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暑中環境で施工される構造体コンクリートの品質管理に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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暑中環境で施工される構造体コンクリートの品質管理に関する研究

-柱および床スラブコンクリートからの検討- 中島 草太 1. はじめに 暑中環境下で製造・打設されるコンクリートは、外 気温や日射の影響、さらには水和反応による発熱によ り内部温度が高くなる。その結果、凝結時間が早くな り、コンクリート上面のブリーディング水の消失の時 期も早くなる。さらに、スランプロスの増大や初期ひ び割れの発生、耐久性の低下など、様々なわるさを生 じる。その中でも、構造体強度が管理用供試体より小 さくなるという傾向は、構造体と比較して、かなり小 型である管理用供試体によって強度を管理することを 困難にしている。本研究では、暑中期における、この ような傾向の要因を明らかにするために、実大の柱試 験体および床スラブ試験体を作成し、検討を行った。 2. 実験概要 先の目的のために、実際の構造体を模擬して、柱試 験体は寸法を幅 1m×奥行 1m×高さ 1m とし、上下面 には厚さ 20cm の発砲スチロール断熱材を施した。打 設から養生終了までは側面4 面がせき板と直接接する ことになる。床スラブ試験体は、幅 0.8m×奥行 0.8m ×高さ 0.2m とした。こちらも側面 4 面にせき板を設 置した。せき板には通常の工事と同様に化粧合板を用 いている。また、構造体強度管理用試験体として、簡 易型枠を用いたφ10cm×h20cm の円柱供試体を作成 した。暑中期において、柱試験体の荷卸し目標温度は 35℃、38℃(以下 N35、N38)とし、さらに、表面から の乾燥による構造体強度への影響を検討するために、 表 1 床スラブ試験体の養生方法 それぞれにせき板を材齢 7 日で脱型する試験体と脱型 を行わない試験体を作成した。また、床スラブ試験体 は荷卸し目標温度を 35℃とし、底板を材齢 28 日で脱 型し、側面のせき板は脱型を行わず存置した。標準期 における荷卸し目標温度は柱および床スラブ試験体と もに 20℃とした。さらに、床スラブ試験体において、 養生による諸性状の違いを検討するために、表1に示 す養生を暑中期、標準期いずれでも、実大試験体およ び管理用供試体で行った。柱および床試験体に使用し たコンクリートの種類は、普通 27-18-20 とし、調合お よび使用材料はいずれも福岡地域で一般的に用いられ る範囲のものとした。 図 1、2 に柱および床スラブ試験体を示す。図の位置 において材齢 7 日までの温度および材齢 91 日までの 含水率の測定を行い、所定の材齢において、それぞれ の実大試験体の図に示す位置から抜いたコアと管理用 養生方法 開始時期 期間 ・養生無し 給水 ・打設直後 ・ブリーディング水消失直後 ・同 1 時間後 ・同 2 時間後 ・同 4 時間後 ・材齢 24 時間後 5 日 散水後シート ・材齢 24 時間後 図 1 柱試験体 図 2 床スラブ試験体

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54-2 供試体の強度試験 を行った。また、そ の他にも結合水率、 ポロシティなどの 測定をそれぞれ行 った。 3. 実験結果 および考察 3-1. 柱試験体 図 3 に試験体内 部の温度の経時変 化を示す。暑中期の 試験体はともに中 心部の最高温度は 80℃程度まで上昇 し、最高温度に達す る時間もほぼ同じ である。また、中心 部と表面部の最高 温 度 の 温 度 差 は 20℃程度となった。 標準期においては、中心部の最高温度は 60℃程度であ り、暑中期に比べて 20℃程度低い。また、最高温度に 達する時間も異なっており、暑中期において、初期の 硬化過程における急速な高温への温度上昇による強度 等への影響が懸念される。さらに、暑中期の表面部と 標準期の中心部の最高温度が同程度である。全ての試 験体において、中心部での最高温度は 40℃程度上昇し ており、特に標準期において顕著なように、いずれの 試験体も表面に近づくに従い外気温の変動に影響を受 け、温度上昇の幅も小さくなっている。 図 4 に、管理用供試体の強度発現性状を示す。なお 図中には柱試験体から抜き取ったコアの強度も併記し ている。