小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲間の発言の記憶 : よく発言する子どもは他の子どもの発言もよく覚えているのだろうか?
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(2) 北海道教育人学紀要(教育科学編)第56巻 第1弓一 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.56,No.1. 平成17年8月 August,2005. 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲間の発言の記憶 :よく発言する子どもは他の子どもの発言もよく覚えているのだろうか?. 臼井 博・袋 佑加理*・河内 京子**・高橋 敵意***・気田 幸和***. 北海道教育人学札幌校 *苫小牧市立布勇小学校 **室蘭市. ***札幌市立北九条小学校. Children’sverbalbehaviorsandmemoryofclassmates’comments: Dohighlyverbalchildrenhavegoodmemoryforotherstudents’comments?. USUIHiroshi,FUKUROYukari,KAWAUCHIKyoko,TAKAHASHIToshinoriandKIDAYuki. HokkaidoUniversityofEducation,Sapporo. *TomakomaimunicipalTakuyuElementaryschool **inMuroranclty. *** sapporomunicipalKita−KujyoElementaryschool. 思考を深めたり,方向づけを変えたりする,ある 【問題】. 子ども同士の発言に基づく交流を重視する′ト学. いはそうした展開の変化のきっかけを作るかどう かといった質的な問題である.換言すると,発言. 校の授業場面では,一般によく発表する子どもは. の内容の重要度の違いである.たくさんの発言を. 授業に対して積極的に参加するとして教師から好. する子どもは,その中には重要度の高い発言も多. 意的に受け止められることが多いだろうし,その. く含むかもしれないが,その一方で,発言数は少. ように振る舞うように最大限度の励ましなり,指. なくても,ポイントを得た重要な発言をよくする. 導がなされるだろう.それは,よく発言をするこ. 子どももいるかもしれない.そこでの研究上の課. とは子どもの自発性や能動性が発揮できるという. 題は,多く発言する子どもは重要度の高い発言も. こと以上に,ほかの子どもの発言や教帥の話した. 多くするだろうか,ということである.. ことをよく聞いていなければならないと考えるか らである. また,発言の内容について考えてみると,単純. さらに,別の問題もある.重要度の高い発言は, それが低い発言に比べて次の理由から子どもたち. の記憶に残りやすいと考えられる.方法のところ. に発言の量的な違い以上に重要な問題がある.そ. で詳しく述べるが,この研究では重要度は授業を. れは特定の発言がその授業場面において子どもの. 行った教師の視点からの判断であるので,教師は. 157.
(3) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. 自らが重要であると考える子どもの意見について. 見い出されなかった.また,秋田たちの,別の研. はそれを教師自らの口で言い換えを行ったり,他. 究においても子どもの発言数と再生数の関連性は. の子どもにそれと関連する発言をするような刺激. あまり強くなかった.つまり,発言数の多い子ど. を与えたり,また最終的にはそうした発言の内容. もが重要な発言を必ずしもたくさん記憶再生して. を板書してまとめることが多いので,想起するた. いるわけではなかったのである(r=.22)(秋田・. めの手がかりが明瞭になるし,検索手がかりの量. 市川・鈴木,2003).. も多くなるはずである.したがって,「重要度の. 上記の結果がどれくらい一般化可能であるかを. 高い発言の方が,低い発言よりも記憶再生される. 検討するためには,学年や教科を変えてデータを. ことが多いだろう」という予測が成り立つ.. 蓄積する必要がある.そこでこの研究は5年生の. 一斉授業をコミュニケーションの視点で見る. 国語に限定して,発言行動と他の子どもの発言内. と,発表や発言などの発信(発言)行動とそれら. 容の記憶との関連性を調べる.この研究は基本的. を聴く受信(聴取)行動の両面から構成される.. には秋田他の研究パラダイムによっているもので. この二つの行動は常に相互依存的であり,また話. あるが,次の点について秋田たちの研究とは異な. 者や聞き手として連続的に役割が交替するという. る.. 性質を持つ.教室談話では,通常は一人の話者に. ① 秋田たちは,授業中の子ども同士の話し合い. 対してクラス全員が聞き手となるが,こうした役. 場面に焦点を当てているが,ここでは通常の一. 割関係は連続的に交替を続けるのである.しかし,. 斉授業のすべての時間を含んでいる.. 冒頭で述べたように,発言する役割に対してより. ② 秋田たちは,2年生が対象であるが,ここで. 高い評価が与えられ,授業の参加の形態ではより. は5年生を対象とした.理由として,以前に2. 能動的と教師や仲間たちから認識されやすいよう. 年生で予備的な調査を行ってみて,仲間の発言. に思われる.それとは対照的に聞き手に回ること. について筆記再生を行うのが難しいことがわ. の多い子どもは消極的な授業への参加と見られる. かったからである.. ことが少なくない.ところが,秋田他(2003)に. ⑨ 重要度の評定については,秋田たちは教師と. よると,授業における聴き方と学習との関係につ. 観察者の双方から行っているが,ここでは授業. いての実証的な研究はきわめて少ないが,発言を. を行う教師の視点からの評定を用いた.. しないで聴いているだけの生徒であっても,授業. ④ 発言行動と聴取行動についての子どもの自己. 中の討論から概念や学習の方略が変化することが. 評価とととも仲間からの評定を含め,多面的な. 分かっている.そのような問題意識のもとに,こ. データを得ようとした.. こでは集中して仲間の発言を聴くことが授業内容 の理解や認知情動的な経験とどのように関係する のかを検討する.. 本研究のもう一つの重要な課題は,はたしてよ. 【方法】 対象者とその背景情報:札幌市内の′ト学校5年生. く発言する子どもは本当に仲間の発言の内容をよ. の1クラス(36名:男女それぞれ13と23名)と担. く覚えているだろうか,ということである.この. 任教師である.この学校は学級数が1学年1学級. 間題については,すでに秋出他(2002)は小学校. ずつであり,また授業の開始と終了を知らせるた. 2年生の授業中の話し合い場面の中の教師や仲間. めのチャイムがないことから,授業者による裁量. の発表で覚えていることを授業終了後に再生して. で授業時間を45分に厳密に区切らずに多少調整す. もらっている.そこでは他の人の発言をよく覚え. ることができるようになっている.また,協力者. ている子どもは必ずしも,よく発表する子どもと. のA教諭は40代であり,教職歴が約20年で授業技. はいえないし,記憶の内容の重要性とも関連性が. 術の面では全市的に知られた教師である.. 158.
