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(1)

1

第164回 筑豊漢方研究会

平成19年(2007)10月11日

「日常診療に役立つ漢方講座」

入門講座 『はじめての漢方診療』

(3) 少陽病

1) 柴胡剤

飯塚病院 東洋医学センター

漢方診療科

三潴 忠道

(2)

漢方医学的な病態(証)の二大別

しょう

陽性の病態 : 体力が優勢

活動性

発揚性

が主体

陰性の病態 : 体力が劣勢

非活動性

沈降性

が主体

陽証

陰証

病気の

行方

N8

前回のおさらいとして、証(漢方医学的な病態)について今までのこと をまとめると、 陽証とは体に病邪がはいってきたことに対して活発に反応できる病態で あり、熱が主体(寒が乏しい)となる。 陰証は病邪に対して体があまり反応できず、非活動性で寒が主体となる 。 病気の進行としては基本的には陽証からはじまり、徐々に体力が消耗す るにつれて陰証に移っていくことになる。

2

(3)

陽証病期

陽証病期

太陽病

太陽病

少陽

少陽

陽明

病期

陽明

病期

太陰

病期

太陰

病期

少陰

病期

少陰

病期

厥陰

病期

厥陰

病期

体 力

病 毒

陰証病期

陰証病期

陰陽と体力と病毒との量的消長の関係

六病位

N8

陰陽は病態を示す尺度であり、また病期を示す尺度にもなる。すなわち 、前半が陽証、後半が陰証である。 病期として陰陽を捉えたとき、前半の陽証をさらに太陽・少陽・陽明に 3つに分け、陰証も太陰・少陰・厥陰の3つに分類する。 これを六病位という。 病気は基本的には太陽病から始まり、長引くにつれて徐々に陰証に移っ ていく。 陽証ではまだ体力が病毒より量的に優位であるが、病気が長引くと体力 が病毒より相対的に劣勢となる。 病気の始まりのころはまだ体力もあり、生体反応が活発なため陽証期で あることが多く、その一番初めを太陽病という。 太とは物事の始まりの意味。例えば、太古とは歴史が始まる初期。太陽 病は陽証の始まりである。 病気が長引いていくと徐々に負け戦となってきて、だんだん陰証に入り 、太陰病~少陰病と進んでいく。 太陰病は陰証と陽証の移行期で、まだ本格的な陰証ではない。陰証に片 足を踏み込んだ程度の時期。 少陰病までくると陰証の真っ只中である。 さらに病気が進んでいくと厥陰(けっちん)病でいわば瀕死の状態、こ れ以上体力がなくなれば死にいたる。

3

(4)

表 裏 の 概 念

N10

皮膚 関節 神経

口腔~上気道

半表半裏

胸膈内臓器

横隔膜周辺

消化管

証の物差しの一つに表裏(ひょう・り)がある。 表とは体の表面のこと、浅い部分といった意味で、病が表にあると皮膚 ・関節・神経や口腔~上気道のあたりに症状が出現しやすい。 (表は外胚葉由来臓器と比較的関連があるといえるかもしれない。) 半表半裏に病気があると、胸腔内臓器や横隔膜前後に症候が出現しやす い。 裏は身体の中心、主に消化管をさす。 太陽病は主に表に病邪との戦いのステージがあり、徐々に病気が進行し て少陽病になると半表半裏にステージが移り、 陽明病期では裏が病邪とたたかうステージとなる。

4

(5)

陽証期

陰証期

傷寒論における急性熱性疾患の変遷

少陽病

陽明病

少陰

厥陰

太陰病

太陽病

N22

傷寒論ではさきほど述べたように病気を六病位という6つの病態にわけ 、太陽病から徐々に陰証に移っていくと考えた。 今回の話である少陽病期は、病気が表から半表半裏に移ってきた時期で あり、 具体的には感染を起こしてから1週間近く経過し、口喝・口苦・吐き気な ど消化器症状などがでてきたころをいう。 病気を川の流れに例えると、少陽病期は淵のように病気がゆっくりと停 滞するような病期である。すなわち、慢性疾患で 陽証の場合は、しばしば少陽病期を呈する。

5

(6)

脈診

N12

少陽病期の脈は典型的には弦脈といい、浮と沈の間でやや浮に近く、弓 弦のように少し緊張感のある脈をいう

(7)

少陽病

少陽病

【 傷

少陽

之為病、

口苦、

【 傷

少陽

之為病、

口苦、

咽乾、

眩也。

咽乾、

眩也。

半表

半裏

半表

半裏

【 代

【 代

往来寒熱

口苦

往来寒熱

口苦

・・

白(

~黄)

・・

白(

~黄)

