たすときは、簿価引継を適用できる
① 被現物出資法人が現物出資対象法人の議決権の 50%超を取得す ること ② 現物出資対価のうち、被現物出資法人株式以外のものの額が10% 以下であること ③ 現物出資の主たる目的(又は主たる目的の一つが)税の回避又は逋 脱でないこと
4-2 オランダ法人が現物出資を行った事例
・ 上記の場合、S2 株式含み益は課税が繰り延べられている ・ 将来 S1社が S3社株式を譲渡するときは、原則としてオランダでは課 税が行われる → 本件現物出資によるS2株式含み益は、非課税所得に該当しない (備考)将来S3 株式を譲渡した場合に、オランダでは資本参加免税によって課税 されないので実質的に恒久的に課税されないこととなるのではないか → 資本参加免税は、一定の要件を満たすことが必要。本件現物出資の 時点では、将来S1社がS3株式を譲渡する際、この要件を満たさない可能 性も排除できないなどを勘案すると、本件の判定においては、簿価引継が 行われている限り、資本参加免税の適用までを考慮する必要はないと考え られる
4-2 オランダ法人が現物出資を行った事例
(1) 事例 P 社、S1社、S2 社及びS3社で連結納税を適用 (注)オーストラリア連結納税は、P社と間接的に 100%の資本関係にある法人 であっても、選択により、P社の下での連結納税に参加できる
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オーストラリア連結納税を適用している事例
オーストラリア 日本 100% 100% 100% 100% J P S1 S2 S3 <前提> P 社個別所得 300 <連結所得・税額> P 社個別所得 300 S1 社個別所得 200 S1 社個別所得 200 S2 社個別損失 ▲200 S2 社個別損失 ▲200 S3 社個別損失 ▲100 S3 社個別損失 ▲100 オーストラリア法 人税率 30% 連結課税所得 200 連結税額(30%) 60(2) 論点 オーストラリアにおいて連結納税を適用しているP社、S1社、S2社及び S3社について租税負担割合は、どのように算定するか (3) 結論 ・ 各連結法人ごとに、オーストラリア法人税上の単体納税を行ったと仮定 した場合の単体所得とそれに対する単体法人税を計算し、これを基に租 税負担割合を算定する ・ P 社及びS1社の租税負担割合は、30%(P社: 90/300=30%、S1社: 60/200=30%) → 特定外国子会社には該当しない ・ S2 社及びS3社は、欠損であることから、オーストラリアの法定税率 30%がその租税負担割合 → 特定外国子会社に該当しない