University-Shopping Street Cooperation toward Sustainable Urban Development:
In search of a KACHIGAWA Style of decentralized autonomous shopping street
— A case study of the Kachigawa Shopping Street —
『大学と商店街の連携による持続可能なまちづくり,
自立分散型「勝川スタイル」の提案に向けた研究
―春日井市勝川駅前通り商店街を事例として―』
2014年度報告
1.2014年度報告における「勝川スタイル」の諸側面
羽後静子(中部大学国際関係学部教授・研究代表) 本報告は,継続研究「大学と商店街の連携による持続可能なまちづくり,自立分散 型「勝川スタイル」の提案に向けた研究~春日井市勝川駅前通り商店街を事例とし継続研究
羽 後 静 子 岡 本 肇Seiko HANOCHI
Hajime OKAMOTO
水 野 隆 川 田 健Takashi MIZUNO
Takeru KAWADA
て~」の2年目である。 報告は,以下の4報告により構成されている。「「感覚値」 による勝川駅前周辺地区 に関する意見抽出」(岡本肇),「郷土史家からみた勝川の歴史資源に対する意識:勝川 ブランド構築のために」(川田健),「自立分散型の街づくりをめざして:みんなでやら ない街づくりプロジェクト」(水野隆),「元気!子育てママたちによる多文化共生の 「勝川スタイル」~中部ESD生命流域モデルの中の女性の役割~」(羽後静子)の4 報告である。本年度の研究は,特に国連「持続可能な開発教育の 10年」の最終年を盛 り上げるユネスコ ESO世界会議で発表された「あいち・なごや宣言」と中部ESD拠 点協議会が同会議に提出した「中部生命流域圏ESD モデル」で,後者の一翼となった 「勝川スタイル」を,中部地域の伝統的な「ものづくり」文化の伝統を踏まえ,「あいち・ なごや宣言」が強調する地域から国家・世界に広がる持続可能な発展への貢献を,特 に急激に人口構成が変化する日本の地域において自立分散型の「未来づくり」に向け た「人づくり」の問題として把握するための四つの手がかりを取り上げている。 第一の手がかりは勝川駅周辺の住民自身の地域づくりについての寄与の可能性を 中心にした自立分散型開発の道をさぐることである。第二の手がかりは,日本列島に おける人口構成の変容の中での,勝川商店街の人口構成が全国に比べて子育て世代の 若い女性の購買者としての役割に期待することで,脱補助金時代の中で生き抜くこと ができる道の模索である。第三の手がかりは,春日井市のなかでも勝川の歴史資源と 「神話」による個性の発見の道である。第四には,「あいち・なごや宣言」が強調する ローカルな地域から子育て女性などのジェンダー活動による全日本社会への貢献,さ らには海外の移住女性を介しての世界に開かれたまちづくりにおける女性の役割が注 目される。この四つの角度から本報告書に含まれている問題提起については,それぞ れいっそうの掘り下げが必要であるが,かなり大胆な主張もふくまれていて,それぞ れの側面での今後の調査研究が期待される。
2.
「感覚値」による勝川駅前周辺地区に関する意見抽出
岡本肇(中部高等学術研究所講師)2.1 本章の目的
この地区には,「商店街+サポーター会議」や「勝川まちエン」等、商店街活性化やま ちづくりに関して活動する各種団体が存在する。 (「商店街+サポーター会議」(通称:「二水会」)は,勝川駅前通り商店街(以下「勝川 商店街」)の地元リーダーと商店街の外部から支援を行う大学教員,一般市民など約10 名が,商店街内部の運営に関わる主体(勝川駅前通商店街振興組合など)に対して,商 店街でのまちづくりに関する事業・将来像などの提案や,内部主体の事業の評価・協働 活動を行うことを目的に設立された組織である。2009年7月から毎月の第二水曜日に, 勝川商店街の再開発ビルの中にある会議室で定例会を開催している。また「勝川まちエ ン」は,勝川駅前地区のまちづくりを Facebook上で議論するプラットフォームであり, 2012年4月に開設された。運営は勝川駅周辺まちづくり協議会である。) この章では,これらの団体が 2010年以降に行った勝川駅前周辺地区における感覚値 による数回の調査の結果を,今後のまちづくりに活用できる資料としてまとめることを 目的とする。2.2 本章で取り扱う各調査
本章で扱う意見抽出(調査)の事例は以下の通りである。 1) 二水会メンバー間における議論・意見抽出のまとめ(2010年3月10日~4月21日) 2) 二水会主催によるまちあるきワークショップ(以下「WS」)の意見抽出(2010年 6月18日) 3) 二水会メンバー間における議論のまとめ(2011年3月30日) 4) 勝川まちエン主催によるまちあるき WS における意見抽出(2013年5月17日)2.3 各調査の概要と出された意見の分析
1) 二水会メンバー間における議論・意見抽出のまとめ(2010年3月10日~4月21日) ① 議論・意見抽出の流れの概要 二水会の定例会は,2012年1月までに,計25回開催された。初年度である平成21年(2009年)度は,他事例の活動の学習や,勝川駅前商店街周辺地域および春日井市を象 徴する地域資源(書道,サボテン等)に纏わる事業等の動向を共有することに重点が 置かれた。 その初年度のまとめとして,2010年3月10日,二水会のメンバー間で勝川駅前周辺 地区の「いいところ」,「よくないところ」,そしてそれらを踏まえた上で「じゃあどう する」べきかを議論し,KJ法でまとめる WS を開催した。その後,この WS の結果を まとめたものをベースにさらなる意見抽出を行った。 ② 意見抽出の結果 意見抽出の結果は,意見内容を定性的に分類し,図1のようにまとめた。 ③ 意見抽出の傾向分析 ・3月10日におけるWS 「いいところ」と「よくないところ」を比較してみると「よくないところ」の記述の項 目が多くなっている。「地域全体の方向性・雰囲気」に関する項目もそうであるが,特に 「業種・業態,サービス」と「街並み・空間」に対して参加者たちは問題があると感じて いる。 「業種・業態,サービス」に関しては,「客の目線がない」,「業種・サービスの不足」,「店 に入りづらい」等,我が国全国の商店街で共通となっている課題が多く出された。また, 「街並み・空間」に関しても,「商店街真ん中の空地・パーキングがしらける」,「マンショ ン乱立のおそれ」等,こちらも全国の商店街共通の課題が出された。 逆に「いいところ」の記述が多かったのは「イベント」に関してであり,参加者は「弘 法市」を評価していることがわかる。また,「社会関係資本」に関しては「人材・やる気」, 「人材つながり」等が,一定程度評価されている。 参加者たちの提案である「じゃあ,どうする?」の欄を見てみると,「勝川3点セット」 として,「弘法様」,「書」,「サボテン」を地域資源として活用することを提案しているこ とが特徴的である。また「機能」では,「高齢者・福祉」,「防災拠点」等,商店街機能以 外に関する内容もこの地区に求められていることがわかった。また課題が多い「業種・ 業態,サービス」では,かつてのこの地区の商店街の雰囲気を懐かしむ「かつてあった 業種の復活を!」とともに,「コミュニティ・ビジネス」や「フェアトレード」のように 単に商店主の利益になるものを売る場所だけではなく,社会的な何らかのサービスを提 供する場として商店街が望まれていることが見て取れる。 また「街並み・空間」,「社会関係資本」にまたがる提案として,「交流・つながり・対話」 を行うことができる空間・場づくりや仕組みづくりを,という意見が出されている。
