論 文 内 容 の 要 旨
論文提出者氏名 德田 直輝 論 文 題 目
Urgent Detection of Acute Type A Aortic Dissection in Hyperacute Ischemic Stroke and Transient Ischemic Attack 論文内容の要旨 背 景 急性期脳梗塞(AIS)や一過性脳虚血発作(TIA)患者で、急性A 型大動脈解離(AAD)を早期に診断すること は時に困難である。しかし、組織プラスミノーゲンアクチベーター(rt-PA)静注療法を避け、適切な外科的修復 術を行うためには、AAD を適切に診断することが極めて重要である。血圧の左右差、D-dimer 値、胸部 X 線で の縦隔拡大、頸部血管エコーでの総頸動脈解離、心エコーでの心嚢液貯留など、いくつかの診断マーカーが有用 とされているが、それらの利点や欠点はまだ十分に明らかにされていない。今回我々は、単施設前向き登録研究 を用いて、これらの診断マーカーの特徴を明らかにすることとした。 方 法 2007 年 1 月から 2014 年 12 月において、神経症状の出現から 4.5 時間以内に当施設へ搬入された AAD を合併 したAIS、TIA の連続例を対象とした。比較としては、2012 年 1 月から 2014 年 12 月までに発症 4.5 時間以内 に来院したAAD を合併していないAIS、TIA の連続例を用いた。対象例において、上肢の収縮期血圧の左右差、 搬入時のD-dimer 値、頸部血管エコーでの総頸動脈解離、心エコーでの心嚢液貯留、胸部 X 線での縦隔/胸郭比 (M/C ratio)を含む臨床的特徴を、診療録から後ろ向きに調査した。両群で診断マーカーを比較し、連続変数(血 圧の左右差、D-dimer 値、M/C ratio)については、ROC 解析からカットオフ値を求め、AAD 診断のための感 度、特異度、陽性反応適的中度(PPV)、陰性反応適中度(NPV)を比較した。 結 果 AAD を合併したAIS、TIA は27 例あり、そのうち4.5 時間の来院は24 例(女性15 例、75±12 歳)であった。 AAD を合併していない AIS、TIA は 2136 例あり、そのうち 4.5 時間以内の来院は 812 例(女性 305 例、73± 12 歳)であった。4.5 時間以内の来院は、AAD 合併群で有意に多かった(89% vs. 38%)。 ①背景因子 年齢、発症から来院までの時間、高血圧症や虚血性性心疾患、脳卒中の既往については両群で差がなかったが、 AAD 非合併群に比較して AAD 合併群で、女性が多く、脂質異常症や糖尿病、心房細動が少なかった。AAD 合 併例の14 例(58%)で胸背部痛の訴えがなく、いずれも意識障害をともなっていた。
②診断マーカー
AAD 非合併群と比較してAAD 合併群で、血圧左右差(30±20 mmHg vs. 12±11 mmHg)、D-dimer 値(中央 値38.1 μg/ml vs. 1.3 μg/ml)、M/C ratio(0.35±0.05 vs. 0.29±0.05)が高値で、超音波検査での総頸動脈解 離(84% vs. 1%)、心嚢液貯留(43% vs. 0%)が多くみられた。
AAD 検出のためのカットオフ値は、血圧左右差で17 mmHg、D-dimer 値で4.1 μg/ml、M/C ratio で0.32 で あった。
それぞれの診断マーカーの感度、特異度、PPV、NPV は、血圧左右差17 mmHg 以上で80%、75%、9%、99%、 D-dimer 4.1 μg/ml 以上で100%、86%、18%、100%、M/C ratio 0.32 以上で75%、76%、9%、99%、総頸動 脈解離で84%、99%、80%、100%で、心嚢液貯留で43%、100%、83%、98%であった。
結 論
AIS、TIA 患者でのAAD 検出において、D-dimer は最も優れたスクリーニング検査であった。 超音波検査での総頸動脈解離は最も特異的な所見であり、かつ、許容できる感度であった。