大学生の顎関節自覚症状に関する調査
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第 6 5巻 第 1号 J o u r n a lo fHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( E d u c a t i o n ) Vo . l6 5,No. l. 平成 2 6年 8 月. Augus . t2014. 大学生の顎関節自覚症状に関する調査 山田玲子・大玉ゆりえ*・津村直子. 北海道教育大学札幌校. │実科学看護学教室. *島牧村立島牧中学校. A Surveya b o u tS u b j e c t i v eSymptomso fTMD( t e m p o r o m a n d i b u l a rd i s o r d e r ) I nU n i v e r s i t yS t u d e n t s YAMADAR e i k o,OUTAMAY u r i e *andTSUMURANaoko Departmento fC l i n i c a lS c i e n c eandNursing ,S apporoCampus,HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n ネ. ShimamakiJ u n i o rHighS c h o o l. 概要 顎関節症は増加傾向にあり,その患者は若年期に発症するため,学校歯科保健においても輔 歯・歯肉炎・不正岐合に続く第四の疾患として注目されている。また,顎関節症は不正岐合だ けではなく,口腔習慣,食習慣などを含めた生活習慣・習癖,器質的変化,心理的要因が原因 であると明らかにされつつある。 そこで本調査は,大学生の顎関節の自覚症状と生活習慣・習癖をアンケート調査し,それら がどの程度影響を与えているのかを検討することを通し,顎関節症の発症予防と重症化・複雑 化を予防するための指導・助言方法について考察することを目的とした。 調査の結果,多くの大学生が顎関節の自覚症状を有していることがわかり,また,普段の生 活習慣との関連も示唆され,顎関節に起こる症状は何気ない行動が負荷となって引き起こされ るものであることが推測できた。. しはじめに. 因が原因であると明らかにされつつある。 顎関節症は年齢とともに発症が増加するだけで. 近年,顎関節症は増加傾向にあり,広くその言. なく,複数の症状が発現しその症状が消失・再. 葉が認識されるようになってきた。患者は若年期. 発して変動する疾患である。そのため,医療によ. に発症し 1)2)15~24歳で突然増加するため,学校. る対症療法のみでの完治は難しく,要因となる生. 歯科保健においても輔歯・歯肉炎・不正岐合に続. 活習慣・習癖の改善が必要となる。生活習慣・習. く第四の疾患として注目されている。また,顎関. 癖の中で偏岨噌や頬づえ,歯の噛みしめなど顎関. 節症は口腔習慣,食習慣,器質的変化,心理的要. 節に直接関わり負荷を与えている行為は顎関節症. 3 1 7.
(3) 1 1 1回玲子・大-t_~ゆりえ・津村直子. の原因のーっとなることが報告されているお。ま. (顎のだるさ)に肯定回答があり,項目 3 (開口. た,姿勢などもその要因と指摘されているが,詳. 制限)項目 4 (顎運動痛)項目 5 (口があかない). しく調査した報告は少ない。. に肯定回答がない場合を AI1で軽症,項目 1, 2. そこで本調査では,大学生の顎関節の自覚症状 と生活習慣・習癖をアンケート調査し,それらが 顎関節症の症状にどの程度影響を与えているかを 探っていきたいと考えた。その中で,生活習慣・. の回答に関わらず,項目 3, 4, 5いずれかに肯 定回答がある場合を AI2で重症とした。 統計学的解析には. x2検定を用い,有意水準を. 5 %とした。. 習癖だけではなく姿勢や体のゆがみと顎関節症と の関連にも着目し,顎関節症の発症予防と症状の 複雑化・悪化予防の方法を見出したいと考えた。. N. 結 果 1.顎関節自覚症状の有無 何らかの顎関節の自覚症状がある人は 1 1 3人. I I . 研究目的. (57.7%) であり,具体的な症状では「雑音」が. 