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6. 郷土史家からみた勝川の歴史資源に対する意識

8.5  日本とフィリピンの元気!子育てママたちによる多文化共生「勝川スタイル」

結論から先に言えば,春日井では日本人外国人を問わず,子育て中の母親は元気で 活動的である。まず日本人の「子育て」ママたちによる「まちづくり」への協力の事 例として,NPO「あいちかすがいっこ」7)は,王子製紙を親会社とする王子ネピア 株式会社はじめ,春日井商工会議所並びに春日井市役所とのコラボレーションのもと で,“春日井発信” の紙オムツ開発事業として,春日井市の東西両地区をつなぐ,春日 井市の「まちづくり」活動を 2000年から続けている。「あいちかすがいっこ」を設立し た内田朋代氏によれば,東京から移住して地域の事情に疎かったため,「引きこもり 育児」をしていた同氏が,親子教室にはいって,「ママ友」ができた経験を活かして,

「子育てサークル」を立ち上げたことに始まる。内田氏の経験談によれば(二水会女子 座談会会議録:4-6),春日井市には,子育てサークルが約40団体あって,その結果,

「春日井市は,細長い土地で,高蔵寺・勝川で分かれていて連携が取れない」。自分た ちは,「たくさんあるサークルを一本化する狙いで,『あいちかすがいっこ』を作り,

王子ネピアを中心とする商工会議所のネピアプロジェクトと協力するに至った。この プロジェクトは,「全部春日井市で作られている紙オムツ」の地産地消を,その需要者 である「子育て世代」で支える一方,王子ネピアは,春日井市における母親支援活動を 約束した。そのほか,ダイワエネルフのごみ収集活動にも協力するなど,市民・企業・

行政の協力体制のもとで,春日井市全域の参加する母親世代女性による「まちづくり」

活動を展開している。ESD を庄内川下流の春日井市で実施している事例は,まさに,

紙おむつの「ものづくり」を基にして,子育て世代女性の相互学習による「人づくり」

の好事例である。

これと匹敵する春日井市における外国籍のママたちによる春日井市の高蔵寺地区 と,勝川商店街をつなぐ,フィリピンのママたちの ESD活動をあげることができる。

31万人の春日井市には,約2パーセントの外国人が住む。中国,韓国・ 朝鮮など東 アジアに次いで,フィリピン人が多く,その数は,約1,000人であり,大半が女性た ちである。私たちは,春日井市内でフィリピン人と日本人の助け合いネットワーク・

SALVIFIC(Sustainability and Liberation:Volunteer Initiative of Filipina and Japanese in Chubu)を立ち上げ,フィリピン女性自身が主体となって,自分自身の エンパワメント活動を通じて,次世代の子どもたちのために春日井の持続可能な多文 化共生のまちづくりに貢献したいと活動している。具体的に説明すると,SALVIFIC は,フィリピン人ママたちの出産,子育て,子どもの教育問題や自立のためのサポー トなどを行っている。数年前愛知県社会参画活動育成事業の委託を受け,全7回の フィリピン人ママのための子育て支援とエンパワメント連続講座(パソコン指導や,

法律相談)を開催し,その成果を「毎日の生活マニュアル」にまとめ,愛知県内で配

布している。また月1回,日本人中心の住民がまちづくりについて話し合う「高蔵寺 ニュータウン ESD フォーラムで」も外国籍住民の立場から,フィリピン料理やダン スを披露して地域活性化に一役買っている。この高蔵寺ニュータウンにおける活動の ほか,フィリピン人ママたちは,中部大学の学生と協力して,勝川駅前商店街におけ る弘法市に,フィリピン食品や民芸品のテントを設け,また 2013年の勝川駅前での納 涼音楽祭では,学生との混成チームを組んで,フィリピンの歌曲「ピノイアコ」を歌 い踊った。高蔵寺から勝川商店街への協力活動が少ないところで,「フィリピン人は 素晴らしい」という意味の歌「ピノイアコ」を夏祭りで歌ったことは,多文化共生の 芸術活動であるとともに,高蔵寺ニュータウンと勝川商店街をつなぐ春日井市の東西 地域をつなぐ子育てママたちの「まちづくり」の好事例となっている。

写真1.第2回「ママの文化祭」参加者たち(ホームページより)

写真2.勝川納涼音楽祭に出演した「SALVIFIC」 のメンバーたち

9.おわりに

以上の二つの事例とそのねらいが,「まちづくり」における女性の役割を「中部生命 流域ESD モデル」の典型例として提示することで,ユネスコが ESD における女性の 役割の重要性を明らかにすることにしよう。

中部地域は,日本のなかでも,「ものづくり」について特徴付けられている。「もの づくり」が,国際的に持続可能な経済・社会・文化関係について,複雑に関係している ことはいうまでもない。中部地域の生態系のみならず,「ものづくり」で交流のある 世界の諸地域,特に昨年ESD に関するユネスコ世界会議の結論をまとめた「あいち・

なごや宣言」で指摘されているように,脆弱な経済を持つフィリピンなどの国々と協 力して,経済格差の拡大を知縮め,世界経済の生態系に優しい発展に貢献する方向で 伸ばしていく道が開かれている。

男女共同参画の推進は,職場や学校など公的領域のみならず,家庭における家族関 係など私的領域,個人的関係での男女平等と民主的関係を築いていかなければならな い。そのためには,女性の政治参画や企業での昇進における割当制(クオータ制)の 導入や,男性の育児休暇の義務付けなど法制度の整備が必要だ。自治体に対しては,

自立した市民による自治と政策提言をすることが求められる。

男性がややもすれば「カネづくり」を重要視して,戦争や国策に協力してきた近代 日本のなかで,古来の伝統社会の価値意識を世代から世代に伝えてきた女性の役割 は,「ものづくり」をより幸福に人間がいろいろなコミュニティの中で生活できるよ うな「未来づくり」に繋ぐためには,消費者としての女性,母親としての女性,社会・

経済の再生産に携わる女性,そういう意味で「輝く」女性を必要としている。このこ とは,日本列島のなかでももっとも豊かな中部地域,もっとも外国資本は入らないも のの,外国人労働者が密集している地域で,特に地域格差を国際的だけではなく,日 本の諸地方のあいだでも減らしていくこができるかもしれない,そのような大事な

「まちづくり」の方向付けをする必要がある。

格差を広げないで,また地域のそれぞれの個性を大事にする形で実現する「キメ細 やか」な心栄えをもつ「人づくり」こそ,「勝川スタイル」の特徴になる可能性があり,

この可能性を最大限伸ばしていく必要がある。

そのことを,抽象的にではなく,地域消滅の危機にあり,労働人口も再生産労働を 含めて停滞している日本において,地域から「輝く女性」の役割がある。そのことに ついて,「まちづくり」を進めている春日井市の女性たちこそが,「持続可能」な世界 をローカルにもグローバルにも手を取り,作っていく相互の学び合いと連帯ができる

「輝く女性」たちであることを強調したい。

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