石川県の新図書館構想と公文書館 早川報告コメン ト
著者 見瀬 和雄
著者別表示 MISE Kazuo
雑誌名 北陸史学
号 68
ページ 77‑80
発行年 2019‑12‑30
URL http://doi.org/10.24517/00062405
石 川 県 の 新 図 書 館 構 想 と 公 文 書 館
早 川 報 告
コ メン ト見 瀬 和 雄
は じ め に
北 陸 史 学 会 第 六
〇 回 大 会 特 別 企 画 と し て
、
「 石 川 県 に お け る 史 料 保 存 を 考 え る
」 と 題 す る 研 究 会 が 開 か れ
、 早 川 和 宏 氏 が
「 石 川 県 に お け る 公 文 書 等 の 管 理 と 課 題
」 と 題 し て 報 告 を 行 っ た
。 本 稿 は
、 こ の 早 川 報 告 に つ い て
、 大 会 当 日 に 加 え た コ メ ン ト を も と に
、若 干 の 所 感 を 述 べ る も の で あ る
。
石 川 県 は
、 県 立 図 書 館 の 老 朽 化 や 耐 震 検 査 不 適 合
、 閲 覧 ス ペ ー ス の 狭 隘 さ
、 分 散 書 庫
、 駐 車 ス ペ ー ス の 制 約 と い っ た 環 境 に あ っ た こ と か ら
、こ れ ら の 諸 問 題 を 解 決 す る た め
、 旧 金 沢 大 学 工 学 部 跡 地 を 取 得 し
、 同 地 に 新 石 川 県 立 図 書 館 を 建 設 す べ く
、 平 成 二 九 年 三 月
、「 新 石 川 県 立 図 書 館 構 想
」
( 以 下
「 新 構 想
」 と 略 す る
) を 打 ち 立 て
、 公 表 し た
。
そ の 中 で は
、「 図 書 館 法
」に 基 づ い て 新 図 書 館 を 構 想 す れ ば
、要 件 を 満 た す よ う に も 思 わ れ る が
、「 新 た に 公 文 書 館 の 機 能 を 備 え
」 と 記 し
、 公 文 書 館 の 機 能 を も 具 備 す る こ と が 謳 わ れ た
。 こ れ は
、 昨 今 設 立 さ れ る 図 書 館 が 公 文 書 館 を 併 設 な い し は 図 書 館 の 機 能 の 中 に 公 文 書 館 の 機 能 を 具 備 す る 傾 向 に 倣 っ た も の と 見 る こ と が で き る が
、 石 川 県 に お い て は 特 に
、 長 い 間 公 文 書 館 の 設 立 に 心 血 を 注 い だ 人 た ち が 多 く お ら れ た 歴 史 か ら
、 特 に 意 味 の 深 い こ と で あ り
、 検 討 委 員 会 を 構 成 す る 諸 氏 の 見 識 と し て
「 公 文 書 館 機 能
」 を 挙 げ ら れ た こ と を 先 ず 第 一 に 評 価 し た い
。 そ の 上 で い か な る 公 文 書 館
( 機 能
) が 構 想 さ れ て い る の か
、 そ れ は あ る べ き 公 文 書 館 の 姿 に 照 ら し て ど う で あ ろ う か が 問 題 に な る
。以 下
、 こ の 点 に つ い て 若 干 の 所 感 を 述 べ る
。
一
、 法 が 示 す 公 文 書 館
公 文 書 館 を 考 え る に 当 た り
、先 ず
、「 公 文 書
」は 法 に よ っ て ど の よ う に 定 義 さ れ て い る の か を 見 る と
、
「「 公 文 書 館 法
」
( 昭 和 六 二 年 制 定
、平 成 一 一 年 改 正
)第 二 条 に お い て
、「
「 公 文 書 等
」 と は
、 国 又 は 地 方 公 共 団 体 が 保 管 す る 公 文 書 そ の 他 の 記 録( 現 有 の も の を 除 く
)を い う
。」 と 規 定 さ れ て い る
。
告 で あ っ た と 考 え る
。 二
、 公 文 書 館 の 機 能
「 新 構 想
」で は
、「 新 た に 公 文 書 館 の 機 能 を 備 え
」と の み あ り
、 設 置 形 態 に つ い て は 特 段 の 言 及 を し て い な い
。 し か し
、 上 記 表 現 を 素 直 に 読 め ば
、 公 文 書 館 の 設 置 ま で は 考 え ら れ て い な い よ う で あ る