清解

清解

【 代

小柴胡湯

【 代

小柴胡湯

N26

傷寒論では少陽病を、口が苦く、喉が乾き、めまいがあるような病態と 定義している。 少陽病の漢方医学的な病態は、病位は半表半裏、つまり消化器症状が少 しでてきたような状態である。 脈は先ほど述べたように弦脈である。 症状・所見としては、午前中は平熱で夕方になると熱発する、または熱 っぽいという往来寒熱や、口苦や吐き気などの消化器症状があり、 舌には白苔が出現するが時に(実証では)黄苔で、腹証では胸協苦満や 心下痞鞕などが特徴的である。 少陽病の治療原則は、太陽病のように汗をかかせて治療する発表や、陽 明病における瀉下ではなく、病邪をその場で消していく清解である。 少陽病の典型的な病態に対する治療方剤は小柴胡湯であり、この病態を 小柴胡湯証という。 小柴胡湯証とは小柴胡湯が適応となる漢方医学的な病態という意味であ り、少陽病の典型的な病態ともいえる。 なお、小柴胡湯は、発汗方・吐方・瀉下をしてはいけない少陽病の中心 的な病態に適応するので、別名を三禁湯とも呼ばれる。 次に小柴胡湯について説明する。

7

(8)

小柴胡湯方

小柴胡湯方

半升

半升

半夏

半夏

半升

半升

甘草

甘草

三両

三両

生姜

生姜

三両

三両

大棗

大棗

十二

枚擘

十二

枚擘

右七味以水一斗

右七味以水一斗

煮取六升

去滓

煮取六升

去滓

再煮

取三升

温服一升

再煮

取三升

温服一升

日三

日三

陽病

中篇

陽病

中篇

人参

三両

黄芩

三両

柴胡

小柴胡湯は柴胡・黄芩・人参・半夏・甘草・生姜・大棗の七つの薬味か らなり、 柴胡は横隔膜前後の血のめぐりをよくする。 黄芩は横隔膜前後の熱をとる。 人参は万能薬のように言われているが、吉益東洞は心下痞鞕が使用目標 だといっており、 みぞおちのあたりのつかえをとり、元気を増すといわれている。 半夏は心下のだぶついている水(濁飲)をとり、吐き気止めの効果があ る 甘草・生姜・大棗は3つひと固まりでよくつかわれ、胃腸の働きを整え たり、全体のバランスをととのえたりする。 これらの生薬が小柴胡湯を構成しており、つまり小柴胡湯は横隔膜前後 の水や血の滞りを改善し機能を正常化させるような薬味構成になってい る。 これらの生薬を1200ccの水で600ccに煮詰めて滓をとり、さ らに煮詰めて300ccにして、それを1日3回に分けて内服する。 (傷寒論の水量は、一升を100ccに換算すると、現代の量と似てくる) 滓をさってから再度につめることで飲みやすくなるといわれているが、 近年のわが国では手間を省いて600ccを300ccに煮詰める方法が一般的で ある。

8

(9)

小柴胡湯

傷寒

五六

往来寒熱

胸脇苦満

黙々

不欲飲

心煩喜嘔

或胸中煩而不嘔

或渇

或腹中

或胸

下痞硬

或心下

小便

或不渇

身有微熱

或咳

小柴胡湯主

陽病中篇

傷寒

四五日

身熱

悪風

頚項強

胸下

手足

温而渇者

小柴胡湯主

陽病中篇

傷寒論によると 小柴胡湯の適応病態は、感染症になってから5~6日経過し、往来寒熱( 夕方の熱発)や胸協苦満があり、 食欲がなく、胸下部の辺りに不快感がしてしばしば吐き気がする。 時には胸が不快であるが吐き気はなく、時には喉が渇いたり、時には腹 痛がり、時には胸の下に痞鞕が出現し、 時には心下の動悸がして小便の出が悪く、時にはのどは渇かずに体が少 し熱っぽく、時には咳をする。 これらの症状がみられるのが、典型的な小柴胡湯証における症状である といわれている。 また傷寒論の太陽病中編によれば、 感染症になって(先の5~6日より進行が少し速く)4・5日後で、体 は熱っぽいが悪寒は弱く(悪風は軽度の悪寒)、 側頚部や項が強張り、胸の下方つまり横隔膜前後のみぞおちのあたりが つまった感じがして手足が暖かくて喉が渇くものも 典型的な小柴胡湯証である。 太陽病では項背こわばるで脊椎の両側に沿ったこわばりであるが、少陽 病の頚項強ばるは、 首の両側がこり首が回しにくいような状態(振り向けない強張り)だと いわれている。

9

(10)

腹診(4)

〔臨床応用〕

柴胡剤

胸脇苦満

(胸脇満微結)

N88

小陽病期でとくに柴胡剤の適応となる特徴的な腹候として胸協苦満があ る。 胸協苦満の所見の取り方は、乳首と臍を結んだ線上の肋骨弓下を、胸壁 の裏側に滑り込むような方向で圧迫 すると抵抗と圧痛がある。胸脇苦満があると柴胡剤を使用する一つの目 安となる。 胸協苦満には右と左があるが、大抵(6-7割)は右の方が強いことが多い ので上図では右を二本線であらわした。 胸協苦満のごく軽いものを胸協満微結といい、押しても抵抗はないので 指が胸郭内に入り込むが、 最後に圧痛があるものをいう。虚証における胸脇苦満と考えられる。

10

(11)

N88

先ほど述べた胸協苦満の所見の取り方の実例

このように乳首と臍を結んだ線上の肋骨弓下に指を差しこんで圧迫する と抵抗と圧痛を認める。

(12)

N88

胸協苦満の所見の取り方その2

左手で皮膚を手前(下方)に少しずらすようにして少し緩ませるように すると、余分な苦痛を与えずに胸脇苦満を確認しやすい。

(13)