本研究の目的は,大学生の生活習慣・習癖と顎. 最も多く 9 2人 (46.9%),次いで「顎のだるさ J 5 9. 関節の自覚症状との関連を検討し,顎関節症の発. 人 ( 3 0 . 1% ) ,. 症予防と重症化・複雑化を予防するための指導・. た(表 2参照)。. 助言方法について考察することである。. i顎運動痛 J. 5 5人 (28.1%) であっ. 表 2 :顎関節自覚症状 状 症 顎のだるさ 顎運動痛 聞円制限 開口時雑音 顎関節の脱円. m .対象および方法 北海道教育大学札幌校の学生3 0 0人を対象に, 自記式無記名の質問紙調査を実施し, 1 9 6人から. 人数(%) 5 9( 3 0 .1 ) 5 5( 2 8 .1 ) 5 4( 2 7 . 5 ) 9 2( 4 6 . 9 ) 1 2 (6 .1 ). 回答を得た(回収率65.3%)。調査期間は 2 0 0 9年 1 0. n = 1 9 6. 月であった。倫理的配慮として,個人情報の厳正 な管理,回答により不利益が生じないことの保証, 使用目的を質問紙に明記し,この回収を持って同. 問診指数では, AIOが8 3人 (42.3%), AI 1 は3 7 人 (18.9%), AI2は7 6人 (38.8%) であった。. 意を得たものとした。 調査内容は,①顎関節自覚症状の有無,②生活 習慣・習癖に関する 1 7 項目などであり,先行研究 を参考に作成した。. 2 . 医療機関の受診と対処方法 顎関節の自覚症状がある人 1 1 3人の中で病院を 受診した人がある人は 1 7人(15.1%) であり,受. 顎関節症状の重症度判定には,問診指数 (AnamnesticIndex:AI)を用いた。表 1の質. 診した人の中で、苦痛があると答えた人が有意に多 かった(表 3参照)。. 問項目に対し,肯定回答が見られない場合を AIO, 表 3:受診と苦痛との関連. 項目 1 (以下関口時雑音と略する)または項目 2. 人(%) 表 1:Anamnesticl n d e xの質問項目. 百 ー ι . . F 又 立. 1.口をあける時にあごの関節でカクカクとかジャリジャリ という音がしますか〔 2 . あごにだるい感じゃこわばった感じがしますか。 3 . 口をあける時にあげにくいと感じることがありますか 4 . 円を動かす時にあごが痛くなることがありますか。 5 . Uを大きくあけようとしでもあかないことがありますか。 0. 3 1 8. 至 ロ ノ 人. ある ない 計. ある 8( 4 7 . 1 ) 1 3( 1 4 . 3 ) 2 1( 1 8 . 6 ). 痛 ない 9( 5 2 . 9 ) 8 3( 8 5 . 7 ) .4 ) 9 2( 81. 計 1 7( 1 0 0 ) 9 6( 1 0 0 ) 1 1 3( 1 0 0 ). *p< 0.05 X2=10.7232.
(4) 大学 t tの顎関節白覚症状に関する調査. また,受診した 1 7人の内の 1 3人 ( 7 6 . 5 % ) は治. 5人(12 . 7 % ), ‘上体をねじって作業をす 人は 2 る'は 3 6人 ( 1 8 . 4 % ), ‘ストレスを感じる'が 6 9. 療が必要だと診断されていた。 次に,自覚症状がある人 1 1 3人のうち,苦痛が. 1人 ( 1 8 . 6 % ) いたが,その内 あると答えた人は 2. 人 ( 3 5 . 2 % ) であった。 また,. ‘姿勢の悪さ'と‘体の歪み'について. 何らかの対処をしている人は 1 2人 ( 5 7 . 1 % ) であ. は,周囲の人から指摘されたことがあるかどうか. り,対処法の内容を自由回答で、尋ねたところ,「動. を尋ねた。その結果,. かさない」と答えた人が多く,中には「我慢する」. 3 8人 ( 7 0 . 4 % ),ない人は 5 7人 たことがある人は 1 ( 2 9 . 6 % ) であり,. という人もいた。. ‘姿勢の悪さ‘を指摘され. ‘体の歪み'を指摘されたこ. 5人 ( 2 8 . 1 % ), な い 人 は 1 4 1人 とがある人は 5 ( 71 .9 %) であった。. 3 . 生活習慣・習癖について 生活習慣・習癖に関しては,先行研究を参考に. 1 7 項目の調査を行った。. ‘歯ぎしり'を「ょくす. る」と答えた人は 1 7人 ( 8 . 