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タイル剥落防止工法の耐震性能(その3) ― 付着力の経年劣化を想定した静的水平力載荷実験 ―

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Academic year: 2021

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(1)

23 大林組技術研究所報 No.65 2002

 1. はじめに

既報(その1)1)において,各種のタイル剥落防止工法を 取り上げ,健全に施工された実仕様の縮小試験体を作製 し,地震時を想定した水平加力実験によって,これらの 工法の耐震安全性を検討した。 しかしながら外壁タイル張り仕上げなど湿式工法によ る仕上げ層は,冷熱と乾湿の繰返しによって引き起こさ れるディファレンシャルムーブメントにより,地震時以 外にも局所的には剥離を生じやすい。すなわちタイル張 り仕上げの耐震性を検討する際も,それを構成する異種 材料間の付着力の経年劣化を考慮しておく必要性がある と考えられる。 本報では,既報( その1 ) と同様に各種のタイル剥落防 止工法を取り上げ,剥離発生事例の多いコンクリート躯 体と下地モルタル間において付着力の低下を想定した試 験体を作製し,水平加力実験によってこれらの工法の耐 震安全性を検討した。

 2. 耐震安全性の目標値

外壁仕上げなど非構造部材の耐震性確保のためには, 構造体の層間変形に対する追従性が最もクリティカルに なる。したがって構造体の層間変形角を考慮して,非構 造部材の耐震性に対する目標値を設定することが基本と される。特に大地震時の構造体の層間変形角について, 鉄筋コンクリート造の構造体では1/200とするもの2)が一 般的である。 これに対し本実験では,タイル張り仕上げ部全体に対 しその追従性を評価するために,鉄筋コンクリート造壁 試験体の破壊モードを,壁脚部のみに変形が集中する曲 げ降伏先行型とせず,壁板全体が均一に変形するせん断 変形卓越型として計画した。そのため正負交番の繰返し 載荷が可能な層間変形角を最大で1/250とした。

タイル剥落防止工法の耐震性能( その3)

―― 付着力の経年劣化を想定した静的水平力載荷実験 ――

三 谷 一 房   小 川 晴 果

津 田 和 明   川 口   徹

Seismic Test on Methods of Preventing Tilework Fall-off (Part3)

―― Evaluation by Static Horizontal Loading Tests Assuming Loss of Bond with Age ――

Hitofusa Mitani

Haruka Ogawa

Kazuaki Tsuda

Toru Kawaguchi

Abstract

Exterior finishing layers of buildings such as ceramic wall tiling installed by the wet method are prone to

delamination due to differential movement caused by changes in temperature and wet-to-dry cycles. This can

result in fall-off of tiles during earthquakes. Loss of bond with age at the interface between different materials

composing tiling should be considered when evaluating its the seismic resistance capacity. Many new methods

are being developed for prevention of tilework fall-off. In this study, seismic tests were conducted using

true-to-scale specimens of tile covered walls with artificial delamination between concrete and bedding mortar in order to

determine the seismic resistance capacity of these methods after delamination. It is concluded that the methods

utilizing piled cone-nuts or a three-dimensional fabric have sufficient capability to prevent cracks and fall-off of

tiling above a 1

st

-story deformation angle of 1/250.

概   要 外壁タイル張り仕上げなど湿式工法による仕上げ層は,冷熱と乾湿の繰返しによって引き起こされるディ ファレンシャルムーブメントにより,地震時以外にも局所的には剥離を生じやすい。すなわちタイル張り仕上 げの耐震性を検討する際も,それを構成する異種材料間の付着力の経年劣化を考慮しておく必要性があると考 えられる。本報告では,各種のタイル剥落防止工法を取り上げ,モルタルの付着力低下を想定した試験体を作 製し,水平加力実験によって各工法の耐震安全性を検討した。その結果,ループボンド工法やアンカーピンを 併用したベースネット工法およびインターネット工法では,その機械的な接合効果によって層間変形角1/250以 上でもタイル張り仕上げのひび割れや剥落を防止できることが確認された。

(2)

24 大林組技術研究所報 N o .65 タイル剥落防止工法の耐震性能(その3)

 3. 実験計画

3.1 試験体の作製 タイル張り仕上げを施工した鉄筋コンクリート造試験 体(以下,RC試験体と言う)の作製方法およびタイル張り 仕上げの施工方法は,既報( その1 ) に準じた。取り上げ たタイル張り工法の種類をFig.1に示す。 既報(その1)では,下地モルタルの施工前,RC試験体の 壁板表面に吸水調整材を塗布したが,本実験では下地モ ルタルの付着力低減を図るために浸透性吸水防止材を塗 布(塗布量:150g/m2)した。 ループボンド工法では,型枠締付け時に使用される コーンを除去し,そのコーンの跡穴に後付けループボン ドを固定する工法3 )( 後付け型ループボンド工法) と,型 枠締付け時のコーンとして先付けループボンドを兼用 し,コンクリートに打込む工法( 先付け型ループボンド 工法)の2 種類の工法を用いた。先付け型ループボンド工 法は,型枠脱型後に行う後付けループボンドの取付け工 程を省略する目的で新たに提案したものである。その外 観および施工状況をPhoto 1に示す。 3.2 加力方法 加力方法は,既報( その1 ) に準じた。試験体の水平加 力状況をPhoto 2に示す。 3.3 測定項目および方法 測定項目および方法は,既報( その1 ) に準じた。タイ ル表面ひずみの測定は,ループボンドまたはアンカーピ ンによる点接合部近傍と壁中央部で測定した。さらに, RC試験体に対するタイル張り仕上げ層の水平方向と鉛直 方向の相対変位量を高感度変位計で測定した。F i g . 2 に,インターネット工法を適用した試験体でのひずみ Fig. 1 タイル張り工法の種類 Types of Tiling Methods