N28

これは江戸時代に日本で書かれた腹証奇覧という本の図。

小柴胡湯の典型的な腹証では、頚項が強張り、胸骨の下方がつかえ(心煩 )、肋骨弓の下部(上腹部)に不快感(痞)や圧迫時に抵抗を認める。

(14)

これも腹証奇覧の図であり、左上の絵のようにこのようにして胸協苦満 を見る方法もあるということだが

実際はこのようにみることはほとんどない。

(15)

先ほどの絵の実例。

このように上から指をさしこむ方法もあるが、私たちは実際に用いてい ない。

(16)

腹証奇覧の図その3 子供の胸協苦満の図。 肋骨があるので、胸郭下部が図のように膨らんでいることはありえない と考えていたが、実際に 診察していると、図のようになんとなく膨張しているような感じを経験 したことがある。

16

(17)

17

子供の胸脇苦満は、このように両手で体を挟み、親指で肋骨弓下を圧迫する。 この例では右側上腹部に少し抵抗があり、親指でおすと顔をゆがめるので強く 押せない(右胸脇苦満がある)。

(18)

これは浅田流でよくやる方法だが、乳首と臍を結んだ線上で肋骨弓下の 部位をつまむと、 胸協苦満がある場合はすこし厚ぼったいような感じがする。 これは妊婦など、肋骨弓下に指をさしこめない場合に応用できる。

18

(19)

腹診(3)

心下痞鞕

〔臨床応用〕

人参

瀉心湯類

N86

次に心下痞鞕について説明する。 心下痞鞕とは心下部を手で圧迫すると、少し硬いような抵抗をみとめ、 患者はすこし苦しい感じを訴える。 圧迫しても固くなく苦しいだけの場合は心下痞といい、少し硬い抵抗も 同時に認める場合に心下痞鞕という。 鞕はなめし革のように少し弾力のある固さという意味である。 この所見があると、人参含有方剤や寫心湯類などの適応の目安となる。

19

(20)

N86

心下痞鞕の所見の取り方の実例

このようにみぞおちのあたりを指で圧迫し、抵抗や圧痛を評価する。

(21)

腹診(1)

腹力

〔臨床応用〕

虚・実

N84

次に腹力について説明する。 腹力とは腹壁の弾力、緊張度である。腹部全体を両手で圧迫し、その強 さは虚実の判定に役立つ。 腹部を圧迫したときグッと力がある場合を実、抵抗がなくフニャフニャ した場合は虚とする。 腹力を見る場合は臍を中心に時計回りにみるとよい。 これを反対回りにしたりすると患者が苦しがることもある。

21

(22)

腹力が実の症例 腹部全体が張っており、腹診してみても跳ね返り(弾力)が強く充実して いる。 防風通聖散(陽証・実証)が有効であった症例(防風通聖散証)の腹であ る。

22

(23)

横からみても腹が張り出していて充実している。実際には押して確認す る。

(24)

腹力が虚の症例

見るからに軟弱で、実際に腹診してみても抵抗がなくフニャフニャで、 腹直筋だけはかろうじて薄く張っている。

(25)

小柴胡湯の症例

小柴胡湯は腹力が中等度であり、この写真のようにある程度の腹部の張 りと充実度を認める。

(26)

小柴胡湯

脈:弦

舌苔:乾燥

(やや湿潤)

腹力:3

(特徴)

往来寒熱

口苦・悪心

肩背・頚項強

手足煩熱

N28

小柴胡湯証をまとめると、 脈は弦脈、舌苔はやや乾燥した白苔、腹力は中等度であり、 腹証としては腹力中等度で、胸協苦満、心下痞鞕が特徴的である。経験 的に上腹部の腹直筋緊張を認めることが多い。 (腹力の“3”という記載は、腹壁の緊張を5段階評価し、その中等度 という意味で、われわれのプライベートな記載方である。) 症状としては往来寒熱(午後の発熱や熱感)、口苦・嘔気・食欲不振など の消化器症状、首肩のこり、手足の火照りなどである。 慢性・非熱性疾患に応用するときには、発熱にかかわる症状を抜いて考 える。

26

(27)

少陽病の典型的な舌苔は、乾燥した白苔である。

これは小柴胡湯証の舌ではなく、陰証の舌の写真であるが、

舌の中央付近のコケが毛羽立ったようで「乾燥した」といわれる状態。 その他の部位のコケはぬめっとした感じで、湿った白苔ととる。

(28)

少陽病

少陽病

【 傷

少陽

之為病、

口苦、

【 傷

少陽

之為病、

口苦、

咽乾、

眩也。

咽乾、

眩也。

半表

半裏

半表

半裏

【 代

【 代

往来寒熱

口苦

往来寒熱

口苦

・・

白(

~黄)

・・

白(

~黄)

清解

清解

【 代

小柴胡湯

【 代

小柴胡湯

N26

小陽病の治療原則は清解といい、熱をさましてやることである。 太陽病は発汗(発表)させ、陽明病では吐かせたり下したりするが、小 陽病では清解といい半表半裏のその場で熱を冷まし治療をする。 小柴胡湯証は典型的な少陽病の病態であり、ここ記載の症候はほぼ典型 的な小柴胡湯証を示している。

