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受験生の併願状況に見られる大学・学部に対する選好 —分離分割方式の影響および私立対国立の入試難易度—

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受験生の併願状況に見られる

大学・学部に対する選好

一一分離分割方式の影響および私立対国立の入獄難易度一一

田口東, l) ,木村敦美2) ,天川善仁川坂崎寛4) ,杉浦康司 5)

1

.

はじめに

ここ数年間の若年人口の増加と,ひきつづき高い進学 率によって大学の入学試験は非常に難しくなっており, それにともなって合格が最終目標であるかのような志望 大学の選択も行なわれている.このような風潮の中で行 なわれた国公立大学の入試制度の変革をみると,古く は, 1979年度に 1 期校 2 期校の格差の解消,学力偏重の 試験から基礎学力と学部に適した能力をみる試験への転 換をめざして,共通 1 次試験が導入され,それと同時に l 校だけの受験となった.その後, 1987年度には,試験 期聞が A 日程と B 日程とに分かれ,受験生はそれぞれの 日程に試験を行なう学部から l つずつ選んで受験し,合 格した学部を選んで入学できるようになった.これは連 続方式と呼ばれる.そして, 1989年度にはつの学部 が定員を分けて前期日程と後期日程に別々の試験を行な う分離分割方式が,従来の方式と並行して導入された. さらに, 1990年度には共通 1 次の代わりにセンター試験 が実施され,学部ごとに受験科目の取捨選択が行なわれ るようになり,また,ごくわずかであるが私立大学がこ れに参加した.私立大学との関係をみると,試験科目が 1) たぐち あずま 山梨大学工学部電子情報工学科 干 400 甲府市武田 4-3ー 11 Te 1.0552-52ー 1111 (内 5267) 2) きむら あつみ学習研究社 3) でかわよしひと 横河電気 4) さかざき ひろし トヨタ自動車 5) すぎうら こうじ 山梨大学大学院工学系研究科 受理: 1991 年 5 月 13 日 再受理: 1991 年 10月 21 日

1

3

8

多いために国立大学が敬遠される傾向があり,ニの対策 として,科目ごとに重みの異なる配点やセンター試験へ の移行が行なわれている.しかし,科目数以外の私立大 学独自の魅力もあり,相対的にその合格水準は高くなる 傾向にあるといわれている. 筆者は受験指導用の受験参考資料にあるアンケート結 果を用いて,受験生の大学学部に対する選好を明らかに する手法を述べ, 1987

,

1988年度の国公立大学の受験生 に対する結果を報告した [2]. ここでは,期間を 1990年度 までのばし,受験生の第 1 志望・第 2 志望の学部の組合 せのデータを用いて,特に分離分割方式の影響に注目し ながら,その選好を明らかにする.また,私立大学も含 めて比較できるデータとして 2 学部を併願した受験生 を両方の合否で区分して集計した人数が同種の資料にあ るので,それを用いて入学試験の難易度を調査する.い ずれの場合も理学部,工学部,農学部を対象とした.

2

.

分離分割方式の影響

まず分離分割方式と連続方式との関係をみておこう. 1990年度を例にとると,入試日程は次のようであった. 前期日程後期日程 A 日程 B 日程 2 月 25 日から 2 次試験 2 次試験 3 月 5 日以降 2 次試験 3 月 10 日まで合格発表 3 月 12 日以降 2 次試験 3 月 13 日まで入学手続 3 月 23 日まで 合格発表 3 月 18-23 日 合格発表 合格発表 この中で併願可能な組合せば, A と B ,前期と後期, 前期と B , A と後期の 4 通りである.ただし,前期日程 に入学手続きすると,他の日程の試験には不合格とな る. 1989年度に分離分割方式を採用した埋・工・農系学

(2)

表 1 注目する学部 (A 学部)と 表 2 データ件数 1.