7 % ), ‘くいしばり'. 9人 ( 9 . 7 % ), ‘爪噛み'は 9人 ( 4 . 6 % ), は1 ‘ガム噛み'は 6 3人 ( 3 2 . 2 % ), ‘頬や唇を噛 む'は 3 5人 ( 1 7 . 9 % ),‘頬づえ'は 1 4 9人 ( 7 6 . 0 % ) であった。. 4 . 生活習慣・習癖と顎関節自覚症状の重症度. 7 項目と顎関節 前項の生活習慣・習癖に関する 1 自覚症状の重症度 ( A I O, AI l ,. A I 2 ) との関連. 2検定を用いて分析した。その結果, について ,x. ‘くいしぼり'と‘頬づえ'の 2項目で症状の重 症度との関連がみられた(表 4参照)。. ‘岨噛する 1~U 'が「片側」と回答した人は 1 0 4. 人 ( 5 3 . 1 % ),'両側」は 9 2人 ( 4 6 . 9 % )であった。. 7 8人 ‘鞄を持つ側'については「片側」が 1 ( 9 0 . 8 % ), '両側」が 1 8人 ( 9 . 2 % ), ‘立位時の. しかし. ‘姿勢の悪さ‘について,顎関節自覚. I Oのグループ ( 6 2人)では,姿 症状の重症度が A 9.9%, 勢の悪さを指摘されたことが「ある」人が6 8.9%であったのに対し, 「ない」人が2. A I 2のグ. 6 2人 ( 8 2 . 7 % ),' 両 荷重側'については「片側」が 1. ループ ( 7 6人)では,「ある」人が 73.7%,'ない」. 側」が3 4人(17 . 3 % ) であった。. 人が2 6.3%であり,有意差は認められなかった。. 0 0人 ‘座位での脚組'をよくする人は 1 ( 51 .0 %) であった。. ‘普段の座り方'で最も多. かったのは「横座り J 1 0 8人 ( 5 5 . 1 % ) であり,. 8人 ( 2 9 . 6 % ) であった。 次いで「あぐら J 5. ‘ 寝. また,. ‘ストレス'に関しては,顎関節自覚症. I Oのグループでは・ストレス'が 状の重症度が A .1%'ときどきある」人が4 9. 4% 「よくある」人が31 「ほとんどない」人が 1 9.3%であったのに対し,. る姿勢'では,「横向き」が 1 1 8人 ( 6 0 . 2 % ), '仰. AI2のグループでは「よくある」人が 36.9% ' と. 向け」が 4 1人 ( 2 0 . 9 % ), 'うつ伏せ」が 2 8人. きどきある」人が5 0 . 0 % 'ほとんどない」人が 13.1%. ( 1 4 . 3 % ),'いろいろ」が9 人 ( 4 . 6 % )であった。. であり,有意差は認められなかった。その他の 1 3. ‘ヒール (3cm以上)をはく'事が「よくある」. 項目についても有意差は認められなかった。. 表 4:生活習慣・習癖と顎関節臼覚症状との関連. 人(%) AI. 頬づえ. くいしばり よくある. ときどき. ほとんどない. よくある. ときどき. ストレス. 姿勢指摘. ほとんどない. ない. ある. よくある. ときどき. ほとんどない. 5( 3 0 . 1 ) 5 4( 6 5 . 1 ) 5 3 (3 . 6 ) 2 6( 6 7 . 5 ) 2 7( 3 2 . 5 ). 4( 2 8 . 9 ) 2 6( 3 1 . 3 ) 4 1( 4 9 . 4 ) 1 。(0 . 0 ) 5 8( 6 9 . 9 ) 2 6( 1 9 . 3 ). 1 AI. 4( 3 7 . 8 ) 2 0( 5 4 . 1 ) 2 3 (8 . 1 ) 1 6( 7 0 . 3 ). 5( 1 3 . 5 ). 3( 3 5 . 1 ) 1 5( 4 0 . 5 ) 2 0( 5 4 . 1 ) 6( 1 6 . 2 ) 2 4( 6 4 . 9 ) 1. AI2. 5( 4 6 . 1 ) 2 7( 3 5 . 5 ) 6 1 3( 17 . 1 ) 3 7( 8 8 . 2 ). 8( 1 0 . 5 ). 0( 2 6 . 3 ) 2 8( 3 6 . 9 ) 3 8( 5 0 . 0 ) 1 1 (1 .3 ) 5 6( 7 3 . 7 ) 2 0( 1 3 . 1 ). AIO. 検定. *. *. l l . S. 2 (5. 4 ). l l . S. *p<0.05. 319.
