交 換 ロー ル シ ャ ッハ法 再 考 *
― ロ ー ル シ ャ ッ ハ ・ テ ス ト に よ る 母 子 関 係 分 析 の 試 み ( I I ) ―
Exchange Rorschach Method Reconsidered
―An Attempt to Analyse Mother-Child Relation through
Mother's Response to the Child's Test Result (II)―
**
井
原
成
男
Nario lhara
Ⅰ. は じめ に
コ ミュニケー トす るとい うコ トバは,普通伝達 す ると訳される。しか し,この語 には他に分かち 合 うという意味がある。この意味はキ リス ト教の 儀式である聖休拝受(
Co
mmu
ni
o
n)
か ら派生 した ものと思われる。この儀式は,キ リス トの血 と肉 の象徴であるブ ドウ酒とパ ンを神の前に分かち合 うというものである (マルセル ・シモン,1964)0 コ ミュニケーションは,情報を伝えるとい う近代 的な意味をになう以前は,この 「分かち合 う」と いう意味を第一義としていたと考え られる。 我々が臨床場面でコ ミュニケーションの悪い母 子に出会 うとき感 じるのは,情報の伝達能力の悪 さではな く,む しろこの 「分かち合 う」能力の悪 さである。母親 と子 どもはお互いの心的世界を分 かち合 っていない。 したが って ,カウンセ リング はこの分かち合い能力を促進させ ることを目標 と してい くことになる。 ところでこの際,特に重視されるのは,心的世 界のうち,とりわけ感情的な側面である。カウン セ リングにおいては知的理解よりも感情的理解が 重要である。我々はこの感情的世界を理解 させる 一手段 としてイメージを利用 していきたいと考え*
本稿の一部は第26回日本教育心理学会総会において 口頭発表した。なお,本稿はロールシャッハ研究Na28 に掲載予定の論文の続報である。辛*
東京慈恵会医科大学小児科 〔〒105港区西新橋 3-25-8〕 (長野大学) る。水島ら(
1
9
7
1)は 「イメージは感情の象徴過 程となりやす く」
「感情過程の媒介 として極めて ユニークなもの」であるとして,イメージが感情 的 レベルでの理解を促進する具体的手段た りうる ことを強調 している。 イメージを初めとする非言語的手段が他者の理 解に極めて重要な役割を果 していることはひろく 比較行動学の立場か らも示唆されている。例えば 藤岡(
1
9
7
4)
は 「私たちは各 自の抱 くイメージを 情報の形に変換する。他者は自分な りに情報とし てそれを受け取 り,これにもとづいてイメージを●●●● 抱 く。両者のイメージにかな りの共通部分があれ ば ,実際問題として了解が成立 したとい うことに なる。行動のみならず.了解 ということは もとも とイメージの世界か ら成立 して くることであ る (傍点引用者)」と述べて ,イメージが相互の理 解に基本的なものであると考えている。 さらに2者問の一方が子どもである場合 ,イメー ジの利用はとりわけ大きな意義を もって くる。子 どもは言語能力が十分に発達 してお らず ,コ ミュ ニケーションの手段 としてイメージに頼 っている 部分が大きいか らである。 本稿ではイメージを活性化す る具体的な手段 と して ロールシャッ- ・テス ト (以下 ロ ・テス トと 略記 )を使 う。Sc
hac
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9
7
5)
は,
「ロ ・テ ス ト状況での被験者の体験や反応はあ くまで も対 人的行為であり,対人的体験である」として,ロ ・ テス ト状況の対人関係的側面を強調 して いる。加 えて ,この状況は,被験者か ら我々 (検査者)へ の対人的行為であるのみでな く,検査者か ら被験 -43者への対人的行為で もある。 ロ ・テス ト状況は被 験者と検査者の相互作用の場であると考えられる。 村上 (1970)はロ ・テス トの特徴 として 「無意識 のうちに問題に対する自己洞察に達 し,おのずか ら心理療法がいとなまれていく」ことをとりあげ , ロ ・テス トのもつ治療的側面に言及 しているが , この事実 もロ ・テス ト状況が対人関係の場である という側面か らとらえることが必要である。他者 (被験者)のイメージ世界に共感 しようと努力 し ている人 (検査者)がいるか らこそ,このような 治療的側面が活性化されてい くのである。 この状況はまた,望ま しい対人関係の ヒナ型で もある。自己のイメージ世界に共感 して もらうこ とによって ,我々のイメージ世界がますます活性 化され,豊富なものになっていくことは,日常我々 の経験するところである。この事実は我 々の出会 うコミュニケ-ションの悪い母子にも応用可能で あろう.母親が子どものイメージ世界を共感す る ことで子どものイメージ世界がさらに活性化され, 以前よりもうま く自己の世界を表現できるように なる。そしてそれは表現されたものであるが故に, 母親にとって も読みとりやすい ものになる。この ような相互作用がいったん生 じると,母子間の循 環は次第に望ま しい ものに変化 してい くと思われ る。このとき我々のとるべき立場は,2人が相手 のイメージ世界を理解 しやすいような媒介者 (作 田,1981)になるということである。 2者それぞ れのロ ・反応はこのさいもっとも具体的な資料 と して利用可能である。相手が同 じカー ドにどのよ うな反応を示 したかを知 ることによって ,相手に 対する理解は一層深まると思われる。 このような観点に立ったひとつの試みに筆者は 交換ロールシャツ-法 (以下,交換ロ ・法と略記) と名づけ,い くつかの症例-の通用を試みてきた (井原,1979,'81a,'81b,'82a,'82b,'82C, '83a,'83b,'84a)。以下 この方法の手続きと症 例について紹介する。 (この方法に交換 という語 を用いたのは,ロ・反応を交換することによって , お互いのイメージ世界を交換す ることによる。)
-44-Ⅱ.
交 換 ロー ル シ ャ ッ- 法 の手 続 き ,
症 例 の選 定 ,結 果
手 続 き 手続きを簡単に説明すると以下の4
段階になる。 ① 子 ど もに ロ ・テス トを施行す る。㊥ 別場面 で母親にロ ・テス トを施行す る。㊥ 日を改めて 子どものロ ・テス ト反応を母親に推測して もらう。 ④ 母親のロ ・テス トを子 どもに推測させ る (こ の段階については今回報告す る症例 には実施 して いない)。この中で㊥はさらに次の3つの段階に 分けられる。 i) 何 もヒン トを与 えず に子 ども の反応をいきなり推測 して もらう (supposition の段階): 「お子 さんはこのカー ドに何を見た と 思いますか ?」 と問 う。i
i
)何を見たか (自由 反応段階の反応)のみ教えて ,領域 ,内容など判 断できるかどうかをみ る (suggestionの段階) : 「お子 さんはこのカー ドにカニを見 ま したが ,ど こに,どんなカニを見たと思いますか?
」と問う。 五) 何をどこに,どんな風にみたかを教 えて , それを母親が共感 ・受容で きるか どうかをみ る (explanationの段階) : 「お子 さんの見たカニ はここの部分です。これが足,これが目。そう見 えますか?
