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2012 September 21, 2012, Rev.2.2

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(1)

制御工学第二 ノート

2012

年後期

熊本大学工学部 情報電気電子工学科

担当教員 教授 松永 信智

作成: 

September 21, 2012, Rev.2.2

(2)

目 次

はじめに 4 制御工学第二(後期)のシラバス . . . . 4 第 1 回 制御工学第一の復習 6 1.1 微分方程式とラプラス変換 . . . . 6 1.2 伝達関数とブロック図 . . . . 7 1.3 s領域での畳み込み積分 . . . . 8 1.4 制御系とその特性 . . . . 9 1.5 制御工学第二の流れ . . . . 11 第 2 回 閉ループ系の過渡応答 12 2.1 伝達関数の極 . . . . 12 2.2 極の配置と過渡応答波形 . . . . 14 2.3 零点とその影響 . . . . 15 第 3 回 安定性の定義 18 3.1 安定性の意味 . . . . 18 第 4 回 ラウスの安定判別法 23 4.1 ラウスの安定判別法 . . . . 23 4.2 フルビッツの方法 . . . . 28 第 5 回 システムの周波数応答の基礎 31 5.1 安定度を評価するには . . . . 31 5.2 周波数応答法 . . . . 33 5.3 周波数応答のまとめ . . . . 35 第 6 回 ベクトル軌跡 37 6.1 ベクトル軌跡の基礎 . . . . 37 6.2 積分要素 . . . . 38 6.3 微分要素 . . . . 38 6.4 一次遅れ要素 . . . . 39 6.5 比例要素 . . . . 40 6.6 不完全微分要素 . . . . 40

(3)

6.7 むだ時間要素 . . . . 41 6.8 複素数の乗法計算と合成の方法 . . . . 42 第 7 回 ナイキストの安定判別 45 7.1 開ループ伝達関数 . . . . 45 7.2 ナイキストの安定判別法 . . . . 46 7.3 s平面を写像する . . . . 49 7.4 簡略化したナイキストの安定判別法 . . . . 50 7.5 ゲイン余裕と位相余裕 . . . . 53 第 8 回 ボード線図の基礎 55 8.1 対数グラフの基礎 . . . . 55 8.2 ボード線図の特徴 . . . . 57 8.3 デシベルとは . . . . 58 第 9 回 ボード線図 60 9.1 比例要素 . . . . 60 9.2 積分 . . . . 61 9.3 微分 . . . . 61 9.4 一次遅れ . . . . 62 9.5 一次進み . . . . 64 9.6 二次遅れ . . . . 64 9.7 むだ時間 . . . . 66 9.8 結合系の伝達関数 . . . . 66 9.9 ボード線図上の安定判別 . . . . 69 第 10 回 制御系設計手法の基礎 72 10.1 制御系の仕様 . . . . 72 10.2 定常偏差 . . . . 74 10.2.1 ステップ入力の場合 . . . . 75 10.2.2 ランプ入力の場合 . . . . 75 10.2.3 加速度入力の場合 . . . . 76 10.2.4 偏差のタイプ . . . . 76 10.3 根軌跡法 . . . . 79 第 11 回 フィードバック制御系の設計 83 11.1 PIDコントローラ . . . . 84

(4)

11.4.2 位相遅れ . . . . 89 第 12 回 制御工学第二の復習 91 12.1 制御工学第二の流れ . . . . 91 12.2 極の配置と過渡応答波形 . . . . 92 12.3 ラウスの安定判別法 . . . . 93 12.4 周波数応答法 . . . . 94 12.5 ナイキストの安定判別法とボード線図 . . . . 95 12.6 フィードバック系の設計例 . . . . 97

(5)

はじめに

本冊子は,(熊本大学情報電気電子工学科)2年時,制御工学第二の授業 のために執筆したものである。本学科では,2年時前期にモデリングと 伝達関数を中心とした制御工学第一を,後期に設計論を中心とした制御 工学第二を開講している。まず,本講義において公開しているシラバス を紹介することで,本講義の目標・目的を示す。

制御工学第二のシラバス

◆バックグラウンド 制御技術はあらゆる産業に用いられてわが国の経済成長を支えた基幹技 術です。産業界の様々なシステムを動的システムとして統一的に捉え、目 的を達成していく制御手法を身につけることは、科学的な物の見方と問 題解決の素養を養う上で重要である。本講義では、「制御工学第一」に続 き、自動制御の基礎的事項について、とくに古典制御理論に基づく問題 の捉え方と解決法を理解し、システムの評価や所望のシステムを実現す る設計手法を学ぶ。 ◆目標 (1) 代表的なシステムの周波数応答特性を理解する。 (2) システムの応答性、安定性が分析できる。 (3) 簡単なフィードバック制御系が設計でき、その動特性の特徴を理解 する。 ◆授業の内容 制御の基礎概念を復習後、フィードバック制御系の特性解析と設計法を 根底に流れる考え方に重点を置いて、古典制御理論としての体系化され た内容を取り扱います。制御工学第二では,システム解析に重点をおい て講義し,簡便なフィードバック制御法について説明する。

(6)

3. システムの極と零点 4. 安定性の定義 5. ラウス・フルビッツの安定判別法 6. 周波数応答 7. ベクトル軌跡の基礎 8. ベクトル軌跡 9. ナイキストの安定判別法 10. ボード線図の基礎 11. ボード線図 12. 制御系設計手法(定常偏差) 13. フィードバック制御系の設計 14. まとめ ◆参考文献 「システムと制御 第2版 上・下」高橋安人 著,岩波書店 「モデリングとフィードバック制御」古田勝久他著,東京電機大学出版局 「自動制御」,水上憲夫,朝倉書店 ◆関連科目 この講義は古典制御理論のみの構成になっているが,3年次で開講され る「制御系設計論」で扱われる現代制御理論により,制御工学の基礎が できるので,この講義の後に「制御系設計論」を履修することを勧める。 関数論,微分方程式などに関する知識が必要であり,関連する科目と して,物理学第一,電磁気学,電気回路 I,電気回路 II を履修することが 望ましく,また、制御工学第一,微分方程式,フーリエ解析,制御系設計 論,情報機械システム,生体情報システムなどと関連している。 制御工学第二では,制御工学第一で学んだモデリング手法をベースに, あらたに設計手法を学ぶ。半年の授業で,モデリングをベースにシステ ム設計や解析の基礎が身につく。 制御工学第二受講前に,制御工学第一を受講することを推奨する。

(7)

1

回 制御工学第一の復習

制御工学第一では、「制御対象の数学的モデリング」を行った。ここで は,制御工学第一のポイントをまとめる。なお,制御工学第二では,制 御工学第一の結果を利用することから,ノートの再勉強を推奨する。

1.1

微分方程式とラプラス変換

ラプラス変換の定義式を示す。f (t) = 0, t < 0 の関数に対して F (s) = 0 f (t)e−stdt (1.1) を定義することができる。上式は,時間関数 f (t) のラプラス変換であり F (s) =L[f(t)]と表す。 すべての信号を t で解くことは難しい。そこで,任意の信号をtの空 間で表し、ラプラス変換でs空間に変換する。その後、s で設計した後、 もとの t の空間にもどす。このやり方は、一見複雑だが,時間軸で信号の 畳み込みを必要としないため、設計が容易である。 ラプラス変換は微分方程式を代数方程式に変換し解を得る点に特徴が あり,その解法も容易である。ラプラス変換による微分方程式の解法を まとめると次のようになる。 step1:微分方程式を s の関数で記述 step2:代数方程式を解く step3:逆ラプラス変換により,t の関数に戻す。 step1では,微分方程式をラプラス変換表を用いて変換することで s で記 述する。step2 では,s に関する式は単なる代数方程式の解法になる。ま た s の世界で様々な演算も行うことができ,様々な入力をしたり,制御 系を設計することができる。こで,step3 では逆ラプラス変換(変換表)

(8)

図 1.1: ラプラス変換による微分方程式の解法のイメージ

1.2

伝達関数とブロック図

すべての初期値を 0 とした場合の入力信号のラプラス変換と出力信号 のラプラス変換の比を「伝達関数」といい次式が成り立つ。 L[出力信号] = 伝達関数 G × L[入力信号] (1.2) また,このように伝達関数が一定の比で記述できることから,要素の接 続が簡単な積で記述できることになる。 伝達関数の特徴は次の3つである。 (1)入出力に依存しない (2)固有の性質を表している (3)接続関係の処理が容易 ここで,伝達関数の例として図 1.2 に示すマス−バネ系を考える。 図 1.2: マス−バネ系