。 と す る と
、 新 図 書 館 の 中 に
、 公 文 書 館 の 機 能 を 備 え た 部 署 が 設 け ら れ る こ と に な る
。 こ こ で 問 題 な の は
、 国 が
「 図 書 館 法
」 と は 別 に
「 公 文 書 館 法
」 を 設 け て い る こ と の 意 味 で あ る
。 公 文 書 館 で 取 り 扱 う も の は
、 特 定 歴 史 公 文 書 等 で あ り
、 こ れ は そ の 性 格 上 一 個 し か 存 在 し な い も の で あ る
。 そ の 点
、 印 刷
・ 頒 布 さ れ た 一 般 図 書 と は 性 格 が 異 な り
、 調 査
・ 整 理
・ 管 理
・ 保 存
・ 利 用 の あ ら ゆ る 面 に お い て 一 般 図 書 と は 異 な っ た 扱 い を 必 要 と す る も の で あ る
。 公 文 書 館 に
「 歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 等 に つ い て 調 査 研 究 を 行 う 専 門 職 員 を 置 く
」と し て い る の は
、 そ の 取 り 扱 う 公 文 書 等 の 特 殊 性 に 由 来 す る の で あ る
。
図 書 館 も
、「 図 書 館 法
」 に 規 定 さ れ て い る よ う に
、「 郷 土 資 料
・ 地 方 行 政 資 料
」 の 収 集 に 努 め る こ と に な っ て お り
、 そ の 他 の 業 務 と も 併 せ て
「 専 門 的 職 員
( 司 書 及 び 司 書 補
)」
が 置 か れ る こ と に な っ て お り
、 こ の 点 で は 公 文 書 館 と 共 通 す る 面 が あ る が
、 公 文 書 館 に 配 置 さ れ る 専 門 職 員 の よ う な 調 査 研 究 は 規 定 さ れ て い な い
。「 図 書 館 法
」と は 別 に「 公 文 書 館 法
」 を 立 て な け れ ば な ら な か っ た の は
、 こ う し た 両 者 の 性 格 の 違 い に よ る も の で あ り
、 こ れ を 一 つ の 施 設 の 中 に 入 れ る こ と は
、 物 理 的 に は 可 能 で あ る と し て も
、 組 織 と し て は
、 別 個 の 組 織 で 運 用 す べ き で は な い か と 思 わ れ る
。 ま た
、 公 文 書 館 の 取 り 扱 う 対 象 は
「 特 定 歴 史 公 文 書 等
」 で あ り
、 歴 史 資 料 と し て 重 要 な も の で 公 文 書 館 等 に 移 管 さ れ た 資 料 で あ る の で
、 内 容 は 歴 史 学 に 大 き く 傾 く
。 と す れ ば
、 そ の 調 査 研 究 に 当 た る 専 門 職 員 に は
、 歴 史 学 に 関 す る 高 度 の 専 門 的 知 識 と 技 術
、 見 識 が 求 め ら れ る
。 近 世 に は
、 村 役 人 文 書
・ 町 役 人 文 書 な ど が ま だ 多 数 個 人 宅 に 残 さ れ
、 時 と し て 廃 棄 さ れ る 場 合 も あ る 中 で
、 こ れ ら も 公 文 書 館 な ど に 寄 贈・ 寄 託 さ れ れ ば 重 要 歴 史 公 文 書 等 に な り
、調 査 し
、 利 用 に 供 す る 必 要 が 出 て く る
。 ま た 近 代 の 戸 長 役 場 文 書 や 郡 役 所 文 書 等 の 役 場 文 書 な ど も 収 集 の 対 象 で あ り
、 そ の 場 合 に は
、 く ず し 字 の 解 読 も 前 提 と な り
、 相 応 の 専 門 的 技 量 を 要 し た 職 員 の 対 応 が 求 め ら れ る
。「 公 文 書 館 法
」に は
、「 当 分 の 間
、 地 方 公 共 団 体 が 設 置 す る 公 文 書 館 に は
、 第 四 条 第 二 項 の 専 門 職 員 を 置 か な い こ と が で き る
」 と し て い る が
、
ま た
、「 公 文 書 等 の 管 理 に 関 す る 法 律
」( 平 成 二 一 年 制 定
, 以 下
「 公 文 書 等 管 理 法
