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ほめることは子どもの非認知能力の育ちを支えることになるのか

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Academic year: 2021

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堀   由 里

Does Praise Support the Development of Children’s Non-cognitive Competence?

Yuri H

ORI ץᭉɁ੔٣  近年、保育・幼児教育において、非認知能力が注目されている。経済協力開発機構(OECD) は幼児期に育むべき力や姿勢として「社会情動的スキル」(日本では「非認知能力」という言 葉が多用されている)を掲げ(2015)、それを育てていく方向に世界は動いている。非認知能 力は、IQ などで数値化される認知能力と違い目に見えにくいものだが、「学びに向かう力や姿 勢」とも言い表わせ、目標や意欲、興味・関心を持ち、粘り強く、仲間と協調して取り組む姿 勢が中心となる(無藤、2018)。2018年に改定された保育所保育指針の中にも「幼児期の終わ りまでに育ってほしい姿」として 自立心 や 協同性 などの10の姿が記されるようになり、 より具体的に方向性が描かれていった。しかしながら、理念的な非認知能力を「育てる」とし た場合、可変性があり、結果が可視化できるものをターゲットとしていくことが教育において は求められる。西田他(2018)は、Gutman & Schoon(2013)の非認知能力についてのメタ分 析をもとに、心理学的諸概念のうちポジティブなアウトカムを得るための有力な鍵となるもの として、幼児期後半の内発的動機づけを取り上げている。  内発的動機づけとは、面白いから、楽しいから勉強する、といったように学ぶこと自体が目 的となって自律的に取り組む動機づけであり、ご褒美があるから、叱られないために、といっ た手段となって他律的に取り組む外発的動機づけとは区別される。青木(2005)は、就学前後 の子どもたちにお手伝い場面で「上手」や「ありがとう」とほめることで、子どもたちの作業 量が増えることを示しており、ほめることが内発的動機づけと関連することを明らかにしてい る。すなわち、非認知能力の育ちを支えていく一つの関わりとして「ほめる」という大人側の アプローチが重要となると考えられる。  「ほめる」という行為は、子育て、教育、スポーツ指導など様々な分野で広く活用されてきた。 近年では、発達障害のグレーゾーン児童のための教育支援ロボットに「ほめ」を導入し、人と ロボットの共同学習によって自己肯定感を育てる試み(中村他、2019)も行われているほど、「ほ

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める」という行為は教え育てる場面において必須のアプローチといえる。子どもにとってほめ られる経験は、結果が適切であるということの確認や存在価値の肯定につながり(高崎、 2002)、大人に受容されたという安心感を得られ(岡本、1994)、自尊感情を高める(箕輪・向 井、2003)という報告がなされている。  しかし、ただほめればいいという簡単なものではない。保育者は子どものポジティブな出来 事に対して言葉によるほめ表現をすることは比較的容易にできるが、動作によるほめ表現は子 どものポジティブな場面であっても表現することが難しいという報告がある(飯島・小泉・池 田、2018)。「ほめる」を体現することは、日々子どもと関わるプロである保育者でさえ容易で はないため、ほめることは難しい。更には、ほめ手がほめるべき対象を見逃している、見落と している、気づくことができていない、といったほめ行動の前段階での問題も考えられる。  無藤他(2004)は、心理学としての学問の構成を考える際、大部分の心理学者は、行動と意 識と脳の㧟つの面を考慮するとしている。「ほめる」と一言でいっても、ほめるという行動は もちろん、ほめる行動の背景として、対象に気づく段階や、認知したものへの感情反応・価値 判断・態度、といった過程がある。そこで、顕在化しているほめ行動と、その背景にある意識 (特に認知的側面や態度等)、そして脳の観点から、これまで取り組んできた自身の研究を振り 返り、子どもをほめるという行為を俯瞰的に捉え直していきたい。顕在化している行動面ばか りに焦点があてられがちではあるが、その背景となっているものを明らかにすることで、より 深くそのメカニズムを理解することにつながり、それは子どもをほめるという教育への示唆、 更には子どもの非認知能力の育ちを支える方法へとつながると考える。 ᭎٣ԇȪȹȗɞɎɔᚐӦ  将来保育者を目指そうとする学生にとって、子どもをほめるという行為そのものの困難さは きちんと認識されているのか、難しさが認識されているとすれば、どのようなことなのかにつ いて明らかにするため、保育者養成課程学生を対象に質問紙調査により検討した(堀、 2018a)。調査内容は、子どもをほめることと叱ることのどちらが難しいか、また、ほめるのが 難しい子どもの年齢について複数回答で求めた。その結果、叱ることとほめること、どちらの 方が難しいかという問いに対し、90.6%の学生が叱ることの方が難しいと回答し、数名の学生 がほめることの方が難しいと回答し、回答に有意な偏りがみられた。このことから、多くの学 生がほめることの難しさを認識していないことが明らかとなった。また、ほめることが難しい 子どもの年齢について、㧟歳未満児は全体として難しさがあるが、㧟歳以上児では年齢があが るほどほめることが難しくなっていく傾向が認められた。つまり、発達とともに自我が芽生え 様々な行動ができる年齢になってくるほど、ほめるのが難しく、行動のバリエーションが少な い発達初期は相対的に容易にほめられるということであろう。ほめることが難しいと回答した 学生の中から、更なる調査に快諾を得た数名の学生を対象に、なぜほめるのが難しいのかにつ いてインタビュー調査を行った。その結果、「実習に行く前はほめる言葉のレパートリーを増

