看護学実習における「教え-学ぶ」の成り立ちに関する記述的研究 : 看護教員と看護学生の語りを中心に
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(2) 甲南女子大学研究紀要第 4号. 看護学 ・リハ ビリテーシヨン学編 (2010年 3月. ). が抱 く看護 実践 の 予 測 の 連続性 を学生 の 存在 に よって絶 たれ る こ とで 「 今 ,こ こ」 にお け る看 護 の 「教 え 一学 ぶ 」 の連 関が始 まる こ と,が 明 らか になった。 キ ー ワ ー ド :看 護学実習 の 成 り立 ち,看 護学教育 ,記 述 的研 究. 有. 5し つつ ,そ こに生 成す る出来事 の なか に共 に織 り. 込 まれて しま ってい る とい える。 臨地実習 で例 えるな. は じめ に. らば この 出来事 とは看護実践 を意味 し,患 者 を含 めた 看護学 生 (以 下 ,学 生 )に とって ,現 実感溢 れ る看. 状況 に教 員 と学 生が共 にその場 に関与 しなが ら,相 互. 護 を学 ぶ場 は看護学実習 (以 下 ,臨 地実習 )で あ る。. が倉1り 出す ひ とつ の 出来事 とい え よ う。 したが って. この 臨地実習 は,他 の専 門職教育 に比 してその位置 づ. 臨地実習 の 成 り立 ちを教員 と学生 の それぞれ の経験 と. けや時間数か らみて重視 されてお り,ま た看護学教育. して形取 るこ とはで きず ,ま た相互 を切 り離す こ とも. 研 究全体 の 中 で ,臨 地実習 に関す る研究 の 占め る比率 が高 い いこ とか らも,看 護学教 育 の 特徴 と言 え よ う。. で きない 。で は ,二 項 としてで はない教育 の 成 り立 ち. 臨地実習 に関連す る研 究 をみて い くと,一 つ は学 生 を. 本研究 は,臨 地実習 とい う場 で ,看 護 を教 え,学 ぶ. 対 象 に した学習内容 の類型化 ,患 者 との 関係 を巡 る学 び につ い て な ど2で あ り,二 つ は看護教 員 (以 下 ,教. とい う こ とが どの よ うに成 り立 ってい るのか に迫 って. ,. とは,ど の よ うな もの なのだろ うか。. い く。 これ らを明 らか にす る こ とで ,教 員 と学 生 との. 員 )を 対 象 に した教授 活動 内容 ,教 員 に求め られ る能 3が る。 この よ うに教 育 を あ ,学 生 ,教 力 の 分類 な ど. かかわ りにお い て看護が 一 定 の 意味 と して立 ち現 れ る. 員 とい ういず れか一方 か ら分析 的 にみ つ め る視線 に よ. 員 と学 生 との教育 的 な関係 につい て明示す る ものであ. って ,臨 地実習 にお ける学習 の特徴 は明 らか にな り. る。. ,. そ の一 端 を開示す る とともに,看 護学教育 にお い て教. 看護学教育 の体系化 を 目指す こ とを可能 に して い る。 しか し他方で は,臨 地で看護 を教 える,ま た看護 を学. Ⅱ。 目. 白 勺. ぶ とい う出来事が ,ど の よ うに成 り立 ってい るのか と. 本研究 は,臨 地実習 とい う場 における教え,学 ぶ と. い う研究 は見当た らな い。 教員 に とって 日常化 して い る看護 を教 える とい う営. い う事態 の成 り立ちを明 らかにするために,看 護学教. み に 目を移す と,教 員 は「何 を,ど の よ うに教 えるの. 育にかかわる教員 と学生の語 りを通 して,解 釈 し,記. か」 に注意 を払 い ,学 生 はその内容 に耳 を傾 け看護 を. 述 してい くことである。. 理解す る,と い う二 項 と して捉 え られ る ことが 多 い 。. そ こには,「 看護 を知 らない学生」 に,「 看護 を知 って. Ⅲ。研 究 方 法. い る教員」が教えるとい う視線が見え隠れする。 しか し,看 護が近代科学 の範疇 では捉 えきれない不確実性. 1)看 護 を教 え,学 ぶ とい う事態 へ の接近 の仕方. の もとに為 される ことを前提 とすれば,教 員が まだ到. 先行研究 で は,教 員 と学 生 とい ういず れかの観点 に. 来 してい ない看護 の行 き先 を予測 し,学 生 を教 え導 く. 着 目し研 究が為 されて きた。 しか し山口に よれ ば,教. ことがで きるのか,と い う疑間が残 る。. 師 で も,看 護 師 で も,彼 らが あ る 目的 を持 って他者 と 関 わる とき,ケ アす る者 の所作 ,言 葉遣 い等 は他者 ヘ. 翻 り,教 員が授業 で学生 と向 き合 った とき,自 身 を 目的達成へ と懐柔 しない限 り,そ の思惑通 りには行か な い経験 をす る。 それ は教 える とい う実践 的行為が. ,. の 作用 =行 為 の一 部 を為 して しま う°。 そ の ため 看 護 を教 える教員 を切 り離す形 で ,客 観 的 に教育 の作用 を. 相 手 の 状 況 に応 じて無 意識 に動 か され た私 の か らだ. 取 り出す ことはで きない。 つ ま り,学 生 の前 に立 つ教. が ,相 手 に見 られて我 に返 る とい う反省 を通 して ,次 中 な る動 きを生 み 出 して くる 過程 で あ り,相 互 の 関係. 員 とい う存在 そ の ものが ,看 護や教育 の 個別具体 的 な 媒体 になるか らであ る。 したが つて 臨地 で教 え,学 ぶ. 状況 に依存 して い るか らである。す なわち教育的関係. とい う事態 の生 成 に迫 る と き,一 般化や普遍性 を求 め. が成立す る と き,そ の 関係 の両端 の項 に,結 果 的 に生. るこ とはで きな い し,そ の場 に在 る教 員 と学 生 を分 け. 起 す る教 育 主体 と教 育 対 象 は ,間 身体 的 な世 界 を共. て捉 える こと もで きない。 そ こで ,教 員 と学 生 の相互.