(4) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶 手続き:. ていて,11個の発言を記入するスペースがある.. 1.予備観察:子どもたちがビデオカメラによる. この記憶再生シートと同時に,その授業での挙手. 撮影という非日常的な雰囲気に慣れるためにまず. や発言行動と,聴く行動や授業全体についての理. 5時間分の予備観察を行った.また,この間に観. 解や興味などについての自己評定(資料1)を行っ. 察者の側の記録の取り方やビデオ操作の練習も. た.. 行った.観察の対象となった教科は算数,国語,. 4.普段の授業中の発信と受信に関する行動と教. 社会であり,2003年7月と9月に行った.. 科の得意・不得意に関する質問表氏. 2.本観察. この他に,10月中に普段の授業における発表と. ① 観察対象の授業科目:これに続き5時間の本. 仲間や教師の話を聴くことと4教科(国算社理). 観察を10月1日から15日の問に実施した.この5. の得意不得意を調べる質問紙調査(資料2)も1. 時間はすべて国語であり,単元は,『わらぐつの. 回実施した.この調査は,授業終了直後の自己評. 中の神様』(光村図書,5年下)という物語教材. 価ではその時々の状況要因による影響をうけるこ. である.これは子どもたちと年齢の近い女の子を. とを補正するために,より一般的な子ども自身の. 主人公とする物語であり,子ども同士の意見の交. 傾向性を見るために行ったものである.ただ,時. 流がなされやすい単元である.. 間的な変容の影響を最′ト限度にとどめるように,. ② 観察の方法:5時間の授業の全時間を,録画. 5回目の授業直後の自己評価との時間的なずれは. 記録した.ビデオカメラは1台で,教室の斜め前. 2週間以内とした.. 方から教室全体を広く撮映した.カメラには広角. 児童は各質問に4∼5件法で回答した.. のコンバージョンレンズをつけ,児童のほぼ全員. 5.授業中の発表行動と聞く行動などの振り返り. が映るようになっている.発言者を特定できるよ. の自己評価と他者評価. うに適宜カメラを動かしたり,ズームしたりした.. 上記の発信行動(挙手と発言行動)と受信(他. 観察者は3名で行い,1名がビデオの撮影を,2. 者の話を集中して聴く)行動についての自己評価. 名が発言した児童の名前と内容や授業の流れにつ. と同時期に,仲間による評定も実施した.この調. いての筆記記録を行った.ただし,観察者が2名. 査用紙にはクラス全児童の氏名が印刷されてお. の時は後者の担当を1名とした.. り,その横に「発言について」「聞くことについて」. 観察対象とした授業はすべて2時間目に行わっ. の2つの空欄が設けられており,「普段の授業の. た.この時問に限定したのは,2校時と3校時の. なかでよく発言する・よく聞いていると思う人に. 問に20分間の長い休み時間が入っているので,次. は◎,発言する・聞いていると思う人には○をつ. に述べる授業終了後の再生課題や自己評価の質問. けてください.」と書かれている.最終的には,. 紙の記入による次の授業時間への食い込みを最′ト. ◎を3,○を2,記入なしを1というように3段. 限度にするためである.. 階で得点化を行った.この場合の仲間による評定. 3.仲間の発言の再生と授業中の行動についての. は無記名なので,自分自身についての評価(自己. 自己評価. 評価)も含まれるが,自分自身に対する評価も含. 授業の終了直後に,「今の授業時間に仲間が発. めた36名全員の個人ごとの評定値の合計を「発表. 表(発言)したことで,あなたが覚えていること. 行動:仲間評定」と「聴く行動:仲間評定」とし. をできるだけたくさん書いてください」と教示を. て使用した.. おこない,授業中の仲間の発言を再生して記述し てもらうために「記憶再生シート」を配った(資 料3).シートはA4版の両面に印刷してあり, 発言の内容と発言した人について書くようになっ. 159.