・4月21日までに追加された項目 3月10日の WS から種々の議論を経,いくつかの項目が追加された。大きく追加さ れたのは「地域全体の方向性・雰囲気」と「社会関係資本」に関する内容の提案(「じゃ あ,どうする?」)の箇所である。特に「社会関係資本」に関しては,「仕組みづくり」こ そが商店街周辺地域のまちづくりの本丸であることが意識され,「商店街はそこにし かない専門的なところで勝負しなくては!」というヴィジョンを示し,そのヴィジョン を達成させるための項目(「ものづくりの作り手・消費者の人材育成,そしてつながり を!」,「まちのマネジメント組織が必要!」等)が多く追加されている。 図2.二水会主催によるまちあるきWSの趣旨・目的とプログラム 2) 二水会主催によるまちあるきWSの意見抽出(2010年6月18日) ① 議論・意見抽出の流れの概要 本調査の主な参加者は,二水会のメンバーと,メンバーが個人的に呼びかけた人物 や地域SNS「愛っち」で呼びかけた一般市民である。参加者数は 16名,属性毎で見て ◇ 趣旨・目的: ① まちの「魅力的なところ」「魅力的じゃないところ」の発掘,まちの印 象の共有 ② 発掘・共有化した資源・印象は,「勝川検定」の問題や,今後のまち づくりの提案づくりのためのデータとして活用 ◎ プログラム 13:30 集合 13:30 ~ 挨拶,二水会の活動内容の紹介(水野さん,羽後先生) 13:40 ~ まちあるきの趣旨・プログラムの説明・グループ分け(岡 本) 13:50 ~ まちあるき(案内人:水野さん,社本さん) (途中で休憩入れる) ・ 配布する地図(A4用紙)に,まちの印象(主にまちの「魅 力的なところ」「魅力的じゃないところ」)をメモする。(案 内人の話や,実際に目に見えるまち等から) ・ 印象に残った場所を写真で撮影する。 15:30 大弘法横の公民館に集合 15:30 ~ 各グループ毎にまちの印象(「魅力的なところ」「魅力的 じゃないところ」を抽出。KJ法でグルーピング)を模造 紙や大判の地図に,写真を添付しながらまとめる。 16:10 各グループ発表(まちの印象と若干の提案),意見交換 16:30 解散
みると,地区住民(商店主)2名,地区周辺住民3名,地区外住民2名は学生(中部大 学羽後ゼミ)7名,中部大学教員3名,である。 まちあるき WS の趣旨・目的及びプログラムを図2に示す。 まず地元商店主2名の案内のもと,図3のようなルートでまちあるきを行い,その 際の印象(主にまちの「魅力的なところ」「魅力的じゃないところ」)を参加者にメモを していただいた。その後に各グループに分かれ,まちの印象を模造紙や大判の地図に 写真を添付しながらまとめていただき,最後に各グループの発表(まちの印象と若干 の提案)と意見交換を行った。 図3.二水会主催によるまちあるルート 写真1. 二水会主催によるまちあるき WS の様子 写真2. 二水会主催によるまちあるき WS の発表の様子
グループは3グループに分けた。Aグループは学生のみ,Bグループは学生+地区 外住民,Cグループは地区住民+地区周辺住民である。 ② 意見抽出の結果 各グループで出された意見を図4のようにまとめた。また各グループの発表では主 に以下のような意見が出された。 【Aグループ】 ◎ 魅力的なところ ・ まち全体に関すること,弘法様絡みのこと,お店のことで分けてみた。 ・ 店では「紙芝居のオヤジが最高」や,「お好み焼きやが安かった」との意見が多 く出た。 ・ 雰囲気に関しては足立病院が良い感じだとか,酒屋さんが歴史を感じる等の意 見が出た。 ・ 弘法様に関しては,小さい割に内容がしっかりしていた。「おもかるいし」がお もしろかった。 ・ 全体的には雰囲気がよくて,新しいものでは出せない古い味があった。あと空 き地が懐かしい。雑草等で緑が多くてよい,という意見があった。 ◎ 魅力的ではないところ ・ まず駅。駅の北と南の差が激しい。南は淋しくひどい。 ・ まちでは,見た目では全体的に商店街の緑が少ない。商店街のカラーの統一性 がない。新しい店と古い店の差が激しい,共生していない。 ・ 安全面では,消防施設が少し少ない。全体的に店の雰囲気が暗い,電球の色等 が暗い,などの意見があった。 ・ 次に空き地等,オープンスペース系では,駐車場が多すぎる,まちの作りが凝 縮されていてお店に気づけない,公園がただ広いだけ,道が狭いのに駐車場が 多くて危ない,空き地やシャッターが閉まっている店が多くて少し淋しい,な どの意見が出た。 ・ 次に「シンボルやばい系」。これは弘法様のことで,公民館で弘法様がみえにく くなり邪魔,という意見があった。 ◎ 提案 ・ 親子連れを増やせるお店があればいい,空いている店を一箇所に集める,自転 車置き場の有料化は反対,仕事帰りの一杯のお店を作ってみたらどうか,19号 の方に設置されている商店街の案内看板を駅の方においたらどうか。
【Bグループ】 ◎ 魅力的なところ ・ 幼稚園のデザインがきれい,木彫りの技術がすごい,懐かしい紙芝居がいい。 ・ 他には商店街の方が気さくで話がしやすかった,心がなごむ,など。あとは駅が きれい。公園が子供の遊び場として最適なこと,パン屋さんがおいしい。 ◎ 魅力的ではないところ ・ 弘法様の横が公民館なのは少し変,商店街の中でお店の新旧がはっきりしすぎ て新しい店に眼がいってしまう,空き地が多い(そこにお店とか増やせるので は),あとは自転車置き場に関することで,あれだけあるとあまりきれいには見 えない。もう少しいい整理の仕方があると思う。駅の南側は淋しい,南北の格差 がある。八光公園は広いから遊び場としては最適だが,広すぎるので公園内で 何かがあったときに,安全面で心配。あとは全体的に店が狭い。そして駐車場 がすごく多いが,駐車している車がそこまで多くない。若者がぱっと興味を持て るものがあまりない。 ◎ 提案 ・ 八光公園の付近のところは,ガードレールがないんで,飛び出しとかで危なっか しい。ガードレールが必要。 ・ カフェとか,アパレルブランドとか,などがあるといい。 【Cグループ】 ◎ 魅力的なところ,魅力的ではないところ ・ 新勝川駅,駅跡が残っていない。商店街の案内看板,こんな通りのエンドのとこ ろにあってもしょうがない。歴史がある場所があるのに,それを活かしていな い。古いものがあるのに,レトロ感を出していない。八幡社のあたり特徴がな い。城北線の勝川駅があって,JR勝川駅の方に乗り入れることになっているん だけど乗り入れていない。都市伝説の勝川座,というのがここにあった。 ・ 風格のある安達病院があるとか,スパイダーマンとか,おもかるいしとか。そし てここには今は懐かしい電話BOXがあったよ,という話があった。郡役所,紙 芝居。あと光る店はいっぱいあるんですよ,エリア的にちらばっているというの は残念ですけど。 ・ 勝川駅に関しては新しくなっていい駅ですよね。雨宿りもできてよかった。駅 南の方は静かな住宅街なんだけど,それしかイメージがない。 ・ 駅南の絵がまだ描かれていない。 ◎ 提案 ・ 緑に関する提案なんですが,空き地として駐車場が目立ちすぎている。あと人 の拠り所を作ったらいいんじゃないか。空き店舗の活用重要になってくる。八