(3) 前川幸子 他 :看 護学実習 における「教 え 一学 ぶ」 の成 り立ちに関する記述的研究. が ,患 者 とかかわ りなが ら看護 とい う場 を どの よ うに. 89. 6)信 頼性 と妥 当性 について. 創 りだ して い るのか とい う内実 に迫 るアプ ロー チが求. 研 究過程 は研 究者 間 で検討 し,さ らに現象学研 究者. め られ る。以上か ら本研 究 で は,教 員 と学 生が共 に患. か らの ス ーパ ーバ イ ズ を得 た。 また ,A教 員 と学 生. 者 の看護 に参加 した場面 に着 目し,そ の場 で何 が生 じ. Mに は内容 を確 認 して貰 い ,デ ー タ開示 の 了解 を得. て い るのか を捉 え るため に フ イー ル ドワ ー ク を行 っ. た。. た。 また学生 と教員 の 臨地実習 で経験 した ことが らを つ 聴 き取 る方法 と して ,対 話 と しての イ ン タ ビュー を. 7)倫 理 的配慮. 参考 に した。 この 聞 き取 りの 過程 にお い て ,教 員 ,学. 倫理審査委員会 の承認 を得 て ,調 査協力 の 同意が得. 生 ともに印象深か った 出来事 が共通 して い た場面が浮. られ た教 員 お よび学 生 に研 究 内容 を説 明 した。 そ の. かび上が った こ とか ら,今 回はそ の場面 に焦点 をあて. 際 ,学 生 に対 しては,協 力 の有無や話 された内容 は. るこ とに した。. 成績 に関与 しない こ とを説 明 した。教員 と学 生が所属. ,. す る大学 と,臨 地実習施設 に研 究 の 説明 を行 い協 力 の 同意 を得 た。 また患者 の援助 に参加す る際 は,患 者 に. 2)デ ー タ収集期間. 説 明 し了解 を得 て行 った。調査 の 過程 にお い て教 員 の. 平成 20年 1月 ∼ 平成 20年 5月. 職務遂行 ,お よび学 生 の学習 を妨 げない よ う調整 を し. 3)研 究協 力者. た。. 看護 師 の経験 10年 ,看 護系大学 で 10年 以上 の教 育 経験 が あ る. Aさ. Ⅳ .結. ん (40歳 代 ,女 性 ),A教 員 と臨地. 果. 実習 (看 護援助 を中心 と した基礎 看護学実習 )に お い. Mさ ん. 学生). 1)看 護 を見 る,聞 く,行 為 す る 学 生 Mは ,患 者 S氏 (男 性 70歳 代 ,病 名 :肝 癌 を受 け持 った 。 S氏 は妻 (70歳 代 )に 同行 され ,「 治. 4)デ ー タ収集方法. 療 には この病 院が良 い」 と遠方 の他県 か ら実習施設病. て場 を同 じくした学生 の 2年 生. (20歳 ,男 子. ). A教 員 と学 生 が か か わ る実 習場 面 の 参 与観 察 を行. 院 を紹介 された のだ った。妻 と共 に馴染 んだ土地 を離. った (患 者 に援助 を行 う際 は,教 員 や学生 と共 に研 究. れ初 めて 降 り立 った場所 で ,S氏 の治療 が始 ま った 。. A教 員 と学 生. 「昔 か ら寒が りでね」 と S氏 は と小 さな声 で 話 し,パ. Mに ,数 回 に渡 り個 別 に実 習経験 につ い て場 面 を想. ジ ャマ の 袖 か らはみ 出 した厚 手 の 下 着 を掌 まで 引 い. 起 しなが ら自由に語 つて もらった (1回 1時 間程度 )。. た。妻 は近 隣 のホテルに住 んで い る よ うだ つたが ,毎. いず れ も許可 を得 て録音 した。. 朝 9時 には. 5)分 析方法. 休 み を取 る姿 が見 られた。. 者 もケ ア に参加 した )。 実 習 終 了 後 に. S氏 の ベ ッ ドサ イ ドに い た。疲 労 の ため か ,時 折 S氏 が横 に な ってい る ベ ッ ドに頭 を伏 せ て. フ イー ル ドノー トは,教 員 と学 生 の言葉 ,動 作 ,表. S氏 を受 け持 って 3日 目,学 生 Mは 前 日の生 理機. 情 な どを中心 にで きる限 り記述 した。 また録音 した イ. 能検査 のため に一 日安静 を保持 しなければな らなか っ. ンタビュー 内容 は,逐 語記録 と して作 成 した。解釈 と い 記述 につ い て は,西 村 が示 した対話 ・記 述 ・解 釈 を. た. 基盤 に した質的研 究 を参 考 に した。具体 的 な手続 き と して は ,① 以上 の 記 録 を辿 り直 し,A教 員 と学 生 と の 臨地実習 の経験 を交差 させ なが ら幾度 も読 み返 し ,. 全体 を把 握 した。② A教 員 と学 生. Mが 共 通 に語 られ. て い る場 面 に着 目し抜 き出 した。③抜 き出 したデ ー タ の解釈 は ,A教 員 と学 生. Mと. のかか わ り合 い の 中 で. 経験 した事 実 を当事者 の視 点 に寄 り添 い ,そ の経験 が どの よ うに生 み出 されて い るのか に注 目した。④ そ の 解釈 を もとに,そ れ を表 わす テ ーマ を見 出 しス トー リ ー と して記述 した。. S氏 の清拭 の援助計画 をたてた。 「 (sさ んは)歩 くのが好 きで,じ っとしと くの がなんか嫌だとか,そ うい うのは言 つてたんで。 か といって,安 静 だったんでち ょっと連れ出すわ けにもいかず。だか ら退屈 しない ように,な んて 言 うんですかね,話 を聞 こうとか思って。で も思 ったんですけ ど,よ く考えると,奥 さんが いつ も いて話 した りしたか ら。なんかお風呂が好 きって 言 ってたか ら,気 持 ちよくなって欲 しい なあ と思 って,ま あ と りあえずそうい うことを考えて」. 学生 Mは s氏 に清拭 をすすめようと伝 えに行 く.
