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浸潤性神経膠腫の分子遺伝学的解析

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Academic year: 2021

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浸潤性神経膠腫の 子遺伝学的解析

研究の背景と目的 原発性脳腫瘍は, 年間発生頻度が人口 10万人に対し て 10人程度と低いにもかかわらず, 腫瘍型の数は 133 種類にもなる. その中でも比較的頻度が高く, また有効 な治療方法が十 確立されていない神経膠腫は, 子遺 伝学的研究の主要な対象であり続けてきた. 悪性度の最 も高い脳腫瘍である膠芽腫は神経膠腫の一種であり, 遺 伝子異常については比較的多くのデータが蓄積されてい る.1940年より,膠芽腫はその 子生物学的,臨床的性格 より, 発生経路が 2つに大別できると えられている. 1 つは一次性 (primary type) と呼ばれ, 神経症状が出現し てから最初に得られた病理組織検体においてすでに膠芽 腫の組織像を呈するものである. このタイプは膠芽腫全 体のほとんどを占める (約 95%). 典型例における 子遺 伝学的特徴は,TP53 の変異を伴わず,EGFR 遺伝子の増 幅/過剰発現,p16 H1 変異, ,p14 のアイ の欠失などが見られるこ とである. もう 1つは二次性 (secondary type) と呼ばれ, より低悪性度の星細胞腫を先行病変として, その経過中 に悪性転化して膠芽腫に至るものを指す. 脳腫瘍が発生 した早期の段階から TP53 の変異がみられ, PDGF と PDGFR の過剰発現, RB 変異, MDM2, CDK4 の増幅が その後に起こり, 徐々に悪性度が増して膠芽腫に至る. 一次性膠芽腫は二次性と比較すると発生年齢が高く, 発 生数も圧倒的に多い. しかし, 上記のどの遺伝子異常も その特異性に欠け, 例えば二次性膠芽腫の象徴とされて きた TP53 変異はその 60∼70%に認められるが, 一次性 膠芽腫の約 25%にも認められる. そのため, この一次性/ 二次性の区 を疑問視する脳腫瘍研究者も少なくはな かった. 2008年, Parsonsらによって報告された神経膠腫にお ける細胞質型イソクエン酸脱水素酵素 1(isocitrate dehy-drogenase 1, IDH1) 遺伝子の点変異は, 神経膠腫の研究 上最大級のインパクトをもたらした. 22例の膠芽腫を 対象としたゲノムワイドな解析で, IDH1遺伝子に点変 異が見出された. IDH1とはイソクエン酸を αケトグル タル酸に変換する酵素であり, 細胞質およびペルオキシ ゾームに局在し,染色体上の座位は 2q33.3である.IDH1 変異を示した検体は全体の 12%と決して多くはなかっ たが, 特筆すべきはそれが二次性膠芽腫に集中していた ことである. そこで, 二次性膠芽腫発生経路における IDH1変異の 意義・位置づけの解明, 膠芽腫の大規模集団を用いた IDH1 変異の解析とその臨床的意義の解明, また ID , 乏突起膠 およびそ 成性乏 ソザイムである IDH2 変異を組み 入れた低悪性度神経膠腫の 子生物学的 類の確立を目 的として研究を行った. 研 究 成 果 ・二次性膠芽腫発生経路における IDH1 変異の意義・位 置づけ 各悪性度の さ ま ざ ま な 321例 の 神 経 膠 腫 に お け る IDH1 変異を検索した. 結果, 高頻度の変異率を示した腫 瘍型は低悪性度星細胞腫瘍, 退形成性星細胞腫, 二次性 膠芽腫 異は数ある 腫, 退形 異の中 突起膠腫, 乏突起星細胞 腫, また退形成乏突起星細胞腫であり, いずれも 80 ∼90%の変異率を示した. 一方, 一次性膠芽腫では 5% の変異率であった. IDH1変 乏突起細胞 遺伝子変 共通し で唯一, 星細胞系, 系腫瘍に て高頻度 97 Kitakanto Med J 2013;63:97∼98 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科病態病理学 平成24年11月29日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科病態病理学 信澤純人

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で認められることが判明し, それらが共通の前駆細胞か ら発生する可能性が強く示唆された. また, 51例は異時 性に複数回摘出手術を受けた患者から得られた検体で, 同一患者からの悪性度が異なる検体も多数含まれてい た. それらの検体を検索したことで, IDH1変異は二次性 膠芽腫,乏突起膠腫の発生経路において TP53変異,染色 体 1p/19q欠失よりも早期のイベントであることが かった. ・膠芽腫の大規模集団を用いた IDH1 変異の解析とその 臨床的意義 407例の膠芽腫における IDH1 変異の頻度を検索した 結果, 8.8%の膠芽腫症例に変異が同定された. IDH 変異 の頻度は二次性膠芽腫 (二次性 73% vs 一次性 3.7%) に 有意に多く, 変異を有する膠芽腫症例は陰性症例と比較 して有意に生存期間が長いことが判明した. また, IDH 変異を有する一次性膠芽腫は臨床的, 生物学的性格が二 次性膠芽腫と非常に類似していることが かった. この ことから, IDH1遺伝子変異を検索することで, 臨床的に は一次性膠芽腫と診断されたものの中から 真の二次性 膠芽腫 を検出することが可能であると えられた. ・IDH1 変異を組み入れた低悪性度神経膠腫の 子生物 学的 類の確立 現行の脳腫瘍 WHO 類において, 低悪性度神経膠腫 はびまん性星細胞腫, 乏突起膠腫または乏突起星細胞腫 に 類される. しかし, 組織診断基準が十 に明確では なく, 特に乏突起星細胞腫については診断者の主観的判 断によるところがあり, 診断者間の不一致がしばしば問 題となる. 子遺伝学的に, 90%以上の低悪性度神経膠 腫は IDH1/2 変異, TP53 変異, 1p/19q欠失の中から少 なくとも一つの異常を有することが知られている. 多施 設より収集した 400例以上の低悪性度神経膠腫を用い て, IDH1/2, TP53 変異と染色体 1p/19q欠失の検索を 行った. 組織型とは無関係に TP53 mutation±IDH1/2 mutation 群,1p/19q loss±IDH1/2 mutation 群,IDH1/2 mutation only群,no genetic alteration 群の 4グループに

けることで, 予後と相関し, 有用性と客観性の高い 類となることが示された. 謝 辞 この度, 平成 24年度北関東医学会奨励賞を頂き, ご指 導賜りました群馬大学大学院医学系研究科病態病理学 野の中里洋一教授をはじめ, 教室員の方々に深謝致しま す. 文 献

1. Watanabe T, Nobusawa S, et al. American Journal of Pathology. 174(4): 1149-1153. 2009

2. Nobusawa S, Watanabe T, et al. Clinical Cancer Research. 15(19): 6002-6007. 2009

3. Kim YH , Nobusawa S , et al. American Journal of Pathology. 177(6) : 2708-14. * equally contributed to this study

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