光公園,にぎわいかなんかの演出で使えないだろうか。 ・ 地区全体をみてみると,回遊するにはうすいから,何か個性的な仕組みづくりが 必要。 ・ 駅のイメージ戦略も必要。 ・ ガードの横に飲み屋がどんどん進出。サラリーマンの飲み屋街としてどう演出し ていくか。 ③ 意見抽出の傾向分析 先の二水会WS と比較すると,「まちあるき」を介する WS による意見抽出のため, 「街並み・空間」に関する項目が非常に多い。特に「道路・路地」,「空き地・駐車場」,「駅 の南北間のつながり」,「商店街のカラーの統一性」に問題があるという評価を得た。ま た「まちあるき」を行いながら実際の店に寄り,商品を買ったり,インタビューを行って いるので,「業種・業態,サービス」に関する内容もいい評価を得ていることがわかる。 提案(「じゃあ,どうする?」)に関しても「街並み・空間」に関するものが多く,「店 舗のデザインのまとまりを!」,「店舗のデザインの統一感を!」,「崇彦寺と公民館立地 場所の拠点化・一体化したデザインを!」,「大きな木がほしい!」等の,意見が出された。 また,二水会WS時に「勝川3点セット」として,「弘法様」,「書」,「サボテン」の3つ の重要な地域資源が挙げられたが,このまちあるき WS では,そのうち「弘法様」に関 する項目に意見が固まった。 3) 二水会メンバー間における議論のまとめ(2011年3月30日) ① 議論・意見抽出の流れの概要 二水会において平成22年(2010年)度は,Ⅰ.二水会が勝川駅前のまちづくりで何 を担うことができるか?,Ⅱ.勝川のまちの将来ヴィジョンのあり方は?,Ⅲ.将来 ヴィジョンを実現させるための何を行うか?,の3項目について議論することに重点 が置かれた(「将来のヴィジョンやまちづくり事業の事業化について議論する段階」)。 これらⅠ,Ⅱ,Ⅲは,先に記した先年度の最後の定例会で行われた WS での議論を端 緒にしている。 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲに関しての継続的な議論(平成22年度に 10回の定例会を開催)や,先に 記した6月に実施されたまちあるき WS の調査結果を通じて,二水会が次年度(平成 23年(2011年)度)以降取り組むべき課題の論点として,筆者によって図5のように 体系的にまとめられた。
② 意見抽出の結果
意見抽出の結果は,意見内容を定性的に分類し,図5のようにまとめた。
③ 意見抽出の傾向分析 図5のまとめは基本的には図1と図4の内容を重ねたものである。そのため傾向分 析は1)③,2)③で既述してある。 4) 勝川まちエン主催によるまちあるきWSにおける意見抽出(2013年5月17日) ① 議論・意見抽出の流れの概要 本調査の主な参加者は,Facebook ページ「勝川まちエン」で募集した一般市民であ る。参加者数は 23人,勝川駅周辺地区に住む住民をはじめ,当該地区以外に住む住民 も6名程参加した。 まちあるき WS のプログラムは図6の通りである。まず地元商店主の水野隆氏の 案内のもと,図9(真ん中の地図内の線)のようなルートでまちあるきを行い,その際 の印象(主にまちの「魅力的なところ」「魅力的じゃないところ」)をメモしていただい た。その後各グループに分かれ,まちの印象を模造紙や大判の地図に,写真を添付し ながらまとめていただき,最後に各グループの発表(まちの印象と若干の提案)と意 見交換を行った。 図6.勝川まちエン主催によるまちあるき WS のプログラム 14:20 ~
まちあるき
(案内人:水野さん) ・ 配布する地図(A4用紙)に,まちの印象(主にまちの「魅 力的なところ」「魅力的じゃないところ」)をメモする。(案 内人の話や、 実際に目に見えるまち等から ) ・ 印象に残った場所を写真で撮影する。 15:45 ~ワークショップ,意見交換
・ 各グループに分かれて,まちの印象(「魅力的なところ」「魅 力的じゃないところ」)を模造紙や大判の地図に、写真を 添付しながらまとめる。 ・ 余裕があれば,まとめた印象をもとに,まちのこれからに ついて考えてみる(まとめてみる)。 16:40 各グループの発表(まちの印象と若干の提案),意見交換各グループは参加者の属性毎に振り分けた。(当該地区の)外部から来た参加者を中 心メンバーとしたグループ(A グループ),女性参加者のみのグループ(B グループ),A, B,D のどのグループにも該当しない参加者のグループ(C グループ),当該地区および 周辺地区に住む参加者を中心としたグループ(D グループ)の4つのグループである。 ② 意見抽出の結果 各グループで出された意見は,図7・図8(意見内容の定性的に分類したまとめ) と図9(意見内容を場所的に分類したまとめ)のようにまとめた。 また各グループの発表では主に以下のような意見が出された。 【Aグループ(外部中心メンバー班,6名)】 ・ どこからも見えない弘法様を逆手にとって活かす。 ・ 強(コワ)キャラ大魔神風弘法様を商店街で走らせる。 ・ あえて勝川を宣伝しない。見たけりゃ来い。 【Bグループ(オール女性班,7名)】 ・ 「惜しいまち勝川」をキャッチフレーズに。 ・ 来客者にとってわかりやすいサインの設置を。 ・ 並木道なんかがあった方がいい。 ・ 廃屋や空き地をなんとかする。 ・ 勝川の駅前はイベントスペースがあるというイメージなので,そういうイメー ジを活用したい。 写真4. KJ 法によるまちあるき WS のまとめ 写真3. 勝川まちエン主催によるまちあるき WS の発表の様子
図7.勝川まちエン主催によるまちあるき(2013.05.19)WS の 定性的分類による意見抽出まとめ
図8.勝川まちエン主催によるまちあるき WS の定性的分類による意見抽出まとめ(つづき) 図9.勝川まちエン主催によるまちあるき WS の場所的分類による意見抽出まとめ 【Cグループ(その他班,4名(うち子ども1名))】 ・ 「日常の供給から日常+αの供給へ」をめざすまちづくり。 (例えば,お父さんが通勤帰りにちょっと今日は少し贅沢しようか,と家族を呼び 寄せ,待ち合わせてそこで夜ごはんを食べようか,というような場があるまち) ・ 野浪ビルを異国情緒のある店の集合体に。
【Dグループ (地元中心メンバー班,5名)】 ・ 勝川周辺のケーキ屋が集まってスイーツマルシェをやりたい。 ③ 意見抽出の傾向分析 この勝川まちエンまちあるき WS も二水会まちあるき WS と同じく,「街並み・空間」 に関する項目が非常に多い。加えて二水会まちあるき WS とは若干まちあるきのルー トが異なったため,二水会まちあるき WS では意見として出てきていない地蔵川(勝川 駅南側を流れる川)や野浪ビル(昭和40年代に建設された雑居ビル)についての意見が 多く出ている。 一方,特に「よくないところ」で二水会まちあるき WS と共通する意見も多く出てお り,「統一感がない,店舗点在」,「業種の不足・偏り」,「(商店街周辺の)緑が少ない」,「空 き地」などがあげられる。「勝川3点セット」に関しては,今回のまちあるきWSでも「弘 法様」に関する意見のみが出された。提案(「じゃあ,どうする?」)に関しては多様な 意見が出されたが,地蔵川やその河川敷周辺(「空き地・河川敷の活用(映画会,朝市)」, 「地蔵川,散歩コースとして整備」),野浪ビルの活用に関する意見(「野浪ビルのリノベー ション」)が出ていることが特徴的である。また「路地」に関する提案(「脇道の拡幅は しない」,「メインストリートだけでなく東西方向の路地の充実を」)も出された。 また図9を見ると,「よくないとこと」の意見が商店街周辺に多く見られることがわ かる。
3.まとめ