(5) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. 子どもの発言の分析方法 1.分析の対象とした教室談話. 第2回のトランスクリプトについて1週間の間隔 を置いて授業者に2度評定を行ってもらった.そ の結果,評定の完全一致度は67.7%であった.「特. 分析の対象となった発言は,「公的な談話」. に重要な発言」と「重要な発言」の評定が入れ替. publicdiscotirSeに限定した.具体的には公的な. わったものも含めると一致度は72.6%になり,こ. 談話を次の二つの条件により定義した.第一の条. の評定の信頼性は完全とは言い難いが,十分に使. 件は,一斉授業の中でなされた子どもの発言の中. 用に耐えうるものと判断した.. でクラス全員に向けられたものである.第二は,. 本研究では,重要度を決めるのに教師の判断を. そのときの授業内容に関係する発言である.その. 用いたが,その理由について簡単に述べる.第一. ために,各自が感想などをノートに書く作業や一. に,その授業の目的は教師が決めるので,子ども. 斉の音読の時間,黙読の時間は分析対象とはしな. の反応のどれがそのときの目的と関連性があるか. かった.. どうかの判断は教師がもっとも適切に行うことが. VTRを再生視聴し,授業中の筆記記録と照合. できるからである.もう一つは,多少とも現象学. しながら,トランスクリプトを作成した.その際. 的な理由からである.授業中に教師は言語的な. に,発言した児童の名前,発言の内容の他に授業. フィードバックや言葉の調子,表情や仕草などさ. 者の発言も記録した.発言者を同定する際,複数. まざまな仕方で,意識的,意図的に,また無意識. の児童が同時に異なる内容の発言をした場合で. 的に,その場で瞬間的に子どもの発言に評価的な. も,それぞれの内容についての発言者が特定でき. 反応をしている.子どもの発言の「何が」重要で. る場合は別個の発言として扱った.しかし,声が. あるかは,客観的に決めるものではなくて,子ど. 重なっていて個人を特定できない場合は「数名以. もとのやりとりの中で教師自身が決めたものに対. 上同時発言」とした(なお,「数名以上同時発言」. して,子どもが何らかの解釈をして,それに応答. は,全公的発言数の約15%であり,決して少なく. しているのであろう.そうなると,第三者よりも. ないが,発話者を同定できないので分析対象から. 当事者である教師が判断する方が妥当性が高くな. のぞいた).. ると考えられる.. 2.授業者による児童の発言内容の重要度評定. 3.仲間による再生教. 授業者の視点で毎回の授業の目標との関連性か. 授業後に行った再生課題用紙からそれぞれ子ど. ら,子どもの発言一つずつについてそれがどの程. もの再生数をカウントした.教師の発言や自分自. 度重要な(関連する)発言であるかの評定を依頼. 身の発言を再生しているものはカウントせず,ク. した.評定は3段階で,「特に重要な(関連する). ラスの仲間の発言を再生しているものだけを「再. 発言」,「重要な(関連する)発言」,それ以外の. 生数」としてカウントした.また,発言を再生し. 発言である.授業者の記憶ができるだけ損なわれ. ていても発言のプロトコル上の誰の発言か特定で. ないようにトランスクリプトは授業後の3日以内. きないものカウントしていない.1つの再生文に. に手渡した.その際には,発言した児童の氏名は. 授業談話筆記記録の中の2つの発言の内容が含ま. ブランクにし,教師の側の評定上の誤差の発生を. れていた場合は再生数を2とカウントした(発言. 抑えるようにした.. 1:「おみつさんは欲しいものがあるけどいつも. そして,これに基づき個人の5時間分の合計得 点を発言の合計量要度得点と,個人の発言の合計 量要度得点を5時間分の発言数で除した発言の平 均重要度得点の2つの変数を作った. ちなみに,この評定の信頼性を調べるために,. 160. は我慢していた」発言2:「おみつさんは雪下駄 だけは我慢できないくらい欲しかった.」再生文 :『おみつさんはほしいものがあったけどいつも. はがまんできたんだけど,雪げただけはがまんで きなかった.』)..
(6) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶. 4.再生内容の重要度評定と再生した人数のカウ. この中で実際に1回以上発言した子どもの人数. ント. についてはどうであったろうか.全体の発言数で. すでに述べた教師による発言の重要度の評定に. は授業の回によってかなりの変動が見られたが,. 基づき,個々の子どもが再生した仲間の発言の重. 1回以上発言をした子どもの人数に関しては10人. 要度を次のように3段階に得点化した.つまり,. から18人の範囲に収まっている.子どもの発言数. 再生された発言が談話の筆記記録からどの子ども. が非常に多かった4回目では一人あたりの平均発. のものかが特定できる場合には,そのもととなる. 言数が4.03とそれ以外の授業の時の2倍を超えて. 発言の重要度得点に対応させて3,2,1という. いるが,それを除けば極端な変動は見られない.. ように得点化した.しかし,再生文の内容が具体. このクラスの36名の5回の授業の全体の発言数の. 性に欠け,誰のどの発言であるかを特定するのが. 平均を算出すると10.58であったが,その標準偏. 難しいようなあいまいなものは,すべて1として. 差値は15.92と極端に高かった.ただし,欠席者. 得点化した.. がいた回もあったので1回の授業あたりの平均発 言数を見ると,2.15(3.19)(かっこ内はSD) であった.また,男女で比べると,男子の方が平. 【結果】. 均値にして女子の2倍以上であったが,個人差が 非常に大きいために5%レベルでの有意差には達. 1.発言数. まず,5回の授業のそれぞれの児童の公的な発. しなかった(16.46(18.95)対7.26(13.24),男. 言と教師の発言の数について見てみよう.授業ご. 子対女子の平均値(SD),L=1.71,P<.09).. とに子どもの公的な発言数の変化が目立つが,教. 発言数の分散はきわめて大きかったことはすで. 師の発言数もそれに対応して増減している.こう. に述べたが,その範囲は0から65にまでおよんで. した両者の発言数の変化は,そのときどきの授業. おり,ヒストグラムで示すと発言数の少ない側に. の進め方に依存していることは確かである.たと. めだった分布の偏りがあることが顕著である(図. えば,1回目に発言数が少ないが,これは最初の. 3).つまり,総発言数が5未満の巾に23人. 段落の導人の部分であり,数名の子どもに指名し. (63.89%)が人っている一方で,総発言数が15. て音読させたり,言葉の意味を確認するなどのこ. 以上の子どもは8人(22.22%)であり,この8. とがかなりの時間を占めていたからである.一方,. 名でクラス全員の発言(341)の86.22%(294). 4回目ではとても多くなっているが,この回の授. を占めている.試みに,1回目の授業で発言数の. 業ではおみつさんの性格について文中から推測す. 上位10名を選び,この順位がその後の4回の授業. る場面で子どもたちから活発な意見が出たり,自. でどの程度の安定性があるのかを調べてみた.4. 分の祖母のことや自分の今の生活と比べての発言. 名はその後の4回のすべてで10位以内であった.. などさまざまな意見が出た授業であった.. 図1.児童と教師の発言数の変化. 図2.発言の平均個数と実際に発言した人数. 161.