(9)

ばねで吊り下げられた質量 m を考えると,平衡点からの変位を x とす ると,微分方程式は m¨x + kx = f (1.3) となる。初期値零でラプラス変換すると ms2X + kX = F (1.4) となる。 ここで,入力を F , 出力を X とすると,伝達関数は X F = 1 ms2+ k (1.5) となる。なお,伝達関数は平衡状態に対して記述するため,図中の mg のは式に現れない。 制御対象の伝達関数は数学的にあらかじめ与えられることが多く,制 御構造も簡単なフィードバック系であることが多い。制御工学第二では 簡単な系しか扱わない。伝達関数に関してはこれ以上言及しないが,世 の中の事象が数学的に扱えることを理解する。

1.3

s

領域での畳み込み積分

畳み込み積分がラプラス変換ではどのような表現になるのであろうか。 時間領域の畳み込み積分 L[x(t) ∗ g(t)] = X(s)G(s) (1.6) は,s 領域では伝達関数の積 Y (s) = X(s)G(s) (1.7) となる。意識はしてないが,たたみ込み積分はインパルス応答で示した ように短冊型の応答波形を計算したことになり,ラプラス変換で「かけ る」(s 領域でかけること)は,たたみ込み積分をすることになる。 たとえば,図 1.3 の場合は次の関係となる。s 領域の伝達関数へ変換す ることで演算が簡単になりブロックの結合や合成も簡単に行える。 F (s) = G (s)F (s)

(10)

ラプラス変換と畳み込み積分の関係をまとめると, 正しい: L[f1(t) + f2(t)] = F1(s) + F2(s) 正しい: L[f1(t)∗ f2(t)] = F1(s)F2(s) 間違い: L[f1(t)f2(t)] = F1(s)F2(s) (1.8) であり,時間関数だけで演算するには,伝達関数の積(応答計算)は時間 関数を畳み込む作業が毎回必要となる。この作業は複雑なため,F1(s)F2(s) だけですむように s 空間へ変換するのである。 図 1.3: 伝達関数の縦続接続 制御工学第一では理論的な理解を重視したが,制御工学第二ではラプ ラス・逆ラプラス変換を利用し演算する。

1.4

制御系とその特性

得られた制御対象を P とし,図 1.4 に示す制御対象を考える。制御対 象にフィードバック C1,フィードフォワード C2の制御ブロックを追加し たものを図 1.4 に示す。 図 1.4: 制御対象例 偏差を E とすると次式が成り立つ。 E = C2R− Y   Y = C1P E

(11)

整理すると, Y = C1P (C2R− Y )   (1 + C1P )Y = C1C2P RY R = C2C1P 1 + C1P (1.9) となる。 制御工学第一は,ブロック図を理解するために等価変換を利用して図 の意味を理解したが,第二の制御系設計の観点からは代数的にまとめら れたプラントの伝達関数を扱うことが多い。 制御系設計の手法は多々あり,全て理解するのは困難である。その極 と零点がシステムの過渡的挙動を支配しており,極零の設計が「システ ム設計」と言っても過言ではない。制御工学第二では,より実用的な制 御系の設計例を,極配置・PID など代表的な設計を中心に述べる。

(12)

1.5

制御工学第二の流れ

ここで,制御工学第二の流れとキーワードをまとめる。毎回の講義の ポイントを示しているが,細かい学習のシラバスは参照のこと。 (1)極と零点:応答との関係(復習) (2)安定性の定義(計算例) (3)極が計算できない時の安定解析(ラウスの方法) (4)分析の基礎:ベクトル軌跡(代表的な要素) (5)分析の基礎:ベクトル軌跡(ナイキストの方法,ゲイン余裕・位相 余裕とは) (6)代表的な分析方法:ボード線図と片対数グラフの使い方 (7)制御系設計の基礎:安定性からゲイン設計,定常偏差へ (8)フィードバックの実例:極配置,PID 制御,位相進み・遅れ制御 (9)まとめ

(13)

2

回 閉ループ系の過渡応答

システムの伝達関数が運動方程式で求まる。系はさらに簡略化でき,数 学的な処理で s の多項式で表すことができる。入出力の特性は分母・分 子の多項式の 0 になる点,即ち極・零点で表される。この極・零点の配 置は安定性を示すだけでなく,系の過渡応答特性を示すことが知られて いる。 制御におけるシステム設計の本質は,一言で言えばこれらの極・零点 をどの様に設計(配置)するかにある。そのためにいくつかのツールが 研究され,制御工学第二では蒸気機関の発達以降の古典制御と呼ばれる 設計方式のポイントを以後の章で見ていくことになる。 古典制御は一入力一出力 (SISO)の簡単な事例ではあるが,設計法を理 解するには有益であること,未だ工業用途では 90% 以上の割合で古典制 御が使用されていることから古典制御の設計法を理解する価値は大きい。 本章は制御工学第一の復習として,まず最も重要な極と零点の配置と 過渡応答の関係を復習する。なお,本章の内容は制御工学第一の 10 章の 内容と同じである。

2.1

伝達関数の極

代表的なフィードバック系を図 2.1 に示す。フィードバックは誤差を 0 にするメカニズムで,以後の制御の基本形である。 入力から出力までの伝達関数は, Y (s) = G(s) 1 + G(s)H(s)  (2.1) となる。この系において入力 U (s) から Y (s) の特性を調べることにする。 ある系のインパルス応答を取ったときに,その応答のラプラス逆変換 が系の伝達関数になることが知られている。そこで,U (s) に単位インパ

(14)

図 2.1: フィードバック系 となる。ただし,s1 ∼ snは,特性方程式 1 + G(s)H(s) = 0 の根である。 伝達関数 (2.1) の分母多項式を零とする方程式を特性方程式と呼び,その 解を極と呼ぶ。 上式のラプラス逆変換を求めると時間応答 y(t) は y(t) = K1es1t+ K2es2t+· · · + Knesnt+ K+esit+ K−es¯it (2.3) となる。特性多項式の解が複素根の場合,そのひとつを si = σi+ jγiすると,該当する項の過渡応答 yi(t)を求める。si に対する時間応答は, 次式となり, K+esit = K+e(σi+jγi)t (2.4) また,この共役複素解は K−es¯it = Ke(σi−jγi)t (2.5) となることから,y(t) として次式を得る。 y(t) = L−1 [ K+ s− si ] +L−1 [ K− s + ¯si ] = 1 2jωe (σi+jωi)t− 1 2jωe (σi−jωi)t = 1 ωe σite jωit− e−jωit 2j = 1 ωe σitsin(ω it) (2.6) 上式に注目すると,極によりその過渡応答は次のようになる。 (1)s1 ∼ snの実部が負:式 (2.6) より,σ < 0 の場合は,振動項がない場 合は指数関数的に減衰し,振動項がある場合は振動しながら減衰す る。また t→ ∞ ではその値は0になる。 (2) s1 ∼ snが 0 のとき:s1 ∼ snが 0 のときは, g(t) = 1 ωe 0 (2.7) となることから,t→ ∞ においてもその値は変わらない。

(15)

(3)s1 ∼ snが純虚数のとき:式 (2.6) より,σi = 0のときは g(t) = sin(ωit) となり,持続振動をくりかえす。t → ∞ においても,値が定まら ない。 (4)s1 ∼ snの実部が正:式 (2.6) より,σ > 0 の場合は,振動項がない場合 は指数関数的に増加し,振動項がある場合は振動しながら増加する。 ωi = 0 ωi ̸= 0 σi > 0  単調増加 発散振動 σi = 0  時間とともに変化しない 持続振動 σi < 0  単調減衰 減衰振動

2.2

極の配置と過渡応答波形

以上の極と応答波形の関係を図 2.2 に示す。 図 2.2: 極と応答波形 なお,複素根は必ず共役な根を持ち実軸と対称となることから,jω > 0 の領域のみを図示している。 システムの極は,特性方程式 1 + G(s)H(s) = 0 の根であるので,コン

(16)