ここでは各調査で出された意見の傾向を整理しまとめる。 表1は「地域全体の方向性・雰囲気」に関する各回の調査の意見抽出をまとめたもの である。 「地域全体の方向性・雰囲気」(表1)の「いいところ」を見ると,「明るい」,「人情の ある商店街」等の肯定的な意見も見られるが,その一方,「よくないところ」で「さみし い・活気がない」,さらには「まちの個性を活かしていない」,「テーマ・コンセプト・統 一感がない」等,の問題点が指摘されている。「じゃあ,どうする?」に関しては,各回 様々な視点からの意見が出された。 表2~表6は各回の調査の意見から出てきたまちづくりに関する要素を抜き出し,各 要素が各回で分類毎になんらかの記述がされたか否かをまとめたものである。 表2を見ると,「弘法様」が各回とも地域資源としてなんらかの意見・提案が出され ており,関心の高さが伺える。また表4のように,「弘法市」に関しての意見も2回分の調査で意見が出されていることを鑑みると,弘法様を擁する崇彦寺と当該地区との有機 的な関係性が今後のまちづくりを行うにあたって非常に重要な論点になりうることが 伺える。さらに表5を見ると,「路地」に対する関心の高さが伺え,当該地区の崇彦寺の 参道的な位置づけを今以上に路地空間で演出できるのではないかという視点から意見 が出されれているものと考えられる。この視点に関しては,具体的には「崇彦寺と公民 館立地場所の拠点化・一体化したデザインを」(図4),「メインストリートだけでなく東 西方向の路地の充実を」(図7),「路地に名前を」(図4)等の提案が出されている。 また「業種・サービスのバランス」(表3)に関しては全ての回で「よくないところ」の みに意見が出されておいる。そして「空地・駐車場」(表5)や「空き店舗の存在」(表 3)に関しても,各回とも「よくないところ」に意見が多く集中している。このあたり の指摘に対しては,当該地区(特に商店街)の人材・店舗の,マーケットに併せた入れ 替わりをいかに促しマネジメントしていく仕組みを作る方かが問われることになると 考える。 その他では表5で見られるように,当該地区の「景観」「緑化」のあり方や,「店舗の 統一感」の無さや店舗の「点在」している状況をいかに改善させるか,街並み・空間の あり方といったところに多様な関心が集まった。 表1.各回の意見抽出のまとめ(「地域全体の方向性・雰囲気」) ①二水会メンバー間における議 論・意見抽出のまとめ (2010年3月10日~4月21日) ②二水会主催によるまちあるき WS の意見抽出 (2010年6月18日) ③勝川まちエン主催によるまち あるき WS における意見抽出 (2013年5月17日) いいところ ・ 明るい ・ 人情のある商店街 ・ 雰囲気がいい・ 心がなごむ ・ 名前がいい・ 安心 よくないところ ・ さみしい ・ 活気がない ・ まちの個性を活かしていない ・ 若者が興味を持てない さみしい ・ 覇気がない ・ テーマ,コンセプト,統一感が ない ・ ベッドタウン化 じゃあどうする? ・ 持続可能な地域をめざす ・ グローバル化に対抗するア ジアを意識した商店街に ・ 春日井市No.1商店街に ・ 職住がきちっと成立できる まち ・ 持ち味を活かす ・ 流行のものを ・ 縁起のいいまち(2011年3月 30日に追加) ・ アニメ・ 漫 画 文 化 の ま ち (2011年3月30日に追加) ・ 日常の供給から日常+αの 供給へ ・ 雨の勝川ストリート ・ あえて勝川を宣伝しない ・ 「惜しいまち勝川」をキャッチ フレーズに
表2.各回の意見抽出のまとめ(「地域資源」) 表3.各回の意見抽出のまとめ(「業種・業態,サービス」) ①二水会メンバー間にお ける議論・意見抽出の まとめ(2010年3月10 日~4月21日) ②二水会主催によるまち あるきWS の意見抽出 (2010年6月18日) ③勝川まちエン主催によ るまちあるき WS にお ける意見抽出 (2013年5月17日) 弘法様(崇彦寺含む) 〇×提 〇×提 〇×提 書 提 サボテン 提 その他の歴史資源 〇× ①二水会メンバー間にお ける議論・意見抽出の まとめ(2010年3月10 日~4月21日) ②二水会主催によるまち あるきWS の意見抽出 (2010年6月18日) ③勝川まちエン主催によ るまちあるき WS にお ける意見抽出 (2013年5月17日) 店舗の魅力 ・ サービス (商店街のみ の)個店 〇 〇 チェーン店 〇 業種・サービスのバラ ンス ×提 ×提 ×提 店に入りづらい ×提 空き店舗の存在 ×提 新しい店と古い店と の関係性 × 公共施設の存在 〇 その他 提 ×提 〈凡例〉 〇…「いいところ」に関する記述有 ×…「よくないところ」に関する記述有 提…「じゃあ,どうする?」に関する記述有 空白…記述無し 〈凡例〉 〇…「いいところ」に関する記述有 ×…「よくないところ」に関する記述有 提…「じゃあ,どうする?」に関する記述有 空白…記述無し
表4.各回の意見抽出のまとめ(「イベント」) 表5.各回の意見抽出のまとめ(「街並み・空間」) ①二水会メンバー間にお ける議論・意見抽出の まとめ(2010年3月10 日~4月21日) ②二水会主催によるまち あるきWS の意見抽出 (2010年6月18日) ③勝川まちエン主催によ るまちあるき WS にお ける意見抽出 (2013年5月17日) 弘法市 〇 〇× 駅南口フリマ 〇 もち投げ 〇 その他 提 ①二水会メンバー間にお ける議論・意見抽出の まとめ(2010年3月10 日~4月21日) ②二水会主催によるまち あるきWS の意見抽出 (2010年6月18日) ③勝川まちエン主催によ るまちあるき WS にお ける意見抽出 (2013年5月17日) 道路・交通 × 提×〇 路地 〇 提〇 提× 空地・駐車場 × ×〇 ×〇 駅・駅周辺 提×〇 提× 景観 提〇 提× 緑 提×〇 提×〇 店の統一感・点在 提× × 交流・滞留空間 提 看板 提×〇 提 街灯 × 公園 提×〇 マンション × 〇 高架下 提× 河川 提×〇 古い雑居ビル 提〇 街の維持・負担 × その他 提×〇 提×〇 提〇 〈凡例〉 〇…「いいところ」に関する記述有 ×…「よくないところ」に関する記述有 提…「じゃあ,どうする?」に関する記述有 空白…記述無し 〈凡例〉 〇…「いいところ」に関する記述有 ×…「よくないところ」に関する記述有 提…「じゃあ,どうする?」に関する記述有 空白…記述無し
表6.各回の意見抽出のまとめ(「社会関係資本・仕組みづくり」) 今回の調査はあくまで「感覚値」によるものであり,正確な客観性を担保するもの ではない。しかし勝川駅周辺地区のまちづくりの方向性を考えるにあたって,一定の 示唆を与える資料にはなり得ると考える。今後参加者の属性を変えながら,継続的に このような調査を行うことによって,アンケート等ではなかなか把握できない具体的 な課題やユニークな提案・要望を掘り起こすことが可能になってくるものと考える。 また直接参加者同士がふれあいまちを実際見ながら議論することによってお互いの関 係が構築され,今後の当該地区のまちづくりの担い手育成や担い手同士の連携に寄与 することにもつながると考える。 ①二水会メンバー間にお ける議論・意見抽出の まとめ(2010年3月10 日~4月21日) ②二水会主催によるまち あるきWS の意見抽出 (2010年6月18日) ③勝川まちエン主催によ るまちあるき WS にお ける意見抽出 (2013年5月17日) 商店主が気さく 〇 商店主のやる気 〇×提 人材 〇×提 人のつながり 〇×提 マネジメント組織 提 その他 提 〈凡例〉 〇…「いいところ」に関する記述有 ×…「よくないところ」に関する記述有 提…「じゃあ,どうする?」に関する記述有 空白…記述無し
4. みんなでやらないまちづくりプロジェクト
〈自立分散型のまちづくりを目指して〉―プレーヤーとしての考察と実践報告― 水野 隆(合資会社水徳代表社員,勝川商業開発株式会社代表取締役)4.1 まちづくりの目標とは
