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妊娠女性の冷え症と周産期アウトカムとの関連

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Academic year: 2021

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原  著

妊娠女性の冷え症と周産期アウトカムとの関連

Relationships between cold sensitivity in pregnant women

and perinatal outcomes

楠 見 由里子(Yuriko KUSUMI)

江 守 陽 子(Yoko EMORI)

* 抄  録 目 的  冷え症における主観的指標として冷え症評価尺F度を,客観的指標としてレーザー組織血流計を用い て測定し,冷え症と周産期アウトカムとの関連について検討した。 対象と方法  妊娠末期の妊婦125名(初産婦名76,経産婦49名)を対象に,両手第2指の指尖部における末梢血流量 の測定と,4因子8項目からなる冷え症尺度による非妊時の冷え症の自己評価に関するアンケート調査を 実施した。さらに,分娩終了後には妊娠分娩経過を診療録より転記した。 結 果  妊娠末期の妊婦においては,冷え症評価尺度と末梢血流量の間には関連がなかった(r=­0.036, p= 0.687)。冷え症評価尺度の高得点群の初産婦においては,分娩の際の入院時点の子宮口が3cm未満の開 大であったものが多かった(p=0.014)。  一方,指先の末梢血流量が少ない群と多い群で分けると,低血流量群では妊娠中の血圧が低く(p= 0.047),かつ脈拍数が少なかった(p=0.024)。さらに,低血流量群の初産婦では,分娩第Ⅱ期遷延が多 く(p=0.016),ロジスティック回帰分析により交絡因子の影響を排除しても,低血流量と高年齢が分 娩第Ⅱ期遷延の要因として示された。 結 論  妊娠末期における血行不良は,初産婦における分娩第Ⅱ期遷延の要因となる可能性がある。また,妊 娠末期の血流量と非妊時の冷え症の自覚は関連しない。 キーワード:冷え症,妊婦,遷延分娩,冷え症評価尺度,末梢血流量 Abstract Purpose

This study examined relationships between cold sensitivity in women and perinatal outcomes using the cold sensitivity severity scale as a subjective and a laser tissue blood flowmeter as an objective parameter to measure

筑波大学大学院人間総合科学研究科(Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba)

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妊娠女性の冷え性と周産期アウトカムとの関連

cold sensitivity.

The subjects and Methods

This study involved measuring peripheral blood flow at the tip of the index fingers of both hands, and a ques-tionnaire survey regarding cold sensitivity during non-pregnancy using a cold sensitivity scale which consisted of 4 factors and 8 items, involving 125 term pregnant women (76 primi- and 49 multiparas). Their course of pregnancy and delivery was transcribed from their medical records after childbirth.

Results

No significant difference was observed between the results of the cold sensitivity severity scale and peripheral blood flow in term pregnant women (r=–0.036, p=0.687). In primiparas who obtained high scores on the cold sensi-tivity severity scale, many of them had cervical dilation of 3 cm or less on hospital admission (p=0.014).

When the subjects were compared between groups with low and high peripheral blood flow, many subjects in the low-flow group had a low blood pressure (p=0.047) and low pulse rate (p=0.024) during pregnancy. In addition, a prolonged second stage of labor was frequently observed in primiparas in the low-flow group (p=0.016), and a low blood flow and higher age were indicated as factors contributing to a prolonged second stage of labor, even after eliminating the effects of confounding factors using logistic regression analysis.

Conclusion:

Poor circulation during term pregnancy may contribute to a prolonged second stage of labor in primiparas. However, blood flow during term pregnancy and cold sensitivity during non-pregnancy were not associated with each other.

Key word: cold sensitivity, pregnant women, prolonged labor, cold sensitivity severity scale, blood flow