28

(29)

主な柴胡剤とその使い方

主な柴胡剤とその使い方

方剤

方剤

大柴胡湯

大柴胡湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

四逆散

四逆散

小柴胡湯

小柴胡湯

柴胡桂枝湯

柴胡桂枝湯

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯

舌苔

舌苔

腹候

腹候

(腹力)

(腹力)

特徴・応用

特徴・応用

乾燥

乾燥

白黄

白黄

4~5 4~5 3~4 3~4 3 3 3 3 2~3 2~3 2 2

ヤヤ沈

ヤヤ沈

浮弦

浮弦

ヤヤ浮

ヤヤ浮

乾燥傾向

乾燥傾向

ヤヤ乾燥

ヤヤ乾燥

(白)

(白)

乾燥

乾燥

(ヤヤ湿潤)

(ヤヤ湿潤)

ヤヤ乾燥

ヤヤ乾燥

微白

微白

湿潤

湿潤

(微白)

(微白)

強実

強実

便秘

便秘

強実~やや実 強実~やや実 便秘傾向 便秘傾向 精神不安 精神不安 腹直筋・全長緊張 腹直筋・全長緊張 四肢冷・顔色不良 四肢冷・顔色不良 往来寒熱 往来寒熱 口苦・悪心 口苦・悪心 手足煩熱 手足煩熱 小柴胡湯+桂枝湯 小柴胡湯+桂枝湯 カゼの治り際 カゼの治り際 上腹部痛 上腹部痛 てんかん(加芍薬) てんかん(加芍薬) 上熱下寒・口唇乾燥 上熱下寒・口唇乾燥 神経症状・悪夢 神経症状・悪夢 アレルギー性鼻炎 アレルギー性鼻炎 悪夢・易驚 悪夢・易驚 下痢・便秘(兎糞) 下痢・便秘(兎糞) 抑欝傾向 抑欝傾向 肩背・頚項強 肩背・頚項強 頭汗・盗汗 頭汗・盗汗

N28

小柴胡湯を中心として、柴胡を含有している方剤を柴胡剤といい、少陽 病期における代表的な方剤群である。 主要な柴胡剤を表に示したが、上部が実証で下方に行くにつれて虚証と なる。 少陽病期は半表半裏といっても、各方剤によりその程度は異なり、小柴 胡湯は正に表裏の中間であるが、柴胡剤では実に傾くほど裏の傾向が増 えてくる。 一例として、大柴胡湯(証)は表よりも裏の内訳が多くなり、脈は沈・ 実、裏(消化管)に熱のこもった病態なので便秘傾向のことが多い。

29

(30)

大 柴 胡 湯

脈:沈・実

舌苔:乾燥

黄~白黄

腹力:4~5

(特徴)

強実

便秘

N28

大柴胡湯について説明する。 大柴胡湯は病位が半表半裏の中でも裏に近い。そのため脈は沈で、強実 証なので脈力は強い(実)。舌も熱のため乾燥した苔で、色は黄~白黄 苔となる。 腹証としては腹力は5段階で評価すると4~5と強く、胸脇苦満や心下痞 鞭がはっきりしており、 厚みのある腹直筋緊張が腹部を中心に触知され、時には下腹部にまで及 ぶのが典型的である。 便秘していることも一つの典型的な特徴となる。

30

(31)

腹症奇覧の大柴胡湯の図

(32)

主な柴胡剤と構成生薬

主な柴胡剤と構成生薬

ダ イ サ イ コ ト ウ ダ イ サ イ コ ト ウ

大 柴 胡 湯

大 柴 胡 湯

サイコカリュウコツボレイトウ サイコカリュウコツボレイトウ

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

サ イ コ ケ イ シ ト ウ サ イ コ ケ イ シ ト ウ

柴 胡 桂 枝 湯

柴 胡 桂 枝 湯

サイコケイシカンキョウトウ サイコケイシカンキョウトウ

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯

ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ

補 中 益 気 湯

補 中 益 気 湯

カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン

加 味 逍 遥 散

加 味 逍 遥 散

柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 シ ギ ャ ク サ ン シ ギ ャ ク サ ン

柴胡 枳実 芍薬 甘草柴胡 枳実 芍薬 甘草 シ ョ ウ サ イ コ ト ウ シ ョ ウ サ イ コ ト ウ

小 柴 胡 湯

小 柴 胡 湯

柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉

N26

大柴胡湯は柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜で構成されてい る。 柴胡・半夏で横隔膜前後の血・水のめぐりを整え、 黄芩は横隔膜前後の熱を冷ます働きがある。 枳実は強く固まった気を緩める作用があり、芍薬と組んで筋肉の厚い強 張りを緩める。 大黄も腹腔内の固まった熱邪を突き崩す作用があり、緩下作用がある。

(33)

典型的な大柴胡湯証の腹部所見。

診察してみると胸協苦満と心下痞鞕がはっきりしている。 両側腹直筋も幅広でがっちりと厚みもあるのが特徴である。

(34)
(35)

柴胡加竜骨牡蛎湯

脈:やや沈・実

舌苔:乾燥傾向・白

腹力:3~4

(特徴)