コア強度の値は、暑中期のいずれの試験体に おいても、管理用供試体のうち現場気中養生の試験体 と同程度または低い値であり、材齢に伴う強度増進も 小さい。この傾向は内部に比べて表面の方が顕著であ り、構造体強度補正値 S 値(28S91)は 6N/mm2を超え る結果となった。その中で、特に N38 のコア強度の多 くがこの値を上回っていた。一方、標準期の試験体に おいては、コア強度が現場気中養生の供試体強度より も高くなっている。すなわち、暑中期に打設されたコ ンクリートは構造体強度の低下が生じ、長期材齢にお ける強度増進も鈍化する。 次に、図 5 に暑中期におけるコアの結合水率、ポロ シティと圧縮強度の関係を示す。管理用供試体におい ては、結合水率が高くなれば、強度が高いという相関 があることが分かる。しかし、コアにおいては、現場 気中養生の供試体よりも結合水率が高いにも関わらず、 強度が低い結果となっている。これはポロシティと強 度の関係から、細孔量が多いためと分かる。すなわち、 暑中期の構造体では、水和反応が進んだとしても、粗 雑な硬化組織を生成していると考えられる。 先に述べた、暑中期のコア強度の強度低下を引き起 こす、粗雑な硬化体組織の生成の要因として、二つが 挙げられる。一つがコンクリート内部の高温化、次に 表面からの乾燥・水分の逸散である。まず、図 6 に示 すように、脱型を行わなかった試験体の高温となるコ 25 30 35 40 45 50 0 2 4 6 8 10 12 N35_標水1 N35_標水2 N35_現水 N35_現封 N35_気中 コア表面 コア内部 コア表面(無脱型) コア内部(無脱型) )暑中期・N35・2013 細孔直径50nm以上の細孔量(%) 圧 縮 強 度   (N /mm 2) 図 5 結合水率、ポロシティと圧縮強度 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 0 1 2 3 4 5 6 7 中心側 表面側 外気温 温         度   ( ℃ ) 材    齢 (日) c)2013標準期・N20・柱(脱型7日) 図 3 柱試験体の内部温度の経時変化 0 10 20 30 40 50 0 20 40 60 80 100 N20_標水2 N20_標水1 N20_現水 N20_現封 N20_気中 コア表面 コア内部 材齢(日) 圧 縮 強 度  ( N /mm 2) c)標準期・N20・2013 内部 表面 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 0 1 2 3 4 5 6 7 中心側 表面側 外気温 温         度   ( ℃ ) 材    齢 (日) b)2013暑中期・N38・柱(脱型7日) 0 10 20 30 40 50 0 20 40 60 80 100 N38_標水1 N38_標水2 N38_現水 N38_現封 N38_気中 コア表面 コア内部 材齢(日) 圧 縮 強 度   (N /mm 2) b)暑中期・N38・2013 内部 表面 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 0 1 2 3 4 5 6 7 中心側 表面側 外気温 温         度   ( ℃ ) 材    齢 (日) a)2013暑中期・N35・柱(脱型7日) 0 10 20 30 40 50 0 20 40 60 80 100 N35_標水1 N35_標水2 N35_現水 N35_現封 N35_気中 コア表面 コア内部 材齢(日) 内部 圧 縮 強 度  ( N /mm 2) a)暑中期・N35・2013 表面 図 4 柱試験体の強度発現性状 20 25 30 35 40 45 50 8 9 10 11 12 13 14 N35_標水1 N35_標水2 N35_現水 N35_現封 N35_気中 コア表面 コア内部 コア表面(無脱型) コア内部(無脱型) )暑中期・N35・2013 結合水率(%) 圧 縮 強 度   (N /mm 2)