工法名 工法 断面 在来工法* 1 ( 剥落防止対策なし) 後付け型 ループボンド工法 パイル付きコーン工法 立体繊維材料張り工法 インターネット工法* 3 ベースネット工法* 2 試験体 N o . 1 2 3 2 3 下地 モルタル 張付け モルタル タイル 浸透性 吸水防 止材 下地 モルタル 張付け モルタル タイル 浸透性 吸水防 止材 不織布張 付モルタル アンカーピン 立体網目 不織布 後付け 型ループ ボンド 下地 モルタル 張付け モルタル タイル 浸透性 吸水防 止材 織布張付 モルタル アンカーピン 立体織布 先付け型 ループボンド工法 *1:片面は,仕上げなし *2:通常,アンカーピンを併用しない *3:通常,コンクリート表面に指定のポリマーセメントモルタルを約2mm塗布 Photo 2 加力状況 State of Loading Test

ゲージおよび高感度変位計の取り付け位置を例示する。

 4. 実験結果

4.1 RC試験体の破壊性状 R C 試験体の破壊性状は既報( その1 ) と同様である。す なわち,側柱脚部の曲げひび割れ,壁板引張側下部の曲 げせん断ひび割れ,壁板中央のせん断ひび割れを順次生 じ,最終的には側柱を巻き込みながら壁板のコンクリー 下地 モルタル 張付け モルタル タイル 浸透性 吸水防 止材 先付け 型ループ ボンド 下地 モルタル 張付け モルタル タイル 浸透性 吸水防 止材 Photo 1 先付けループボンドの外観とその施工状況 Apperance of Previous installed Piled Cone-nut

(3)

25 大林組技術研究所報 No .65 タイル剥落防止工法の耐震性能(その3) トが,層間変形角R=4.8/1000(No.1,3),R=4.7/1000(No.2) でせん断破壊した。R C 試験体( N o . 1 ) の破壊後の状況を Fig.3に示す。 4.2 タイル張り仕上げの挙動 4 . 2 . 1  破壊経過  タイル張り仕上げは,浸透性吸水 防止材による付着力低減処理によって,加力前にすべて の工法において,RC 試験体と下地モルタルの界面で全面 的に剥離を生じた。このため,剥落防止対策のない在来 工法では,タイル張付け14 日後に,タイル張り仕上げの 自重によって全面的に剥落した。 一方,後付け型・先付け型ループボンド工法およびア ンカーピンを併用したベースネット工法・インターネッ ト工法では,RC 試験体と下地モルタルの界面で全面的に 剥離しているにもかかわらず,前者ではループボンド, 後者ではアンカーピンによる点接合のみによってタイル 張り仕上げ層が保持された。加力実験においてもこれら の工法では,層間変形角R = 1 / 2 5 0 の繰返し加力終了時ま で,タイル張り仕上げにひび割れは発生せず,剥落はし なかった。 R C 試験体の破壊時においては,後付け型ループボンド 工法の場合(No.2),コンクリート壁が局部的に面外方向 へ膨れ,タイル張り仕上げが全面的に剥落した。ループ Fig. 2 ひずみゲージおよび変位計の取り付け位置 Location of Strain Gauges and Displacement Apparatuses

Fig. 3 RC試験体(No.1)の破壊後の状況 (破壊時の層間変形角R=4.8/1000) Crack Pattern of RC Skeleton after Failure

Fig. 4 ベースネット工法における破壊後の状況(No.2) (破壊時の層間変形角R=4.7/1000)

Crack Pattern of Tiling by the Method Utilizing a Three Dimensional Fabric "Base-net" after Failure

Fig. 5 インターネット工法における破壊後の状況(No.3) (破壊時の層間変形角R=4.8/1000)