強い~やや実

便秘傾向

精神不安

悪夢・易驚

N28

次に柴胡加竜骨牡蠣湯(証)について説明する。 柴胡加竜骨牡蠣湯は大柴胡湯の次に実証よりの柴胡剤である。 そのため病位はやや裏に近く、脈はやや沈・実であり、舌苔は乾燥した 白苔を認める。 腹証は腹力3~4とやや充実しており、胸脇苦満・心下痞鞕を認め、心 下悸・臍上悸や臍下悸を認める。 典型的には便秘傾向で、不安感が強い、悪夢を見やすい、驚きやすいな ど精神不安を訴えるのが特徴である。

35

(36)

腹診(6)

腹動 (悸)

〔臨床応用〕

精神不安

竜骨・牡蛎・茯苓

虚状

心下悸

臍上悸

臍傍悸

臍下悸

N90

腹部の動悸、つまり腹動について説明する。 腹動とは腹部の特定の部位を手で圧迫すると拍動を触れることをいう。 特定の部位とは図のように心窩部、臍の上部・脇・下部などがある。 これらを認めると、精神不安のひとつの所見と考えられ、臍上悸は最も 出現しやすいが、 心下部で触知すると病的意義が強い。 竜骨(大型哺乳類の骨の化石)・牡蠣(カキの殻)・茯苓などの生薬が 適応となる目安になる。

(37)

心下

N90

心下悸の所見の取り方

(38)

主な柴胡剤と構成生薬

主な柴胡剤と構成生薬

ダ イ サ イ コ ト ウ ダ イ サ イ コ ト ウ

大 柴 胡 湯

大 柴 胡 湯

サイコカリュウコツボレイトウ サイコカリュウコツボレイトウ

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

サ イ コ ケ イ シ ト ウ サ イ コ ケ イ シ ト ウ

柴 胡 桂 枝 湯

柴 胡 桂 枝 湯

サイコケイシカンキョウトウ サイコケイシカンキョウトウ

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯

ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ

補 中 益 気 湯

補 中 益 気 湯

カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン

加 味 逍 遥 散

加 味 逍 遥 散

柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 シ ギ ャ ク サ ン シ ギ ャ ク サ ン

柴胡 枳実 芍薬 甘草柴胡 枳実 芍薬 甘草 シ ョ ウ サ イ コ ト ウ シ ョ ウ サ イ コ ト ウ

小 柴 胡 湯

小 柴 胡 湯

柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉

N26

柴胡加竜骨牡蠣湯には柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄が含まれている。 小柴胡湯に比べ、安神作用のある茯苓や精神安定作用のある竜骨・牡蠣 含まれていることが特徴である。 元は鉛丹を含んでいたが、現代では鉛丹の代わりに黄芩を入れている。 大黄は含む場合と含まない場合があり、エキス製剤でもメーカーにより 異なる。

38

(39)

柴胡加竜骨牡蠣湯証の腹証奇覧の図

胸脇苦満・心下痞鞭を認め、動悸がしたり精神不安を認めたりするのが 特徴である。

病位としてはやや実証になるが、大黄を含まない場合は少々虚証でも応 用できる。

(40)

柴胡桂枝湯

脈:浮弦・弱

舌苔:やや乾燥・白

腹力:2~3

(特徴)

小柴胡湯+桂枝湯

カゼの治り際

上腹部痛

てんかん(加芍薬)

N28

柴胡桂枝湯について説明する。 柴胡桂枝湯は小柴胡湯(少陽病の少し実証)と桂枝湯(太陽病の虚証) を半々に合わせた処方である。 小柴胡湯よりもやや虚証よりの方剤で、病位は表に近いため、脈はやや 浮・弦で大きめ(幅が広い)であり、舌にやや乾燥した白苔を認める。 腹証は腹力2~3とやや弱めで、胸脇苦満が多くは片側のみ明らかで、 心下痞鞕や上腹部中心の腹直筋緊張を認める。 桂枝湯中に含まれる芍薬甘草のために腹直筋の緊張があるが、柴胡剤な ので上腹部に明らかなのであろう。 風邪の治り際や上腹部痛にもちいるが、慢性疾患で陽証の場合にも広く 用いられる。 応用として芍薬を加え(桂皮の2倍に増量)、柴胡桂枝湯加芍薬(つま りは小柴胡湯と桂枝加芍薬湯の合方)として、 てんかんに有効なことで有名である。

40

(41)

〔腹診所見〕

腹直筋の攣急

(腹皮攣急)

〔臨床応用〕

芍薬甘草湯

小建中湯

四逆散

N84

腹直筋緊張について説明する。 腹直筋を両手で圧迫し、その緊張具合や幅・厚みなどを診察する。 正常でもある程度の緊張は認めるが、異常な緊張では指の腹で横にこす ると痛みを生ずることで見分ける。 腹直筋緊張は芍薬甘草湯や、芍薬甘草を含有する小建中湯・四逆散など が適応となる目安ともなる。

(42)

腹直筋攣急

N84

腹直筋の診察の方法。

図のように両手で腹直筋を上から下に向かって圧迫していき、その緊張 度合い、幅・厚さなどを診察する。

(43)

