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カキ '西条' 果実の急速な軟化の機構解明と脱渋法および鮮度保持技術の開発

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Academic year: 2021

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(1)

きょ しょうこく

学 位 の 種 類

博士(農学)

学 位 記 番 号

甲第298号

学 位 授 与 年 月 日

平成15年 9月19日

学 位 授 与 の 要 件

学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 目

カキ‘西条’果実の急速な軟化の機構解明と脱渋法およ

び鮮度保持技術の開発

学位論文審査委員

(主査)

板 村 裕 之

(副査) 細 木 高 志

山 内 直 樹

田 邉 賢 二

太 田 勝 巳

学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

カキ‘西条’果実はドライアイス脱渋後、急速に軟化が進み、脱渋処理終了後4 日で完全軟化する ため、流通上大きな問題となっている。カキ‘西条’における急速な軟化の原因について、エチレン 作用阻害剤の 1-メチルシクロプロペン(MCP)処理により、果実軟化が抑制されることから、エ チレン生成が原因であるという報告がなされている。また、カキ‘平核無’や‘刀根早生’果実で、 急速な軟化時に細胞壁中のヘミセルロースなどの非セルロース性中性多糖類が分解するという報告が なされていることから、カキ果実の急速な軟化には、エチレン生成と細胞壁中の中性多糖類を分解す る酵素が大きな役割を果たしていることが推察される。しかし、カキ‘西条’果実の急速な軟化とエ チレン生成と細胞壁分解酵素の活性との関係を調査した報告は見当たらない。またカキ‘西条’果実 の急速な軟化を抑制し、貯蔵性を向上させるため、脱渋法、低温保蔵、エチレン吸収剤やプラスチッ クフィルム包装など、様々な工夫がなされてきたが、未だ満足できる脱渋法と貯蔵法が見つかってい ない。 そこで本研究では、まずドライアイス脱渋処理後の急速な軟化が‘西条’だけに特異的な現象なの かどうかを調査し、次に急速な軟化に伴うエチレン生成と細胞壁分解酵素活性の関係を明らかにし、 最後に脱渋法と貯蔵法による鮮度保持技術を確立しようとした。 第 1 章ではドライアイス脱渋処理後の急速な軟化が‘西条’だけに特異的に起こるのかを調査し、 あわせてエチレン生成との関連性を検討した。21 品種に対するドライアイス脱渋処理の結果、急速な 軟化は‘西条’に限らず多くの品種で起こることが示された。エチレン生成量は品種間でかなりのば らつきがあり、軟化度とエチレン生成はR2=0.0271 で、相関関係は認められなかった。このことから、 果実軟化はエチレン生成量よりもエチレンに対する感受性に大きく影響されるのではないかと考えら れる。 第2 章ではカキ‘西条’幼果と成熟後期果実の急速な軟化に伴うエチレン生成量および 4 つの細胞 壁分解酵素活性の変化を調査した。カキ‘西条’幼果と成熟後期果実のα-L-アラビノフラノシダ ーゼ(AF-ase)活性は、2 日以降の急速な果肉硬度の低下時に 2 倍まで持続して増加したことから果