」と問 う。以上の3段階である。 i) の段階で答え られなければ,ii)の段階,ii)の 段階で答え られなければ ii)の段階へ と漸次質問 を進めてい く。早い段階で分かれば分か る程 ,千 どもに対す る母親の推測能力が高いことになるO 以上のi)∼ 述)の段階で測 ってい ると思われ る ものを表に した (Tablel)0 Tablel 推測の3段階 (推測.判断.共感 ・受容) 段階i) supposition 両者の反応パターンの類似性 段階五)suggestion 子どもの反応パターンの判断 段階五)explanation子どもの反応-の共感 .受容 このようにして得 られた母親の推測能力 ,判断 能力,共感 ・受容能力について検査者は6段階の 評価をお こな う (Figure 1)。 母親の反応 は まず大まかに,分かる (+),分か らない (-)子 どもの ロ .テス ト反応が 分か る 分か らない l l t l 非常にとても とても やや やや とても 非常にとても Fi9urel 交換ロールシャッハ法の6段階評価 に分け られ ,さらにその中で非常 に とて も (‡ , 二 ),とて も (十,-) ,やや (± ,手 )の3段 階に分 け られ る。こうして6段階の評定がお こな われ る。実際 に評定 した例をあげてお く(Table 2)。これは次に述べ る症例中の症例 3について 評定 した ものである。i)段 階で は全てが 一に評 定 された。つ ま り1個 も推測で きなか った (100 %).ii)段 階 目で は -は3個 (19%),in)良 階 目で は2個 (13%)で ある。 ( )内にか い てあるのは母親 のセ リフで あ る。 交換 ロ ・法を使 った症例を以下に 4例紹介す る。 各 症例 の概要 をTable 3に示 した。筆者 は 冒頭 に述べた,コ ミュニケ ーシ ョンの 「分 か ち もつ」 能力の偏異 とい う側面か らみて ,症例1の思春期 やせ症を重度,2の夜尿症を中皮,3の心 因性頭 痛を軽度 と判定 し,この3症例 と比較す るための 対照例 として症例
4
の正常児を選んだ。
「分かち もつ」 コ ミュニケーシ ョンの能力が悪 い程 ,子 ど もの ロ ・反応に対する母親の推測能力,判断能力 , 共感 ・受容能力が低 くな るとい う仮説が立 て られ た。 したが って ,各段階につ いて ,症例1か ら4 に進むに したが って (コ ミュニケー シ ョン能力が よ くなるに したが って) ,-のパ ーセ ンテ ー ジが 低 くな ると予測 され る。 T8blc2 評 価 例 (症例3)Card Na supposition suggestion explanation
Ⅰ Ⅱ Ⅲ L@伝伝)fー) (向い合っている人間)((女の子)コウモ リ)
+
±
+
± (((そういわれれば)辛ナメクジ !)鳥を見た点では同じ)+
@+
ⅠⅤⅤ Ⅵ . ⅦⅦ
ⅨⅩ (@LO(㊨(@@@(カむpDD+
±+
++
+
十
十
+
i ((((((母が方向を示す :テリア)私はひっくり返 したので)宿借りみたいなものかしら)よく分かる)よく分かる)テレビの見すぎだわ !)+
-. (i (嘉詑 鈷 琴芝呈;あんまり見えない :ざりがにに)あ£巨益三㌢辛(
)内は母の反応あるいは反応の説明 -45-Table3 症例のまとめと交換ロールシャッハ法の結果
症例番号 Casel Case2 Case3 . Case4
診 断 思春期やせ症 夜 尿 症 心 因 性 頭 痛 正 常 児 年 齢 15歳 10歳 10歳 - 12歳 性 女 男 ■ 女 女 R (子) 42 15 16 30 R (母) 8 14 12 55 Supposltl(0%n) 100* 一. 80 1
∝
)
90 suggestio(n%) 86 33 19 23 explanati(on%) 24(12)** 20(3) 13(2) 3 (1) 体験型 (千) 両 向 型 内 向 型 内 向 型 両 向 型 体験型 (母) 両 貧 型 内 向 型 内 向 型 内 向 型 SelfCard 1Ⅶ:気分屋 (L) Ⅸ :SF的 Ⅹ :カニみたい (L) Ⅴ:形がよくてポッン Mothercard Ⅸ :怒っている女の人 Ⅳ :下から見上げた人 Ⅶ :女の子みたいな人 1Ⅲ:色から Fathercard Ⅱ :頼りない Ⅴ :かんじ(L) Ⅳ :怖いけど頼れる (D) X :男の人の顔 (L)*
一に分接された% ** 実数 : ( )内 L :mostlikedcard D :mostdislikedcard 結 果 Table3か ら.ii)段階 目のsuggestionとiii) 段階目のexplanationについては,仮説がおおよ そ支持された。 したが って ,母子のコ ミュニケー ション能力がよいほど,子 どもの反応-の母親の 判断能力と共感 ・受容能力がよ くなるという正比 例の関係があると考え られる。以下各段階につい てコメントする。 i)段階 目 (suppositionの段 階) :いきな り 他者 (子ども)のイメージ世界を推測す ることは かなり困難なことである。この段階で子 どもの反 応を推測するとき,母親はやは り自分 自身の反応 にひきずられて しまう。 したが って,母親の反応 と子 どもの反応が極度に似ている場合にのみ ,こ の段階での推測能力は高 くなると考え られる。 ii)段階目 (suggestionの段階) :この段階は 子どもがどのようなイメージ ・パ ター ンを もって いるかについての母親の側の判断能力が問われる 段階である。Ⅰカー ド,Ⅱカー ドと進むにつれて , カンのよい母親は子 どものパ ターンに気づ き,何 をみたかというヒントを もらうだけで .子 どもの 反応をおおよそ説明できるようになる。我々の 日 常の対人場面において も,このようなことがおこっ ている。つまり,この人はこれまで もこのような パターンで行動 してきた (前のカー ドではこう反 応 していた)のだか ら今度 (このカー ドで) も同 じように反応す るであろうと判断す るのである。 したが って ,この判断能力の良 し恋 しが コ ミュニ ケーション能力と正比例す ることはむ しろ当然で あるといえよう。 ii)段階 目(explanationの段階) :この段階 は,母親の側の共感能力 と受容能力をみる段階で ある。症例の中には,筆者がい くら詳細に子 ども の反応を説明 して も分か らない母親 (共感能力に 乏 しい母親)や ,どうして も子 どもの反応はおか しいと,子 どもの反応に批判的で ,それを受け入 れ られない母親 (受容能力の低い母親)がみ られ た。相手と共感する能力を もち,その世界が 自分 の世界と多少異なっていて も一応受 け入れ られる という能力は,コ ミュニケーション能力 として重 要なものである。これは,相手が子 どもである場 合なおさらそういえるように思われ る。 したが っ て ,この能力の良 し悪 Lが子 どもの病理の程度 と-46-もっとも高い相関を しめ したとい うことは十分納 得のいく結果である。 筆者はi)か らii)への手続きをすすめなが ら. 母親と子 どもの間のコミュニケーション能力を測 定 したが ,この診断の仕事は同時に,子 どものイ メ-ジ世界の資料を母親に呈示 してい くという作 業で もあった。それまで分か らなか った子 どもの 反応が分かったときの母親の驚きや ,こんな風に 考えていたのか ,意外だという表情の中に,子 ど もの世界への母親のより深化 された理解が感 じら れた。理解することが同時に治療への力 となると いうことがイメージという手段の魅力であ るO
Ⅲ.