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併願者が多い学部

I 第志い第望il

A学部時 1 志望 IA学部時2志望

1 合否区分

0

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第 2 志望志望人数I第 1 志望志望人数 1987年度

124

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I

172

,

783

大学学部

大学学部

1988年度 100, 712

I

166

,

884

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B 大学工

2

6

3

C 大学工

1

0

6

1989年度

95

,

327

157

,

462

C 大学工

1

7

8

L 大学第 5 類 68 1990年度

87

,

663

287

,

850

0

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7

K 大学理 1.系 33 B 大学工

2

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部は 6 大学 14学部. 1990年度には 31 大学65学部であり, 定員の配分は前期に多く. 1989年度が75%. 1990年度が 78% であった. 大学・学部に対する選好をみるために,入試直前の模 擬試験において,併願可能な学部の中から第 l 志望・第 2 志望の組合せを選んだアンケートの集計結果を用い る.ここで,前期日程と後期日程とは別々の学部とみな す.このデータは各学部ごとにまとまっており,その学 部を第 1 志望とする他学部のベスト 10 と,その学部を第 2 志望とする他学部のベスト 10 とが集計されている.表 1 にその例を示す.また,それらの表から集めたデータ 件数(志望学部の組数)を表 2 に示す.以下では,表か ら得られるもの以外の志望の組合せはないものとする. 1989年度に導入された分離分割方式の影響をみてみよ う.まず,表 1 から,当該学部を志望する受験生の中 で,それを第 l 志望とする受験生の割合(第 l 志望率) を計算する. 1989年度に分離分割方式を採用した工学部 と,参考のために埼玉大学工学部の第 1 志望率の変化を 図 1 に示す.この方式の採用前は,比較的人気の高い 4 学部と低\" 2 学部とに分かれていたが. 1989年度にはす べての学部の前期日程の第 l 志望率が高い値となり,後 期日程の値が非常に低い値となった.これらの学部にお いては前期定員の方が非常に多いことが原因の i っと考 えられるかもしれない.しかし. 1990年度から採用した すべての学部にも同じ傾向がみられること,定員が前期 172人後期 355人である埼玉大学においても同様であるこ とから,先に合格が確定することが大きな要因となって L 、るものと考えられる.さらに,後期の併願相手として 同じ学部の前期が第 1 位である学部が. 1989年度では 14 学部部 11 学部. 1990年度では 65学部中 49学部もあり,後 期が敗者復活戦のように考えられていることを示してい る. このような前期日程と後期日程との不均衝が A.

B

日 程の学部の選好にも影響を与えている.図 2 は関東,中 1992 年 3 月号

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図 1 1989年度分離分割方式の採用に ともなう各大学工学部の第 i 志 望率の変化 i~官,関西の工学部の中で. 1990年度まで連続方式を採用 している学部の第 1 志望率の変化を表わしたものであ る. 1990年に A 日程を第 i 志望とする割合が急に高くな り B 日程の人気が下落している.特に横浜国立大学で は A 日程(定員 126 人)と B 日程(定員 539人)との差が 顕著に現われている.これは .A 日程を選ぶ受験生は魅 力ある前期日程をあえて選ばない強い動機があるためと 考えられる.

3

.

第 1 志望・第 2 志望の組合せに

もとづく学部閣の選好

併願可能な 2 つの学部 A と B に対して,どちらを好む かと L 、う選択を受験生にさせたときに,その答えが A 学 滞である確率が ρ の二項分布にしたがうと仮定する,そ して,表 1 から得られるデータをこの分布からの標本と みなすと .A 学部と B 学部を併願する人数 n. その中で A を第 1 志望とする人数引から ρ の信頼係数 (l-a) の

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5

0.4 0.3 0.2 横国大B 0.1 1987 1988 1989 1990 図 2 A 日程・ B 日程学部の 第 1 志望率の変化 信頼区間 大阪市 A 理 他 94学部

子一叫互戸孟 P

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孤立した学部 大阪府立大(総合) 北海道大{理 2. 水産)