」 と 略 称 す る
) 第 二 条 第 八 項 に お い て
、「 こ の 法 律 に お い て「 公 文 書 等
」と は
、次 に 掲 げ る も の を い う
」 と し て
「 一
、 行 政 文 書
、 二
、 法 人 文 書
、 三
、 特 定 歴 史 公 文 書 等
」と 規 定 し て い る
。こ の 内
、「 行 政 文 書
」は
「 行 政 機 関 の 職 員 が 職 務 上 作 成 し
、又 は 取 得 し た 文 書( 注 記 略
) で あ っ て
、 当 該 行 政 機 関 の 職 員 が 組 織 的 に 用 い る も の と し て
、当 該 行 政 機 関 が 保 有 し て い る も の
」を い い
、
「 法 人 文 書
」 は
、「 独 立 行 政 法 人 等 の 役 員 又 は 職 員 が 職 務 上 作 成 し
、又 は 取 得 し た 文 書 で あ っ て
、 当 該 独 立 行 政 法 人 等 が 保 有 し て い る も の
」で あ る と す る
。さ ら に「 特 定 歴 史 公 文 書 等
」と は
、
「 歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 そ の 他 の 文 書
」を い い
、そ の 内
、「 公 文 書 等 管 理 法
」第 八 条 第 一 項
・第 一 一 条 第 四 項
・第 一 四 条 第 四 項 の 規 定 に 基 づ い て 国 立 公 文 書 館 等 に 移 管 さ れ た も の
、 法 人 そ の 他 の 団 体
( 注 記 略
) ま た は 個 人 か ら 国 立 公 文 書 館 等 に 寄 贈 さ れ
、 又 は 寄 託 さ れ た も の を い う
。
こ の よ う な 定 義 の も と に
、「 公 文 書 館 法
」で は
、第 三 条 で
「 国 及 び 地 方 公 共 団 体 は
、歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 等 の 保 存 及 び 利 用 に 関 し
、 適 切 な 措 置 を 講 ず る 責 務 を 有 す る
」 と し
、そ の 責 務 を 果 た す た め
、「 歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 等
( 注 記 略
) を 保 存 し
、 閲 覧 に 供 す る と と も に
、 こ れ に
関 連 す る 調 査 研 究 を 行 う こ と を 目 的 と す る 施 設
」( 第 四 条
) と し て
、公 文 書 館 の 設 置 を 規 定 し
、そ こ に
、「 館 長
、歴 史 資 料 と し て の 重 要 な 公 文 書 等 に つ い て の 調 査 研 究 を 行 う 専 門 職 員 そ の 他 の 職 員
」 の 配 置 を 求 め た の で あ る
。
こ の よ う に 見 る な ら ば
、行 政 機 関 や 法 人 等 で 作 成・ 使 用・ 保 有 さ れ た 公 文 書 等 の 内
、 歴 史 資 料 と し て 重 要 な も の を 保 存 し
、 閲 覧 に 供 す る こ と は 国 や 地 方 公 共 団 体 の 責 務 の 一 つ で あ る と し て よ い で あ ろ う
。 そ れ は
、 公 文 書 等 が
「 健 全 な 民 主 主 義 の 根 幹 を 支 え る 国 民 共 有 の 知 的 資 源
」で あ り
、「 主 権 者 で あ る 国 民 が 主 体 的 に 利 用 し 得 る も の で あ る
」 こ と に よ る
(「 公 文 書 管 理 法
」 第 一 条
)。 と す れ ば
、 公 文 書 館 は
、 法 的 に 見 て 設 置 さ れ て い な け れ ば な ら な い 施 設 で あ り
、 こ れ ま で の 石 川 県 は き わ め て 不 十 分 な 状 態 に あ っ た と い わ ざ る を 得 な い
。
今 回
、「 新 構 想
」の 中 に
、公 文 書 館 の 機 能 を 具 備 す る と 謳 っ た の は
、 重 要 な 見 識 で あ っ た が
、 や や 遅 き に 失 し た 感 を 否 め な い
。 し か し
、 ひ と た び 俎 上 に 上 れ ば