症 例研究
ここでは症例1-4についてその概要を紹介 し, それぞれの症例に交換ロ ・法を実施 して分かった 特徴を述べたい.i) ∼ ih)の各段階 について の数量的な面については前節の結果のところでふ れたので ,ここではもう少 し内容的な面を中心 に 述べる。 (文中にとりあげたプ ロ トコルの領域は Klopfer&Davidson (1964)に よ った。Per. は自由反応段階,Inq.は質疑段 階を しめす。 ) 症例1 <症例> S・A 昭和37年 10月30日生 まれ ,1
5
歳 ,高2
の女子。 <診断> 心 因性 の 咽吐 が 前 面 にで て い る Anorexia Nervosa。
<家族構成> 父 ,母 ,柿 (19歳 ),S・Aの 4人家族。父はタクシー会社に勤務 ,母は専業主 揺 ,姉は高校を卒業後勤めてい る。S・A
は高校 を卒業 したら,専門学校にいってメーキャップアー チス トになりたいという希望を もっている。 <生育歴 と現症歴> 全体 として非常に育てやすか ったが,4
歳頃ま で夜尿 と指 しゃぶりが残 っていた。幼稚園に入 る か ら止めようといったらピタ リと止めた。育てや すかった反面そういう強情なところもあ った。幼 稚園にはす ぐ慣れたが特定の友人はできなかった。 現在 もそうである。自分か ら友人の中には入 って いかない。友人に誘われればついてい くという大 人 しいタイプだ った。母親 はS・Aの ことが 「小 さい頃か らよく分か らなか った し,最近ます ます 分か らな くなった」という。無愛想だが結構男の 子には もて るとい う。筆者 はS・A
に対 して ,相 手 と距離をとった,いわばクールなお色気を感 じ た。14歳の時友人に 「太 って醜い」 といわれてか ら,時々食事を抜 くようになったのか発症のきっ かけである。現在は生理 もなく,体重は3
8
k
g
に減 少 している。 母親は小 さい頃か ら自分のことを理解 して くれ なか った し,姉の味方ばか りす るのがすご く嫌で あるとS・Aはいう。父親はしつこい し,いつか , こっそ り自分の日記をみた こともあり大嫌いだと い う。 ちなみ にS・AはmothercardにⅨcard (怒 っている女の人)を選 び,fathercardにⅡ card(頼 りない)を選んでいる (Table 2)0S・A
は父親を社会化-の手がか り (佐藤,
1
9
8
3
)
として選択できていないばか りでな く,母親 との 問のアタッチメントを十分発達 させていない。母 親によればS・Aはまった くべ夕べタ しない子で あ ったとい う。すなわち,S・A
自身に自己を表 現 しない傾向があるため,母親 はS・A
の考えて いることを くみとれず ,またそのためによけいS・
Aは自己を表現す る傾向を発展 させ られないとい う悪循環がつ くられたのである。 S・Aの ロ ・反応には退行反応を示すwater反 応が多 くみ られた。ロ ・テス トは気に入 ったという。
交換 ロ ・法によって分か ったこと Tab王e2か ら分か るように,母親の反応 は8個 と極 めて少ない。 (また,そのうち3個 はP反応 である。)母親の体験型は両室型である。 この室 しいイメージ世界でS・Aの42個 ,しか もwater 反応などの退行反応の多いイメージ世界を推測す るのは極めて尉難であった。 ii)段階 目でS・A
が何をどこにどう見たか説明 して も分か らないと いう反応が10個残 った。母親はS・Aとイメージ パ ターン (体験型) も違い,ii)段階目で イメー ジパ ターンを判断できないばかりか (-が86%), 最後のexplanation段階で測っている共感 ・受容 能力 も極めて少な くなっていた (-が24%)。最 後までうけ入れ られなかった反応は次の10個であ る。ネコのお面 (カー ドⅠ),雨のたま っている 雨樋 (Ⅱ),ボー ト (Ⅲ) ,靴 (Ⅳ ,D3),イセエビ (Ⅳ),潤,水たまり,雲 (Ⅶ),-工の 顔 (Ⅸ),滑 り台 (X,D 3)。この10個の反応 のうち
4
個が反応内容にwa
t
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が含まれるものだっ た。S・A
の反応の中で概念が不定形 あるいは半 確定の ものを母矧 ま理解 しにくかったようである。wa
t
e
r
反応に退行的意味合いが含まれているとす るならば,このような場面を共有できないという ことは,子どもの側からの依存,愛情,保護といっ た欲求の表出を母親がうま く認知できないという 意味で ,母子関係にある種の疎通性の悪さを生み だ してきたと考えられる。また,1Ⅶカー ドの 5つ の反応のうち理解できなか った,潤,水たまり, 雲は内容やスコアとしてのK
などが示すように不 安の指標である。このカー ドでのその他の反応で ある人の顔,動物の顔,ビスケ ッ トという反応は 母親に もイメージできたことか ら母親はS・Aの 対人的親和の欲求は理解できるのか もしれない。 しか し,濃淡カー ド,しか も母親カー ドと呼ばれ る愛情欲求を刺激するカー ドで不安を示 したとい うことは.愛情を求めたり与えた りするような場 面でのS・Aの不安の高 さを示す ものであ り,そ の不安を象徴する反応を母親は共感できないので はないかと思われる。 症例2
<症例> S・B 昭和43年10月8日生 まれ。 10歳,/ト5の男児。 <診断> 一次性夜尿症. <家族構成> 父 ,母 ,妹 (6歳),祖母 (莱 際には父のオバであるが父を養子に したため祖母 になる。独身であり,会社を経営す る,なかなか のや り手である。)0 <生育歴 と現症歴>1
歳∼3
歳まで喋息があった。昼間のオムツが とれたのは3歳 6ケ月。夏で も30分 ぐらいで トイ レにい く程の頻尿であり,この傾向は現在 も残 っ ている。オネショは止まった時期がない。 3歳の 時か ら祖母とくらす ことになった。S・B
には夜尿の他 に も幼少時よ り夜泣 き,乗 り物酔などがあ り,かなり過敏な体質。性格的に は嫌なことがあって も外にださない方である。 母親は,自分自身が神経質なので ,はや く自立 して欲 しいと,突き放 して育てた。母親 自身は, 中1の頃まで内向的傾向が極度に強か ったが ,中2
の頃,自分をいじめる子に思い切 って立ち向か っ たことがある。それ以後できるだけ活動的になろ うと努めてきた。ところで3歳か ら同居す るよう になった祖母は,会社を始める前 は教職員組合の 活動家であったが,レッド・パ ージで職を追われ た。母はこの祖母の有能 さを認めなが らも,教育 方針を自分にお しつける祖母 に反発 していた。祖 母と母は教育方針で ことごとく対立 したという。 このような状況にあ ってS・Bは母親 を2人持 っ ていたようなものである。祖母か らは強力な教育 方針を押 しつけられ ,母か らは突 き放されるとい う二重の圧力の もとで ,ほとんど自分では何 も決 定できない存在になり下が っていた。ちなみにS・ Bはmot
h
e
rc
a
r
d
をⅣカー ド (下か らみあげた人) としている。S・B
の夜尿は 1次性の ものだ ったが ,治療終 了後,高校受験にさい して再発 した。心因 もかな り関与 していた もの と思われ る。 交換 ロ ・法によって分か ったこと この母子 は体験型が似てい る(
Ta
bl
e
2)
。 と もに内向型である (母は超内向型 というべきであ ろう)。そのためであろうか ? 何 もヒン トを与 えないで,いきなり3個同 じような反応を推測で きた (i段階目)。 しか し,それ に も拘 らず ,第 3段階でも,どうしても分か らない反応が3個残 っ た (-は20%)Oこの母の特徴は ,そんな風に見 ればみれるが ,自分はどうして も子 どものその反 応はおか しいと思 うとい う批判的な態度をとると いうことであった。例えばⅦカー ドを母親は 「石 ,D
l」とみていたが ,この同 じ領域(
Dl)をS・
Bは 「玉」とみたときか され,