Crack Pattern of Tiling by the Method Utilizing a Three Dimensional Fabric "Inter-net" after Failure ボンド部の破壊状況として,ループパイル自体に引張変 形と破断が認められたことから,破壊時の急激な面外方 向の変形には追従できなかったものと考えられる。先付 け型ループボンド工法による場合(No.3)は,RC試験体の 破壊時までタイル張り仕上げにひび割れは認められず, 剥落もしなかった。 アンカーピンを併用したベースネット工法(No.2)およ びインターネット工法(No.3)では,RC試験体の破壊時に はそれぞれ,Fig.4およびFig.5に示すひび割れを生じた ものの,剥落はしなかった。これは繊維材料による面内 方向の拘束とアンカーピンによるコンクリート壁との接 合効果によるものと考えられる。 4.2.2 タイル表面の発生ひずみ  Fig.6に層間変形角 とタイル表面の発生ひずみの関係を示す。ここでは各工 法ごとに一例として,壁中央部近傍および点接合部近傍 の挙動を示した。RC試験体と下地モルタルの付着が健全 であった既報( その1 ) の結果と異なり,タイル表面にほ とんどひずみは発生していない。RC試験体と下地モルタ ルがその界面で全面的に剥離している状態下では,コン クリートのひずみがタイル表面にほとんど伝達されない と言える。またループボンド部およびアンカーピン部近 傍のタイル表面の発生ひずみも比較的小さかったことか 側柱 側柱 壁板 1480 170 540 170 220 220 600 150 150 600 900 ひずみゲージ 変位計 アンカーピン 55 (インターネット工法の場合)

(4)

26 大林組技術研究所報 N o .65 タイル剥落防止工法の耐震性能(その3) ら,これらの点接合部は拘束力の高いものではなく,あ る程度の変形追従性を伴うものであると考えられる。 4.2.3 タイル張り仕上げの相対水平変位  Fig.7に先 付け型ループボンド工法におけるRC 試験体に対するタイ ル張り仕上げ層の相対水平変位を、F i g . 8 にインター ネット工法におけるそれを示す。前者において、仕上げ 層下部のみの水平変位が層間変形角の増減に伴い変位し ている。すなわち仕上げ層は、上部のループボンド部を 支点とした振り子挙動を行っている。また後者では、仕 上げ層の上・下部で層間変形角の増減に伴い変位し、そ の変位量は前者の場合より小さい。これはアンカーピン 部による拘束の程度が、ループボンド部よりも大きいた めであると考えられる。

 5. まとめ

本報告では,4 種類のタイル剥落防止工法を取り上 Fig. 6 層間変形角とタイル表面のひずみ(水平方向)の関係 Story Deformation Angle vs. Horizontal Tile Strain

壁中央近傍 ループボンド近傍 後付け型 ループボンド工法 後付け型 ループボンド工法 -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6) 層間変形角(×10-3 rad.) -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6) 層間変形角(×10-3 rad.) 壁中央近傍 ループボンド近傍 先付け型 ループボンド工法 先付け型 ループボンド工法 -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6) 層間変形角(×10-3 rad.) -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6) 層間変形角(×10-3 rad.) 壁中央近傍 アンカーピン近傍 インターネット工法 インターネット工法 -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6 ) 層間変形角(×10-3 rad.) -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6) 層間変形角(×10-3 rad.) 壁中央近傍 アンカーピン近傍 ベースネット工法 ベースネット工法 -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6 ) 層間変形角(×10-3 rad.) -100 -50 0 50 100 -6 -4 -2 0 2 4 6 ひ ず み( ×1 0 -6) 層間変形角(×10-3 rad.) Fig. 7 層間変形角と相対水平変位の関係 (先付け型ループボンド工法)

Story Deformation Angle vs. Relative Horizontal Displacement in the Method Utilizing Previous

Installed Piled Cone-nuts

Fig. 8 層間変形角と相対水平変位の関係 (インターネット工法)

Story Deformation Angle vs. Relative Horizontal Displacement in the Method Utilizing a Three

Dimensional Fabric "Inter-net"

-4 -2 0 2 4 6 -6 -4 -2 0 2 4 6 RC 試験 体に 対 する相 対 水 平 変位( m m ) 層間変形角(×10-3 rad.) 上部 下部 負荷重 正荷重 上部 下部 -4 -2 0 2 4 6 -6 -4 -2 0 2 4 6 RC試 験体 に 対 す る 相 対 水平 変位 (m m) 層間変形角(×10-3 rad.) 上部 下部 正荷重 負荷重 上部 下部 げ,下地モルタルの付着力低下を想定した試験体を作製 し,水平加力実験によってこれらの工法の耐震安全性を 検討した。その結果,後付け・先付けループボンド工法 およびアンカーピンを併用したベースネット工法・イン ターネット工法では,その機械的な接合効果によって層 間変形角1 / 2 5 0 以上でもタイル張り仕上げのひび割れや 剥落を防止できることが確認された。 参考文献 1) 小川,他:タイル剥落防止工法の耐震性能(その1), 大林組技術研究所報,pp.1∼6,(2001.1) 2) 建設大臣官房官庁営繕部監修:官庁施設の総合耐震計 画基準及び同解説 平成8年版,pp.38∼40,(1996.11) 3) 三谷,他:ループパイル付樹脂製コーンを用いたタイ ル剥落防止工法の開発,日本建築仕上学会2000年大会 学術講演会研究発表論文集,pp.93∼96,(2000.10)

参照

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