、 こ れ を 千 載 一 遇 の 機 会 と し て
、 よ り よ い
、 県 民 の ニ ー ズ に 応 え た も の に す る こ と が 求 め ら れ る で あ ろ う
。 そ の 意 味 で
、 今 回 の 北 陸 史 学 会 の テ ー マ 設 定 は 時 宜 に か な っ た も の で あ り
、 ま た そ れ に 応 え た 早 川 報 告 は
、 問 題 の 有 り 様 を 解 明 し た 優 れ た 報
告 で あ っ た と 考 え る
。 二
、 公 文 書 館 の 機 能
「 新 構 想
」で は
、「 新 た に 公 文 書 館 の 機 能 を 備 え
」と の み あ り
、 設 置 形 態 に つ い て は 特 段 の 言 及 を し て い な い
。 し か し
、 上 記 表 現 を 素 直 に 読 め ば
、 公 文 書 館 の 設 置 ま で は 考 え ら れ て い な い よ う で あ る
。 と す る と
、 新 図 書 館 の 中 に
、 公 文 書 館 の 機 能 を 備 え た 部 署 が 設 け ら れ る こ と に な る
。 こ こ で 問 題 な の は
、 国 が
「 図 書 館 法
」 と は 別 に
「 公 文 書 館 法
」 を 設 け て い る こ と の 意 味 で あ る
。 公 文 書 館 で 取 り 扱 う も の は
、 特 定 歴 史 公 文 書 等 で あ り
、 こ れ は そ の 性 格 上 一 個 し か 存 在 し な い も の で あ る
。 そ の 点
、 印 刷
・ 頒 布 さ れ た 一 般 図 書 と は 性 格 が 異 な り
、 調 査
・ 整 理
・ 管 理
・ 保 存
・ 利 用 の あ ら ゆ る 面 に お い て 一 般 図 書 と は 異 な っ た 扱 い を 必 要 と す る も の で あ る
。 公 文 書 館 に
「 歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 等 に つ い て 調 査 研 究 を 行 う 専 門 職 員 を 置 く
」と し て い る の は
、 そ の 取 り 扱 う 公 文 書 等 の 特 殊 性 に 由 来 す る の で あ る
。
図 書 館 も
、「 図 書 館 法
」 に 規 定 さ れ て い る よ う に
、「 郷 土 資 料
・ 地 方 行 政 資 料
」 の 収 集 に 努 め る こ と に な っ て お り
、 そ の 他 の 業 務 と も 併 せ て
「 専 門 的 職 員
( 司 書 及 び 司 書 補
)」
が 置 か れ る こ と に な っ て お り
、 こ の 点 で は 公 文 書 館 と 共 通 す る 面 が あ る が
、 公 文 書 館 に 配 置 さ れ る 専 門 職 員 の よ う な 調 査 研 究 は 規 定 さ れ て い な い
。「 図 書 館 法
」と は 別 に「 公 文 書 館 法
」 を 立 て な け れ ば な ら な か っ た の は
、 こ う し た 両 者 の 性 格 の 違 い に よ る も の で あ り
、 こ れ を 一 つ の 施 設 の 中 に 入 れ る こ と は
、 物 理 的 に は 可 能 で あ る と し て も
、 組 織 と し て は
、 別 個 の 組 織 で 運 用 す べ き で は な い か と 思 わ れ る
。 ま た
、 公 文 書 館 の 取 り 扱 う 対 象 は
「 特 定 歴 史 公 文 書 等
」 で あ り
、 歴 史 資 料 と し て 重 要 な も の で 公 文 書 館 等 に 移 管 さ れ た 資 料 で あ る の で
、 内 容 は 歴 史 学 に 大 き く 傾 く
。 と す れ ば
、 そ の 調 査 研 究 に 当 た る 専 門 職 員 に は
、 歴 史 学 に 関 す る 高 度 の 専 門 的 知 識 と 技 術
、 見 識 が 求 め ら れ る
。 近 世 に は
、 村 役 人 文 書
・ 町 役 人 文 書 な ど が ま だ 多 数 個 人 宅 に 残 さ れ
、 時 と し て 廃 棄 さ れ る 場 合 も あ る 中 で
