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翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六)

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(1)

35

翻刻﹃雪梅芳譚犬の草紙﹄

︵六︶

川  

嘉  

大  

山  

和  

隅  

田  

三  

高  

森  

松  

本学図書館蔵の合巻 ﹃雪梅芳譚犬の草紙﹄の ﹁三編下﹂を 、図版を掲げつつ翻刻する 。﹁初編上﹂から ﹁三編上﹂ までの五冊分の翻刻は、 本学日本語日本文学会編 ﹃光華日本文学﹄ 第十二号 ︵平成十六年十月刊︶ から同第十六号 ︵平 成二十年十月刊︶までに連載されており 、その後を受けてのものである 。 したがって 、 この ﹁翻刻﹂の本紀要への 発表は初めてにもかかわらず、 タイトルが﹁翻刻﹃雪梅芳譚犬の草紙﹄ ︵六︶ ﹂ということになってしまっているが、 不体裁をお許し願いたい。 合巻 ﹃雪梅芳譚犬の草紙﹄については 、﹁初編上﹂の翻刻を掲載した ﹃光華日本文学﹄第十二号の ﹁凡例﹂を参 照いただければ幸いである。

(2)

凡  一、翻刻の方針のみあらためて掲出する。 1 、図版は各丁見開きを一面とし、丁付けにより﹁一ウ、二オ﹂のように示す。 2 、本文翻刻は、やはり︹一ウー二オ︺のように冠し、改行位置は/で示し、丁移りは   ]で示すが、書入れに ついては丁付けにこだわらない。 3 、一面が二枚の絵組から成る場合、翻刻の方のみ半丁ごとに分離する。 4 、原文はできる限りそのままとするが、漢字仮名とも、異体字、略体字は現行のものに改めた。 5 、読みやすくするため 、句読点を補い ︵ただし 、序文の句点は原文のままとし 、その旨を断わった︶ 、 会話文 については ﹁   ﹂を 、また会話文中の会話文には ﹁  ﹂ を補った 。原文にある ﹁   は﹃   に改めた ︵原文の ﹂ あるいは   ﹄は、   ﹄とした︶ 。さらに仮名を適宜、漢字に置き換え、その場合もとの仮名をルビに移した。 6 、 原文の振り仮名は 、右と区別するために ︵  ︶に入れた 。ただし 、袋 ・表紙および序文等 、一部原文のまま の振り仮名に︵   ︶をつけなかったところがある。その場合は、その旨を断わった。 7 、書入れは本文のあとへ一段下げて、文意の通り易い順に記した。 8 、本文中にある読み進めるための合印については、すべて ● で統一した。 9 、﹁初編下﹂に至って出てきた 、本文中の ○ ︵段落を改める意識で使用されている模様︶は 、その位置にその まま翻刻した。 一 、末尾に 、 ﹃光華日本文学﹄第十二号から第十六号までに倣って 、 ﹁三編下﹂に出るもののみながら 、 登場人物名

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37 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) ︵まれに地名等もある︶と 、元の読本 ﹃南総里見八 犬伝﹄の相当する名称との、対照表を付した。 ︹原表紙︺           ( 振り仮名は原文のまま ) 一 名 八 犬傳 雪梅/芳譚   犬 の草 紙 一陽齋豊國画 三編下 ︹原表紙見返し︺ 犬の/草紙 三編/下 仙果録/豊國画 紅英堂板 図版1 三編上原裏表紙(色刷)、三編下原表紙(色刷)

(4)

梅鉢 結/玉の遊 ひのまゝに 仙果 䇭 ︹十一オ︺ 三 ○義 真は昼 の程 、たゞ仮 /初 の戯 れに 、しか/しか と 言 ひ / た り し を 、 ● ● / 八 房 / は 聞 ゝ 分 け て 、 如 何に/してかかげ列 を/食 ひ殺 して来 る/こと、不 思 議 と/いふも● ●余 りあり 。/ ﹁奇 なり

﹂と /始 め終 はり/人 に詳 しく/語 りて 、/八 房の /● ●/仕 業 を/只 管/賞 /美 あれば 、/氏 幹/等 は/舌 を/巻 き、/﹁ 獣 /にして/人 に/勝 る/手 柄 を/も、/ へ ぎ つ ︹十一ウ︱十二オ︺ き ゞ つ 君 が仁 心畜 生 までに及 ぶ故 か 。しかしなが ら、神 /仏 の御 利 益 にも拠 るならん﹂と喜 ぶところ へ、 物 見 の 兵 /庭 口より馳 せ参 り、 ﹃ 敵 に異 変 の起 図版2 原表紙見返し(色刷)、十一オ

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39 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) こりしか 、 大 軍俄 に/打 ち乱 れ、 上 を下 へと騒 き立 ち、 只 事 には候 はず 。 速 やかに/追 ひ払 ひ給 はゞ 、 必 ず勝 利 あらん﹂と告 ぐるを 、﹁さこそ﹂と/義 真 自 ら 撃 つ て 出 で ん と し 給 ふ を 、 義 業 は 進 み / 出 で、 ﹁御 出 馬 にも及 ぶまじ。我 氏 幹と二 人して/容 易く追 ひやり候はん﹂と三百余 騎 を二 手 に分 け 、/大 手 は 義 業、 搦 め手 よりは杉 浦氏 幹/撃 つて出 で、 驀 地 に 突 き入 れば 、寄 せ手 の陣 は/大 将 を犬 に敢 へなく食 はれたり、呆 れ/果 てたる折 からなれば、何 かは以 て /堪 るべき。矛 先合 はする/勇 みもなく、大 方は/逃 げもえやらず降 参/する者 いと

多 く 、/夜 明 く る程 に戦 終 はり 、/ 鬨 あげて義 業は/山 の如 くに 蓄 へたる/敵 の兵 糧 、指 図 して/皆 城 中 へ運 び/ 入 れさせ 、この由 父 に申 させ給 へば 、/義 真始 め各

の喜 び譬 ふる/ものもなく 、 久 しく飢 ゑし人 に今 朝ぞ真 の/飯 を賜 ふ 。されども日 を経 て 食 せぬ者 、/俄 に飽 くまで食 ふ時 は忽 ち命 を落 と す/ものぞと、先 づ白 粥を一 碗づゝ残 る者 なく/賜 ひ けり。○森 口九郎が預 かりなる東 條の/城 は、滝 田に 図版3 十一ウ、十二オ