Ⅰ.緒   言

 「冷え症」とは通常,人が苦痛を感じない程度の温 度環境下において,身体の末梢部位である四肢や腰部 に強い冷感を自覚し,そのために寝つきが悪くなる, 指先の感覚が鈍るなどの症状を伴うことによって,日 常生活において苦痛を感じている場合,と定義されて いる(寺澤,1987;九嶋・齋藤,1956)。日本文化圏に おける「冷え症」は,レイノー現象,膠原病や糖尿病 に伴う血管障害などの疾患に基づく手足の冷感,およ び循環障害とは異なり,疾患には起因しないが日常生 活に困難を伴う不定愁訴としてとらえられてきた。  東洋医学では月経困難,月経不順,不妊,更年期障 害等,女性特有の健康問題に対し,「未病」といわれる 概念に含まれる冷え症の体質が重要視されており,周 産期医療では,身体が冷えている女性と切迫早産,難 産,母乳トラブルとを関連付けて考える専門家は少な くない (畑佐・鎌田・荒川,2008;熊谷・今村・高橋 他,2006)。そのため日本では,妊産婦の身体を冷や さないことや身体を温めることが推奨され,マッサー ジ,足浴,腰湯,温パックなどが妊産婦ケアとして 頻繁に取り入れられている (中村,2012;大谷・大石, 2006)。日本特有の風習である「腹帯」や,お産後は「水 に触るな」「風にあたるな」といった伝承のもと,近年 の冷房による体調不良を訴える女性の増加が背景とな って,妊産婦は体を冷やさないのが良いという健康認 識が見直されていると考えられる。  東洋医学および漢方医学が文化的に根付いている日 本では,冷え症は思春期から妊娠・分娩,あるいは不 妊,更年期障害といった女性の生殖機能や生涯にわ たる健康と深い関連があると考えられている。しかし, これらのほとんどは日本特有の啓蒙・啓発的な報告に とどまっており,冷え症が妊娠分娩に及ぼす影響につ いて検討された報告やエビデンスが少ないため,身体 を冷やさないようにすることが妊産婦の健康と安産に 寄与するとは明言できないでいる。本研究は,この点 に着目し,冷え症と周産期アウトカムとの関連を検討 した。  しかしながら,冷え症は医学的疾患でないことから 診断基準がなく,そのため冷え症を判別するための独 自の指標が必須である。先行研究では,冷え症状の自 覚をスコア化した主観的指標(楠見・江守,2009a;太 田・田中・櫛引,2003;寺澤,1987)と,末梢血流量 (Ushiroyama, Kajimoto, Sakuma, et al, 2005)や皮膚温 度(Sadakata & Yamada, 2007;江崎,2007),負荷試験 による反応(森・坂口・坂井他,2006;岡田・宇野・ 永野他,2005;Nagashima, Yagishita, Taniguchi, et al.,

2002)等による客観的指標を用いた測定結果が報告さ

れている。しかし,楠見・江守(2009b)は,冷水負荷 試験によって冷え症を評価した結果,血行不良があっ ても自分は冷え症であるという認識のないもの,ある いは血行不良がないにもかかわらず自分は冷え症であ

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整し,測定時刻は午前9∼11時の間とした。末梢血流量, 血圧,脈拍数の測定に際しては,対象者がベッド上で 10分間の安静をとった後に,末梢血流量は両手の第2 指,血圧・脈拍数は左上腕部で測定した。調査票は測 定後に記入してもらった。出産状況は対象者の分娩終 了後に診療録から研究者が転記した。 3.測定用具および調査内容 レーザー組織血流計  レーザー組織血流計(ALF21D;アドバンス)を使 用した。Ushiroyama, Kajimoto, Sakuma, et al.(2005) による末梢血流量の測定方法を参考に,両手の第2指 の指尖部にプローブを装着し,30秒毎に3回測定した。 次に両手指の平均値を算出し,これを末梢血流量とし た。 冷え症評価尺度  「冷感の感受性」「末梢の血行不良」「冬の冷え症によ る睡眠障害」「夏の冷え症」の4因子8項目からなり,あ てはまる場合を1点とし得点が高いほど冷え症の症状 が強いことを示す。得点範囲は0∼8点で,4点以上を 冷え症のカットオフポイントとしている(楠見・江守, 2009a)。この尺度は直近の1∼2年にわたる通年の冷 え症の自覚症状を問うものである。しかし,妊婦の場 合は妊娠により体調の変化が予想されること,また季 節によって冷え症の自覚症状に差が生じることが考え られるため,本研究では非妊娠時の通年の状態を問う こととした。さらに,「妊娠していないとき,自分は 冷え症だと思うか」という質問と,妊娠したことによ る冷え症の自覚の変化をきいた。 妊娠と出産経過  対象者の出産状況および経過については,診療録か ら以下の項目を転記した。 ①産科歴:流産・早産・死産,不妊治療の有無 ②妊娠経過:切迫流産・早産の治療,感染症,貧血, 高血圧,尿蛋白,浮腫,尿糖,体重増加,マイナー トラブルの有無,羊水量,胎児発育,胎位 ③分娩経過:分娩週数,分娩所要時間,出生時体重, 胎盤重量,入院時の頸管成熟度,分娩経過の異常 の有無 (前期破水,分娩誘導,分娩促進,羊水混濁, 出血量,会陰切開,会陰裂傷,吸引分娩,帝王切開) また,妊産婦を対象として冷え症を検討する場合には, 妊娠による生理的変化の影響を加味する必要がある。  したがって,本研究では冷え症の病態および診断基 準が明らかでない現状をふまえ,主観的指標と客観的 指標の二方向から冷え症を評価することとした。主 観的指標として用いた「冷え症評価尺度」(楠見・江守, 2009a)は,通年にわたる冷えによる身体的な苦痛症 状の自覚を問うものである。しかし妊娠期の冷えの自 覚は妊娠中の季節に大きく影響されると考えられ,夏 期・冬期のちがいによる自覚の変化,およびその季節 が妊娠の初期であったか,循環血液量の増大が著しい 妊娠末期であったかにより異なる。そのため「冷え症 評価尺度」によって妊娠期の冷え症の自覚症状を評価 することは不適切であると判断した。そのため本研究 では,「冷え症評価尺度」は対象の非妊娠時における冷 え症の自覚症状を評価することとし,非妊娠時の冷え 症の主観的感覚と周産期アウトカムとの関連を検討す ることとした。  一方,客観的指標として手指の末梢血流量を測定す ることとした。冷水負荷試験による皮膚温度の回復率 を測定することは,妊婦である対象には侵襲が少なく ない。末梢血流量は皮膚温度と相関があること,およ び測定手順が簡便であり妊婦の負担を最小限にできる ことから,血行不良の指標として末梢血流量を用い た。測定に当たっては季節による影響を少なくするた め,9∼12月の秋期に妊娠末期となる女性を対象とし た。よって生理指標としては妊娠末期における末梢の 血流状態と周産期アウトカムとの関連を検討した。