主な柴胡剤と構成生薬

主な柴胡剤と構成生薬

ダ イ サ イ コ ト ウ ダ イ サ イ コ ト ウ

大 柴 胡 湯

大 柴 胡 湯

サイコカリュウコツボレイトウ サイコカリュウコツボレイトウ

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

サ イ コ ケ イ シ ト ウ サ イ コ ケ イ シ ト ウ

柴 胡 桂 枝 湯

柴 胡 桂 枝 湯

サイコケイシカンキョウトウ サイコケイシカンキョウトウ

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯

ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ

補 中 益 気 湯

補 中 益 気 湯

カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン

加 味 逍 遥 散

加 味 逍 遥 散

柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 シ ギ ャ ク サ ン シ ギ ャ ク サ ン

柴胡 枳実 芍薬 甘草柴胡 枳実 芍薬 甘草 シ ョ ウ サ イ コ ト ウ シ ョ ウ サ イ コ ト ウ

小 柴 胡 湯

小 柴 胡 湯

柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉

N26

柴胡桂枝湯は柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草で構成さ れている。 これは小柴胡湯と桂枝湯を半々に合わせたものであり、 風邪の治り際、つまり太陽病期を過ぎて少陽病期に入った頃に用いるこ とが多い。

(44)

柴胡桂枝湯証の腹部の写真。

腹力はやや軟弱であり、軽度の胸脇苦満と上腹部中心の両側腹直筋緊張 を認める。

(45)

四 逆 散

脈:

舌苔:やや乾燥(白)

腹力:3

(特徴)

腹直筋:全長緊張

四肢冷・顔色不良

下痢・便秘(兎糞)

抑鬱傾向

N28

次に四逆散について説明する。 四逆散は小柴胡湯よりやや虚証の方剤で、舌苔はやや乾燥した白苔を認 める。 典型的な脈候は浅学にて自信がないが、比較的実証から虚証まで幅広い 応用範囲があると思われる。 腹証は、腹力は中等度からやや弱く、両側の胸脇苦満が左右差なく明ら かで、 腹直筋が上腹部から下腹部まで厚みを持ってしっかりと張っていること が特徴である。 また顔色が青白かったり、手足が冷えたり、下痢しやすいなど、 一見陰証を思わせるような所見があることも特徴である。 四逆散証は少陽病であまり虚証ではないが、抑鬱傾向のことが多く、ま た冷え症状や下痢などのため、 本人の自覚からは陰・虚証(虚弱)だと思っている例が多い。

45

(46)

腹直

筋攣急

N84

四逆散では図のように腹直筋が上腹部から下腹部までしっかりとはって いることが特徴である。

(47)
(48)

主な柴胡剤と構成生薬

主な柴胡剤と構成生薬

ダ イ サ イ コ ト ウ ダ イ サ イ コ ト ウ

大 柴 胡 湯

大 柴 胡 湯

サイコカリュウコツボレイトウ サイコカリュウコツボレイトウ

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

サ イ コ ケ イ シ ト ウ サ イ コ ケ イ シ ト ウ

柴 胡 桂 枝 湯

柴 胡 桂 枝 湯

サイコケイシカンキョウトウ サイコケイシカンキョウトウ

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯

ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ

補 中 益 気 湯

補 中 益 気 湯

カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン

加 味 逍 遥 散

加 味 逍 遥 散

柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 シ ギ ャ ク サ ン シ ギ ャ ク サ ン

柴胡 枳実 芍薬 甘草柴胡 枳実 芍薬 甘草 シ ョ ウ サ イ コ ト ウ シ ョ ウ サ イ コ ト ウ

小 柴 胡 湯

小 柴 胡 湯

柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉

N26

四逆散は柴胡 枳実 芍薬 甘草で構成されている。 気剤である枳実、筋の緊張をほぐす芍薬甘草が含まれてて、厚みのある 腹直筋の緊張が目標となる。

(49)

柴胡桂枝乾姜湯

脈:やや浮・弱

舌苔:湿潤(微白)

腹力:2

(特徴)

胸脇満微結

頭汗・盗汗

上熱下寒・唇口乾燥

神経症状・悪夢

アレルギー性鼻炎

N28

次に柴胡桂枝乾姜湯について説明する。 柴胡桂枝乾姜湯はさらに虚証の柴胡剤で脈はやや浮~浮沈中間で緊張が なく中等度の幅(大小中間)であり、 舌は赤みが少なく湿潤した薄い白苔を認める。 腹証は、腹力は弱く、胸脇満微結があり、心下痞鞕を認めることもある 。 精神不安を示す臍上悸を認め、水毒徴候の目安である心窩部の振水音を 認めることもある。 腹直筋では上腹部を中心に軽く緊張を認める。 症状としては上半身、特に首から上に汗をかきやすい、寝汗をかく、唇 が乾燥しやすい、精神不安や悪夢、 など、多彩な症状に応用できる。 人前では頑張って元気に振舞っているが、一人になるとぐったりと疲れ てしまうという傾向も特徴的である。 柴胡加竜骨牡蠣湯の虚証タイプと考えるとわかりやすい。

49

(50)

N28

柴胡桂枝乾姜湯証を示す腹症奇覧の図。 胸脇満微結があり、臍上悸を認める。

(51)

柴胡桂枝乾姜湯証の腹候。

(52)