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54-3 ンクリート内部における強度が、比較的に温度が高温 とならない表面部よりも低い値となっている。これは、 高温による急速な水和反応により、硬化過程初期に粗 雑な硬化体組織を生成し、さらに、長期における水和 反応を阻害しているためと考えられる。次に、図 7 に 示すように、脱型を行った試験体の表面から100mm は 脱型以降に含水率が低下しており、材齢に伴い、内部 と比べて、乾燥していることが窺える。この表面から の乾燥・水分の逸散により、図 8 のように、内部コア に比べて表面コアの強度が低くなっていると考えられ る。すなわち、脱型後の表面からの水分の 逸散により水和反応に必要となる水分が不 足し、水和が促進されず、強度低下を招く ということである。 図 9 に脱型の有無による表面のコア強度 への影響を示す。暑中期において、N35、N38 いずれの試験体も脱型を行わなかった試験 体の表面のコア強度が高い結果となってお り、このことからも表面からの乾燥・水分 の逸散が強度の低下を招く要因の一つであ ることが分かる。さらに、可能な限り型枠 を存置することにより、表面部における強 度低下を多少防止できると考えられる。 3-2. 床スラブ試験体 図 10 に試験体内部の温度の経時変化を 示す。暑中期には、最高位温度が 50℃程度 となっているが、柱試験体と比べて低く、 中心部と表面部の温度差も小さい。また、 試験体の外気の影響により、内部温度が大 きく変動している。標準期では、中心部の 最高温度が 30℃程度で、打設後の温度上昇 量が小さい。 図 11 に床スラブ試験体の材齢 13 週におけるコアの 圧縮強度を養生別に示す。暑中期において、コア強度 は無養生の試験体が最も低く、次に 24 時間後散水し シート養生したもの、24 時間後に給水を始めたものと いう順番となっている。その他の養生の試験体のコア 強度は互いの差が小さく、一般的にあまり良くないと されている打設直後に給水を始める試験体のコア強度 はあまり低下していない。つまり、打設後 24 時間に給 水を行わなかった試験体のコア強度が低い結果となっ た。図は省略するが、標準期におけるコア強度も暑中 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 20 40 60 80 100 コア表面 コア表面(無脱型) コア表面 コア表面(無脱型) 材齢(日) 圧 縮 強 度  ( N /mm 2) )暑中期・N35 N38コア・2013 N38 N35 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 20 40 60 80 100 コア表面 コア内部 コア表面 コア内部 材齢(日) 圧 縮 強 度  ( N /mm 2) )暑中期・N35 N38コア・2013 N38 N35 図 6 最高温度と圧縮強度 図 7 含水率分布 25 30 35 50 55 60 65 70 75 80 圧 縮 強 度   ( N / mm 2) )最高温度・コア強度_N35 最高温度(℃) 表面 中心 脱型なし 0 1 2 3 4 5 6 7 8 0 10 20 30 40 50 暑中期 1日 5日 7日 15日 21日 28日 56日 91日 含 水 率 ( % ) 表面からの距離(㎝) 材齢 黒塗りは養生中 図 8 内部と表面のコア強度 図 9 脱型の有無と強度 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 0 1 2 3 4 5 6 7 床 上 床 上中 床 中 床 下中 床 下 気温 温         度   ( ℃ ) 材    齢 (日) )2013暑中期・N20・床 0 10 20 30 40 50 打設 直 後給 水 B. W消 失 直 後給 水 B. W消 失 1h 後 給 水 B. W消 失 2h 後 給 水 B. W消 失 4h 後 給 水 打 設 24 h後 給 水 打 設24 h後 シ ート 無 養生 養生 圧 縮 強 度   (N /mm 2 ) )暑中期・N35床・2013 図 10 床スラブ試験体の内部温度の経時変化 図 11 各養生の強度性状 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 0 1 2 3 4 5 6 7 床 上 床 上中 床 中 床 下中 床 下 気温 温         度   ( ℃ ) 材    齢 (日) )2013暑中期・N35・床