(6)

引 き替 へ猶 半月の蓄 へ/あれど 、敵 に厳 しく囲 まれて 、これを/滝 田へ送 るに由 なく 、食 事 に飽 けども]なか

に飢 ゑたるよりも胸 苦 しく 、幾 度 も/撃 つて出 で寄 せ手 を襲 へど 、目 に余 る大軍 /なれば些 とも怯 まず 、 斯 ゝりし程 にかげ列 は/犬 に食 はれて死 んだる由 、やう

に寄 せ手 も/聞 ゝ知 り、大 将 分 の 兵 共 /夜 に紛 れ て落 ち失 せければ 、残 りの/士 卒 は攻 めざれど 、をめ

降 参/したりければ 、滝 田東 條二ツの城 /ともに無 事 に帰 るのみか、太 刀 山の 兵 /共 主 人に離 れ、誰 あつて城 を/守 る勇 みもなく、あら/がひだてせし咄 平などは/ 打 ち寄 つて首 を刎 ね、 / 皆 義 真へ降 参/すれば 、安 房 朝 夷の/二 郡 も一 手 に/郷 實 の物 と な り、 義 業と/氏 幹に 太 刀 山平 だちの/城 を守 らせ、 /義 真のいき/ほひは朝 日 の/昇 るが如 く/にて、 いよ

/下 を愛 で/慈 しみ、 美 名 を/四 方に輝 かし給 ふ 。 鎌 倉の/成 氏朝 臣この由 を聞 ゝ及 び 、/室 町殿へ推 挙して安 房 の/国守 こく しゆ に申 し做 し 、治部大輔 ぢぶの たいふ にぞ 補 ( ほ ) せられ/ける 。斯 く善 きことのみ重 なるにも 、前 に使 ひに/遣 はしし大助 は如 何しけん 、 功 ありて横 様に● ●死 せし者 ゝ/子なりとて 、取 り分 けて/愛 ほ し み、 東 條の主 と/して婦 志 姫 を娶 せんと/ 心 に許 し給 ひし甲 斐 なく 、● ]●行 方も/知 らずなり/しかば 、/残 り惜 し/さ限 り/なく 、/隈 / /捜 させ/給 へ/ども 、生 き/死 にの程 /さへ知 ら/れず 。力 /なければ 、先 づ/差 し当 たり/此 度 のいく/さに功 ある/者 に恩 /賞 を行 ひ/給 ふ。 事 の始 /めは八 房のい/ぬを以 て第 一とし 、/朝 夕の食 事 は/更 なり 、綾 / 錦 を褥 とし 、/僕 数 多]付 け置 きて/出 で入 りには/先 を追 はせ 、斯 くまで/重 く扱 ひ給 へど 、/ 八 房更 に喜 ぶ/様 なく 、頭 を背 け/尾 を伏 せて/物 も食 はず/眠 りもせず 、/往 にし夜 に/かげ列 の/首 を持 て/来 し縁 / 端 の/辺 りへ/行 きて、/義 真の/出 でさせ/給 へば、前 足/を縁 端 に/掛 け鼻 を鳴 らし、/請 ひ求 むることある が/如 し。義 真始 /めは心 付 かず、 魚 /餅 など折 敷 に載 せ/給 へど、 彼 は見 もやらず、 /猶 求 むること頻 りなり。 /斯 ゝること度

なれば、/やゝその心 を推 し/量 り、 ﹁あら疎 ま/しや﹂と へ ぎ つ

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41 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) ︹十二ウ︱十三オ︺ き ゞ つ 思 し召 し、 後 には近 くへ寄 せ/給 はず 。され ば彼 も 、 やゝともすれば/哮 り狂 ひて僕 等 の手 に余 ること/しば

なり 。或 る時 首 の鎖 を/引 き切 り、 止 むる人 を咬 み倒 し、 /彼 の縁 端より踊 り上 がり、 大 /奥 指 して駆 け/入 りぬ 。僕 /共 は立 ち入 り/難 く、 此 方に/手 に汗 握 る/のみ 。 男 の手 に/さへ任 せぬ犬 が/哮 り/狂 ふ/こと/なれば、/をん/な/ 共 は/一 傾 /れに/恐 れ/惑 ひて/立 ち/騒 ぎ、/逃 げ隠 /るゝより/他 は/なし 。/●]●/八 房は/ 障 子 /襖 押 し/倒 し、乗 り/越 えて婦 志 姫 の/おは します傍 ら/まで狂 ひ入 りぬ。/この時 姫 は机 /に 寄 り、 本 共 読 みて/おはしけるが 、﹁あなや﹂と/叫 んで立 ち上 がり、/身 を避 けんとした/まへど、早 く も犬 は/長 やかに引 き給 ひ/たる裳 裾 をかけ、/そこ にはつたと伏 すのみか、/前 足は振 袖のたも/とへ自 然 と突 き入 つて進 退/こゝに谷 まつたり。元 来 只 の/ 犬 ならぬに、十 年 此 の/方 美 食 に飽 き/肥 え太 りて、 大 き/さは子 牛 に等 しき/八 房が圧 しになつたる/こ 図版4 十二ウ、十三オ

(8)

となれば 、御 身 を動 かし/給 ひ難 く、 心 雄 々 しき● ●姫 君 なれど、御 魂 も/身 に添 はず、声 さへ暫 しは え立 て/給 はず 。女 共 ゝ寄 り集 まれども 、恐 るゝ/ のみにて用 には立 ゝず 。箒 の柄 以 て畳 を/鳴 らし 、 たゞ ﹁しい

﹂と追 ふといへど 、人 近 付 けば睨 / まへて 、牙 を咬 み出 し唸 る声 実 に凄 く/恐 ろしく 、 震 へ戦 き居 るのみなり。義 真/この由 聞 くと斉 しく、 手 鑓 引 つ提 げ駆 け来 り、 / 恐 るゝ女 を叱 り退 け、 つ つと入 つて/﹁やをれ畜 生 、出 でよ