(7) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. 合は8.6%→11.9%→5.7%→9.8%→12.1%と授 業により若干の変動があるが,せいぜい10%をわ ずかに超える程度である.そして,5回の合計で 9.4%である.それに重要度2の割合の14.2%を 加えても23.6%に過ぎない.結果としておよそ4 分の3の発言が特別に重要なものとはなっていな 標準偏差=15.93 平均=10.8 有効数=36.00 0.0. 10.0. 20.0. 30.0. 40.0. 50.0. 80.0. 70.0. 発言数. い.秋田他(2003)の小学校2年生の算数の授業 では重要度3の比率はこの倍近い15.7%になって いるが,重要度の評定の基準については秋田たち の手続きに厳密にしたがったわけではないので,. 図3.子どもの発言数の分布. 比較はできない.ただ,今回では3段階評定と言. そして,10名の中の9名が2回以上も10位以内に 入っていた.. 子どもの発言数から見ると,4分の1弱の人数 の子どもが全体の発言数の9割近くを占めてい た.このように書くと,せいぜい10名を少し超え る子どもだけが参加している授業であったという. 印象を持つかもしれないが,実際に観察していた 者としてはこれとはかなり違った印象を持ってい たことは確かである.そうした観察の印象とのず. 図4.発言の重要度評定. れの大きな原因は,ここで分析の対象とした発言 は,発言者が特定できる個人としての発言に限定 したことではないかと考えられる.個人としての 発言がゼロの子どもでも,一斉に答えたり,ある. いは複数の子どもが同時に答えるという形での発 言はあったし,教師が机問巡視で回っているとき に教師と話しをしたり,近くの仲間の話をするこ ともあったはずである.ここでは公的な談話に限 定しているために,このような子どもたちの授業. 図5.発言の重要度評定の内訳(5回の合計). への参加のしかたをとらえることができなかった のである.その一方で,『わら靴の中の神様』と. うよりは,特に重要な発言(重要度3)と重要な. いうかなり長い物語教材では話の中にいわばのめ. 発言(重要度2)についてのみチェックしてもら. り込んでいく子ども中心に授業が展開されやすい. い,それ以外のものをすべて重要度1としたため. と言うことも無視できない事実ではあろう.. に,重要度の高い発言の認定が秋出たちの場合よ. 2.よく発言する子どもは,重要な発言も多いだ. りも厳しくなったのかもしれない.. ろうか. さて,授業中に発言数の多い子どもははたして. まず,発言の重要度別の分類結果を見てみよう.. 重要度の高い発言も多くするのだろうか.両者の. もっとも重要度の高い重要度3と教師から評定さ. 関係を見ると,図6のようなほとんど直線といっ. れた子どもの発言が子どもの発言全体に占める割. てよい関係であり,相関係数は.99であった.垂. 162.
(8) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶. 要度の合計は個々の発言を3段階に重みづけた合 計であるから,発言数が多いほど重要度の得点が. ことは全くなかった.. また,発言の重要得点に関してもやはり個人差. 高くなるのは当然である.しかし,発言数が少な. が極端に大きいために男女の性差は見られなかっ. くても,重要度の高い発言の個数が多い子どもも. た(21.38(24.24)対9.91(18.50),t=1.56,. いると考えたので,このような直線的な関係は想. n.s.).. 定していなかった.そこで,発言数と平均重要度. 3.よく発言する子どもは,他の子どもの発言も. で散布図を作ってみた(図7).そうすると,両. よく覚えているだろうか. 者の問の相関は全く消えている(r=.06,n.S.).. まずはじめに子どもたちの仲間の発言の再生数. つまり,一つの発言あたりの重要度の高さについ. についてみてみよう.図8と図9に示すように,. ては,発言量の多い子どもと少ない子どもでは全. 再生数の平均(SD)は7.00(3.78)であり,範. く違いがないことがわかる.多く発言する子ども. 囲は0から16であった.発言数と比べると分布の. は,結果的にその授業の重要な方向づけとなった. 偏りはほとんど見られなかった.. り,思考を深めたり,広げたり,あるいは適切な. まとめとなるような発言をすることが多くなる が,そうした子どもたちの毎回の発言の質が高い. V丘. 発言の重要度得点. 0. ︵U. 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 80 85 70. 発言数. 図8.仲間の発言の再生数の分布 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 次に,発言数と仲間の発言の記憶との関係につ 発言数. 図6.発言数と重要度との関係. いてみてみよう.散布図(図8)から二つの特徴 がわかる.ひとつは,ごく緩やかであるがプラス. AV 4. の相関,つまり発言数が多いほど仲間の発言の再. 2 0. ロあるいは10以内の子どもの再生数の分布が全く. ▲‖0 2. 多様であることである.再生数の平均の7.00で補. 2 2. 助線を引いてあるが,それを境にしてほぼ2分さ. 2 ・■−. ︵重要発■一■一号発言数︶平均重要度. 生数も多い傾向がある.もう一つは,発言数がゼ. れている.このことは,授業中の発言数が全くな. かったり,非常に少ない子どもであっても仲間の 発言の内容をよく覚えている子どもが少なくな 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 発言数. 図7.発言数と平均重要度との関係. い.言葉を換えると授業に対する十分な参加を 行っている子どもがかなりいることを示してい る.具体的に散布図を見ると,7や20のようによ く発言をするし,同時に仲間の発言もよく覚えて. 163.