「玉はこんなに角 ぼっていない」と批判的であ った。確かにこの領 域は客観的にみて,玉よりも石の方が的確ではあ る。 しか し,そのような未熟な反応を も受容 して あげられるゆとりが ,母親にとっては不可欠であ ると思われる。 また,もう一つの特徴 としてあげ られるのは, 子 どもが2つの部分 としてみている反応を,母は 1つの反応に見事に統合 したとい うことである。 例としてカー ドⅣの子と母の反応を次にあげよう。Fi
gu
r
e
2
は領域図である。 -48-人 (S・B),巨人 (母) 木を滑 りお りているジ ャ ックと豆 の木の巨人 (母) 木 (母 ) Figure2 症例2におけるⅣカードの母子反応領域 〔カー ドⅣ 〕 子 ど も(む (Per.)<10x木 って い うかん じ。 (Inq.) これ幹
(
D 4),これはっぱ,全部で。 繁 っているってかん じ。 w Fc± pl ㊥ (per.)< 下 か ら見 あ げ た人 み た い。 (Inq.) ここ(
Dl)は取 り除いて。 (もう少 し説明 して !)顔 (d2),辛 (dl),足 (D 3), 小 さい ものか ら大きいものを見上げたようなかん じ。40〝 W FK± H 母親① (Per.)応
<1050 ジャック と豆 の 木の巨人。 (Inq.) 真申 (D 4)が木で ,バ ーツ と上か ら滑 り降りてきたかん じ。115〝 WM±
,FK H,PI S・B(子 ども)が 「木」 と 「下か ら見上 げた 人 」と2
つの反応を して い るところを ,母親 は 「木を滑 りおりて くるジャックと豆の木の巨人」 と一つに統合 していた.この統合能力と批判力は, 母親に受容能力が不足 していることによって ,千 どもにとっては,たちうち不可能な武器に転化 し ているよ うに思われる。 日常生活場面で も,S・
Bの貧 しい言語能力を使 っての表現は,母親の統 合能力によってまとめられ ,反論を封 じられてい た。まさに,S・Bのパーソナ リティは母親によっ て 吸い と られて(
Va
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9
7
7)
い た のである。 しか し,S・Bにとって母親は確かにグ レー ト マザー的側面をもっているとして も,
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と したⅤカー ドをmo
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と して選んだ -49 -ことか らみて父親のイメージはよいようである。 この点 ,父親にも母親にも極めて悪いイメージし か もっていない症例1のS・Aに比較 して ,よ り 良好な家族関係であるといえよう。 症例3 <症例> S・C,昭和45年 7月 4日生 まれ , 10歳 ,小5の女児。 <診断> 心因性頭痛 (PSD)0 <家族構成> 父 ,母 ,兄(
1
4
歳),祖母 (天 気予報よりよくあたるといわれる頭痛の持ち主。 頭痛の時,必ず雨にな るとい う。S・C
の頑痛は この祖母をモデルに している可能性 がある)0 <生育歴 と現症歴> S・Cの家は自宅で商売 (八百屋)をや ってい るために,ほとんど構 って もらっていなし\。例え ば ,離乳食 も特別に作 ったことはな く, 1歳頃, 大人のオニギ リを柔 らか くして食べさせた ら,す ぐに食べて くれるようになったという。 このよう なェピソー ドにそのことがよ く示 されている。オ ムツがとれたのは1
歳過ぎ,夜泣きも夜尿 もな く, ワガママも言わず,自己主張 もない大変 ききわけ のよい大人 しい子だったとい う。そのために,よ けい放 って置かれたのであった。 幼稚園の年中組の頃,父親が迎えにいくと怖がっ て泣いたという。父親は2度 と迎えに行かなか っ た。家族で出かけたときも決 して父とは手を繋が なかったという。小3の頃か ら,先生に注意 され た りす ると,いつまで も憶えていた。特 に先生に 誤解されたことはいつまで も心 に残 って いるとい う。S・
Cは眠っている間 に指 しゃぶ りが ある。 1 年に3日休む くらいで学校はほとんど休 まない。 時間割は前の日にきちんと揃えている。出かける 前に トイレを気にする。人の好 き嫌いははっきり しているが,嫌いな子 とも遊んであげ られる柔軟 性 ももっている。 「胸が くるしい」
「頭が痛い」等の訴 えが1年 前か ら続き,時おり倒れる程痛か った。近医にて 投薬を受けたが改善されないために,筆者の勤務 す る病院に入院 した。筆者が心因性頭痛 を説明 し てあげると, 「あっ,わかった,かまって欲 しいっ て気持ちが頭にいってガンガ ンしたのね」と即座に答えて くれた。 この例 にみ られ るように,S・ Cは理解力が よ く大人の ペースについて これる人 である。そのためにかえ って一人で放 って置かれ ることになったのであろ う。驚 くほどお しゃべ り で ,機関銃のように しゃべ りま くった。思春期の 入 り口にさしかか り,これまで ウッセキ していた ものが一気に出てきた と感 じられた。頭痛 はこの あと改善され1年後 も再発をみていない。 母親のS
・
Cに対す る理解 は極 めて よい。ちな み に,S・C
はmot
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rc
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にⅦc
a
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(女 の子 みたいな人 ),f
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he
rc
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r
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にⅣc
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(こわ い け ど頼れる)を選んでいる。これはそれぞれ母親カ-ド,父親 カー ドとよばれているもので あ り,S・ Cの母親 との関係 は比 較的よく,父親 も怖いと感 じられてはいるものの ,頼れる存在で あると思わ れる。 交換 口・法 によって分か ったこと この母子の特徴は,いつ も子 どもの ことにさほ ど注意を向けていないが ,少 しヒントを与えれば, 素速 く理解できるとい うことで あった。そのため であろうか ? この母 はS・Cの反応パ ターンを 素 速 く(
i
i
段 階 目で ) 判 断 した。(
i
i
段 階 目:s
u
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s
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段階にて-が1
9
% しかない。各段階の 成績はTa
b
l
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2参照 。) 例えば ,S・Cは カ丁 ド Ⅳをカイジュウとみていたが ,母親は これを毛皮 とみた。子 どもはこれを カイジュウにみた と筆者 に説明されたのに対 して母親は 「自分 は子 どもと 反対の方向か らみたか らそうみえなか った。反対 か らみればなるほどカイ ジュウね」 と両者の見方 の違いを説明 して くれ た。また,S・Cが カー ド Ⅱにみた 「ナメクジ (D2)が ダ ンス している」 という反応を筆者が説明す ると,ゲ ラゲ ラ笑い声 をたて,
「いっ も構って あげないか ら,部屋の隅っ こで一人で遊んでんのか しら」 とい ったように, 実に的確に説明 して くれた。 このような的確さの中で もとりわけ印象的だ っ たのはカー ドⅨの 「犬 (Dl)」 とい う反応に関 してであった。 〔カー ドⅨ〕 ①(
pe
r
.
)
<25〝 犬(
D l)0(
I
n
q.