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やしていけばいいと思っていたが、レパートリーがあるだけでは実践できなかった」、「叱るこ とは、叱る場面や行為が明らかだが、ほめることはその対象が明確でなく、相手と共有されて いない」などの意見が挙げられた。つまり、ほめることは、叱ることに比べて対象となる場面 や行動の不明確さや相互の捉え方の不一致性が高く、ほめ方においても多様性があることが、 ほめ方の難しさにつながっていると推察された。  また、経験や熟達の違いによって、ほめる対象に違いがあるのかについて調査している。実 際に子どもをほめる際、子どものどのような行動や状態をほめているのか、保育・教育のベテ ラン(熟達者)とノーヴィス(初心者)の回答を比較し、ほめの観点について明らかにするた め、保育者養成課程学生と保育・教育現場で長年勤務していた大学教員(平均現場経験34年) を対象に質問紙調査を行った(堀、2019a)。「子どもをほめるときは、どのような場面が多かっ たか?」という質問について自由記述を求め、KJ 法により分類した。その結果、「着替えがで きた」、「食事のマナーを守れた」、「縄跳びを何回も飛べた」など物事の達成や上達などをほめ る「達成・上達」、「一生懸命食べていた」、「竹馬の練習を頑張っている」、「不得意なことを頑 張っている」など子どもなりに努力したり主体的に取り組んでいる姿勢をほめる「自発・努力」、 「協力して片付けた」、「泣いている子を慰める」など他者のための行動をほめる「向社会的」 という観点が初学者である学生からは出てきた。一方で、熟達者は上記㧟つに加え、「本来叱 るような場面でも」や「頑張れなくなりそうになっているとき」など、具体的な状況への言及 というよりは、保育・教育活動全体を通して意識してきたことや保育・教育への思いが記述さ れており、「ありのままの姿を認める、承認」の観点を持っていることが明らかになった。  どのような場面かということについては、堀(2019b)でも場面想定法を用いて検討している。 子どもが向社会的行動をとろうとして失敗をしてしまった場面において、どのような対応をす るのかを、保育者養成課程学生と保育現場で勤務している社会人を対象に自由記述をさせた。 その結果、失敗してしまった子どもに対して「安心感を与える」ような働きかけや、「状況確認」 するような会話、子どもの意図を保育者が代弁するなど、子どもの向社会的行動に対して「言 語的保障」を行うなどがみられた。保育・教育の熟達の違いによって、対応の差が出てくるの かを検討した結果、初学者や熟達者よりも中級者である学部㧟・㧠年生の方が「安心感を与え る」働きかけを多くしていた。現場での実習を経験している最中であるため、子どもの失敗時 の対応にはより敏感になっていると考えられ、もっとも直接的な対応をとる傾向が高かったと 考えられる。一方で、熟達者である現役・元保育者は「言語的保障」の回答がなく、初学者・ 中級者である学生たちは回答が多かった。想定した状況では善意を基にした行為であるため、 学生にとっては、行動結果に関わらず、まず子どもの意図をほめようとしたと考えられる。熟 達者は「ありのままの姿」を承認するというほめ方をする傾向にあるが、本研究で設定した状 況にあてはめると、子どもの意図を理解しているということを伝える応答になるはずである。 しかし学生においては、それにとどまらず ありがとう や カッコイイ という保障や肯定 的な評価が追加された反応が多かった。子どもの行為や意図を言語的になぞるだけでなく、そ こに肯定的な評価を表明するワードが挿入されることは、熟達度の初級から中級において見ら