﹂と石 突 き 差 し伸 べ/押 し動 かし給 へども 、 八 房は更 に/動 か ず、 益

哮 る声 鋭 く、 咬 みも/かゝらん勢 ひに 、 義 真は怒 りに/堪 へず 、﹁ 無 礼 の畜 生 、思 ひ知 れ﹂と /鑓 取 り直 して八 房を突 き殺 さん/とし給 へば 、婦 志 姫 ﹁暫 し﹂と押 し/止 め、 ﹃父 上、妾 が申 すこと/ 聞 かせ給 ひて、八 房が無 礼 を/許 し給 へかし﹂と言 ひ かけて へ ぎ つ ︹十三ウ︱十四オ︺ き ゞ つ 目 を拭 ひ給 へば 、義 真は/手 を止 め、 ﹁ 其 は 図版5 十三ウ、十四オ

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43 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) 何 故ぞ 。疾 く

/言 へ﹂と急 ぎ給 へば 、流 るゝ涙 /振 り払 ひて吐 息 をつぎ 、﹃ 今 も/昔 も、 功 あるは賞 美 せ られて 、/罪 あるは罰 を受 くるが世 の定 /まり 。それに違 へば下

も上 に/背 きて家 破 れ、 国 の乱 れと/ なる 理 。また数

の人を/使 ふ人の言 葉 に偽 りありて 、/如 何でか人 の使 はるべき 。/父 上はこの犬 に/何 と約 束し/給 ひし 。 ﹁ もし/庵 西を食 ひ殺 /さば娘 をやらん ﹂ と/宣 ひし由 は自 ら/語 らせ給 ひき 。今 /事 成 り てその事 /無 く、 善 美 を尽 くし/食 を与 へ、 綾 /錦 を身 に纏 /はせ尊 敬 せ/させ給 ふとも 、/それ嬉 しとはお /もふまじ 。偽 りを/宣 ふ君 と 、さこそは/恨 みに思 ふらめ 。彼 /畜 生 にて大功 たい こう 立 て 、/またその者 に戯 れ /にも娘 をやらんと/宣 ひしも 、皆 前 の]世 の因 果ぞと/妾 ゝ疾 くより/思 ひ定 め、 / 泣 かぬ日と/ても侍 ら /ざりき 。/● ●畜 生 /道 へ生 きながら/子を落 としても 、/偽 りを言 はぬ/由 を、 下 へ/知 らせて国 を /治 め給 へ。 願 はくば/身 に暇 を賜 ひ 、/彼 に妾 を/与 へ給 へ 。子として/親 に暇 を/請 ひ、 心 づから/畜 生 の/妻 とな/らんと/●]●願 ふ女 、/またと此 の世 にある]べきか 。 浅 ましの身 の果 てや﹂と 、わつと/ば かりに泣 き給 へば、 義 真も涙 に暮 れ、 /鑓 投 げ捨 てゝどつかと座 し、 ﹃あゝ過 てり

。/軍 に囲 まれ困 じ果 て、 ふと戯 れに言 ひ/つるも 、真 ゝなりては背 き難 し/と思 ひながらも 、/言 ふやうもなきこと/なれば 、云 云と/ 日 頃 経 て今 日 に/及 びぬ。斯 くなる/ことも今 初 /めて● ●/起 /こる/こと/には/あらじ/かし。/御 事 は/ 三ツまで/物 言 はず 、/夜 昼 憤 り泣 く/を憂 ひ、 洲 崎 の/窟 に願 立 て/せしが 、怪 /しき翁 /現 れ/出 で、 しか

/と/言 ひ/諭 し/しが、 / へ 右 / ● ] り よ 左 / ● 婦 志 /姫 の/伏 ふ し の/文 字 は、 /人にして/犬 い ぬ に 従 ふ 。/されば/犬 の/妻 と● ●なるも襁 褓の内 より/定 まりしか 。執 心/深 き物 ゝ怪 の付 きま/とふとは誰 な らん 、彼 の/玉 章が最 期 の言 葉 、/思 ひ回 せば ﹁ 子 も/孫 も畜 生 /道 へ落 とさん 」 と言 ひ/しも思 ひ合 はせらる 。 /彼 の犬 を育 てし/狸 は、 必 ず/彼 が悪 霊 /ならん 。狸 の/替 名 様 /なれど 、玉面 ぎよく めん /などゝ呼 ぶを/ 思 へば 、たま/づら 、たまつさ/呼 び声 /近 し。 斯 ゝる/ことにはこゝ/ろもつかで 、/郷 實 の/犬 と/よろ/こ

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んで 、/ゆゝしき/ものを/みづ/から/● ●/求 め、/姫 が/守 りと/付 け置 き/しは、定 /まり事 に は/ある/にも/せよ、/世 にも/悔 /しき/我 が/ 誤 り。/縦 しや/前 世 の]業 にも/あれ、畜 /生 に /子を/与 へ、/何 /楽 /しみに/日を/送 り、/何 面 /目 に世 の/人 ゝ交 /はりせん﹂と/● ●/恥 ぢ /入 つて、/悔 やみ/嘆 /かせ/給 へ/ども、/その /甲 斐 /更 に/なかり/けり。/婦 志 姫 /父 の御 /言 葉 /聞 くに/つけ/ても、 /差 し/込 む/癪 / ぎ つ へ ︹十四ウ︱十五オ︺ き ゞ つ 我 が手 に胸 を押 し下 げ

、/ ﹃父 君 の御 嘆 き、 思 へば/妾 も消 え入 るばかり 。悲 し/けれども 是 非 もなし 。さはれ/一 旦仰 せの 趣 、偽 り/なき 由 彼 に告 げ、 犬 の/妻 とし定 まらば 、やがて/妾 ゝ 命 を捨 てん 。この身 を/まざ

畜 生 に如 何で汚 /され候 はん﹂と言 ひ差 して顔 /打 ち赤 め、 袖 以 て 覆 ひ伏 し/給 へば、義 真も逃 れ得 ぬことを/悟 りて犬 図版6 十四ウ、十五オ

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45 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) に向 かひ、 ﹃我 戯 れに/言 ひしことを、 汝 は真 ゝ心 得 て/立 てたる功 は大 きなれば、 今 こそむす/めを与 ふるぞ。 先 づその所 を退 く/べし 。早 く