)
顔 , シッポ。 1匹 しかいな くて ,水を見た ら影が映 っ たの。ここの黒いとこ目,口さけている。歩いて いる。足はこっちしか見えない。ここが足だとす ると水に映 っていないとおか しい。45'D FK±,FM
A.Wa
t
e
r
この反応を筆者はよく理解で きな いでいたのだ が .母親はそれが 「テ リア」である と,きちん と 明細化 して筆者に理解 させて くれた。 このよ うな 傾向はその他すべての反応について いえ ることで ある(
Tabl
e2
参照)0 なお,この母子は体験型 も共通 していた ことか ら,よりそのイメージパ ターンは理解 しやすい も のであった と思われる。 この症例は家族の関係 もよく,家が忙 しくて構 っ てあげ られないという環境的な因子 の比率が大 き かったと考え られる。それ故に,環境の改善によっ て頭痛は一過性に改善 された。 症例4
<症例 > S・D 昭和45年1月 1日生 まれ。 12歳 ,小 6の女児。 <家族構成> 父 ,母,柿 (高3),妹 (小 1) の5人家族。父 ,母 ともに知的な職業 につ いてお り,共稼 ぎであ る。S・Dが小 1の時 ,同居 して いた祖母が亡 くなり,それ以来,鍵っ子になった。 母業別ま,そのために,かな り意 識的 にS・Dを理 解 しようと努めている。母親はS・Dと自分の タ イプが違 うのをよく理解 してお り, 日常 のかな り 細かい部分までよ く知 っている。母子関係は一応 の レベルにまで達 していると思われ る。S・D
の言語的表現能力はかな りす ぐれてお り, 自らの内面世界をうまく母親に伝えている。また, 母親が 自分のことをよ く理解 して くれて い ること は自覚 しつつ も,父親に同一化 して いる部分が大 きい.S・D
はf
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にカー ドⅩ (男の人 の顔)を選んでいるが ,これは同時 にmos
tl
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で もあ る。S・D
は父親 イメー ジを 「いろん なことをよ く知 っていて教えて くれ る し,バ ラュ テ ィにとんで面 白い」とみている。佐藤 (1983) は 「父親は女の子にとって ,自分が社会化 されて い く際のc
u
e
(てがか り)になる」 と述べて い る が,S・D
に とって ,よき手 がか りとな ってい る ようである。 交換 ロ ・法 によって分か った こと この母子の特徴 は母のRが52(子 どもは30)と 極めて多いことである。また,母親 の反応内容 は ー50-極めてバラエテ ィに富み .形態水準 も良好
(
氏+
%-89%)であ り,イメージ豊かな内面世界であ る。また,これに対応する子の反応は公共性の高 い反応が多 く (p- 7),その他の反応 も了解 し やすい。 したが って ,体験型が異なってはいて も 子 どものイメージ世界は了解 しやすいものである 上に,母親 も意識的に娘を理解 しようという,こ の2
つが相互に作用 してよい方向-の循環がつ く られていた。母親はS・Dが イメー ジしそ うな こ とを驚 くほどよ く知 っていて ,日常生活 と結びっ けなが ら明細化 して くれた。Ⅳ.
考
察
1.ロ ・テス トか ら分か った家族関係 Table2に各 症 例 につ いて,mother card, fathercardがあげてあるO症例1の意児は母親 に対 して 「いつ も怒っている」と悪いイメージを 抱いていたoまた,父親に対 しては 「頼 りない」
と嫌っていた。患児にとって ,母は自分を受容 し て くれるものでなく,実際にも患児のイメージ世 界に対する母親の理解は極めて貧 しか った。症例 2では母親に対 して 「下か ら見上げた人」 という グレー トマザー的なイメージを抱いているものの, 父親に対 しては好きなイメージを もっている。母 親に対するイメージはあまり良 くないが ,父親イ メージはよい。症例3では母親に対 して良いイメー ジをもっている。父親に対 しては 「怖い」という 嫌いな面を前面に出 しつつ,
「頼れる」存在 には なっている。症例4は,母業別こ対 しては特に否定 的な感情ほだされておらず ,母親の側の意識的な 努力もあって良好なイメージがみ られ ,父親に対 しては非常に積極的に自分を同一化 している。 このようにみて くると,患児が母親にも父親に も否定的なイメージをもっている場合 ,その病理 はもっとも深 く,どちらか一方が良いイメージで み られている場合は比較的その病理は軽度になる のではないかとみることができる。一方の親 に対 す るよいイメージ,あるいは一方か らの肯定的な 働きかけによって,病理は軽度化されるのではな かろうか ? また,症例4の正常児のように両親 に対 して比較的良好なイメージをもっている場合 , パ ーソナ リティは極めて健全な ものになると思わ れる。 4症例のうち,3児は女児であるが,女児にとっ てはとりわけ,父親がどのようなイメージをもた れるか,社会化の手がか りを与えて くれ るかどう かは極めて重要である.症例1は父額が手がか り になっていないが,3・4は手がか りにな ってい る (あるいはなりつつある)0 イメージを家族像と結びつけることによ って , 我々は様々な家族力動と病理の軽重に対 してい く つかの ヒントを得ることができるだろう。 2.体験型と推測能力 本稿の症例か ら体験型 と推測能力の関係 につい て分かったことは,まず①母親の側のイメージ能 力がある程度以上豊かであることが ,子 どものイ メージ世界を推測する上で重要であるとい うこと である。症例1の母親はイメージ能力が極 めて貧 しい (雨笠型)。それに対 して ,子 どもの方はイ メージ世界が極めて豊かであり,このようなイメー ジ世界に遊ぶことが好きである。そうす ると,子 どもの側にはいっも,母親が自分のイメージ世界 を十分に理解 して くれない,分か って くれないと いう不満がたまり勝ちである。イメージ世界が豊 かであることは,子どもを理解す る (子 どもの側 か らいえば理解 される)上での武器 とな る。 次に㊥体験型が共通であることは両者の推測を よりや りやすいものにす るが,必ず しもそれがプ ラスに作用するとは限 らないということである。 症例2の母親 と子どもはともに体験型は内向型で 共通 しているが ,この母子にあっては,母葺劉ま確 かに子どもの反応を判断 しやすいものの ,母親 自 身が子 どもの反応に対 して批判的で ,なかなか 「そういう見方 もある」と受容できないために, 五段階目 (explanation段階)のパ ーセ ンテージ が悪 くなった。ところが,症例3の場合 には,体 験型が共通 しており,母親の側の ものの見方 も柔 軟性 に富んでいたために ,ち ょっとした ヒン ト (ii段階目のsuggestion段階)で81% もの反応を 推測できたのであった。 五)段階目で ,ほとんど の反応を受け入れることができたのはもちろんで あった。 さらに,㊥体験型が違っていて も,母親の側に ある程度以上のイメージ能力があり,子 どもと夕イブが違 うという自覚があれば,より意識的に子 どもを理解 しようとすることでそれを十分補 って いけるということがあげ られる。症例
4
の母子の 場合,母親のイメージ能力は極めて豊かであり, 子どものイメージ世界を理解することは比較的容 易であった。そのうえ,この母子 にあっては,千 どもが自分を十分表現できる能力を もっていたた めに,母親 もそれを汲み取 りやすかったといえる。 この点で,内面的には十分な豊かさをもちつつ も, 無口であるために,母親に十分自分の内面を伝え られなか った症例1とは対照的である。 (内面的 には豊かであったのに,十分それを母親に伝え ら れていないという点では症例2にも共通す るもの がある。)3.