(5) 1 1 1回玲子・大-t_~ゆりえ・津村直子. v .考 察 1.顎関節自覚症状と対処法について. に原因除去や治療などを早期に行い,再発の予防 をすることが必要である。 顎関節の自覚症状がある人は 1 1 3人 ( 5 7 . 7 % ). 今回の対象者で自覚症状がある人は半数を超え. であったが,その中で病院を受診したことがある. ており,若年層に顎関節症が多いことが把握され. 人は 1 7人 ( 1 5 / 1 % ) と少なく,受診した人の中で. た。顎関節症の発生頻度については,いくつかの. 苦痛があると答えた人が有意に多かったことか. 先行研究 1)2)で2 0 歳代が多いことが報告されてい. ら,症状が軽度のうちは医療機関を受診せずにい. る。その理由としては,この時期が顎発育の終高. ることがわかった。また,受診した人の内 7 6.5%. 期にあたるからであると考えられている 3)。今回. は治療が必要であったことから,苦痛を感じて受. の対象者は大学生であったが,中・高校生にも顎. 診したときにはすでに症状が進行している可能性. 関節自覚症状が多いことも報告されており 4)5),. があることもわかった。先行研究でも初発症状の. 0歳代で増加すること 青少年期から症状が出始め 2. 関節雑音だけでは受診せず,症状が痛みに変わっ. が確認できた。. て初めて受診する人が多いことが報告されてい. 有する自覚症状では,開口時雑音が4 6.9%と最. る2)10)。放っておいて重症化し,医療機関によ. 6 . 1 3 5 . 0 %と幅が も多く,先行研究 4)5)6)では 1. る治療を受けなければならなくなる前に,初発症. あったものの,本研究の方が多く認められた。こ. 状の把握や症状悪化の予防をすることが重要とな. れは,先行研究の対象者が中学・高校生を含んで. る 。. おり,自覚症状自体を感じる割合が少なかったこ. 自覚症状に苦痛を感じている人の内,何らかの. とが影響していると考える。また開口時雑音に関. 7.1%であったが,具体的な 対処をしている人は 5. しては,自覚症状だけではなく歯科医による診断. 対処方法としては「動かさない」や「我慢する」. や聴診器を使用しての聴取など,正確な方法で検. という回答であった。「動かさない」ことは安静. 出した場合は開口障害の先行症状であることが認. にすると同様であり,専門家が提示する対応策の. 識されている。そのため症状が悪化する前に受診. 一つではあるが,「我慢する」という回答も多く,. することが望まれるが,自覚症状の有無が受診す. 苦痛を緩和するための積極的な対策が取られてい. るきっかけとなると考えられ,たとえ自覚症状の. ないことが明らかになった。女子中高生に縦断的. みであっても軽視しないことが重要である。早め. に行った先行研究では,中学校期に顎関節症状を. の受診を促すなどの指導・助言が必要になると考. 発症した生徒に対する定期的保健指導によって自. える。. 覚症状の数が高校 1年生までに減少したとの報告. 続いて多かった自覚症状は「顎のだるさ J i顎. がある 9)。顎関節症は軽症であっても症状が変化. 運動痛」であったが,これらは人間の基本的欲求. しやすいことが指摘されており,顎関節に起こる. である「摂食行動」に大きな影響を与えるもので. 症状についての正しい知識を広めることはもちろ. ある。今回の対象者ではおよそ 3割ではあったが,. ん,学校でも的確な保健指導を行い,またその中. QOLの観点からは見過ごせない数字であると考. で痛みがあるときにはホットパックによる温熱療. える。これらの自覚症状がある人は,今現在の生. 法やマッサージなど自身でもできる方法がある事. 活に支障はなくても,これからの生活を見据え何. を知ってもらうことが必要で、ある。. らかの行動を起こすことが望まれる。 さらに,症状の重症度を見ると, AI 1 は1 8.9%,. 2 . 生活習慣・習癖と顎関節自覚症状の重症度と. A I 2は38.8%と症状の軽い人より重い人の方が多. の関連について. かった。顎関節症は複雑化や再発しやすいことが. 数多くの先行研究 4)ー 10)で顎関節の自覚症状と. 指摘されておりわ 8)9),症状がある人は放置せず. 生活習慣・習癖との関連性が指摘されている。そ. 320.