(4) 甲南女子大学研究紀要第 4号. 90. 看護学 ・ リハ ビリテー シ ョン学編 (2010年 3月. ). と,「 なんか今 日は,(清 拭 は)め ん ど くさい なあ,お. その,あ の時,『 (援 助が)そ んなで揺 らぐものだ. 風 呂に入 らな,め ん ど くさい」「お風 呂に入 らん と. ったの』 って言 われて。清拭が終 わってみて,そ. そんな,気 持ちす っ きりはせん よねえ」 とい う答 えが. うだったなって,す んな り。 こう,あ ,僕 ,そ ん. 返 って きた。横 でそれ を聞 い て い た妻 は「せ っか く. な ぐらい しか考えてなか った,み たい な。そ う言. Mさ んが して くれるって言 っているのに。頑固なん だか らね え」 と言 い,学 生 Mに 向か って「 申 し訳 な い わね」 と言葉 を添 えた。学生 Mは 「ああ,そ うで. われる,そ れを言われて,な んか,な んか。 う∼ か援助 を考えて。で,そ の半端 に集めた要素 ばっ. す よね 000」 と下 を向 き,わ か りましたと笑顔 で告. か りで,そ の集 めた要素 もしっか り見て な くっ. げてナースステー シ ヨンに戻った。. て,そ んなに重要性 とか もしっか り考えてなかっ. Mが A教 員 にその経緯 を伝 える と,「 そ うな の,Mさ んの (援 助 の)必 要性 はそんなことで揺 ら ぐものだったの」 とい う言葉が返 って きた。学生 M. たなあって思 って。 」. ,. 学生. は「えっ・・・」 と口ごも りなが ら「で も先生 ,sさ んは,今 日はめん どうだか らした くないって言 つてま. ん,な んかそれを言 われた時に,し っか り,な ん. A教 員 は,学 生 Mに. とって この 時が清拭 に 関心 を. 持 ち始 め る きっか けにな った と考 えて い た よ うで ,次 の ように語 ってい る。. す」 と強 い 口調で A教 員 に返 した。A教 員 は「患 者 さんのニー ドってそ うい うことなの ?し た くない とい. 助 を行 うことなんですね。援助 を一緒 にやってみ. った らしな くていい わけ ?」 。暫 く沈黙が続 いた後. る,ま ずそ こか らじゃない と始 まらない。Mさ. ,. A教 員 は「わた しが考えている ことはね ・・・」 と S 氏 に清拭が必要 な理由を学生 Mに 伝 えていった。学 生 Mは ,最 初厳 しい表情 で身体 を真直 ぐに して聞 い ていたが ,そ の過程 で頷 き,時 折尋ね,「 そ うか 0・. Mの 表情 は次第に緩や かにな り,長 身のその 身体 を曲げなが ら A教 員 の言 葉 に耳 を傾けていた。そ して A教 員 は学生 Mを 連れ ・」 と言葉 を漏 らした。学生. て,清 拭 の準備 を し始めた。共 に S氏 のベ ッ ドサ イ. 「わた しの場合 ,基 本 は,ま ず学生 と一緒 に援. んは体調 を崩 して前 日. (実 習開始後 2日. 目)休 ん. でいたで しょう,だ か ら彼には焦 りがあった と思 うのね,何 か (援 助 を)し なきゃって。実習始 ま った時 の一 日つて学生 に とっては大 きい で しょ う。他 の学生は. (病 棟 の)看 護が見えて きてい ろ. いろ言 い始 め る し。. (中 略. )Mさ. んは sさ. んの援 助 を sさ んの ニ ー ドと して まだ考 えて い な い。 だか ら結 局 は患 者 さんが面伊1と い った ら. ,. ドに行 き,A教 員 は「Sさ ん, ち ょっとだけ拭 きまし. あ あ そ うで す か って ,引 き下 が つ ち ゃ う。 そ れ. ょうか,昨 日は検査で汗 もか きま した し・・・」「 身. で ,Fそ れで いいの. ?』. って伝 えた ら,Mさ んが. 体 を拭 くと気持 ちいいんです よ,試 してみ ませんか」. 『sさ んが 今 日は いい つてい うの に , ど う して し. と説明 を していった。「そ うね え,ち ょっとだけね え ・・ 0」 S氏 の と余 り気乗 りが しない返事 を聞 い た. なけれ ばい けないの か』 み た い な こ とを言 って 。 わた しもカチ ー ンと来 るわけ,頑 固な んだか らっ. Mは ,A教 員 か ら. て (笑 )。 だか ら,『 Sさ ん は RFA"の 傷 が あ る. 「次 の タオル絞 ってお い てね」「背 中を拭 くか ら支 え. し,前 日の 検 査 (後 )の (皮 膚 )状 態 も気 に な. て」「 ドレー ンチューブと点滴 ライ ン,圧 迫がないか. る。それにあんなに ドレー ンとか カテーテル とか. 気 をつ けて見てて」 と,随 時指示 された声 を目安に動. 入 つていて ,ま して栄養状態が よ くな い か ら感染. いていった。そ して「ちょっとだけ」 の 拭 は,結 果. も気 になる し,痩 せ て い るか ら圧迫 も気 になる. 後,す ぐに清拭 は始 まった。学生. ,. '青 だっ 的 に 15分 程度 で全 身清拭 となって終 わったの. それ に昨 日痛 みで寝 れて な い って. (申. た。S氏 は,酸 素マス クの中か ら少 し枯れた声で 「こ. 言 つてたで しょう』 つて。. (中. んなに さっぱ りす る とはね ぇ」「わか らなか ったね. んが 清拭 を断 る とい うの は,清 拭 の気持 ち よさを. え」 と話 し,そ の 後 目を閉 じた。S氏 の酸素 マ ス ク. わか ってい な い ん だ って 思 った の ね。 だか ら S. は,吸 気 で透明にな り呼気 は蒸気 で 白 く曇 る。その間. さん の清拭 を しようと思 った ,Mさ ん と一 緒 に。. し送 りで ) 略 )患 者 さ. に変わった。 隔 は徐 々に長 くな り小 さな安定 した寝虐、 学生. Mは ,こ の ときの清拭 を次の ように語 った。. 「 (A教 員 が )ど ん どん ,ど ん どんや って い っ て驚 きま したね ,結 局全部 して ,着 替 えて って。. A教 員 も清拭の援助が Mは 「お風 呂が好 き」 な. Sさ んの状 況 を,学 生 Mも 必要だ と捉 えてい た。学生. S氏 に少 しで も「気持 ちよくなって欲 しい」 と思 い. ,. 清拭 の計画 をたてた。 しか し学生. Mは ,s氏 の「め.