2.3

零点とその影響

伝達関数は一般的に G(s) = N (s) D(s) (2.8) で与えられる。前節までは,分母多項式の根 (D(s) = 0) である極に関す る考察を行った。極は,系の振動や収束性など,安定性を支配している が,上述のように分子多項式もあるため,実際はその挙動の解析は複雑 となる。一般に分子多項式 (N (s) = 0) の根を零点と呼ぶが,本節では, 極と零点の配置による影響について詳説する。 U (s)から,Y (s) までの伝達関数を G(s) = K(s− z1)(s− z2)· · · (s − zm) (s− p1)(s− p2)· · · (s − pn) (2.9) とおく。いま,U (s) = 1 s の入力を考えるとき,y(s) は Y (s) = K0 s + K1 s− p1 · · · + Kn s− pn (2.10) となる。よって時間応答は y(t) = K0+ K1ep1t· · · + Knepnt (2.11) 例えば,係数 K0,K1は K0 = [Y (s)s]s=0 = K(0− z1)(0− z2)· · · (0 − zm) (0− p1)(0− p2)· · · (0 − pn)   (2.12) K1 = [Y (s)(s− p1)]s=p1 = K(p1− z1)(p1− z2)· · · (p1− zm) p1(p1− p2)· · · (p1 − pn)  (2.13) 以下,K2,K3,· · · ともとまる。 上式より,傾向をまとめると (1)原点に近い極の係数は,遠い極の係数より大きい(Kiの分母 p1が小 さくなり,結果 Kiは大きくなる)。 (2)極の近くに零点があると,この極に対する係数は小さくなる(p1− zi で Kiの分子が小さくなる)。 (3)極と零点が近接すると,ほかの極への影響は打ち消し合う(近接す ると極―零はキャンセル)。 (4)虚軸や支配的な極から遠い位置にある零点,極は影響を与えない(支 配的な極,零を見ればよい)。 が言える。虚軸に近い極に対応する成分は減衰が小さく,原点に近い極 の係数は大きくなるので,t = 0 に近い部分を除きこれらが過渡応答の主 要な部分を支配すると思ってよい。このような極を,代表根と呼ぶ。

(17)

図 2.3 に極,零点の配置とそのインディシャル応答を示す。なお,図中 の◦ が極,× が零点である。 1.0 I t 0 R 1 p 1.0 I t p/z 0 R 1 z p1 t 1.0 p/z 0 I 1 z 1 p R t 図 2.3: 極,零点の配置とそのインディシャル応答 (その1:1 次系の場合) 例えば,零点が1個の1次系の場合, Y (s) = p1 z1 s + z1 s + p1 1 s = K0 s + K1 s + p1 (2.14) K0 = p1 z1 [(s + z1)s (s + p1)s ]s=0 = p1 z1 × z1 p1 = 1 (2.15) K1 = p1 z1 [s + z1 s + p1 s + p1 s ]s=−p1 = p1 z1 −p1+ z1 −p1 = p1− z1 z1 (2.16) よって,次式を得る。 y(t) = 1 + p1− z1 z1 e−p1t (2.17) 上式において t = 0 では,y(0) = 1 + p1− z1 z1 = p1 z1 を得る。|z| > |p|(図 右上) では y(0) は 1 以下の右上がりに,|p| > |z|(図右下) では y(0) は 1 以 上の右下がりになる。

(18)

他方,図 2.4 に2次系,3次系の場合の極,零点の配置とそのインディ シャル応答の比較を示す。 1.0 t 0 R I 2 p 1 p 1.0 t 0 R I 2 p 3 p 1 p 1.0 t 0 R I 2 p 3 p 1 p t 0 I 1 z 1 p R 2 p 1.0 t 0 I 1 z p1 R 2 p 1.0 t 0 R I 2 p p1 1.0 図 2.4: 極,零点の配置とそのインディシャル応答 (その2:2次,3次 系の場合) 図において零点が極より左の(原点から遠い)場合は1次系に近い振 る舞いになり,逆に原点に近い場合は零点の影響でオーバーシュートが 発生する。3次系の場合は,原点側の極が実根の場合は振動しながらゆっ くりと上昇し,原点側の極が共役複素根の場合は振動が大きくなる。

(19)

3

回 安定性の定義

システムが安定であるとは,システムが暴走せずにある一定値(ある いは領域)にシステムの状態をとどめることである。従って,目標値の 変化や外乱のため振動が生じてもそれが「減衰」すれば安定であるとい えよう。 時間軸は有限の時刻しか書けないので,波形を見せても安定かどうか わからない。システムが安定かどうかどのようにチェックすればよいであ ろうか。本章では,その判定の方法について概要を述べる。

3.1

安定性の意味

制御とは、目的を達成するように操作を加えることである。図 3.1 の上 図において考えてみよう。 制御目的を達成するには, 1:目標値へ収束する 2:外乱の影響が零,あるいはずれが生じたらこれを元に戻す とすればよい 図 3.1 上のブロック図で G = 1 の場合を考えよう。入出力特性のゲイ ンが 1,外乱の伝達特性が 0 になればよく,式で表せば Y = R (3.1) Y = 0× D (3.2) となればよい。これが,フィードフォワードである。しかし,実際にこ のような外乱が 0 の理想的な特性を作ることはできない。 フィードバックは常に目標の特性に一致する機構である。フィードバッ クの伝達特性を計算すると,

(20)

となる。計算すると Y = P (CE + D) = P (CR− CY + D)   Y = P CR− P CY + P D   (1 + P C)Y = P CR + P D となる。

r

y

d

G

r

y

r

+

e

+

d

y

C

P

r

+

y

-+

e

u

図 3.1: 制御対象例 整理すると, Y = GyrR + GydD = P C 1 + P CR + P 1 + P CD (3.3) U = GurR + GudD = C 1 + P CR + P C 1 + P CD (3.4) それぞれの伝達要素は目標値と外乱から出力と入力の特性である。この 4つの要素 Gyr,Gyd,Gur,Gudが安定であることを,内部安定と呼ぶ。 (なお,理解のために直感的に考えれば C =∞ にできれば Y = R + 0D となりフィードフォワードの特性になる。なお,厳密には計算が必要で ある。)

(21)

フィードバック系の振る舞いを決定する特性多項式は 1 + P C = 0 であ る。安定性の条件は様々あるが,SISO 系では,「全ての G(s) の極が複素 左半平面に存在する」という条件と等しい。つまり, G(s) = N (s) D(s) (3.5) において分母多項式 D(s) = 1 + P C において 1 + P C = 0 なる。図 3.2 に安定極,不安定極,安定限界を示すが,不安定極が 1 個でもあるとシ ステムは不安定になる。(なお,図の例は 3 次の特性多項式の例で,2 つ の共役複素解と 1 つの実根を持つ) Im Im Im Re Im X X Re Im X X Re Im X X X X X ! !"# $ ! 図 3.2: 安定極と不安定極 ■数値例1: 図 3.1 で P = b s + a,C = kp の制御系を考える。系が安定な条件を求 めよ。 伝達関数は, Y = GyrR + GydD Gyr = P C 1 + P C = bkp s + (a + bkp) (3.6) Gyd = P 1 + P C = b s + (a + bkp) (3.7) となる。極は,s =−(a + bkp) < 0より,kp >− a b となればよい。

(22)

■数値例2: 図 3.3 のブロック図で,H(s) = 1 とおいたときの Y R を求め, 安定かどう か示しなさい。 1:G(s) = 1 s(s + 2) ,H(s) = 1 G 1 + GH = 1 s(s + 2) + 1 = 1 (s + 1)2 2:G(s) = 1 s2 ,H(s) = 1 G 1 + GH = 1 s2+ 1 3:G(s) = 1 s(s− 1),H(s) = 1 G 1 + GH = 1 s(s− 1) + 1 = 1 s2− s + 1 1)は−1 の 2 重根,2) は ±j の安定限界,3) は s = 1± 3j 2 の不安定根 になる。

G

r

+

y

Im Im Im

y

-H

Re 1 X Re X Re X j 2 3 -1 X X -j 2 3 − 図 3.3: 例題

(23)

例のように,「極を一個一個チェックする」ことができれば系の安定性 を調べることができる。たとえば,n 次方程式の解 a0sn+ a1sn−1+· · · + an = 0 (3.8) を常に解ければよいが,必ずしも厳密には求まらない。 従って,「方程式を解かずして極が右半平面にあるか」を判断できれば 都合がよい。次章以降では安定性の分析の代表的な手法を紹介する。 [1]ラウスの方法:ラウス表で代数的に解く [2]フルビッツの方法:行列で代数的に解く [3]ナイキストの方法:図的に解く なお,近年では,計算機が非常に精度よく近似解を求めることができる ため,必ずしも,これらの解析手法を使う必要がない。しかし,古典制 御として考え方が重要であり,授業ではこれらの手法の原理を理解する。