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をつくることができる.実際の計算では 上下限の式中の分散を表わす項の P を nA/n で代用し . za は標準正規分布にしたがう確率変数 の絶対値が a よりも大きくなる確率が Za となるように 定める.この信頼区聞を用いて .A と B との関係を 区聞が 0.5 を含むときに A と B は同等である 区間の下端が 0.5 以上のときは A の方が好まれる 区間の上端が 0.5 以下のときは B の方が好まれる と定義する.ただし n が棄却人数と呼ぶ定まった数よ り小さいときはそのデータを使わないことにする.棄却 人数は学部の定員に応じて増減するが,以下の計算では 約25人である.その計算方法は最後の補足で述べる. 各学部を頂点とし,上で定めた関係にしたがってより 好まれる学部へ向かう枝をつけて有向グラブをつくる. このグラフを強連結成分に分解すると [IJ. 選好関係が 一巡してしまって順序がつかない学部をグループにまと めることができる.さらに推移律によって導かれる関係 を省略し,見やすく整理された図を得ることができる.

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合店。 組デ平 望2 頁 志定 2 一 第お 一一 望数 志人 1 却 第棄 。。 試仏 入= 度数 年係 邸頼 ω 信 ぬ 5w 図 図 3 に 1988年度入試の受験生の第 1 ・第 2 志望の組合 せにもとづく学部の選好を示す.有名大学が,理・工・ 農ごとの系列に分かれ,常識的な I1原序に並んでいる.ま た,東大と京大の全学部が同ーの極大成分に入っている が,これは,両者が日本を代表する大学であること,東 大の学部の区分が理・工・農の区分と一致しないことに よる. 1987年度入試に対するほぼ同じ内容の図が [2J に のっている.地方の大きな大学の理・工学部が大きなグ ループから抜け出ていることが図 3 とは異なるが,全体 の傾向は非常によく似ている. 図 4 に 1989年度の学部の選好を示す.この年に分離分 割方式を採用した学部の前期日程は,岡山大(工)と鳥 取大(工)を除くと他のすべての学部で前年度よりも上 の位置の極大成分となっている.逆に,後期日程のほと んどは極小成分(そこーから出る枝がな L 、)となっている. 図 5 に 1990年度の学部の選好を示す.まず,理・工・農

(4)

学部ごとにまとまっていることがわ かる.数多くの学部が分離分割方式 を採用しているが,岐阜大(工)等 のごく少数を除いては後期から同じ 学部の前期へと枝が向かい,さらに, L 、くつかの他学部の後期へと校が出 ている.極大成分が数多く現われて いるので,序列化を破ると L 、う効果 は現われているようにみえる.しか し,同じ学部の前期と後期を同一学 部となるように第 l ・第 2 志望の組 合せをまとめて選好を調べると,図 S を得る.前年度までの図とよく似 た傾向であり,これでは受験生の意 識はあまり変わっていないことがわ かる.

4

.

国公立大学と私立

大学の入館の難易度

前節において国公立大学に対する 受験生の選好を明らかにすることが できた.一方,先に述べたように, 私立大学の人気が高く国公立大学が 敬遠されているという傾向があり, 両者を一緒にした受験生の選好も興 味がある.このために利用で‘きるデ ータとしては,各学部に注目して, それと実際に併願した受験生が多い 順に 5 学部選び,併願者を合格不合 格に応じて 4 通りに区分した人数が 表 3 のように集計されている.これ らの表を(注目学部)対(併願ベス ;東京大 東工大: : B 理 1 理 2 B 5類 i 京都大 大阪大 前理工 前工 !大阪大東工大東工大東工大大阪大 i l 後理 ~B 類~

