ヴィクトリア朝ソネット集について(V)
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(2) 22 田. 岡. Joan. Reesが推賞するMonna. 卑. 雄. InnominahlはChristinaがその序文に書いている通り,. 「アルピ派とトゥルパドゥ-ルを生み出した地域と時代」,即ち12世紀のプロヴァンスを舞. Christina. nominata)に語らせるという構成を二晩っている(5)。この場合,. b-. (Monna. 台にして,後のBeatriceやLauraと並ぶべき立場の「名もなき貴婦人」. Rossettiがどのよ. うなことを如何に「名もなき貴婦人」に語らせるかは,全く彼女の創造(想像?)に任さ れている訳で,そこにはっきりした「貴婦人」の`cbaracterization'ともいうべきものが行 われているとは言いがたく,ここにはエリザベス朝のものも含めて他のソネット連作集に おける作中の「詩人」と作者自身との関係という共通の問題があると言えるのであって, どこまでが`Monna. lnnominata'の声であり,どこからがChristina自身の声であるのか,. ここで聞かれるのは「貴婦人」の口を通して語られるCbristina自身の声であると言えるの か,という問題が生じて来る。そしてこうした状況が劇的で多様なテーマの展開を可能に しているとも言える。 from. Joan Reesは,ブラウニング夫人のSonnets. Rort2queSeに欠けているものは. the. 「劇的特質」 (`dramatic quality')であり,そこには`dramatic. appearance'はあっても`real-. ity'が欠けているとし,特に呼びかける相手への言葉の使い方が大げさで抑制を欠いている と指摘する(6).それと対象をなす作品としてMonnaZnnominataの6番目と7番目の作品 を挙げている。この2つのソネットに共通しているのは,. (`tbat characteristic. が劇的な展開をとげるというソネットの特質」 which. depends. on. of tbougbt. progression. 「詩行が進むにつれて思考と感情 drama. of the. sonnet. feeling')であるとし(7),第6番目のソネッ. and. トでは「2つの相反する衝動が,行が互いに呼応しながら展開し,それとあいまって『2 つの愛』 (`two. loves,. human. one. divine')が互いに自らを主張し合って最後. and the o也er. のパラドックスをなす結末. I cannot. love. you. if you. I cannot. love. Him. love. if I love. Him,. not. not. you.. へ至るとする(8)。 Reesはこの作品の六行連句(sestet)の中でlove'という言葉が9回線り返して使われて いることに注目し,こうした言葉の効果的使い方と詩行の展開が,簡潔で効率的な主題の 表現,二つの愛の区別とその両方を包含する更に大きな愛の表現を可能ならしめていると 指摘している(9)0 ここで我々はShakespeareのSonnetsにおいても,そのような`love'という言葉の使い 方があったことを思い出す。. Take. all my. What. hast. No. love,. All mine. Son.40がその著しい例である(10)0. loves, thou. my was. then. love, thine,. my. love,. than. more. that. thou. before. take. yea,. thou. hadst. thou. mayst. them. true. badst. all; before?. love this. call;. more..
(3) 23. ヴィクトリア朝ソネット集について(Ⅴ) if for. Then. blame. I cannot But. taste. wilful. I do forgive Although And. thou. thee. for my. bear. receivest, thou. thyself. thyself. usest;. deceivest. refusest.. gentle. thief,. thee. all my. poverty;. it is. a. knows. love's. love. robb'ry, steal. love. love. my. if thou. of what. thy. thou. yet. To. love. be blamed,. yet. By. my. greater. than. wrong. grief. bate's. injury.. known. この12行の中に10回線り返される`love'という言葉は実に多様で複雑な使われ方がされて 「愛される気持」. 「愛する気持」. おり,川西進氏の説明を借りれば,. 「愛する者」. 「愛される 「精神的. 者」の少なくとも4通りが考えられる他,同じ「愛」といっても「肉体的なもの」. なもの」 「真実(true)なもの」など様々な内容を持つという(ll).こうした'love'という言葉 「それぞれの場合にどんな意味を持つかを規定することは困難であ. のもつ複雑性と晦渋性,. る」(12)という状況が,詩人の愛情関係の破綻という現実に直面するのを免がれようとする 姿勢,自己串晦の状態を示すのに適していると言えるかも知れない。 論理の展開の仕方においてShakespeareのSonnetsの世界との共通性を感じさせる箇 所がMonna. Innominahzにもう一つある.. Yea,. since. I too. am. And. That But Your Your And. I. should. since. the. pleasure honourable you. love. dance. l. jocund. pace.. with. heart. is yours. is my. pleasure,. freedom. companioned. dear. one. that. was. not. my. own,. right,. free,. me. am. delight;. mine. right. makes i. weave,. be. some. you. conceive. crowns. it might. you,. grudge. rich,. bridal. while. the bridal. if l did not. me. make. riches. crowned,. thread. For. your. alone(13).. (Monna. Innominata. 12). ここに見られるのはShakespeareのSonnetsの随所に出て来るテーマ,すなわち,自分と ChristinaRossettiの場合,彼女. 相手が同一であるとすることから生ずるconceitである。. の想像の中で描かれた貴婦人の想いを述べるのに効果的に使われているといえようが, shakespeareの場合はもっと複雑である。 貴婦人との間の「心の交換」. M.C.Bradbrookによれば,これは元来愛人と. ('excbange ofbearts')という(宮廷風恋愛の)コンヴェン. ションであったということであるが14),. Shakespeareの場合「青年」との友情(?)関係. の破錠という状況において,非情な,殆んど被虐的とも言える現われ方をする。. When. thou. shalt. be. disposed. to. set. me. light.