(5) 前川幸子 他 !看 護学実習における「教 え 一学 ぶ」 の成 り立ちに関する記述的研究. Mの 表情 は真剣 で,鼻 に汗 をか きなが らそ. ん ど うだか らいい 」 とい う言葉 でその援助 を取 り下 げ. く。学生. る。 そ の 時 ,A教 員 か ら援 助 の必 要性 につ い て 問 わ. の声 と教員 の動作 を追 いかけるように援助 を行 ってい. Mは 「今 日はめ ん ど うだか らい い 」 とい う S氏 の 言 葉 を,s氏 の 要 求 と して受. た。. れ る こ とになった。 学 生. け止 め た。 そ の ため. S氏 が清拭 を拒 否 す れ ばそ の必. A教 員 に差 し戻 したの で あ る。A教 員 は ,頑 なな学生 Mに 「 カチ ー ン」 と来 な が ら も,学 生 Mが 実習 を休 んで い る とい う背景 に思 い を寄せ て い く。学生 Mは ,休 んで しま った一 日の. 要 はな い ,と 強 い 口調 で. 援助が終 えた後 ,学 生 Mは 「焦 ってばか りで ・・ ・。頭が真 っ白ってこうい うことですね,今 は何 も残 っていない感 じです」 と語 った。 「全然 ,全 然 ,上 手 く拭 けな くって,な んか こ う,管 ,通 ってる じゃないですか,い ろい ろと。 で,最 初それにち よつとび くび くつてい うか,こ. 重 さを他 の 学 生 と比 べ て い るのか も知 れ な い ,す る. う,こ こ. と,援 助 へ の 焦 りが で て くる ので はない だ ろ うか。 A 教 員 は グル ー プで 学 ぶ 学 生 た。 加 えて. こっち. A教 員 は ,S氏 は,清 拭 の必 要性 だ け で. け を看 護 の 「 ニ ー ド」 へ と変化 させ て い く。 そ して. S氏 に対 す る援助 の参加 を促 したのだった。 清拭 は「め ん ど う」 と言 ってい た S氏 だ ったが. ,. う,こ う,タ オルをちゃんとする. (畳. んで拭 く). 事す ら,ち ゃんとせずに,こ う。 しか もなんか こ う,ご しご しじゃな くて,こ う軽 くなんか,ふ あ っふ あっふ あっみたい な感 じになって。 」. 清拭 を終 えてみ る と「 こん なに気持 ちが いい とは ・・ ・」 と話 し,呼 吸 も安 定 して休 んで い る。 学 生. を拭 いてたんですけど,な んかそ. う,そ のあんまりしたことな くって真 っ白になっ て,頭 が真 っ 白にな って,止 まって。 なんか こ. Mへ の 問 い か ,. (左 )側. の管 にち よつ とび くび くしてって い うの と。 も. な く,「 清拭 の気持 ち よさをわか ってい な い 」 の で は. A教 員 は 自分 な りの S氏 の捉 え方 を学生 Mに 伝 え. かカテーテル と. か こっち (右 )に 通 ってる じゃないですか。僕 は. Mの 姿 を提 え た の だ っ. な い か とい う見 立 ての もの とに,学 生. (右 側胸部 を指 して)と. Mは. 学生. Mは ,. これ まで見た ことの ない ドレー ンや カ. その S氏 の姿 か ら「清拭が終 わってみて,そ うだっ. テーテルが挿入 されて い る S氏 の 身体 に「ち よつ と. たな」「そんな ぐらい しか考 えてなかった」 ことを振. び くび く」 し,身 体 を拭 くとい う不慣 れな経験か ら 「頭が真 っ白になって」 しまったため,S氏 へ の清拭. り返 ったのだった。「そんな ぐらい」 とは,「 お風呂が. ,. 好 き」 な S氏 に,少 しで も「気持 ち よ くなって欲 し. が「上手 く拭 けなか った」 ことを語 った。. い」 とい う,「 半端 に集めた要素」 を「 しっか り見 て. A教 員 は,学 生 Mへ のかかわ りについて次の よ う に語 っている。「Mさ ん と一緒 に清拭 してい るで しょ. ない」 し,「 重要性 とか もしっか り考 えてない」 こと. Mが この ようにわかったのは,清 拭 の 後 ,安 堵 した表情 を見せ た S氏 の表情 で あ り,S氏. に立 つ。そ してわた しの動 きを追 ってい く Mさ んの. に対す る A教 員 の看護 ニー ドの捉 え方 ,援 助 の仕方. 行動 が予測で きる とい うか,援 助 を しなが ら Mさ ん. とい う患者が満足する援助の実践であった。. (の 行動. だった。学生. 2)今 の学生 の動 きが,実 習前の学生 の姿 を呼び起 こす 学 生 Mは ,翌 日 も sさ んの 清 拭 を A教 員 と共 に 行 った。学生 Mは s氏 の左 側 に立 ちなが ら s氏 のパ ジ ャマの ボ タ ンを外 す のだが ,そ の後 の動作が 出て こ な い 。す る と A教 員 は ,S氏 に「今 日は座 って拭 き ま しょうか」 と促 した。 S氏 は頷 き,ゆ っ くり と身体 を起 こ し,A教 員 はそ の 背 中 を支 えて座 位 の 姿 勢 と な った。「 まず こち らか ら拭 きますね」「強 さは大丈夫 で す か」「 ち ょっ と腕 を挙 げてみ ま しょうか ,い つ も (創 部 を)庇. ってい るので筋 肉 を伸 ば しま しょう」「 次. に背 中 で す ,寒 くな い で す か 」 と声 をか けなが ら行 っ. Mの 行為 が途切 れ る直前 に,A教 員 の 次 の 声 が 聞 こ え ,A教 員 の 援 助 も次 へ と移 っ て い て い た。 学 生. う,わ た しが患者 さんの右側 に立 つ ,Mさ んが左側. )が 読 めるとい うか」。A教 員 が学生 Mの 行. 動 を読 み取 れ るの は,「 これ まで (2年 生 になる ま で)い ろい ろ と学 生 とかかわって話 を して い る し ,. (学 内)演 習 で も見て きて い るか ら. Mさ. んの動 きが. 分か る」のだとい う。. │. 「学内 と,臨 床 とい うか患者さんでは,も ちろ │ ん違 うんだ けれ ど,Mさ んの傾 向 とい うのか │ な,そ れはわかる。 もちろん (学 内 と)臨 床 で違. │ う学 生 もい るけれ ど,Mさ んは. (そ. の傾 向が ). │ 一貫 していた とい う点でわた しにとつて理解 しや │ すか ったんだ と思 い ます。それが今回,患 者 さん を拭 い て い た と きのわた しの (判 断 )根 拠 になっ た とい うか。 そ の 感覚 が 自分 に は あ った んで す. │ ね。 (中 略 ). 演習 の ときか らはっ き り言 って.