(24)

4

回 ラウスの安定判別法

システムが安定かどうかを調べるためにシステムの極の状態を調べる 方法がある。極が代数的に求められる場合は非常に簡単だが,次数が高 い場合などは難しい。特に,常に多項式の解を得なければならず計算機 がなかった時代には分析は厳しかった。 本章では,古典的な安定判別方法として安定性を代数的に判定する方 法の一つであるラウスの方法を示す。また,安定判別法の別手法として 行列を用いたフルビッツの方法を紹介する。いずれも明治 8∼28 年(1875 ∼1895)の自動制御系の分析アルゴリズムであるがアイデアが秀逸で現 在でも使用するアルゴリズムである。

4.1

ラウスの安定判別法

ラウスの方法は,ラウス表を作成してラウス表の符号の変化により安 定性の判定をする。授業では,安定判別の方法を説明する。 特性多項式 a0sn+ a1sn−1+· · · + an−1s + an= 0 (4.1) を持つ制御系が安定になるには,次の 2 つの条件を満足しなければなら ない。 [1]全ての係数 a0,· · · , anが同符号である。 [2]ラウス表の第一列が全て同符号である。同符号でなければ符号の変化 回数に等しい数の不安定根がある。 図 4.1 にラウス表の例を示す。この表は特性多項式の次数が 7 次のシス テムの例である。 a0s7+ a1s6+ a2s5+ a3s4+ a4s3+ a5s2+ a6s + a0 = 0 (4.2) まず,ラウス表の左端の s7,s6の項は多項式の係数をならべる。s7の項

には a0,a2,a4,a6の係数を,s6の項には a1,a3,a5,a7の係数を並べ

(25)

30

24

24

図 4.1: ラウス表 b1 = a0 a2 a1 a3 a1 = −(a0a3 − a1a2) a1 (4.3) b3 = a0 a4 a1 a5 a1 = −(a0a5 − a1a4) a1 (4.4) · · · 同様に,s4の係数は c1 = a1 a3 b1 b3 b1 = −(a1b3− a3b1) b1 (4.5) c3 = a1 a5 b1 b5 b1 = −(a1b5− b1a5) b1 (4.6) · · · ともとまる。順次,s0の数値まで求める。 こうして求まったラウス表の第一列 (a0, a1, b1, c1, d1, e1.· · ·) の符号を調 べ,符号変化がなければ安定,符号変化があれば不安定となり,符号変化 の回数に等しい不安定根がある。これにより,系の安定性が判定できる。

(26)

■数値例 1: 特性多項式が次式で与えられるとき安定性を吟味せよ。 s4+ 10s3+ 35s2+ 50s + 24 = 0 (4.7) この多項式の解は (s + 1)(s + 2)(s + 3)(s + 4) = 0 (4.8) なので,明らかに安定である。 解が不明という条件下で,ラウスの方法で判定しよう。 [1]全ての係数は正である。 [2]ラウス表を作成する。

1 35 24

10 50 0

30

24

30 24

42 0

24

b1 = 1 35 10 50 10 = −(50 − 350) 10 = 30 (4.9) b3 = 1 24 10 0 10 = −(0 − 240) 10 = 24 (4.10) c1 = 10 50 30 24 30 = −(240 − 1500) 30 = 42 (4.11) c3 = 10 0 30 0 30 = 0 (4.12)

(27)

d1 = 30 24 42 0 42 = −(0 − 24 × 42) 42 = 24 (4.13) ラウス表より,第一列は 1,10,30,42,24 と符号変化がないので系は 安定である。 ■数値例 2: 特性多項式が次式で与えられるとき安定性を吟味せよ。 s3+ 2s2+ 3s + 10 = 0 (4.14) この多項式の解は計算機で求めると s =−2.445,s = 0.227 ± 2.009 で あり 2 つの不安定根がある。ラウス表で求めてみよう。

1 3

2

10

2 10

-2

10

b1 = 1 3 2 10 2 = −(10 − 6) 2 =−2 (4.15) c1 = −2 02 10 −2 = −(0 + 20) −2 = 10 (4.16) ラウス表より,第一列は 1,2,−2,10 と符号変化が,2,−2 で一回,−2, 10で一回の計二回ある。よって,系には不安定根が 2 つあることがわかる。

(28)

■数値例 3: 次のブロック線図がある。図の制御系が安定となる K の範囲を求めよ。 ただし,K > 0 とする。

+

K

r

+

y

-図 4.2: ブロック線-図 閉ループ伝達関数を求めると, Y R = G(s) = k (s + 1)(s + 2)(s + 3) 1 + k (s + 1)(s + 2)(s + 3) = k (s + 1)(s + 2)(s + 3) + k (4.17) よって,分母多項式は (s + 1)(s + 2)(s + 3) + k = (s + 1)(s2 + 5s + 6) + k = s3+ 5s2+ 6s + s2+ 5s + 6 + k = s3+ 6s2+ 11s + 6 + k (4.18) [1]全ての係数は同符号であるが,変数のある係数 (s0)で 6 + k > 0 でな くてはならない。 [2]ラウス表を作成する。 b1 = 1 11 6 6 + k 6 = −[(6 + k) × 1 − 6 × 11] 6 = 60− k 6 (4.19) c1 = 606− k 6 + k 6 0 60− k 6 = 6 + k (4.20)

(29)

1

11

1

11

6

6+k

6+k

6+k

第一列が同符号であれば安定なので,s1,s0より 60− k 6 > 0 (4.21) 6 + k > 0 (4.22) を満足すればよい。いま,k > 0 より 6+k > 0 を満足するので,60−k > 0 より,0 < k < 60 となる。

4.2

フルビッツの方法

フルビッツの安定判別法は,行列の演算で安定性が評価できる。フル ビッツの手法を以下に示す。 a0sn+ a1sn−1+· · · + an−1s + an= 0 (4.23) を持つ制御系が安定になるには,次の 2 つの条件を満足しなければなら ない。 [1]全ての係数 a0,· · · , anが存在し(0でなく),正である。 [2]フルビッツ行列式の主対角小行列式が全て正である。 例えば,1x1,2x2,3x3 の小行列式は次のようになる。

(30)

∆1 = a1 > 0  ∆2 = a1 a3 a0 a2 > 0 ∆3 = a1 a3 a5 a0 a2 a4 0 a1 a3 > 0 (4.24) ■数値例 4: 例題 2 の特性多項式が次式で与えられるときフルビッツの方法で安定性 を吟味せよ。 s3+ 2s2+ 3s + 10 = 0 (4.25) フルビッツの方法で判定しよう。 [1]全ての係数が正である。 [2]フルビッツ行列式の主対角小行列式が全て正である。 いま,フルビッツ行列は3次となる。1× 1,2 × 2,3 × 3 の小行列式は 次のようになる。 ∆1 =   2 > 0   ∆2 = 2 10 1 3 = 2× 3 − 1 × 10 = −4 < 0 ∆3 = 2 10 0 1 3 0 0 2 10 = 2× 3 × 10 − 1 × 10 × 10 = −40 < 0   (4.26) よって不安定である。

(31)

■数値例 5: 特性多項式が数値例1で与えられるときフルビッツの方法を用い安定性 を吟味せよ。 s4+ 10s3+ 35s2+ 50s + 24 = 0 (4.27) フルビッツ行列は4次となる。1× 1,2 × 2,3 × 3,4 × 4 の小行列式 は次のようになる。 ∆1 =   10 > 0   ∆2 = 10 50 1 35 = 350− 50 = 300 > 0 ∆3 = 10 50 0 1 35 24 0 10 50 = 10× 35 × 50 − 1 × 50 × 50 − 10 × 24 × 10 = 17500− 2500 − 2400 = 12600 > 0   ∆4 = 10 50 0 0 1 35 24 0 0 10 50 0 0 1 35 24 = 24× ∆3 > 0  よって安定となる。 なお,これらの2つの判別法は「安定か不安定」かを判定するだけで, 「どのくらい安定か」を調べるものではない。