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れやすい特徴なのかもしれない。このことは、子どもの行為に対して単眼的に反応しやすいと いう熟達度の低い保育者に見られやすい特徴が反映されていると推察された。  上記の研究結果から、子どもと直接的に関わる機会の少ない学生にとっては、できたこと、 頑張っている姿などをほめればよい、という安易な考えを持ちやすく、ほめること自体も簡単 なことと認識しやすいということがわかる。しかし、中にはほめの難しさに気づき始めている 学生もおり、ほめ言葉のレパートリーを準備するだけでは至らないことにも気付いている。子 どもとの関わり経験が豊富なベテラン保育者になると、ほめることはありのままの姿を認める こと、という視点が入ってくる。高崎(2015)は、個人が持つほめに関する解釈や判断の準拠 枠となるような認知的枠組みを「ほめへの態度」と定義し、ほめに対する考え方や行動パター ンとして「承認重視」という態度があることを明らかにしている。承認重視は、ほめは相手に 自信を持たせ成長させる働きかけだと考え、小さいことでもどんどんほめた方がよいという態 度である。ベテラン保育者ともなると、単純に上達をほめるというよりも、子どもの成長・発 達を願う態度をもっていると考えられる。 ɎɔᚐӦȻᝓᅺ࿑ॴ  子どもの行動・状態をほめる際、どのような点に気づくのか、どのような点を評価の対象と するのかは、ほめる側の認知特性の個人差があると考えられる。そこで、子どもをほめるポイ ントの抽出傾向と、大人側の認知特性との関連について検討した(堀、2018b)。保育者養成課 程学生を対象に、子どもの映像(満足の遅延課題)を視聴し、ほめ場面を自由記述により抽出 させた。また、メタ認知尺度とセルフモニタリング尺度を使用して認知特性について質問紙調 査を行った。満足の遅延課題に挑む子どもたちの映像に対する自由記述を KJ 法により分類し た。その結果、我慢できている子どもに対するほめや、葛藤している子どもにルールを再提示 するような声かけ、応援するような声かけなどいくつかのパターンが抽出された。声かけが様々 な子どもに対してバリエーション豊かにできているのか、それとも単一の声かけになっている のかによって、学生を分類し、回答者の特性との関連を検討した。その結果、メタ認知の下位 尺度であるプランニングにおいて、複数の声かけをする学生の方が単一の声かけをする学生よ りも得点が高かった。プランニング下位尺度には、「課題解決に際し、一つだけではなく、複 数の解決方法を考える」などの項目が含まれている。常に様々なアプローチをしていくことを 念頭におきながら子どもと対峙する保育において、一人の子どもへの関わりだけでなく、複数 の子どもに対する観察・関与を常にもつことは重要である。生田・林・高橋・風間(2002)は、 教師にとって授業のある瞬間に何が見え、見えたものをどのように解釈するかという認知過程 に教師の実践知があるとしている。本結果で複数の子どもへの対応を記述できた学生は、単一 の声かけの学生に比べ、メタ認知能力が高い可能性があり、保育・教育を実践していく中でメ タ認知能力を背景として能動的に子どもと関わっていくことができる可能性が考えられた。

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ɎɔɋɁৰ࣊ˁ᜻Ι  子どもの「ありのままの姿を認める」ということがほめるという行為の核となっているとい うことが明らかになったが、いつでもフラットな気持ちで子どもと対峙できているわけではな い。「一人一人の子どもの主体性を尊重し、子どもの自己肯定感が育まれるよう対応していく ことが重要」と保育所保育指針の解説書に記載されているとおり(厚生労働省、2018)、子ど も主体の保育が求められている。しかし実際は、保育者に限らず育児の中でも、心が乱される 子どもの言動というのは出てくる。そのような言動に対し、どのように受け止めているのかと いう評価や態度がほめ行動にも関連してくると考えられる。  そこで、大人にとって子どもの「してほしい行動」と「してほしくない行動」を観察する際、 どのような感情反応を抱くのかを印象評定と脳活動から明らかにした。保育者養成課程学生を 対象に、乳児が着替えをする場面を視聴させ、その間の前頭領域の脳活動を近赤外分後法 (Near-Infrared Spectroscopy; NIRS)により測定し、その後、印象評定を行った(堀、2019c)。