商住混在のまちづくりの理念は,誰もが安全で安心して暮らせ,持続可能な商いが 安定的にできる街を作る事だ。その実現のためには,生活環境整備,防犯,防災,子 育て環境などの生活課題と,販売促進(イベント等)による賑わいの創出,通行問題, 駐車場の確保など商業課題とのジレンマを顕在化させ,メリハリのついた話し合いが 持たれることが重要だと考える。まちに新鮮な魚・野菜を売る店舗や美味しいパン の店や飲食店,カフェや専門店があることは,地域の付加価値を上げることにつなが り,商店街から見れば良質な住環境は,地域の人口増や良質な顧客の獲得につながり Win-Win の関係が構築できる。将来的に街のブランド力を上げ資産価値の上昇につ なげる事こそ本質である。しかし,勝川地区では勝川駅周辺まちづくり協議会が主催 するインターネット交流サイト「勝川まちエン」を開設しネット上で議論をする仕組 みを構築したが(中部大学産業経済研究所紀要第24号参照)目指すところは共有でき ても,そこに至る過程での地域(商店街・まちづくり)活動における合意形成は,重要 な部分にも関わらず多種多様の意見があり,さらに利害関係が絡むと一層容易ではな い。また,手法としての議事法を導入しても,そこから得られる結論が必ずしも最善 の方法とは言えず,結果として関係者同士の自己満足に終わる。さらに言えば責任の 所在が曖昧になり当事者不在になりがちである。4.2 脱・補助金時代のまちづくり
昭和34年の伊勢湾台風からの復興を目指して法制化された商店街振興組合だが,現 在では補助金の受け皿でしか機能していないと感じざるを得ない。理由としては,補 助制度がメニュー型で,しかも単年度に限られ,本当に必要な部分(金融支援他)への 支援が得られない点と,他方,組合内部の意思決定や実施スキームに時間が掛かり, 補助を受けるために膨大な書類を揃える事に汲々として事業に取り組む時間やタイミ ングが制約されてしまう事が挙げられる。合意形成が困難な理由として,合理的な議 論が十分になされないまま,当番制で選出された理事が,声の大きい理事に引っ張ら れる形で決議が行われる点があるが,本来地域の活性化は活性化させる仕組みの構築が重要で,この点への理解は驚くほど薄い。従って比較的補助金が受けやすく目に見 えるイベントに事業が集中することになる。しかし理念なきイベントは,単にその場 の集客しか効果が無く,イベントが終われば再び閑散としてしまう現状には疑問すら 感じる。イベントで街が良くなったところが果たしてあるのだろうか。私自身,昭和 50年代半ばから約30年に亘って商店街の理事を務めた経験から,賦課金と補助金に 頼った商店街の財務体質に疑問を持ち,自前で財源を確保し,補助金を得なくとも運 営で出来る弘法市の在り方を模索してきた。結果,2013年度には僅かながら利益を計 上するところまで来た。今後はさらに収益の道を探りながら運営される事を希望する が,先述の合意形成の困難さから 2014年度から役員を辞退し,有志によるまちづくり 会社(勝川商業開発㈱)での活性化を歩もうとしている。みんなでやらないまちづく りである。
4.3 自立分散型まちづくり
まちは複雑系である。一口に地域の活性化と言っても様々な要素が絡んでくる。都 市計画を始め人口問題,経済問題,社会システム等々,また,近年大震災や大雨洪水等 自然災害も大きな要素になっている。これらの要素がお互いに干渉しあうと,過去の パラダイム(時代の思考を決める大きな枠組み)では解決しない。そこで敢えて全員 の合意形成を目指すのではなく,各々の立場で大きな理念に向かい「コンセンサスを 得るための無駄な時間や労力を省くこと」と「責任の所在を明確にした事業を推進す ること」が合理的だと考えた。自立分散型まちづくりである。特に,商業の立場で地 域の活性化を目指す我々の役割は,補助金体質の商店街組織等に固執することなく民 間資本を活用することで資本の再流動化を促し,持続可能なまちを構成するという試 みである。 その実施事例が「TANEYAプロジェクト」である。(中部大学産業経済研究所紀 要第24号参照)これらの小さくとも成功事例を作り,これを水平展開することが結果 として地域活性化への近道ではないだろうか。「まち」にはそこで自己実現を目指すプ レーヤーが必要である。パブリックマインドを持ったプレーヤーを育てる事こそ自立 分散型のまちづくりには欠かせない要素であり,その為の「場」「舞台」「装置」こそ「勝 川弘法市」の存在理由だと考える。4.4 勝川地区開発プロジェクト
平成26年1月に開業した「TANEYA」に続き,春日井市旭町1-6の開発に着手 した。この土地は商店街内の不動産所有者が相続による売却を希望し勝川商業開発㈱が取得した。当初,1~2階店舗,上層 部分はワンルームマンションを前提に周 辺権利者への共同開発を呼びかけるも断 念。165坪という地積の上,土地が不整 形の為「TANEYA」事業同様,一般社 団AIA の支援を受け暫定開発を目指す 事とした。最初に,新住民と言われる再 開発事業で勝川に移り住んだ層へのアン ケート(2013年実施)から,既存の商店 街には利用したい店が無いという結果が示されたため,以下の通り調査分析を行い, さらに需要を顕在化させるため 20 ~ 30代の比較的若い主婦層にターゲットを絞った ヒアリング(2014年9月実施)を行った。 1)調査分析 エリアマネジメント基本計画を立てるために,各種統計からマーケットを分析し, 数字ベースでエリアの把握を試みた。感覚値は属人的な環境に限定された事実である ことが多くあり,マーケットを考えるにはもう一つ大きなフレームから全体を俯瞰す ることが極めて重要であるからである。以下では人口動態・将来推計人口・移動人口 などから総数とターゲットを,世帯の分析からし,マーケットとしての妥当性を検討 する。 勝川エリア
なお,以下で特に「勝川エリア」と称して分析をしている場合,勝川駅近隣エリアの 丁目(勝川町5丁目~8丁目,松新町1丁目~6丁目,八光町1丁目,旭町1丁目,角 崎町,大和通2丁目,若草通1丁目,柏井町1丁目,3丁目,4丁目)の複合エリアを 指す。45.8ha。 ① 子育て世代が多く,全体的に若い勝川エリア 勝川エリアに住んでいる人口は総数で 8,336人。うち男性が 4,083人,女性が 4,253 人となっている。図1はその人口を年齢区分で切った人口ピラミッドである。 人口ピラミッドの頂点は,男性は 40-44歳の 429人,女性は 35-39歳の 420人。 ついで,男性は 35-39歳の 423人,女性は 40-44歳の 404人となっており,この範 囲が第一頂点となっている。勝川エリアのピラミッドの特徴としては,第二頂点が 0-4歳の男性274人,女性242人になっていることであり,いわゆる「子育て世代」 が多く在住していることがみてとれる。まだ,男女に大きな差がないこともわかる。 図1.平成 26 年勝川駅周辺地区人口(年代・男女別) (出典 : 春日井市 町・丁目別人口)※地区の区分は勝川駅周辺地区都市再生整備計画の区分(p.5)参照
日本全体でみた場合は,第一次ベビーブーム,第二次ベビーブームの影響で,第一 頂点が 50-59歳,第二頂点が 35-39歳となっており,多くのエリアで少子高齢化が 叫ばれている。また,春日井市全体でみた場合も,日本全体と比べたら全体的に少子 高齢化が進んでいない印象を受けるものの,第一頂点が 40-44歳,第二頂点が 65- 69歳となっており,勝川エリアが突出して子育て世代が多いことが分かる。 続いて,将来推計人口を確認する。まずは,人口ピラミッドの変化を確認する。将 来の人口ピラミッドについては,勝川エリアに限定したデータが公開されていなかっ たため,春日井市全体の変化から勝川の変化を予想する。 図2の左が 2010年の春日井市の人口構成,右が 2020年の春日井市の人口構成であ る。2010年地点では第一頂点が 40-44歳,第二頂点が 65-69歳となっていることに 対して,2020年地点では第一頂点が 45-49歳,第二頂点が 70-74歳と,10年間の年 齢スライドは確認できるものの,総数は 2010年305,569人に対し,2020年310,923 と 5,000人の増加が予想されている。 図2.春日井市将来推計人口(2010 年・2020 年比較) (出典 国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口・世帯数」)