、 こ れ ら も 公 文 書 館 な ど に 寄 贈・ 寄 託 さ れ れ ば 重 要 歴 史 公 文 書 等 に な り
、調 査 し
、 利 用 に 供 す る 必 要 が 出 て く る
。 ま た 近 代 の 戸 長 役 場 文 書 や 郡 役 所 文 書 等 の 役 場 文 書 な ど も 収 集 の 対 象 で あ り
、 そ の 場 合 に は
、 く ず し 字 の 解 読 も 前 提 と な り
、 相 応 の 専 門 的 技 量 を 要 し た 職 員 の 対 応 が 求 め ら れ る
。「 公 文 書 館 法
」に は
、「 当 分 の 間
、 地 方 公 共 団 体 が 設 置 す る 公 文 書 館 に は
、 第 四 条 第 二 項 の 専 門 職 員 を 置 か な い こ と が で き る
」 と し て い る が
、
ま た
、「 公 文 書 等 の 管 理 に 関 す る 法 律
」( 平 成 二 一 年 制 定
, 以 下
「 公 文 書 等 管 理 法
」 と 略 称 す る
) 第 二 条 第 八 項 に お い て
、「 こ の 法 律 に お い て「 公 文 書 等
」と は
、次 に 掲 げ る も の を い う
」 と し て
「 一
、 行 政 文 書
、 二
、 法 人 文 書
、 三
、 特 定 歴 史 公 文 書 等
」と 規 定 し て い る
。こ の 内
、「 行 政 文 書
」は
「 行 政 機 関 の 職 員 が 職 務 上 作 成 し
、又 は 取 得 し た 文 書( 注 記 略
) で あ っ て
、 当 該 行 政 機 関 の 職 員 が 組 織 的 に 用 い る も の と し て
、当 該 行 政 機 関 が 保 有 し て い る も の
」を い い
、
「 法 人 文 書
」 は
、「 独 立 行 政 法 人 等 の 役 員 又 は 職 員 が 職 務 上 作 成 し
、又 は 取 得 し た 文 書 で あ っ て
、 当 該 独 立 行 政 法 人 等 が 保 有 し て い る も の
」で あ る と す る
。さ ら に「 特 定 歴 史 公 文 書 等
」と は
、
「 歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 そ の 他 の 文 書
」を い い
、そ の 内
、「 公 文 書 等 管 理 法
」第 八 条 第 一 項・ 第 一 一 条 第 四 項・ 第 一 四 条 第 四 項 の 規 定 に 基 づ い て 国 立 公 文 書 館 等 に 移 管 さ れ た も の
、 法 人 そ の 他 の 団 体
( 注 記 略
) ま た は 個 人 か ら 国 立 公 文 書 館 等 に 寄 贈 さ れ
、 又 は 寄 託 さ れ た も の を い う
。
こ の よ う な 定 義 の も と に
、「 公 文 書 館 法
」で は
、第 三 条 で
「 国 及 び 地 方 公 共 団 体 は
、歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 等 の 保 存 及 び 利 用 に 関 し
、 適 切 な 措 置 を 講 ず る 責 務 を 有 す る
」 と し
、そ の 責 務 を 果 た す た め
、「 歴 史 資 料 と し て 重 要 な 公 文 書 等
( 注 記 略
) を 保 存 し
、 閲 覧 に 供 す る と と も に
、 こ れ に
関 連 す る 調 査 研 究 を 行 う こ と を 目 的 と す る 施 設
」( 第 四 条
) と し て
、公 文 書 館 の 設 置 を 規 定 し
、そ こ に
、「 館 長
、歴 史 資 料 と し て の 重 要 な 公 文 書 等 に つ い て の 調 査 研 究 を 行 う 専 門 職 員 そ の 他 の 職 員
」 の 配 置 を 求 め た の で あ る
。
こ の よ う に 見 る な ら ば
、行 政 機 関 や 法 人 等 で 作 成・ 使 用・ 保 有 さ れ た 公 文 書 等 の 内
、 歴 史 資 料 と し て 重 要 な も の を 保 存 し
、 閲 覧 に 供 す る こ と は 国 や 地 方 公 共 団 体 の 責 務 の 一 つ で あ る と し て よ い で あ ろ う
。 そ れ は
、 公 文 書 等 が