﹂と急 がし給 へば 、八 房は/熟

と主 人の言 葉 を聞 ゝ取 りし様 にて/徐 ら起 き返 り、 身 震 ひしつゝ外 の方 へ/静 やかにこそ出 で行 きけれ 。五 十子/御 前 は駆 け入 つて 、﹃ 最 前より/彼 処 にて 、事 の由 は/見 て知 つたり 。世 に/浅 ましき/ことともは/様 /あれど 、/斯 くばかり/憂 き目 は/あ らじ﹂と/泣 き伏 しつゝ、夫 を/恨 み娘 を託 ち ]正 体 もなく見 えければ、義 真は/面 なげに差 し俯 いて居 給 へ り。 婦 志 姫 は母 を/慰 め、 ﹃ 定 まる因 果といふ中 にも 、これ見 て諦 め/給 へや﹂と 、彼 の洲 崎 にて翁 の与 へし数 珠 懐 より/取 り出 だし 、﹁ 母 上 にも知 ろし召 さん 。この数 取 りの八ツの/珠 に自 づから文 字 ありて 、仁義 じん ぎ 礼智 れい ち 忠信 ちう しん /孝悌 かう てい の八つの文 字 と読 まれしが 、かげ列 滅 びし/その時 より彼 の文 字 は跡 なく消 え、 是 此 の/ 如 く如是 によ ぜ 畜生 ちく   しやう 發菩提心 ほつぼ   だいしん の/八字 ( じ ) に変 はりぬ 。此 処を以 ても今 更に/逃 れぬ業 と諦 めて 、菩 提 の心 を/ 起 こすといふ言 葉 に後 の世 頼 もしと 、/父 上恨 みて給 はるな 。もう死 んだ子と/思 ひ切 り、 患 ひてばし給 ふな﹂ とて 、/更 に悪 怯れ給 はねど 、涙 の隙 は/なかりけり 。婦 志 姫 また宣 ふやう 、/ ﹃犬 の心 は知 らねども 、斯 く なる上 は/片 時も館 にありて人 に顔 /見 らるゝは恥 の恥 。如 何なる山 へも/彼 を連 れ行 き、 身 を隠 さんと思 ふ/なり 。彼 もし此 処を去 らざる時 は/そのまゝ命 を捨 てんのみ 。何 時を/門 出 と待 つべきならず 。とても捨 て /たるこの身 の上 、夜 も夜 中 も/怖 からず 。 八 房を呼 び出 だし 、/言 ふべきことも言 ひ聞 かせ 、彼 がせん/様 見 し上 は、 今 宵すぐさま出 で/立 ゝん 。男 にもあれ女 にもあれ 、/たゞ一 人の供 ゝ連 れまじ 。送 りの/人 も無 用 に侍 り。身 に添 へ持 たん/物 とては、 法 華 経 八巻 、料 紙 れう し /一帖 いち でふ 、 懐 硯 、懐 剣 の● ●他 には用 ある/物 も なし﹂と 、それより/油 を引 き、 髪 梳 らせ 、/髪 の飾 りも皆 打 ち捨 て/腰 元共 に形 見 に/賜 り、 白 き小 袖 を/ 打 ち襲 ね、 淑 やかに立 ち/出 でゝ 、更 に父 母義 /業 始 め在 り合 ふ/者 に暇 を告 げ 、/庭 へ降 り立 ち/見 給 へば 、 八 /房 は待 ち/兼 ねたる/面 持 ち/にて/頭 を/上 げ 、●]●/喜 ば/しげに/近 /づけば 、/婦 志 /姫 は/

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身 構 へなし 、/ ﹃汝 八 /房 、うけたま/はれ 。卑 し き/身 にても/人は人 、/神 通/あつても/獣 は/ 獣 。/されば乞 丐、 / 袖 乞 ひにても 、/畜 生 を以 て妻 /ともし、 夫 ゝ/する者 /絶 えて無 し。/国 小 さ く/とも]安 房 の/国 の/主 の/娘 が/何 故 に/ 獣 ゝ/妻 と/身 をば/捨 てん 。/此 は前 の/世 の業 /にも/せよ、/ へ ぎ つ ︹十五ウ︺ き ゞ つ /父 上の/御 言 葉 /重 んずる/故 ぞかし 。/ しかるに/汝 /欲 に/任 せ 、/もし淫 /らなる振 / 舞 あ ら ば 、 / そ の ま ゝ 殺 / し て 我 死 な ん 。 / 人 ゝ 獣 ゝ/けぢめを弁 へ、/一 旦の約 束に/背 かざる儀 を嬉 しと/思 ひ、左 様 の行 ひ/決 して無 くば、妾 ゝ 汝 の● ●妻 たらん 。もし/何 方へも伴 ひ行 かば 、 /行 くまゝに誘 はれん。/如 何にかする﹂と懐 /剣 抜 き持 ち、逆 /手 に取 つて問 ひ詰 め/給 へは、八 房は /いと憂 はしげに● ●項 垂 れ居 しが 、頭 を上 げ/空 打 ち仰 ぎ、長 吠 えして/誓 ふが如 き有 様に、姫 は/落 図版7 十五ウ、十六オ

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47 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) ち着 き刃 を収 め、 ﹁ 如 何にか/する﹂と寄 り添 ひ給 へば 、振 袖の/端 を銜 へ、 外 へ