(9) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. ないのだろうか.. そこで,再生量を横軸に平均再生重要度を縦軸 にした散布図を描いてみた.図10から明らかなよ うに,緩いプラスの相関関係が見られる(r=.39, p<.05).再生数の多い子どもは低い子どもより. も再生した内容の重要度がわずかに高いが,再生 数の低い子どもでも19や13のように平均再生重要 度の高い子どもが何人もいる. 4.再生の重要度と授業理解の関係. 今回の分析では,集中して仲間の発表を聴けた かどうかが授業の内容の理解と結びついているか 図9.再生数の分布. について検討する.授業の理解の具体的な指標と して子どもが記憶再生した仲間の発言の内容がど. いる子どもがいる一方で,25,12,15,30,17の. れくらい重要な情報を含んでいたのかをとり,こ. ようにほとんど発言していなくても仲間の発言を. れと授業の理解やメタ認知的な活動の項目との相. とてもよく覚えている子どももいる.それから,. 関を求めてみた.その結果,⑨仲間の発表を集中. 27のように発言数はとても多いのにそれに比べる. して聞けたと.50**,④どのくらい力を出せたと.31. と仲間の発言の再生数が少ない子どももいること. (*),⑤わからないことが分かったり,新たなこと. がわかる.. に気づいたと.45**,⑥どれくらいおもしろかった. 両者のピアソンの相関係数は.35(p<.05)で. と.30(*),⑦どのくらい理解できたと.52**と有. あるので,発言数が多いほど仲間の発言をよく覚. 意な,あるいはそれに近い相関があった.つまり,. えている傾向性は一応認められるが,両者の変数. 教師の視点ではあるが授業の展開において重要性. 同士の関連性は強くはない.. の高い仲間の発言をよく覚えている子どもは,自. 前の発言数の時の分析と同様に,仲間の発言を. 己評価において理解やメタ認知的な活動がより高. よく覚えている子どもは情事錮勺な価値の高い内容. い傾向にあったのである.. を多く覚えているのだろうか,それともこうした. 5.授業中の発表と聴く行動と認知・情動的な変. 記憶の情報的な重要度の高さは再生量とは関係が. 数との関連性 これまでの分析の対象であった発言数と仲間の. l l・■−・■−・■−. 平均再生重要度. 22211・■−・l・l. 発言の再生数と1から5回の授業の各自の自己評. 評価しているのだろうか.また,仲間の発言に対. 価との関係について調べてみよう.実際に発言数 の多い子どもは自分自身でもよく発言したと自己. する再生量の多い子どもは集中して聴いていたと. 思っているのだろうか.このように客観的な指標 と主観的な指標との対応関係について検討してみ た.. 次の表1の発言数と発言再生数の二つの客観的 0. 2. 4. 6. 8 10 12 14 16 18 20. な測度が授業終了直後の自己評価の9項目とどの 再生数. 図10.再生数と再生の平均重要度との関係. 164. ように相関しているのかを見てみよう.発言数が 多いほど挙手の回数が多く(r=.67),よく発表.