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実軟化への働きがポリガラクツロテーゼ(PG)、ペクチンエステラーゼ(PE)、β-D-ガラクトシ ダーゼ(GA-ase)よりも大きく、少なくとも AF-ase による非セルロース性中性多糖類の分解が関連 していることが示された。 第3 章ではカキ‘西条’のドライアイス脱渋果と MCP 処理果の軟化時の果肉硬度とエチレン生成 量および 5 つの細胞壁分解酵素活性の変化を調査した。MCP 処理を行わない脱渋果では、エチレン 生成の後にAF-ase 活性の増加が認められた。また、MCP 処理により AF-ase 活性が抑制されること から、AF-ase はエチレン依存であることが示された。MCP 処理を行わない脱渋果では、AF-ase 活 性の急速な増加と急速な果肉硬度の低下が一致していること、またMCP 処理により AF-ase 活性が 抑制された時に、果肉硬度の低下が顕著に抑制されたことから、AF-ase の急速な軟化ヘの関与が示さ れた。一方、PG、PE、GA-ase およびβ-D-キシロシダーゼ(Xy1-ase)においては脱渋果の急速 な軟化とエチレンとの関係は明らかではなかった。第2 章、第 3 章よりカキ‘西条’のドライアイス 脱渋後の急速な軟化においては、エチレン生成により誘導された AF-ase による非セルロース性中性 多糖類の分解が直接的に関与する可能性が示された。しかしAF-ase は採取時に既にある程度の活性を もつことから、急速な軟化にはアイソザイムやエクスパンシンやキシログルカントランスフェラーゼ などの軟化への関与も考えられ、検討を必要とする。 第4 章ではカキ‘西条’果実を用いて、通常の炭酸ガス(CO2)およびドライアイス脱渋法と窒素 (N2)脱渋法、CO2漸減脱渋法による果実のエチレン生成と貯蔵性を比較した。また、ドライアイス 脱渋法および粉末アルコール脱渋法単独と、それらとプラスチック容器による密閉を組み合わせるこ とによる貯蔵効果を調査した。 N2脱渋法、CO2漸減脱渋法は、エチレン生成量が CO2脱渋法に比べて抑えられたが、果実軟化は 抑制されなかった。このことは、カキ‘西条’果実の軟化を遅延させるためには、ある閾値以下のエ チレン生成量に抑制するような脱渋法が必要なことを示した。ドライアイス脱渋開放保存区と密封保 存区では、両区とも5 日で軟化した。粉末アルコール脱渋開放保存区においては 7 日で軟化し、密封 保存区においては 40 日で軟化した。ドライアイス脱渋法に比べて、粉末アルコール脱渋密封保存の 貯蔵性が顕著に向上した。これは、プラスチック容器密封による水分蒸散抑制により、エチレン生成 が低く抑えられたためと思われる。以上のことから、脱渋処理後の果実軟化を防ぐ対策として、粉末 アルコール脱渋後のプラスチック容器による密封保存が有効であることが示された。 以上の4 つの実験結果から、カキ‘西条’果実のドライアイス脱渋後の急速な軟化は、主としてエ チレン生成により誘導されるAF-ase が非セルロース性中性多糖類の分解に関与することで起こるこ とが示された。またカキ‘西条’果実の常温による貯蔵性を高める有効な方法として、粉末アルコー ル脱渋後プラスチック容器保存が上げられた。

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

カキ‘西条’果実はドライアイス脱渋後、急速に軟化が進み、脱渋処理終了後4 日で完全軟化する ため、流通上大きな問題となっている。カキ‘西条’における急速な軟化の原因について、エチレン 作用阻害剤の1-メチルシクロプロペン(MCP)処理により、果実軟化が抑制されることから、エチ レン生成が原因であるという報告がなされている。また、カキ‘平核無’や‘刀根早生’果実で、急 速な軟化時に細胞壁中のヘミセルロースなどの非セルロース性中性多糖類が分解するという報告がな

