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治療戦略と戦術を中心とした症例報告 巨大下垂体腺腫に対する治療戦略と治療の実際 臨床所見, 画像評価症例 cm 45 kg 主訴 既往歴 現病歴 5 MRI 神経学的所見 0.05 画像所見 MRI T1 Fig. 1 CT Q1 臨床所見 画像から何を考えるか? A B Rt Fig

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Academic year: 2021

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(1)

巨大下垂体腺腫に対する治療戦略と治療の実際

西村 文彦,中瀬 裕之,朴 永銖,本山 靖,中川 一郎,横田 浩,山田 修一,

田村 健太郎,松田 良介,竹島 靖浩,高村 慶旭

奈良県立医科大学脳神経外科 ■臨床所見,画像評価 症 例:54 歳,女性,右利き,身長 158 cm,体重 45 kg. 主 訴:てんかん発作,視野障害. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:5 分間程度の全身痙攣で発症し近医救急搬送となった.脳 MRI で大きな腫瘍性病変を認め当科紹介となっ た. 神経学的所見:左同名半盲を認めた.視力は 0.05 と低下.眼底うっ血乳頭は認めず.その他の脳神経麻痺は認め ず.採血ではホルモン基礎値に明らかな異常を認めず. 画像所見:脳 MRI の造影 T1 強調画像では,腫瘍は比較的均一に造影され,局在としては下垂体部を含め,下方は 蝶形骨洞全体を占拠し,上方は右大脳基底核部まで発育し右側脳室前角が圧排されていた.そして腫瘍は右海綿静 脈洞内の右内頚動脈を巻き込んでおり,右中頭蓋窩まで発育していた(Fig. 1).頭部 CT では,特に腫瘍に石灰化 は認めなかったが,トルコ鞍部の拡大や骨融解像,および右蝶形骨縁部の骨融解像が認められた.

Q1

 臨床所見・画像から何を考えるか?

Fig. 1 Preoperative MRI

 MRI with Gd revealed a giant parasellar tumor expanding to the sphenoid sinus, right basal ganglia, right cavernous sinus and right middle fossa. The tumor also involved the right internal carotid artery.

A :Coronal image.

B :Sagittal image.

A

Rt

(2)

A1

 鑑別診断としては,髄膜腫,三叉神経 腫なども挙が るが,トルコ鞍部の拡大や骨融解像があり,蝶形骨洞内 にまで腫瘍が充満しており,下垂体腺腫が第一に考えら れた.症状として,特に右顔面の違和感や知覚異常がな かったことからも三叉神経 腫は鑑別診断の中ではやや 可能性の低い疾患と考えられた.

Q2

治療戦略,戦術の選択をどう考えるか

A2

治療戦略のポイント

 画像評価からは,巨大下垂体腺腫か,あるいは髄膜腫 といった他の疾患も考慮しておかなければならない.ア プローチの選択を考慮するうえで,腫瘍の固さが問題に なってくる.本症例では術前 MRI 画像からは,多数の囊 胞を伴っており,T2 強調像では,比較的腫瘍実質成分が 高信号を呈していたので比較的柔らかい腫瘍の可能性が 高いのではないかと考えていた.もし固い腫瘍が予想さ れた場合は,やはり開頭アプローチが優先的に考えられ るべきであるが,柔らかい腫瘍が予想された本症例の場 合は,開頭と経鼻的アプローチいずれも選択肢として考 慮可能であった.  次に,腫瘍局在に関しては,腫瘍は右内頚動脈を完全 に巻き込んでおり,右中頭蓋窩にまで発育しており,経 鼻的なアプローチだけでは腫瘍外側部分の摘出の限界が ある.腫瘍外側部分に対して開頭も必要となるが,問題 は,同時に摘出を行うか,二期的に摘出を行うか,また 二期的の場合に,開頭,経鼻のどちらから優先して摘出 するか意見の分かれるところである.残存腫瘍からの後 出血を避ける観点からは同時アプローチが理想的である が,手術侵襲が大きくなること,開頭と経鼻お互いの術 者が相手に対して遠慮した体位となること,髄膜炎脳炎 の合併症のリスクなどが挙げられる.  2 期的な手術を計画する場合,開頭術に関しては,利 点としては,蝶形骨洞や海綿静脈洞部以外のかなりの部 分の腫瘍を摘出でき,術後残存腫瘍から出血が生じたと

Fig. 2 Endoscopic endonasal surgical view with a navigation image and histopathology

A :Neuronavigation indicated the tumor location.