② 人口は微増減を繰り返し,増加の可能性も見込めるエリア 少し古いデータとなるが,春日井市が 2006年に策定した長期ビジョンの中で,人口 総数の推移について地区別に出しているので,それによって勝川エリアの人口総数の 推移について確認する。 図3は,平成17年を基準とした増減比であるが,勝川エリアが春日井市の中でも突 出して,2014年まで人口増加を続け,それ以降2020年まで微増減を繰り返しながらゆ るやかに減少していくことが予想されている。減少幅も6年かけて 400人という予測 であり,またこれは中位の予測を採用しているため,これからの施策によってはこれ を食い止め増加に転じることもありうる。 図3.春日井市地区別将来推計人口 (出典:「春日井市新長期ビジョン」『将来人口推計報告書 H18 年』) 日本全体が 2005年から人口減少の局面に入ったことを考えると,春日井市全体は 数少ない人口増加エリアのひとつであり,勝川エリアは今後も減少はゆるやかでマー ケットはさほど縮小しないことが見て取れる。 ③ 1/4の世帯をファミリー世帯が占める勝川エリア 勝川エリアの全世帯は実測値で 3,397世帯であり,その内訳は表1の通りである。 最も多いのは,世帯人員1名で,1,063世帯,ついで2人の 998世帯,3人の 671世帯 となっている。
表1 勝川エリアの世帯構成 (平成 22 年度国勢調査より) 前項で確認したように,勝川エリアはファミリー層の厚さがその特徴であることか ら,ファミリー層の世帯について考える。勝川エリアの年少人口は 1,337人であり, 児童のいる世帯割合が愛知県28.8%,平均児童数1.69人(平成24年度国民生活基礎調 査より)であることを考えると,子どものいる世帯数は約800世帯であると推測する ことができる。 つまり,総世帯数3,397世帯に対し,子育てファミリー層が 25%程度を占めている と考えられる。また,世帯人員が少なくなるほど世帯数が多くなっていることも特徴 的である。 ④ 勝川エリアファミリー世代の消費ボリュームは,41.6億円 前項までで,勝川エリアは子育てファミリー層の人口構成が多く,世帯の 25% を占 めると同時に,日本全国が人口減少の局面に入る中,微増減を繰り返し,人口増の見 込みもあることが明らかとなった。そこで,その強靭な勝川エリアのマーケット規模 がどれぐらいかを本項でみていく。ファミリー層なので,共働きの可能性を除外し, 世帯あたりの稼ぎ口は夫のみと仮定し,人口ピラミッドから親世代は 40-45歳が特 に強く,その世代の平均年収額をみると 5,205,433円である。(厚生労働省の賃金構造 基本統計調査(愛知県)による) 一方,ファミリー層が 800世帯と推測されるので,41.6億円が勝川エリアの各世帯 が年間稼ぎだす力とみることができる。なお,共働きの可能性を除外しているため, リアルなボリュームはこれよりも大きい可能性が極めて高い。また,家計調査から春 日井市の「市町村別1世帯当たり1か月間の収入と支出」から,各家庭の支出先を抽 出したのが表2である。 世帯人員 1人 1,063 世帯 世帯人員 2人 998 世帯 世帯人員 3人 671 世帯 世帯人員 4人 494 世帯 世帯人員 5人 137 世帯 世帯人員 6人以上 34 世帯 合 計 3,397 世帯
表2 春日井市1世帯当たり1か月間の支出 1世帯あたり1か月の支出は勝川エリアも春日井とさほど違いはないと推測される ので,同割合で先ほどの 41.6億円を振り分けたのが,表3の表である。 表3 勝川エリア1世帯当たり1か月間の支出予測(総量) 項目 金額(円) 割合(%) 食料 68,006 18.9 住居 25,015 7.0 光熱・水道 21,638 6.0 家具・家事用品 8,457 2.4 被服及び履物 12,344 3.4 保健医療 9,035 2.5 交通・通信 38,358 10.7 教育 12,604 3.5 教養娯楽 25,749 7.2 その他の消費支出 61,999 17.3 非消費支出 76,160 21.2 項目 金額(円) 割合(%) 食料 78,724 18.9 住居 28,957 7.0 光熱・水道 25,048 6.0 家具・家事用品 9,790 2.4 被服及び履物 14,289 3.4 保健医療 10,459 2.5 交通・通信 44,403 10.7 教育 14,590 3.5 教養娯楽 29,807 7.2 その他の消費支出 71,770 17.3 非消費支出 88,163 21.2
ここから,年間の各項目に対する勝川エリアに絞った総需要金額をみることがで きる。例えば食料品は,7.8億円,住居は,2.8億円,家具・家事用品は 0.9億円と続く。 教育娯楽が住居とほぼ同じ 2.9億円市場がある点は特に興味深い。 なお,冒頭に記述した通り,ごくごく狭い勝川エリアについての需要をここで確認 した一方,春日井市は公共交通の利便性も高く,また車社会でもあるため,突出した ターゲティングに則した店舗集積の出店は周辺商圏に対しても強いスケーラビリティ を発揮し,周辺エリアからより多くの需要を集めることが期待できる。 2)ヒアリング 参加者は 13名。二つのグループに分けて行った。 まず,商店街に欲しい(あったら利用したい)店舗として雑貨店,親子カフェ,子供 の一時預かり(託児所),カラオケ,ロッククライミング(キッズクライミング・ボル ダリング),アートスクール(情緒教育)などが挙げられた。次に商店街にあったら良 い機能として親子で色んな事が出来る場所(レンタルキッチン&スペース),授乳とか を含めたトイレなどのファシリティが揃っている場所,小公園。子供の手洗い場所な どが挙げられ,子供と過ごせる場所が無いという意見が多く聞かれた。さらに自身の 習い事への関心も高くヨガ,健康体操,エステ,習字,着付けなどの教室に託児が付い ていれば利用したい意見も多く聞かれた。モノよりコト(サービス)への関心が高く, 生活時間の殆どが子育てに消費されていることから,遊ばせる,学ばせるという子供 の時間をアウトソーシング出来る需要はかなり高いと思われた。まとめとして,シェ アする託児施設を中核にして,教室系の改正で使う部門,飲食(カフェ)部門,子供が 体を動かす部門,親子が両方楽しめる部門,オシャレ物販(時間消費型)部門,保育系 の専門学校,カラオケサービスなどの娯楽部門などを配置し月額課金システムで利用 しやすくする方向で検討を始める事とした。 この事業は,既存建築物のリノベーションではなく,土地の取得から建物の建設ま で一貫して行う事になるので資金計画等には慎重に取り組む必要がある。TANEYA プロジェクト同様,テナントを先付けし,家賃収入を確定させてから,返済可能な金 額に基づき総事業費を確定するという手法である。もちろん民間資金のみで補助金は 一切入っていない。単なる思いや理想を手前から積み上げるとファイナンスに無理が 生じ,事業そのものが破綻する懸念があるからだ。現在,入居者が決まり実施設計の 段階だが,今秋には新しい勝川の核となる施設が誕生することになる。