Ⅱ.方   法

1.対象  2008年9∼12月の期間に,A県の産婦人科診療所(年 間分娩件数約600件,帝王切開率9%)に,定期健診に 訪れた以下の基準を満たす妊娠末期の女性を対象とし た。①妊娠経過に影響する治療中の疾患がない,②循 環器系および末梢循環に関する障害,膠原病,糖尿病 の既往がない,③胎児の発育が良好である,④調査施 設で出産予定である。 2.調査手順  対象妊婦に研究協力を依頼し,末梢血流量,血圧,

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妊娠女性の冷え性と周産期アウトカムとの関連 4.分析方法  冷え症評価尺度および末梢血流量を独立変数,周産 期アウトカムを従属変数とした。冷え症評価尺度得点 は,冷え症の自覚症状が強いとされる4点以上を高得 点群,3点以下を低得点群とし2群に分けた。末梢血流 量に関しては,測定環境や姿勢によって変動が大きく 基準値の設定はできないため,平均値をもとに低血流 量群,高血流量群の2群に分けた。従属変数である周 産期アウトカムが連続変数の場合は平均値の差をt検 定,2値変数の場合はχ2検定およびFisherの直接法を 行った。統計解析にはSPSS for windows 17.0を使用し, 有意水準は両側5%未満とした。  収縮期血圧および脈拍数の分析では,頻脈や動悸な どの副作用が考えられる子宮収縮予防薬を内服してい た妊婦4名を除外した。子宮収縮剤の使用,分娩所要 時間,分娩第Ⅱ期時間,会陰裂傷および会陰切開等の 経腟分娩に関わる分析では,予定帝王切開分娩者7名 (初産婦3名,経産婦4名)は除外した。なお緊急帝王 切開分娩者3名(初産婦3名)については,分娩経過に おいて把握可能な項目は分析に含めた。 5.倫理的配慮  本研究を開始するにあたり,筑波大学大学院人間総 合科学研究科研究倫理委員会に研究計画書を提出し, 承認を得た(承認番号577)。医療施設責任者に対して は,十分な説明を行い,了解が得られた後同意書に署 名してもらった。対象者に対する配慮として,研究の 意義,目的,測定方法について十分な説明を行うとと もに,その内容を記入した説明書を渡した。研究には 自由意思による調査への参加であり,調査に同意後も 不利益を受けることなく随時撤回できること,辞退に よる不利益はないこと,個人情報の保護に注意を払う とともに,データはすべて統計的に処理されるため個 人が特定されないことを説明した。さらに,それらの 説明に対する了解の方法として署名による同意を得た。 診療録の転記では,個人は番号で識別し個人名が特定 されないように配慮した。

