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深部静脈血栓症予防に対する物理療法の有効性の検討

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Academic year: 2021

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深部静脈血栓症予防に対する物理療法の有効性の検討

救急部・ICU

 O岡林万喜

   楠瀬伴子

キーワード:深部静脈血栓症、物理療法、深部静脈釦充速度

楠瀬悦子 永野由紀 弘末正美

山下幸一

I。はじめに  近年、深部静脈血栓症(以下、DVTとする)や肺塞栓症(以下、PEとする)の発生が増加しており、その 予防策が求められている1)。 DVTの予防には血液凝固能のコントロールと血流の維持が重要であり、その予防 法には副作用が少なく、かつ簡便な方法が求められる2)。今回、DVT発生要因の一つである静脈系のうっ滞に 着目し、静脈還流機能評価として下肢静脈副充速度を測定することにより、物理療法が下肢静脈血流に及ぼす 影響を明らかにし、ICU入室患者におけるDVTの予防について検討したので報告する。        表1 患者背景 n。研究方法  対象は術後ICUに入室した周術期患者20名と した。対象者を無作為に3群に分け、それぞれ誹 腹筋マッサージ群(n=6)、足関節底背屈運動群  (n=7)、末梢循環改善装置(A−Vインパルス) 群(n=7)とした。対象者の背景因子に関して は各群に差はなかった(表1)。  対象者を仰臥位とし、コントロールの深部静脈 マッサージ  (n=6) 底背屈運動  (n=7) A-V Impulse   (n=7)

年齢

65±12 70±5 70土7

咀り

4/2 4/3 3/4

身長

161土5 155土12 152土9

体重

49土5 55±8 59土9

体温

37.1土0.7 37.4土0.7 37.0土0.3 血流速度を測定した後、各群で誹腹筋へのマッサージ、足関節底背屈運動あるいはA−Vインパルスによる加 圧を開始し、各群で5分、30分、1時間、2時間後に深部静脈副充速度を測定した。深部静脈皿充速度の測定 には、超音波画像診断装置ALOKASSD-5500を用い、測定部位は大伏在静脈分岐部より1cm中枢の左大腿静 脈とした。結果は平均土標準偏差で示し、統計学的検討はANOVAを用い、P<0.05未満をもって有意とした。 また、各群における血流速度の平均増加率を比較した。        誹腹筋マッサージ群(n=6)     *P<0.05 v8施行前 Ⅲ。結果  誹腹筋マッサージでは、5分後に有意な増加が 認められた(図1)。また、増加率は29.9%であ った。足関節底背屈運動では、コントロールf直に 対し血流速度は全過程で有意に増加しており(図 2)、なかでも5分後の増加率がもっとも大きく、 37.1%であった。 A−Vインパルスの場合、施行 前のコントロールイ直に比べ血流速度は時間の経過 と共に徐々に増加傾向を示し、2時間後に有意な 血流速度 (om/sBo)14.0 O O p Q p p p 2 0   8 6 4 2 0 1 1 T*       。

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増加を認めた(図3)。5分後の血流速度の増加率は12.4%であった。 図1深部静脈血流速度の変化 IV.考察  通常、静脈の血液還流には呼吸ポンプ、筋ポンプ、フットポンプがあるが、ICUに入室し長期臥床を強いら れた患者は、ベッド上安静によりその作用が低下し静脈のうっ滞を起こしやすい状況にあると考えられる。誹 腹筋へのマッサージや足関節底背屈運動は筋ポンプ作用を利用したものであり、下肢筋、特に誹腹筋やヒラメ 筋など骨格筋が収縮する際に、筋肉内の静脈が圧迫されることによって血流を増加させる。一方、A−Vイン −124−

(2)

足節底背部(n=7) p p p p p p p Q 4 2 0 8 6 4 2 0 1 1 1 1   C   e   S /   m   C ぐ *P<0.05 V8 施行前 T * Zj k-∼、、_工* I*  。* L/1  1  こ` ̄? T l         l         l         l

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A−Vインパルス群(n=7) 血流速度 (cm/8eo)14.0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 8 6 4 2 0 1 1 *P<0.05 v8 施行前 .* T   、-    T   −一 一 1       ‘

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      図2深鄭静脈血流速度の変化       図3深部静脈血流速度の変化 パルスは、足底部に装着したパッドが足底静脈叢を加圧し、フットポンプ作用により血流を改善するとされて いる。  今回、深部静脈血流速度を測定し、A−Vイン パルス、誹腹筋マッサージ、足関節底背屈運動、 すべての群において有意な血流速度の増加を認め た(図4)。また、5分後における血流速度の平均 増加率をみると、足関節底背屈運動、誹腹筋マッ サージ、A−Vインパルスの順で増加しており、 これは石井の健常者に対し物理療法を行った研究 の結果とも合致している3)。足関節底背屈運動、琲 腹筋マッサージ群においては、5分後の血流速度 からは低下傾向を示しつつも、コントロールイ直に 比べると血流速度は増加の傾向を維持しており、 血流速度 (cm/sec) '*        12        10         8 6   4   2   0 →−A-Vインパルス 一●一誹腹筋マツサーシ ー●←足関節底背屈運動 ●fs令  φ參 やりs参 ¥帰命 タダ夢゛ 図4深部静脈血流速度の変化(3群) この結果から、2時間ごとの体位:変換の度に足関節底背屈運動、誹腹筋マッサージを行うことで下肢静脈血う っ滞に対して十分な効果が得られるものと推察された。  A−Vインパルスについては、術後ICUに入室した患者の多くは容量│ │管中の体液量が減少し、足底静脈の プーリングが乏しい状態にあり、施行直後の血流速度に有意差が得られなかったものとも考えられた。しかし、 その後徐々に血流速度は増加の傾向を示し、2時間後には有意な結果が得られた。使用台数に限りがあり多く の患者に使用できない現状や、以前、A−Vインパルスを装着した症例で足背部に内出血が認められた経験が あり、DVTリスクファクターを評価すると共に、患者の状態を考慮し、適した物理療法を選択する必要がある。 V。結語  誹腹筋マッサージ、足関節底背屈運動、末梢循環改善装置施行時の深部静脈血流速度を測定した結果、下 肢末梢循環が改善されることが示唆され、これら物理療法はDVTおよび肺塞栓症に対し、安全、簡便、無侵 襲な予防法として有効であると考えられた。 引用・参考文献  1)応儀成二:下肢深部静脈血栓症の診断と治療,静脈学, 9 (3), 263-270, 1988.

 2)紅露伸司ほか:砕石位による下肢血流うっ滞に対するA-V Impulseの有用性, Can JAnesth, 49 (2),    144-147, 2002.

 3)石井政次:当院でのTHAにおける深部静脈血栓症の予防対策,整形外科看護, 7 (1), 28-32, 2002.

トlz成15牟2月4∼5日,札幌市にて開催の第3o回日本集中治療医学会総会で発表〕

参照

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