(6) 大学 t tの顎関節白覚症状に関する調査. の中でも,「くいしばり. 1"歯ぎしり J 1"ガム噛み」. 関節の症状が重症となる傾向が見られた。今回の. 「頬づえ」は有意差がみられる習癖である。今回. 質問の仕方は対象者がストレスを感じる頻度につ. の調査では,先行研究同様「くいしばり」と「頬. いて尋ねたが,心理的ストレス反応尺度や対人ス. づえ」に関しては有意差が認められたものの,他. トレスイベント尺度などのように客観的な指標で. の項目においては関連がなかった。その理由とし. 尋ねると,より詳細な分析ができたと考えられる。. ては,今回の調査では対象者を男女の大学生とし,. 次に先行研究では有意差が認められた「歯ぎし. 中高生を含まなかった等の対象者の特性の違いや. りJ 1"ガム噛み」について,今回の調査では有意. 質問方法,分析方法の違いも影響していると考え. 差が認められなかった。その理由として,まず「歯. る 。. ぎしり」に関してはほとんどしないと答えた人が. J. 今回の調査でも関連があった「くいしぼり」に. 75%と多数を占めていたことが影響したと考え. 関しては 1, 2回程度/月の少ない頻度でも顎関. る。また,「ガム噛み」については,よくあると. 節の症状との関連性が示唆されている 4)。この習. 答えた人からほとんどないと答えた人まで対象は. 癖は岨噌筋や顎関節に強い力で負荷をかけ,比較. 分散されていたのに有意差が認められなかった。. 的容易に器質的変化が起こり,だるさ!惑や顎運動. 有意差があった先行研究は欧米の研究が多く,ガ. 痛などの症状を引き起こす可能性があるため,顎. ムをかむ頻度の認識が欧米と日本では違う事から. 関節に自覚症状のある人には,これを顎関節に良. このような結果となったと考える。. くない習癖として認識させる必要があるだろう。 「頬づえ」については,. G a v i s hら11)が,頬杖. その他の生活習慣・習癖については,本研究で は有意差は認められなかったものの,. ‘片噛み'. をつくと顎関節部に負担をかけることになり,そ. ‘横向き寝'が医学的根拠のもとで顎関節に悪影. の結果として関節円板の変移が起こり,関節雑音. 響をおよぼすことが分かつている 13)。また,不. や関節部の突っ張った感じが発現するのではない. 良姿勢についても関連性が報告されている。さら. かと考察している。今回の調査では対象者が「頬. にこれらの習癖については,それを改善させるこ. づ‘え」をする頻度に関しては主観的な尺度で尋ね,. とで,医療的な治療を施さなくても顎関節の症状. また負荷の程度については調査しなかったため,. が消失したという報告もある 13)。これらのこと. 厳密に関連性が認められたとは言えない。しかし,. から,顎関節に起こる症状の予防・重症化を防ぐ. 多くの先行研究の結果を勘案してみると,顎関節. ためには,悪習慣・習癖に対する対処が必要とな. 自覚症状との関連が示唆されたのではないかと考. ることが示唆された。. える。 「ストレス」と顎関節症状の関連については, 国内外を問わず数多くの論文で指摘されている。. Vl.結語. 顎関節症患者の寄与因子としてストレスは大きな. 大学生の生活習慣・習癖と顎関節の自覚症状と. 要因といわれている 4)。ストレスに関連した筋緊. の関連を検討し顎関節症の発症予防と重症化・. 張が顎関節に影響を及ぼしていると考えられてい. 複雑化を予防するための指導・助言方法について. る。さらに,何らかのストレスで心理的負担がか. 考察することを目的として,教員養成大学の学生. かることにより,無意識にくいしばりを行ってし. を対象に調査を行った。自記式無記名の質問紙を. まったり,睡眠障害から夜間もくいしばりが生じ. 用い,顎関節自覚症状の有無,生活習慣・習癖に. ることが考えられ,岨暢筋に生理的耐久限界を超. 関する調査をした結果,いくつかの知見を得たの. える負荷がかかり顎関節症状が発現すると考えら. で報告する。. れている 12)。今回の調査では,有意差は認めら. 1)対象とした大学生の中で顎関節に何らかの自. れなかったものの「ストレス」がある人の方が顎. 覚症状のある人は 57.7%であり,中には重症と. 3 2 1.