Ⅲ.結   果

1.対象者の属性  研究協力を依頼した126名のうち,同意の得られた 125名を調査対象とした。初産婦は76名,経産婦は 49名であった。平均年齢は29.0(標準偏差:SD4.9)歳, 範囲18∼41歳,平均妊娠週数は36.6(SD1.9)週,範 囲32∼40週である。帝王切開術によって出産したも のは10名(8.0%),吸引分娩は6名(4.8%)であった。  妊娠による冷え症の自覚の変化,各々の冷え症評価 尺度得点,平均血流量を表1に示した。妊娠前後にお いて冷え症の自覚の全くないものは43名(34%)であ った。非妊娠時には冷え症であるという自覚のあった ものは82名(66%)で,そのうち56名は妊娠後に冷え 症は改善したが,26名は冷え症の改善はない,または 悪化したと答えた。妊娠後冷え症が改善したものを冷 え症なしとし,妊娠中の冷え症の有無で群別したとこ ろ,「妊娠中冷え症あり」は26名(21%),「妊娠中冷え 症なし」は99名(79%)となった。冷え症評価尺度得点 は,妊娠前から自覚なしの者は0.9(SD1.2)点,妊娠 後軽くなったものは4.1(SD1.8)点,変わらない・悪 化したものはそれぞれ3.6(SD1.2)点,3.5(SD1.3)点で あった。平均血流量は冷え症ありが50.4(SD14.1)ml /分/100g組織(以下単位省略),冷え症なしが53.4 (SD12.0)であったが,有意差はなかった(p=0.294)。 2.冷え症評価尺度得点と末梢血流量の分布  対象妊婦の非妊娠時における冷え症評価尺度得 点の平均値は2.9(SD2.1)点であり,先行研究(楠見, 2009a)における一般女性の平均値3.4(SD2.0)と比べ ると,有意に低かった(p=0.013,95%信頼区間­0.08 ∼­0.10)。  また,妊娠末期の対象者の末梢血流量の分布を図1 に示した。平均値は52.8(SD12.5),最大値81.3,最小 値19.2であった。Shapiro-Wilk検定による正規性の検 定ではp=0.499であり,正規分布に従うと考えられ た。先行研究(楠見,2009b)における一般女性の末梢 表1 妊娠による冷え症の自覚の変化 (n=125) 妊娠前 n(%) 妊娠後 n 冷え症評価尺度得点 平均末梢血流量 冷え症の自覚なし 43(34%) 冷え症の自覚なし 43 0.9(SD 1.2) 52.9(SD 12.5) 53.4(SD 12.0) 冷え症の自覚あり 82(66%) 軽くなった,冷えなくなった 56 4.1(SD 1.8) 53.8(SD 11.7) 冷え症は変わらない 22 3.6(SD 1.2) 51.3(SD 14.0) 50.4(SD 14.1) 冷え症は悪化した 4 3.5(SD 1.3) 46.2(SD 16.1)

