日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-86 290
-反すうと自動思考が看護学生のバーンアウトに及ぼす影響
○松本 美涼1)、重松 潤1)、神原 広平1,2)、田辺 紗矢佳3)、南 花枝3)、竹林 実3)、尾形 明子1) 1 )広島大学大学院教育学研究科、 2 )日本学術振興会特別研究員、 3 )呉医療センター・中国がんセンター 問題 本邦において,医療関係の仕事に従事することを目 指し,医療系の大学や専門学校に進学するものの,過 密なカリキュラムや実習などの過程でメンタルヘルス に不調をきたし,退学をする学生は少なくない(白井 他,2014:富樫他,2007)。特に,看護を専攻する学 生(以下,看護学生)では,臨地実習によるストレス が 非 常 に 大 き い( 青 木 他,2015:Souza et al., 2012)。この現状は,看護学生のドロップアウトの増 加が懸念されるだけでなく,看護師として就職した後 の離職にもつながる。岡本他(2016) は,学生時代に バーンアウトに陥いると,就職後のバーンアウトやリ アリティショックといった職場適応にネガティブな影 響を与えることを明らかにしている。また,Rudman et al., (2012) は就職前である学生時代にバーンア ウトに陥ることが就職後のバーンアウトや離職につな がることを明らかにしている。これらの研究から,看 護学生に対するバーンアウトの予防が,看護学生のド ロップアウトのみならず,その後の看護師の離職を予 防することにつながると考えられる。 バーンアウトを予防するためには,個人的な側面に アプローチすることが効果的であることが指摘されて おり(本村, 2009),先行研究では,バーンアウトと ソーシャルスキル(岩永,2013),問題解決スキル (Ebrahimi et al.,2013),自動思考(大植,2013)の 関連が指摘されている。これらに加え,近年では反す うとバーンアウトの関連が指摘されている(青木他, 2015)。 反すうは,過去の出来事に対して繰り返し考え込む 思考傾向を指し,特にネガティブな出来事について評 価的に考え込む抽象的・分析的思考(以下,AAT )と, その出来事やその体験を描写する具体的・体験的思考 (以下,CET)がある (Watkins, 2008)。先行研究では, AATはCETに比べて,自己についての否定的な評価を増 加させ (Rimes, & Watkins, 2005),問題解決を妨げ る (Kambara et al., 2017) ことを明らかにしてい る。さらに,AATは,否定的な自動思考を媒介するこ とで抑うつを強めることが示唆されている(西川他, 2013)。これらのことから,AATは否定的な自動思考の 増加や問題解決の妨げを引き起こし,バーンアウトを 予測すると考えられる。 看護学生において反すうとバーンアウトの関連を示 した研究は未だ少ない。特に,反すうの詳細なスタイ ルとバーンアウトの関連性は示唆の域を出ず,実証的 研究に基づいた介入は行われていない現状がある。反 すうと自動思考,バーンアウトの関連を,反すうの具 体・抽象のレベルから明らかにすることで,既存の看 護学生のバーンアウト予防介入よりもさらに効果的な バーンアウト予防介入が提案されることが期待でき る。 また,バーンアウトを検討する際,実習経験の程度 も考慮して学年別の検討が必要であることが指摘され ている(西村他, 2016)。そのため,本研究では,調 査を行った B 学校では 2 年生から本格的に実習が始ま るため,調査対象を 2 〜 3 年生とした。 方法 参加者: 3 年制の看護学校の 2 〜 3 年生 159名(女 性136名,不明 1 名,平均年齢20.46歳)。 尺度:( 1 ) バーンアウト:日本語版バーンアウト 尺度(久保,2004) 全17項目, 5 件法。( 2 )反すう: 日 本 語 版Cambridge-Exeter Repetitive thought Scale (kambara et al., 投稿中) 全12項目, 4 件法。 AATとCETの 2 因子構造が確認されている。( 3 ) ポジ ティブ・ネガティブな自動思考:ATQ- R(Automatic Thoughts Questionnaire- Revised)短縮版 (大植他, 2012) 全18項目, 5 件法。自動思考を抑うつなどにつ ながる肯定的な側面と否定的な側面の 2 側面から測定 を行う。 手続き:質問紙調査を実施した。なお,本研究は呉 医療センター・中国がんセンター倫理審査委員会の承 認を得ている。 結果 自動思考,反すうとバーンアウトの相関分析の結果 をTable 1に示す。その結果,AATとネガティブな自動 思考との間に弱い正の相関がCETとネガティブな自動 思考との間に弱い負の相関が,ネガティブな自動思考 とバーンアウトの間の中程度の正の相関が認められ た。 本研究における看護学生がバーンアウトに陥る仮説 モデルとして,AATとCETがネガティブな自動思考を媒 介してバーンアウトに影響を及ぼすモデルを想定し, モデルの検討を行った。共分散構造分析を行ったとこ ろ, 仮 説 モ デ ル が 採 用 さ れ た(GFI =.99,AGFI =.99,RMSEA =.00)。結果をFigure.1に示す。AATな 自動思考に対して有意に正の影響を及ぼしていること が示された(β =.33,p <.01)。また,CETがネガ日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-86 291 -ティブな自動思考に対して有意に負の影響を及ぼして いることが示された(β =-.30,p <.01)。次に, ネガティブな自動思考がバーンアウトに対して有意に 正の影響を及ぼしていることが示された(β =.48, p <.01)。 考察 本研究では,AATがネガティブな自動思考を媒介し バーンアウトに正の影響を与え,CETがネガティブな 自動思考を媒介しバーンアウトに負の影響を与えると いった仮説モデルを検討した。その結果,モデルは支 持され,AATはネガティブな自動思考を媒介し,バー ンアウトを増加させ,CETは,ネガティブな自動思考 を媒介し,バーンアウトを低減させており,反すうや 自動思考といった思考スタイルがバーンアウトにそれ ぞれ異なる影響を及ぼすことが示された。反すうが自 動思考を媒介してうつ傾向を強めることが先行研究で 示唆されているが(西川他,2013),バーンアウトに おいても同様のメカニズムが考えられる。また,本研 究ではさらに,ネガティブな出来事があった際,AAT を行うことでネガティブな自動思考が増加することに よって,バーンアウトに陥ることが示された。一方 で,ネガティブな出来事があった際,CETを行うこと でネガティブな自動思考が減少し,バーンアウトが低 減されると推測される。これまで,看護師のバーンア ウト予防にマインドフルネスが有効であることが示さ れているが(Guilliaumie et al.,2017),思考の具体 化トレーニング(Watkins, 2016)といった反すうへ のアプローチもバーンアウトの低減・予防には有効で ある可能性がある。今後は看護学生のバーンアウトの 予防介入を行う上で,認知内容へのアプローチのみな らず認知スタイルに対するアプローチを加えた介入の 検討が望まれる。