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されていることから、カキ果実の急速な軟化には、エチレン生成と細胞壁中の中性多糖類を分解する 酵素が大きな役割を果たしていることが推察される。しかし、カキ‘西条’果実の急速な軟化とエチ レン生成および細胞壁分解酵素の活性との関係を調査した報告は見当たらない。またカキ‘西条’果 実の急速な軟化を抑制し、貯蔵性を向上させるため、脱渋法、低温保蔵、エチレン吸収剤やプラスチ ックフィルム包装など、様々な工夫がなされてきたが、末だ満足できる脱渋法と貯蔵法が見つかって いない。 そこで本研究では、まずドライアイス脱渋処理後の急速な軟化が‘西条’だけに特異的な現象なの かどうかを調査し、次に急速な軟化に伴うエチレン生成と細胞壁分解酵素活性の関係を明らかにし、 最後に脱渋法と貯蔵法による鮮度保持技術を確立しようとした。 第 1 章ではドライアイス脱渋処理後の急速な軟化が‘西条’だけに特異的に起こるのかを調査し、 あわせてエチレン生成との関連性を検討した。21 品種に対するドライアイス脱渋処理の結果、急速な 軟化は‘西条’に限らず多くの品種で起こることが示された。エチレン生成量は品種間でかなりのば らつきがあり、軟化度とエチレン生成はR2=0.0398 で、相関関係は認められなかった。このことから、 果実軟化はエチレン生成量よりもエチレンに対する感受性に大きく影響されるのではないかと推察さ れる。 第2 章ではカキ‘西条’幼果と成熟後期果実の急速な軟化に伴うエチレン生成量および 4 つの細胞 壁分解酵素活性の変化を調査した。カキ‘西条’幼果と成熱後期果実のα-L-アラビノフラノシダ ーゼ(AF-ase)活性は、2 日以降の急速な果肉硬度の低下時に 2 倍まで持続して増加したことから果 実軟化への働きがポリガラクツロナーゼ(PG)、ペクチンエステラーゼ(PE)、β-D-ガラクトシ ダーゼ(Gal-ase)よりも大きく、少なくとも AF-ase による非セルロース性中性多糖類の分解が関連 していることが示された。 第3 章ではカキ‘西条’のドライアイス脱渋果と MCP 処理果の軟化時の果肉硬度とエチレン生成 量および 5 つの細胞壁分解酵素活性の変化を調査した。MCP 無処理果の果肉硬度は脱渋処理終了直 後から急速に低下したが、MCP 処理果では軟化が遅く、無処理果に比べて約 3 日軟化が遅延した。 果実の品質保持期間も 3 日延長したことから、MCP 処理はカキ‘西条’果実の品質保持に有望であ ると考えられた。MCP 処理を行わない脱渋果では、エチレン生成の後に AF-ase 活性の増加が認めら れた。また、MCP 処理により AF-ase 活性が抑制されることから、AF-ase はエチレン依存であるこ とが示された。MCP 処理を行わない脱渋果では、AF-ase 活性の急速な増加と急速な果肉硬度の低下 が一致していること、また MCP 処理により AF-ase 活性が抑制された時に、果肉硬度の低下が顕著 に抑制されたことから、AF-ase の急速な軟化ヘの関与が示された。一方、PG、PE、Gal-ase および β-D-キシロシダーゼ(Xy1-ase)においては脱渋果の急速な軟化とエチレンとの関係は明らかでは なかった。第2 章、第 3 章よりカキ‘西条’のドライアイス脱渋後の急速な軟化においては、エチレ ン生成により誘導された AF-ase による非セルロース性中性多糖類の分解が直接的に関与する可能性 が示された。しかし AF-ase は採取時に既にある程度の活性をもつことから、急速な軟化にはアイソ ザイムやエクスパンシンおよびキシログルカントランスフェラーゼなどの軟化への関与も考えられ、 検討を必要とする。 第4 章ではカキ‘西条’果実を用いて、通常の炭酸ガス(CO2)およびドライアイス脱渋法と窒素 (N2)脱渋法、CO2漸減脱渋法による果実のエチレン生成と貯蔵性を比較した。また、ドライアイス 脱渋法および粉末アルコール脱渋法単独と、それらとプラスチック容器による密閉を組み合わせるこ とによる貯蔵効果を調査した。 N2脱渋法、CO2漸減脱渋法は、エチレン生成量が CO2脱渋法に比べて抑えられたが、果実軟化は 抑制されなかった。このことは、カキ‘西条’果実の軟化を遅延させるためには、ある閾値以下のエ

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チレン生成量に抑制するような脱渋法が必要なことを示した。ドライアイス脱渋開放保存区と密封保 存区では、両区とも5 日で軟化した。粉末アルコール脱渋開放保存区においては 7 日で軟化し、密封 保存区においては 40 日で軟化した。ドライアイス脱渋法に比べて、粉末アルコール脱渋密封保存の 貯蔵性が顕著に向上した。これは、プラスチック容器密封による水分蒸散抑制により、エチレン生成 が低く抑えられたためと思われる。以上のことから、脱渋処理後の果実軟化を防ぐ対策として、粉末 アルコール脱渋後のプラスチック容器による密封保存が有効であることが示された。 以上の4 つの実験結果から、カキ‘西条’果実のドライアイス脱渋後の急速な軟化は、主としてエ チレン生成により誘導されるAF-ase が非セルロース性中性多糖類の分解に関与することで起こるこ とが示された。またカキ‘西条’果実の常温による貯蔵性を高める有効な方法として、エチレン作用 阻害剤のMCP 処理と粉末アルコール脱渋後のプラスチック容器保存が上げられた。 本研究のカキ‘西条’果実のドライアイス脱渋後の急速な軟化のメカニズムと鮮度保持技術に関す る知見は、カキ果実の軟化防止と貯蔵・流通において大きく貢献できると考えられ、学位論文として 十分な価値を有するものと判定された。

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