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血流量30.5(SD9.5)と比べると,妊娠末期の対象者は 有意に高かった(p=0.000,95%信頼区間20.1∼24.5)。  一方,対象妊婦の冷え症評価尺度と末梢血流量の相 関はr=­0.036(p=0.687)であり有意な関連はみられ なかった。 3.対象者の属性と冷え症評価尺度得点および末梢血 流量との関連  冷え症評価尺度得点および末梢血流量の2群別にお ける対象者の属性を表2に示した。冷え症評価尺度の 高得点群は54名(43%),低得点群は71名(57%)であ った。また,末梢血流量の低血流量群は64名(51%), 身長,非妊娠時BMI,妊娠時BMIにおいて有意差は なかった。  さらに,妊娠期の収縮期血圧の平均は末梢血流量の 低血流量群において108.7(SD13.1)mmHgであったの に対し,高血流量群では113.2(SD11.3)mmHgであり, 前者の方が有意に少なかった(p=0.047,95%信頼区 間­8.9∼­0.01)。同様に,脈拍数においても末梢血 流量の低血流量群において75.3(SD10.6)回/分であ ったのに対し,高血流量群では79.5(SD9.5)回/分で あり,前者が有意に少なかった(p=0.024,95%信頼 区間­7.8∼­0.6)。しかし,それ以外の生理学的所見 および妊娠経過は冷え症評価尺度および末梢血流量と もに有意差は認められなかった。 4.分娩状況と冷え症評価尺度および末梢血流量との 関連  冷え症評価尺度得点および末梢血流量の2群別にみ た主な分娩状況を出産経験別に表3に示した。  初産婦では,冷え症評価尺度高得点群において分 娩入院時の子宮口開大度3cm未満のものが有意に多 かった(p=0.015)。初産婦における分娩入院の内訳 は,陣誘発来および前期破水が46名,分娩誘導が27名, 予定帝王切開が3名であった。また末梢血流量の低血 流量群においては,分娩第Ⅱ期所要時間が2時間以上 のものが有意に多かった(p=0.016)。 n=125 20 30 40 50 60 70 80 末梢血流量(ml/分/100g組織) 20 15 10 5 人   数︵人︶ 図1 妊娠末期の末梢血流量の分布 表2 対象者の属性と冷え症評価尺度得点および末梢血流量との関連 (n=125) 冷え症評価尺度 p値 末梢血流量 p値 高得点群 (4-8点) (0-3点)低得点群 (53未満)低血流量群 (53以上)高血流量群 n=54(43%) n=71(57%) n=64(51%) n=61(49%)  年齢 29.3(SD 5.1) 28.8 (SD 4.9) 0.554 28.8(SD 4.8) 29.3(SD 5.1) 0.528  妊娠週数(週) 36.4(SD 1.6) 36.9 (SD 2.1) 0.139 36.5(SD 1.9) 36.7(SD 1.9) 0.546  非妊時BMI 20.8(SD 2.6) 21.1 (SD 3.1) 0.538 21.0(SD 2.7) 20.9(SD 3.0) 0.852  妊娠時BMI 25.2(SD 2.4) 25.5 (SD 3.3) 0.566 25.3(SD 3.2) 25.4(SD 2.7) 0.812 妊娠期の生理学的所見*  収縮期血圧(mmHg) 108.5(SD12.9) 112.7 (SD11.8) 0.066 108.7(SD13.1) 113.2(SD11.3) 0.047  拡張期期血圧(mmHg) 64.7(SD 9.4) 66.1 (SD10.2) 0.399 64.8(SD 9.4) 66.3(SD10.3) 0.383  脈拍数(回/分) 76.1(SD 1.0) 78.25(SD10.5) 0.260 75.3(SD10.6) 79.5(SD 9.5) 0.024 *子宮収縮予防薬を使用する妊婦を除外(n=121) t検定

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妊娠女性の冷え性と周産期アウトカムとの関連 5.末梢血流量と分娩第Ⅱ期遷延への影響:多変量解 析  末梢血流量について交絡因子を調整するために,従 属変数を分娩第Ⅱ期遷延とし,独立変数を末梢血流量, 冷え症評価尺度得点,出産経験,年齢,身長,妊娠時 BMI,出生児体重とし,強制投入法によるロジスティ ック回帰分析を行った(表4)。末梢血流量(p=0.028, 95%信頼区間0.89∼0.99)と年齢(p=0.021,95%信頼 区間1.02∼1.32)の2変数が有意となり,末梢血流量の 少ないこと,および年齢の高いことが分娩第Ⅱ期遷延 と関連していた。 表3 初産婦・経産婦別の分娩経過と冷え症評価尺度および末梢血流量との関連 冷え症評価尺度 p値 末梢血流量 p値 高得点群 (4-8点) (0-3点)低得点群 (53未満)低血流量群 (53以上)高血流量群 初産婦(n=76) 32(42%) 44(58%) 36(47%) 40(53%) 分娩入院時子宮口開大度 (n=72)*1 3cm以上(n=29) 3cm未満(n=46) 723 2220 0.015 1320 1623 1.000 子宮収縮剤の使用(n=73)*2 あり(n=23) なし(n=50) 1318 1032 0.129 1023 1327 1.000 分娩所要時間(時間)(n=71)*3 12以上(n=39) 12未満(n=32) 1912 2020 0.472 1913 2019 0.477 分娩第Ⅱ期所要時間(時間)(n=71)*3 2以上(n=22) 2未満(n=49) 1318 931 0.285 1517 732 0.016 会陰切開および裂傷(n=70)*4 あり(n=58) なし(n=12) 24 6 34 6 0.750 29 3 29 9 0.202 経産婦(n=49) 22(45%) 27(55%) 28(57%) 21(43%) 分娩入院時子宮口開大度(n=44)*5 3cm以上(n=31) 3cm未満(n=13) 14 5 17 8 0.646 1610 15 3 0.333 子宮収縮剤の使用(n=45)*6 あり(n=4) なし(n=41) 118 323 0.627 422 019 0.1261) 会陰切開および裂傷(n=45)*6 あり(n=25) なし(n=20) 11 8 1412 1.000 1610 910 0.761 χ2検定  1)Fisherの直接法 初産婦総数76名のうち予定帝王切開術による分娩3名,緊急帝王切開術による分娩3名 *11名欠損および予定帝王切開術3名除外  *2予定帝王切開術3名除外 *3予定帝王切開術3名除外,緊急帝王切開術2名除外,分娩遷延後に緊急帝王切開術となった対象1名は分析に含めた *4帝王切開術6名除外 経産婦総数49名のうち予定帝王切開術による分娩4名,緊急帝王切開術による分娩者はなし *51名欠損および予定帝王切開術4名除外  *6予定帝王切開術4名除外 表4 末梢血流量と分娩第Ⅱ期遷延との関連:多変量解析 (n=115) 分娩第Ⅱ期遷延 オッズ比 95%信頼区間 p値 末梢血流量 0.946 0.899-0.995 0.028 冷え症評価尺度 1.069 0.794-1.440 0.658 出産経験 0.000 -0.000 0.997 年齢(歳) 1.156 1.015-1.317 0.029 身長(cm) 1.000 0.887-1.127 1.000 妊娠時BMI 1.010 0.810-1.258 0.932 出生時体重(g) 1.002 1.000-1.004 0.075 項目間 r=0.001∼0.282