胸脇苦満のように助骨弓化の抵抗はなく、

ぐっと奥まで押し込んだときに軽度の圧痛を認める。 これを胸脇満微結という。

(53)

腹診(5)

〔臨床応用〕

水毒

アトニー

振水音

(拍水音)

N90

腹部の振水音についての所見の取り方を説明する。 振水音とはチャプチャプと音がすることであるが、特に心窩部で出現し やすく、指先で腹壁を揺するように軽く叩いて確認する。 これは水毒や胃アトニーのひとつの参考所見となる。

(54)

心下

振水

1

振水音の所見の取り方。 手首のスナップを利かせ、心窩部をチョンチョンとたたく。

(55)

心下

振水

2

この図のように軽く触れる程度でよく、 振水音を認める場合はチャプチャプと音がする。

(56)

主な柴胡剤と構成生薬

主な柴胡剤と構成生薬

ダ イ サ イ コ ト ウ ダ イ サ イ コ ト ウ

大 柴 胡 湯

大 柴 胡 湯

サイコカリュウコツボレイトウ サイコカリュウコツボレイトウ

柴胡加竜骨牡蠣湯

柴胡加竜骨牡蠣湯

サ イ コ ケ イ シ ト ウ サ イ コ ケ イ シ ト ウ

柴 胡 桂 枝 湯

柴 胡 桂 枝 湯

サイコケイシカンキョウトウ サイコケイシカンキョウトウ

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯

ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ ホ チ ュ ウ エ ッ キ ト ウ

補 中 益 気 湯

補 中 益 気 湯

カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン カ ミ シ ョ ウ ヨ ウ サ ン

加 味 逍 遥 散

加 味 逍 遥 散

柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 黄芩 芍薬 大棗 枳実 大黄 生姜 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 柴胡 半夏 茯苓 桂枝 黄芩 大棗 生姜 人参 竜骨 牡蠣 大黄 シ ギ ャ ク サ ン シ ギ ャ ク サ ン

柴胡 枳実 芍薬 甘草柴胡 枳実 芍薬 甘草 シ ョ ウ サ イ コ ト ウ シ ョ ウ サ イ コ ト ウ

小 柴 胡 湯

小 柴 胡 湯

柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草柴胡 半夏 生姜 黄芩 大棗 人参 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 半夏 桂枝 黄芩 人参 芍薬 生姜 大棗 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 柴胡 桂枝 瓜呂根 黄芩 牡蠣 乾姜 甘草 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 黄耆 人参 白朮 当帰 陳皮 大棗 甘草 柴胡 生姜 升麻 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉 当帰 芍薬 白朮 茯苓 柴胡 甘草 牡丹皮 山梔子 生姜 薄荷葉

N26

柴胡桂枝乾姜湯は柴胡 桂枝 瓜呂根 黄

芩 牡蠣 乾姜 甘草で構成されている。

陽証でありながら熱薬の乾姜を含有してお

り、軽い寒を伴って、寒い風に当たると鼻

水が出やすいことも多い。

柴胡・黄芩で熱を冷ましながら、乾姜で温

めるという一見矛盾した構成で、

下半身は冷えるが上半身はのぼせるとい

う、軽い上熱下寒も一つの使用目標になる

瓜呂根は潤す作用があり、唇口乾燥を軽

減するのであろう。

慢性疾患で陽虚証の場合にも幅広く応用

されている。

(57)

症例

C.S. 40歳女性

日光過敏

現病歴

小学校低学年~日光に当たると湿疹が出現

徐々に増悪

20歳頃から1年中、顔面以外は日光に当たると紅斑出現

疼痛を伴うこともあった

多くの病院を受診し長袖・長ズボン着用を進められた

1年前から風邪から副鼻腔炎を併発し、後鼻漏が続く。

両肩の痛み、咽頭痛、頭痛も出現しやすい。

脱毛、関節痛、レイノー現象、目のごろつき感、齲歯

自汗傾向、夜間尿などはない。食欲は普通

鼻炎症状は香蘇散でほぼ消失していた。

症例を提示する

57

(58)

初診時所見(C.S. 40歳女性)

【問診表】

食欲、二便に異常なし 冷え性や暑がりの自覚(ー)

鼻つまり:少々 気分がいらいらする

首や肩が少し凝る 排卵時痛がある 帯下なし

【診察所見】

(スライド)

身長150cm

体重50kg

体温36.2℃

血圧92-54mmHg

脈候:浮沈の中間

幅は中等度

緊張はやや弱

舌候:暗赤色(+)

腫大(-)

歯痕(±)

乾燥した白苔が中等度

腹候:やや軟弱

心下痞鞕が軽度

右胸脇苦満軽度

左右の臍傍圧痛(+)

臍上悸(+)

58

(59)

舌は軽度暗赤色だが赤みはあまり強くなく、中央部部分はやや乾燥した 白苔がある。

(60)

腹力は、見た目にはあまり強くなさそう。 実際にも少し弱かった。

(61)

横から見ると少し陥凹傾向である。

(62)

心下痞鞕は軽度認めた

(63)

胸脇苦満を診ると、腹壁に抵抗はなく、指は容易に肋骨弓の舌に入って いく。

しかし、指先がおくまで達すると痛みを感じた。 胸脇満微結の所見である。

(64)