(6) 看護学 ・ リハ ビ リテーシ ヨン学編 (2010年 3月. 甲南女子大学研究紀要第 4号. 92. Mさ. ん は不 器 用 とい うか ・ ・ ・。 で も原則 を踏. い うか,瞬 間」 に,学 生. ). Mの 学内演習 の「援助場面. まえて一生 懸命行 お う とす る し,習 った こ とを思. が蘇 って くる」 ことを語った。それは,こ れまでの学. い起 こそ う とす る。 考 えなが らす るか ら,手 が動. 生. か な くなる,す る と動 けない 自分 に気 づ い て ,頭. Mを 想起 しようと,思 い を巡 らせてい るのではな く,学 生 Mの 援助 の仕方が ,演 習 の 際 の 「立 ち位. が真 っ 白にな って 次 の 行動が とれ ず に 身体 が 固 ま. 置」や「手 さば き」 といったこれまでの姿 を思 い起 こ. って しまう。そんな感 じです。 だか ら,患 者 さん. させ るのだ とい う。 しか し A教 員 は,学 内で の学 生. に (清 拭 の )説 明 して い た けれ ど,あ れ は. Mさ. んに も伝 えて い た ってい う こ とで す ね ,結 局 は」. A教 員 は,学 生 Mが 患 者 にかか わ る動 きを うけ と め なが ら,こ れ までの学生 Mの 傾 向 を根拠 に ,こ れ か らの行為 の 方 向性 を予 測 して い た。学生 Mが 「頭 が真 っ 白 ・・・」 と語 つた そ の 時 の 状 況 を A教 員 も 感 じ取 っていた よ うで ,「 身体 が 固 ま って しまう」 そ の 経緯 につ い て ,こ れ までの学生. Mの 学 びの傾 向 を. Mの 姿 を基本にす ることはなか った。A教 員 は「 こ れまでの Mさ んを含 めて」,学 生 Mの 「今 の状況 を わかってい く」 のだった。. 3)看 護実践 の場 が 「患者中心の看護になる」 とい う こと. A教 員 は,学 生 Mと. 共 に清拭 を行 うことについて. これまでの自分 を振 り返 り,次 のように語 つた。. 踏 まえなが らその事態 を解釈 して い た。 しか し,学 内. 「昔 は,学 生 と援助 した とき,学 生 とわた しと. 演習 での学 生 の様子 をその まま臨地実習 に適用す る こ. の行動が明 らかに違って,患 者 さんが イライラす. とはない 。 それは学生 に とっての学習 の「場」 の性 質. る とい うことがあって。 だか らわた しが (援 助. が異 なるか らであ り,そ れ に よ り学生 の対応 は違 って. を)し て しまうとい うような ことがあった。 まず. くる。 しか し A教 員 に とって ,学 生. Mの これ まで の. 患 者 さん ,と 思 って い た し。 (中 略 ). Mさ. 学 習 の 傾 向 で あ る「不 器 用 だが 一生 懸 命行 お う とす. んの場 合 は大 まか な動 きが読 め る,あ る程度の予. る」 しか し「 考 え なが らす るか ら,手 が 動 か な くな. 測が つ く。 だか らわた しが患者 さん (の 援助 )に. る」 こ とは共 に援助す る と きに参 考 にな り,「 Mさ ん. 集 中 で きる んで す。学生 の動 きが読 め ない と,患. A教 員 は ,S 氏 にその都 度 の清拭 の 手続 きを伝 えなが ら,「 Mさ ん. 者 さんに集 中 で きない で しょう。学生が ど うか な. に も伝 える」 こ とで援助 へ と促 した のだ った。. 者 中心 (の 看護 )で はな くな って しまう。大事 な. の 動 きが わか る」 に至 った 。 そ の た め. A教 員 は,実 習前 の学 生 Mの 姿 の参照 の 仕方 につ. って ,そ んな こ とばか り気 になって。 結局 は,患 の は患 者 さん の ケアで あ って ,こ こ (臨 床 )で は 学生 ではない 。 それが若 い 頃 は,ど ち らか 一 方 に. い て次の よ うに語 ってい る。. 傾 い て い たんです ね」. 「援助 して い るその時 とい うか ,瞬 間 とい う か。その時に これ までの Mさ んの援助場面 が蘇. って くるってい うか け ど. 。何 て い った らいいの か. 「患 者 さん中心 (の 看護 )と い う こ とで 考 えれ ば,教 員が行 った方が いい場 合が大半 とい えるで. 。例 え. Mさ んが ,患 者 さん に毛 布 をか け る とい う動 作 を した ら,演 習 の 時 の Mさ ん の 立 ち位 置 と │ゴ. しょう。で も,そ れでは教育 にはな らない 。 だか ら学 生 と一 緒 にす る援助 は,看 護 に しなければ い. か ,手 さば き とか ,そ んなこ とが ば ― っ と浮か ん. │ けない と思ってい ます。 (中 略)・ ・・患者 さん中 ヽ │ ″ の看護があ って,二 次的にそれが教育 の場 であ 亡. で くる。そ して 『ああ ,立 ち方が綺麗 なのは,剣. │ るとい うことなんですけど。逆 にいえば教育の場. 道 を して い たか らだ った な』 とか ,そ うい っ た. 1 面 を看護にするってい うことなんです」. Mさ. んの 日常 も関連 して 出て きた りもす る。 で. もだか らとい って,そ んなあれ もこれ もとい う感 じで場 面が 出て くる訳 で はな くって。今 ,一 緒 に (援 助 を)し て い る時 に ,こ れ まで の. Mさ. んを. 含 めて ,わ た しが今 の状 況 をわか ってい くとい う 感 じ. かな」. A教 員 は これ まで の 教 育経験 を踏 まえ なが ら,学 生 と行 う援助 が看護 となるための要件 ,す なわち,患 者 の看護 に集 中す るため には,共 に実施す る学生 の動 きを把握 す る こ とについ て語 った。学 内 は,基 本 的 に 学生 中心 であ る。 しか し臨床現場 は患 者 中心 で あ り ,. そ の場 で学 生が看護 を学ぶ とは,患 者 中心 の看護 の 実. A教 員は,S氏 の援助を共に行 っている「その時 と. 際 を知 る こ とにあ る。 つ ま り,学 生. Mが 臨床 の場 で.