(32)

5

回 システムの周波数応答の

基礎

制御対象を動かすことなく,事前にその挙動がわかれば有益である。今 まで,G(s) は極,零点に関する情報を持ち,ラウス法などを用いると事 前にこの系が安定かどうかを評価することができることを示した。 本章で学ぶ周波数応答法は,さらにシステムの安定度やシステムがど のように応答するかを明らかにすることができる。周波数応答法は単に 数学的に与えられたプラントの分析だけでなく,逆に周波数特性から数 学的モデルを推定する場合にも使用できる。 ここでは,まず制御対象の応答を記述する周波数応答法を示し,その 分析法の原理を示す。

5.1

安定度を評価するには

図 5.1 に示す伝達関数を考える。いま,C = Ki s ,P = 1 s2+ 2ζs + ω2 とする。

C

P

r

y

+

-図 5.1: フィードバックの安定性 (ブロック線-図) 特性多項式は1 + CP より s3+ 2ζωs2+ ω2s + Ki = 0 (5.1) である。

(33)

いま,ω =√6,ζ = 5 ≈ 1。とする。伝達関数は次式で得られる。 s3+ 5s2+ 6s + Ki = 0 (5.2) 図 5.2 は Ki = 1で,極は−3.2, −1.5, −0.2, Ki = 2で,極は−3.0, −1.0, −0.5, Ki = 9で,極は−4.0, −0.46 ± 1.4j である。コントローラ Kiが大きくなるとフィードバックの応答波形が振 動的になる。例えば,Ki = 9ではラウス表より安定となり,Ki = 31で は不安定となる。各自ラウス表で確認してほしい。 さて,図の 3 つの応答波形とも安定なのだが,どの程度安定なのかが わからない。一般に, (a)の場合ゲインを大きくしたらもっと早く収束するが振動しない。 (b)は臨界安定でゲインを大きくすると振動する。 (c)の振動波形はゲインをちょっと大きくすると発散する。 定性的な指標として,不安定な状態からの余裕の度合いである「安定余 裕」を考える。そのように定義すれば,Ki = 1は安定度が大きい,不安 定に向かうので Ki = 9は小さいと判断できる。 y time (a) Ki=1 y time (b) Ki=2 y time (c) Ki=9 図 5.2: フィードバックの安定性 しかし,系の応答は時間により変わるため,厳密には制御対象を何ら かの特性で記述する必要がある。その意味で,周波数応答法は伝達関数 そのものの記述法であり,安定性を含めたシステムの応答分析を行うこ とができる。

(34)

5.2

周波数応答法

いま,制御対象の式が次のように与えられ,制御系入力が x(t),出力 が y(t) であるとする。 Y (s) = G(s)X(s) (5.3) 一般に,制御対象の時系列波形は,立ち上がり時の状態の安定しない「過 渡応答」,時間が十分経過した状態が安定した「定常応答」に分けられ る。時間で記述すれば,t→ ∞ が定常応答である。

y

time

㐣Ώ

ᐃᖖ

図 5.3: 定常特性と過渡特性 ここで,入力が正弦波の場合の定常応答を「周波数応答」と呼ぶ。い ま,図 5.4 の制御対象を考え位相角 0 度,振幅 Aiの正弦波を考える。 x(t) =Aisin(ωt) (5.4) 上式をラプラス変換すると X(s) =L[Aisin(ωt)] = Aiω s2+ ω2 = Aiω (s + jω)(s− jω) (5.5) いま,制御対象を次式で表す。 G(s) = N (s) D(s) = N (s) (s− s1)(s− s2)· · · (s − sn) (5.6) 全ての siが負であるとする。

(35)

G(s)

y

x

図 5.4: 入出力特性 出力を部分分数展開して表すと, Y (s) = k1 (s− s1) + k1 (s− s1) +· · ·+ kn (s− sn) +{ k+ (s− jω)+ k (s + jω)} (5.7) この制御対象には振動解はないとしているので, k+ (s− jω)k (s + jω)は, 入力された信号の成分である。上式を逆ラプラス変換すると y(t) =k1es1t+· · · + knesnt+{k+ejωt+ k−e−jωt} (5.8) G(s)が安定なので,t→ ∞ で安定な極の部分は0になるので,{ ・ }   内の定常正弦波入力の影響だけ振動が残る。 ys(t) =k+ejωt+ k−e−jωt (5.9) ここで,それぞれの係数は K+ = [ G(s) Aiω s2+ ω2(s− jω) ] s=jω = G(jω)Aiω 2jω = G(jω) Ai 2j K = [ G(s) Aiω s2+ ω2(s + jω) ] s=−jω = G(−jω) Aiω −2jω =−G(−jω) Ai 2j G(jω)と G(−jω) は共役複素数であり次式で定義する。 G(jω) = |G(jω)|ejθ G(−jω) = |G(jω)|e−jθ θ = ̸ G(jω) (5.10) よって,ys(t)を計算すると ys(t) = |G(jω)|e−jθ Aiω −2jωe−jωt+|G(jω)|ejθ Aiω 2jωe jωt

(36)

以上をまとめると

入力を x(t) = Aisin(ωt),出力を y(t) = A0sin(ωt + θ) とするとき,伝

達関数は |G(jω)| = Ao Ai :ゲイン ̸ G(jω) = θ :位相 で表される。s をjωに置き換えた G(jω) を周波数伝達関数とよぶ。

5.3

周波数応答のまとめ

今までで G(s) が極,零点に関する情報を持ち,その配置により特性が きまることを示した。特に安定性は,極を直接求めることなくラウス法な どにより評価ができた。しかし,それらの手法では安定性の度合いを調 べることができない。 安定性の度合いは,制御対象の周波数応答 G(jω)により決まる。制御 対象が未知の場合,周波数応答 G(jω) は G(jω1),G(jω2),G(jω3) ,· · · のように,ある周波数 ωiにおいてゲイン・位相の特徴量をプロットすれ ば,制御対象の特徴がわかる。図 5.5 に概念図を示す。 ߱ ߱ ߱ଵ ߱ଵ ܩሺ݆߱ሻ סܩሺ݆߱ሻ ݀ ݀ݐ ݏ ݆߱ ఏ㐩㛵ᩘ ࿘Ἴᩘఏ㐩㛵ᩘ 䠄䛒䜛࿘Ἴᩘ䛾್䠅 ṇᘻἼ 䝷䝥䝷䝇ኚ᥮ ᚤศ᪉⛬ᘧ 図 5.5: 周波数応答特性

(37)

図に示すように, [1]ラプラス変換 G(s) を与えると周波数応答が得られる。 [2]周波数 0∼ ∞ でゲインと位相がわかっていると,過渡応答が決定で きる。 [1]は当然なので,[2] を説明する。たとえば,与えられた入力における過 渡応答は周期関数ならフーリエ級数(非周期ならフーリエ積分)で周波 数成分に分けられる。周波数応答がわかってると個々の入力に対する出 力成分が求まる。得られた出力の和を求めると,重ねの理から入力信号 に対する過渡応答が得られる。

(38)

6

回 ベクトル軌跡

周波数ごとに周波数応答のゲイン・位相を求め,それらをつなげるこ とで制御対象の分析が可能となる。 ゲイン・位相を記述する手法としてベクトル軌跡があり,例えば制御 対象の伝達関数が与えられるとシステムの分析に利用することができる。 制御対象の伝達関数の代表的な要素として,積分・微分・一次遅れ・比 例,不完全微分・むだ時間がある。本章では,これらの要素が周波数ご とにどのような挙動をするのかゲイン・位相図を使って示す。また,制御 対象はこれらの合成関数であるので,これらの要素で合成法を紹介する。

6.1

ベクトル軌跡の基礎

G(jω)はその [1]絶対値|G(jω)| [2]偏角̸ G(jω) を持つ複素数である。まずは,ベクトル軌跡の使い方の前にゲイン・位 相を記述する手法を示す。

Im

| ) ( |G j

ω

2 2

ω

Re

) (j

ω

2 G ∠ 1

ω

図 6.1: ベクトル軌跡

(39)

6.2

積分要素

積分要素は,位相が 90deg. 遅れ,ω → ∞ で |G(jω)| = 0となる。 G(jω) = 1 jωT = 1 ωT(−j) |G(jω)| = 1 ωT ̸ G(jω) = −90deg (6.1)