「 健 全 な 民 主 主 義 の 根 幹 を 支 え る 国 民 共 有 の 知 的 資 源
」で あ り
、「 主 権 者 で あ る 国 民 が 主 体 的 に 利 用 し 得 る も の で あ る
」 こ と に よ る
(「 公 文 書 管 理 法
」 第 一 条
)。 と す れ ば
、 公 文 書 館 は
、 法 的 に 見 て 設 置 さ れ て い な け れ ば な ら な い 施 設 で あ り
、 こ れ ま で の 石 川 県 は き わ め て 不 十 分 な 状 態 に あ っ た と い わ ざ る を 得 な い
。
今 回
、「 新 構 想
」の 中 に
、公 文 書 館 の 機 能 を 具 備 す る と 謳 っ た の は
、 重 要 な 見 識 で あ っ た が
、 や や 遅 き に 失 し た 感 を 否 め な い
。 し か し
、 ひ と た び 俎 上 に 上 れ ば
、 こ れ を 千 載 一 遇 の 機 会 と し て
、 よ り よ い
、 県 民 の ニ ー ズ に 応 え た も の に す る こ と が 求 め ら れ る で あ ろ う
。 そ の 意 味 で
、 今 回 の 北 陸 史 学 会 の テ ー マ 設 定 は 時 宜 に か な っ た も の で あ り
、 ま た そ れ に 応 え た 早 川 報 告 は
、 問 題 の 有 り 様 を 解 明 し た 優 れ た 報
金 沢 市 立 玉 川 図 書 館 近 世 史 料 館 の 概 要 と 取 り 組 み
宮 下 和 幸
現 在
、 金 沢 市 に は 多 く の 文 化 施 設 が あ る が
、 そ の な か で 加 賀 藩 関 係 の 史 料 を 中 心 に
、 地 域 の 歴 史 に か か わ る 史 料 を 幅 広 く 収 集
・ 保 存
・ 公 開 し て い る の が 金 沢 市 立 玉 川 図 書 館 近 世 史 料 館
( 以 下
、 近 世 史 料 館
) で あ る
。 紙 幅 の 関 係 上
、 簡 単 で は あ る が 近 世 史 料 館 の 概 要 と 取 り 組 み に つ い て
、 こ こ で ま と め て み た い
( 1
。)
一 金 沢 市 立 玉 川 図 書 館 近 世 史 料 館 の 概 要
( 1
) 建 造 物
近 世 史 料 館 の 建 物 は 旧 日 本 専 売 公 社 の 煙 草 製 造 所 で あ り
、
明 治 四 四 年
( 一 九 一 一
) に 着 工
、 大 正 二 年
( 一 九 一 三
) に 完 成 し て い る
。 工 事 の 設 計 は 旧 大 蔵 省 臨 時 建 築 部 で
、 当 時 臨 時 建 築 部 に お い て 専 売 関 係 の 建 築 を 担 当 し て い た 矢 橋 賢 吉 の 手 に よ る も の と も い わ れ る
。 矢 橋 は の ち に 石 川 県 庁 も 設 計 し た 人 物 で あ る
。 建 物 は
、 煉 瓦 造 の 二 階 建 て
、 桟 瓦 葺 き で
、 当 時 は 全 長 二 八
〇 メ ー ト ル に 及 ぶ 回 廊 式 の 煙 草 製 造 所 で あ っ た
。 葉 入 れ
・ 乾 燥
・ 選 別
・ 包 装 と い う 製 造 工 程 の 一 連 の 作 業 を 可 能 に す る 施 設 で あ っ た と さ れ
、 そ の ほ か 浴 場 や 理 髪
、 さ ら に 食 堂 や 保 育 所 ま で を 備 え た 大 型 施 設 で あ っ た と い う
。ま た
、 外 壁 は 英 式 積 み で
、 一 階 と 二 階 の 窓 が ア ー チ 内 で 一 体 化 し て い る か の よ う な 造 形 と な っ て お り
、 現 在 に 至 る ま で 整 然 と し た 外 観 を 保 っ て い る
( 2
。)
昭 和 四
〇 年 代 に 入 り
、当 該 地 区 が 住 居 区 域 に 指 定 さ れ た こ と で 工 場 の 移 転 が 検 討 さ れ
、 移 転 後 に は 建 物 の 大 部 分 が 解 体 さ れ た が
、 東 側 に あ た る 一 部 は 金 沢 市 に よ り 保 存 さ れ
、 昭 和 五 九 年
( 一 九 八 四
) に は
「 金 沢 市 指 定 保 存 建 築 物
」と な る
。そ し て