(4) 24 田. 岡. And. place. Upon. my. thy. And. side. against. prove也ee. That. l by. For,. bending. thee. Say. that. l will. And. of my. Againt. thy. win. much. didst. thoughts. and. fault,. some. offence. l straight. halt,. will. (Son. 89). defence.. no. making. (Son.88). me.. for. me. upon也at. reasons. thee,. on. I do,. forsake. lameness,. glory.. too,. double-vantage. comment. Speak. art forsworn.. thou. gainer. myself. vantage,. thou. scorn,. of. ,也ough. loving. to. that. 雄. I'll fight. shall a. all my. Theinjuries Doing. me. be. this will. eye. myself. virtuous. in losing. thou. And. in the. merit. 卑. このテーマはSonnetsのもっと早い段階でも,様々に形を変えて現われる.. 0,. how. When. But. thou. worth. the. flatt'ry. thee,. Painting. joy. :. my. ! Then. myself, my. with. all the. art. bere's. Sweet. 'Tis. thy. age. that with. mannevs. better. part. friend she. l. but. for myself. (Son.39). of me?. and. loves. beatlty. l sing. may. are. one.. me. alone. ! (Son.42). ∫ praise, days,. Of thy. (Son.62). こうした例に見られる通りSbakespeareの場合,実に多様な現われ方が見られるが, Christina. Rossettiの場合,. Monna. Znnominata. No.12のような詩篇において,どの桂度. まで彼女自身による人物造形,客観化が行われ,どの程度まで彼女自身の心情の表現が行 われているか,は簡単に決められる問題ではないように思われる。これはCbristina Znnominataの最後のソネット(No.14)と更にその後に来るLater. settiのMonna A. Double. Sonnet. of Sonnetsとの関連においても考察されるべき問題と思われるo. Ros-. Lzfe. (続). 注 (1). Patrick. Cruttwell. :. The. English. Sonnet(Writers. and. their Work,. No.191). 1966.pp.42-. 43.. (2) Joan U.P.. Rees, 1981.. The p.155.. Poet7y. Of Dante. Gabn'el. Rossetii. :. Modes. :. of Self一物71eSSion, Cambridge.
(5) 25. ヴィクトリア朝ソネット集について(Ⅴ). (3). TLS,. Feb.17,. (4) Christina. 1995.. 4. Rossetti,. pp.. -. Selected. 5.. 'A politically. Poems.. ed.. Poetical. Wo71ks. by. Christina'. correct. Introduction,. C.H.Sisson(Carcanet,1984).. p.20,. (5) W.M.. (ed). Rossetti. :. The. of. Chn'stina. Rossettiの標準的. pp.58-64.ついでながらChristina. Geo7gia. text. Macmillan,1924. Rossetti. も, Dante. Gabrielや. E.B.. Browning程でないにしても,手に入りにくい。人手可能の詩集(選集)は彼女の膨大な作品の ほんの一部である。 (6). Rees,. op.°it. pp.150-151.. (7) Ibid, p.156, (8) Ibid, pp.156-157. (9). Ibid,. p.159.ここで扱われている大きな主題自体には今はあえて触れない。. (10) TextはJohn によるo. Kerrigan(ed). :. The. Sonnets. and. A Lover's. Complaint. (Penguin. Books.. 1986). 以下Sonnetsからの引用も同様である.. (ll)川西進・編,注『シェイクスピア・ソネット集』. (鶴見書店,昭和46年初版),. p.104.. (12)同上 (13) W.M.Rossetti(ed): (14) M.C.Brodbrook,. The. Poetical. Shakespewe. and. Wo戊s. of Chn'stina. Elizabethan. Poet7y,. Georgia Chatto. Rossetti, and. p.63.. Windus,. 1951.. p.143..
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