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54-4 期と同様の順番で低い値となった。ただし、暑中期と 比較して、各養生のコアの強度差は小さかった。これ らの結果から、気温が高く、表面からの蒸発・乾燥に よる水分の逸散が著しい暑中期においては、初期にお ける水分の有無が床スラブコンクリートのコア強度に 大きく影響することが分かる。つまり、初期の給水養 生が強度低下を防ぐ上で重要となる。 次に、表面の耐久性について述べる。図 12 に床スラ ブ試験体の透気性状を示す。透気性状の測定にはシン グルチャンバー法5)およびトレント試験を用いた。図 より明らかなように、打設後に給水を行わなかった、 無養生および、打設 24 時間後からシート養生した試 験体の透気性状が大きくなっており、これは強度の結 果と同様である。しかし、打設後 24 時間に給水した試 験体は比較的に、透気性状が小さくなっている。図 13 に示す中性化促進試験の結果も透気性状と同様の傾向 となっている。これらのことより、床スラブコンクリ ートの表面の耐久性は強度と異なり、打設後 24 時間 以降に給水養生を行えば、ある程度の表面の耐久性を 確保することができると考えられる。ただし、打設直 後給水の試験体の結果から、コンクリートが硬化し始 める前に給水を行うと、表面の状態が悪くなることも 窺える。 4. 総括 暑中期環境で製造・施工される構造体コンクリート は管理用供試体と比較して、強度が低くなる。その結 果として、構造体強度補正値28S91通称 S 値が大きくな ってしまう。今回の実験の結果より、JASS5 で規定さ れている 6N/mm2は妥当であると確認された。さらに、 荷卸し温度 35℃を超えるとこの傾向は顕著となる。そ の要因として、柱のような比較的大きな構造体では、 構造体内部の高温により、硬化過程初期において水和 反応が急速なものとなる。その結果として、粗雑な硬 化体組織が生成され、さらに長期における水和が停滞 することが、まず一つ挙げられる。次に、外気温や日 射の影響を受け、脱型後に表面部から水分が逸散する ことによって、水和反応が阻害されることが考えられ る。 床スラブのような、部材厚が薄く、外気の影響を受 ける構造体は暑中期において、表面からの乾燥・水分 の逸散が著しいため、初期の水分の有無が強度に大き な影響を与える。すなわち、初期に給水することが強 度低下を防ぐ上で大変重要である。ただし、表面の耐 久性の低下は強度ほど、初期の水分の有無に影響は受 けず、その後の給水養生でも耐久性の低下を防止でき る。 これらの対策としては、コンクリート温度を抑える こと、表面からの水分の逸散を防止すること(型枠の 存置)、長期においても強度増進する材料の使用が挙げ られる。現時点では、筆者としてはフライアッシュが 対策として適していると考えている。図は省略するが、 フライアッシュを使用したコンクリートは、暑中期に おいても内部温度があまり高くならず、また、ポゾラ ン反応により、長期においても強度増進が期待できる。 <参考文献> 1) 暑中期に打設される重要構造物マスコンクリートに関する 研究 その 1 実験概要および強度発現性状、2010.3 2) 暑中コンクリート工事における品質管理に関する研究-実 大柱および壁試験体による検討-、2010.3 3) 暑中環境で施工される構造体コンクリートの品質管理に関 する研究 その 1 研究の概要、2011.3 4) 暑中環境で施工される構造体コンクリートの品質管理に関 する研究 その 4 柱試験体の温度性状、2012.3 5) 暑中環境で施工される構造体コンクリートのコールドジョ イントに関する研究 その 2 透気性によるコールドジョ イントの評価、2012.3 0 5 10 15 20 25 上面 下面 打設 直 後 給水 B. W消失 直 後給 水 B. W消 失 1h後給 水 B. W消 失 2h 後 給 水 B. W消 失 4h 後 給 水 打 設 24 h後給 水 打 設 24 h後シ ー ト 無 養生 中 性 化 深 さ ( mm ) )暑中期・N35床・2013 養生 100 設 直 後給 水 B. W消 失 直後 給 水 B. W消 失 1h 後 給 水 B.W 消 失2h 後 給 水 B.W 消 失4h 後 給水 打 設24 h後 給 水 打 設24 h後 シ ート 無養 生 C 透 気 係 数 Kt (1 0 -10 m 2 ) 10-1 101 102 )暑中期・N35床・2013 養生 0 5 10 15 20 25 打 設直 後 給水 B. W消失 直 後 給水 B. W消失 1h後給 水 B. W消失 2h後給 水 B. W消 失 4h後給 水 打 設 24 h後給 水 打 設 24 h後シ ー ト 無養生 簡 易 透 気 速 度 (m mH g/ se c) )暑中期・N35床・2013 養生 図 12 床スラブ試験体の透気係数、簡易透気速度 図 13 各養生の中性化深さ

参照

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