B :The tumor was exposed after removal of the anterior wall of sphenoid sinus.

C :Optic chiasma was exposed and decompressed after removal of the tumor.

D :Histopathology was diagnosed as sinusoid type of adenoma. Magnification was ×200 with H & E stain.

A B

C D

×200 ×200

(3)

Fig. 3 Postoperative MRI after endoscopic endonasal surgery  Postoperative MRI with Gd after endoscopic endonasal surgery which showed decompression of optic apparatus and there was residual tumor in the right cavenous sinus and middle fossa.

A :Coronal image. B :Sagittal image.

A

Rt

B

Fig. 4 Intraoperative pictures with right orbito zygomatic approach A :The patient was positioned with supine, and the head was rotated with 30 degree to the left side.

B : The tumor removal was started from the space between the right optic nerve and right internal carotid artery. C :The tumor debulking was performed with ultrasound aspirator.

D :The tumor was carefully dissected from the right middle cerebral artery to preserve perforating artery.

A B

(4)

しても腫瘍の下方成分のみで致死的とはなりにくい.一 方,開頭術の欠点としては,視交叉をまたぐ操作となり 視機能が悪化する可能性がある.経鼻的アプローチに関 しては,利点としては,蝶形骨洞内や傍鞍部正中病変を 摘出でき視交叉をまたがなくてよいが,欠点としては, 上方や外側成分の残存腫瘍から術後出血を起こす危険性 が挙げられる.

実際の治療経過とまとめ

 実際には,まずは,経鼻的にアプローチして,腫瘍の 固さや出血の程度,病理診断の情報を得てから後日開頭 で摘出する方針とした.なお経鼻手術の際,術前摘出範 囲の計画としては,側方は内頚動脈よりも内側まで,上 方は,残存腫瘍からの出血で視機能が悪化しないよう, 理想的には腫瘍の頂上まで,あるいは視交叉の下面まで は腫瘍摘出するつもりで手術に臨んだ.この摘出範囲の 計画であれば,仮に内頚動脈よりも外側の腫瘍から後出 血を起こしても critical な状況にはならないと想定した. 術中 navigation を併用し,また運動誘発電位(MEP),視 覚誘発電位(VEP),眼球運動モニタリングとして free run EMGの神経モニタリングを行いながら経鼻的内視 鏡下腫瘍摘出術を行った(Fig. 2A∼C).腫瘍は比較的柔 らかく,易出血性であった.蝶形骨洞内(Fig. 2B),ト ルコ鞍内,さらに,右海綿静脈洞部内側,鞍上部にある 腫瘍を摘出していった.最終的には,視交叉の下面を確 認し(Fig. 2C),止血を十分に確認して,多層性の髄液漏 修復術(筋膜を in lay に敷きこみ,脂肪を充塡し鞍底形 成を行ってから有茎鼻粘膜弁を作成して鞍底を覆い,サ イナスバルーンを留置)を行った.病理診断は非機能性 下垂体腺腫であった(Fig. 2D).  幸い術後出血は起こらなかったが,右動眼神経麻痺が 生じた.視機能の悪化は生じなかった.  経鼻的手術から約 1 カ月後に,右内頚動脈よりも外側

に残存した腫瘍(Fig. 3)に対して orbito zygomatic

approachで開頭腫瘍摘出術を行った(Fig. 4).右海綿静

Fig. 5  Postoperative MRI of coronal section

one month after transcranial surgery

 The tumor around the right basal ganglia and a part of right middle fossa was removed, but the tumor in the right cavernous sinus was intention-ally preserved. The residual tumor was stereotacti-cally irradiated at the total dose of 50 Gy with 25 fractions after the two operations.

Rt

Fig. 6  Postoperative MRI 6 months after stereotactic radiation

ther-apy

 The tumor shrinkage was well kept on the postoperative MRI 6 months after stereotactic radiation therapy.

A :Coronal image. B :Sagittal image.

