• 検索結果がありません。

不確実性を伴う離散事象システムの制御

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "不確実性を伴う離散事象システムの制御"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

不確実性を伴う離散事象システムの制御

[研究代表者]小野木克明(情報科学部情報科学科)

[共同研究者]兼重 明宏(豊田工業高等専門学校)

橋爪 進(奈良工業高等専門学校)

研究成果の概要 ‘ものや情報の流れ’の制御が中心となるシステムの動作は,離散事象システムとしてとらえることができる.離 散事象システムの制御の難しい点は,同時進行的に,非決定的に発生する複数の事象を互いに関連付けながら適切に 制御することにある.一方,現実のシステムにおいては,その特性やそれを取り巻く環境が頻繁に変化することも多 い.したがって,そこでは予期せぬ不確実性の発生にも即応できることが重要となる.本研究は,不確実性を伴う離 散事象システムを対象に,ものや情報の安定で円滑な流れを実現するための制御手法の開発をめざすものである.

この目的を達成するため,本研究では,Bayesian network モデルおよび Petri net モデルのもとで,観測された状 態から不確実性を検出し,それがシステムの動作・性能に及ぼす影響を推定しながら,新たな制御則を生成する手法 を開発した.そして,開発した手法の有用性・課題を明らかにした.

研究分野:システム工学

キーワード:離散事象システム,不確実性,Petri net,Bayesian network

1.研究開始当初の背景 ‘ものや情報の流れ’の制御が中心となる生産・物流 システム,情報ネットワーク,道路交通網など多くのシ ステムの動作は,離散事象システムとしてとらえること ができる.離散事象システムの制御の難しい点は,同時 進行的に,非決定的に発生する複数の事象を互いに関連 付けながら適切に制御することにある.したがって,そ こでは事象の発生に関する因果関係を記述したモデル が必要となる.著者らはこれまでに,そのモデルにPetri net を用い,目標動作が仕様として与えられたとき,そ れを実現するための制御問題を定式化し,その解法を明 らかにしてきた.あわせて,離散事象システムのための 制御器構築支援ツールを開発してきた. 一方,現実のシステムにおいては,システム自体の特 性やそれを取り巻く環境の突然の変化がもたらす不確 実性に適切に対応していくことが重要となる.このため には,システムの内外に潜在する種々の不確実性の発生 を予測し,それらがシステムの動作・性能に及ぼす影響 を見積もることが必要となる.これによって,予期せぬ 変化に即応しながら,ものや情報の安定で円滑な流れが 実現できることが期待される.このことは,システムの 異常の検出・診断にも相通じるものである.本研究はこ のような背景のもとで計画され実施された. 2.研究の目的 本研究は,不確実性を伴う離散事象システムを対象に, 観測されたシステムの状態をもとに不確実性を検出し, それがシステムの動作・性能に及ぼす影響を推定しなが ら,安定で円滑な‘ものや情報の流れ’を実現するため の制御手法の開発を目的とするものである. 3.研究の方法 本研究では,不確実性を伴う離散事象システムを対象 に,図1 に示すような 2 つの段階; (1) 不確実性の検証, (2) 制御則の設計 から構成される制御手法を考えた.これを実現するにあ 133

(2)

たっては,(1)と(2)が可能となるモデルが不可欠となる. (1) 不確実性の検証 システムを運用する際,そこで発生するすべての不確 実性を予め知ることは不可能である.したがって,現実 には,システムの状態を観測しながら,不確実性の発生 を予測し判断しなければならない.(1)で求められるモ デルにはこのような能力が備わっていることが不可欠 である.そのため,本研究では,これまでの著者らの研 究をもとに1),そのモデルとして図2 に示すような不確 実性を入力に,それが影響すると考えられるシステム動 作 ・ 性 能 変 化 を 出 力 に も つ 確 率 モ デ ル と し て の Bayesian network を採用することとした.これによっ て,発生したと考えられる不確実性候補は観測された状 態から逆向き探索することによって特定され,それがシ ステム動作・性能に及ぼす影響は前向き探索することに よって推定される. (2) 制御則の設計 (1)で検証された不確実性をもとに,これに即応でき る制御則を定めるためには,(1)の確率モデルとは異な る確定モデルが必要となる.本研究では,このモデルと して,Petri net を採用す ることとした.そこでは, 著者らのこれまでの研 究成果を活用し 2)(1) で推定されたシステム 動作・性能から導出され た制御仕様を実現する ための制御器モデルが構成される. 4.研究成果 簡略化された素材製造システムモデルおよび図 3 に 示す実験室規模の立体倉庫システム(豊田高専設置)を 対象に,3 章で提案した制御手法の有用性を検討した. その結果と課題は次のようである. 結果: ① 提案手法の成否は確率モデルの精度に大きく依存 する.精緻な確率モデルを作成するためには,不確 実性の感度解析等の前処理が必要である. ② 事象間の因果関係がある程度明確な不確実性につ いては,提案手法は有用である. 課題: ① システムの分割・階層化等による確率モデルの規模 の縮小が必要である. ② (1)で得たシステム動作・性能から,(2)に必要な制 御仕様の合理的な生成手法の開発が必要である. なお,本研究の成果の一部を使って,新たな生体情報制 御システムに関する研究を現在進めている3). 参考文献 1) 矢嶌智之,添田幸宏,橋爪悟,橋爪進,小野木克明, “不確実性を含む動的システムのモデリングと意思決 定支援”,化学工学論文集,Vol.41,pp.374-380 (2015) 2) S.Hashizume, S.Hashizume, T. Yajima, K.Onogi,

”Construction of Batch Process System Model for Fault Analysis”, J. of Chemical Engineering of Japan, Vol.49, pp.689-697 (2016) 3) 兼重明宏,渡邉泰成,上木諭,白井香名,蓮⾒渓太, 小野木克明,澤田耕二,“自動車車内空調システムに 対する搭乗者生体情報の取得”,日本機械学会ロボテ ィクス・メカトロニクス講演会2019,広島 (2019) 図1 制御システムの実現手順 システム動作・性能の推定 不確実性の検出 制御器の構築 制御仕様の作成 (1) 不確実性の検証 (2) 制御則の設計 Im1 Im2 1 A , Y1  t N 1 A , Y1r  t N 1 A , Y2  t N 1 A , Y4  t N 1 B , Y1  t N 1 B , Y3  t N 1 B , Y4  t N t NY1,A t QM2,B t QM1,A t QM2,Ar t NY1,A t NY1,Ar t NY2,A t NY4,A t NY1,B t NY3,B t NY4,B t NY1 t NY4 (beginning) t NY1,B (beginning) Processing rate of M1 Batch size of M3 t SAr Ft 2 Y t RA t JY1 t JY2 t JY4 図2 不確実性検証のための確率ネットワークモデル 図3 立体倉庫 134

参照

関連したドキュメント

1.4.2 流れの条件を変えるもの

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

本制度は、住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営の確保及び消費者への情報提供

題が検出されると、トラブルシューティングを開始するために必要なシステム状態の情報が Dell に送 信されます。SupportAssist は、 Windows

の総体と言える。事例の客観的な情報とは、事例に関わる人の感性によって多様な色付けが行われ

「系統情報の公開」に関する留意事項

システムの許容範囲を超えた気海象 許容範囲内外の判定システム システムの不具合による自動運航の継続不可 システムの予備の搭載 船陸間通信の信頼性低下

何人も、その日常生活に伴う揮発性有機 化合物の大気中への排出又は飛散を抑制