(7) 1 1 1回玲子・大-t_~ゆりえ・津村直子. 判断される症状を持つ人も 3割以上いた。一方 で症状があるのに病院を受診したことがないな ど適切な対処行動がとられていないことが確認 された。顎関節症は時間の経過とともに重症 化・複雑化することもあるため,自覚症状のみ であっても軽視しないことが重要である。早め の受診を促すよう,助言する必要があると考え る 。. 統計的観察,日本口腔外科'子t会雑誌, 2 6 ( 6 ),1 5 0 8 1 5 1 4,. 1 9 8 0 3)岡達:顎関節症の研究. 成因および臨床像を中心. に一,日 1 1科 誌, 1 6,1 1 6 1 2 3,1 9 6 7. 4)竹原順次ほか:女子高校牛における顎機能異常の白 覚症状に影響する要因, 1 1腔衛牛会誌, 5 4,2 1 5 2 2 3,. 2 0 0 4 5)本間三順ほか,青少年における顎関節症状の疫学的. 研究,口腔衛生会誌, 4 6,6 6 6 6 7 5,1 9 9 6. 2) 自覚症状に苦痛を感じている人の内,何らか. 7.1%であったが,具体 の対処をしている人は 5 的な対処方法としては「我慢する」という回答 も多く,苦痛を緩和するための積極的な対策が 取られていないことが明らかになった。顎関節 症は軽症であっても症状が変化しやすいことが 指摘されており,顎関節に起こる症状について の正しい知識を,特に成長期である中学生の時 期に広めることはもちろん,学校でも的確な保 健指導を行い,またその中で温熱療法やマッ サージなど自身でもできる方法がある事を知っ てもらうことが必要である。. ‘くいしばり'と‘頬づえ'の. 2項目でのみ有意差が認められた。日常生活で の何気ない動作が顎関節に悪影響をうえること が示唆された。一方,今回は有意差が認められ なかった‘ストレス'. ‘歯ぎしり'. 7年 6)歯科疾患実態調査報告解析検討委員会編:平成 1 歯科疾患実態調査,口腔保健協会, 6 9,9 9,1 2 2 1 2 5,. 2 0 0 7 7)青村知幸:顎関節症へのアプローチ,岩手医科大学. 歯学雑誌, 3 3 ( 2 ),77,2 0 0 8 8) 王丸寛美ほか:九州歯科大学附属病院顎関節症科に. おける新患の臨床統計学的観察および一時診断に基づ いた治療の評価,九州歯科学会誌, 5 8 ( 4 ),1 1 1 1 1 6,2 0 0 4 9)松尾敏信ほか:女子中高生の顎関節自覚症状の実態. と守t校を基盤とした定期的口腔保健指導の効果一学校 歯科院の立場から. ,口腔衛生会誌, 5 6,5 2 6 2,2 0 0 6. 1 0 ) 尚田和彰ほか:顎関節症の臨床的研究第一報顎 関節症忠者の統計的観察,大阪大学歯学雑誌, 13(2), 2 9 1 1 9 5,1 9 7 5 ta l: O r a lh a b i t sandt h e i ra s s o c i a t i o n 1 1 ) GavishA e. 3 ) 顎関節の自覚症状と生活習慣・習癖 ( 1 7 項目) との関連では,. 2)藤田寛ほか:顎関節症の臨床的研究第 1報 臨 床. ‘片噛み'. w i t hs i g n sandsymptomso ftemporomandibulard i s ordersi na d o l e s c e n tg i r l s,JO r a lR e h a b i l2 7 .2 2 3 2 .. 2 0 0 0 1 2 ) 和嶋浩一:口腔顔面痛,顎関節症における心身医学的 考え方と対応,心身医学, 4 9 ( 1 0 ),1 0 6 7 1 0 7 2,2 0 0 9 1 3 ) 中道慧:習癖の重積と顎関節症 顎関節症の臨床的 病凶論 ,日本口腔診断学会雑誌, 1 2 ( , ) 11 1 4 1 2 7,1 9 9 9. ‘横向き寝'などの項目でも,先行研究おいて は関連が報告されている。また,これらについ. (山田玲子札幌校准教授). ては,その習慣を改善させることで,医療的な. (大玉ゆりえ. 治療を施さなくても顎関節の症状が消失したと. (津村直子札幌校教授). いう例も報告されている。これらのことから, 顎関節に症状のある人は,自分自身の生活習 慣・習癖をもう一度見直し,悪習慣と考えられ ているものは改善するよう指導・助言を行うこ とも有効で、あると考える。. 引用・参考文献 1)亀井秀,今井敏晴,若年者の TMDの頻度とその特徴,. 9 ( 3 ), 8-9,1 9 9 6 補緩臨床, 2. 3 2 2. 島牧中学校養護教諭).
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