着替え場面は、順当に着替える(してほしい行動)と、途中で遊びだしたり寝転んでしまう(し てほしくない行動)を準備した。「してほしい行動(着替える)」と「してほしくない行動(遊 ぶ・寝る)」を視聴している間の oxy-Hb の変化量を条件ごとに比較した。しかし、脳活動を 指標とした結果としては、「してほしい行動」と「してほしくない行動」の間にクリアな差は 得られなかった。また印象評定の結果も、どの行動も概ね高評価であり、条件の差がみられな かった。ほめ行動の前提となる子どもの行動に対する価値判断・感情評価の段階を脳活動や印 象評定からとらえていくことを目的としたが、明確な結果を得ることはできなかった。  同様の手続きで、目の前のことに一生懸命打ち込んでいる子ども(主体的行動)と友達を助 けるような子ども(向社会的行動)が同時にいた場合の反応を検討した(堀、2020)。その結果、 向社会的行動より主体的行動を観察している時の方が前頭領域の活性化がみられたが、印象評 定では行動条件による有意差はえられなかった。今回、「してほしい行動・してほしくない行 動」、「主体的行動・向社会的行動」といった評価や価値判断をベースとした条件を課して、ほ めるの前提である脳活動を指標とした実験を行ってきたが、一定の方向性を示すまでには至ら なかった。ただ、子どものありのままの姿を認めるという過程においては、何らかの評価や価 値判断がベースとなって行動に至っている可能性は示すことができた。今後、更に行動の背景 となる脳活動の様態を明らかにしていく必要があるだろう。 ፱նᐎߔ  本研究の目的は、顕在化しているほめ行動と、その背景にある意識(特に認知的側面や態度 等)、そして脳の観点から、これまで行ってきた研究を振り返り、子どもをほめるという行為 を俯瞰的に捉え直すことであった。  ほめるという行為は、様々な観点で対象を捉えることが可能であるとともに、より熟達者に

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なると意図をもったほめができるようになることが分かった。強化理論に基づけば、ほめるタ イミングは即時的であることが望まれるが、単純に見たものを言語化して返すだけではなく、 保育者としての願いを込めた関わりであるということが大切なのかもしれない。ただ、子ども の非認知能力の育ちを支えるほめ言葉として、ありのままを認めるフィードバックが、具体的 に子どもの内発的動機づけを高め、行動指標として観察できるかについては今後の検討が待た れる。  ほめ行動と認知特性については、子どもの行動・状態を捉える際、多くの点にフォーカスが 向けられる人は、プランニング得点(メタ認知の下位尺度)が高いことが明らかとなった。集 団での保育・教育場面において、一人の子どもへの関わりだけでなく、複数の子どもに対する 観察・関与を念頭における力というのは、非認知能力の育ちを支えていくことにもつながると 考えられる。しかし、子どもをほめる態度を形成しているのは、メタ認知の力だけではないは ずである。子どもをほめる大人側の子ども観や教育観などの信念の影響など、更に検討してい く必要がある。  子どものありのままの姿に対してどのような評価・態度を持つのかについては、NIRS を用 いた脳活動の研究によりその一端がみえてきたが、想定していたように「してほしい行動」・「し てほしくない行動」また「主体的行動」・「向社会的行動」の間にクリアな脳活動の差は得られ なかった。これは、実験室実験という制限の中で映像を通して子どもの行動を評価しているこ とが影響していると考えられる。実際、子どもの育児・保育を行っていく中では、前後の文脈 があり、それらが評価にもつながっている。今回の実験計画においては、前後の文脈を切り離 した条件や刺激を作成していたことがクリアな結果を得られなかった要因と考えられる。今後 は、より生活状況に寄せた条件・刺激作りをして実験をすることを考えていきたい。また、実 験室実験では得にくいということが明らかになったため、観察などのデータから分析していき、 子どもをほめるまでの認知や評価の過程について明らかにしていきたい。  非認知能力が求められる時代というのは、正解のない答えに自ら立ち向かっていく力ともい える。だからこそ、大人側の評価軸で「すごいね」「かっこいいね」「上手だね」といった単純 なほめ言葉ではなく、ありのままの姿を認めてフィードバックしていくほめが必要となると考 える。〇〇をしたらほめる、という How to ではなく、その場その場で大人がどのように子ど もに育っていってほしいのかの超短期的な願いではなく、長期的視点をもった願いを込め、ア プローチしていくことが求められる。  一方で、ほめの功罪もある。恥ずかしいや、乗せられていると感じてしまうなど、素直に大 人のほめを受け取らない場合もある。そこは子ども側の発達段階を理解して言葉かけを行わな ければいけない。自己強化ができる発達段階になってくると、大げさなほめは逆効果である。 小学校低学年までは内容に関わらずほめられたことを肯定的に受け止め動機づけが高まるが、 高学年以降は何をほめられたかなどのフィードバックの内容によってほめへの反応が異なるこ とが明らかとなっている(Kamins & Dweck, 1999)。つまり、形式的操作期に移行する頃にな ると、子ども側の捉え方には複雑さが入り込んでくる。しがたって、相手をのせようとする意