(7) 前川幸子. 他 :看 護学実習における「教 え 一学 ぶ」 の成 り立ちに関する記述的研究. 看護 を学ぶ ためには,患 者 中心 の看護 の 実際 を実感 じ. の寄せ方 を看護行為 として辿 るようになっていった。. ない 限 り学 ぶ ことはで きない 。 したが って,日 の前 の. Mは 「患者 にとっての心地 よい清拭」 に こだ わるようにな り,そ の後,学 生 Mは A教 員 と共 に行. 学 生 と共 に援助 を行 い なが ら,学 生が 「看護」 を実感 す るため には,教 員が患者 に集 中 で きる環境 を自分 で 整 えない 限 り,学 生 は看護 を学 べ ない こ とになる。 そ. A教 員 は,学 生 の あ る程 度 の援 助 の 動 き,そ の傾 向 を含 み つつ ,学 生 Mと 共 に患 者 の 看護 を実施. 学生. う清拭 を重ねてい くのだが,次 第 に患者が 「昨 日は毛 布 を 2枚 だったのに,今 日は 3枚 に増 えていた」 こと. のため. や,「 皮膚 の落屑が少 な くな りま した」など,患 者へ. して い たのだった。. の気 づ きが広が っていった。A教 員 は,自 身 の気が か りを学生 Mに 差 し出す ことで,学 生 Mの 看護 ヘ. この よ うな教 育 実践 を行 なって い る. A教 員 に とっ. の関心 を引 き寄せることになったのだった。. て臨床 で看護 を教 える経験 とは,こ れ まで看護 師 か教. V.考. 員 か ,「 どち らか一方 に傾 い て い た 」 よ うに感 じられ. 察. た。 しか し A教 員 は,「 臨床」 とい う場 にお い てその 融合 を見 出す に至 ってい る。 それ は,教 育実践 にお け る看護実践 の前提 を,学 生理解 に求 めた こ とに あ る。 学 生 を理 解 し,そ の 行 為 の 方 向性 が予 測 で きれ ば. ,. 「わた しが ,患 者 に集 中で きる」。 それ に よ り,教 育実 践 の場 が看護 と して成 り立 つ 可能性 が見 えて くる。臨 床看 護 にお い て. A教 員 の 中 に二 項 と して在 った看 護. 1)受 け止 めるこ とで導 かれる 「教 え一学 ぶ」 の接 離 学 生 Mと A教 員 の語 りか ら見 えて きた こ とは,同 じ出来事 を相互 的 ,同 時的 に分 け合 い なが ら進 むが如 くに立 ち上が って きた看護 の事態 で あ った 。例 えば学 生. Mは ,s氏 の清拭 を A教 員 と共 に行 った と き,治. 療 中の. S氏 の 身体 へ の 戸 惑 い か ら「頭 が真 っ 白 に な. A教 員 は,S. 師 ,そ して教 員 とい う在 り方 は相互 に重 な り,臨 床看. って」 身動 きが とれ ない 。それ を感 じた. 護 に生 き られ る経験 へ と開か れ た こ とを意 味 して い. 氏 の援 助 を止 め る こ とな くそ の 度 ご との 方 法 を. た。. に伝 える こ とで ,婉 曲的 に学 生. この経験 を学 生. Mは ,次 の よ うに語 ってい る。. Mに も伝 え,そ れ と. Mに 具 体 的 な援 助 行 為 を差 し向 け て い た。 学 生 Mは ,そ れ を頼 りに懸命 に援助 を伴 走 しな が ら,S氏 の援助 に参加 を したのだ った。 この 光景 は,一 見す る と A教 員が 主導 し,学 生 M 同時 に学 生. 「最初 の何 回か は ,目 の 前 の患 者 さん の 身体 を │ 拭 く こ と に精 一 杯 で 。 清 拭 の 後 ,A先 生 か ら │ 『皮 膚 の 乾燥 が気 に な るね』 とか ,『 か か との 発 赤 ,昨 日もあ った ?』. s氏. │. とか 言 われ るんだけ ど,ま │. った く覚 えて い な い んで す よね ,で も,(わ た し │ も)拭 い て い るんです ,一 緒 に。先生 と一 緒 に,│ 同 じ患者 さん を見 て い るの に見 て い ない んで す よ │ 00・ ,驚 くとい うか ,落 ち込 む とい うか ・・・」. │. A教 員 の 看 護 へ の 導 きは ,何 か を教 え込 ん だ り. ,. が つい て行 くとい う一 方向的 な「教 え」 の構 図 に映 る か も知 れ な い 。 しか し A教 員 の 教 え る とい う行 為. Mへ と向か う流 れ に終結 す る も Mに 「 身 動 きが取 れ な い 」状 況 を呼 び,そ の 学 生 Mの 現 われ が ,A教 員 に看 護 の接 近 方法 を引 き出 させ た。 そ の 方法 に よって,学 生 Mは s氏 の援 助 に向 き合 う こ と は,A教 員 か ら学生. ので は なか った 。 S氏 の 身体状 況 が ,学 生. 理論 や根 拠 を説 明す るの で は な く,自 身 の 気 が か り. がで きた。 さらに遡 れば,援 助 を受 ける倶Jと して位置. を,例 えば「かか との発赤 ,昨 日もあ った ?」. づ け られが ちな患 者. とい う. S氏 こそが ,学 生 Mと A教 員. Mに 差 し向 けた。 そ の こ とにつ い て. を看護 へ と引 き寄 せ ,看 護実践 へ と誘 い込 む存在 だ っ. A教 員 は「Mさ んが 観 察 が で きて い るか とか ,そ ん. たの で あ る。 この よ う に ,能 動 的 な行 為 と して 映 る. 問 い か け で学 生. な確 認 を した い と思 っていたか らで はない んで す ね。. 「教 え」 とは,意 図的 に行 う こ とが 多 くあ るにせ よ. ,. あ ら,こ こに発赤 あ ったか な ?っ て。一 緒 に援助 して. それ は学 生 の姿 か ら何 ものか を感 じ取 るこ とで教員 の. Mさ んに尋 ねたんです け ど」 と語 ってい る。 これ らを契 機 に,学 生 Mは 教員 か ら問 い か け られ た視 点 を 自覚 し,患 者 にかか わ る とい う A教 員 の 患 者 の 観 か た に接 近 し始 め た。 A教 員 か らさ らに新 た な問 い か けが 向 け られ る と学 生 Mは 「 なぜ先生 は. 教 える とい う行為 が 導 かれ る とい え よ う。. いた. ,. 患者 さんの い ろい ろな こ とに気 づ けるので すか. ?」. な. どの 質 問 を A教 員 に投 げか けなが ら,患 者 へ の 関心. ところで ,学 生. Mに. とって. S氏 と関 わ る手 立 て と. A教 員 の 「声 」 とは,単 な る行 動 の 説 明 で は な く,A教 員 の 身体 の 動 き を伴 っ た行 為 と して の な った. 「知 る こ と」 を深 め て い く「学 び」 の地 図 い った と考 え られ る。A教 員 は,学 生. 。とな って. Mの 行為 よ り. も少 し先 を歩 み つ つ も S氏 が違和 感 を覚 えな い で あ.