、平 成 八 年( 一 九 九 六
) に 文 化 財 保 護 法 の 一 部 が 改 正 さ れ
、 保 存 及 び 活 用 に つ い て の 措 置 が 必 要 と さ れ る 文 化 財 建 造 物 を 文 部 科 学 大 臣 が 文 化 財 登 録 原 簿 に 登 録 す る
「 文 化 財 登 録 制 度
」 が 導 入 さ れ る と
、 同 年
「 登 録 文 化 財
」 の 指 定 を 受 け て い る
。
こ う し た 専 門 職 員 の 配 置 な く し て
、「 新 構 想
」が 謳 う 公 文 書 館 機 能 が 十 全 に 果 た せ る と は 到 底 考 え ら れ な い
。 こ の 規 定 は
、 公 文 書 館 の 専 門 職 員 を 養 成 す る こ と が 難 し い と い う 時 代 情 勢 を 反 映 し て 出 た 暫 定 的 条 文 で あ る が
、 も は や ア ー キ ビ ス ト 養 成 の カ リ キ ュ ラ ム は 整 備 さ れ
、 養 成 体 制 は 整 っ て い る の で
、 こ の 条 文 は 早 晩 廃 止 さ れ る べ き で あ ろ う
。
調 査 研 究 に つ い て は
、 膨 大 に 生 み 出 さ れ る 行 政 文 書 や 法 人 文 書 の 何 が 歴 史 的 に 重 要 な 資 料 で あ る の か を 選 別 す る こ と が 求 め ら れ る
。 当 然
、 ど の 機 関 か ら ど の よ う な 公 文 書 が 出 る の か を 押 さ え て お く た め に は
、 行 政 機 構 そ の も の に 対 す る 熟 知 は 前 提 で あ ろ う
。
「 公 文 書 館 機 能
」 に 関 わ っ て
、「 ワ ン ス ト ッ プ サ ー ビ ス
」 と い う 新 た な 概 念 が 提 示 さ れ た が
、 こ れ は 図 書 や 歴 史 資 料 の 出 納 は 職 員 で あ れ ば 誰 で も で き
、 一 ヶ 所 で す べ て の サ ー ビ ス が 行 え る と い う 意 味 で あ ろ う が
、 一 個 し か な い 歴 史 資 料 の 扱 い は そ の 保 存 上 慎 重 な 取 り 扱 い が 必 要 で あ り
、 や は り 公 文 書 館 の 専 門 職 員 そ の 他 の 職 員 が 行 う べ き も の で あ り
、 誰 で も で き る と い う も の で は な い
。 図 書 館 の 機 構 上 の 簡 便 性
・ 合 理 性 は 追 求 し な け れ ば な ら な い が
、 こ の 問 題 は そ れ 以 前 の 問 題 に 属 し よ う
。
お わ り に
公 文 書 館 が 仮 に 設 置 さ れ た 場 合
、 そ れ は 図 書 館 と 同 一 施 設 内 に 置 か れ て い い よ う に 思 う
。 行 政 機 関 で あ る 以 上
、 利 用 者 数 は 常 に 問 題 と な る 数 字 で あ り
、 図 書 館 の 流 れ で 公 文 書 館 を 利 用 す る 利 用 者 は 当 然 予 想 さ れ る こ と で あ る
。 し か し
、 取 り 扱 う 公 文 書 等 の 性 格 が 大 き く 異 な る 以 上
、 あ く ま で も 別 個 の 組 織 で 運 用 し
、 法 に 規 定 す る 様 に 館 長
・ 専 門 職 員 そ の 他 の 職 員 を 配 置 し て ほ し い
。 そ し て 行 政 機 関 な ど に 保 管 さ れ
、 廃 棄 さ れ る 文 書 の 中 か ら 歴 史 的 に 重 要 な 文 書 を 選 別
・ 保 管
、 整 理 し て 一 般 の 利 用 に 供 し て ほ し い
。 ま た
、 社 会 に 多 く 残 存 す る 文 書 の 情 報 を 収 集 し
、 寄 贈
・ 寄 託 を 促 し て
、 そ れ ら を 調 査 研 究 し
、 こ れ ま た 一 般 利 用 者 の 利 用 に 供 し て ほ し い
。 こ れ が 石 川 県 に お い て 歴 史 に 携 わ っ て き た 多 く の 方 々 の 悲 願 で あ り
、 早 川 報 告 が 目 指 し て い た あ る べ き 公 文 書 館 の 姿 で あ ろ う と 思 う
。