A

Rt

(5)

脈洞部の腫瘍は残存させたので,これに対しては,後日 ノバリス照射(定位分割照射:50 Gy/25 fr)を行った(Fig.5).術後,意識清明で手足の運動麻痺なく,左同名半盲 は術前と比べて変化なかった.右動眼神経麻痺は後遺し た.術後 6 カ月後の MRI では腫瘍の縮小維持を確認した (Fig. 6).

考 察

 巨大下垂体腺腫に対する治療戦略は,後出血を起こさ ないようにいかに腫瘍を残さないで摘出するかというこ とが重要である.合併症を回避するために手術アプロー チの選択は術前に十分検討する必要がある5).開頭術と 経鼻術の組み合わせで,一期的に同時に摘出する方法 は,互いのアプローチの欠点を補うことができ,また, 可能なかぎり腫瘍を残存させない方法として有用であ る1)8)11)が,手術侵襲が大きくなる欠点もある.近年は, 巨大下垂体線腺に対して経鼻側は内視鏡を用い,開頭側 は,顕微鏡あるいは内視鏡を用いて同時にアプローチす る方法が増えてきている9)  二期的に摘出する方法として,開頭術から施行する か,経鼻術から施行するかは腫瘍の局在や固さによって 検討が必要であるが,通常下垂体腺腫でトルコ鞍が拡大 していて,鞍隔膜にくびれもあまりなく,鞍上部の腫瘍 が極端に大きくなければ,経鼻術で適宜拡大 transsphe-noidal surgeryを取り入れたりして摘出することが多い と考えられる2)∼4).経鼻術の限界としては,内頚動脈よ りも外側で中頭蓋窩に発育するタイプの腫瘍の場合は, やはり開頭術を追加する必要がある.また海綿静脈洞部 の腫瘍に関しては,無理に摘出せずに残存させて,放射 線治療を後日追加する方法が考えられる.  ピッツバーグ大学からの報告7)では,巨大下垂体腺腫 に対する経鼻内視鏡手術での,摘出の限界因子として は,multilobular configuration であることと,先ほど述べ た中頭蓋窩に発育する腫瘍であることが挙げられ,やは り開頭術が必要になると報告されている.今回の症例 も,中頭蓋窩に腫瘍が発育しており,開頭術が必要で あった.手術侵襲を大きくしたくなかったので,当科で は経鼻術でまず正中部分の腫瘍を摘出して,後日計画的 に開頭術で摘出する方針とした.確実に後出血を避ける 意味では,本症例に対しても開頭経鼻同時手術アプロー チも治療選択肢としては,十分にあり得ると考えられる.  今回経鼻術で動眼神経麻痺が出現してしまったことが 反省点である.Free run EMG での眼球運動モニタリン

グを行っていた6)が,MEP,VEP と複数のモニタリング を行っていたため,警告波形が出ていたにもかかわらず 術者への feedback がうまく伝わっていなかったことが問 題となった.このため,これ以降の症例では,free run EMGの波形が出るときに音も出るようにして情報を共 有するようにし,かつ,術野からもプローベを用いて, trigger EMGを行い10),動眼神経や外転神経の走行を同 定して,合併症を回避する対策を立てて手術を施行して いる. 利益相反に関して  著者全員は日本脳神経外科学会への COI自己申告を完了し ています.本論文の発表に関して開示すべき COI はありませ ん. 文 献

1) Alleyne CH Jr, Barrow DL, Oyesiku NM:Combined transsphenoidal and pterional craniotomy approach to giant pituitary tumors. Surg Neurol 57:380 390, 2002. 2) Cappabianca P, Cavallo LM, Esposito F, De Divitiis O,

Messina A, De Divitiis E:Extended endoscopic endona-sal approach to the midline skull base:the evolving role of transsphenoidal surgery. Adv Tech Stand Neuro-surg 33:151 199, 2008.

3) Couldwell WT, Weiss MH, Rabb C, Liu JK, Apfelbaum RI, Fukushima T:Variations on the standard transs-phenoidal approach to the sellar region, with emphasis on the extended approaches and parasellar appro- aches:Surgical experience in 105 cases. Neurosurgery  55:539 550, 2004.