と引 き/行 くに 、払 ひも えせず引 かれ/行 く 。 これか此 の世 の別 れかと 、/ ﹁父 上母 上 、弟 義 業、 / 皆

さらば﹂と噎 びながら 、/我 が行 く方 は何 処 と も、 白 綾の/裾 高 く取 り、 経 文 小 声 に/唱 へつゝ 、早 門 外 へ出 で給 ふ。 / こ の 時 日は早 暮 れ果 てゝ、 夕 月の/影 真 砂を照 らし、 木 枯 らしの風 、空 /飛 ぶ雁 、物 悲しさを猶 添 へて、 /行 くも止 まるも如 何ばかり、 涙 に/袖 の濡 れにけん 。 愚 かなる身 の/推 し量 りだに 、拙 き筆 には/書 き取 り難 し。 / ○ 義 真暫 し呆 然たりしが /送 りの者 をも止 め給 へど 、捨 て/置 くべきことならねば 、前 にまろ/のり時 の首 取 つて持 て/参 りし甘 瀧十郎/ 照 景を忙 はしく/呼 び出 だし、 ﹁見 え隠 れに/後 を追 ひ、 姫 の/先 途 を見 て/参 れ﹂と/仰 せに● ●はつと照 景は、 馬 に飛 び乗 り/供 人引 き連 れ 、一丁ばかり道 を/隔 て後 より行 けば 、八 房は/滝 田の城 を出 づると斉 しく 、/姫 君 を背 に打 ち乗 せ、 府 中 ふ   ちゆう /の方 へ駆 けること 、飛 ぶよりも猶 /速 し。 暁 に及 ぶ頃 、/安 房 一 番の高山 かう ざん なる/ 冨 山 といふ山に入 りぬ 。後 追 つ/駆 けて照 景は同 じく/山 路 にかゝりしが 、遂 に馬 /さへ乗 り倒 し、 供 の者 は/皆 遅 れて 、漸 く追 ひつく/僕 と二 人、 息 継 ぎ敢 へず/攀 ぢ登 り、 山 より山 に/分 け入 れば 、大 きなる木 立 /物 旧 り 枝 葉 隙 なく空 /見 えず 、岩 が根 纏 ふ蔦 、/苔 滑 らかに道 狭 く、 / 足 も止 まらぬ嶮 しき/山 を、 急 ぎに急 ぎ/越 え行 く程 に、 横 雲/峰 に収 まりて夜 は早 /全 く明 けにけり。 /やゝ広 らかなる所 に/出 で、 遥 か彼 方を/見 渡 せ ば、婦 志 姫 は/八 房の背 に腰 掛 けて、/対 ひなる水 いと荒 き/谷 川を/ へ き ま の 四 ︹十六オ︺ 四 り よ き ま の 三 易

と打 ち越 して 、猶 山 深 く/入 り給 ひぬ 。照 景等 も辛 くして川 の辺 り/に来 れども 、水 深 く

(14)

流 れ速 く、元 来 /橋 無 く舟 も無 ければ、彼 方へ越 すべ き/手 立 てもなし。さりとて、此 処まで来 つる甲 斐 な く/川 一 筋に止 められ、御 行先/をも見 極 めず如 何で すご

帰 らる/べき 。瀬 踏 みをせんと照 景は 、杖 を/力 に下 り立 つて 、二 足三 足 /渡 ると見 えしが 、 漲 る水 の/勢 ひ鋭 く、横 にざん/ぶと押 し倒 され、 ﹁あなや﹂と/叫 んで川 中の岩 に/頭 を微 塵 に/砕 か れ、/矢 を射 る/如 く/落 ち/行 く/水 に、/流 れて /行 方も知 れずなりぬ 。そも

/甘 瀧照 景は海 辺 にて/人となり、水 練の達 者/なりしに、斯 く言 ひ甲 斐 なく命 /を落 とすは怪 しむべき/ことなりとて 、 僕 は/舌 を震 ひて恐 れ、/麓 へ下 りて遅 れし者 と● ●一 つに/なりて滝 田へ/帰 り、この由 /具 さに申 し /ければ 、義 真は/思 ひ絶 え、 / 再 び人をも/遣 は さ ず 。 / 国 の 内 へ / 触 れ 知 ら せ 、 / ﹁ 木 樵 柴 刈 る 童 と/いへども 、冨 山 に登 る/こと勿 れ 。 もしこの 定 め/に背 く時 は、その者 /死 罪 たるべし﹂といとお ご/そかに掟 させ 、/また照 景が/非 命 に死 せ/し を/痛 ま/しく/思 し/召 し、その/子 ども等 を/召 図版8 十六ウ、十七オ

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49 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) し出 だし 、形 の如 く/扶 持 し給 ふ。 斯 くて事 /無 く月 日 は経 てど 、忘 れ難 くて/御 心 に懸 ゝるは姫 の御 上なり 。 /﹁疾 くにも此 の世 を去 りにしか、/未 だつれなく へ ぎ つ ︹十六ウ︱十七オ︺ き ゞ つ 存 へあらば、如 何なる様 にて/あるならん﹂とつど

口 には宣 はねど、/嘆 き思 さぬ折 もなく、それ に/つけても 、大助 が生 き死 にの/境 さへ知 らるゝ由 も/あらざれば 、彼 につけ/此 につけ 、思 ひ屈 し/ては年 の寄 る心 地 /せられて 、鬢 の毛 も/霜 や置 く ら ん、 冴 ゆる/夜 は衾 幾 重 か/重 ねても 、軒 の/冬 木 の風 の音 /寒 しとてこそ寝 ね/られね 。巌 は屛 /風 と覆 ふとも 、嵐 を/防 ぐものならず 。 /隙 を漏 るだに厭 ひ/しを 、真 木 の冨 山 も/名 のみなり 。籔 し/分 かねば 、陽 の光 /山 懐 は照 らす/とも 、自 ら菜 摘 み/水 汲 まば 、袖 の/ 氷 は解 けざらん。 /仏 に仕 ふる心 /より真 如の月 は/曇 らじを、 薬 求 む/とその昔 吠 えけん/犬 に引 き替 へ て、 娘 が/命 手 束 弓 、春 とて]花 の咲 くにこそ 、/谷 /の/ 鶯 /法 華 /経 /に● ●つけ声 /するや初 /音 の日 、鳥 / 獣 を/友 として 、何 時/人の日とも知 らじかし 。/梅 は暦 と開 くとも 、/閉 ぢたる胸 の八 重 霞 、気 も/結 ぼうる糸 柳 、雪 折 れ/無 しとは言 ふめれど、土 としいへば/庭 さへも白 地 には踏 まぬ身 の● ●荒 山 道を/ 下 り上 り、 何 を/食 とし何 を着 て/如 何でか今 日まで存 へん 。/死 なばそのまゝ犬 の食 、/眼 啄 む山 烏 、/ 縦 しや頭 は白 むとも/帰 り来 る日はあらざらん 。盛 /者 必 衰の花 散 りて/死 出 の田 長 の早 苗 月、 祝 ふ/甲 斐 なき菖 蒲草、たゞ長 き/音 に泣 くばかり。五 月雨/続 き、濡 れ凋 む垣 の● ●なで/し子 /打 ち見 れば、/花 の上 /だに哀 れ/なり 。九夏 きう   か /三伏 さん ふく の時 /来 り、 彼 の誕 /生 日も産 /土 の神 にも/向 けん顔 もなし 。/されども もしや/存 へて浮 き世 に/あらば健 /やかに、と/祈 りて/罪 をみ/そぎする/川 瀬 に/秋 の/ へ ぎ つ