Im

Re

0

-90deg

߱ ՜ Ͳ

߱ ՜ λ

図 6.2: 積分要素

6.3

微分要素

微分要素は,位相が 90deg 進み,ω → 0 で |G(jω)| = 0となる。 G(jω) = jωT |G(jω)| = ωT ̸ G(jω) = 90deg (6.2)

(40)

Im

Re

0

߱ ՜ Ͳ

߱ ՜ λ

+90deg

図 6.3: 微分要素

6.4

一次遅れ要素

一次遅れ要素は G(jω) = K 1 + jωT |G(jω)| = | 1 1 + jωT|K = K1 + (ωT )2 ̸ G(jω) = ̸ K−̸ (1 + jωT ) = 0− tan−1ωT (6.3) 要素は,ω → 0で位相̸ G(0) = 0,ゲイン G(0) = K,ω → ∞で位相 ̸ G(∞) = − tan−1ωT =−90,ゲイン G(∞) = 0 となる。 ここで,一次遅れ要素が円になることを示す。 K 1 + jωT = K 1 + ω2T2 | {z } x成分 − j KωT 1 + ω2T2 | {z } y成分 (6.4) x2+ y2 = 1 + ω 2T2 (1 + ω2T2)2K 2 = K 2 1 + ω2T2 = Kx (x−K 2) 2 K 2 4 + y 2 = 0 (x−K 2) 2 + y2 = (K 2) 2

(41)

Im Re 0 ߱ ՜ Ͳ ߱ ՜ λ x ܩሺλሻ ൌ Ͳ סܩ λ ൌ െͻͲ סܩ Ͳ ൌ ͲܩሺͲሻ ൌ ݇ ߠ ௞ ଶ 図 6.4: 一次遅れ要素

6.5

比例要素

比例要素は,位相が 0degであり,ゲインは一定値である。 G(jω) = K |G(jω)| = K ̸ G(jω) = 0deg (6.5) Im Re 0 k 図 6.5: 比例要素

6.6

不完全微分要素

不完全微分要素は,

(42)

これは,低周波(1 >> ωT )は微分し,高周波(1 << ωT )は一定のゲ インになるという意味で不完全微分と呼ぶ。 まとめると G(jω) = jωT 1 + jωTK |G(jω)| = | jωT 1 + jωT|K = ωT1 + (ωT )2K ̸ G(jω) = ̸ jωT −̸ (1 + jωT ) = 90deg− tan−1ωT (6.7) ω = 0で位相が̸ G(0) = 90deg,ゲイン|G(0)| = 0 となる。ω = で 位相が̸ G(∞) = 0deg,ゲイン |G(∞)| = K となる。 Im Re 0 ߱ ՜ Ͳ ߱ ՜ λ x ܩሺλሻ ൌ ݇ סܩ λ ൌ Ͳ ܩሺͲሻ ൌ Ͳ סܩ Ͳ ൌ ͻͲ ߠ ௞ ଶ 図 6.6: 不完全微分要素

6.7

むだ時間要素

むだ時間要素は, G(jω) = e−jωL |G(jω)| = |e−jωL| = 1 ̸ G(jω) = −ωL (6.8) ̸ G(jω) =−ωLなので,同じ L なら,ωが大きくなるほど位相は遅れる。

(43)

ܩሺλሻ ൌ ݇ סܩ λ ൌ Ͳ ܩሺͲሻ ൌ Ͳ סܩ Ͳ ൌ ͻͲ Im Re 0 ߱ ՜ Ͳ ߱ ՜ Ͳ ߠ 1 図 6.7: むだ時間要素

6.8

複素数の乗法計算と合成の方法

最後に合成方法を示す。 G(s) = K s(1 + sT ) = K s × 1 1 + sT = G1(s)G2(s) (6.9) さてこの合成関数の全体の挙動を考える。 G(jω) = K jω(1 + jωT ) (6.10) 複素数の乗数計算において |G(jω)| = |G1(jω)| × |G2(jω)| (6.11) ̸ G(jω) = ̸ G1(jω) +̸ G2(jω) (6.12) の関係を使う。 ωが小さいと 1 + jωT 1となり,伝達関数は G(jω → 0) ≈ K (6.13) と近似される。ゲインと位相は, |G(jω → 0)| ≈ |ω|K = (6.14) ̸ G(jω→ 0) ≈ −90 + 0 = −90deg (6.15)

(44)

より,ゲインと位相が次のようになり, |G(jω → ∞)| ≈ K2|T = 0 (6.17) ̸ G(jω → ∞)| ≈ −90 + (−90) = −180deg (6.18) ω→ ∞ で2重積分(∞ で −180deg に漸近)に近似できる。 よって,ω → ∞ の位相角は伝達関数の次数の差となる。 G(s) = K s(1 + sT ) (6.19) では,次数差2次−90 × n(n =2)で−180となる。 以上より,0≤ ω ≤ ∞ の概要がわかったので,合成関数が描画できる。 Im Re 0 図 6.8: 合成 実験でデータをとるとベクトル線図が得られるが,実際はそれらを近 似することで制御対象の数式を得ることができる。

(45)

代表的なベクトル線図を図 6.9 1に示す。また,この章ではベクトル線

図の記法を示したが,次章ではこれらの結果を用いた,ナイキストの安

定判別法を示す。

(46)

7

回 ナイキストの安定判別

周波数ごとに周波数応答のゲイン・位相が決まり,周波数ごとにそれ をつなげることである関数の分析が可能となる。第 6 章では,ゲイン・位 相を記述する手法としてベクトル軌跡があり,伝達関数が与えられる場 合は周波数毎にプロットできることを示した。 制御系設計では閉ループは代表的で非常に有効な手法であり,安定に するには試行錯誤で調整しなければならなかった。そこで,ベクトル軌 跡を安定性の尺度に利用したナイキストの安定理論が 1932 年 (昭和 7 年) に提案された。本章では,フィードバック制御系の安定性を判定できるナ イキストの安定判別法を示す。また,ナイキストの安定判別は系が安定 かどうかの判定だけではなく安定の度合いを示すため有用である。

7.1

開ループ伝達関数

伝達関数のゲイン・位相を一点に表現できるベクトル線図の書き方を 前章にて学んだ。このベクトル線図を使って,系の安定性を判定する方 法を考える。 いま,図 7.1 に閉ループ系の伝達関数を示す。 Y (s) = G1(s)G2(s) 1 + G1(s)G2(s) R(s) + G2(s) 1 + G1(s)G2(s) D(s) (7.1)

G

1

(s)

r

+

y

-

G

2

(s)

d

+

+

図 7.1: ブロック図 図 7.1 において,G1(s)G2(s)はループを一巡した伝達関数の積で一巡 伝達関数あるいは開ループ伝達関数と呼ぶ。丁度,フィードバックルー

(47)

プを「カット」すると一巡で増える(または減る)値を示す。フィード バックで「負帰還」すると一定値に落ち着く(一巡で一未満に信号が減 る)と設計したフィードバック系が安定になる。 そこで,信号路を切った開ループG1(s)G2(s)を評価すれば,構成され るフィードバック系が安定かどうか判定できるので,その考え方を利用 したナイキストの方法を紹介する。

7.2

ナイキストの安定判別法

図 7.2 に示す系の,入力から出力までの伝達関数は F (s) = G(s) 1 + G(s)H(s) (7.2) である。特性多項式 1 + G(s)H(s) の根が全て複素左半平面に存在すると

G(s)

H(s)

r

+

y

-図 7.2: フィードバック フィードバック系が安定である。図 7.3 に安定領域を示す。 Im Re Ᏻᐃ ୙Ᏻᐃ

(48)