(8) リハ ビリテーション学編 (2010年 3月. 94. ろ う微妙 な時間の ズ レの 中 で援助 を行 ってい る。 それ は A教 員 が ,S氏 に応接 しつつ ,学 生. Mに 添 い なが. ら協 働 的 にその状 況 に働 きか け る こ とを意 味 して い る。 それ と同時 に A教 員 も学生. Mも ,両 者 を含 むそ. ). の範疇 で は捉 え きれ ない,偶 然性 ない し蓋然性 の領野 で働 くに。そ のため そ の場 にお け る「教 え」 とは ,将 B). 来 どの よ うにな るのか を前 もって ス ケ ッチ す る こ と. にこだわるのではな く,逆 にそ う した以後 の連続性. の状 況 か ら働 きか け られ る とい う再帰性 ,相 互性 の も. を,む しろ学生 の存在に よって断ち切 られることで. とに,次 なる新 た な働 きを編み 出 して い く。 この よ う や り と りか ら見 えて くる こ とは ,「 教 え」 と「学 び 」. 所詮描 くことので きない ようなもの として今後訪 れる であろう何か,少 な くとも異なる何か他 なるものへ と )に ‖ 成 り立ってい く過程 の うちにある事実 直面す るこ. とい う二つの世 界 の接離 ,つ ま り離 れて い る よ うだが. とに関わることを意味 してい るとい えよう。. に,相 互 に働 きか けなが ら我 に返 され る とい う一 連 の. 接 して い る とい う境 界 に 自らを見 出す よ うな行為 と連. ,. このように,看 護 を教えるとい う実践的行為 は,教. 差 し出 された状況 を受 け止 め る こ とで促 され る能動 的. 員の コン トロールの及ばない事象,言 い換 えればそ も そ も手の届かない他者へ と向か う営 みであることに起 い 因 してい る。 したがって,教 員 にとって 自明 と思 い 込んでい る看護 の未知なる実践世界へ の企投 を可能に. 行為 とい える。他者 へ と向か う運動 (看 護 )は ,紛 れ. す るのは,「 教 え 一学 ぶ」 における学生の存在 に他 な. もな く私か ら他 者 へ と向か ってい るに もかかわ らず. らない。. 鎖 しなが ら同時的であ った とい え よう。. S氏 を巡 る学生 Mと A教 員 の相 互 を前提 と した連 続 的行為 は,そ の都 度 の 関係状況 にお い て,相 手 か ら. ,. そ の根本 にお い てわた しの能動 的 な運動 (看 護 )で は 日 ない ので あ り,看 護 とい う実践 的行為 は,根 本 的 に. Ⅵ。お わ り に. 受動 的 な事態 とい う こ とになる。 この よ うに,看 護実 践 にお ける 「教 え 一学 び」 とは,相 互 に受 け取 りつつ. 本研 究 は ,臨 地 実 習 とい う場 にお け る 「 教 え 一学. 他者 へ と向か う こ とが 循環 して い る こ とが わか った。. ぶ 」が ,学 生 と教 員 の相互 を受 け止 め る こ とを前提 と した能動 的行為 と して連続 してお り,ま たその都 度 の. 2)連 続性 を絶 つ こ とで連続 す る 「教 え一学 ぶ」 A教 員 は これ らの援 助 に先 立 って ,援 助 の 見 通 し. 関係状況 に依存 した成 り立 ちであ る ことを明 らか に し. Mに 「地 図」 を呈 す る こ とが で. 自己 に戻 る とい う再 帰性 が あ り,そ の 過 程 にお い て. きるのだが ,恣 意的 にかか わって い る よ うに は見 えな. 「教 え」 と「学 ぶ 」 の二 つ の 世 界 の接 離 に 自 らを見 出. Mの 援助 す る姿 が学 内 での 姿 を呼 び起 こ した とい う経 緯 にお い て ,A教 員 は これ まで の 学 生 Mの 姿 を原型 と して臨床 でかか わ る こ とは な か った 。学生 Mの 「 今 ,こ こ」 での援 助 行為 を理解. す こ とにお い て ,同 時的 で あ る こ とが わか った。 さら. し,今 後 の 方向性 を見 出す ,と い う仕方 で参照 を して. た。. が立 つ か ら こそ学生. い 。例 えば ,学 生. いた。それは 「今 ,こ こ」 に向か う見方 の 中 の 広が り. Mと. た。 また「教 え 一学 ぶ 」 とは相互 に働 きか けなが らも. に,教 員が抱 く看護実践 の予測 の連続性 を,学 生 の存 在 に よって絶 たれ る こ とで ,「 今 ここ」 にお け る看 護 の「教 え 一学 ぶ 」 の 連 関が始 まる こ とも明 らか になっ 今 回 ,臨 地実習 にお ける 「教 え 一学 ぶ 」 とい う成 り. 共 にその場 を「患 者 中. 立 ちに接 近す る こ とを試み たが ,臨 地実習 とい う場 の. 心 の看護」 にす るための 目処 を立 て る,あ るい は看護. 特徴 を生 か した教育 を考 える上 で ,研 究協 力者 ,フ イ. 実践 を見渡せ る見取 り図 を描 い て い る よ うに受 け取 れ. ール ドを拡 げて検討 して い く必要が あ る。 また ,臨 地. る。. で看護 を教 え,学 ぶ上 で そ の主 題 となる実践知 につい. を示す ものであ り,学 生. しか し,こ れ まで 見 て きた よ うに看 護 実 践 の 場 と は,学 生. Mが ,そ. して. て も共 に探 求 して い くこ とが 残 された課題 で あ る。. A教 員が状況 の一 部 と して常. に次の状 況 を作 り上 げて きて い る。 そ のため実践 にお け る「教 え 一学 ぶ 」 とは,援 助 の予測 は しつつ も,相 手 の 反応 に よってかか わ りを変容 させ て い くとい う事 後性 を前提 と した行為 とい える。 こ う した事 後性 の重 な り,連 な りの 中 に,「 教 え 一学 ぶ 」が 埋 め込 まれ て い る とい う こ とになる。 看護実践 は近 代科学 の体系性 を成 り立 たせ て い る還元主義や 法則性 とい った諸特徴. 本論は,平 成 18年 度∼21年 度科学研究費補助金基盤研 究 (C):課 題番号 18592318の 助成を受けた論文に修正 。 加筆 したものである。 引用文献および解説. 1)杉 森み ど里,舟 島なをみ :看 護教育学 第 4版 医 学書院 2007p269. 2)野 崎真奈美 :臨 床実習において看護学生が看護へ の.