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︹十七ウ︱十八オ︺ き ゞ つ 波 立 ちて 、七 日 に架 くる 鵲 /の橋 も冨 山 の 谷 には無 し。犬 飼/星 と聞 くも憂 や、仮 の玉 章名も/ 憎 し。如 何に執 念 き悪 霊 たりとも、/妖 えう は徳 と く に勝 たずとこそ聞 け。/斯 く浅 ましき目 を/見 ること、猶 我 /心 に思 はざる過 ちあつて/天 つ神 罪 し給 ふとこ ろなる/かと、憂 きに堪 え兼 ね、義 真の/思 ひ過 ぐし も 理 なり 。千 騎 /万 騎 の敵 をも物 とも思 /さぬ勇 将 も、世 の成 行には/争 ひ難 く、恩 愛の 兵 /には 胸 を劈 く心 地して、時

/悶 へ悩 ませ給 ふ。況 し てや女のこと/なれば、五 十子御 前 は姫 君に別 れて/ よりの愁 傷 悲 嘆 、泣 き暮 らし 、また泣 き/明 かし 、 ﹁死 に別 れせば斯 くまでに深 くは/物 も思 ふまじ 。も し恙 なく/帰 り来 ることもやあると頼 まれ/つゝ 、 其 はまたとても叶 はじと、/思 ふにつけて今 頃は如 何 なる/辛 き目 を見 てか、また畜 /生 の餌 となりしか。 /縦 し何 事の無 きにも/せよ、人 の入 ること難 き/山 に誰 が養 ひてか/日を送 らん 。飢 ゑ凍 え/して死 ぬ ときのその苦 しみは]如 何ならん 。例 もあらぬ憂 き 図版9 十七ウ、十八オ

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51 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) 瀬 に落 ちても/親 に物 をば思 はせじと 、妾 ほどには泣 きも/せで 、犬 に引 かれて行 きし健 気さ 。目 先 に顔 が/ち ら

と見 えて悲 しい

﹂と思 ひの有 り丈 言 ひ/続 け、 神 に仏 に無 事 を祈 り、 心 利 ゝたる老 女/等 を洲 崎 の 窟 へ代 参と 、表 には言 ひ做 して/次

冨 山 へ密 かに遣 はし 、姫 の安 否 を問 はさせ/給 へど 、男 勝 りの女 共 、 木 樵 に道 の案 /内 させ 、彼 の川 までは行 く者 あれど 、雲 霧深 く/常 に覆 ひ、 対 ひの岸 さへ見 え難 し。 / 水 滔

と速 き瀬 を、 縦 し舟 /ありとも 、女共 の渡 り得 つべき/心 地もせねば 、皆

空 しく/帰 り来 て、 斯 様

と申 すにぞ 、/ 五 十子御 前 はいとゞまた 、心 の/憂 ひ弥 増 して 、さる 山 中に / 如 何にして存 へあらんと思 せども 、 / 神 籤 を取 らせ占 ひに見 せ給 へば/どれ

も﹁ 恙 なくおはす﹂と言 ふに 、また/なか

に思 ひ増 さり 、嘆 き 積 もりて/病 となり、遂 には重 き労 きと/なり行 き給 へば、医 師 験 者道

の/力 を尽 くせど、月 に日 に衰 へ 給 ひ 、/次 の年 の秋 に及 び、 頼 み少 /なく見 え給 ふ。 義 真 は/枕 辺 に近 く寄 りて 、様 に/力 を付 け 慰 め給 へば 、/ 腰 元共 に助 けられ/辛 うじて身 を起 こし 、先 づ/暫 くは言 葉 なし 。/ 目 蓋陥 り● ●痩 せ衰 へし /頰 骨伝 ふ涙 /をば、押 さふる指 は/糸 に似 て、それより/細 き声 弱 げ/に、 ﹃斯 く患 ふも/ 何 故ぞ 。 其 は/申 さ ずとも/知 ろし召 さん 。/とても存 ふ/まじき身 の、 / 思 ひ出 でには/婦 志 姫 を今 /一 目 見 て、 玉 の/緒 も絶 えな ば/弥 陀 の御 国 へも/心 残 さず/参 るへし 。申 さば/愚 痴 と宣 ふ/べけれど 、国 の為 /親 の為 身 を捨 て/山 へ入 りたる姫 は、/類 稀 なる/ 志 をたゞ珍 /かなる 因 果ぞ と へ ぎ つ ︹十八ウ︱十九オ︺ き ゞ つ 思 ひ捨 てさせ/給 ふならば、/下 ばかりへ/お慈 悲 深 く、/子には邪 /見 の/親 なるべし。/冨 山 が /鬼 棲 む山 /にもせよ 、 君 が領 /地 の内 ならずや。/さらばせめては/一月に一 度/● ●二 /度 見 せ/にもやり、 /みづ/からも/行 き来 /して/見 も/し/見 ら/れも/するならば 、憂 さ慰 むる/便 もありなん 。爪 木 を/拾

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ふ 童 だに、/入 るなと更 に]戒 め給 ふ/御 心 こそ 訝 し/けれ。縦 しや悪 /魔 の障 礙 /ありとも、国 の 主 の/勢 ひ以 て、 今 猶 /姫 の存 へて/彼 の山奥 に /在 りや無 しや 、/知 らまく/● ●/思 さば/難 く もあらし。/思 ひ立 ちて/給 はれ﹂と掻 き/口 説 かれ て義 /真 は、 幾 度も/吐 息 をつぎ 、/ ﹃我 が一 言の 過 ちより/娘 を失 ひ、 其 所をさへ/病 むばかりに 苦 しむる、我 がまた/胸 の切 なさは、猶 弥 増 しと/思 し召 せ。人 をば山 へ登 /せぬは、我 が方 様の者 は/更 なり、もしや狩 人/木 樵 にも見 らるゝことの/ありも せば、さこそは姫 も/恥 づかしからめと、片 方 には/ それを思 ひ 、 また子の/愛 に惹 かされず 、 偽 り/言 はぬを下 に知 らする/と て の 業 なれど、御 身 の嘆 き/いと痛 まし 。心 安 かれ 。●]●ともかくも/姫 の 様 子 /を尋 ね知 り、 /遠 からず/吉 左 右 /聞 かせん。/ それを/力 に/気 を張 りて 、/病 を忘 れ/給 ふべし﹂ とて/此 の所 を/立 ち出 で給 ひ 、/熟 思 案 /に /暮 れ/給 ふ。 /次郎太郎/義 /業 は/去 年より/真野 ま の に/おはししが、 /母 のいた/づき危 ふしと/聞 ゝて、 図版 10 十八ウ、十九オ