(10) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶 表1.授業巾の行動の自己評価(5回の平均)と発言数、仲間の発言と再生数の相関 発言数 発言再生数. 授業終了直後の自己評価 謀挙手回数 ②発表 =宣庚申して. 聞く 発言再生数. 対). 35*. ①挙手回数. 67**. 40*. ②発表. 73**. 40*. ⑨集中して聞く. 26. ④力を山す. 37*. ⑤気づき. 03. ⑥おもしろさ. 08. ⑦理解. 09. 52**. Sl**. 57**. 30(*) 52** 48**. 23. O. 58**. 66**. 51**. 19. 54**. 24. 64**. 29(*) 58**. 28(*) 32(*) 60**. ⑧発表(相対) 29(*) 29(*) 50** ⑨聞く(相対). さ. 40**. 53**. 48粕. 24. 53**. 57**. 54**. 57**. 82**. 18. 69**. 44**. 57**. 37* 45**. 53**. 52**. 48**. 53**. 48**. 40*. したと感じ(r=.73),かつ授業で自分の力を出. 体的には,⑨集中して聞くこと,④自分の力を出. すことができたと感じていた(r=.37).また,い. すこと,⑧いつもと比べてよく発表できたことの. つもと比べてこの授業ではよく発表できたとも感. 3つはほとんどすべての項目と有意な相関があ. じる傾向性もあった(⑧発表(相対),r=.29).. り,発信行動,受信行動,認知的なモニターリン. これらの相関関係から実際によく発言する子ども. グ行動はそれぞれがかなりつよく結びつきなが. はそれに対応した能動的な活動をしたと評価して. ら,全体の変数と関連していることが分かる.し. いた.. かし,ここで特に興味深いのは発言数,①挙手回. 一方,仲間の発言の再生数では10%レベルまで. 数と②発表傾向の3つとも⑦理解(この授業の内. 含めると9項目のすべてと有意な相関を示してい た.つまり,挙手回数と発表傾向といった能動的. 表2 自己評価の9項目の主成分分析の結果. な発信的な側面の行動ばかりでなく,次のような. (Promax回転後のパターン行列). 聞く行動といった受信的な側面の行動や理解,モ. 成分. ニターリングの認知的な行動とも有意な相関が. 2. あった.たとえば,再生数が多い子どもは友達の. ①挙手回数. −0.19 0.99. 発表を集中して聞き(r=.52),この授業で分か. ②どのくらい発表したか. −0.17 1.02. らないことがわかが分かったり,何か新しいこと. ③集巾して聞けた. 0.61 0.36. に気づいたり(r=.48),授業が全体としておも. ④どのくらい力を出せた. 0.39 0.58. しろいと感じたり(ご=.28),授業の内容が分かっ. 痘)わからないことがわかった 0.80 −0.09. たと感じたり(r=.51),かついつもと比べてよ. り,新しいことに気づいた. く発表でき(⑧発表(相対),r=.29),よく聞く. 〔釘おもしろかった. 0.74 0.06. ことができた(⑨聞く(相対),r=.54)と自己. ⑦理解できた. 0.87 −0.12. 評価する傾向性が見られたのである.. ⑧いつもと比べてよく発表できた 0.35 0.56. また,自己評価の9項目の相互の相関を見ると,. ⑨いつもと比べてよく聞けた. 0.85 −0.13. ほとんどの項目同士でプラスの有意であった.具. 165.
(11) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. 容がどれくらい分かったか)とは有意な相関がな. 一方よく聞く傾向の仲間評価は⑨集中して聞けた. いのに対して,発言の再生数,⑨集中して聞くこ. と.54,⑨いつもと比べてよく聞けたと.47と有意. とのいずれとも授業の理解とは有意なプラスの相. な相関を示していた.発表傾向と集中して聞く傾. 関があったことである.. 向の問には仲間評定の場合も自己評定の場合と同. 次にこれらの子どもの授業の振り返りの自己評. 様に両者の問にきわめて高い相関がある(.82).. 価の9変数について主成分分析を行ってみた. このことは,授業中によく発表する子どもは仲間. (Promax回転).第一主成分は聞くこと,理解. の詰もよく聞いているという常識と合致する結果. や興味や気づきなどを多く含んでおり,「聞くこ. になっている.しかし,仲間評定の発表傾向は⑨. とと理解」に関するものである.第二主成分は挙. いつもと比べてよく聞けたとは有意な相関がな. 手や発表,力を出せたことを多く含み,「発表傾向」. かった(.18)が,同じ仲間評定のよく聞く傾向と. あるいは「活動的な授業参加」と名づけてよいも. は.47と有意な相関がでている.このことは,発. のである.先の相関の解釈と共通することである. 表傾向のような可視性の高い行動については仲間. が,授業での気づきや理解,興味と関係が強いの. 評定と自己評定の相互の対応関係が高いのは当然. は表面上は能動的な授業参加と映りやすい発表傾. であるが,それが相対的に低い集中してよく聞く. 向ではなくて,集中して聞くことであった.授業. 行動の側面についても仲間評定は十分に信頼でき. でめざすものは,子どもの授業内容の理解や気づ. るデータを提供していることになる.. き,興味や関心の深化や増大であると考えると, 子どもの聴く行動の重要性について再認識すべき であろう.. 表3 発表行動と聞く行動の仲間評価と自己評価と の相関(*:p<.05;**:p<.01). 6.発表行動と聞く行動についての自己評価と仲. 仲間による評価. 間評価との対応関係. 授業の子ども自身の振り返りの自己評価と客観. 発表行動 聞く行動 仲間評価 聞く行動. 的な測度の発言数と発言の再生数との関連を調べ. ①挙手回数. てみると,子ども自身の自己評価の妥当性の高さ. ②どのくらい発表し. が認められたが,その一方でクラスの仲間の発表. たか ③集小して聞けた. 傾向と集中して聞く傾向についての評価との対応 関係はどうだろうか.. 段階で得点化を行った.評定は無記名としたので, 自分自身についての評価(自己評価)も含まれる. 己 評. .36*. ことに気づいた 価. .18. .27. .20. .35* .36*. く発表できた. 間評定」と「聞く行動:仲間評定」として使用し. ⑨いつもと比べてよ. た.この表3より明らかなことは,仲間による発. .47**. く聞けた. 表傾向とよく聞く傾向についての評価とそれぞれ. 166. .54**. 分かったり,新しい. ⑧いつもと比べてよ. に発言数と.89と非常に高い相関を示している.. .44**. ⑤わからないことが. 員の個人に対する評定値の合計を「発表行動:仲. 回数とは.73,どのくらい発表したかと.78,さら. .64**. .46**. ⑦理解できた. て高いことである.発表傾向の仲間評価は,挙手. .61**. ④どのくらい力を出. ことになっているが,今回はそれも含めた36名全. に対応する行動の自己評価との相関関係はきわめ. .73**. 白. 方法のところですでに述べたように自分を含め てクラス全員について発表と聞く行動について3. .82**. 客観測度. 発言数. .89**. .61**. 発言再生数. .36*. .45**.