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 本研究では,妊娠末期の妊婦を対象に,冷え症の主 観的指標である冷え症評価尺度と,客観的指標である 末梢血流量を測定し,周産期アウトカムとの関連を 検討した。冷え症評価尺度と末梢血流量の間には相関 がみられなかったことから,少なくとも非妊娠時の冷 え症の主観的感覚と,妊娠末期の末梢の血流状態は 関連がないといえた。このことは,冷え症の病態およ び概念を再考する必要があることを示唆している。ま た,末梢血流量の低血流量群は,妊娠期の血圧および 脈拍数が少なく,初産婦では分娩第Ⅱ期遷延が多かっ た。以下,妊娠末期における末梢の血流状態と周産期 アウトカムとの関連,および非妊娠時の冷え症の主観 的感覚と周産期アウトカムとの関連について考察する。 1.妊娠末期における末梢の血流状態と周産期アウト カムとの関連  妊娠末期の妊婦と一般女性の末梢血流量が異なる点 について,測定環境や姿勢が同じではなかったにして も,妊婦では妊娠による循環血液量の増加および皮 下脂肪の増加により末梢血流量が増加するとの後山 (2006)の報告に一致した。このことは多くの妊婦が 妊娠すると汗をかきやすく,妊娠後に冷え症が軽くな ったと答えたこととも一致する。したがって,妊娠末 期の末梢血流量と非妊娠時の冷え症の主観的感覚が関 連しなかったのも同意できる結果と考えられる。  末梢血流量と脈拍数は,基礎代謝量と密接に関連し あっており,前者が少ないものは後者も低いと考えら れる。Nagashima, Yagishita, Taniguchi, et al.(2002)や 岡田・宇野・永野他(2005),大井・加茂・大井(2011) は,エネルギー代謝や自律神経機能をコントロールす る甲状腺ホルモン分泌の少ないことが,冷え症と関連 していることを報告している。また,低血圧は冷え症 の要因であることが指摘されているが,妊婦を対象と した血流量,血圧,脈拍数の関係においても同様の結 果となった。  周産期アウトカムに関しては,初産婦で末梢血流量 が少ないものは第Ⅱ期遷延が多かった。第Ⅱ期遷延に 影響する要因として,母体側では微弱陣痛,骨盤形態 ・肥満による産道狭小,胎児側では巨大児,回旋異常 等が考えられる。本研究では,分娩第Ⅱ期遷延となっ たものは,そうでない女性と比べても身長や肥満度, 児の出生体重に差はみられなかったが,末梢血流量の 梢血流量は増加するが,それでも妊娠末期の血流量が 周産期アウトカムに関連することが示されたことは興 味深いといえる。  末梢血流量は基礎代謝量と関連があることから,妊 産婦の体力的な側面が分娩第Ⅱ期の所要時間に関連し ている可能性がある。基礎代謝量を上げるためには食 生活の改善と,運動により筋肉量を上げることが必要 であり,冷え症を予防するためには,妊娠中はもちろ ん,妊娠する前から健康的な生活を心がけることが重 要となる。 2.非妊娠時の冷え症の主観的感覚と周産期アウトカ ムとの関連  非妊娠時における冷え症の主観的感覚が強いものは, 初産婦では分娩入院時の子宮口の開大度が少なかった。 通常,分娩のための入院は陣痛発来によるものが多 く,その判断は妊婦本人の痛みの主観によるところが 大きい。痛みの感受性の強いもののほうが入院時期は 早まる傾向があり,その場合には子宮口の開大が小さ い可能性があるのかもしれない。浮田・蔭山・阪本他 (2001)は,冷えを訴える子宮頸管未熟妊婦に「熟化薬」 としての五積散の効果を報告している。冷え症と子宮 頸管熟化との関連は不明であるが,分娩入院時に頸管 開大が少ない初産婦は帝王切開および産科的介入が増 加することを示唆する報告(武久,2003)もあることか ら今後の検討課題と思われる。  一方,子安・内野・乾他(2005)は,「冷え症自覚者 には妊娠期のマイナートラブルの有訴率,および緊張 や不安といった気分に関する訴えが高くなる」と報告 しており,冷え症の主観的感覚には,循環動態以外に も神経・感覚器系の感受性の問題が大きく関与してい ることが考えられる。女性ホルモンの分泌の乱れ,特 にエストロゲンの低下は自律神経に影響を及ぼし,末 梢血管の収縮に関与することから,女性ホルモン分泌 の不安定さが冷えの自覚に関連していると推察される。 3.研究の限界  本研究の対象となった妊産婦は,妊娠末期において 診療所での妊婦管理が可能であったものであり,流産 や早産,三次救急施設へ母体搬送となった妊婦は含ま れていない。したがって,順調な妊娠経過の妊産婦を 母集団とする周産期アウトカムに限定されるため,不