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信頼係数 =0.8,棄却人数 =25一

25

2 定員+25 l 京都大l l 前 l l 京都大 1

1

後農; ト 5 )と表わすと, (国公立)対(国公立), (国公立)対 (私立), (私立)対(私立)の組合せが入手できる. りやすし、か負となりやすいかを推定できればよ L 、,信頼 区間と棄却人数を設定し,前節と同様の手法を用いて学 部聞の難易度の関係を表わすグラフをつくることができ る.詳しくは [2 ]を参照されたい. 第 1 ・第 2 志望の場合と同様に 2 つの学部の組に注目 して考える.直感的には表 3 において n3が n2 より大き ければ A 学部の方が難しいと考えればよい.ただし,国 公立大学どうしで,併願した一方が前期日程である場合 に限ってはこのような解釈はできない.統計的な手法を 使うために次のように問題を設定する. 2 つの入学試験 が受験生の同じ能力を測定し,測定値として O か l が得 られ,それには測定誤差が含まれるとする.この 2 つの “物差し"で各受験生を襖u ったときに,その差が正とな 1992 年 3 月号 1987-1990 の各年度について上述の計算を行なった が,対象期間が短いためはっきりした経年変化はみられ なかった.そこで,できるだけ最近で,分離分割方式を 採用した学部が少ない 1989年度入試を対象とした結果を 述べる.図 7 に得られたグラフを示す.早稲田,慶応を はじめとする東京六大学,上智,東京理科大,関西の関 学,関西,同志社,立命館が難易度が高い位置にある. (35)

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,

B 大学(工) 102 12 150 107 C 大学(工) 59 16 59 62 M大学(工) 27 20 14 118 F 大学(工) 13 10 20 49 D 大学(工) 14 。 54 21 うにそれぞれ 3 グループに分かれ,ほぼ偏差値にしたが った順序が見られる.しかし,国立と私立の聞にはそれ ぞれの順序と整合しない関係を持つ学部があり,全体が (37)

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図 7 1989年度入試合否比較による入試難易度.信頼係数 =0.5,棄却人数40人 1 つの強連結成分となっている. は小さいのに対して,私立大学の場合は,科目が少なく このことは,私立大学受験生の中で国公立大学も併願 独自の試験であるので,それぞれ入試に適した多様な学 する受験生は偏った層に L 、ること,見方を変えると,国 力が発揮される可能性が高く,両者の入試で測られる学 公立大学は共通 l 次試験の全科目を課しているので,受 力の内容に差があることを示唆している. 験生に要求される学力がレベルの差があっても内容の差

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1992 年 3 月号 学部聞の合否データによる難易度の順序が推移律をよく 満たすのに対して,国公立と私立の間では 2 学部聞の順 序が他の学部との関係から導かれる順序と整合しない場 合がしばしばみられた.これは,国公立大学と私立大学 では入学試験で測られる能力の内容に差があることを示 唆している. 補足 ここでは,棄却人数を学部の規模に応じて定める手法 について述べる .A 学部と B 学部との比較に関心を持つ 人がN人おり,その中から n 人を抜き出して調査したと する.取り得る値が O と 1 であるとき,標本分散を S2 と すると,標本の平均値の分散は

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である.標本分散 S2 を上阪である 1/4 とおき , V がある 値 P よりも小さいときに,標本数 n が十分であるとして そのデータを使うことにする.その条件は

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1 となる.本文では両学部の定員の少ない方を N とし, ß=O.OI とした 参三考文献

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伊理正夫,韓太舜:線形代数,教育出版,

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田口 東:志望校併願データから導かれる大学・ 学部に対する選好,オベレーションズ・リサーチ,第 35 巻,第 4 号,

pp.228-235

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進研模試昭和63年度大学進学資料入試展望第 3 号,福武書店,

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.

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進研模試平成 2 年度進研模試分析資料入試展望第 1 号,福武書店,

1

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進研模試平成 2 年度進研模試分析資料入試展望第 3 号,福武書店,

1

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© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

表 1 注目する学部 (A 学部)と 表 2 データ件数 1 . 0  併願者が多い学部 I 第志い第望il A学部時 1 志望 IA学部時2志望 1 合否区分 0 . 9  第 2 志望志望人数I第 1 志望志望人数 1987年度 124 , 803  I  172 , 783  大学学部 大学学部 1988年度 100, 712 I  166 , 884  0.81 神戸大 B 大学工 2 6 3  C 大学工 1 0 6  1989年度 95 , 327  157 , 462  C 大学工 1 7 8

参照

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