(12) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶. わりの笑いを誘ったり,発想の転換のきっかけを 【考察】. 1.聞く行動に対する新たな意味づけ ′ト学校の授業の検討会や研究会に行くと最近で. 与えることがしばしばあったのである. 2.今後の課題. 今回の報告では,国語の同じ題材についての5. は「発信型の授業」という標語を目にする機会が. 時間の授業中の子どもの発言とそれについての記. 多い.これは教師主導の授業に対して子どもが主. 憶再生に焦点を当てて分析を行った.この分析を. 体的,自発的に授業に参加していくことをめざす. 通していくつかの興味深い発見があった.たとえ. こととかかわるものであろう.また,授業後の話. ば,多く発言をする子どもは仲間の発言を多く記. し合いでも子どもの能動的な授業への参加を子ど. 憶再生する傾向はあったが,それは決して強い傾. もの挙手や発言の多さで評価することも少なくな. 向ではなかった.むしろ,ほとんど発言がなかっ. いように感じる.挙手をしたり,発表するのは可. た子どもの中に再生数の多い子どもが結構含まれ. 視性が高い行動であるので子どもの授業参加の指. ていた.また,再生数の多い子どもは,その内容. 標としてはわかりやすい.そうした利便性に加え. には重要度が高い傾向があったが,発言数の場合. て,よく発表する子どもは授業に対する充実感を. と同様に再生数が相対的に少なくても重要度の高. 持っていることもこの研究結果から分かった.し. い内容の再生をする子どもも少なくなかった.こ. かし,その一方で仲間の話を集中して聴くことが. の研究においては,発言と記憶再生の客観的な量. 授業の内容の理解や認知的な動機づけやモニター. 的な側面についての分析であったが,こうした子. リングとより強い結びつきがあることが明らかに. どもの個性あるいは授業中の思考や発想の個人差. なった.そして,このよく聴く行動については外. についてのより詳細な分析の必要性を感じた.す. 部からは見えにくいが仲間同士では相互にかなり. でに述べたように,発言数を見ると,よく発言を. 正確に認識しあっていることが仲間による評定結. する子どもは5回の授業を通じて非常に安定して. 果から分かった.. いたが,発言の重要度との関係から,比較的前半. このように聴く行動というのは授業参加のしか. に発言の多い子どもと後半に重要度の高い発言を. たとしては,発表する行動に比べると受動的,消. 相対的に多くするタイプの子どもがいた.教師は. 極的な行動としてとらえられがちであるが,決し. こうした子どもの個性をうまく授業の展開に組み. てそうではないことを強調すべきである.また,. 込んで,時にはリラックスさせて子どもたちの思. それとともに子どもの個性の現れ方の違いについ. 考の幅を広げたり,逆にある面に収束させるよう. ても注目すべきである.本論では紙幅の都合によ. な試みをしていることが示唆された.それから,. り述べることができなかったが,発表を主に前半. 授業中の話し合いの内容や一つの発言と次の発言. に行いやすい子どもと後半のまとめの部分で多く. との時間的な関係や文脈についての情報をここで. なりやすいタイプがいたことである(臼井,2004).. は扱うことができなかったが,これも課題の一つ. 前者のタイプの子どもは概して発言の重要度の得. であろう.なぜある特定の発言が子どもたちの記. 点はあまり高くないことが多く,時にはピントは. 憶に残りやすいのか,一見重要に見える発言がか. ずれの意見もある.これに対して,後者のタイプ. ならずしもそうならないのかを明らかにするため. はうまくまとめをしたり,授業の方向性を決定づ. のヒントをこのような情報から得ることができる. けるような重要な発言をすることが多い.一見す. かもしれない.学校で学んだことはテストが終わ. ると後者のタイプの子どもが授業の展開にとって. るとそのとたんに忘却するものだという信念が広. の貢献が大きく,前者のタイプは相対的に低いよ. く行きわたっているが,そうした通念をわれわれ. うに見える.だが,実際の授業の流れを見ると,. が持つのは実験室的な記憶研究の結果をそのまま. 前者のタイプの子どもの一見的はずれの意見がま. 一般化してしまうことにあるのではなかろうか.. 167.