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図を持ったほめ言葉は、相手に悟られてしまう。本当に感心している、感嘆している時にでる 「すごいなぁ」のようなつぶやきは、伝えようとしていない分、逆に子どもには響くと考えら れる。いわゆる上下関係があっての「〇〇くん、すごいね!」のようなものではなく、一個人 として認めているということが、重要なのかもしれない。フラットな関係で認めることが、望 ましいのではないだろうか。カウンセリングの基本的態度の一つに「純粋性(自己一致)」が ある。これは、クライエントとの関わりを通してカウンセラーの中に生じてきている「感じ」が、 カウンセラーの言動や振る舞いと一致しているということである。実感の伴わない「感じ」を 言葉にしてクライエントに返すことはクライエントとの関係を大切にしているとは言えず、小 手先でクライエントの人格変容を導いているようなものになってしまう。日常の「ほめる」は カウンセリング場面とは異なるものではあるが、子どもの成長・発達を視野に入れた教育的ア プローチにおいても、同じことがいえるのではないだろうか。 ऀႊ୫စ 青木直子(2005).就学前後の子どもの「ほめ」の好みが動機づけに与える影響 発達心理学研究、 16、237‒246.

Gutman. L. M., & Schoon, I. (2013). The impact of non-cognitive skills on outcomes for young people. London: Institute of Education, University of London.

堀由里(2018a).子どもを褒めることの難しさ─教育・保育実習を経験した学生への調査─ 日本 発達心理学会第29回大会発表論文集、422. 堀由里(2018b).褒め行動喚起場面における態度と認知特性との関連 日本心理学会第82回大会 論文集、903. 堀由里(2019a).子どもをほめる観点に関する心理学的考察─熟達者と初学者の違い─ 桜花学園 大学保育学部研究紀要、18、67‒75. 堀由里(2019b).向社会的意図を持つ幼児の失敗行動に対する保育者の応答─場面想定法を用いた 熟達の違いによる検討─ 桜花学園大学保育学部研究紀要、21、131‒138. 堀由里(2019c).子どもをほめるための認知・評価─してほしい行動としてほしくない行動に対す る反応─ 日本心理学会第83回大会論文集 堀由里(2020).子どもの援助行動と集中行動に対する認知とほめ行動─脳活動の測定を指標とし て─ 日本発達心理学会第31回大会論文集、494. 飯島典子・小泉嘉子・池田和浩(2018).子どもの行動をどのようにほめているか㧠─保育者のほ め行動と保育経験年数との関連─ 日本心理学会第82回大会論文集、914. 生田孝至・林なおみ・高橋喜一郎・風間寛司(2002).教育実習生の授業に対する観察者のオン・ ゴーイング認知 新潟大学教育人間科学部紀要(人文・社会科学編)、㧠、439‒475.

Kamins, M. L., & Dweck, C. S. (1999). Person versus process praise and criticism: Implications for contingent self-worth and coping. Developmental Psychology, 35, 835‒847.

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厚生労働省(2018).保育所保育指針解説 フレーベル館

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OECD (2015). Skills for Social Progress: The Power of Social and Emotional Skills: OECD Skills Studies. OECD Publishing. 岡本夏木(1994).子どもの「自己」 岡本夏木・高橋惠子・藤永保 講座幼児の生活と教育㧟 個 性と感情の発達 岩波書店 47‒77.  高崎文子(2002).乳幼児期の達成動機づけ─社会的承認の影響について─ ソーシャルモティベー ション研究、㧝、21‒30. 高崎文子(2015).ほめへの態度尺度の作成 ソーシャルモチベーション研究、㧤、50‒64. ※本研究は、科研費(17K13253)の助成を受け実施した。 (受理日 2020年㧥月16日)

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