推測.判断.共感 ・受容 について 交換 ロ ・法の手続きは,母親の側か らみれば , 子 どもの反応を推測できるか (i段階 目) ,ヒン トを もとに判断できるか (ii段階目),治療者が 細か く説明 した反応をきいて ,それに共感 し受容 す ることができるか (五段階El)というプ ロセス である (Tablel)0 Table3に各段階についての結果が しめ されて いる。数字は,よく分か らないという方 に分頬 さ れたもの (-,辛 ,= )のパーセンテージである。 パ ーセ ンテージが高いほど,子 どもの反応を母親 がよく分か らない,と表明 したことを表わ してい るosuggestion (ii段 階 目),explanation (iii 段階目)ともに症例1
か ら4に進むにつれて理解 がよくなっていることを示 している。したがって, 母子のコ ミュニケーション能力がよいほど,相手 (子ども)の反応パ ターンを判断 した り,共感 ・ 受容する能力が高 くなると考え られる。とくに最 後のexplanationの段階にみ られるように,子 ど もの反応を受け入れ られること (共感 ・受容でき ること)は何にもま して大切なことであるといえ る。 母子のコ ミュニケーション能力が高 くなるため に必要な条件を,イメージの世界に限っていうと, 次のことが重要である。それは,①母親が子 ども のイメージの世界を理解できること,また子 ども は,自分を分かって もらえるように自分の内面を 表現できること,(参ちょっとした ヒン トやてがか-5
2-りか ら子どものイメージ世界を判断できるように, 子 どもの日常生活を熟知 していること,㊥子 ども がどんなイメージ世界を もってい るかが分か った ら,それを批判 した り,子 ども自身にな り代わ っ て統合 した りせずに,そのままに受 け入れる能力 と柔軟性を もっていることなどである。以上のこ とはイメージの世界に限 らず ,思考 ,行動などの その他の面について も応用可能である。4.
交換 ロ ・法のもつ治療的側面 最後に,交換 ロ ・法が もつ治療的側面について 考察す る。はじめに各症例について本法が果た し た役割について述べ る。 症例1:筆者は交換 ロ ・法を母親面接の中で2 回に分けて導入 した。Ⅰカー ドか らⅤカー ドまで を1回目のセッションで ,Ⅵカー ドか らⅩカー ド までを2回目のセッショシで実施 した。 2回目の セ ッションでは,子どもの反応のパ ターンが徐々 に学習されていったものとみえ ,前回よりリラッ クスした雰囲気の中で面接が行われた。このよう な雰囲気にあってⅨカー ドに子 ど もと全 く同 じ反 応が推測され (吊梧).それに触発 されて,以前 にはrejectされて.いたカー ドにも,新 しい反応が 連想され母親はとて も嬉 しそうだ った。吊橋につ いての反応内容は驚 くほど,子 どものそれと一致 していたOこのことか ら.抑制が とれれば母親に も子 どものイメージ世界をこれまでとは違 った角 度か ら見ることが可能なのではないか と考え られ る。このような試みが ,母親に子 どもの内面につ いての具体的な資料を与えたことが ,その後の面 接の中で,子どもについて これまで とは違 った見 方をうながすきっかけを与えた。 これが症例1
で 交換ロ ・法の果た した役割であると思われる。 症例2
:筆者はこの症例において,母親が子 ど もに対 してかなり批判的で,過干渉であることを, それまでの面接でおおよそは気づいていた。 しか し,交換ロ ・法を実施 したことによって ,それが 具体的にどのような ものであるかを ,日常生活の 現場にいあわせたように,手にとるようにみるこ とができた。子 どもの反応を筆者 に説明 して もら いなが ら,カー ドに向かってみせた母親の態度を みていると,いつもの母子関係が髪巽とされた. このような接 し方をされたか らこそ,もともと無口で空想的な患児 (患児 自身 自分の ことをSF的 だ といってい る)はとて も自己主張などで きな い性格を形づ くっていったのであろう。母親の批 判 (臨床場面でいうならばイ ンク ・プロッ トの見 方)が的確であるだけになおさら反論 しに くか っ たのであろうというのが筆者の実感であ った。ま た,この実感は筆者が推測 した ものではな く,今 ここで母親が展開 してみせて くれた ものであると いう意味で ,確かな手ごたえのあるものであった。 この手ごたえをもとにして ,筆者はその後の母親 との面接で ,母親自身に患児に対す る態度を洞察 せ しめるにいたったのである。 症例3:この症例の母親の特徴は,わずかな ヒ ン トを与えただけで ,子 どもの反応を明細化す る ことができたということである。筆者にはよ く分 か らなかった反応まで明細化 して くれ ,さすがに 一緒に生活 している親子であると感心 させ るもの があった。子どもの 「くね って遊んでいるナメク ジ (カー ドⅡ,D2)」という反応か ら,見事に, 「いつも一人 ,部屋の隅っこで遊んでいたからね
」
と,子 どもの望んでいることを察知 した。子 ども か何を望んでいるかを,治療者が 口で伝えるよ り ち,このようなイメージは雄弁に伝えていたので はなかろうか。 以上か ら,交換ロ ・法が治療的に果た している 役割は①母親に子どものイメージ世界についての 具体的な資料を提供する,㊥その資料をみること によって,子どもの内面世界を見なお した り,違 う角度か らみたり,足りないものを補 うきっかけ を与える,㊥治療者にとっては,母親の子 どもに 対する態度を具体的に知 ることができる,などで あるといえよう。 症例4には,交換 ロ ・法によってつけ加えるも のは何 もなかった。それは交換 ロ ・法の果たす役 割がすでに日常の生活の中で十分に母親によって 実践され機能 していたか らである。 おわ りに これまで ,子どものロ ・反応を読みとる母親の 側の能力のみ,強調 してきた。 しか し,当然のこ ととして ,母親の読みとりやすいような形で ,千 どもが 自己の内面世界 (イメージ世界)を表現す - 53-ることができているかとい うことが問題 と してあ げられる。もともと,コ ミュニケーションという のは ,たとえてみるな らば 「キ ャッチボール (井 皮,1
9
8
4b;
井原 ら,1
9
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4)
」のような ものであ る。本稿の流れにそってい うと,それは 「感情の キャッチボール」であるということになるだろう。 そこには2人の相互作用がある。 こういう発想から,母親の推測 ,判断 ,共感 ・ 受容能力を横軸にとり,子 どもの自己表現能力を 縦軸にとった座標を作成 してみた。さらに,この 座標の中に本稿でとりあげた4つの症例を位置づ けてみた。このように してできあが ったのが , Figure3で ある。以下 ,この図について説 明す る。 重度の領域 :症例1
はこの領域の点の位置にあ る。子 どもの表現能力は割合あるのに,それを読 みとる母親の側の能力が最悪である。重度の領域 が上 にせ り上 った形になった理由は,子 どもの表 現能力がかなりよくても,それを母親によって読 み とってもらえないならば .いかん ともしがたい か らである。 (読みとり能力の重要性については Greenspan(1985)を参照 して欲 しい。)この症 例 には 「読みとりの悪さ」とい うタイ トルをつけ ることができる。 中皮の領域 :この領域が範Bflとしては もっとも 広 くなる。それは子どもの表現能力がよ くて も母 親の読みとりの能力が悪ければ中皮 にな って しま うし,また,母親の読みとり能力がよ くて も子 ど もの表現能力が悪ければ中皮にな って しまうか ら である。症例2
がこの位置にきているのは,母親 の読みとり能力はウル トラC級によいのだが ,千 どもの方の表現能力がそれに見合 って ,ついてい くことができないか らである。まさに,すぎたる は及ぼざるがどとしである。横軸 ,縦軸 に悪い-ほほよいと表現 してあるのほ,
「ほぼ」で十分だ か らである。あまりに厳密な読みとりを して しま う母親は,読みとれない母よりはよいか もしれな いが,十分とはいえないであろう 注1。 この症例 には 「吸いとられたパ ーソナ リテ ィ」 とい うタイ 注1この点に関してはWinnicott(1979)の goodenough mother(ほぼよい母親)というすぼらしい表現を是非参 考にして欲 しい。
子 ど も の 表 現 能 力 が はばよい 母親の推測 .判断,共感 ,受容能力が Figure3 子どもの表現能力と母親の推測 判断.共感,受容能力 (-読みとり能力)の
