Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Physical Therapy Association理学 療 法 学 第42巻 第2号 152
〜
153頁 (2015年 )平 成
25
年 度 研 究 助 成 報 告 書
閉
塞 性
動 脈 硬
化
症 患 者
に
対
す る
ホ
ー
ム
エク サ サ イ
ズ
と して
の
神 経 筋 電
気
刺 激
の
実
施
可 能
性
お よ
び
有 用 性
の
検 討
一
無
作 為 化
比
較 試 験
に よ る
検 討
一
田中伸 弥D,
神 谷 健 太 郎2),
濱
崎 伸明 2),
増
田卓
D D 北 里 大学
大学
院医療系研究科
2) 北 里 大学病
院 リハ ビ リテー
シ ョン部 要 旨:本 研 究は,
閉 塞 性 動 脈 硬 化 症 (以下,
ASO ) 患 者に対 す る監 視 下 運 動 療 法に加 えて神 経 筋 電 気 刺 激 (以 ド,
NMES ) を 併 用し た 運動 療 法を行 うことが有 益であるか否かを明らかにす る こ と を目 的と し た。
本 報告 書に おい ては,
現在 も研 究 継 続 中 で ある た め,
ホー
ムエ クサ サ イズ としてのNMES
実 施の安 全 性 と実 現 可 能 性 につ い て検討 し報 告す る。
対 象 は,
内 科 的治 療 が 行 わ れてい るASO
患 者である。
対 象 者は,
週1
回 の トレッ ド ミルを 用い た監 視’
.
ド運動 療 法を 行う
歩行 指導
群 と,
そ れ に 加え てNMES
に よ る ホー
ムエ ク サ サ イ ズ を 行うNMES
群の2
群 に割 りつ けた。
NMES
は,
1
回3D
分,
1
日1
回,
週6
日12
週 間の72
セッ ショ ンを 実 施 し た。
現 在,
5
名 が 対象と して研 究に参 加 し,
有 害 事 象は認めな かっ た。 介 入 期 間 を 終 了 したNMES
群の対象
者 は,
予 定し てい たNMES
実 施 回数の98
.
6
% を実施
し た。
ASO
患者
に対 する ホー
ムエ ク サ サ イズと し て の NMES は安
全に実
施可能であ り,
受
け入 れ も良好
で あ る と考
えら れ た。
キー
ワー
ド:閉塞性 動 脈硬 化 症 運動療 法,
神 経筋電気 刺激 緒 言ASO
患 者は,
間 歇 性 跛 行に より歩 行が制 限さ れ る た め,
跛 行 症 状の軽 減はリハ ビリテー
ショ ンにお ける重 要 な介 入 目的のひ とつ である。
ASO
の診 療ガイ ドライン であるTrans−
Atlantic
Inter
−
Society
Consensus
ll
(
以下,
TASC
H
)は,
監視 下運動 療 法は,
跛 行 症状の軽 減や心血管イベ ントの減 少を含め た予 後 の改 善
に貢献
で きるとし ている1)が,
本邦
で は多
くの施 設で内 服 薬 併存 在宅 運動 療 法を第一
選 択と してい る。
しか し,
非 監 視 下 運動療 法は歩 行時の痛 み に よ り運動 療 法自体の ア ドピア ラン スが低 下 する た め,
ASO 患者が 十分な 運動 療 法を して い る と は い い難い。
ASO
患者に対 する リハ ビ リテー
ションは未だ ほ と ん ど普 及 して いない のが 現 状であ り,
有 効 な リハ ビリテー
ショ ン の確立 が急 務となっ て い る。一
方,
NMES
は,
整 形 外 科 疾 患や中 枢 神 経 疾患の領域 で 広 く実施
さ れて いる が,
近年
では安定
し た状 態
の慢性
心 不 全 患者
の筋 力や運 動 耐 容 能,
健 康 関 連QOL
に加えて下肢末
梢循
環を 改 善 す ることが 報 告 さ れて いる2)3)。
NMES はベ ッ ド上臥 位 の状 態で施行で きる ため,
血行 動 態の変 動が少なく非監視下 でも安
全に行
え,
患者
のアドピア ラン ス を保 ち や すい方 法で ある と考
える が,
理 学 療 法士に よる監 視型の運動 療 法に 加 え て,
NMES を 併 用 することでより大 き な改 善が得
ら れ る か は わかっ てい ない。
本 研 究は
,
ASO
患 者に対す
る監 視下 運動 療 法
に加 えてNMES
を併用 し た 運動療法
の安
全性
お よ び実
施可能性
につ い て検 討し,
さ ら に,
NMES
に よ る介入 が筋 力,
歩
行 能 力,
末 梢 循環動 態,
お よ びQOL
の改 善 に有用であ る か否か を 明 ら か にする こ と を 目 的 と し た。
対 象 と方 法1.