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53 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) そのまゝ/此 方へ来 り、 / 夜 昼看 /病 忠 実やか/なり。 義 真 /その夜 義 業に ] 今 日のことゞも/物 語 り、 / ﹁五 十子が/心 休 めに/いと容 易げに/肯 ひしが 、/ 照 景/ 谷 を/渡 り得 ず/溺 れて/死 にし/由 を/聞 ゝ、 ﹁ 我 /行 かん 」 と/言 ふ者 /もなし 。/縦 しや/不 敵 の / 輩 あつて行 く/とも 、事 を仕 損 じ/なば我 がいき /ほひを落 とす/のみか、 その身 も/滅 びて/世 に益 な し。 / 我 殿 は如 何に/思 ふぞ﹂と/問 はせ給 へば 、/ 小 膝 を進 め、/﹃絶 えて久 しき/ へ ぎ つ ︹十九ウ︱二十オ︺ き ゞ つ 姉 上の様 子 知 れなば 、これに増 す幸 ひは/ 候 はじ 。所 詮彼 此 人 を選 び、 家 来 に/仰 せ給 ふに及 ばず。 某 冨 山 へ分 け登 らん。/父 の武 徳 母 の/慈 悲 心 、兜 ゝ/被 り鎧 と/着 て、 家 に伝 ふる/弓 矢 を 手 ば/さみ、 ● ●向 かはゞ如 何なる/障 礙 ありとも、 /本 意 を達 せぬ/ことあらじ。/許 させ給 へ﹂と/言 ひ敢 へず、/早 打 つ立 つべき/気 色 なり。/義 真手 を /挙 げ押 し止 め、/﹃ 潔 けれど/そのやうに/逸 る 図版 11 十九ウ、二十オ

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ばかりは/勇 士 に/あらず 。/親 ある/程 は遠 く/行 かず 。また/危 ふきに/近 寄 るを 、/宜 しき/人 ゝは/言 ひ 難 し 。/しかも/我 殿 は/郷 實 の/ 礎 、 ] 過 ちあらば/いみしき不 孝 。/必 ず/逸 るな 、/早 まるな 。/今 宵 に/限 る/ことにも/あらず 。 / へ 上 ● ] り よ 下 ● またせん/様 もありぬ/べし 。このこと/他 所にな/洩 ら され/そ﹂と諭 して許 させ/給 はねば 、義 業返 す/言 葉 もなく 、 畏 まりて退 き/給 ひぬ。義 真臥 し所 に入 り給 へ ど 、/物 を思 せば疾 くも寝 られず 。 暁 方 に/及 びしが 、 行 くともなく来 るともなく 、その身 は/何 時しかたゞ 一 人、冨 山 の奥 の谷 川の/此 方の岸 に立 ち給 へ り 。 この時 いと

/年 老 いたる翁 片 方に現 れ出 で、 ﹃君 は/ 姫 君 訪 ねんとて是 より奥 へおはするならば 、/御 道 標 仕 らん 。されども川 ゝ] 渡 り難 し。 右 手の方 に木 樵 の通 ふ/ある かなきかの 細 道 あれど 、去 年より/入 ること止 められしかば 、茅 棘 /やが植 へ茂 り、 何 処を道 とも知 る様 / なければ 、 僕 最 前枝 を折 りかけ/草 を結 びて 、所 枝 折 りして/置 き候 へば 、御 供 をせずとも/迷 はせ給 は じ 。 あれあの方 より/進 ませ給 へ﹂と指 差 し教 へ/参 らすれば 、 義 真は 訝 しく/ ﹁ 謎 の翁 ぞ 、名は如 何に﹂と/ 宣 ふほどに夢 覚 めて、六 つの/時 計ぞ軋 りける。怪 しくは/思 しながら、思 ひ寝 に寝 し/夢 なりとて、深 くは心 に留 め/給 はず。今 朝も彼 此 下

の/訴 へ事 を聞 こし/召 すに、秋 の日なれば/早 闌 けて、● ●/未 /の刻 に/及 ぶ /頃 、/僅 かに/暇 を得 /給 へり 。この時 /東 條の 城 預 /かり森 口九郎は 、/早 馬 にて駆 け/来 つて御 前 に出 で、 / ﹃急 のお召 しに万 /事 を打 ち捨 て、/ 只 今参 着 / 仕 る﹂と申 し/上 ぐれは、義 /真 は へ ぎ つ   如是畜生/發菩提心 ︹二十ウ︺ き ゞ つ 殊 に機 嫌 麗 しく 、/ ﹃久 しかりし森 口唯 之。 東 條/無 事 に治 まる由 、聞 ゝ伝 へて/祝 着 せり 。 政 に /暇 もあらじを 、わざ

/来 るは五 十子の病 /重 しと聞 いての故 か。 遠 /方 大 儀 ﹂と宣 へば 、/九郎は不 審

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55 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) の顔 色 /にて 、﹃ 此 は御 諚 /とも/覚 え申 さず 。/ 君 の仰 せを/ 承 り、 / 彼 の城 を/守 る/ 某 、/ 内 /君 の/御 病 態 /伺 は/まほしく/思 へども、/ 御 許 し/なきに/ へ 上 ● り よ 下 ● 城 を空 け、 / 参 るべくも/候 はず 。/急 /卒 の/御 召 し/故 、馬 に /鞍 をも置 き敢 へず、/夜 を日 に継 いで斯 くの/仕 合 はせ﹂ 。﹃しからば其 方に用 ありとて、/其 は先 づ何 と いふ者 が使 者 には● ●立 ちし 。/詳 しく言 へ。 我 は /呼 んだる覚 えなし﹂と/仰 せに九郎はいよ