5.まとめ
脱補助金を掲げて民間資金によるまちづくりの重要性を,自らが実践することで得 たのは,やはり「みんなでやらない」という結論だ。それにはパブリックマインドを 持った資金的にも自立した民間を育てることが大切だが,その活動は緒に就いたとこ ろである。公民連携,コンセッション方式,BID,SPC など欧米からの手法も伝わっ てきている。「創意を尊びつつ良い所は真似ろ」とは商業界主幹の故倉本長治の言葉で ある。ただ真似るのは結果ではなく過程であることは言うまでもない。参考文献
辻井啓作著『なぜ繁盛している商店街は1%しかないのか』,阪急コミュニケーションズ発行 清水義次著『リノベーションまちづくり』,学芸出版社 木下斉・広瀬郁著『まちづくりデッドライン』日経 BP社6. 郷土史家からみた勝川の歴史資源に対する意識
― 勝川ブランド構築のために
川田 健(愛知文教大学教授) キーワード:地域ブランド,郷土史,勝川6.1 問題の所在
本プロジェクトの母体である二水会は,商店街が,人口減少,高齢人口の増加が不 可避な 21世紀の日本においても,継続的に発展できる仕組み作りを考えることでは じまった。商店街を,地域アイデンティティを支える文化・交流・情報発信拠点や福 祉拠点等の,中心市街地の中核機能としてのより公共的な機能を担いうるものと想定 し,それをサポートする仕組み作りを討議してきた。そして,本プロジェクトでは, そうした商店街のあるまちで暮らすライフスタイルを「勝川スタイル」と名付け,ど のようなものが「勝川スタイル」たりうるかの基礎調査を行うことを目的としている。 住民サイドからみて「勝川スタイル」で暮らすことが一種の精神的満足感をもたらす ものであるならば,その「勝川スタイル」が目指すものは一種の地域ブランドの構築 であると考える。ここでは地域ブランド学を主唱した村山研一の議論によりながら, 勝川スタイルとブランドについて考察していく。 村山は,地域ブランドということばが「地域の産品に地域名をかぶせてブランド化 を計る」すなわち「地域産品を地域産品としてブランド化を計る(狭義)」という意味 と「地域そのもののブランド価値を高める」すなわち「場所そのもののブランド化を 計る」という二種類の用法で使用されているとした上で,前者を「産品ブランド(も しくは「狭義の地域ブランド」)」後者を「地域ブランド(もしくは広義の地域ブラン ド)」と定義づける(村山,2007,p.1)。また,村山は,「産品」は,単に「もの」だけで なく,「景色,観光,地域で可能となる体験」などをも含む広範な概念として理解する 必要があると論ずる(村山,2007,p.3)。さらに産品ブランドと地域ブランドの関係 については,図1のように整理した上で,「「産品ブランド」 と 「地域ブランド」 の間に フィードバック関係を作り出し,相互強化のループを作り出すのが地域ブランド戦略 である(村山,2007,p.3)。」と説明する。つまり,個々の産品ブランドによって,ある 種の好ましいイメージが地域全体に与えられ,その与えられたイメージにより,さら に個々の産品ブランドに付加価値が生まれる,ということであろうと思われる。これ を,本プロジェクトが提案しようとしている「勝川ブランド」に当てはめて論じるな らば,「勝川スタイル」を構成する個々の要素,例えば本稿岡本による調査の中で指摘 される「人情のある商店街」「ファミリーや若者でにぎわう弘法市」などが,図1でいう所の産品ブランドで,それによって意味づけられ,イメージが統合された広義のブ ランドすなわち,図1で「地域ブランド」とされている部分が「勝川スタイル」となろ う。ただし,「勝川スタイル」は広義の地域ブランドの終着ではない。仮に終着点を 「勝川ブランド」と名付けるならば,「勝川ブランド」と「勝川スタイル」はあたかも入 れ子のような関係であろう。個々のライフスタイルや,生活インフラの要素の統合体 が「勝川スタイル」で,さらにこの「勝川スタイル」は,「勝川」という広義の地域ブラ ンドの中の一つの産品ブランドにもなる。産品ブランドとしての「勝川スタイル」は, たとえば,食用サボテンなど,地元の特産品を次々と開発する活動的な商店街とか, 徳川家康ともつながりのある歴史資源といった要素とともに広義の地域ブランドのイ メージに統合され,勝川スタイルに再帰してイメージをより豊かにする。本論では, 「勝川スタイル」のイメージを補完し,より好ましい方向にブランドを構築できる要素 にはどういうものが考えられるのかについて,私見を述べたいと思う。あらかじめ方 向性を述べるならば,勝川の持つ歴史資源に対する住民の意識,すなわち何を歴史資 源として大切に考えているのか,を軸に,可能性と現状の問題点を述べてみたい。 図1 地域ブランドと産品ブランド (出自 村山 2007.p.2 図1をもとに筆者作成)
6.2 地域ブランド構築の主体と調査の現状
本題に入る前に,「勝川」という地域ブランドを構築する主体は誰なのかというこ とについて考えたい。坪井(2006)では,地域ブランド構築の主体について, 観光地や商店街のブランド化のケースでは,もちろん当事者の団体等が主体と なることが多いが,農水産品や加工特産品のケースと比べて複雑である。という のは,その地域ブランドを構成する要素は,その地域内の旅館や商店,自然や住 民,その地域を訪れる顧客まで,さまざまなものがあり,さまざまな人々が関わ るからである。したがって,いわば地域ブランド構築の主体作りから始め,さま ざまな利害関係者を取り込んでいくことが求められる。(坪井,2006,p.195) と論じている。この「さまざまな人々」は,勝川では,およそ以下のように整理できよう。 1) 商店主 1-1. 店舗を自前で持ち,長期間商店街で商業活動を行っている者。住居一体型 の場合,同時に古くからの住民でもある。 1-2. 比較的最近になり,商店街で商業活動を行っている者。「TANEYA プロ ジェクト」(本稿,水野報告参照)などの公募により新たに商業活動を行っ ている者を含む。1-1との相違点は,商業経営の資産を親族から引き継 いでおらず,事業者の意志で新たに勝川商店街に出店した者ということで ある。 1-3. チェーン店の飲食店など,経営者が地域と直接関わらない者。 2) 住民 2-1. 出生時より勝川地区に居住している者。 2-2. 他所から転居して勝川地区に居住している者1)。 3) 地域を訪れる顧客 3-1. 商店街内の飲食店や店舗を利用する者。 3-2. 弘法市2)などのイベントに訪れる者。 勝川を現状どうとらえ,どのようなイメージを持っているか。何を好ましいととら え,何を好ましくないと考えているか。それを把握するには,この3種の主体の意識 をそれぞれ観ていく必要があろう。この中で一番調査が進んでいるのが1)の商店主 である。本プロジェクトの母体である二水会は商店街との連携を念頭に置いたもの で,しかも商店街の中心人物が主要メンバーであることもあり,もっとも協力を得ら れやすいことが大きい。それに加え,生業が勝川で行われている層は,単に居住して いる層に比べて,地域に対する関心が高いことも調査を進めやすくしている要因であ