(9) 他 :看 護学実習における「教 え 一学 ぶ」 の成 り立ちに関する記述的研究. 前川幸子. 動機 づ け を高 め た 要 因 の 分 析. 日本 看 護 学 会誌. 1995. 15(3)p180他 :看 護 学 実 習 に お け る教 授 活 動 の 研 究 1996.1998,中 山登志 子 :看 護 カ ンフ ァ レンス にお け る. 教授 活動 2003他 出版. :看 護. 8)西 村 ユ ミ. 遷 延性 植 物状 態 患 者 の 看 護 ケ アの意 味 ― ・ ・ 対 話 記述 解 釈 に よる現 象学 的接 近 -1999年 度博 士 論文. 生 き られ る世 界 の 実践 知. ゆみ る. 1991p103. 5)山 口恒 夫. い て い る こ とさえ知 らなか った 考 え を引 き出 した りも す るのであ る。. 3)小 川 妙 子 他. 4)池 川清 子. 95. 日本赤十字看護大学. 9)RFA;ラ. ジオ波焼 灼療 法 (Radio■ eequency Ablation). とは ,ラ ジ オ波 に よ り発生 す る高 熱 に よ り病 変 部 を凝. :臨 床 経 験 の リフ レク シ ョン と「 教 育 」 を. 2. 固壊 死 させ る治療 法 。 身体 侵 襲 が 比 較 的少 な く,化 学. 臨床教. 療 法 や放 射 線 治療 とは異 な る機 序 に基 づ く治療 法 と し. 育 人間学会編 東進堂 2007p9 6)教 育 哲 学 者 で あ る 山 口 ら (2006)は ,教 育 にお け る. 10)セ ル トー は ,世 界 に3‖ 染 む とい う プ ロセ ス と して の. 相 互 行為 に着 目 し客 観 的 に測 定 不 可 能 な行 為 の 連 続 と. 「空 間 の 実 践 」 にお い て ,地 図 は た だ 見 る もの で は な. しての教 育 実践 を明 らか にす る方 法 を「 反 省」 に求 め た 。 教 育 学 と看 護 学 の 共 通 項 で あ る 「 ケ ア 」 を起 点. く,そ の空 間 に 自分 を馴 染 ませ る こ とで あ り,そ の世 界 は体験 す る世 界 ,さ らに は 身 を も って 関 わ る世 界 ヘ. に,教 育学 部生 お よび大 学 院生 の リフ レクシ ョンの 方. と変貌 して い くこ とを説 い た。. 語 る言葉. 臨床教育 人間学. リフ レクシ ョン. 法 と して看 護研 究 ・教 育 に用 い られ て い る「 プ ロセ ス. て各種悪性腫瘍 に応用 されて い る。. de Certeau,Michel.山. レ コー ド」 の 技 法 ,お よび基 礎 づ け る思 想 ,す なわ ち. エ テ イー ク. ケ アす る者 とケ ア され る者 の あ い だ に展 開 され る相 互. 11)斉 藤 慶 典. 作 用 とそ の 「反省 =内 省. (リ. フ レクシ ョン)」 を応 用 し. 12)鈴 木 晶子. た。. 7)対 話 と して の イ ン タ ビ ュ ー は ,西 村 ユ ミ. 2005p138. (1999/. 2001)が 示 した方 法 で あ る。西 村 は ,メ ル ロー =ポ ン テ イの 「他 者 の 言 葉 が わ れ われ の うち で われ われ の 意. 限界. 国文社. 田登 世 子訳. 日常 的実践 の ポ イ. 1987. レヴ イナ ス. 無 起 源 か らの哲 学. 講 談社. ただ し,括 弧 内 は研 究者が付 け足 した。 教 育 思 想 にお け る臨 床 知伝 承 の 可 能性 と 近 代教 育 フ ォー ラ ム. 近 代 教 育 思 想 史研 究 会 編. 2001 10p131. 13)フ ー コー は 表 象 に先 立 ちそ れ以前 の 手段 と して働 く. 味 に触 れ て くる し,わ れ われ の 言 葉 も,返 事 が そ れ を. よ うな流動的な ものに着 目した。 ドゥル ーズはそれ を. 証 明 して くれ る よ うに ,他 者 の うち で 彼 の 意 味 に触 れ. 「非表示概念」 とし,略 図 として機能す る地図 として位 置 づ けた。Duleuze,G.;Foucault。 宇野邦 一 訳 フー コ. て い く」 (1969/1974,p189)を 参 照 しなが ら,対 話 に よ っ て 互 い の 言 葉 が 互 い の 意 味 に触 れ ,そ こで 新 た な (解 釈〉 が新 た な経験 と して生 み 出 され る こ とを述 べ て. い る。 こ う した対 話 とそ こで生 じる解 釈 は ,自 分 が抱. ー 河出書房新社 1987p57. 14)前 掲書 12p137 15)前 掲書 5.
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