怪 しみ 、/事 の 趣 詳 しく語 る 。 その/物 語 は四編 の 始 めに記 すを、続 けて読 み給 ふべし。 畫 國 豊 録 鈔 果 仙 ︹原裏表紙見返し︺ 嘉/永/七/甲/寅/春/新/鐫/目/錄 大 晦 日 曙 草 紙  廿編/廿一編    京山作/芳綱画 図版 12 二十ウ、原裏表紙見返し

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連 理翅 山 雞奇 縁  五稿/大尾    西馬補/芳綱画 八 犬傳犬の草 紙  廿八編/ヨリ/卅三編/マデ   仙果 錄/豊   國画/國貞画 松 浦船 水 棹 婦 言  三/四    仙果錄/國芳画 御 贄 美 少 年 始  一編/二編    同錄/國綱画 八 重 撫 子累 物 語  二/三    同錄/國貞画 俠 客傳 摸 略 説  一編/二編    西馬譯/同画 花 蓑 笠 梅 雅物 語   三/四    西馬譯/國輝画 嶋 巡 浪 間朝 日 奈  六編/七編    種員譯/國貞画 小 幡 小 平 次物 語   初/二/三    五瓶作/國貞画 盬 屋 /文 正   古 今 草 紙合   十編/十一編     仙果作/國輝画 東都南傳馬町一丁目/ 地本 草紙 問屋蔦屋吉蔵板 図版 13 三編下原裏表紙(色刷)、四編上原表紙(色刷)

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57 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) 登場人物一覧 ︵三編下︶   次に﹃雪梅芳譚 犬の草紙﹄三編下の登場人物名をかかげ︵読み仮名 ・ 漢字とも表記は原文のまま︶ 、 その下の︻   ︼ に、相当する﹃南総里見八犬伝﹄の登場人物︵その他︶の名を示す。 郷 實 治 部 大 夫 義 真︻里 見 治 部 大 輔 義 實︼     郷 實 末 元︻里 見 治 部 小 輔 源 季 基︼の子。安房四郡のうちの長 狭 ・平 群 両郡の主。庵 西かげ列 に滝 田城を攻 められるが 、義真の戯言を信じた飼い犬八 房がかげ列の首を取って帰ったことによって 、残りの安 房 ・朝 夷 の両郡をも手に入れ、室町将軍から治部大輔に補せられた。 杉 浦五 十 之 助 氏 幹︻杉 倉木 曽 介 氏元︼     郷實義真の家臣。義真がかげ列を倒した後、太 刀山︻館 山︼ ・平だち︻平 館︼ の両城を義真の嫡子義 業ととも に預かっている。 森 口九郎唯 之︻堀 内蔵人貞行︼     義真の家臣。長狭の郡の 東 條 の城を預かっている。 甘 瀧十郎照 景︻蜑 崎 十 郎 輝 武 ︼     義真の家臣。八房とともに冨 山 ︻富 山 ︼に入った義真の娘婦 志 姫 の行方を追う途中 、激流を渡り損ねて溺死

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する。 庵 西三郎かげ列 ︻安 西 三 郎大 夫 景 連︼     元安房の郡の太刀山の城主であったが、まろの小五郎のり時 ︻麻 呂 小 五 郎 兵 衛 信 時︼が杉浦氏幹に倒され た後 、その居城平だちをも乗っ取った 。自領の凶作の際に義真に援助を受けるが 、翌年義真の領地の飢饉に 乗じて挙兵し、東條・滝田両城を攻める。滝田城を攻略中、八房に首を噛み切られて死ぬ。 蕪 土 咄 平 ︻蕪 戸 訥 平 ︼     かげ列の家臣。かげ列が討たれても義真に降伏しなかったため、首を刎ねられた。 玉 章︻玉 梓︼     元平群の領主神 輿 光 寛︻神 餘 長 狭介 光 弘︼ の側室であったが、神輿が逆臣山 級濁左 衛 門 貞 金︻山 下柵左 衛 門      定 包︼に滅ぼされた後 、貞金の妾となる 。貞金が義真に討たれたとき捕らえられ 、斬首された 。会話にの み登場。 金 毬大助孝則︻金 碗大輔孝徳︼     金 毬八郎孝 利︻金 碗八郎孝吉︼の子。幼名片 三 ︻加 多 三 ︼。義真の近習 。米の催促の使者としてかげ列の屋 形へ赴き足止めされるが 、かげ列の挙兵を知って脱出するため咄平と戦い 、のち行方を眩ます 。会話にのみ 登場。

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59 翻刻『雪梅芳譚犬の草紙』(六) 五 十子御 前 ︻五 十子︼     郷實義真の内室。上総の国椎 津 の城主、丸 谷 入 道浄 連 ︻万 里 谷 入道静 蓮 ︼の息女 。婦 志 姫 、 義業の母 。八 房とともに冨山に入った婦志姫を心配し、やがて病に臥してしまう。 婦 志 姫 ︻伏 姫︼     郷實義真の娘。義真の戯言を虚言にせぬため八房の妻となり、冨山に隠れ住む。 郷 實 二郎太郎義 業︻里 見 治 部 少 輔義 成︼     郷實義真の子 。婦志姫の弟 。 かげ列を倒した後 、杉浦氏幹とともに太刀山 ・平だち両城を預かっている 。 の ち真 野 という所に逗留していたが、母の病を聞いて駆けつけ、看病する。 八 房︻八 房︼     義真の飼い犬。義真の戯言を信じて庵西かげ列の首を咥えて戻り、婦志姫を妻に請う。

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参照

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図版出典

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このように雪形の名称には特徴がありますが、その形や大きさは同じ名前で

Makomo Mushroom with Cheese, Salmon Roe, Wasabi, Roasted Rice Broth Sweetfish with Roe in Broth, Tuna with Mustard Vinegar Miso. 小 皿

の原文は“ Intellectual and religious ”となっており、キリスト教に基づく 高邁な全人教育の理想が読みとれます。.

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 11月 4 日の朝、 8