4) Dehdashti AR, Ganna A, Witterick I, Gentili F: Expanded endoscopic endonasal approach for anterior cranial base and suprasellar lesions:indications and limitations. Neurosurgery 64:677 689, 2009.

5) de Paiva Neto MA, Vandergrift A, Fatemi N, Gorgulho AA, Desalles AA, Cohan P, Wang C, Swerdloff R, Kelly DF:Endonasal transsphenoidal surgery and multimo-dality treatment for giant pituitary adenomas. Clin Endocrinol(Oxf) 72:512 519, 2010.

6) Kawamata T, Ishii N, Amano K, Namioka T, Hori T, Okada Y:A novel simple real time electrooculographic monitoring system during transsphenoidal surgeries to prevent postoperative extraocular motor nerve dys-function. Neurosurg Rev 36:371 376, 2013.

7) Koutourousiou M, Gardner PA, Fernandez Miranda JC, Paluzzi A, Wang EW, Snyderman CH:Endoscopic endonasal surgery for giant pituitary adenomas: advantages and limitations. J Neurosurg 118:621 631, 2013.

8) Loyo M, Kleriga E, Mateos H, de Leo R, Delgado A: Combined supra infrasellar approach for large pituitary tumors. Neurosurgery 14:485 488, 1984.

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10) Shkarubo AN, Chernov IV, Ogurtsova AA, Moshchev DA, Lubnin AJ, Andreev DN, Koval

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KV:Neurophysio-logical identification of cranial nerves during endo-scopic endonasal surgery of skull base tumors:pilot study technical report. World Neurosurg 98:230 238,

2017. 11) 山田正三,福原紀章,大山健一:非機能性下垂体腺腫の 複合治療.脳外誌 19:658 665,2010.

治療戦略と戦術を中心とした症例報告

脳外誌 27 巻 2 号 2018 年 2 月 144 Editorial Comment  巨大下垂体腺腫は,その定義にもよるがおおよそ 下垂体腺腫の 10%前後とされている.トルコ鞍近傍 に存在する重要構造物をしばしば巻き込み,手術に より重篤な合併症を起こしやすい.また,術後の残 存腫瘍からの後出血を起こしやすく,それによる機 能予後,生命予後に対する影響も大きい.文献によ り幅があるが,死亡率は 5~20%程度とされている. このような巨大下垂体腺腫の手術戦略は,著者など も述べているように,「後出血を起こさないように いかに腫瘍を残さないで摘出するか」が重要である. かつては,鞍上部に大きく進展した腫瘍に対する経 蝶形骨洞アプローチが避けられていた時代もある が,内視鏡手術のための手術機器の開発や拡大経蝶 形骨洞手術アプローチの普及により摘出率が向上 し,巨大下垂体腺腫といえども経蝶形骨洞的内視鏡 手術が選択されるようになっている.ただし,本論 文で筆者らが報告しているごとく,多くの場合,単 一方向からのアプローチのみで満足のいく摘出を行 うことは困難な場合も多く,開頭術との組み合わせ が必要なる.  下垂体腺腫の治療において,若い世代の術者は内 視鏡手術を主体に研鑽を積むことがますます多くな ると思われ,困難な症例の治療経験も豊富な high volume centerを除くと,開頭術も含めた顕微鏡手術 については,行うだけでなく目にする機会も少なく なる可能性もある.実際に治療戦略を考える際に, 知識や経験の乏しいものを治療の選択肢に加えるこ とはしばしば困難である.本論文は,そういった意 味においても,巨大下垂体腺腫の治療戦略をたてる にあたり,手術合併症発生のリスクをいかにコント ロールするかという点について詳細な考え方を stepwiseに解説しており,読者に多くの示唆を与え るものと思われる.

巨大下垂体腺腫の内視鏡手術

山形大学医学部総合医学教育センター 

佐藤慎哉

Fig. 2 Endoscopic endonasal surgical view with a navigation image and histopathology  A  :Neuronavigation indicated the tumor location.
Fig. 4 Intraoperative pictures with right orbito zygomatic approach  A  :The patient was positioned with supine, and the head was rotated with 30 degree to the left side.
Fig. 6  Postoperative MRI 6 months after stereotactic radiation ther- ther- The tumor shrinkage was well kept on the postoperative MRI 6 months after apy stereotactic radiation therapy.

参照

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