であることを示した。しかし,ラウス・フルビッツの方法は G(s),H(s) が数式でないと判別法が使えない,安定かどうかは判定できるが判別は 安定の度合いがわからないという欠点がある。 ラウス・フルビッツ法の欠点をまとめると, [1]システム設計に不可欠な安定の度合いがわからない [2]ラウス・フルビッツ法は係数を取り扱い,伝達関数の時定数などの パラメータと結びつかない。 [3]ラウス・フルビッツ法は周波数の実測値が与えられる場合は使えない。 これらの問題を解決する方法として,ナイキストの安定判別がある。ナ イキストの手法の導出法のポイントと使い方について理解する。 一巡伝達関数 G(s)H(s) を考える。s = σ + jω に応じて G(s)H(s) 平 面上の一点が定まる。従って s 領域を考えると G(s)H(s) のある閉区間で 囲まれた領域が定まる。つまり,s 平面における正方の領域は G(s)H(s) のひずんだ長方形となる。 ʍ ʘ ʍ=0 ʘ=0 -1 Sᖹ㠃 GHᖹ㠃 図 7.4: 写像 s平面の特性根の写像を考える。s = σ + jω を根とする特性方程式が成 り立つ。 1 + G(s)H(s) = 0 (7.3) これより, G(σ + jω)H(σ + jω) =−1 (7.4) となる。即ち特性根の G(s)H(s) 平面上の写像は(−1, j0)である。 従って,s の右半平面を G(s)H(s) 平面に写像したとき (−1, j0) を領域 内に含めば s の右半平面上に特性根があり,不安定である。図 7.5 におい て,s 平面の根 σ + jω は GH 平面 (−1, j0) に写像されるので,右半平面 が写像された斜線部に含まれなければ根が左半平面(安定)にあり,含 まれれば右半平面(不安定)になる。

(49)

sの右半平面を G(s)H(s) 平面の写像した領域内に,(−1, j0) を領域内 に含めば系は不安定,含まなければ安定である。 図 7.5 に,(−1, j0) を含む例,含まない例を示す。 Re Re Ᏻᐃ Im Im Re Re ୙Ᏻᐃ ୙Ᏻᐃ (ྑ༙ᖹ㠃䜢෗ീ) Im Im ߪଵ൅ ݆߱ଵ (-1, j0) (-1, j0) Ᏻᐃ ߪଵ൅ ݆߱ଵ ⹫㍈䜢෗ീ ୙Ᏻᐃ Sᖹ㠃 GHᖹ㠃 図 7.5: s 平面と GH 平面 この GH 空間の写像により,安定性の判定が「図的に」判定しやすく なる。なお,ここでは G(s),H(s) が式で分かっているものとしているが, 実験により特性が求まっている場合など図が書ける場合も同様に分析で きる。

(50)

7.3

s

平面を写像する

ここではまず写像について考え,安定判別の方法を示す。ω の区間は −∞ から ∞ までであり,その連続区間で次のような右半円区間を考える。 [1]s平面虚軸の写像 虚軸は s = jω,−jω を写像する。s = jωは ω が大きくなると図の下方か ら上方に向かって動く。 次に,半円の半径を∞ に広げて ∞ の挙動を考 Re Im s=݆߱ R ༙ᚄ䜢ь䛸䛧䛶 ྑ༙ᖹ㠃䜢ᗈ䛢䜛䚹 s=-݆߱ 図 7.6: s 平面写像 える。 [2]無限大半径の右半円の写像 いま, s = Rejθ (7.5) −π 2 < θ < π 2 にて R→ ∞ とし,G(s)H(s) は G(s)H(s) = b0s m+ b 1sm−1+· · · + bm a0sn+ a1sn−1+· · · + an (7.6) n≥ m とする。式 (7.5) を式 (7.6) に代入すると, G(s)H(s) b0R mejmθ a0Rnejnθ = b0 a0 Rm−nej(m−n)θ (7.7) n ≥ m R→ ∞ のとき, G(s)H(s)    b0 a0 if n = m (...R(n−m)= R0 = 1) 0 if n ≥ m (...R(n−m) = R−∗ and R→ ∞) (7.8)

(51)

これにより,R → ∞ の無限遠点は G(s)H(s) の一点か,原点に写像さ れる。 例として, G(s)H(s) = 1 (sT1+ 1)(sT2+ 1) (7.9) の場合のベクトル軌跡は ω = 0∼ ∞で図 7.7 の実線となる。次に実軸で 折り返すと ω =−∞ ∼ 0の破線となる。 Re Im ߱=െλ ߱=λ ߱=Ͳ ݏ=െj߱ ݏ=j߱ 図 7.7: ベクトル軌跡  (sT 1 1+1)(sT2+1) 以上より,次の手順で安定判別すればよい。 [1]ωが 0∼ ∞ に対し G(jω)H(jω) のベクトル軌跡を書く。 [2][1]を実軸に対し対称に折り返す。 [3][1][2]の閉曲線内に (−1, j0) がなければ安定((−1, j0) を囲めば不安定) 例えば,G(s)H(s) = 1 T s + 1は図??左図,先ほど例示した G(s)H(s) = 1 (T1s + 1)(T2s + 1) は右図となる。なお,開ループの不安定極の個数を知っ た上で,不安定な閉ループ極の個数を知ることができるがその安定判別 法は省略し,使いやすい簡略化されたナイキストの安定判別法を示す。

(52)

図 7.8: ベクトル軌跡 一般に開ループ伝達関数の極が右半平面に存在すると系が不安定にな り,実データはとれない。普通,制御性能の改善は不安定状態から調整 するのは希であるので,ノートでは不安定な開ループ極がない簡略化さ れたナイキストの安定判別を紹介する。簡略化したナイキストの方法は, ω = 0∼ ∞ での軌跡をわかり安く判別する手法である。 簡略化されたナイキストの方法は以下のようにまとめられる。 閉ループ伝達関数 G(s) において,s = jωとおき,ω = 0∼ ∞で動か すとき,ベクトル軌跡が−1 + j0 の点を左にみて描ければこのフィード バック系は漸近安定である。 ナイキストの図 7.9 のようにナイキストの手法では,−1 近辺の安定性 に関わる帯域を見ればよい場合が多いので簡略化手法のみを紹介する。ナ イキストの安定判別を用いると [1]ベクトル軌跡が−1 を「左」にみて通過する場合は安定 [2]ベクトル軌跡が−1 を通過する場合は安定限界 [3]ベクトル軌跡が−1 を「右」にみて通過する場合は不安定 と判定できる。

(53)

Re Im ሺʹሻ ሺ͵ሻ ሺͳሻ (-1,0j) 0 図 7.9: 閉ループ伝達関数の安定性 図 7.10 に簡易化した例を示す。 ■例題1 P = 1 (s + 0.1)(s + 1) と C = K s のフィードバックを考える。 K = 1,K = 0.08 の概略図を描け。 開ループ極は s = 0 と安定極が 2 つあるので簡略化されたナイキスト 手法を用いると,K = 1 の時は図 7.11 左図,K = 0.08 にすると右図のよ うになる。 K = 1のとき P C = 1 s(s + 0.1)(s + 1)の特性多項式は 1 + s(s + 0.1)(s + 1) = s3+ 1.1s2+ 0.1s + 1 となるので,数値計算で求 めると−1.48,0.19 ± j0.8 となり不安定根となる。

(54)

図 7.10: 簡易化した安定判別例

7.5

ゲイン余裕と位相余裕

ナイキスト線図では,安定限界からどの程度離れているかを判定でき る。図 7.12 は,ベクトル軌跡が実軸上の−1 を左に見て通過する安定な システムである。 この安定な G(jω)H(jω) の位相角が−180deg となるとき「位相交点(交 差)周波数 (ωϕ)」とよぶ。その逆数は 1 G(jωϕ)H(jωϕ) (7.10) となり,デシベルで表すと gm =−20 log |G(jωϕ)H(jωϕ)| (7.11) となる。gmをゲイン余裕とよぶ。 また,G(jω)H(jω) のゲインが 1 となる ω はゲイン交点(交差)周波数 (ωc)と呼ばれる。原点と ωcの角度は位相余裕とよばれ, ϕm = 180 +̸ G(jωc)H(jωc) (7.12) となる。

(55)

Re Im ߱=Ͳ Re Im ߱=Ͳ -1+j0 -1+j0 ߱=λ ߱=λ 図 7.11: 例題߱ ൐ Ͳ Re Im ߱௖ Ͳ ߱థ ߶௠ 1/݃ 図 7.12: ゲイン余裕と位相余裕 位相余裕とゲイン余裕をナイキストの手法から図的に読むことができ る。この関係を,次章以降のボード線図で詳しく説明する。

(56)

8

回 ボード線図の基礎

1900 年代に入ると蒸気から電気式での制御に変わり,電気制御に対応 する制御理論が提案されてくる。1930 年にボードの提案した負帰還増幅 器の設計法がその代表である。 ボード線図は制御系の設計をする際に用いる設計・分析法の一つであ り,現場の SISO 系では未だに用いられる手法であり設計法の基礎となっ ている。本章ではボード線図の書き方を示す前に,分析に使用する対数 グラフの描画法とその特徴を示す。