ろう3)。2)に対する調査としては,勝川駅前商店街が 2012年10月に行った「勝川駅 前商店街と地区に関する地区住民ニーズ調査」がある。これは,勝川地区に居住する 回答者の,商店街の目的別利用頻度4)や弘法市の参加回数やその時の店舗利用など, 住民の商店街の利用実態やニーズを把握する項目の他,防犯カメラ設置に関する考え や,商店街に今後求められる方向性について調査されている。 さて,先述したように,二水会はもともと上記分類の1)との協働を想定したもの である。しかし,議論の中で常に確認されていたのは,「商店街の活性化は『持続可能 なまちづくり』のを実現するためのプロセスである」ということである。つまり,商 店街に単にモノを売買する以上の機能を認め,商店街をプラットホームに住民相互が 活動をすることにより,住民が主体的に住みやすいまちづくりに取り組み,まち全体 の価値を高めることを目標とする。そのためには2),3)をまちづくりの主体に組み 込む必要があるが,そのための意識調査はまだ始まったばかりと言える。意識調査の 成果としては,たとえば,本会と主要メンバーが重なる,勝川まちづくりのためのプ ラットフォーム「まちエン」(公式サイト http://machien.jp/)で開催された「勝川ま ちあるき」がある。これについては岡本の報告を参照されたいが,住民に直接まちを 歩いてもらい,ワークショップを通じて魅力や問題点を共有し合うスタイルは,さま ざまな立場の人の意見を吸収するのに有効である。さらに,前提知識なく気軽に参加 できるため,これを契機として地域に関心を持ってもらうことも期待でき,現にそう した層の参加を得ている。 そこで本稿では,敢えて逆の立場の住民の意識に焦点を当てることにする。すなわ ち地域のことを主体的に理解し,伝承しようと取り組んできた住民である。そうした 人が地域の歴史をどうとらえ,何を誇りと思っているか,ということを見ていきたい。
6.3 郷土史家から見た勝川
居住している地域資源の何に価値を住民が見いだしているかを見る方法としては, アンケートやインタビューの他,地域住民が編集・発行した,地域に関する印刷物を 参考にすることも有効であろう。印刷物として書籍化するのは,インターネットに上 げるのに比べて時間的,経済的負担が大きいがゆえに,伝える努力に対するモチベー ションは高く,内容は本当に伝えたいことに厳選されると推測できるからである。調 査としては,春日井市図書館のデータベースで,キーワード「勝川」を手がかりに, もっぱら勝川について取り扱われている図書を検索して読解し,そこでの記述を通じ て,まちの歴史に対する思いを読み取っていくこととした。データベース上では,該 当する印刷物は 24点所蔵されており5)(別表参照),それは大きく①「史蹟や地域の 歴史・地理に関わるもの」8点,②「商店街及び勝川駅前再開発に関わるもの」8点6),③「勝川廃寺(後述)及び関連発掘調査に関わるものの発掘調査にかかわるもの」8 点に分けられる。このほか,『春日井市史』地区誌編第3巻に勝川地区が掲載されて いる。①に分類される図書のうち,2点は個別の施設あるいは催物についてなので, それ以外のものを主に資料として用いることとする。 別表にあるように,勝川の歴史や文化などについて,住民がまとめた図書の嚆矢は 1976年の『勝川風土記』のようである7)。ここで記述されている内容の一部は後述の 『勝川への想い』にも転載されている。著者の大脇二三氏は,地元では郷土史家として 知られた人物のようで,大脇(1975,p44)の略歴によると 1911(明治44)年生まれ, 1930年に東春日井群勝川第一尋常小学校勤務以来,名古屋市,春日井市,尾張旭市の 小中学校に勤務し,1969年より東海工業高校に勤務とある。また,其の一「勝川の地 名の由来について」項に,「かちがわ」の地名の由来をさぐるにあたっていつも思いお こすのは子どもの頃に親から聞かされたあの長久手の役のくだりの一節です。」(p. 1, ルビは省略した)とあることから,幼少時より当地に住み,氏の親もおそらくはある 程度長い期間当地に住んでいた人物だと推定できる。 該書は手書き原稿をそのまま B 4用紙に印刷し,袋とじにしてステープラー止めし たものである。原版と思われる原稿が本に挟まっていたが,これがボールペン書きで あったことから,印刷はいわゆる鉄筆にガリ版ではなく,昭和50年代に学校でよくみ られた謄写FAXを用いたのではないかと推測している。 該書は細かく分冊されている。構成は以下の通り。( )内の年日は奥付などに記載 されている通りである。 ①勝川の地名の由来について(奥付なし)p.1-12 /②[其二]惣中の譜(昭和51年5 月)p.13-17 /③[続編]天人社,p.18-25 /④地蔵寺(昭和51年5月)p.26-34〈注: ③・④は合冊〉/⑤[第二輯]大清寺(昭和51年6月)p.35-46 /⑥[勝川風土記シリーズ] 勝川古墳群(昭和51年10月)p.47-56 /⑦[勝川風土記シリーズ]年中行事(昭和51年 10月)p.57-62 /⑧[勝川風土記シリーズ]勝川に最初に住みついた人々1(昭和51年 11月)/⑨[勝川風土記シリーズ]勝川に最初に住みついた人々 其の2(昭和51年11 月)p.71-78 /⑩[勝川風土記(宗教)](ページ表記なし)人物点描(昭和53年4月)p.79 -88〈表紙なし〉/⑪勝川とその周辺の橋について(昭和53年5月)p.89-104〈表紙・ 書名なし〉/このほか,「十二篇」「大東亜戦争戦没者墓碑銘」上巻と称して戦没者の詳 細を記しているものがある8)。 序によると,当時(奥付はないが,おそらく 1976年)より 15年ほど前,すなわち 60 年代初頭に勝川の歴史について執筆した原稿の一部があったらしい。その目的につい て「世の人人に一つのきっかけを作り出すたたき台踏み台にしてもらって更に新しい 勝川の歴史の一ページが書き加えられることを念願としたものである。」と説明され
ている。(大脇,1976.まえがきにかえて)9)ところがほとんど原稿が散逸してしまっ たので,あらためて作成したとも述べられている(同前)。⑥以降は「勝川風土記シ リーズ」(下線筆者)とあること,「勝川の歴史を」とあることなどから,最初の原稿で 書かれていた項目は①のみか,①~④,あるいは①~⑤までかと思われるが,もとよ り推測の域を出ない。 ただ,いずれにせよ,勝川の歴史で重要なのは,地名の由来,惣中の歴史,場所では 地蔵寺,天神社,大清寺が重要と大脇氏は考えていたということになろうか。 さて,勝川の歴史を考えるきっかけとなり,さらに歴史をつないでいってほしいと いう大脇氏の願いは,『「勝川への想い」』(2013)に引き継がれる。該書は,勝川資料 館運営委員会の編,編集後記には,発刊の動機としておよそ次のようなことが述べら れている。 勝川には郷土史を研究しているよき先輩がおり,成果も発表されているが,一般の 目に触れることが少ないことが遺憾で広くその成果を知らせたいと思った。また,毎 年発行されている勝川区報の記事も,勝川を知る上で参考になる。本書を通じて郷土 愛が育まれて伝承されることを望む(pp.200-201)。該書は,先述「勝川風土記」の ほか,勝川区報に掲載されている記事が集められており,地元で大切にしたいことに ついて,住民は何と考えているかを知るてがかりとなる。 該書の中でも,やはり地蔵寺,天神社,大清寺のことは紙幅を割いて紹介している。 以下,この3箇所につき,どのように記述されているか見てみる。 大清寺は,現在の山号は龍源山だが,開山当初は醍醐山大清寺といった。大清寺は, 勝川の地名と徳川家康にまつわる次のエピソードがよく知られている。徳川と豊臣が 小牧長久手の戦いで衝突したときに,家康軍が大清寺で小休止をしていた。家康が地 名を訊ねたところ,「勝川」とは縁起がよいと言い,地名を答えた長谷川勘助なる人物 に褒美をとらせた。勝川と家康とを結ぶエピソードは,住民にとって,まちの魅力を 感じるものなのであろう。 地蔵寺(春日井市大和通1-7-3)は,現在は天神社(春日井市勝川町1-3)か ら約1.7km離れた所にあるが,春日井市史によると,地蔵寺はもともと天神社北側に 写真 1.大清寺 写真 2.地蔵寺