2
軸からみた症例の位置づけ トルをつけることができる。 軽度の領域 :この領域全体が .かな り上 にせ り あがっているのは,軽度 となるための前提条件 と して,子どもの表現能力がかな りよいということ が必要とされるか らである。そのような能力を持 つ子どもというのは,
「お しゃべ り」であるか も しれない し,文学や絵画 ,音楽などの 「芸術」に よって鋭 く自己を表現できる子であるか もしれな い。いずれにして も,子どもの側に高い 自己表現 能力がある。 症例2
の場合 ,それは 「お しゃべ り」という形 であった。また ,彼女はCAT.や ロ ・テス トを通 して自分のneedをうま く表現す ることに成功 して いた。この症例はさいわい,母親の読みとり能力 もよか ったのですみやかに正常へ と移行 していっ た。たとえどんなに自己表現能力にす ぐれていた として も,もし,母親の読みとり能力が最悪であ れば,容易に重度に転落す る領域で もある。 (天 才的な芸術家に多いタイプであると思われ る。) 症例3にタイ トルをつけるとすれば 「早すぎた 自立」といったところであろうか ? 正常の領域 :何が正常かは極めてむずか しく, 決めることのできない状態である。 したが って , この領域は一部が長 く,軽 ・中 ・重度の領域の方 にせ りだ している。そういう工夫を してみた。症 例4はもう少 し母の努力が足 りなければ軽度に, もう少 し子どもの表現力がおとっていれば中皮に 転落 して しまいそうな症例なので この位置におい てみた。 しか し,この症例は決 して重度 にはおち ないであろう。表現 ・読みとり,いずれかがはぼ よいということはかように素晴 しい条件なのであ る。この症例につけられるタイ トルは 「読みとり の努力」である。 -54-附記 注2
筆者はこれまでにい くつかの症例報告 (井原 , 1979,'81a,'8lb,'82a,'82b,'82C,'83a, '83b,'84a)を通 じて ,交換 ロール シャッハ法の バ ック ・ボーンをなす理論的側面についてわずか ずつではあるが考察をすすめてきた。ここではこ れまでの考察をふまえた上で ,さらにす っきりと した形にまとめあげてみたいと思 う。 Figure4によって説明 したい。 且 1--: 母子分離期 (自立)をうながす力 子 Figure4 交換ロールシャッハ法の基盤をなす発達の プ ロセス この図は立体図である。丁度猫の耳のような形 を想像 していただくとよい。胎児期においては子 どもにとってはまだイメージの世界はない。母親 にのみ,子 どもについてのイメージがある
。
「私 のこの子は男の子であるにちがいない。元気な子 である」といったものが例 としてあげ られる。ま だ母のイメージの中に包みこまれている。 次に出生後 ,確かに肉体的には分離 し独立 して いるが ,心理的には今だに一体的な世界の中にあ る。母親が子どもの世界にのめ りこむ ことによっ て , (-子どもに分か りやすい手がか りを与える ことによって)子どもはより母親に反応 しやす く なっていく。 次の段階はMahler(1981)によって分化期 と よばれたものにあたる。母 と子 は根 っ子のところ でつながってはいるが,子どもは母親をある部分, 自分とは異なった ものとして感 じは じめている。 この例 としては,母親に抱 っこされつつ ,母親を よ く見ようとしと身をそ らしたり,母親の顔をい じくっている乳児の姿をイメージして もらえると よい。 このあた りか ら子 どもの内面世界で 自己と 他者の表象 (representation)が分化 しは じめ る。この頃になると,子 どもの表現す るところの もの (まだ表出といった方がよいか もしれない) は,母親によって も読みとり易い ものにな ってい く。 このあたりか らコ トバ (象徴能力)が徐 々に出 現 し,子どもの内面世界において も,自己表象 と 他者表象が安定 して くる。Figure4でい うと, もう母子分離期に達 している。この段階にいたり, 心理的にも母と子は分離 し独立 した存在 にな って いる。心理的に独立 した存在にな っては じめて母 と子は互いに自己の内面を表現 し,相手のそれを 読みとるということが可能である。お互いが独立 した存在でなければ表現す る必要 もないか らであ る。 表現 し- 読みとるという作業は2
つの側面つ まり,発達における過去と未来を含んで ,は じめ て意味をもつ。 母子は過去に一体であったか らこそ,表現 し一 読みとることによって,その一体感を回復 しよう とす る。そこにこそイメージの もつ 「つな ぐ」あ るいは 「共有する」という働きがある。また,母 子は本来において ,どんどん切 りはなされ (ある いは独立 し)てい くと予感するか らこそ ,より一 磨 ,表現 し- 読みとるというこの作業 にみがさ をかけようとするのである。みがさをかけ られた イメージはより理性的なもの,いわゆる言語的な ものに近づいていくのである。
「みがきをかける」
というのは,より 「切 りはなし」
「客観的にみる」
という作業であろう。 我々はここで表現 し- 読みとる作業の2
つの 側面の一方に 「母性的」 もう一方 に 「父性 的」と いうタイ トルをつけることも可能であると思われ 注2 この部分の論考については,村瀬 (1984)に刺激をう けるところが大きかったことをつけ加えておきたい。-55-る。 ここで い う母性 ,父性 とは,Jungの用語 に な らった もので ある (河合1967)0 もう一皮Figure4に 戻 って いただ きた い。 母 子 を分離 させ る力が矢 印で書 きこまれて あ る。 こ こにはいわゆる父性 (共 同体が ,母子 とい うペ ア にお しつける力)が あ るのみで な く,もっと生理 的な もの ,本能的な力 も働いてい るよ うに思 うの だが ,それ以上 の事 は分か らない。 最後 に交換 ロ ・法 において治療者 の果 たす役割 につ いて考 えて みた い。Figure5に交 換 ロ ・法 の場面を考え るための三角形 をあげてお く。治療 者には
2
つの役割があると考え られる。ひとつは , ①下線に示 してあるよ うに,母 と子 の一体感を回 復 させ る役割である。 これに母 と しての治療者 と い うタイ トルをつけてみた。 もう一つ の役割 は, (参お互いが ,自 らの力で うま く自己表現 し- そ れを読みとるという力をつけてい くよ うお手伝 い す るという役 目であ る。 これに父 と しての治療者 とい うタイ トルをつ けてみた。具体的 に場面 に即 してい うと,①は,相 手 の ロ ・テス ト反 応を味 わ ってい くとい うプ ロセス ,㊥は相手 の ロ ・テス ト反応を理解 してい くプ ロセスに対応 して いる。 交換 ロ ・法 の3段階で い うと,① は3段 階 日の共 感 し,受容するプロ'セス ,㊥は2
段階目の理解 し, 判断す るプ ロセスに対応 してい ると考 えて よい と 思 う。 (1段階 日の推測す るとい うプ ロセスは , 表現 - 読みとりとい うよ りももう少 し確率論的 なプ ロセス,つ まり "あて っこゲ ーム"のよ うな 父としての治療者 イメージの世界 (-交換ロールシャッ-汰) 母 (母としての治療者) 千 Figur85 交換ロール シャッハ法場面における治療者 の役割 形で考えてい った方が実 りがあるので はないか と 思 うが ,それについてはまた稿を改めて考察 した い。) 河合 (1982)は,箱庭療法についてふれなが ら, 確かに箱庭 はクライエ ン トに対 して 「自由に して 保護された空間」を与え るが ,そ こには同時 に箱 庭 とい うもっとも限定 された空間が クライエ ン ト に与え られているのだ とい うことを重 ねて強調 し ている。この 「枠」 とい う考え方 は ,ク ライエ ン ト中心療法 における制限の問題 に も通 じると思 う が ,これは心理療法一般 につ いて いえ ることであ る。枠や制限のない 自由や保護が考 え られないの と同様 に父性のない母性 も考え られないので はな か ろうか ? このような意味で ,母 と しての治療者 と父 と し ての治療者を同時に生 きることが治療者 の責務で あ り,交換 ロ ・法における治療者 の役割 もそ こに つ きるといえ るだろう。 要 約 この研究の目的は筆者の考案 した交換 ロールシャ ッ-法 (ERM)の方 法を紹介す る ことで あ る。 手続きは以下のどと くであ る。 Ⅰ) ロール シャッ- ・テス トを子 ど もに実施す る。 Ⅱ)ロール シャッハ ・テス トを母親に実施す る。 Ⅲ)日を変えて母親 に子 ど もの ロ ・反応を推測 し,それを検査者 にい うよ うに求 め る。 Ⅲ)はさ らに 3つの下位段階に分 け られ る。 i) 各 カー ドに子 ど もが何 をみ たか推測 して も らう。 例,