対象
北里大 学 病 院に外 来 通 院し
,
内
科 的 治 療が行わ れ てい るASO
患 者を対 象と し た。歩
行が自
立 し てい ない患 者,
ペー
ス メー
カー
ある いは植え込み型除 細 動 器お よ び心 臓 再 同期 療 法を 施 行 した患 者は対 象 か ら除 外 した。
また,
研 究の実 施に際 して は,
すべ て の対象 者に本研 究の趣 旨と目的 を 詳細に説 明し,
対 象 者の文 書による同 意 を得た後に実施 した。
なお,
本研 究は,
北里大 学 医 学 部・
病 院倫 理 委 員 会の承 認を 得てお り,
大 学 病 院 医療 情 報 ネッ トワー
ク (UMIN
)へ の臨床 試 験 登 録が完 了 している (UMIN
試 験ID
:OOOO13110
>。
2.
方 法 同意の得 られ た 対 象 者 を,
本 研 究の共 同研 究者では ない 第 三 者に依頼 し て年齢(
65
歳 以 上 or65
歳 未満)
お よ び性別(
男性 or 女 性)を 割 付 因 子 と し た 層 別 化 に よ り4
層 に 割 りつ け た後.
各 層の中で ブロ ッ ク ラン ダム化を 実 施 し,
通 常の指導
を 行う
歩 行 指導群 と,
通 常の指 導 に 加 え てNMES
に よ る ホー
ムエ ク サ サ イズを行 うNMES
群の2
群に割 りつ けた。 すべ ての対 象 者 に対し て外来 に て 週1
回の 歩 行指導
を12
週 間行っ た。
歩 行 指導
は,
ト レッ ド ミ ル を 用いた 監視下 運動療法
に加 えて,
日常の身体活
動量の指標
と して測定し た歩 数 を用い て,
日々 の身体 活 動量 を高め る よう
に指導
し た。
D
監視下 運動 療 法プロ グラ ム トレッ ドミ ルを用いた インター
バ ル ト レー
ニ ング を 主体と し た 監 視 下 運動 療 法プロ グラ ムを1
同40
〜
60
分,
週1
回の頻 度 で実施し た。
インター
バ ル ト レー
ニ ン グ は,
TASC
I
で 推 奨 さ れる運 動 処 方に基づい て実 施し た。 跛 行 症 状が5
分以内
に生じ る程 度の速 度と傾 斜に設 定し,
下 肢 疲 労がBQrg
Scale
l5
(
き つ い)と なっ た時点
あるいは10
分経
過し た時 点で 下肢 虚 血 症 状が完全に消失する まで の休 息 時間 を挟ん で,
3
〜
4
回繰 り返 し行っ た。
2
)NMES
プロ トコ ルNMES
は,
低周 波治 療器・
干渉 電流型 低 周 波 治 療 器 組 合せ 理 学療法 機 器 (伊 藤 超 短 波,
ES
−
360
)を 対象 者に2
台 貸 与し,
自 宅 に て 左 右の大 腿 四 頭筋と 下 腿 三 頭筋に そ れ ぞ れ実 施した。
NMES
は,
搬 送 周 波数2,
5
kHz
の中 周波交流 電 流 を50
bursts
/ sec に変調し,
1
回30
分,
1
日1
回,
週6
日12
週 間の72
セ ッ ショ ンを実 施し,
電 流 強度は各
対象
者の耐 え得る最 大 強 度 と した。
NMES
群に は,
電 極 貼 付 位 置,
機 器 使 用 方 法,
電 極メ ンテナ ンス方法
を直 接 指 導し,
外 来 通 院 時に確 認 した。
また,
初 回のNMES
使用 方 法 説 明 時 に,
NMES
実施中の心血管 応 答 を 測 定 し,
有 害 事象の発 生 が ない ことを確 認し た。
対 象 者にNMES 実 施の有無 を 記 録 し てもらい,
NMES
の実 施 状 況 を確 認し た。 N工 工一
Electronic LibraryJapanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japar ユese Physical Therapy Association閉 塞
性動脈硬化
症 患者
に対す