(13) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. 事実,SembとEllis(1992)は学校での学習に. 博が発表したものである.). ついての広範囲な研究の結果をレビューしてメタ 分析を行っているが,その結果数十年という期間. (臼井 博 札幌校教授). を経ても生き残る学習の内容がかなりあることを. (袋 佑加生 苫′ト牧市立柘勇′ト学校教諭). 認めている.実験室的な記憶研究と学校での学習. (河内 京子 室蘭市). とのもっとも大きな違いは,前者では伝統的には. (高橋 敏範 札幌市立北九条小学校校長). 学習内容の相互の文脈なり,関係をあまり重視し. (気田 幸和 札幌市立北九条小学校教諭). てこなかったのに対して,授業場面では時間的に 連続しているばかりでなく,学習の内容は相互に 関連している.また,前者では記憶のプロセスに おいてもその再生のプロセスにおいても基本的に は個人が孤立的な場面で,しかも学習を行う人(実 験者)との相互交渉は最小限度にしか行われない ままになされる.これとは対照的に,授業場面で の学習は集団でなされ,教師と子どもとのやりと りや子ども同士の討論が強調されている.おそら くはこうした状況の違いが学校での学習の生き残 り率を高める一つの重要な原因となっているのだ ろう.. 参考文献 秋田喜代美 2000 子どもをはぐくむ授業づくり 岩波 書店 秋田喜代美 2002 教室における談話,稲垣佳世子・鈴 木宏昭・亀田達也(編著) 認知過程 研究一知識の 獲得とその利用−,放送大学教育振興会,pp.180−192. 秋田喜代美・市川洋子・鈴木宏明 2002 授業における 話し合い場面の記憶(1ト(3),日本発遠心理学会第13回 大会発表抄録,pp.194−196. 秋田喜代美・市川洋子・鈴木宏明 2003 授業における 話し合い場面の記憶一参加スタイルと記憶一,東京大 学大学院教育学研究科紀要,42,257−273. Semb,G.,andEllis,].1994Knowledgetaughtinsehool:. Whatis remembered?Review ofEducationalRe− SearCh,64,2,253−286 臼井 博 2002 アメリカの学校文化 日本の学校文化. 金子書房 臼井 博 2004 子どもの感性をみがく 教育展望 50, 6,18−23. (注記:なお本稿の一部は日本教育心理学会第46回総会 (2004)において『小学校の授業における児童の発言行 動と仲間の発言の記憶:よく発言する子どもは他の子ど. もの発言もよく覚えているのだろうか?』として臼井. 168.
(14) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶. 資料1:授業中の振り返り質問紙. ① あなたはこの授業で何回くらい手をあげましたか. 1…0回 2…1∼2回くらい 3…3∼4回くらい 4…5∼6回くらい 5…7回以上. ② あなたはこの授業でどのくらい発表したとおもいますか. 1…全然発表しなかった 2…あまり発表しなかった 3…まあまあ発表した 4…よく発表した. ③ あなたは友達の発表をどのくらい集巾して聞くことができましたか. 1…あまりできなかった 2…だいたいできた 3…よくできた 5…とてもよくできた. ④ あなたはこの授業でどのくらい自分の力を出すことができましたか. 1…全然出せなかった 2…あまり出せなかった 3…まあまあ出せた 4…よく出せた. ⑤ この授業でわからないことや知らないことがわかったり,何か新しいことに気づいたりしましたか. 1…あまりなかった 2…少しあった 3…よくあった 4…とてもよくあった. ⑥ この授業は全体としてどのくらいおもしろかったですか. 1…あまりおもしろくなかった 2…少しおもしろかった 3…おもしろかった 4…とてもおもしろかった. ⑦ この授業の内容がどのくらいわかりましたか. 1…全然わからなかった 2…あまりわからなかった 3…まあまあわかった 4…とてもよくわかった. ⑧ いつもと比べてこの授業はよく発表できたと思いますか. 1…いつもよりも全然できなかった 2…いつもより少しできなかった 3…いつもと同じ 4…いつもより少しできた 5…いつもよりもよくできた. ⑨ いつもと比べてこの授業では友達の発表をよく聞くことができたと思いますか. 1…いつもよりも全然できなかった 2…いつもより少しできなかった 3…いつもと同じ 4…いつもより少しできた 5…いつもよりもよくできた. 169.
(15) 臼井 悼・袋 柘加理・河内 京/一・高橋 敵意・気田 宇和. 資料2:普段の授業中の行動についての自己評価質問紙. ① あなたは,授業巾よく発表する方ですか?. 1…全然発表しない 2…あまり発表しない 3…まあまあ発表する 4…よく発表する. ② 授業巾発表・質問することについて 1…苦手だ 2…少し苦手だ 3…まあまあ得意だ 4…とても得意だ. ③ 授業巾,今よりももっと発表したいと思いますか? 1…全く思わない 2…少し思う 3…よく思う 4…とてもよく思う. ④ 授業巾,集巾して聞くことについて 1…苦手だ 2…少し苦手だ 3…まあまあ得意だ 4…とても得意だ. ⑤ 授業巾,先生の話を聞くことについて 1…あまり集巾して聞いていない 2…だいたい集巾して聞いている 3…集巾して聞いている. 4…とても集巾して聞いている. ⑥ 授業巾,なかまの話を聞くことについて 1…あまり集巾して聞いていない 2…だいたい集巾して聞いている 3…集巾して聞いている 4…とても集巾して聞いている. ⑦ 授業巾,発表することと,なかまの発表を聞くことではどちらが得意ですか. 1…発表することが得意 2…どちらかといえば発表することが得意 3…どちらかといえば聞くことが得意 4…聞くことが得意. ⑧ 国語の勉強について 1…苦手だ 2…少し苦手だ 3…どちらでもない 4…まあまあ得意だ 5…とても得意だ. ⑨∼⑪ 社会・算数・理科の勉強について 1…苦手だ 2…少し苦手だ 3…どちらでもない 4…まあまあ得意だ 5…とても得意だ. 170.
(16) 小学校の国語の授業における児童の発言行動と仲問の発言の記憶. 資料3:仲間の発言の記憶再生シート. 15年. 月. 日(教科:. 名前. □ 今の授業時間になかまが発言していたことで,あなたが覚えていることを,できるだけたくさん書いて 下さい. 発 言 内 容. 発言した人. 2. 3. 4. 5. 171.
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