「お子 さんはこの カー ドに何 をみた と思 いますか?」
ii) ヒン トを与えて子 ど もの反応を説 明 して も らう。 例,
「お子 さんは このカー ドにカニを見 ま し た。それはどこで ,どんな風 にみたので しょ う。説明 して下 さい。」 ii)検査者は子 どもが カニを ど こに見て どん な 風 に見たか詳 しく説明 し,母 親 もそ う見え る か どうかき く。 例,
「カニはこれです。 これが足 ,目・・・-赤 いカニです。そ う見え ます か?」
-56-この プ ロセ スで検査 者 が 測 って い るの は以 下 の こ とで あ る。 i)母 と子 の反応 の類 似性 。 ii)子 ど もの反 応 パ タ ー ンを 母 親 が 判 断 で き る か ど うか ? 五)子 ど もの反 応 に母 親 が共 感 し受 容 で き るか ど うか ? 筆者 は この方 法を4つ の ケ ースに適用 した.ケ ー ス1は思 春 期 や せ症 。 ケ ー ス2は 夜 尿 症 . ケ ース 3は心 因性 頭痛 。ケ ース4は正 常 児 で あ る。 ケ ー ス1か ら4に進 む につ れ て 母 子 間 の コ ミュニ ケ ー シ ョン能 力 は よ くな る。 交 換 ロ ー ル シ ャ ッ- 法 (ERM )を4症 例 に使 った 。 そ の 結 果 , コ ミュ ニ ケ ー シ ョン能 力 と ,母 親 が子 ど もの反 応 を理 解 し (下位段 階ii) ,共感 ・受 容 す る (下 位 段 階 Li) 能 力 は比 例 す る こ とが 分 か った 。 段 階iの 推 測 能 力 につ いて は この ことは証 明 され な か った 。 交 換 ロール シ ャ ッ- 法 (ERM )の もつ 治 療 的 な側 面 と して母 親 に対 して ,子 ど もの 内面 世 界 の イ メ ー ジの具体 的 な資料 を 呈 示 す る とい う こ とが あ げ られ る。 最後 の章 で ,交 換 ロール シ ャ ッ- 法 の そ の他 の 長 所 につ いて検 討 した。 さ らに我 々は子 ど もの 自 己表 現 能 力 と母 親 の読 み と り (推 測 ,判 断 ,共 感 ・受 容 )能 力 との 関 係 につ い て 論 じ,ERMの理 論 的側 面 につ い て 言 及 した。 文 献 藤岡喜愛 (1974) イメージと人間 日本放送出版協会 . Greenspan,S.I.前川喜平 ・井原成男訳(1985) 小児の臨床面接法- 発達的観点 より子どもの行動 を読む- 南山堂 . 井原成男 (ユ979)アノ レキ シア ・ネルボ ーザ症例にお けるロールシャッハ ・テス トの母子差 と治療への適 用 日本J[個 学会第43回大会発表論文集 . 井原成男 (1981a)ロール シャッ- ・テス トの母子差と 治療への適用 ロールシャッ-研究ⅩⅩⅢ:145-158. 井原成男 (1981b)ロール シャッハ ・テス トか らみた母 子相互作用(1) 日本心理学会第45回大会発表論文集 . 井原成男 (1982a)ロールシャッハ ・テス トか らみた母 子相互作用- ある夜尿児の症例研究- 長野大学 紀要 3 (3.4):1983. 井原成男(1982b)イメージの母子相互作用(1
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Summary
The purpose of thislstudy is to introduce a method ofExchange Rorschach Method (ERM) dュvised by theauthor. Theprocedure of thismethod is as follows・ I)Rorschchtestiscarriedouttothechild.
Ⅱ)Thesametestisca汀ied outtothemother・
皿)Theotherday motherisrequested to supposetheRorschach responsesby herchild andtotellittothetester.
This phase孤 isdevidedintothreesub-phases・
i) Motherisrequestedto supposetheRorschach responsesofherchildin each card・ eg.``whatdoyouthinkheorhersaw inthiscard?"
ii) Mother is requested to explain about her child's such responses guided by the tester'ssuggestions.
eg・・・Yourchildsaw acrabinthiscard・ Atwhichpartoftheinkblotandhow doyou thinkheorhersaw it? Pleasetraceitbyyourself."
iii)Thetesterthen explainsthemotherin detilasprecisely how herchild recognized the αab,andsheisaskedifshecoulda∝eptthechild'srecognition.
eg."He or she saw crab in this card. Here you see the legs and eyes-- It'S a redcrab・ Doyouthinkhisorherperceptionwasdueandright?"
Intheabove-mentionedprocess,thetestercanmeasurethefollowlng content". i) Thesimilarityoftheresponsesbetweenmotherandchild.
ii)Moth
e
r'sintelligencetounderstandthepattem herchildrecognized.iii)Mother'ssympathizationandacceptanceoftherecognitionofherchild.
Theauthorselected4differentcasesforthismethod.Case1 isdiagnosed asAnorexia Nervosa. Case2 is Noctrun Enuresis. Case 3 is psychogenic headache. Case 4 is a nom alchild. Thecommunicationbetween motherandchildincresesbythisorderfrom the case 1to the4. ERM wasapplied to these four cases. The resultaffirmed that the communicationwasproportionaltomother'sintelligencetounderstand(theabovesub-phase ii),sympathizeand accept (thesllb-phaseiii) theresponsesofher child. The co汀e
-1ationwasnotfoundbetweenthedegreeofcommunicationandmother'sabilityto suppose theRorschachresponsesofherchild (thesub-phasei).
ThemaintheraputicpllrpOSeOfERM istopem itamothertobuildupaconcreteimage ofherchild'sinnerworld.
OtllermeritsofERM werediscussedinthelast血apter.
Finally,therelation between child'scapacity to expresshis inner world and mother's capacity tO Suppose,understand,sympathize and percept it was disccused. And some theoriticalaspectsofERM wereconsidered.