る神経筋
電気刺
激の有
用性
の検討
153
表
1 12
週 間
の介 入 期 間
を終 了
した対 象 者
の患者 背 景 因子
と各
測 定 項
目の変 化
症 例1
(歩 行 指 導 群 ) 症 例2
(歩 行 指 導 群 ) 症 例3
(NMES 群 ) 項 目 初 回12
週 後 初 回12
週 後 初 回12
週 後 年 齢 (歳 ) 性 別Body
massindex
(
kg
/m2)
足 関 節 上 腕 血 圧 比 (右/左 ) 等 尺 性 膝 伸 展 筋 力 (%BW ) (右/左 ) 最 大歩
行速度 (mfmin>
6
分 間歩 行距 離 (m) 歩 数 (歩/ 日) 経 皮 的 酸 素 分 圧 (mmHg ) (右/左 )74
女21
.
3
20
.
9
0.
93
/0.
70
0,
95
/0.
82
2
&8
/27
ユ31
.
5
/25
.
9
84
.
5
88
.
2
375
445
3
β70
3,
876
50
/45
42f4572
70
男 男20
.
6
20
.
O
l6
.
9
0.
78/0
.
52
0,
84
/0
,
51
0,
57
/1,
01
41.
7
/38
.
2
42.
4
/42
.
4
40.
9
/37
.
2
84
.
5
82
.
2
100
,
0
3
0
382
360
2,
272
3,
716
3
β67
35
/39
37
/33
25/50
18
.
10L62
/LO5
46,
3
/42
.
7
95
.
2
420
4
ユ2040
/443
) 測 定項目(
1
)
筋 力下肢 筋 力の指標と して
,
hand−
held dynamometer (アニ マ社製 μ
Tas
MT
−
1
〉
を用いて等 尺 性 膝 伸 展 筋 力 を測 定 した。
測 定 肢 位は股 関 節 と膝 関 節が90D
屈 曲位の椅 子 座 位 とした。
測 定 時 間は,
1
回5
秒 間で左 右各
2
回ず
つ 測 定し,
体
重で除した値
(
%body
weight :以 下,
%BW
)を解析値と した。
(2
)歩
行 能 力歩
行能力の指 標と し て,
最大歩
行速度お よ び6
分 間歩
行距 離 を測 定し た。
(
3
>
身体 活 動 量 日常の身 体 活 動 量の指 標として,
多メモリー
加 速 度計 測装 置 付歩
数 計(
SUZUKEN
,
Lifecorder
)
を用いて歩
数を測 定し た。 測 定 期 間は,
睡 眠 時と入 浴 時 を 除いた 24時 間とし,
装 着 部 位 は腰 部とした。
介 入 開 始 前と終 了 前の2週 間の歩 数 か ら1日あ たりの平 均 値をそれぞれ算 出し,
解析 値とした。
(4
) 末 梢 循 環 動態 末 梢 循 環 動 態の指 標と して,
経 皮 的酸 素 分圧測 定 器 (住 友 電 工ハ イテッ クス,
PO
−
850
)を 用い て足 背 部の経 皮 的 酸 素 分圧 (tcPO2) を測 定 した。(
5
)
QOL ・
歩
行 障 害QOL ・
歩
行 障 害の指 標として,
SF
−
36
,
VascuQOL
,
およ び歩
行障害 質
問 表(
WIQ)
を用い て評価 した。1次ア ウ ト カムを6分 間
歩
行 距 離 2次ア ウトカ ム を等 尺 性 膝 伸 展 筋 力,
歩
数 tcPO2,
お よ びQOL
と し,
各 測 定 項 目の 評 価は12
週間の介 入 前 後に実 施し た。
結 果 現 在,
5
名が対 象と して研 究に参 加し,
歩行 指 導 群2名 (症 例1
と2
)とNMES
群1
名 (症 例3
)の計3
名 が12
週 聞の介 入 期間を終 了し てい る。12
週 間の介 入 期 間を終 了 した対 象 者 の患者背
景 因子と各
測定
項目 の変 化を表1
に示 す。 対 象 者の年 齢は72
±2
歳であっ た。
介
入前
後における各 測 定 項 目の変 化 は,
等尺性 膝伸展
筋力
は35
.