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妊娠女性の冷え性と周産期アウトカムとの関連 妊や流早産,ハイリスク妊婦を含む調査によって,さ らに冷え症との関連を検討する必要がある。

Ⅴ.結  論

 非妊娠時における冷え症の主観的感覚と妊娠末期の 血流状態は一致しない。しかし,妊娠末期において末 梢血流量の少ない初産婦では分娩第Ⅱ期遷延の要因と なる可能性がある。したがって,冷え症の自覚の有無 にかかわらず冷えを予防することは安全安楽な出産に 有益であると考えられる。 文 献 江崎宣久(2007).「冷え」の自覚および末梢体温温度に対す る補益薬酒(養命酒)連続服用の効果―オープン試験 による予備的検討.薬理と治療,35(3),34-38. 畑佐樹里,鎌田香奈子,荒川愛子(2008).冷え性と乳房 皮膚温の関連̶母乳分泌における一考察.日本看護学 会論文集:母性看護,38,95-96. 林田和郎(1987).東洋医学的方法による胎位矯正法.東 邦医学会雑誌,34(2),196-206. 石野信安(1984).女性の一生と漢方.26-29,東京:緑書房. 子安美惠子,内野鴻一,乾まゆみ,吉原一(2005).妊婦 の冷え症の自覚とマイナートラブル・深部体温・気 分・感情状態との関連.母性衛生,49(4),582-591. 熊谷賀代,今村久美子,高橋洋子,星野ユリ子,氷見知子, 桃井千尋(2006).乳栓の形態的分類と発生における 関連因子̶乳栓の拡大写真の撮影を試みて.助産雑誌, 60(8),738-743. 九嶋勝司,齋藤忠朝(1956).所謂「冷え症」について.産 婦人科の実際 ,5,603. 楠見由里子,江守陽子(2009a).成熟期女性を対象とした 冷え症評価尺度の信頼性・妥当性の検討.日本健康科 学学会誌,25(1),58-66. 楠見由里子,江守陽子(2009b).成熟期女性を対象とした 冷水負荷試験による冷え症の評価.日本助産学会誌, 23(2),241-250. 森英俊,坂口俊二,坂井友実,西條一止(2006).冷え症の 負荷サーモグラフィ.Biomedical thermology,25(4), 87-93.

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