臍上を指の腹でそっと押していくと、動脈の拍動を明らかに触知した( 臍上悸)。

(65)

臍の両側の斜め下は少し盛り上がっており、その頂点を下(背側)に向 かって押すと圧痛がある。

このように、隆起の部分を指でつまむと、弾性軟で圧痛を伴うのしこり (瘀血塊)を触れた。

(66)

鳩尾(剣状突起付近)を押すと、痛がる。

(67)

臨床経過(C.S. 40歳女性)

5/29

処方(

)2週間分

6/9

2週間分の処方薬を服用し、再診。

いらいらした気分は消失、明るく笑う。皮疹も軽減。

6/23

日焼け止めクリームを塗らなくて済むのでうれしい。

小学生時代からの悩みだった。

7/5

屋根のないプールに行ったら皮疹が出現したが、

手や首には(-)

9/28

同処方で、以後中断

その後、翌年3月と翌々年6月にも再度受診。

各々数ヶ月で軽快し中断。

カッコ内に当てはまる処方を考えてみよう。

67

(68)

臨床経過(C.S. 40歳女性)

5/29

処方(柴胡桂枝乾姜湯

桂枝茯苓丸)2週間分

6/9

2週間分の処方薬を服用し、再診。

いらいらした気分は消失、明るく笑う。皮疹も軽減。

6/23

日焼け止めクリームを塗らなくて済むのでうれしい。

小学生時代からの悩みだった。

7/5

屋根のないプールに行ったら皮疹が出現したが、

手や首には(-)

9/28

同処方で、以後中断

その後、翌年3月と翌々年6月にも再度受診。

各々数ヶ月で軽快し中断。

桂枝茯苓丸は瘀血治療薬(駆瘀血剤)である。 子供の頃からの悩みが短時日で改善された。

68

(69)

現病歴

35歳頃

う歯が増加し、40歳で自分の歯は6本であった

1986年7月

目が乾燥しやすくなり、10月某医大内科にて

シェーグレン症候群と診断

近医で人口涙液の点眼薬を受けていた

1993年4月

目と口内の乾燥感を主訴に当科を受診

S.N.63歳

目と口内の乾燥感

既往歴

1970年(40歳) 子宮筋腫の手術

家族歴

特になし

次の症例

69

(70)

漢方医学的所見

自覚症状

口が乾燥しねばりやすい

唇が乾燥しやすい

往来寒熱あり

冷たい水を好む

上半身に自汗あり

他覚所見

顔色は赤味あり

手足は温かい

やや虚

暗赤傾向

乾燥した薄い白苔

腹力やや軟

胸脇満微結

心下痞鞕軽度

振水音あり

心下悸・臍上悸あり

身体所見( S.N. 63歳 女)

身長148cm 体重47kg 体温36.6℃ 血圧146 / 90mmHg

脈拍 93 / 分 整 表在リンパ節触知せず 眼瞼・球結膜異常なし

唾液腺腫大なし 胸骨左縁第二肋間で収縮期雑音あり

(71)

外来初診時検査成績(S.N. 63歳 女)

CBC

Chemistry

RBC

Hb

Ht

Plt

WBC

ESR

460×10

4

/μL

14.4 g/dL

43.2%

15.9× 10

4

/μL

3320/μL

7 mm/hr

TP

GOT

GPT

LDH

γ-GTP

T-BiL

BUN

Cr

UA

T-Ch

TG

6.9 g/dL

27 U/I

23 U/I

200 U/I

15 U/I

0.5 mg/dL

11 mg/dL

0.4 mg/dL

4.1 mg/dL

250 mg/dL

108 mg/dL

Na

K

CL

CRP

144 mEq/L

3.9 mEq/L

110 mEq/L

0.0 mg/dL

ALP

148 U/I

D-BiL 0.1 mg/dL

抗核抗体 40×

検尿

異常なし

抗DNA抗体<80×

CH-50 37単位

便潜血 陰性

Amy

110 IU/I

FBS

100 mg/dL

抗SS-A抗体 ±

抗SS-B抗体 ±

(72)

臨 床 経 過 (S.N.)

初診時より柴胡桂枝乾姜湯を処方

服用一週間後より唇の乾燥感改善

一ヵ月後には口内の湿り気を自覚

二ヵ月後には目のゴロツキ感消失

現在同処方で継続服薬中

シェーグレン症候群には麦門冬湯の多施設における臨床研究があるが、 柴胡桂枝乾姜湯、あるいはそれに駆瘀血剤の合方が比較的よく効く。

72

表 裏 の 概 念 N10 表 皮膚 関節 神経 口腔~上気道 半表半裏 胸膈内臓器 横隔膜周辺 裏 消化管 証の物差しの一つに表裏(ひょう・り)がある。 表とは体の表面のこと、浅い部分といった意味で、病が表にあると皮膚 ・関節・神経や口腔~上気道のあたりに症状が出現しやすい。 (表は外胚葉由来臓器と比較的関連があるといえるかもしれない。) 半表半裏に病気があると、胸腔内臓器や横隔膜前後に症候が出現しやす い。 裏は身体の中心、主に消化管をさす。 太陽病は主に表に病邪との戦いのステージがあり、徐々に病気が進

参照

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