7
±6.
7
一
38.
5 ±8.
6kgf
/kg,
6分 間歩行 距 離 は345
±40
一
416
±32m
,
歩 数は3,
003 ± 633〜
3,
999
±246
歩であっ た。
症 例3
は 予定し てい たNMES
実 施回 数の98
.
6
%(
71
/72
セ ッ シ ョン)
を実 施し て おり
,
NMES
の受
け 入れは良 好で あっ た。
また,
全 対 象 者に有 害 事象
を認 め な かっ た。
考 察本 研
究は現 在
も研
究が継 続 中
である た め,
本 報 告書
で はASO
患者に対 する ホー
ムエ ク サ サ イ ズ と して の神 経 筋 電 気 刺 激 を実 施 するうえ での本 法の安全性と実 現 可 能性につ い て検 討 し た。
現 在.
プロ トコ ルを完 遂し た3
名に おい て,
有 害 事 象は なく,
安全 に実 施 する こ と が可 能であっ た。
また,
予 定 して い たNMES 実 施 回数の98.
6
% を実 施 してお り,
治 療の受 け 入 れ も良 好であっ た。 その理 由 と して,
NMES
は 自宅 内で実 施 可 能 なた め季 節 や 天 候の影 響 を受 け に くい こと,
ベ ッ ド上 臥 位で 実 施可 能 な ため患 者の ア ドヒア ラン スを保 ちやすい方 法である こ と が考 え られ る。
また,
本 研 究の対 象 者の平均 歩 数は,
厚 生 労働 省の同 年代の全 国 平 均 値 と比 較 して低 く,
介 入 後に おい て も低い水 準であっ た 4)。
ASO 患 者に対 するホー
ムエ ク サ サ イ ズ として のNMES は,
安 全 性 が 高 く患 者の受 け 入れもよい治 療 手法である こと が示 唆 された。
今 後,
目標 症 例 数に到 達 次 第,
臨床 効 果 と有用 性の検 討 も含 めて報 告 する予 定である。
文 献1
)
TASC
矼Working
Group
:下 肢 閉 塞 性 動 脈 硬 化 症の 診 断・
治 療 指 針H.
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メデ ィカ ル トリビュ
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Stimulation
ofMuscles
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Patients
with Chronic Heart Failure or
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Language Literature.
Chest
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2009
;136:
44
−
61
.
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,
Marie
Nov
自kova
MD
,
et αL
:Low
−
Frequency
Electrical
Stimulation
Increases
Muscle
Strength and Improves Blood
Supply
inPatients
withChronic
Heart failure.
Circulatien
.
2006
;70
(1
}:75
−
82
.
4
) 厚生労 働 省 (2el2); 平 成24
年 国 民 健 康・
栄 養調 査.
http
://www.
mhlw.
go.
jp
/bunya
/kenkou
/eiyou /h24
−
houkoku