8.1

対数グラフの基礎

100から 101まで 100.1刻みの指数を考える前に,まず対数の復習をし よう。 8 = 23 は,「2 の 3 乗が 8」という意味である。次に, 3 = log28 は「2 を 8 にする指数は 3」という意味である。 これから作成するグラフは,「指数が比例した」グラフである。n = log10x の指数を見ると 0 から 1 まで 0.1 きざみの表になっており, つまり指数 n が比例した表になる。 比例した指数が,どのような値になるか計算してみよう。まず,指数が 0と 1 の場合は簡単に計算できる。 x = 10p より 0 のとき 100 = 1,101 = 10となる。 では,具体的に整数となる指数 p はどうなるであろう。例えば 2 = 10p を考える。表を見ると 1.99≈ 100.3が近いので,指数で 0.3 あたりと見当 がつく。実際に p = log102(10を 2 にする指数 p) を求めればよい。

(57)

具体的に整数となる p は p = log10xより次のように求まる。 1 = 10p p = log101 = 0

2 = 10p p = log102≈ 0.301 3 = 10p p = log103≈ 0.477

4 = 10p p = log104 = log10(2× 2) = log102 + log102≈ 0.602 5 = 10p p = log105 = log1010

2 = log1010− log102≈ 1 − 0.301 = 0.699 6 = 10p p = log106 = log10(2× 3) = log102 + log103≈ 0.778

7 = 10p p = log107≈ 0.845

8 = 10p p = log108 = log10(2× 2 × 2) = 3 × log102≈ 0.903 9 = 10p p = log109 = log10(3× 3) = log103 + log103≈ 0.954 10 = 10p p = log1010 = 1 0 100 (1) 0.1 100.1 (1.25) 0.2 100.2 (1.58) 0.3 100.3 (1.99) 0.4 100.4 (2.51) 0.5 100.5 (3.16) 0.6 100.6 (3.98) 0.6 100.7 (5.01) 0.8 100.8 (6.31) 0.9 100.9 (7.94) 1 101 (10) p=log10x X=10p 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 図 8.1: 対数グラフ

以上のように,log102,log103,log107の値がわかれば,対数グラフを

(58)

8.2

ボード線図の特徴

図 8.1 に示すように,ボード線図は横軸に対数 [Hz] あるいは [rad/s] な ど周波数の軸をとる。縦軸はゲイン|G(jω)|[dB] と位相̸ G(jω)[deg]で, 線形の軸となる。従って,「片対数グラフ」を使う。 例えば,伝達関数の積, G(jω) = G1(jω)G2(jω) (8.1) のゲインと位相はそれぞれ以下のようになる。 |G(jω)| = |G1(jω)||G2(jω)| ̸ G(jω) = ̸ G1(jω) +̸ G2(jω) (8.2) しかし,2つの積を合成し各周波数の特性を計算するには「和算」がや りやすい。 性質を説明する前に,加算,減算に関する対数の法則を説明する。

logaM N = logaM + logaN

loga M N = logaM − logaN logaMp = p logaM logaM = logbM logba (8.3) [性質 1]ボード線図は対数で記述する 伝達関数は各々の積になることから,G1(jω)G2(jω)のかけ算形になる がそのままでは演算が難しい。そこで,対数 [dB](デシベル)で表現す るとそれぞれの和となり,[dB] 表現したそれぞれの数値を加算すること で簡単に「合成」できる。これは,1 番目の対数法則より明らかである。 ゲイン線図 [dB] 20 log10|G(jω)| = 20 log10|G1(jω)G2(jω)| (8.4) = 20 log10|G1(jω)| + 20 log10|G2(jω)| (8.5) 位相線図 [deg] ̸ G(jω) = ̸ G1(jω) +̸ G2(jω) (8.6) なお,角度は [deg] のまま加算すればよい。

(59)

[性質 2]G(s), 1 G(s)の関係は ω 軸対称になる 微分と積分のように,G(s), 1 G(s)の関係はどのようになるだろうか? いま, 1 G1(jω) の値が次式で表されるとする。 G(jω) = 1 G1(jω) (8.7) ゲイン線図 20 log10|G(jω)| = −20 log10|G1(jω)| (8.8) 位相線図 ̸ G(jω) = −̸ G1(jω) (8.9) 1 G1(jω) のボード線図は G1(jω)ω軸対称となる。これは,2番目の 対数法則より明らかである。

8.3

デシベルとは

ボード線図で使用するデシベルという単位を説明する。信号を信号の振 幅比あるいは電力比で表す。 20 log10|G(jω)| = 10 log10|G(jω)|2 (8.10) 信号の振幅で 1V → 100V で 40dB(デシベル) 上昇する。 |G(jω)| dB 表示 0.1  -20 1 2  -3

(60)

前述の [性質 1] では対数が都合がよいということを説明した。たとえば 海底ケーブルが2個で信号を増幅しているとする。

|G(jω)| = |G1(jω)||G2(jω)| (8.11)

これが,普通の演算である。一方,一個ずつ利得を加算する方法が下記 である。

20 log10|G(jω)| = 20 log10|G1(jω)| + 20 log10|G2(jω)|

(8.12) もしどこかの海底アンプを置き換える場合は,(掛け算を再計算せずに), 追加した機器のゲイン|Gi(jω)| だけ加算するか,入れ替えた場合は装置 の差分|∆Gi(jω)| だけ加算すればよいので便利である。 ■参考:音量のデシベルのついて: 基準となる音圧は通常の人の耳に聞こえる最小音 (2× 10−5[N/m2])と比 較してどの程度大きいという表現になる。身近な例を示す。 120 dB  飛行機のエンジンの近く 110 dB  自動車の警笛(前方 2m)・リベット打ち 100 dB  電車が通るときのガードの下 90 dB  騒々しい工場の中・カラオケ(店内客席中央) 80 dB  地下鉄の車内・電車の車内 70 dB  ステレオ(正面 1m、夜間)・騒々しい事務所の中・騒々しい街頭 60 dB  静かな乗用車・普通の会話 50 dB  静かな事務所・クーラー(屋外機、始動時) 40 dB  市内の深夜・図書館・静かな住宅の昼 30 dB  郊外の深夜・ささやき声 20 dB  木の葉のふれあう音・置時計の秒針の音(前方 1m) 大学の授業は 50dB 強と思われる。しかし例えば,騒音が 57[dB] と 60[dB] で 3[dB] しか違わないが信号レベルで 1.4 倍違う。

図 1.1: ラプラス変換による微分方程式の解法のイメージ 1.2 伝達関数とブロック図 すべての初期値を 0 とした場合の入力信号のラプラス変換と出力信号 のラプラス変換の比を「伝達関数」といい次式が成り立つ。 L [出力信号] = 伝達関数 G × L [入力信号] (1.2) また,このように伝達関数が一定の比で記述できることから,要素の接 続が簡単な積で記述できることになる。 伝達関数の特徴は次の3つである。 (1) 入出力に依存しない (2) 固有の性質を表している (3) 接続関係の処理が容易
図 2.1: フィードバック系 となる。ただし,s 1 ∼ s n は,特性方程式 1 + G(s)H(s) = 0 の根である。 伝達関数 (2.1) の分母多項式を零とする方程式を特性方程式と呼び,その 解を極と呼ぶ。 上式のラプラス逆変換を求めると時間応答 y(t) は y(t) = K 1 e s 1 t + K 2 e s 2 t + · · · + K n e s n t + K + e s i t + K − e s ¯ i t (2.3) となる。特性多項式の解が複素根の場合,そのひとつを
図 2.3 に極,零点の配置とそのインディシャル応答を示す。なお,図中 の ◦ が極,× が零点である。 1.0 I t0Rp1 1.0I tp/z0Rz1p1 t1.0p/z0Iz1p1Rt 図 2.3: 極,零点の配置とそのインディシャル応答 (その1: 1 次系の場合) 例えば,零点が1個の1次系の場合, Y (s) = p 1 z 1 s + z 1s+p1 1s = K 0s + K 1s+ p 1 (2.14) K 0 = p 1 z 1 [ (s + z 1 ) s(s+p1)  s ] s=
図 6.9: 代表的ベクトル線図 (1)
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参照

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